説明

エポキシ主鎖とアルキレンイミン側鎖とを有する共重合体からなる顔料分散剤

【課題】 添加剤などの他の成分を用いる必要がなく、長時間ミルなどの機械的な粉砕工程を経なくとも、良好な分散効果を示す顔料分散剤を提供すること。
【解決手段】 エポキシ樹脂骨格を有する主鎖と、アルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位の少なくとも一種からなり、数平均重合度が5〜2000の範囲にある直鎖状ポリマー鎖を有する側鎖とを有する共重合体からなる顔料分散剤により、多くの成分を必要とせず、且つ機械的な分散工程の必要なく、顔料を微細に均一分散させることが可能。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂骨格を主鎖とし、アルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位を有する直鎖状ポリマー鎖を側鎖として有する共重合体からなる顔料分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗料組成物用の顔料分散剤は、水性のものを含め、良好な顔料分散性を確保するため、架橋剤、練肉用樹脂、溶媒、制御剤、充填剤等の添加剤、可塑剤、湿潤剤、あるいは界面活性剤などの多くの成分を必要とするものが通常であった。また、微細な分散状態に調整するには、顔料分散剤及び種々の添加剤の存在下に、顔料を加えて攪拌した後、ボールミル、サンドミルまたはコンティニュアスミルなどを用いて、所望の粒子サイズまで小さくして、安定に分散することで調製されることが通常行われていた(特許文献1、2参照)。しかし、これらは上記のとおり、多くの他の成分と共に用いる必要や、長時間ミルなどの機械的な粉砕工程が必要という問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開平7−3186号公報
【特許文献2】特開平11−209554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、上記の従来技術の実情に鑑みてなされたもので、既存の手法に較べて添加剤などの他の成分を用いる必要がなく、長時間ミルなどの機械的な粉砕工程を経なくとも、良好な分散効果を示す顔料分散剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては、エポキシ樹脂骨格有する主鎖と、アルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位からなる直鎖状ポリマー鎖を有する側鎖とを有する共重合体を顔料分散剤とすることにより、主鎖に疎水性のエポキシ樹脂骨格、側鎖に親水性のアルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位を有する直鎖状ポリマー鎖を有することから、水や親水性溶媒中、あるいは疎水性溶媒中でナノ粒子状のポリマーミセルを形成することができる。そして、側鎖のアルキレンイミン構造単位又はN−アシルエチレンイミン構造単位を有する直鎖状ポリマー鎖には、カチオンチャージが存在するため、種々の顔料表面に存在するアニオンチャージを中和することができ、本発明の顔料分散剤と顔料との間には親和力が働くと考えられる。さらに、形成されるポリマーミセルの分散力及び浸透力などにより顔料が、粒径の大きい3次粒子から2次粒子、さらに数十ナノメートル大きさの1次粒子まで自発的な粉砕過程を経由するため、顔料を包含したナノ粒子のポリマーミセルを形成して安定な分散状態を保つことができる。
【0006】
即ち、本発明は、エポキシ樹脂骨格を有する主鎖と、アルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位の少なくとも一種からなり、数平均重合度が5〜2000の範囲にある直鎖状ポリマー鎖を有する側鎖とを有する共重合体からなることを特徴とする顔料分散剤が良好な分散効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明の顔料分散剤は極めて良好な顔料分散性を有することから、多くの成分を必要とせず、且つ機械的な分散工程の必要なく、顔料を微細に均一分散させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の顔料分散剤は、エポキシ樹脂骨格を有する主鎖と、アルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位の少なくとも一種からなり、数平均重合度が5〜2000の範囲にある直鎖状ポリマー鎖を有する側鎖とを有する共重合体からなるものである。
【0009】
本発明において使用する共重合体は、エポキシ樹脂骨格を主鎖構造中に有するものであり、エポキシ樹脂骨格からなる主鎖を有するものが特に好ましい。該エポキシ樹脂骨格としては、エピハロヒドリンと芳香族ジヒドロキシ化合物とから得られるエポキシ樹脂や、ジグリシジル化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物とから得られるエポキシ樹脂などの二級アルコール構造をその構造中に有する公知慣用のエポキシ樹脂を由来とするものである。
【0010】
本発明において使用する共重合体の側鎖を構成するアルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位の少なくとも一種からなる直鎖状ポリマー鎖は、5〜2000の範囲であるものを使用でき、5〜200の範囲にあるものが好ましい。
【0011】
このような共重合体のなかでも、本発明においては、式(1)
【0012】
【化1】

(式(1)中、Xはキサンテン骨格を有する二価のフェノール残基、ビフェニレン残基、ビスフェノール残基から選ばれる二価の基であり、Yはアルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位の少なくとも一種からなる数平均重合度が5〜2000の範囲にある直鎖状ポリマー鎖を有する側鎖を表し、複数あるYは同一でも異なっていてもよい。)
で表される構造単位(a1)、
式(2)
【0013】
【化2】

(式(2)中、Yはアルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位の少なくとも一種からなる数平均重合度が5〜2000の範囲にある直鎖状ポリマー鎖を有する側鎖を表し、複数あるYは同一でも異なっていてもよく、nは1〜3の整数である。)
で表される構造単位(a2)、
式(3)
【0014】
【化3】

(式(3)中、Yはアルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位の少なくとも一種からなる数平均重合度が5〜2000の範囲にある直鎖状ポリマー鎖を有する側鎖を表し、複数あるYは同一でも異なっていてもよく、nは1〜3の整数である。)
で表される構造単位(a3)、
式(4)
【0015】
【化4】

