説明

エポキシ化ノボラックを含む熱可塑性組成物

本開示は、熱可塑性ポリウレタン、難燃剤、及びエポキシ化ノボラック樹脂を含む組成物を提供する。難燃剤は、1種又はそれ以上の下記の難燃剤:メラミン含有化合物、窒素/リン系難燃剤、リン系難燃剤、金属含有難燃剤、及びそれらの組み合わせから選択することができる。組成物は、物品、例えば被覆ワイヤ又はケーブルの成分であることができ、組成物はコーティングに存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、難燃性熱可塑性組成物、具体的には難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な適用例が、難燃性熱可塑性組成物を必要とする。ワイヤ及びケーブル適用例では、熱可塑性組成物、例えば熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)組成物に難燃特性を与えるために、ハロゲン添加剤が用いられてきた。しかしながら、近年、ハロゲンに関する環境上及び健康上の懸念が、熱可塑性組成物の実行可能なハロゲンフリー代替物を見出す取り組みを後押ししている。しかしながら、公知のハロゲンフリー難燃剤は、熱可塑性物質の機械的特性及び物理的特性を低下させ、それらの適用範囲を制限している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ワイヤ及びケーブル適用例、具体的には可撓性ワイヤ/ケーブル適用例に適した特性を有するハロゲンフリー熱可塑性組成物が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、組成物を提供する。一実施形態において、熱可塑性ポリウレタン、難燃剤、及びエポキシ化ノボラック樹脂を含む組成物が提供される。難燃剤は、1種又はそれ以上の下記の難燃剤:メラミン含有化合物、窒素/リン系難燃剤、リン系難燃剤、金属含有難燃剤、及びそれらの組み合わせから選択することができる。さらなる実施形態において、組成物は、ハロゲンフリーである。
【0005】
本開示は、別の組成物を提供する。一実施形態において、熱可塑性ポリウレタン、極性オレフィン系ポリマー、難燃剤、及びエポキシ化ノボラック樹脂を含む組成物が提供される。
【0006】
一実施形態において、極性オレフィン系ポリマーは、エチレンビニルアセテートである。
【0007】
本開示は、物品を提供する。一実施形態において、組成物からなる少なくとも1つの成分を含む物品が提供される。組成物は、熱可塑性ポリウレタン、難燃剤、及びエポキシ化ノボラック樹脂を含む。
【0008】
一実施形態において、物品は、金属導体及び金属導体上のコーティングを含む。コーティングは、組成物を含有する。
【0009】
本開示の利点は、可撓性ワイヤ及び/又はケーブル適用例に適した可撓性を有するハロゲンフリーの難燃性組成物を提供することである。
【0010】
本開示の利点は、ワイヤ及び/又はケーブル適用例に適した引張強度を有するハロゲンフリー難燃性組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
元素周期表への言及はすべて、CRC Press,Inc.(2003)が刊行し著作権を有する元素周期表を指す。また、1つ又は複数の族への言及はすべて、族の番号付与のIUPAC系を用いてこの元素周期表に示された1つ又は複数の族となる。反対のことが述べられるか、文脈から暗示されるか、又は当分野において慣例であるのでないかぎり、すべての部及びパーセントは重量に基づき、すべての試験法は本開示の出願日現在のものである。米国特許実施のために、参照したいずれの特許、特許出願、又は刊行物の内容も、特に合成技法、生成物及びプロセスデザイン、ポリマー、触媒、定義(本開示に具体的に示されるいずれの定義にも矛盾しない範囲で)、並びに当分野における一般知識に関して、それらの全体を参照により組み入れる(又は、その等価の米国版を参照によりそのように組み入れる)。
【0012】
本開示において数値範囲は近似値であり、したがって別段の指示のないかぎり、範囲外の値を含む可能性がある。数値範囲は、任意の下方値と任意の上方値との間に少なくとも2単位の間隔があるならば、1単位の増分で、下方値及び上方値を含むすべての値を含む。例として、組成特性、物理的特性、又は他の特性、例えば分子量、メルトインデックスなどが100から1000である場合、すべての個々の値、例えば100、101、102など、及び部分範囲、例えば100から144、155から170、197から200などが明確に列挙されているものであることが意図される。1未満の値を含有するか、又は1を超える分数(例えば、1.1、1.5など)を含有する範囲の場合、1単位は適宜、0.0001、0.001、0.01、又は0.1とみなされる。10未満の1桁の数(例えば、1から5)を含有する範囲の場合、1単位は典型的に0.1とみなされる。これらは具体的に意図されるものの例に過ぎず、列挙される最小値と最大値との間の数値の可能なすべての組み合わせが本開示に明確に述べられているとみなされる。数値範囲は、特に組成物中のTPU、難燃剤、UV安定剤、及び他の様々な成分の量、並びにこれらの成分が定義される様々な特徴及び特性に関して、本開示内で提供される。
【0013】
化学化合物に関して、具体的に別段の指示のないかぎり、単数形はすべての異性体を含み、逆も同様である(例えば、「ヘキサン」は、個々又は集合的にヘキサンのすべての異性体を含む)。用語「化合物」及び「複合体」は、交換可能に用いられ、有機、無機、及び有機金属化合物を指す。用語「原子」は、イオン状態にかかわらず、すなわちそれが電荷若しくは部分電荷を有するか、又は別の原子に結合しているかにかかわらず、元素の最小構成成分を指す。用語「非晶質」は、示差走査熱量測定(DSC)又は同等の技法によって求められる結晶融点を欠くポリマーを指す。
【0014】
用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」、及びそれらの派生語は、それが具体的に開示されているかどうかにかかわらず、任意のさらなる成分、ステップ、又は手順の存在を排除することを意図しない。いかなる疑いも回避するため、用語「含む(comprising)」を用いて請求されるすべての組成物は、反対のことが述べられていないかぎり、ポリマーであるか別のものであるかにかかわらず、任意のさらなる添加剤、アジュバント、又は化合物を含むことができる。対照的に、用語「から本質的になる」は、実施可能性に必須でないものを除いて、任意の後続の詳述から任意の他の成分、ステップ、又は手順を排除する。用語「からなる」は、具体的に記述又は列挙されていない任意の成分、ステップ、又は手順を排除する。用語「又は」は、別段の記述のないかぎり、個々に並びに任意の組み合わせにおいて列挙された構成要素を指す。
【0015】
「組成物」及び同様の用語は、2種以上の成分の混合物又はブレンドを意味する。
