説明

エポキシ化合物の脱酸素によるアルケンの製造方法

【課題】エポキシ化合物を脱酸素して対応するアルケンを製造するアルケンの製造方法であって、温和な条件下で、優れた収率で目的化合物を製造することができるアルケンの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のアルケンの製造方法は、担体表面に金ナノ粒子を固定化して得られる表面金固定化触媒及び水の存在下、一酸化炭素雰囲気下で、エポキシ化合物を脱酸素して対応するアルケンを製造することを特徴とする。担体としては、ハイドロタルサイトを使用することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温和な条件下でエポキシ化合物を脱酸素して、対応するアルケンを高収率で得ることができるアルケンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ化合物のアルケンへの脱酸素反応は、有機合成の分野や生化学の分野で非常に重要な反応である。エポキシ化合物のアルケンへの脱酸素反応について、様々な試薬を使用した量論反応の開発は進んでいるが(非特許文献1、2等)、触媒反応については、有害な還元剤を使用する必要がある点、反応が空気や湿度により影響を受けやすい点、触媒活性が低い点などの問題が残されていた(非特許文献3、4等)。
【0003】
すなわち、エポキシ化合物の脱酸素反応によりアルケンを製造する方法であって、温和な条件下で、効率よく製造することができ、操作性及び作業性に優れるアルケンの製造方法が未だ見出されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Atagi, L. M.; Over, D. E.; McAlister, D. R.; Mayer, J. M. J. Am. Chem. Soc. 1991, 113, 870
【非特許文献2】RajanBabu, T. V.; Nugent, W. A. J. Am. Chem. Soc. 1994, 116, 986
【非特許文献3】Gable, K. P.; Brown, E. C.; J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 11018
【非特許文献4】Gable, K. P.; Brown, E. C. Synlett 2003, 14, 2243
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、エポキシ化合物を脱酸素して対応するアルケンを製造することを特徴とするアルケンの製造方法であって、温和な条件下で、優れた収率で目的化合物を製造することができるアルケンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、金ナノ粒子を担体に担持させて得られた表面金固定化触媒の存在下、一酸化炭素と水を還元剤として使用することにより、温和な条件下でエポキシ化合物を脱酸素して、優れた収率で対応するアルケンを得ることができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、担体表面に金ナノ粒子を固定化して得られる表面金固定化触媒及び水の存在下、一酸化炭素雰囲気下で、エポキシ化合物を脱酸素して対応するアルケンを製造することを特徴とするアルケンの製造方法を提供する。
【0008】
前記担体としては、ハイドロタルサイトが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るアルケンの製造方法は、エポキシ化合物の脱酸素反応において、触媒として金ナノ粒子を特定の担体に担持させて得られた表面金固定化触媒を使用し、還元剤として水と一酸化炭素を組み合わせて使用する。前記触媒は優れた反応促進作用を発揮し、温和な条件下でも、極めて高い収率で目的とするアルケンを選択的に製造することができる。また、本発明においては有機溶媒の代わりに水を使用するため、コストを削減することができ、爆発性、引火性、毒性等、有機溶媒を取り扱う際の問題点を解消することができる。更に、水は熱容量が大きいため、反応温度の調節が容易であり、水に不溶性の生成物の回収が容易である。更に、本発明に係るアルケンの製造方法においては、二酸化炭素が副生するが、二酸化炭素は容易に取り除くことができるため、目的とするアルケンの精製が容易である。本発明に係るアルケンの製造方法によれば、有害な試薬を使用する必要がなく、また、有害物質を副生することなく、目的化合物を効率よく得ることができるため、環境に優しい方法により、有用なアルケンを効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[表面金固定化触媒]