(式(4)中、Zはフェニル基又はビフェニル基を表し、Yはアルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位の少なくとも一種からなる数平均重合度が5〜2000の範囲にある直鎖状ポリマー鎖を有する側鎖を表し、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表し、複数あるYは同一でも異なっていてもよく、mは1〜3の整数である。)
で表される構造単位(a4)からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造単位と、
一価の芳香族ヒドロキシ化合物残基(b1)及び二価の芳香族ヒドロキシ化合物残基(b2)からなる群から選ばれる少なくとも一種とからなる共重合体を好ましく使用できる。
【0016】
本発明の共重合体が側鎖に有する直鎖状ポリマー鎖、すなわち上記式(1)〜(4)で表される構造中における直鎖状ポリマー鎖Yは、アルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位の少なくとも一種からなる直鎖状ポリマー鎖である。なかでも、エチレンイミン構造単位、プロピレンイミン構造単位、炭素数1〜18のアシル基を有するN−アシルエチレンイミン構造単位、及び炭素数1〜18のアシル基を有するN−アシルプロピレンイミン構造単位の少なくとも一種からなる群から選ばれる構造単位からなるものが、良好な顔料分散性を示すため好ましい。
【0017】
該直鎖状ポリマー鎖としては、N−アシルエチレンイミン構造単位のみからなる直鎖状ポリマー鎖、エチレンイミン構造単位のみからなる直鎖状ポリマー鎖、N−アシルプロピレンイミン構造単位のみからなる直鎖状ポリマー鎖、プロピレンイミン構造単位のみからなる直鎖状ポリマー鎖、そしてN−アシルエチレンイミン又はN−アシルプロピレンイミン構造単位とエチレンイミン又はプロピレンイミン構造単位の組み合わせからなる直鎖状ポリマー鎖及びN−アシルエチレンイミン構造単位とN−アシルプロピレンイミン構造単位の組み合わせからなる直鎖状ポリマー鎖などが例として挙げられる。また、N−アシルエチレンイミン又はN−アシルプロピレンイミン構造単位として、異なるアシル基を有する構造単位を使用した直鎖状ポリマー鎖も使用できる。N−アシルエチレンイミン又はN−アシルプロピレンイミン構造単位のみからなるポリマー鎖は親水性が高く、その塩酸塩などの塩はさらに水溶性が高い。これら直鎖状ポリマー鎖のうち、二種以上の構造単位からなる直鎖状ポリマー鎖は、ランダムポリマー鎖であってもブロックポリマー鎖であってもよく、ブロックポリマー鎖が特に好ましい。
【0018】
上記直鎖状ポリマー鎖のうちN−アシルエチレンイミン構造単位、及び/又はN−アシルプロピレンイミン構造単位からなる直鎖状ポリマー鎖は、一般にオキサゾリンモノマーのカチオンリビング重合により得られるポリオキサゾリンであり、その内、エチレンイミン構造単位からなる直鎖状ポリマー鎖の例としては、ポリ(N−ホルミルエチレンイミン)、ポリ(N−アセチルエチレンイミン)、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)、ポリ(N−ブチリルエチレンイミン)、ポリ(N−イソブチリルエチレンイミン)、ポリ(N−ピバロイルエチレンイミン)、ポリ(N−ラウロイルエチレンイミン)、ポリ(N−ステアロイルエチレンイミン)、ポリ(N−(3−(パーフロロオクチル)プロピオニル)エチレンイミン)などの脂肪族飽和カルボン酸でアシル化されたポリエチレンイミン、ポリ(N−アクリロイルエチレンイミン)、ポリ(N−メタクリロイルエチレンイミン)、ポリ(N−オレオイルエチンイミン)などの脂肪族不飽和カルボン酸でアシル化されたエチレンイミン、ポリ(N−ベンゾイルエチレンイミン)、ポリ(N−トルイロイルエチレンイミン)、ポリ(N−ナフトイルエチレンイミン)、ポリ(N−シンナモイルエチレンイミン)、などの芳香族カルボン酸でアシル化されたポリエチレンイミンなどが挙げられる。
【0019】
また、プロピレンイミン構造単位からなる直鎖状ポリマー鎖の例としては、例えば、ポリ(N−ホルミルプロピレンイミン)、ポリ(N−アセチルプロピレンイミン)、ポリ(N−プロピオニルプロピレンイミン)、ポリ(N−ブチリルプロピレンイミン)、ポリ(N−イソブチリルプロピレンイミン)、ポリ(N−ピバロイルプロピレンイミン)、ポリ(N−ラウロイルプロピレンイミン)、ポリ(N−ステアロイルプロピレンイミン)、ポリ(N−(3−(パーフロロオクチル)プロピオニル)プロピレンイミン)などの脂肪族飽和カルボン酸でアシル化されたポリプロピレンイミン、ポリ(N−アクリロイルプロピレンイミン)、ポリ(N−メタクリロイルプロピレンイミン)、ポリ(N−オレオイルエチンイミン)などの脂肪族不飽和カルボン酸でアシル化されたプロピレンイミン、ポリ(N−ベンゾイルプロピレンイミン)、ポリ(N−トルイロイルプロピレンイミン)、ポリ(N−ナフトイルプロピレンイミン)、ポリ(N−シンナモイルプロピレンイミン)、などの芳香族カルボン酸でアシル化されたポリプロピレンイミンなどが挙げられる。
【0020】
上記例示したポリマー鎖の構造式としては、式(5)〜(8)で表されるものが特に好ましい例として挙げられる。
【0021】
【化5】

(式(5)中、pは2又は3であり、qは5〜2000の範囲である。)
【0022】
【化6】

(式(6)中、Aは炭素数が1〜18のアシル基を表し、pは2又は3であり、qは5〜2000の範囲である。)
【0023】
【化7】

(式(7)中、Aは炭素数が1〜18のアシル基を表し、p及びpは2又は3であり、q+qは5〜2000の範囲である。)
又は、式(8)
【0024】
【化8】

(式(8)中、A、Aは炭素数が1〜18のアシル基を表し、各々異なるものであり、p及びpは2又は3であり、q+qは5〜2000の範囲である。)
から選ばれる一種である直鎖状ポリマー鎖は、構造制御が容易であるため好ましい。
【0025】
また、上記式(1)で表される本発明のアルキレンイミン共重合体のXとして選択される、置換基として炭素数1〜5のアルキル基を有していてもよいキサンテン残基としては、例えば、式(9)及び式(10)で表されるキサンテン骨格を有する二価の基があげられ、これらは、耐熱性と溶解性が高いため好適に使用できる。
【0026】
【化9】

【0027】
【化10】

(式(9)及び式(10)中、B及びBは炭素原子、メチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されたメチレン基、フェニル基で置換されたメチレン基、ナフチル基で置換されたメチレン基、ビフェニル基で置換されたメチレン基、9−フルオレニル基で置換されたメチレン基、又は該フェニル基、該ナフチル基、若しくは該ビフェニル基上に更にアルキル基が芳香核置換したメチレン基を表し、R〜Rは炭素数1〜5のアルキル基を表し、m、m及びm、mは各々独立して0〜3の整数を表し、m及びmは各々独立して0〜2の整数を表す。)
【0028】
上記式(1)中のXとして選択される、置換基として炭素数1〜5のアルキル基を有していてもよいビフェニレン残基としては、例えば、式(11)で表される二価の基があげられ、これは、耐熱性が高いため好適に使用できる。
【0029】
【化11】

(式(11)中、R及びRは、炭素数1〜5のアルキル基を表し、m及びmは各々独立して0〜4の整数を表す。)
【0030】
上記式(1)中のXとして選択される、置換基として炭素数1〜5のアルキル基またはハロゲン原子を有していてもよいビスフェニル残基としては、例えば、式(12)で表される二価の基があげられ、これは、溶解性が高いため好適に使用できる。
【0031】
【化12】

(式(12)中、Bは−C(CH−、−CH(CH)−、−CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CH)(C)−または−SO−を表し、R10及びR11は炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子を表し、m10及びm11は各々独立して0〜4の整数を表す。)
【0032】
本発明における一価の芳香族ヒドロキシ化合物残基(b1)は、グリシジル化合物と反応する一価の芳香族ヒドロキシ化合物の残基であれば特に制限されず、例えば、ビフェニルアルコール残基、ジフェニルアルコール残基、フェノール残基、ナフトール残基、アントラノール残基、ヒドロキシピレン残基、ヒドロキシアントラキノン残基、ヒドロキシベンズイミダゾル残基、ヒドロキシベンゾチアゾル残基、ヒドロキシカルバゾル残基、ヒドロキシジベンゾフラン残基、ヒドロキシインドル残基、ヒドロキシキノリン残基、ヒドロキシアクリジン残基、ヒドロキシキノキサリン残基などの一価の芳香族ヒドロキシ化合物残基が例として挙げられる。
【0033】
上記一価の芳香族ヒドロキシ化合物残基は、炭素数が1〜5のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホン酸基、アミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のジアルキルアミノ基、炭素数が1〜5のアルコキシ基、炭素数が1〜5のアルデヒド基などの置換基を有していてもよい。
【0034】
なかでも、得られる共重合体に剛直な骨格を与える場合には、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシ4−ビフェニルカルボニトリル等のビフェニル骨格を有する芳香族ヒドロキシ化合物、ビスフェノールA型ヒドロキシ化合物、ビスフェノールF型ヒドロキシ化合物、ビスフェノールS型ヒドロキシ化合物、ビスフェノールヒドロキシ化合物等のジフェニル骨格を有する芳香族ヒドロキシ化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、アントラノール化合物、ヒドロキシピレン化合物、ヒドロキシアントラキノン化合物、ヒドロキシベンズイミダゾル化合物、ヒドロキシベンゾチアゾル化合物、ヒドロキシカルバゾル化合物、ヒドロキシジベンゾフラン化合物、ヒドロキシインドル化合物、ヒドロキシキノリン化合物、ヒドロキシアクリジン化合物、ヒドロキシキノキサリン化合物などの一価の芳香族アルコール構造を有する色素類などの残基であることが好ましい。
【0035】
また、ビフェニル骨格を有する一価の芳香族ヒドロキシ化合物残基のなかでも、式(13)で表される一価の芳香族ヒドロキシ化合物残基は得られる共重合体の耐熱性を向上できるため好ましい。
【0036】
【化13】