【0016】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」、及び同様の用語は、2種以上のポリマーのブレンドを意味する。そのようなブレンドは、混和性であっても、混和性でなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離していても、相分離していなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子顕微鏡法、光散乱、x線散乱、及び当分野で公知の他の任意の方法によって決定される、1つ又はそれ以上のドメイン配置を含有していても、含有していなくてもよい。
【0017】
用語「ポリマー」は、同じであるか又は異なる型であるかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製された高分子化合物である。「ポリマー」には、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、インターポリマーなどが含まれる。用語「インターポリマー」は、少なくとも2つの型のモノマー又はコモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。これには、これらに限定されるものではないが、コポリマー(通常、2つの異なる型のモノマー又はコモノマーから調製されたポリマーを指す)、ターポリマー(通常、3つの異なる型のモノマー又はコモノマーから調製されたポリマーを指す)、テトラポリマー(通常、4つの異なる型のモノマー又はコモノマーから調製されたポリマーを指す)などが含まれる。
【0018】
本開示は、熱可塑性でハロゲンフリーであり、優れた絶縁特性、機械的特性、及び加工特性を示す難燃性組成物に関する。本組成物は、PVCに類似した、又は実質的に類似した機械的特性及び/又は加工特性を有する可能性がある。
【0019】
一実施形態において、組成物が提供される。組成物は、熱可塑性ポリウレタン、難燃剤、及びエポキシ化ノボラックポリマーを含む。
【0020】
本明細書では、「熱可塑性ポリウレタン」(又は「TPU」)は、ポリイソシアナート、1種又はそれ以上のポリマージオール、及び場合により1種又はそれ以上の二官能性鎖延長剤の反応生成物である。TPUは、プレポリマー、準プレポリマー(quasi-prepolymer)、又はワンショット法によって調製することができる。
【0021】
ポリイソシアナートは、ジイソシアナートであることができる。ジイソシアナートは、TPUにおいてハードセグメントを形成し、芳香族、脂肪族、及び脂環式ジイソシアナート、並びに2種以上のこれらの化合物の組み合わせであることができる。ジイソシアナート(OCN−R−NCO)から誘導された構造単位の非限定的な例は、下記の式(I)で表され、
【化1】

【0022】
式中、Rはアルキレン、シクロアルキレン、又はアリーレン基である。これらのジイソシアナートの代表的な例は、米国特許第4385133号、同第4522975号、及び同第5167899号に見出すことができる。適切なジイソシアナートの非限定的な例には、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、p−フェニレンジイソシアナート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、1,4−ジイソシアナト−シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアナート、1,5−ナフタレンジイソシアナート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジイソシアナート、4,4’−ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタン、2,4−トルエンジイソシアナート、及び4,4’−ジイソシアナト−ジフェニルメタンが含まれる。
【0023】
ポリマージオールは、結果として得られるTPUにおいてソフトセグメントを形成する。ポリマージオールは、200から10000g/モルの範囲の分子量(数平均)を有する。複数のポリマージオールを使用できる。適切なポリマージオールの非限定的な例には、ポリエーテルジオール(「ポリエーテルTPU」を生じる)、ポリエステルジオール(「ポリエステルTPU」を生じる)、ヒドロキシ末端ポリカルボナート(「ポリカルボナートTPU」を生じる)、ヒドロキシ末端ポリブタジエン、ヒドロキシ末端ポリブタジエン−アクリロニトリルコポリマー、ジアルキルシロキサンとアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシドのヒドロキシ末端コポリマー、天然油ジオール、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。1つ又はそれ以上の前述のポリマージオールは、アミン末端ポリエーテル及び/又はアミノ末端ポリブタジエン−アクリロニトリルコポリマーと混合することができる。
【0024】
二官能性鎖延長剤は、鎖中に2から10個の炭素原子を有する(両方の値を含む)脂肪族直鎖及び分岐鎖ジオールであり得る。そのようなジオールの例は、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなど、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノンビス−(ヒドロキシエチル)エーテル、シクロヘキシレンジオール(1,4−、1,3−、及び1,2−異性体)、イソプロピリデンビス(シクロヘキサノール)、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノールアミン、N−メチル−ジエタノールアミンなど、並びに上記のいずれかの混合物である。前述のとおり、一部の例では、二官能性延長剤の少量の割合(約20当量パーセント未満)を、結果として得られるTPUの熱可塑性を減じることなく、三官能性延長剤で置き換えることができ、そのような延長剤の例は、グリセロール、トリメチロールプロパンなどである。
【0025】
鎖延長剤は、特定の反応体成分の選択、ハードセグメント及びソフトセグメントの所望量、並びに良好な機械的特性、例えば弾性係数(modulus)及び引裂強度を提供するのに十分な指標によって決定される量でポリウレタンに混入される。本発明の実施において用いられるポリウレタン組成物は、2から25、好ましくは3から20、より好ましくは4から18重量%の鎖延長剤成分を含有することができる。
【0026】
場合により、分子量を制御するために、しばしば「連鎖停止剤」と称される、少量のモノヒドロキシル官能性又はモノアミノ官能性化合物を用いることができる。そのような連鎖停止剤の例は、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、及びヘキサノールである。用いられるとき、連鎖停止剤は典型的に、ポリウレタン組成物をもたらす全反応混合物の0.1から2重量パーセントの少量で存在する。
