説明

エポキシ化合物付加物の製造方法

【課題】エポキシ化合物付加物を高収率で得ることができる製造方法の提供。
【解決手段】多価アルコール化合物とエポキシ化合物とを下記一般式(4)の活性水素を有しないエーテル系溶媒の存在下にて固体触媒を用い、加熱して反応させるエポキシ化合物付加物の製造方法。
2−O−〔(PO)m/(EO)n〕−R3 (4)
〔式中、R2、R3は、炭素数1〜8のアルキル基であり、POとEOはそれぞれプロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m、nはPO又はEOの付加モル数を示し、それぞれ0〜10であり、mとnの合計は2〜20である。POとEOの付加順序は問わない。また、“/”は、POとEOの付加形態がブロックでもランダムでもよいことを意味する。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ化合物付加物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多価アルコール化合物とエポキシ化合物の付加反応による付加物は洗浄剤、可溶化剤、乳化剤、分散剤や起泡剤として香粧品、医薬品などの分野で利用されている。
洗浄剤の用途において前記の付加物を使用する場合、1分子の多価アルコールに1分子のエポキシ化合物が付加した1:1付加物が優れた洗浄性能を示し、過剰にエポキシ化合物が付加した化合物は、洗浄性能や曇点が低下することが知られている。
【0003】
多価アルコール化合物に対するエポキシ化合物の付加反応は一般的に塩基性触媒を用いて行われるが(特許文献1)、反応生成物にエポキシ化合物由来の活性水素が新たに生成するため、反応生成物に更に過剰のエポキシ化合物が付加してしまうという問題があった。
このような課題を克服するために、触媒の観点から検討が行われている。例えば、特許文献2には、焼成マグネシウム‐アルミニウム複合酸化物を触媒として用いて反応することで、過剰のエポキシ化合物付加を抑制することが記載されている。
また、特許文献3には、ヒドロキシ化合物とエポキシ化合物の付加反応において、酸性又は塩基性を有する固体触媒を使用することで、生成するヒドロキシエーテル化合物へのグリシジルエーテルの過剰付加反応が抑制できることが記載されている。
しかし、触媒による抑制効果は限られており、多価アルコール化合物とエポキシ化合物の1:1付加生成物の収率は十分ではなかった。また、溶媒として、非プロトン性溶媒が例示されているが、反応温度より低沸点の溶媒のみの例示であり、溶媒の現実的な使用態様及び効果については例示されていない。
【0004】
特許文献4には、エーテル結合を持つ非プロトン性溶媒の存在下で反応させることで得られるポリグリセリンアルキルエーテルが記載されている。しかし、反応物への過剰のエポキシ化合物の付加、及び1:1付加物の選択性については何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4086279号公報
【特許文献2】特開平11−315043号公報
【特許文献3】特許4346382号公報
【特許文献4】特開2010−100531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、多価アルコール化合物とエポキシ化合物の製造方法において、多価アルコール化合物の使用量を低減した上で、副生成物の生成を抑制し、多価アルコール化合物とエポキシ化合物の付加生成物、好ましくは多価アルコール化合物とエポキシ化合物の1:1付加物を高収率で製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、課題の解決手段として、多価アルコール化合物とエポキシ化合物とを下記一般式(4)の活性水素を有しないエーテル系溶媒の存在下にて固体触媒を用い、反応させるエポキシ化合物付加物の製造方法を提供する。
2−O−〔(PO)m/(EO)n〕−R3 (4)
〔式中、R2、R3は、炭素数1〜8のアルキル基であり、POとEOはそれぞれプロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m、nはPO又はEOの付加モル数を示し、それぞれ0〜10であり、mとnの合計は2〜20である。POとEOの付加順序は問わない。また、“/”は、POとEOの付加形態がブロックでもランダムでもよいことを意味する。〕
【0008】
本発明の製造方法により得られるエポキシ化合物付加物は、1分子の多価アルコールに1分子のエポキシ化合物が付加した1:1付加物(モノアルキルエーテル)(以下「1:1付加物」という)を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法では、活性水素を有しないエーテル系溶媒と固体触媒を用いて反応させることで、多価アルコール化合物とエポキシ化合物との反応において、逐次反応であるエポキシ化合物の過剰付加反応を抑制することができる。これにより、高い生産性で且つ高純度で1:1付加物が得られる。