(式(13)中、R12及びR13は炭素数が1〜5のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホン酸基、アミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のジアルキルアミノ基、炭素数が1〜5のアルコキシ基、炭素数が1〜5のアルデヒド基のいずれかを表し、m12は1〜4、m13は1〜5の整数である。)
【0037】
また、ジフェニル骨格を有する一価の芳香族ヒドロキシ化合物残基のなかでも、式(14)で表される一価の芳香族ヒドロキシ化合物残基は、該構造を与える芳香族ヒドロキシ化合物の溶解性が高いため調製が容易であり好ましい。
【0038】
【化14】

(式(14)中、R14及びR15は炭素数が1〜5のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホン酸基、アミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のジアルキルアミノ基、炭素数が1〜5のアルコキシ基、又は炭素数が1〜5のアルデヒド基のいずれかを表し、Dは−S−、−O−、−CO−、−CH−、−C(CH−、−SO−、−N=N−、−CH=CH−、−C(C11)−、又は−COOCH−で表されるいずれかの構造であり、m14は1〜4、m15は1〜5の整数である。)
【0039】
また、芳香族アルコール構造を有する色素類などの残基である一価の芳香族ヒドロキシ化合物残基のなかでも、フェノール化合物、ナフトール化合物、アントラノール化合物、ヒドロキシピレン化合物、ヒドロキシアントラキノン化合物、ヒドロキシベンズイミダゾル化合物、ヒドロキシベンゾチアゾル化合物、ヒドロキシカルバゾル化合物、ヒドロキシジベンゾフラン化合物、ヒドロキシインドル化合物、ヒドロキシキノリン化合物、ヒドロキシアクリジン化合物、ヒドロキシキノキサリン化合物などの残基は色素化合物との良い相互作用を有するため好ましい。
【0040】
また、二価の芳香族ヒドロキシ化合物残基(b2)としては、グリシジル化合物と反応する二価の芳香族ヒドロキシ化合物の残基であれば特に制限されず、例えば、ビフェノール残基、ジフェニルジヒドロキシ残基、ジヒドロキシベンゼン残基、ジヒドロキシナフタレン残基、ジヒドロキシアントラセン残基、ジヒドロキシピレン残基、ジヒドロキシアントラキノン残基、ジヒドロキシベンズイミダゾル残基、ジヒドロキシベンゾチアゾル残基、ジヒドロキシカルバゾル残基、ジヒドロキシジベンゾフラン残基、ジヒドロキシインドル残基、ジヒドロキシキノリン残基、ジヒドロキシアクリジン残基、ジヒドロキシキノキサリン残基などの二価の芳香族ヒドロキシ化合物残基が例として挙げられる。
【0041】
上記二価の芳香族ヒドロキシ化合物残基は、炭素数が1〜5のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホン酸基、アミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のジアルキルアミノ基、炭素数が1〜5のアルコキシ基、炭素数が1〜5のアルデヒド基などの置換基を有していてもよい。
【0042】
なかでも、得られる共重合体に剛直な骨格を与える場合には、ビフェノール、ジヒドロキシビフェニルカルボニトリル等のビフェニル骨格を有する芳香族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA型ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールF型ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールS型ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールジヒドロキシ化合物等のジフェニル骨格を有する芳香族ジヒドロキシ化合物、ジヒドロキシベンゼン化合物、ジヒドロキシナフタレン化合物、ジヒドロキシアントラセン化合物、ジヒドロキシピレン化合物、ジヒドロキシアントラキノン化合物、ジヒドロキシベンズイミダゾル化合物、ジヒドロキシベンゾチアゾル化合物、ジヒドロキシカルバゾル化合物、ジヒドロキシジベンゾフラン化合物、ジヒドロキシインドル化合物、ジヒドロキシキノリン化合物、ジヒドロキシアクリジン化合物、ジヒドロキシキノキサリン化合物などの二価の芳香族アルコール構造を有する色素類などの残基であることが好ましい。
【0043】
上記の二価の芳香族ヒドロキシ化合物残基(b2)で表される二価の芳香族ヒドロキシ化合物残基としては、ビフェニル骨格を有する式(15)、又は式(16)で表される二価の芳香族ヒドロキシ化合物残基が好ましい。
【0044】
【化15】

(式(15)中及びR16及びR17は炭素数が1〜5のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホン酸基、アミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のジアルキルアミノ基、炭素数が1〜5のアルコキシ基、又は炭素数が1〜5のアルデヒド基のいずれかを表し、m16及びm17は1〜4の整数である。)
【0045】
【化16】

(式(16)中、R18及びR19は炭素数が1〜5のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホン酸基、アミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のジアルキルアミノ基、炭素数が1〜5のアルコキシ基、又は炭素数が1〜5のアルデヒド基のいずれかを表し、Dは−S−、−O−、−CO−、−CH−、−C(CH−、−SO−、−N=N−、−CH=CH−、−C(C11)−、又は−COOCH−で表されるいずれかの構造であり、m18及びm19は1〜4の整数である。)
【0046】
本発明の共重合体においては、一価の芳香族ヒドロキシ化合物残基(b1)と二価の芳香族ヒドロキシ化合物残基(b2)とのモル比(b1)/(b2)が、3.3〜30の範囲にあると良好な顔料分散性を示すため好ましく、2〜9の範囲であるとより好ましい。
【0047】
また、本発明の該共重合体高分子の平均分子量としては、2500〜1000000の範囲であれば本発明の効果を好適に奏することができ、5000〜500000の範囲にあるものが特に好ましく使用できる。
【0048】
上記本発明のエポキシ樹脂骨格を主鎖とし、アルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位を有する直鎖状ポリマー鎖を側鎖として有する共重合体からなる顔料分散剤は、主鎖に疎水性の変性エポキシ化合物骨格、側鎖に親水性のアルキレンイミン構造単位を有することから、水や親水性溶媒中、あるいは疎水性溶媒中でナノ粒子のポリマーミセルを形成すると考えられる。そのナノ粒子の顔料分散剤の分散力及び浸透力などにより顔料の大きい3次粒子から2次、さらに数十ナノメートル大きさの1次粒子まで自発的な粉砕過程を経由し、ナノ粒子のポリマーミセルを形成して安定な分散状態を保つことができる特徴的な機能を発現する。ナノ粒子のポリマーミセルの大きさは主鎖構造と側鎖構造との分子量の比や、構造を使用する顔料に応じて調整することで、制御することが可能である。
【0049】
このような、本発明の該共重合体からなる顔料分散剤は、他の多くの添加剤を必要としなく、高度な機械的粉砕工程も必要なく良好な分散状態を形成することができる。
【0050】
本発明において使用するエポキシ樹脂骨格の主鎖と、アルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位を有する直鎖状ポリマー鎖の側鎖とを有する共重合体は、多官能グリシジル化合物と、一価及び二価の芳香族ヒドロキシ化合物との反応により得られる二級アルコール構造を有するエポキシ樹脂の側鎖ヒドロキシ基を、スルホニル化剤によりスルホネート基に変性した変性エポキシ化合物とし、これをカチオン重合開始剤として、オキサゾリンなどのカチオン重合性モノマーをカチオン重合させるという簡便な方法で得ることができる。
【0051】
二級アルコール構造を有するエポキシ樹脂を与える多官能グリシジル化合物としては、芳香族ジヒドロキシ化合物と反応して、側鎖にヒドロキシ基を与えるものであればよい。
【0052】
このような多官能グリシジル化合物としては、芳香族グリシジル化合物、脂環式グリシジル化合物、及び脂肪族グリシジル化合物など、エポキシ樹脂の合成に通常使用されているジグリシジル化合物を使用できる。なかでも、式(i)〜(iv)で表される多官能グリシジル化合物は顔料分散性の良好な顔料分散剤を与えるため好ましい。
【0053】
【化17】