【0027】
ポリマージオールと前記延長剤の当量比は、TPU生成物の所望の硬度に応じてかなり多様であることができる。一般的には、当量比は、それぞれ約1:1から約1:20、好ましくは約1:2から約1:10の範囲内である。同時に、イソシアナート当量と活性水素含有材料の当量の全体比は、0.90:1から1.10:1、好ましくは0.95:1から1.05:1の範囲内である。
【0028】
本発明の実施に用いられるポリウレタンの特性を改変するために、添加剤を用いることができる。添加剤は、当分野及び文献ですでに公知である通常の量で包含させることができる。通常、添加剤はポリウレタンに特定の所望の特性を提供するために用いられ、例えば種々の抗酸化剤、紫外線阻害剤、ワックス、増粘剤、及び充填剤である。充填剤が用いられるとき、充填剤は有機又は無機であることができるが、一般的には無機であり、例えば粘土、タルク、炭酸カルシウム、シリカなどである。また、繊維質添加剤、例えばガラス又はカーボンファイバを加えて、ある種の特性を付与することができる。
【0029】
一実施形態において、TPUは、密度0.90g/cc以上、又は0.95g/cc以上、又は1.00g/cc以上を有する。別の実施形態において、TPUは、密度1.30g/cc以下、又は1.25g/cc以下、及び/又は1.20g/cc以下を有する。別の実施形態において、TPUは、密度0.90g/ccから1.30g/cc、又は0.95g/ccから1.25g/cc、又は1.00g/ccから1.20g/ccを有する。
【0030】
一実施形態において、TPUは、メルトインデックス0.1g/10分以上、又は0.5g/10分以上、又は1g/10分以上を有する(ASTM D−1238−04によって測定、190℃、8.7kg)。別の実施形態において、TPUは、メルトインデックス100g/10分以下、又は50g/10分以下、又は20g/10分以下を有する(ASTM D−1238−04、190℃、8.7kg)。別の実施形態において、TPUは、メルトインデックス0.1g/10分から100g/10分、又は0.5g/10分から50g/10分、又は1g/10分から20g/10分を有する。
【0031】
適切なTPUの非限定的な例には、Lubrizol Advanced Materialsから入手可能なPELLETHANE(商標)熱可塑性ポリウレタンエラストマー、すべてNoveonから入手可能なESTANE(商標)熱可塑性ポリウレタン、TECOFLEX(商標)熱可塑性ポリウレタン、CARBOTHANE(商標)熱可塑性ポリウレタン、TECOPHILIC(商標)熱可塑性ポリウレタン、TECOPLAST(商標)熱可塑性ポリウレタン、及びTECOTHANE熱可塑性ポリウレタン、BASFから入手可能なELASTOLLAN(商標)熱可塑性ポリウレタン及び他の熱可塑性ポリウレタン、並びにBayer、Huntsman、及びMerquinsaから入手可能な市販の熱可塑性ポリウレタンが含まれる。
【0032】
一実施形態において、組成物は、下限の量が約15重量%、又は約20重量%、又は約25重量%、又は約30重量%のTPU、及び上限の量が約60重量%、又は約50重量%、又は約40重量%のTPUを含有する。重量パーセントは、組成物の総重量に基づく。
【0033】
本組成物は、難燃剤を含む。難燃剤は、固体、液体、及びそれらの組み合わせであることができる。難燃剤は、メラミン含有化合物、窒素/リン系(N/P系)難燃剤、リン系難燃剤、膨脹性難燃剤、ホウ酸塩、金属含有難燃剤、及びそれらの任意の組み合わせを含むことができる。適切なメラミン含有化合物の非限定的な例には、メラミンシアヌル酸塩、メラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェート、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、並びにピペラジンピロホスフェートとメラミンピロホスフェートの混合物が含まれる。
【0034】
一実施形態において、難燃剤は、N/P系難燃剤を含む。適切なN/P系難燃剤の非限定的な例には、メラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェート、ピペラジンピロホスフェート、メラミンピロホスフェート、ホスホニトリル酸クロリド、リンエステルアミド、リン酸アミド、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド、アンモニウムポリホスフェート(APP)、ピペリジンポリホスフェート、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0035】
一実施形態において、難燃剤は、リン系難燃剤を含む。適切なリン系難燃剤の非限定的な例には、有機ホスホン酸、ホスホネート(ホスホン酸塩)、ホスフィネート(ホスフィン酸塩)、ホスホニット(phosphonite)、ホスフィニット(phosphinite)、ホスフィンオキシド、ホスフィン、亜リン酸塩(phosphite)、又はホスフェート、及び前述の任意の組み合わせが含まれる。適切なリン系難燃剤の非限定的な例には、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、リン酸水素フェニルエチレン、フェニル−ビス(3,5,5’−トリメチルヘキシルホスフェート)、エチルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、リン酸水素ジフェニル、ビス(2−エチル−ヘキシル)p−トリホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)−フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、リン酸水素フェニルメチル、ジ(ドデシル)p−トリルホスフェート、トリクレシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、及びリン酸水素ジフェニルが含まれる。リン系難燃剤は、固体、液体、及びそれらの組み合わせであることができる。
【0036】
一実施形態において、難燃剤は、トリフェニルホスフェート(TPP)、レゾルシノールジフェニルホスフェート(RDP)(液体)、ビスフェノールAポリホスフェート(BAPP)(液体)、ビスフェノールAジフェニルホスフェート(BPADP)、ビスフェノールAジホスフェート(BADP)、アンモニウムポリホスフェート(APP)、ピペリジンポリホスフェート、(2,6−ジメチルフェニル)1,3−フェニレンビスホスフェート、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0037】