本発明で用いる表面金固定化触媒は、担体表面に金ナノ粒子を固定化して得られる。前記担体としては、例えば、ハイドロタルサイト、アルミナ(Al23)、マグネシア(MgO)、チタニア(TiO2)等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、ハイドロタルサイト、アルミナ(Al23)、マグネシア(MgO)等の塩基性化合物からなる担体が好ましい。また、チタニア(TiO2)、シリカ(SiO2)、活性炭(C)等の非塩基性化合物からなる担体は、塩基(例えば、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)等)を反応系に添加することにより、本発明における担体として使用することができる。
【0011】
本発明においては、なかでも、目的化合物を極めて高い収率で得られる点で、ハイドロタルサイトが好ましい。従って、本発明における表面金固定化触媒としては、ハイドロタルサイト表面に金ナノ粒子が固定されたハイドロタルサイト固定化金ナノ粒子触媒(以下、「Au/HT」と称する場合がある)が好ましい。
【0012】
上記ハイドロタルサイトとしては、特に制限されることはなく、天然に産出されたハイドロタルサイトを使用してもよく、また、合成ハイドロタルサイト又は合成ハイドロタルサイト様化合物を使用してもよい。
【0013】
上記ハイドロタルサイトは、例えば、下記式(1)
II8-XIIIX(OH)16A・nH2O (1)
(式中、MIIは、Mg2+、Fe2+、Zn2+、Ca2+、Li2+、Ni2+、Co2+、Cu2+、Mn2+から選択された少なくとも1種の二価の金属であり、MIIIはAl3+、Fe3+、Mn3+、Ru3+から選択された少なくとも1種の三価の金属である。xは1〜7の整数を示す。Aは二価のアニオンを示し、nは0〜30の整数を示す)
又は、下記式(2)
[Mg2+1-yAl3+y(OH)2]y+[(Ds-y/s・mH2O]y- (2)
(式中、yは0.20≦y≦0.33を満たす数を示し、Ds-はs価のアニオンを示す。mは0〜30の整数を示す)
で表される。本発明におけるハイドロタルサイトとしては、なかでも、目的化合物を極めて高い収率で得られる点で、上記式(1)においてMIIがMg2+、MIIIがAl3+、AがCO32-であるものが好ましく、特に、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oで表されるハイドロタルサイトを好適に使用することができる。
【0014】
本発明におけるハイドロタルサイトとしては、商品名「Tomita AD-500」(富田製薬(株)製)等の市販品を使用してもよい。
【0015】
担体の表面に金ナノ粒子を固定化する方法としては、特に制限されることがなく、例えば、塩化金(AuCl3)、塩化金酸(HAuCl4)等の金化合物とハイドロタルサイト等の担体とを溶媒中で混合し、撹拌することによりハイドロタルサイト等の担体表面に金イオンを固定化した後、該金イオンを適宜な方法により還元することにより行う方法等を挙げることができる。
【0016】
前記溶媒としては、使用する金化合物を溶解することができればよく、例えば、水、アセトン、アルコール類等を挙げることができる。金ナノ粒子の固定化処理を行う際の金化合物の溶液中の濃度としては、特に制限されることがなく、例えば、0.1〜100mMの範囲から適宜選択することができる。撹拌時の温度は、例えば、20〜80℃の範囲から選択することができるが、通常室温(25℃)で行われる。撹拌時間は撹拌時の温度によっても異なるが、例えば、6〜24時間、好ましくは、8〜12時間程度である。撹拌終了後は、必要に応じて水や有機溶媒等で洗浄し、真空乾燥などにより乾燥してもよい。
【0017】
前記還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)、水素化ホウ素カリウム(KBH4)等の水素化ホウ素錯化合物、ヒドラジン、水素(H2)、ジメチルフェニルシラン等のシラン化合物、ヒドロキシ化合物等を挙げることができる。ヒドロキシ化合物としては第1級アルコール、第2級アルコール等のアルコール化合物が含まれる。また、ヒドロキシ化合物は、複数のヒドロキシル基を有していてもよく、1価アルコール、2価アルコール、多価アルコール等の何れであってもよい。
【0018】
本発明におけるハイドロタルサイト表面に金属固定化処理を施す際に使用する還元剤としては、なかでも、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)、水素化ホウ素カリウム(KBH4)等の水素化ホウ素錯化合物が好ましく、特に、水素化ホウ素カリウム(KBH4)が好ましい。水素化ホウ素カリウム(KBH4)で還元することにより得られた表面金固定化触媒は、固定化した金属粒子の平均粒径がより小さくなる傾向があり、それにより、比表面積を増大することができ、触媒活性を著しく向上させることができる。
【0019】
表面金固定化触媒中の金ナノ粒子含有率としては、例えば、ハイドロタルサイト等の担体1gに対して0.01〜3mmol、好ましくは0.01〜0.1mmol、特に好ましくは0.045〜0.1mmolである。表面金固定化触媒中の金ナノ粒子含有率が上記範囲を上回ると、触媒作用が低下する傾向がある。
【0020】
[エポキシ化合物]
本発明に係るアルケンの製造方法において、基質となるエポキシ化合物は、下記式(3)
【化1】