(式(1)中、Xはキサンテン骨格を有する二価のフェノール残基、ビフェニレン残基、ビスフェノール残基から選ばれる二価の基を表す。)
【0054】
【化18】

(式(ii)中、nは1〜3の整数を表す。)
【0055】
【化19】

(式(iii)中、nは1〜3の整数を表す。)
【0056】
【化20】

(式(iv)中、Zはフェニル基又はビフェニル基を表し、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表し、mは1〜3の整数である。)
【0057】
上記式(i)中のXとしては、上記式(9)〜(12)で表される二価の基であることが好ましい。
【0058】
これら多官能グリシジル化合物と反応させる一価の芳香族ヒドロキシ化合物としては、上記した芳香族ヒドロキシ化合物残基を与えるものであれば良い。例えば、置換基を有していてもよいビフェニルアルコール、ジフェニルアルコール、フェノール、ナフトール、アントラノール、ヒドロキシピレン、ヒドロキシアントラキノン、ヒドロキシベンズイミダゾル、ヒドロキシベンゾチアゾル、ヒドロキシカバゾル、ヒドロキシジベンゾフラン、ヒドロキシインドル、ヒドロキシキノリン、ヒドロキシアクリジン、ヒドロキシキノキサリンなどの上記に例示した芳香族ヒドロキシ化合物を使用できる。
【0059】
なかでも、下記式(v)、又は(vi)で表される芳香族ヒドロキシ化合物が好ましく使用できる。
【0060】
【化21】

【0061】
(式(v)中、R12及びR13は炭素数が1〜5のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホン酸基、アミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のジアルキルアミノ基、炭素数が1〜5のアルコキシ基、又は炭素数が1〜5のアルデヒド基のいずれかを表し、m12は1〜4、m13は1〜5の整数である。)
【0062】
【化22】

【0063】
(式(vi)中、R14、R15は炭素数が1〜5のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホン酸基、アミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のジアルキルアミノ基、炭素数が1〜5のアルコキシ基、又は炭素数が1〜5のアルデヒド基のいずれかを表し、Dは−S−、−O−、−CO−、−CH−、−C(CH−、−SO−、−N=N−、−CH=CH−、−C(C11)−、又は−COOCH−で表されるいずれかの構造であり、m14は1〜4、m15は1〜5の整数である。)
【0064】
また、上記の多官能グリシジル化合物と反応させる二価の芳香族ヒドロキシ化合物としては、置換基を有していてもよいビフェニルアルコール、ジフェニルアルコールなどの上記に例示した芳香族ヒドロキシ化合物を使用できる。
【0065】
なかでも、下記式(vii)、又は(viii)で表される芳香族ヒドロキシ化合物が好ましく使用できる。
【0066】
【化23】


(式(vii)中、R16及びR17は炭素数が1〜5のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホン酸基、アミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のジアルキルアミノ基、炭素数が1〜5のアルコキシ基、又は炭素数が1〜5のアルデヒド基のいずれかを表し、m16、m17は1〜4の整数である。)
【0067】
【化24】