一実施形態において、難燃剤は、金属含有難燃剤を含む。適切な金属含有難燃剤の非限定的な例には、金属水和物、例えば水酸化マグネシウム、アルミニウム三水和物(Al・HO;(ATH)、水酸化アルミニウムAl(OH)とも称される)、ハンタイト、ハイドロマグネサイト、三酸化アンチモン、水酸化カリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、及び/又は酸化マグネシウム、金属炭酸塩、例えば炭酸マグネシウム及び/又は炭酸カルシウム、バリウム及び/又はホウ酸塩系化合物、例えば硫酸バリウム、ホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、ホウ酸亜鉛、及び/又はメタホウ酸亜鉛、並びに他の難燃剤、例えば無水アルミニウム、二硫化モリブデン、粘土、ケイソウ土、カオリナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、タルク、シリカ(例えば、沈降シリカ及びケイ酸塩、ヒュームドシリカなど)、ホワイトカーボン、セライト、アスベスト、粉砕鉱物、及び/又はリトポンが含まれる。さらなる実施形態において、金属含有難燃剤は、単独で、又は前述の任意の難燃剤と組み合わせて難燃性を提供することができる。
【0038】
一実施形態において、難燃剤は、膨脹性難燃剤である。本明細書では、「膨脹性難燃剤」は、火炎暴露中にポリマー材料の表面に形成された発泡チャー(foamed char)を生じる難燃剤である。前述の任意の難燃剤の1種又は2種以上の組み合わせは、膨脹性難燃剤となる可能性がある。膨脹性難燃剤のさらなる非限定的な例は、Adeka Corporation、日本から入手可能なFP−2100J(N/P系難燃剤)である。
【0039】
一実施形態において、難燃剤は、ハロゲンフリーである。
【0040】
一実施形態において、組成物は、下限の量が約15重量%、又は約20重量%、又は約25重量%、又は約30重量%の難燃剤、及び上限の量が約60重量%、又は約50重量%、又は約40重量%の難燃剤を含有する。重量パーセントは、組成物の総重量に基づく。
【0041】
一実施形態において、難燃剤は、上に開示した2種以上の難燃剤のブレンドである。一実施形態において、難燃剤は、金属含有難燃剤とリン系難燃剤のブレンドである。別の実施形態において、難燃剤は、(i)約10重量%から約20重量%のピペラジンポリホスフェート及びメラミン誘導体(固体)、並びに(ii)約5重量%から約15重量%のビスフェノールAポリホスフェート(液体)のブレンドである。別の実施形態において、難燃剤は、N/P系難燃剤とリン系難燃剤のブレンドである。
【0042】
別の実施形態において、難燃剤は、金属含有難燃剤とポリホスフェート難燃剤のブレンドである。金属含有難燃剤は、上に開示した任意の金属含有難燃剤であることができる。適切なポリホスフェート難燃剤の非限定的な例には、ビスフェノールAポリホスフェート、アンモニウムポリホスフェート、メラミンポリホスフェート、ピペリジンポリホスフェート、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0043】
本組成物は、エポキシ化ノボラック樹脂を含む。本明細書では、「エポキシ化ノボラック樹脂」は、有機溶媒中のエピクロロヒドリンとフェノールノボラックポリマーの反応生成物である。適切な有機溶媒の非限定的な例には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、及びキシレンが含まれる。エポキシ化ノボラック樹脂は、液体、半固体、固体、及びそれらの組み合わせであることができる。エポキシ化ノボラック樹脂は、組成物においてチャー形成剤である。
【0044】
本明細書では、「エピクロロヒドリン」は、下記の構造(II)を有するクロロプロピレンオキシドである。
【化2】

【0045】
本明細書では、「フェノールノボラックポリマー」は、(a)1種又はそれ以上のフェノール化合物、並びに(b)アルデヒド及び/又はアセトンの反応によって生成されたポリマーである。
【0046】
適切なフェノールの非限定的な例には、フェノール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、アルキルフェノール、及び/又は他の任意のヒドロカルビル置換フェノールが含まれる。適切なアルデヒドの非限定的な例には、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、グルタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、及び/又はグリオキサルが含まれる。
【0047】
一実施形態において、フェノールノボラックポリマーは、構造(III)を有し、
【化3】

【0048】
式中、nは、1から1000の整数である。R、R、R、R、R、R、R、及びRは、同じであるか又は異なる。R〜Rはそれぞれ、水素、1から20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、及びヒドロキシル基から選択される。本明細書では、用語「ヒドロカルビル」及び「炭化水素」は、水素及び炭素原子のみを含有する置換基を指し、分岐又は非分岐、飽和又は不飽和、環式、多環式、又は非環式種、及びそれらの組み合わせが含まれる。ヒドロカルビル基の非限定的な例には、アルキル−、シクロアルキル−、アルケニル−、アルカジエニル−、シクロアルケニル−、シクロアルカジエニル−、アリール−、アラルキル−、アルキルアリール−、及びアルキニル−基が含まれる。
【0049】
一実施形態において、エポキシ化ノボラックは、下記の構造(IV)を有し、
【化4】

【0050】
式中、nは、1から約1000の整数である。
【0051】
一実施形態において、組成物は、下限約0.01重量%、又は約0.1重量%、又は約0.5重量%のエポキシ化ノボラック樹脂、及び上方量約20重量%、又は約10重量%、又は約8重量%のエポキシ化ノボラック樹脂を含有する。
【0052】
一実施形態において、組成物は、プラーク(plaque)に形成される。プラークは、ASTM D638に従って測定された引張強度約5.0MPaから約20.0MPaを有する。
【0053】
一実施形態において、プラークは、ASTM D638に従って測定された破断点引張伸び約100%から500%を有する。
【0054】
一実施形態において、組成物は、ハロゲンフリーである。
【0055】
一実施形態において、組成物は、UL−94燃焼試験に従って決定されたV−1又はより良好な等級を有する。
【0056】
本開示は、別の組成物を提供する。一実施形態において、TPU、極性オレフィン系ポリマー、難燃剤、及びエポキシ化ノボラック樹脂を含む組成物が提供される。TPU、難燃剤、及びエポキシ化ノボラック樹脂は、それぞれ本明細書に開示された任意のTPU、難燃剤、及びエポキシ化ノボラック樹脂であることができる。
【0057】