(式中、R1、R1'、R2、R2'は同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を示す。R1、R1'、R2、R2'から選択された2つが互いに結合して、エポキシ環を形成する炭素原子と共に環を形成していてもよい。尚、R1、R1'、R2、R2'のうち、少なくとも1つは炭化水素基である)
で表される。
【0021】
1、R1'、R2、R2'における炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基が含まれる。前記炭化水素基には、置換基を有する炭化水素基も含まれる。
【0022】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル基などの炭素数1〜4(好ましくは1〜3)程度のアルキル基等を挙げることができる。
【0023】
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基などの3〜12員程度(好ましくは3〜8員、特に好ましくは5〜8員)のシクロアルキル基;シクロペンテニル基などの3〜8員(好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基等を挙げることができる。
【0024】
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基等を挙げることができる。
【0025】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基としては、例えば、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-12シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。
【0026】
また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基など)等を挙げることができる。
【0027】
前記炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基など)等を有していてもよい。また、前記ヒドロキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。
【0028】
好適に使用されるエポキシ化合物の具体例としては、下記化合物(3a)〜(3i)等を挙げることができる。
【化2】

【0029】
本発明においては、なかでも、高い収率で目的とするアルケンを得ることができる点で、芳香族エポキシ化合物(例えば、上記式(3a)〜(3h)で表される化合物等)が好ましく、特にスチレンオキサイド誘導体(例えば、上記式(3a)〜(3f)で表される化合物等)が、速やかに基質が転化する点で好ましい。
【0030】
[アルケンの製造方法]
本発明に係るアルケンの製造方法は、担体表面に金ナノ粒子を固定化して得られる表面金固定化触媒及び水の存在下、一酸化炭素雰囲気下で、エポキシ化合物を脱酸素して対応するアルケンを製造することを特徴とする。エポキシ化合物として下記式(3)で表される化合物を使用した場合、下記式(4)で表される対応するアルケンが得られる。
【化3】

(式中、R1、R1'、R2、R2'は上記に同じ)
【0031】
本発明に係るアルケンの製造方法は、下記に示される反応機構に従って進行すると考えられる。尚、触媒としてAu/HTを使用した場合について説明するが、他の担体に金ナノ粒子を固定化して得られる表面金固定化触媒を使用した場合も同様である。式中、BSはハイドロタルサイトの塩基サイトを示す。R1、R1'、R2、R2'は上記に同じ。
【化4】