(式(viii)中、R18及びR19は炭素数が1〜5のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホン酸基、アミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のジアルキルアミノ基、炭素数が1〜5のアルコキシ基、又は炭素数が1〜5のアルデヒド基のいずれかを表し、Dは−S−、−O−、−CO−、−CH−、−C(CH−、−SO−、−N=N−、−CH=CH−、−C(C11)−、又は−COOCH−で表されるいずれかの構造であり、m18、m19は1〜4の整数である。)
【0068】
上記多官能グリシジル化合物と、一価の芳香族ヒドロキシ化合物及び二価の芳香族ヒドロキシ化合物との反応により得られる二級アルコール構造を有するエポキシ化合物の側鎖ヒドロキシ基の変性は、一般にアミンやアルカリ性無機塩の存在下、スルホン酸ハライドやスルホン酸無水物などのスルホニル化剤を作用させることにより達成される。
【0069】
スルホン酸ハライドとしては、例えば、メタンスルホン酸クロライド、トリフルオロメタンメタンスルホン酸クロライド、トリクロロメタンスルホン酸クロライドなどのハロゲンで置換されていてもよいメタンスルホン酸ハライドや、ベンゼンスルホン酸クロライド、p−トルエンスルホン酸クロライド、2−ニトロベンゼンスルホン酸クロライド、2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸クロライドなどのアルキル基またはニトロ基で置換されていてもよいベンゼンスルホン酸クロライドや、1−ナフタレンスルホン酸クロライドや2−ナフタレンスルホン酸クロライドなどのナフタレンスルホン酸ハライドなどが挙げられる。
【0070】
上記スルホン酸クロライドのうち、アルキル基またはニトロ基で置換されていてもよいベンゼンスルホン酸クロライド、または、ハロゲン原子で置換されていてもよいメタンスルホン酸クロライドは、カチオン重合開始剤である変性エポキシ樹脂の溶解性が高中でも、メタンスルホン酸クロライド、トリフルオロメタンスルホン酸クロライド、トリクロロメタンスルホン酸クロライド、ベンゼンスルホン酸クロライド、p−トルエンスルホン酸クロライド、2−ニトロベンゼンスルホン酸クロライド、2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸クロライドは、原料入手が容易な点で好ましい。とりわけ、p−トルエンスルホン酸クロライドは、カチオン重合開始剤である変性エポキシ樹脂の安定性が高い点で、またトリフルオロメタンスルホン酸クロライドは、得られる変性エポキシ化合物のカチオン重合開始能が高いため好ましい。
【0071】
スルホン酸無水物としては、例えば、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンメタンスルホン酸無水物、トリクロロメタンスルホン酸無水物などのハロゲンで置換されていてもよいメタンスルホン酸無水物や、ベンゼンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸無水物、2−ニトロベンゼンスルホン酸無水物、2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸無水物などのアルキル基またはニトロ基で置換されていてもよいベンゼンスルホン酸無水物などが挙げられる。
【0072】
上記スルホン酸無水物のうち、ハロゲン原子で置換されていてもよいメタンスルホン酸無水物は、水酸基のスルホニル化反応後、未反応のスルホン酸無水物を減圧によって留去できるので好ましく、中でも、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、トリクロロメタンスルホン酸無水物は、原料入手が容易な点で好ましい。とりわけ、トリフルオロメタンスルホン酸無水物は、カチオン重合開始剤である変性エポキシ樹脂のカチオン重合開始能が高いので好ましい。
【0073】
スルホン酸ハライドによるスルホネート基への置換反応は、一般に塩基存在下で行われるが、塩基としては、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリンなどの芳香族3級アミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの脂肪族3級アミン、炭酸カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ性無機塩などが挙げられる。
【0074】
上記の二級アルコール構造の側鎖ヒドロキシ基を、スルホネート基に置換する割合は、上記スルホン酸ハライドの添加量や塩基の種類により調整できる。例えば、全てのヒドロキシ基を、スルホネート基に変換する場合には、二級アルコール構造を有するエポキシ樹脂中のヒドロキシ基に対し、大過剰モル量のスルホン酸ハライドやスルホン酸無水物を使用すればよい。
【0075】
また、ヒドロキシ基を部分的にスルホネート基に置換する場合には、塩基としてピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどの芳香族3級アミンを用い、スルホン酸ハライドをヒドロキシ基に対し小過剰モル量用い、反応温度を室温程度に維持すればよい。
【0076】
本発明において使用する共重合体は、上記方法により得られる側鎖にスルホネート基を有する変性エポキシ化合物をカチオン重合開始剤として使用し、該変性エポキシ化合物の側鎖スルホネート基から、オキサゾリンなどのカチオン重合性モノマーをカチオン重合する方法、あるいはカチオン重合した後加水分解する方法といった簡便な方法で得ることができる。
【0077】
上記カチオン重合性モノマーの具体例としては、例えば、エチレンイミン、プロピレンイミン、N−(テトラヒドロピラニル)エチレンイミン、N−(t−ブチル)エチレンイミンなどのアジリジンや、アゼチジンなどのアルキレンイミンモノマー、2−オキサゾリン、2−メチルオキサゾリン、2−エチルオキサゾリン、2−フェニルオキサゾリン、2−ステアリルオキサゾリン、2−(3−(パーフロロオクチル)プロピル)オキサゾリンなどの2−アルキルオキサゾリンや、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリン、2−オレイルオキサゾリンなどの2−アルケニルオキサゾリン、2−フェニルオキサゾリン、2−ベンジルオキサゾリンなどの2−アリールオキサゾリンなどのオキサゾリンモノマー、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのオキシランモノマーなどが挙げられる。
【0078】
本発明において使用する共重合体の製造において、上記変性エポキシ化合物を使用した際のカチオン重合条件は、p−トルエンスルホン酸メチルやトリフルオロメタンスルホン酸メチルなどのアルキルスルホン酸エステルをカチオン重合開始剤とする慣用公知のカチオン重合条件に類する。
【0079】
また、オキサゾリンモノマーを複数種使用した重合により、N−アシルエチレンイミン構造単位の複数種からなるランダムポリマー鎖を形成でき、さらに一般にオキサゾリンのカチオン重合はリビング重合であることから、オキサゾリンモノマーの種類を変えた多段階重合によりブロックポリマーを製造できる。これにより、本発明において使用する共重合体の側鎖をランダムポリマー鎖や、ブロックポリマー鎖とすることができる。例えば、前記変性エポキシ樹脂のカチオン重合開始剤で2−フェニルオキサゾリンをカチオン重合した後、2−メチルオキサゾリンを重合することにより、エポキシ樹脂にポリ(N−ベンゾイルエチレンイミン)鎖が直結し、該ポリ(N−ベンゾイルエチレンイミン)にポリ(N−アセチルエチレンイミン)が直結した、ブロックポリマー化されたポリアシルエチレンイミンを側鎖とする共重合体を得ることができる。
【0080】
また、N−アシルエチレンイミン構造単位からなるポリマー鎖の加水分解を部分的に行うことにより、ポリマー鎖中の一部のN−アシルエチレンイミン構造単位が加水分解されてエチレンイミン構造単位となり、N−アシルエチレンイミン構造単位とエチレンイミン構造単位とからなるランダムポリマー鎖を側鎖に有する共重合体を得ることができる。
【0081】
加水分解前のN−アシルエチレンイミン構造単位からなるポリマー鎖がブロックポリマーの場合、加水分解条件を制御することによりN−アシルイミノ基の選択的加水分解が可能であり、ポリエチレンイミンブロックとポリ(N−アセチルエチレンイミン)ブロックとのブロックコポリマー鎖や、ポリエチレンイミンブロックとポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)ブロックとのブロックコポリマー鎖などの、ポリエチレンイミンブロックとN−アシルポリエチレンイミンブロックとからなるジブロックポリマー側鎖を有する共重合体を合成することができる。
【0082】
加水分解前のN−アシルエチレンイミン構造単位からなるポリマー鎖がランダムポリマーの場合にも、エチレンイミン構造単位とN−アシルエチレンイミン構造単位とのランダムコポリマー側鎖を有する共重合体を製造することができる。
【0083】
本発明において使用する共重合体は、多官能グリシジル化合物残基と一価の芳香族ヒドロキシ化合物残基及び二価の芳香族ヒドロキシ化合物残基とからなるエポキシ化合物骨格を主鎖とし、エチレンイミン構造単位、N−アシルエチレンイミン構造単位、プロピレンイミン構造単位、N−アシルプロピレンイミン構造単位、エチレングリコール構造単位、及びプロピレングリコール構造単位などを構造単位とする親水性の直鎖状ポリマー鎖を側鎖として有するため、分子中に疎水性部分と親水性部分とを併せ持ち、かつ各々の構造制御が可能であることから、容易にポリマーミセルを形成することができる。このため、本発明の上記共重合体からなる顔料分散剤によると、本来水に不溶性ないし難溶性の機能性化合物をカプセル化し、水中に安定に維持することができる。例えば、ピレンなどの蛍光性芳香族炭化水素は、本発明の顔料分散剤のポリマーミセル内に分子状態でカプセル化され、水中で安定に存在することができる。