本明細書では、「オレフィン系ポリマー」は、重合形態において、ポリマーの総重量に対して大部分を占める重量パーセントのオレフィン、例えばエチレン又はプロピレンを含有するポリマーである。オレフィン系ポリマーの非限定的な例には、エチレン系ポリマー及びプロピレン系ポリマーが含まれる。「極性オレフィン系ポリマー」は、1つ又はそれ以上の極性基(極性官能基と称されることがある)を含有するオレフィン系ポリマーである。本明細書では、「極性基」は、他の状態では本質的に非極性のオレフィン分子に結合双極子モーメントを付与する任意の基である。代表的な極性基には、カルボニル、カルボン酸基、無水カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、スルホニル基、ニトリル基、アミド基、シラン基などが含まれ、これらの基は、グラフト又は共重合によってオレフィン系ポリマーに導入することができる。
【0058】
極性オレフィン系ポリマーの非限定的な例には、エチレン/アクリル酸(EAA)、エチレン/メタクリル酸(EMA)、エチレン/アクリラート又はメタクリラート、エチレン/ビニルアセテート(EVA)、ポリ(エチレン−コ−ビニルトリメトキシシラン)コポリマー、無水マレイン酸−又はシラン−グラフト化オレフィンポリマー、ポリ(テトラフルオロエチレン−alt−エチレン)(ETFE)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロ−プロピレン)(FEP)、ポリ(エチレン−コ−テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)(EFEP)、ポリ(ビニリデンフルオリド)(PVDF)、ポリ(ビニルフルオリド)(PVF)などが含まれる。好ましい極性オレフィンポリマーには、DuPont ELVAX(商標)エチレンビニルアセテート(EVA)樹脂、The Dow Chemical CompanyのAMPLIFY(商標)エチレンエチルアクリラート(EEA)コポリマー、The Dow Chemical CompanyのPRIMACOR(商標)エチレン/アクリル酸コポリマー、及びThe Dow Chemical CompanyのSI−LINK(商標)ポリ(エチレン−コ−ビニルトリメトキシシランコポリマー)が含まれる。
【0059】
一実施形態において、極性オレフィン系ポリマーは、エチレンビニルアセテート(EVA)である。EVAは、EVAの重量に対して、約3重量%から約45重量%のビニルアセテート含量を有する。EVAは、連続相(又はマトリクス)又はTPUとの共連続相を形成することができる。難燃剤及びエポキシノボラック樹脂は、連続相及び/又は共連続相にわたって分散される。
【0060】
一実施形態において、組成物は、下限の量が1重量%、又は約10重量%、又は約20重量%、又は約30重量%のEVA、及び上限の量が約50重量%、又は約40重量%、又は約30重量%のEVAを含有する。さらなる実施形態において、組成物は、約20重量%から約25重量%のEVAを含む。重量パーセントは、組成物の総重量に基づく。
【0061】
一実施形態において、組成物は、約30重量%から約50重量%のTPU、約5重量%から約25重量%のエチレンビニルアセテート、約15重量%から約65重量%の難燃剤、及び約0.1重量%から約8重量%のエポキシノボラック樹脂を含む。
【0062】
一実施形態において、組成物は、プラークに形成される。プラークは、ASTM D638に従って測定された引張強度約5.0MPaから約20.0MPaを有する。
【0063】
一実施形態において、プラークは、ASTM D638に従って測定された破断点引張伸び約100%から約500%を有する。
【0064】
一実施形態において、組成物は、ハロゲンフリーである。
【0065】
一実施形態において、組成物は、UL−94燃焼試験に従って決定されたV−1又はより良好な等級を有する。
【0066】
前述のいずれの組成物も、1種又はそれ以上の下記の添加剤:抗ドリップ剤(anti-drip agent)、ヒンダードアミン光安定剤(少なくとも1つの第2級又は第3級アミン基を有する)(「HALS」)、紫外線吸収剤(例えば、o−ヒドロキシフェニルトリアジン)、抗酸化剤、硬化剤、共架橋剤、増進剤(booster)又は遅延剤、加工助剤、充填剤、カップリング剤、帯電防止剤、核形成剤、スリップ剤、可塑剤、潤滑剤、粘度調整剤、粘着剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、伸展油、酸捕捉剤、金属不活性化剤、及びそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0067】
一実施形態において、本組成物は、抗ドリップ剤を含む。抗ドリップ剤は、組成物が火炎に暴露されたとき、ドリップするのを防ぐ。抗ドリップ剤は、当分野で公知の任意のハロゲンフリー抗ドリップ剤であることができる。適切な抗ドリップ剤の非限定的な例には、フッ素樹脂、例えばポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリビニリデンフルオリド、又はテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、及びエチレン/テトラフルオロエチレンコポリマー、テフロン(登録商標)−グラフトスチレン−アクリロニトリルコポリマー(T−SAN)、フッ素化ポリオレフィン、リチウムナトリウム、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホナート又は1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホナートのカリウム又はセシウム塩が含まれる。適切な抗ドリップ剤のさらなる非限定的な例には、シリコーン樹脂、シリコーン油、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、次リン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸、トリリン酸、フルオロリン酸、ジフルオロリン酸、フルオロ亜リン酸、ジフルオロ亜リン酸、フルオロ次亜リン酸、及びフルオロ次リン酸が含まれる。抗ドリップ剤は、1種又はそれ以上の前述のいずれかの抗ドリップ剤であることができる。一実施形態において、抗ドリップ剤は、ハロゲンフリーである。
【0068】
一実施形態において、本組成物は、HALSを含む。適切なHALSの非限定的な例には、TINUVIN(登録商標)770(ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバカート)、TINUVIN(登録商標)144(ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−2−n−ブチル−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロナート、及びSANDUVOR(登録商標)PR−31(プロパン二酸、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル)が含まれる。
【0069】