【0032】
表面金固定化触媒の使用量としては、例えば、エポキシ化合物に対して0.0001〜50モル%程度であり、なかでも0.01〜20モル%程度、特に0.1〜5モル%程度が好ましい。
【0033】
上記反応は、水の存在下で行われる。水の使用量としては、例えば、基質の濃度が0.5〜2.0重量%程度となる範囲内で使用することが好ましい。
【0034】
また、上記反応は、一酸化炭素雰囲気下で行われる。一酸化炭素雰囲気下とは、一酸化炭素中または一酸化炭素ガスを供給(バブリング)した状態をいう。一酸化炭素中で反応を行う場合、反応時の圧力は、特に制限されず、常圧でも加圧でもよいが、好ましくは0.1〜1.0MPa(なかでも、0.1〜0.5MPaが好ましい)である。さらに、上記反応は、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。
【0035】
本発明に係るアルケンの製造方法は温和な条件でも、円滑に反応を進行させることができる。反応温度としては、基質の種類や目的生成物の種類などに応じて適宜調整することができ、例えば、10〜100℃、好ましくは10〜50℃程度、特に好ましくは10〜40℃程度である。反応時間は、反応温度及び圧力に応じて適宜調整することができ、例えば10分〜48時間程度、好ましくは1時間〜48時間程度、特に好ましくは4時間〜30時間程度である。
【0036】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0037】
本発明のアルケンの製造方法によれば、エポキシ化合物の脱酸素反応を温和な条件下で行うことができ、高い収率で対応するアルケンを製造することができる。
【0038】
また、反応に使用した表面金固定化触媒は担体に担持されているため、有機合成反応においても担持された金属が反応溶液中に溶出しにくく、例えば、反応液から濾過、遠心分離などの物理的な分離手法により容易に回収することができる。回収された表面金固定化触媒はそのままで、又は洗浄、乾燥処理を施した後、再利用される。洗浄処理は、適宜な溶媒(例えば、水)により数回(例えば2〜3回)洗浄する方法により行うことができる。
【0039】
回収された表面金固定化触媒は、未使用の表面金固定化触媒と比べ、ほぼ同等の触媒能を示すことができ、使用−再生を複数回繰り返しても、例えば5回程度使用−再生を繰り返しても、その触媒能の低下を著しく抑制することができる。そのため、本発明に係るアルケンの製造方法によれば、製造コストの多くの割合を占める表面金固定化触媒を回収し、繰り返し利用することができるため、製造コストを大幅に削減することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0041】
製造例1
50mLのナス型フラスコ中に塩化金酸(HAuCl4)0.1mmolとイオン交換水 50mLを加え、その溶液にハイドロタルサイト(商品名:AD−500、富田製薬株式会社製)1.0gを加え、室温で2分間撹拌した後、アンモニア(5mmol)を加え、更に12時間撹拌した。その後、吸引濾過し、脱イオン水(1L)で洗浄し、真空乾燥させて黄色い粉末のAu/HT(Au:3価)(Au:0.045mmol/g)を得た。
50mLのナス型フラスコ中でKBH4(0.9mmol)に水(50mL)を加えて溶解し、そこに得られたAu/HT(Au:3価)0.9gを加え、アルゴン雰囲気下、室温で1時間撹拌した。撹拌後、吸引濾過し、脱イオン水 1Lで洗浄し、24時間真空乾燥させて紫色の粉末のAu/HT(Au:0価)(担体1gに対するAuの担持量:0.045mmol/g)を得た。
【0042】
製造例2
ハイドロタルサイトに代えてアルミナ(Al23)を使用した以外は調製例1と同様にしてアルミナ表面に金ナノ粒子が固定化された触媒(Au/Al23)を得た。
【0043】
製造例3
ハイドロタルサイトに代えてマグネシア(MgO)を使用した以外は調製例1と同様にしてマグネシア表面に金ナノ粒子が固定化された触媒(Au/MgO)を得た。
【0044】
製造例4
ハイドロタルサイトに代えてチタニア(TiO2)を使用した以外は調製例1と同様にしてチタニア表面に金ナノ粒子が固定化された触媒(Au/TiO2)を得た。
【0045】
製造例5
200mLのナス型フラスコに硝酸銀(AgNO3)1mmolとイオン交換水 150mLを加え、そこにハイドロタルサイト 2.0gを加えて室温で6時間撹拌した。撹拌後、吸引濾過し、脱イオン水 1Lで洗浄し、24時間真空乾燥させて、Ag/HT(Ag:1価)を得た。