【0084】
このように本発明において使用する共重合体は、二級アルコール構造を有する変性エポキシにおける側鎖ヒドロキシ基が、アルキルスルホネート基やアリールスルホネート基などの脱離能の高い基で置換された変性エポキシ化合物を、カチオン重合開始剤とし、オキサゾリンなどのカチオン重合性モノマーをカチオン重合させるか、又は、該変性エポキシ化合物にポリアルキレングリコールを置換させることで製造可能であるため、本発明の顔料分散剤は極めて簡便且つ容易な方法で製造することができる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、特に断わりがない限り「%」は「質量%」を表わす。
【0086】
(実施例1)
ビスフェノールA型線状エポキシ樹脂9.3g(大日本インキ化学工業(株)社製「AM−040−P」)(10m等量、エポキシ等量933g)、4−フェニルフェノール2.56g(15.0mmol)、65%酢酸エチルトリフェニルホスホニウムエタノール溶液0.13ml(0.06mol%)及びN,N−ジメチルアセトアミド50mlを、窒素雰囲気下、120℃で6時間反応させた。放冷後、水150ml中に滴下し、得られた沈殿物をメタノールで2回洗浄した後、60℃で減圧乾燥して、単官能性のエポキシ化合物を得た。得られた生成物の収量は10.3gであった。
【0087】
1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)測定結果、エポキシ環は4−フェニルフェノールより100%開環された。
【0088】
上記反応より得られた側鎖に2級ヒドロキシ基を有する変性ビスフェノールA型線状エポキシ樹脂10.3g(側鎖ヒドロキシ基34.5mmol)を含むクロロフォルム溶液30mlを窒素雰囲気下、氷冷撹拌し、ピリジン24.12ml(300mmol)を加えた。p−トルエンスルフォン酸クロライド28.5g(150mmol)を含むクロロフォルム溶液30mlを、窒素雰囲気下、氷冷撹拌しながら滴下した後、1時間氷冷撹拌した。さらに40℃で3時間半反応させた後、得られた淡黄色透明液にクロロフォルム200mlを加え、氷冷撹拌下、N,N−ジメチルエチレンジアミン21.5ml(200mmolを滴下した。滴下による急激な発熱を、十分氷冷撹拌して液温25℃以下に保った後、得られた黄色液に10%塩酸水溶液200mlを加え、クロロフォルムで抽出した。さらに、10%塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、吸引濾過、減圧濃縮して淡黄色固体を12.5g得た。
1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)測定結果、ヒドロキシ基のp−トルエンスルホニル基への変性率は100%であった。
【0089】
上記で得られた変性エポキシ樹脂1.35g(p−トルエンスルホニロキシ基3.0mmol)、2−メチルオキサゾリン5.1g(60.0mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド30mlを、窒素雰囲気下、100℃で24時間攪拌した。得られた黄色の半固形物に酢酸エチル100mlを加え、室温で強力攪拌した後、濾過、酢酸エチル洗浄、減圧乾燥して白色粉末固体6.2gを得た。1H−NMRによる分析から、得られた上記固体は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主鎖とし、p−トルエンスルホニロキシ基のo位水素(δ 7.82ppm)とポリ(N−アセチルエチレンイミン)のエチレン水素(δ 3.47ppm)との積分比から数平均重合度20のポリ(N−アセチルエチレンイミン)を側鎖とする共重合体であることが確認された。
【0090】
得られた共重合体を顔料分散剤として使用して顔料を分散させて分散性を観測した。顔料は大日本インキ化学工業株式会社製の赤(「Symuler Fast Red 4590」)、黄(「Symuler Fast Yellow 4400T」)、青(Fastogen Blue FGF)顔料を用いた。上記の顔料分散剤3mg、各々の顔料2mgを水5mlに加えた後、室温で30分間攪拌した。
【0091】
いずれの顔料においても顔料は水中で良好な分散状態を示し、安定な球状の粒子を形成していることが確認された。電子顕微鏡で観察した結果、青顔料は粒径が50〜70nm、赤顔料は粒径が40〜60nm、黄顔料は粒径が80〜100nmの球形であった。
【0092】
(実施例2)
実施例1で得られた共重合体3.1gを、5規定塩酸水12.2g中、90℃で8時間攪拌した。放冷後、時間とともに生成してきた白色沈殿を含む溶液にアセトン約50mlを加え、静置後、上澄み液をデカンテーションして除き、再度アセトン添加、静置、デカンテーションを繰り返した。このアセトン添加、静置、デカンテーション操作をさらに2回繰り返した後、白色沈殿を濾過し、アセトンで洗浄した後、室温で減圧乾燥して、白色粉末固体2.8gを得た。1H−NMRによる分析から、得られた上記固体は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主鎖とし、数平均重合度20のポリエチレンイミン塩酸塩を側鎖とする共重合体であることが確認された。
【0093】
得られた共重合体を顔料分散剤として使用して実施例1と同様に青顔料を分散させて分散性を観測した。青顔料は水中で良好な分散状態を示し、安定な球状の粒子を形成していることが確認された。電子顕微鏡で観察した結果、青顔料は粒径が50〜70nmの球形であった。
【0094】
(実施例3)
2,7−ジグリシジルオキシ−1,3,4,5,6,8−ヘキサメチル−9−フェニルキサンテン3.1g(大日本インキ化学工業(株)社製「EXA7335」、6.4mmol)、4,4’−ジグリシジルオキシビフェニル0.47g(1.6mmol)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル1.34g(7.2mmol)及びエチルトリフェニルフォスフォニウムアセテートの70%メタノール溶液0.021g(0.04mmol)を、N,N−ジメチルアセトアミド5.0g中、窒素雰囲気下、140℃に加熱攪拌して、4時間反応させた。放冷後、淡黄色透明の半固形反応液をN,N−ジメチルアセトアミド20gで希釈し、氷に滴下した。析出した白色塊状沈殿を吸引濾過、氷水洗浄後、塊状沈殿を水300ml中、強力攪拌しながら30分間沸煮した。放冷後、デカンテーションして得られた沈殿を粉砕し、粉末化した沈殿を水、メタノールで洗浄後、60℃で減圧乾燥して、キサンテン−ビフェニレン共重合型線状エポキシ樹脂を4.6g得た。
1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)測定結果、エポキシ環は4−フェニルフェノールより100%開環された。
【0095】
上記反応より得られた側鎖に2級ヒドロキシ基を有する変性エポキシ樹脂4.6gを含むクロロフォルム溶液15mlを窒素雰囲気下、氷冷撹拌し、ピリジン8.04ml(100mmol)を加えた。p−トルエンスルフォン酸クロライド9.5g(50mmol)を含むクロロフォルム溶液15mlを、窒素雰囲気下、氷冷撹拌しながら滴下した後、1時間氷冷撹拌した。さらに40℃で3時間半反応させた後、得られた淡黄色透明液にクロロフォルム100mlを加え、氷冷撹拌下、N,N−ジメチルエチレンジアミン7.2ml(67mmolを滴下した。滴下による急激な発熱を、十分氷冷撹拌して液温25℃以下に保った後、得られた黄色液に10%塩酸水溶液100mlを加え、クロロフォルムで抽出した。さらに、10%塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、吸引濾過、減圧濃縮して淡黄色固体を5.9g得た。
1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)測定結果、側鎖ヒドロキシ基のp−トルエンスルホニル基への変性率は100%であった。
【0096】
上記で得られた変性エポキシ樹脂2.50g(p−トルエンスルホニロキシ基3.0mmol)、2−メチルオキサゾリン5.1g(60.0mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド30mlを用いて上記の実施例2と同様にして、淡黄色粉末固体7.5gを得た。実施例2と同様にして1H−NMRによる分析から、得られた上記固体は、キサンテン−ビフェニレン共重合型エポキシ樹脂を主鎖とし、数平均重合度20のポリ(N−アセチルエチレンイミン)を側鎖とする共重合体であることが確認された。
【0097】
上記で得られた共重合体エポキシ樹脂3.7gを、5規定塩酸水12.5g中、90℃で8時間攪拌した。放冷後、時間とともに生成してきた白色沈殿を含む溶液にアセトン約60mlを加え、静置後、上澄み液をデカンテーションして除き、再度アセトン添加、静置、デカンテーションを繰り返した。このアセトン添加、静置、デカンテーション操作をさらに2回繰り返した後、白色沈殿を濾過し、アセトンで洗浄した後、室温で減圧乾燥して、白色粉末固体3.5gを得た。1H−NMRによる分析から、得られた上記固体は、キサンテン−ビフェニレン共重合型エポキシ樹脂を主鎖とし、数平均重合度20のポリエチレンイミン塩酸塩を側鎖とする共重合体であることが確認された。
【0098】
得られた共重合体を顔料分散剤として使用して実施例1と同様に青顔料を分散させて分散性を観測した。青顔料は水中で良好な分散状態を示し、安定な球状の粒子を形成していることが確認された。電子顕微鏡で観察した結果、青顔料は粒径が70〜90nmの球形であった。