一実施形態において、本組成物は、抗酸化剤を含む。適切な抗酸化剤の非限定的な例には、ヒンダードフェノール、例えばテトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ−シンナマート)]メタン、ビス[(β−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メチルカルボキシエチル)スルフィド、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、及びチオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナマート、亜リン酸塩及びホスホニット、例えばトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)亜リン酸塩及びジ−tert−ブチルフェニル−ホスホニット、チオ化合物、例えばジラウリルチオジプロピオナート、ジミリスチルチオジプロピオナート、及びジステアリルチオジプロピオナート、種々のシロキサン、重合2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、n,n’−ビス(1,4−ジメチルペンチル−p−フェニレンジアミン)、アルキル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、混合ジ−アリール−p−フェニレンジアミン、及び他のヒンダードアミン劣化防止剤又は安定剤が含まれる。抗酸化剤は、組成物の重量に対して、0.1から5重量%の量で用いることができる。
【0070】
一実施形態において、本組成物は、加工助剤を含む。適切な加工助剤の非限定的な例には、カルボン酸の金属塩、例えばステアリン酸亜鉛又はステアリン酸カルシウム、脂肪酸、例えばステアリン酸、オレイン酸、又はエルカ酸、脂肪酸アミド、例えばステアラミド、オレアミド、エルカミド、又はN,N’−エチレンビス−ステアラミド、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、エチレンオキシドのポリマー、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー、植物ワックス、石油ワックス、非イオン界面活性剤、及びポリシロキサンが含まれる。加工助剤は、組成物の重量に対して、0.05から5重量%の量で用いることができる。
【0071】
一実施形態において、組成物は、ドリップフリーである。本明細書では、「ドリップフリー組成物」は、熱又は火炎に暴露されたとき、組成物の下方にある綿を発火させる溶融粒子の垂直滴下物を生じない組成物である。
【0072】
本組成物は、本明細書に開示された2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0073】
本開示は、物品を提供する。一実施形態において、本組成物を含む成分を含む物品が提供される。具体的には、物品は、TPU、難燃剤、エポキシ化ノボラック樹脂、及び場合により極性オレフィン系ポリマーを含む組成物からなる成分を含む。
【0074】
一実施形態において、物品は、金属導体及び金属導体上のコーティングを含む。これは被覆金属導体を形成する。本明細書では、「金属導体」は、少なくとも1つの金属ワイヤ及び/又は少なくとも1つの金属ケーブルである。被覆金属導体は、可撓性、半剛性、又は剛性であることができる。
【0075】
コーティング(「ジャケット」又は「シース(sheath)」とも称される)は、金属導体上にある。コーティングは、組成物を含む。組成物は、本明細書に開示された任意の組成物であることができる。本明細書では、「上(on)」は、コーティングと金属導体の間の直接接触又は間接接触を含む。「直接接触」は、コーティングと金属導体の間に位置する介在層及び/又は介在材料がなく、コーティングが直接金属導体に接触する配置である。「間接接触」は、金属導体とコーティングの間に介在層及び/又は介在材料が位置する配置である。コーティングは、全体的又は部分的に、金属導体を覆うか、又は別の方法で囲むか、若しくは包むことができる。コーティングは、金属導体を囲む単一の成分であることができる。あるいは、コーティングは、金属導体を包む多層ジャケット又はシースの1層であることができる。
【0076】
一実施形態において、物品は、被覆金属導体である。適切な被覆金属導体の非限定的な例には、可撓性ワイヤ、例えば家庭用電化製品の可撓性配線、電源コード/ケーブル、携帯電話の充電器ワイヤ、コンピュータコード、例えばコンピュータ充電器ワイヤ、コンピュータデータコード、及び付属コード、例えば電子付属コードが含まれる。
【0077】
一実施形態において、被覆金属導体は、UL−1581の1080法に従って決定されたVW−1等級を有する。
【0078】
物品は、本明細書に開示された2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0079】
組成物及び物品の非限定的な実施形態を以下に示す。
【0080】
配合
【0081】
本組成物は、個々の成分を配合することによって調製できる。適切な配合装置の非限定的な例には、インターナルバッチ式ミキサ、例えばBanbury(商標)又はBolling(商標)インターナルミキサが含まれる。あるいは、連続式1軸又は2軸スクリュミキサを用いることができ、例えばFarrel(商標)連続式ミキサ、Werner and Pfleiderer(商標)2軸スクリュミキサ、又はBuss(商標)混練連続式押出機である。用いられるミキサの型及びミキサの作動条件は、組成物の特性、例えば粘度、体積抵抗率、及び押出表面の平滑性などに影響を及ぼす。
【0082】
本明細書に開示された組成物を含む物品、例えば絶縁層及び/又はジャケットを含有するワイヤ又はケーブル(すなわち、被覆金属導体)は、様々な型の押出機、例えば1軸又は2軸スクリュ型を用いて調製できる。通常の押出機の説明は、米国特許第4857600号に見出すことができる。共押出の例及び押出機はしたがって、米国特許第5575965号に見出すことができる。典型的な押出機は、その上流端にホッパーを有し、下流端にダイを有する。ホッパーはバレルに材料を供給し、バレルはスクリュを含有する。下流端において、スクリュの末端とダイの間に、スクリーンパック及びブレーカプレートが存在する。押出機のスクリュ部分は、3つの部、供給部、圧縮部、及び計量部、並びに2つの帯域、後部加熱帯及び前部加熱帯に分割されていると考えられ、これらの部及び帯域は上流から下流に延びる。別法では、上流から下流に延びる軸に沿って、複数の加熱帯(2つを超える)が存在できる。押出機が複数のバレルを有する場合、バレルは直列に連結される。各バレルの長さと直径の比は、約15:1から約30:1の範囲である。ポリマー絶縁体が押出後に架橋されるワイヤコーティングでは、ケーブルは多くの場合、押出ダイ下流の加熱加硫帯に直ちに送られる。加熱硬化帯は、約200℃から約350℃の範囲、好ましくは約170℃から約250℃の範囲の温度に維持することができる。加熱帯は、加圧蒸気によって、又は誘導的に加熱された加圧窒素ガスによって加熱することができる。
【0083】