また、この方法で得られたエポキシ化合物付加物は、洗浄剤、可溶化剤、乳化剤、分散剤や起泡剤として香粧品、医薬品などの分野で利用することができ、洗浄剤として使用する場合、1:1付加物は高い曇点を有し、高い洗浄性能を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<多価アルコール>
本発明で反応原料として用いる多価アルコール化合物は、エポキシ化合物付加物を洗浄剤として使用したときの洗浄力の観点から、炭素数2〜30且つヒドロキシル基数2〜30のポリオール類やアセタール、ケタール類、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が好ましい。
より好ましくは炭素数2〜18且つヒドロキシル基数2〜18のポリオール類及びそのアセタール、ケタール類であり、更に好ましくはエチレングリコール、プロパンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリグリセリン、ソルビトール、グルコース、スクロース及びグリセリンケタール類であり、更に好ましくはグリセリン及び/又はポリグリセリンであり、特に好ましくはポリグリセリンである。
【0011】
ポリグリセリンは、具体的には下記一般式(1)の化合物が好適である。
HO−(Gly−O)r−H (1)
〔式中、Glyはグリセリンから2つの水酸基を除いた残基を示し、rは平均付加モル数で1.01〜10の数を示す。〕
一般式(1)において、エポキシ化合物付加物を洗浄剤として使用したときの洗浄力の観点から、rは1.1〜5が好ましく、2〜4がより好ましい。
【0012】
<エポキシ化合物>
本発明で反応原料として用いるエポキシ化合物は、下記一般式(2)で表されるエポキシ化合物が好ましい。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Aは炭素数2〜36の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基若しくはアルケニルオキシル基、炭素数5〜36のアリール基若しくはアリールオキシル基、又は一般式(3)
−O―CH− (3)
(式中、Rは炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数5〜22のアリール基である)
で表される基である。)
【0015】
一般式(2)においては、エポキシ化合物付加物を洗浄剤として使用したときの洗浄力の観点から、Aは炭素数2〜36、好ましくは5〜22、より好ましくは8〜18の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基若しくはアルケニルオキシル基、炭素数5〜36、好ましくは5〜22、より好ましくは8〜18のアリール基若しくはアリールオキシル基、又は一般式(3)で表される基であるものが好ましい。
また、一般式(2)においては、エポキシ化合物付加物を洗浄剤として使用したときの洗浄力の観点から、Aは、アルコキシル基、アルケニルオキシル基、アリールオキシル基、又は一般式(3)で表される基が好ましく、一般式(3)で表される基がより好ましい。より好ましいエポキシ化合物として具体的には、グリシジルエーテルが挙げられる。
【0016】
一般式(3)においては、エポキシ化合物付加物を洗浄剤として使用したときの洗浄力の観点から、Rは炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数5〜22のアリール基であり、炭素数8〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、又はアリール基がより好ましく、炭素数10〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、又はアリール基が更に好ましく、炭素数12〜14の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、又はアリール基が特に好ましい。また、Rはエポキシ化合物付加物を洗浄剤として使用したときの洗浄力の観点から、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、又はアリール基が好ましく、直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基がより好ましく、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が更に好ましく、直鎖のアルキル基が特に好ましい。
このようなエポキシ化合物は、例えば、特許3544134号公報に記載されているように、酸触媒の存在下、アルコールとα−エピハロヒドリンとを反応させた後、得られるハロヒドリンエーテルをアルカリ処理により閉環させて得ることができる。
【0017】
<活性水素を有しないエーテル系溶媒>
本発明で用いる活性水素を有しないエーテル系溶媒は、1:1付加物の選択性及び収率を高めることができる。
1:1付加物の選択性が向上する原因は必ずしも明らかではないが、触媒以外の反応原料の相溶性の向上、及び付加生成物の溶媒和現象が原因として考えられる。
【0018】
活性水素を有しないエーテル系溶媒は、1:1付加物の選択性及び収率を高める観点から、誘電率4以上のものが好ましく、より好ましくは誘電率4〜40、更に好ましくは誘電率5〜20、特に好ましくは誘電率6〜10のものである。