【0099】
(実施例4)
ジャパネポキシレジン(JER)の商品名エピコート1031S[テトラキス(グリシジルオキシアリル)エタン]9.8g(50m等量、エポキシ等量196g)、4−フェニルフェノール11.9g(70mmol)、65%酢酸エチルトリフェニルホスホニウムエタノール溶液0.21ml(0.1mol%)及びN,N−ジメチルアセトアミド40mlを、窒素雰囲気下、160℃で4時間反応させた。放冷後、水100ml中に滴下し、得られた沈殿物をメタノールで2回洗浄した後、70℃で減圧乾燥して、ビフェニレン型の側鎖にヒドロキシ基を有する変性エポキシ化合物を17.6g得た。
【0100】
1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)測定結果、エポキシ環は4−フェニルフェノールより100%開環された。
【0101】
上記で得られた側鎖にアルコール性ヒドロキシ基を有するビフェニレン型変性エポキシ化合物9.15g(25.0m等量)、ピリジン20.0g(250mmol)及びクロロフォルム30mlの溶液に、p−トルエンスルフォン酸クロライド14.3g(75mmol)を含むクロロフォルム(30ml)溶液を、窒素雰囲気下、氷冷撹拌しながら30分間滴下した。滴下終了後、浴槽温度40℃でさらに4時間攪拌した。反応終了後、クロロフォルム60mlを加えて反応液を希釈した。引き続き、5%塩酸水溶液100ml、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、そして飽和食塩水溶液で順次に洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過、減圧濃縮した。得られた固形物をメタノールで数回洗浄した後、濾過、70℃で減圧乾燥して、変性エポキシ化合物を13.0g得た。
【0102】
1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)測定結果、側鎖ヒドロキシ基のp−トルエンスルホニル基への変性率は100%であった。
【0103】
上記で合成した側鎖にp−トルエンスルホニルオキシ基を有する変性エポキシ化合物2.08g(4.0m等量)、2−メチルオキサゾリン6.8g(80.0mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド40mlを、窒素雰囲気下、100℃で24時間攪拌した。得られた反応混合物に酢酸エチル300mlを加え、室温で強力攪拌した後、生成物の固形物を濾過、酢酸エチルで2回洗浄、減圧乾燥して白色粉末固体8.7gを得た。1H−NMRによる分析から、得られた上記固体は、テトラキスフェニルエタン構造の変性エポキシを主鎖(δ 6.45〜7.90ppm)とし、ポリ(N−アセチルエチレンイミン)を側鎖[エチレン水素(δ 3.47ppm)、アセチル水素(δ 2.00ppm)]とし、また、反応物と生成物の定量的な計算から数平均重合度20のポリ(N−アセチルエチレンイミン)共重合体であると確認された。
【0104】
得られた共重合体を顔料分散剤として使用して実施例1と同様に顔料を分散させて分散性を観測した。いずれの顔料においても顔料は水中で良好な分散状態を示し、安定な球状の粒子を形成していることが確認された。電子顕微鏡で観察した結果、青顔料は粒径が40〜60nm、赤顔料は粒径が20〜40nm、黄顔料は粒径が80〜100nmの球形であった。
【0105】
(実施例5)
上記実施例4で得られたポリ(N−アセチルエチレンイミン)共重合体3.8gを、5規定塩酸水15.2g中、90℃で6時間攪拌し、加水分解反応を行った。放冷後、時間とともに生成してきた白色沈殿を含む反応混合溶液をアセトン約150mlに加え、室温で約30分間攪拌した後、生成物の固形物を濾過、アセトンで2回洗浄、減圧乾燥して白色固体3.3gを得た。1H−NMRによる分析から、加水分解反応によりポリ(N−アセチルエチレンイミン)を側鎖アセチル水素(δ 2.00ppm)]がなく、得られた上記固体は、ポリエチレンイミン塩酸塩を側鎖とする共重合体であると確認された。
【0106】
得られた共重合体を顔料分散剤として使用して実施例1と同様に青顔料を分散させて分散性を観測した。青顔料は水中で良好な分散状態を示し、安定な球状の粒子を形成していることが確認された。電子顕微鏡で観察した結果、青顔料は粒径が40〜60nmの球形であった。
【0107】
(実施例6)
ジャパンエポキシレジン(JER)の商品名エピコート1031S[テトラキス(グリシジルオキシアリル)エタン]9.8g(50m等量、エポキシ等量196g)、4,4’−ビフェノール5.95g(35mmol)、65%酢酸エチルトリフェニルホスホニウムエタノール溶液0.21ml(0.1mol%)及びN,N−ジメチルアセトアミド40mlを、窒素雰囲気下、130℃で2時間反応させた。その後、4−フェニルフェノール2.79g(15mmol)をさらに加えて引き続き3時間反応させた。放冷後、水100ml中に滴下し、得られた沈殿物をメタノールで2回洗浄した後、70℃で減圧乾燥して、ビフェニレン型の側鎖にヒドロキシ基を有する変性エポキシ高分子化合物を16.5g得た。得られた高分子エポキシのGPC(東ソー株式会社製、HLC−8020)測定結果、分子量は5,100を示した。
【0108】
1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)測定結果、エポキシ環は4−フェニルフェノールより100%開環された。
【0109】
上記で得られたた側鎖にアルコール性ヒドロキシ基を有するビフェニレン型変性エポキシ高分子化合物13.7g、ピリジン30g(375mmol)及びクロロフォルム50mlの溶液に、p−トルエンスルフォン酸クロライド21.5g(113mmol)を含むクロロフォルム(50ml)溶液を、窒素雰囲気下、氷冷撹拌しながら30分間滴下した。滴下終了後、浴槽温度40℃でさらに4時間攪拌した。反応終了後、クロロフォルム100mlを加えて反応液を希釈した。引き続き、5%塩酸水溶液150ml、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、そして飽和食塩水溶液で順次に洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過、減圧濃縮した。得られた固形物をメタノールで数回洗浄した後、濾過、70℃で減圧乾燥して、変性エポキシ化合物を19.5g得た。
【0110】
1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)測定結果、側鎖ヒドロキシ基のp−トルエンスルホニル基への変性率は100%であった。
【0111】
上記で合成した側鎖にp−トルエンスルホニルオキシ基を有する変性エポキシ高分子化合物2.60g(5m等量)、2−メチルオキサゾリン8.50g(100mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド50mlを、窒素雰囲気下、100℃で24時間攪拌した。得られた反応混合物を酢酸エチル300mlを加え、室温で強力攪拌した後、生成物の固形物を濾過、酢酸エチルで2回洗浄、減圧乾燥して白色粉末固体10.8gを得た。重合時の収率は99%であった。1H−NMRによる分析から、得られた上記固体は、テトラキスフェニルエタン構造のエポキシ骨格を主鎖(δ:6.45〜7.90ppm)とし、ポリ(N−アセチルエチレンイミン)を側鎖[エチレン水素(δ:3.47ppm)、アセチル水素(δ:2.00ppm)]とすることが認められ、これと、反応物と生成物の定量的な計算とから、数平均重合度20のポリ(N−アセチルエチレンイミン)を側鎖として有する共重合体であると認められた。
【0112】
得られた共重合体を顔料分散剤として使用して実施例1と同様に顔料を分散させて分散性を観測した。いずれの顔料においても顔料は水中で良好な分散状態を示し、安定な球状の粒子を形成していることが確認された。電子顕微鏡で観察した結果、青顔料は粒径が60〜80nm、赤顔料は粒径が40〜60nm、黄顔料は粒径が90〜110nmの球形であった。
【0113】
(実施例7)
合成例6で得られたポリ(N−アセチルエチレンイミン)共重合体5.7gを、5規定塩酸水22.8g中、90℃で6時間攪拌し、加水分解反応を行った。放冷後、時間とともに生成してきた白色沈殿を含む反応混合溶液をアセトン約200mlに加え、室温で約30分間攪拌した後、生成物の固形物を濾過、アセトンで2回洗浄、減圧乾燥して白色固体4.9gを得た。その収率は99%であった。1H−NMRによる分析から、加水分解反応によりポリ(N−アセチルエチレンイミン)の側鎖アセチル水素(δ:2.00ppm)]がなく、得られた上記固体は、ポリエチレンイミン塩酸塩を側鎖として有する共重合体であると認められた。
【0114】
得られた共重合体を顔料分散剤として使用して実施例1と同様に青顔料を分散させて分散性を観測した。青顔料は水中で良好な分散状態を示し、安定な球状の粒子を形成していることが確認された。電子顕微鏡で観察した結果、青顔料は粒径が60〜80nmの球形であった。
【0115】
以上のとおり、本発明の顔料分散剤は、他の多くの添加剤を必要とせず、高度な機械的粉砕工程を経ることなく良好な分散状態を形成できることが明らかであった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂骨格を有する主鎖と、アルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位の少なくとも一種からなり、数平均重合度が5〜2000の範囲にある直鎖状ポリマー鎖を有する側鎖とを有する共重合体からなることを特徴とする顔料分散剤。
【請求項2】
前記共重合体が、式(1)
【化1】