本開示のワイヤ及びケーブル構造物(すなわち、被覆金属導体)は、本組成物を絶縁導体束上に押出し、絶縁導体の周囲にコーティング(又はジャケット)を形成することによって製造される。ジャケットの厚さは、所望の最終用途の要件によって決まる。典型的なジャケットの厚さは、約0.010インチから約0.200インチ、より典型的には約0.020インチから約0.050インチである。本組成物は、事前に製造された組成物からジャケットに押出すことができる。通常、本組成物は、押出機に容易に供給するために、ペレットの形態である。ワイヤ及びケーブルジャケットは、本組成物をペレット化する別個のステップを経ることなく、配合押出機から直接押出すことができる。このワンステップ配合/押出プロセスは、組成物の1つの熱履歴ステップを排除するであろう。
【0084】
組成物及び物品の非限定的な実施形態を以下に示す。
【0085】
一実施形態において、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、難燃剤、及びエポキシ化ノボラック樹脂を含む組成物が提供される。
【0086】
一実施形態において、組成物は、約15重量%から約60重量%のTPU、約15重量%から約60重量%の難燃剤、及び約0.01重量%から約20重量%のエポキシ化ノボラック樹脂を含む。
【0087】
一実施形態において、組成物の難燃剤は、メラミン含有化合物、窒素/リン系難燃剤、リン系難燃剤、金属含有難燃剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0088】
一実施形態において、難燃剤は、金属含有難燃剤とリン系難燃剤のブレンド、窒素/リン系難燃剤とリン系難燃剤のブレンド、及び金属含有難燃剤とポリホスフェート難燃剤のブレンドからなる群から選択される。
【0089】
一実施形態において、組成物は、抗ドリップ剤、抗酸化剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された成分を含む。
【0090】
一実施形態において、組成物は、ASTM D638に従って測定された引張強度約5.0MPaから約20.0MPaを有するプラークである。
【0091】
一実施形態において、組成物は、ASTM D638に従って測定された破断点引張伸び約100%から500%を有するプラークである。
【0092】
一実施形態において、組成物は、ハロゲンフリーである。
【0093】
一実施形態において、組成物は、UL−94燃焼試験に従って決定されたV−1又はより良好な等級を有する。
【0094】
本開示は、別の組成物を提供する。一実施形態において、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、極性オレフィン系ポリマー、難燃剤、及びエポキシ化ノボラック樹脂を含む組成物が提供される。
【0095】
一実施形態において、組成物は、約30重量%から約50重量%のTPU、約5重量%から約25重量%のエチレンビニルアセテート、約25重量%から約65重量%の難燃剤、及び約0.1重量%から約5重量%のエポキシノボラック樹脂を含む。
【0096】
一実施形態において、組成物は、抗ドリップ剤、抗酸化剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された成分を含む。
【0097】
一実施形態において、組成物は、ASTM D638に従って測定された引張強度約5.0MPaから約20.0MPaを有するプラークである。
【0098】
一実施形態において、組成物は、ハロゲンフリーである。
【0099】
一実施形態において、組成物は、UL−94燃焼試験に従って決定されたV−1又はより良好な等級を有する。
【0100】
本開示は、物品を提供する。一実施形態において、物品は、熱可塑性ポリウレタン、難燃剤、及びエポキシ化ノボラック樹脂を含む組成物からなる少なくとも1つの成分を含む。
【0101】
一実施形態において、物品の組成物は、極性オレフィン系ポリマーを含む。
【0102】
一実施形態において、物品は、金属導体及び金属導体上のコーティングを含み、コーティングは、組成物を含む。
【0103】
一実施形態において、物品は、被覆金属導体であり、被覆金属導体は、可撓性ワイヤ、携帯電話の充電器ワイヤ、電源コード、コンピュータコード、電源コード、付属コード、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0104】
一実施形態において、物品は、被覆金属導体であり、UL−1581の1080法に従って決定されたVW−1等級を有する。
【0105】
試験法
【0106】
破断点引張伸びは、ASTM D638に従って測定する。引張伸びは、方法としてASTM D638を用い、クロスヘッド速度を50mm/分に設定することによって測定し、伸び率%は、初期ゲージ長25mmを有する伸び計を用いて測定して破断点までの歪みを測定し、引張特性は、荷重及び試験片断面積を用いて標準的な計算によって算出する。
【0107】
破断点引張強度は、ASTM D638に従って測定する。
【0108】
2%割線弾性係数は、ASTM D638に従って測定する。割線弾性係数に関しては、初期顎間隔58mm(2.25インチ)を用い。試験速度50mm/分(2.0ipm)で約100%/分の試験片歪み速度を得る。1%割線弾性係数データは、方法としてASTM D638を用い、歪み1%でのクロスヘッド変位法を用いて決定する(0.01分=0.6秒たわみ)。
【0109】
UL−94は、装置及び器具部品のプラスチック材料の燃焼性(Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances)に関するUnderwriters’ Laboratory(UL)Bulletin94試験である。試験材料は、以下の場合、UL94 V−0に分類される。
−5つの試験片がいずれも、バーナーの炎を除去したとき、いずれの時点でも10秒を超えて燃焼しない。
−10回の発火試験の総燃焼時間が50秒を超えない。
−いずれの試験片も、クランプまで炎又は残じん(afterglow)を伴って燃焼しない。
−いずれの試験片からも、下方の綿を発火させる燃焼滴下物が落下してはならない。
−いずれの試験片の残じん燃焼も30秒を超えない。
材料は、以下の場合、UL94 V−1に分類される。
−5つの試験片がいずれも、バーナーの炎を除去したとき、いずれの時点でも30秒を超えて燃焼しない。
−10回の発火試験の総燃焼時間が250秒を超えない。
−いずれの試験片も、クランプまで炎又は残じんを伴って燃焼しない。
−いずれの試験片からも、下方の綿を発火させる燃焼滴下物が落下してはならない。
−いずれの試験片の残じん燃焼も60秒を超えない。
材料は、以下の場合、UL94 V−2に分類される。
−5つの試験片がいずれも、バーナーの炎を除去したとき、いずれの時点でも30秒を超えて燃焼しない。
−10回の発火試験の総燃焼時間が250秒を超えない。
−いずれの試験片も、クランプまで炎又は残じんを伴って燃焼しない。