さらに、200mLのナス型フラスコ中でKBH4(9mmol)に水(150mL)を加えて溶解し、そこに得られたAg/HT(Ag:1価)1.8gを加え、アルゴン雰囲気下、室温で1時間撹拌した。撹拌後、吸引濾過し、脱イオン水 1Lで洗浄し、24時間真空乾燥させて、緑色の粉末のAg/HT(Ag:0価)(担体1gに対するAgの担持量:0.3mmol/g)を得た。
【0046】
製造例6
塩化金酸(HAuCl4)に代えてNa2PdCl4を使用した以外は製造例1と同様にして、Pd/HT(Pd:0価)(担体1gに対するPdの担持量:0.1mmol/g)を得た。
【0047】
製造例7
塩化金酸(HAuCl4)に代えてNa2PtCl4を使用した以外は製造例1と同様にして、Pt/HT(Pt:0価)(担体1gに対するPtの担持量:0.1mmol/g)を得た。
【0048】
製造例8
塩化金酸(HAuCl4)に代えてRhCl3を使用した以外は製造例1と同様にして、Rh/HT(Rh:0価)(担体1gに対するRhの担持量:0.1mmol/g)を得た。
【0049】
製造例9
塩化金酸(HAuCl4)に代えてRuCl3・xH2Oを使用した以外は製造例1と同様にして、Ru/HT(Ru:0価)(担体1gに対するRuの担持量:0.1mmol/g)を得た。
【0050】
実施例1
ガラス製耐圧反応管に、製造例1で得られたAu/HT(Au:スチレンオキサイドに対して0.9mol%)、水 5mL、スチレンオキサイド 0.5mmolを加え、CO雰囲気下(1atm)、27℃で6時間撹拌し、スチレンを得た(収率99%以上、選択率99%以上)。尚、収率、選択率の測定には液体クロマトグラフィーによる標準的な測定方法を使用した。
【0051】
実施例2
製造例1で得られたAu/HTに代えて、実施例1の反応終了後、反応液を濾過して触媒を分離し、分取された触媒を水で2回洗浄した後、室温(25℃)で減圧乾燥して得られた[Au/HT]’を使用した以外は実施例1と同様にして、スチレンを得た(収率99%、選択率99%以上)。
【0052】
実施例3
製造例1で得られたAu/HTに代えて、実施例3の反応終了後、反応液を濾過して触媒を分離し、分取された触媒を水で2回洗浄した後、室温(25℃)で減圧乾燥して得られた[Au/HT]”を使用した以外は実施例1と同様にして、スチレンを得た(収率97%、選択率99%以上)。
【0053】
実施例4〜7、比較例1〜8
製造例1で得られたAu/HTに代えて、下記表1に記載の触媒を使用した以外は実施例1と同様にして、スチレンを得た。尚、実施例4は製造例2、実施例5は製造例3、実施例6は製造例4、比較例4は製造例5、比較例5は製造例6、比較例6は製造例7、比較例7は製造例8、比較例8は製造例9で得られた触媒を使用した。また、実施例7は製造例4で得られた触媒を使用し、且つ、Na2CO3を1.5mmol添加した。
【表1】

【0054】
実施例8
Au/HTの使用量をスチレンオキサイドに対して0.9mol%から1.40mol%へ変更した以外は実施例1と同様にして、スチレンを得た(収率99%以上、選択率99%以上)。
【0055】
実施例9〜14
基質及び反応時間を、下記表2に記載の基質及び反応時間に変更した以外は実施例8と同様にして、対応するアルケンを得た。
【表2】

【0056】
比較例9
溶媒として水の代わりにトルエンを使用した以外は実施例12と同様にしたところ、シンナミルアルコール(収率82%、選択率82%)が得られた。
【0057】
比較例10
溶媒として水の代わりにテトラヒドロフランを使用し、反応時間を16時間から24時間に変更した以外は実施例12と同様にしたところ、シンナミルアルコール(収率36%、選択率36%)が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体表面に金ナノ粒子を固定化して得られる表面金固定化触媒及び水の存在下、一酸化炭素雰囲気下で、エポキシ化合物を脱酸素して対応するアルケンを製造することを特徴とするアルケンの製造方法。
【請求項2】
担体としてハイドロタルサイトを使用する請求項1に記載のアルケンの製造方法。

【公開番号】特開2011−236165(P2011−236165A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109773(P2010−109773)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】