(式(1)中、Xはキサンテン骨格を有する二価のフェノール残基、ビフェニレン残基及びビスフェノール残基から選ばれる二価の基であり、Yはアルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位の少なくとも一種からなる数平均重合度が5〜2000の範囲にある直鎖状ポリマー鎖を有する側鎖を表し、複数あるYは同一でも異なっていてもよい。)
で表される構造単位(a1)、
式(2)
【化2】

(式(2)中、Yはアルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位の少なくとも一種からなる数平均重合度が5〜2000の範囲にある直鎖状ポリマー鎖を有する側鎖を表し、複数あるYは同一でも異なっていてもよく、nは1〜3の整数である。)
で表される構造単位(a2)、
式(3)
【化3】

(式(3)中、Yはアルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位の少なくとも一種からなる数平均重合度が5〜2000の範囲にある直鎖状ポリマー鎖を有する側鎖を表し、複数あるYは同一でも異なっていてもよく、nは1〜3の整数である。)
で表される構造単位(a3)、
及び、式(4)
【化4】

(式(4)中、Zはフェニル基又はビフェニル基を表し、Yはアルキレンイミン構造単位又はN−アシルアルキレンイミン構造単位の少なくとも一種からなる数平均重合度が5〜2000の範囲にある直鎖状ポリマー鎖を有する側鎖を表し、複数あるYは同一でも異なっていてもよく、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表し、mは1〜3の整数である。)
で表される構造単位(a4)からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造単位と、
一価の芳香族ヒドロキシ化合物残基(b1)及び二価の芳香族ヒドロキシ化合物残基(b2)からなる群から選ばれる少なくとも一種とからなる共重合体である請求項1に記載の顔料分散剤。
【請求項3】
前記直鎖状ポリマー鎖が、エチレンイミン構造単位、プロピレンイミン構造単位、炭素数が1〜18のアシル基を有するN−アシルエチレンイミン単位、及び炭素数が1〜18のアシル基を有するN−アシルプロピレンイミン単位の少なくとも一種からなるものである請求項1又は2に記載の顔料分散剤。
【請求項4】
前記直鎖状ポリマー鎖が、式(5)、
【化5】

(式(5)中、pは2又は3であり、qは5〜2000の範囲である。)
式(6)、
【化6】

(式(6)中、Aは炭素数が1〜18のアシル基を表し、pは2又は3であり、qは5〜2000の範囲である。)
式(7)、
【化7】

(式(7)中、Aは炭素数が1〜18のアシル基を表し、p及びpは2又は3であり、q+qは5〜2000の範囲である。)
及び、式(8)
【化8】

(式(8)中、A、Aは炭素数が1〜18のアシル基を表し、各々異なるものであり、p及びpは2又は3であり、q+qは5〜2000の範囲である。)
から選ばれるものである請求項1〜3のいずれかに記載の顔料分散剤。
【請求項5】
前記式(1)中のXが、式(9)
【化9】

式(10)
【化10】

(式(9)及び式(10)中、B及びBは炭素原子、メチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されたメチレン基、フェニル基で置換されたメチレン基、ナフチル基で置換されたメチレン基、ビフェニル基で置換されたメチレン基、9−フルオレニル基で置換されたメチレン基、又は該フェニル基、該ナフチル基、若しくは該ビフェニル基上に更にアルキル基が芳香核置換したメチレン基を表し、R〜Rは炭素数1〜5のアルキル基を表し、m、m及びm、mは各々独立して0〜3の整数を表し、m及びmは各々独立して0〜2の整数を表す。)
で表されるキサンテン残基、
式(11)
【化11】

(式(11)中、R及びRは、炭素数1〜5のアルキル基を表し、m及びmは各々独立して0〜4の整数を表す。)
で表されるビフェノール残基、
式(12)
【化12】

(式(12)中、Bは−C(CH−、−CH(CH)−、−CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CH)(C)−または−SO−を表し、R10及びR11は炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子を表し、m10及びm11は各々独立して0〜4の整数を表す。)
で表されるビスフェノール残基、からなる群から選ばれる少なくとも一種の二価の基である請求項2〜4のいずれかに記載の顔料分散剤。
【請求項6】
前記一価の芳香族ヒドロキシ化合物残基(b1)が、置換基を有していてもよいビフェニルアルコール残基、ジフェニルアルコール残基、フェノール残基、ナフトール残基、アントラノール残基、ヒドロキシピレン残基、ヒドロキシアントラキノン残基、ヒドロキシベンズイミダゾル残基、ヒドロキシベンゾチアゾル残基、ヒドロキシカルバゾル残基、ヒドロキシジベンゾフラン残基、ヒドロキシインドル残基、ヒドロキシキノリン残基、ヒドロキシアクリジン残基、及びヒドロキシキノキサリン残基からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項2〜5のいずれかに記載の顔料分散剤。
【請求項7】
前記一価の芳香族ヒドロキシ化合物残基(b1)が、式(13)
【化13】

(式(13)中、R12及びR13は炭素数が1〜5のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホン酸基、アミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のジアルキルアミノ基、炭素数が1〜5のアルコキシ基、炭素数が1〜5のアルデヒド基のいずれかを表し、m12は1〜4、m13は1〜5の整数である。)
及び、式(14)
【化14】

(式(14)中、R14及びR15は炭素数が1〜5のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホン酸基、アミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のジアルキルアミノ基、炭素数が1〜5のアルコキシ基、又は炭素数が1〜5のアルデヒド基のいずれかを表し、Dは−S−、−O−、−CO−、−CH−、−C(CH−、−SO−、−N=N−、−CH=CH−、−C(C11)−、又は−COOCH−で表されるいずれかの構造であり、m14は1〜4、m15は1〜5の整数である。)
で表される一価の芳香族ヒドロキシ化合物残基から選ばれる少なくとも一種である請求項2〜5のいずれかに記載の顔料分散剤。
【請求項8】
前記二価の芳香族ヒドロキシ化合物残基(b2)が、置換基を有していてもよいビフェニルアルコール残基及びジフェニルアルコール残基の少なくとも一種である請求項2〜7のいずれかに記載の顔料分散剤。
【請求項9】
前記二価の芳香族ヒドロキシ化合物残基(b2)が、式(15)
【化15】

(式(15)中及びR16及びR17は炭素数が1〜5のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホン酸基、アミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のジアルキルアミノ基、炭素数が1〜5のアルコキシ基、又は炭素数が1〜5のアルデヒド基のいずれかを表し、m16及びm17は1〜4の整数である。)
及び、式(16)
【化16】

(式(16)中、R18及びR19は炭素数が1〜5のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホン酸基、アミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が1〜5のジアルキルアミノ基、炭素数が1〜5のアルコキシ基、又は炭素数が1〜5のアルデヒド基のいずれかを表し、Dは−S−、−O−、−CO−、−CH−、−C(CH−、−SO−、−N=N−、−CH=CH−、−C(C11)−、又は−COOCH−で表されるいずれかの構造であり、m18及びm19は1〜4の整数である。)
で表される二価の芳香族ヒドロキシ化合物残基から選ばれる少なくとも一種である請求項2〜7のいずれかに記載の顔料分散剤。
【請求項10】
一価の芳香族ヒドロキシ化合物残基(b1)と二価の芳香族ヒドロキシ化合物残基(b2)とのモル比(b1)/(b2)が、3.3〜30の範囲にある請求項2〜9のいずれかに記載の顔料分散剤。
【請求項11】
前記共重合体の平均分子量が2500〜50000の範囲にある請求項2〜10のいずれかに記載の顔料分散剤。

【公開番号】特開2007−56203(P2007−56203A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245812(P2005−245812)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】