−瞬間的にのみ燃焼し、その一部が下方の綿を発火させるような燃焼片にかぎり、試験片から落下してもよい。
−いずれの試験片の残じん燃焼も60秒を超えない。
【0110】
VW−1は、ワイヤ及びスリーブ(sleeving)に関するUnderwriters’ Laboratory(UL)燃焼等級である。これは「垂直ワイヤ、クラス1(Vertical Wire, Class1)」を意味し、UL 1441規格下でワイヤ又はスリーブに付与され得る最高の燃焼等級である。この試験は、ワイヤ又はスリーブを垂直位に配置して行う。火炎を一定時間その下に置き、その後、除去する。次いで、スリーブの特徴を書き留める。VW−1燃焼試験は、UL−1581の1080法に従って求める。
【0111】
例として、非限定的に本開示の実施例を示す。
【実施例】
【0112】
【表1】

【0113】
表1に示した組成物を、実験用Brabender(ローブ(lobed)バッチ型)ミキサで調製し、押出特性及び主要な特性に関して評価する。以下のステップを材料の調製及び評価に用いる。
【0114】
実験用バッチ式ミキサの加熱器の設定は190℃であり、ミキサをこの温度に予め加熱した。
【0115】
ミキサのロータ速度10RPMで、すべてのTPU(及び任意のEVA樹脂)を添加し、難燃剤(FR)を添加して、ミキシングボウル全体を適切に満たす。これらの材料を加熱しながら、残りの粉末FRを混合物に添加する。次いで、液体ホスフェート及びエポキシ化ノボラックを徐々にスプーンでミキサに入れる。次いで、Irganox1010及びIrgafos168添加剤を加える。
【0116】
すべての原材料を溶融物に混入した後、ミキサのロータ速度を45RPMに上げ、バッチを8分間から18分間混合する。
【0117】
粘着性の溶融物バッチの除去を容易にするために、ミキサ温度を125℃に再設定し、ロータ速度を5RPMに下げて、バッチを冷却する。冷却されるにつれて、バッチは固化し、ミキサ本体の典型的な分解及び除去によってバッチを取り出す。
【0118】
圧縮成形プラークを、溶融を促進するために低圧サイクルを用い、その後、1.4×200×200mmプラーク(0.075インチ×8.0インチ×8.0インチ)のプラークを成形するために高圧サイクルを用いて、成形温度185℃で調製し、次いで、成形型を高圧(15MPa)に保持し、8分間かけて室温に冷却して、プラークを固化する。次いで、ASTM D−638 IV型引張試験棒を、アーバープレス(arbor press)のドッグボーンカッターを用いて、このプラークから打ち抜く。
【0119】
下記の表2の実施例1及び2は、比較サンプル1と比較して、難燃性能の劇的な改善を示す。実施例1及び2は、燃焼中ドリップを示さない。実施例1及び2はまた、可撓性ワイヤ及びケーブル適用例に適した良好な引張性能を示す。
【表2】

【0120】
下記の表3は、TPUの抗ドリップ添加剤としてのエポキシ化ノボラックの別の例を示す。難燃剤パッケージは、液体ホスフェート、例えばRDP、固体N/P系難燃剤、例えばFP2100J、及びメラミンシアヌル酸塩を含む。比較サンプル2は、SANグラフト化PTFEである、0.5重量%の抗ドリップ添加剤ADP−01を含有する。比較サンプル2は、ドリップ試験に不合格である。実施例3は、2重量%のエポキシ化ノボラック樹脂を含む比較実施例2である。実施例3のすべての試験片は、優れたチャー形成性能を示し、ドリップを示さない。実施例3の5つの試験片のうち3つは、ドリップ試験に合格する。
【表3】

【0121】
表4は、TPU組成物の抗ドリップ添加剤としてのエポキシ化ノボラックの別の例を示す。比較サンプル3は、エポキシ化ノボラックを含有せず、VW−1試験とドリップ試験の両方に不合格である。実施例4は比較サンプル3に類似しているが、2重量%のエポキシ化ノボラックを含有する。実施例4は、強化されたチャーを示し、ドリップせず、ドリップ試験に合格する。これにより実施例4は厳密なVW−1試験に合格可能となる。
【表4】

【0122】
本開示は、本明細書に含有される実施形態及び例示に限定されるものでなく、以下の特許請求の範囲内である、実施形態の一部及び異なる実施形態の要素の組み合わせを含むこれらの実施形態の改変形態も包含することが特に意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)、
難燃剤、及び
エポキシ化ノボラック樹脂を含む組成物。
【請求項2】
約15重量%から約60重量%の前記TPU、約15重量%から約60重量%の前記難燃剤、及び約0.01重量%から約20重量%の前記エポキシ化ノボラック樹脂を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記難燃剤が、メラミン含有化合物、窒素/リン系難燃剤、リン系難燃剤、金属含有難燃剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1及び2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
前記難燃剤が、金属含有難燃剤とリン系難燃剤のブレンド、窒素/リン系難燃剤とリン系難燃剤のブレンド、及び金属含有難燃剤とポリホスフェート難燃剤のブレンドからなる群から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)、
極性オレフィン系ポリマー、
難燃剤、及び
エポキシ化ノボラック樹脂を含む組成物。
【請求項6】
約30重量%から約50重量%のTPU、
約5重量%から約25重量%のエチレンビニルアセテート、
約15重量%から約65重量%の難燃剤、及び
約0.1重量%から約5重量%のエポキシノボラック樹脂を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
熱可塑性ポリウレタン、難燃剤、及びエポキシ化ノボラック樹脂を含む組成物からなる少なくとも1つの成分を含む物品。
【請求項8】
前記組成物が、極性オレフィン系ポリマーを含む、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
金属導体及び前記金属導体上のコーティングを含み、前記コーティングが前記組成物を含む、請求項7及び8のいずれかに記載の物品。
【請求項10】
前記コーティングされた金属導体が、UL−1581の1080法に従って決定されたVW−1等級を有する、請求項7から9のいずれかに記載の物品。

【公表番号】特表2012−530815(P2012−530815A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516474(P2012−516474)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/CN2009/072480
【国際公開番号】WO2010/148574
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】