【0019】
本発明で用いる活性水素を有しないエーテル系溶媒は、下記一般式(4)の化合物である。
2−O−〔(PO)m/(EO)n〕−R3 (4)
〔式中、R2、R3は、炭素数1〜8のアルキル基であり、POとEOはそれぞれプロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m、nはPO又はEOの付加モル数を示し、それぞれ0〜10であり、mとnの合計は2〜20である。POとEOの付加順序は問わない。また、“/”は、POとEOの付加形態がブロックでもランダムでもよいことを意味する。〕
【0020】
2、R3の炭素数は1:1付加物の選択性及び収率を高める観点から、それぞれ独立に好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜3であり、更に好ましくは1である。
m、及びnの合計は、1:1付加物の選択性及び収率を高める観点から、好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、更に好ましくは3〜5、特に好ましくは3〜4である。
また、m、及びnの合計が上記範囲内であれば、1:1付加物の選択性及び収率を高める観点から、mは0であることが好ましい。
具体的にはジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、又はペンタエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられ、1:1付加物の選択性及び収率を高める観点から、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、又はペンタエチレングリコールジメチルエーテルが好ましく、トリエチレングリコールジメチルエーテル、又はテトラエチレングリコールジメチルエーテルがより好ましい。
【0021】
また、活性水素を有しないエーテル系溶媒の沸点は、本発明における反応温度以上であることが、1:1付加物の選択性及び収率を高める観点から好ましい。沸点とは標準沸点、すなわち飽和蒸気圧が1013.25hPa(1atm)と等しくなる温度を表す。沸点が反応温度以上であると、反応圧力を常圧以上に上げる必要がなく、設備負荷が大きくならない。
活性水素を有しないエーテル系溶媒の沸点は具体的には設備負荷の観点から、好ましくは100℃〜500℃であり、より好ましくは150℃〜400℃であり、更に好ましくは160℃〜350℃であり、特に好ましくは180℃〜300℃である。
【0022】
<固体触媒>
本発明に用いられる固体触媒は、1:1付加物の選択性を高める観点から、アルミニウム、マグネシウム又は亜鉛を含有する固体触媒が好ましい。なお、選択性、反応速度の向上、その他の触媒の性能を向上させる目的で、他の元素を含んでいても良い。
【0023】
また、本発明に用いられる固体触媒としては、上記元素からなる単一又は複合金属酸化物、金属硫酸塩、金属リン酸塩等が挙げられる。1:1付加物の選択性を高める観点から、単一又は複合金属酸化物が好ましい。
単一又は複合金属酸化物としては、多価アルコール化合物とエポキシ化合物の1:1付加物の選択性を高める観点から、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛又はアルミニウムとマグネシウムの複合酸化物が好ましい。
また、選択性、反応速度の向上、その他の触媒の性能を向上させる目的で、他の元素の酸化物を含んでいても良い。
【0024】
本発明で用いる触媒の製造法は特に限定されず、公知の方法により調製できる。例えば、それぞれの元素の塩化物、水酸化物、酸化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩等の化合物を含む混合水溶液又は水分散液に沈殿剤を添加して得られる沈殿物を水洗・乾燥・焼成する共沈殿法、あるいは水難溶性粉末担体上に担体成分以外の触媒成分となり得る化合物を水溶液又は水分散液の状態から含浸担持させた後、乾燥・焼成する含浸法等により調製できる。共沈殿法あるいは含浸法により調製する場合、使用される化合物は水溶性のもの又は水分散性のものであるなら全て可能である。
【0025】
<製造方法:多価アルコールとエポキシ化合物の反応方法>
本発明の製造方法は、多価アルコール化合物とエポキシ化合物とを活性水素を有しないエーテル系溶媒の存在下にて固体触媒を用いて反応させることができる方法であればよいが、好ましくは次の2つの方法を挙げることができる。
方法1:反応容器内に、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、活性水素を有しないエーテル系溶媒、触媒を入れ、反応させる方法。
方法2:反応容器内に、多価アルコール化合物、活性水素を有しないエーテル系溶媒及び固体触媒を入れて混合し、脱水処理をした後にエポキシ化合物を添加し、反応させる方法。
【0026】
方法2のとおり、脱水処理工程を付加して反応初期に水分が存在しないようにすることは、エポキシ化合物の加水分解反応の競合を抑制することができるようになるため、1:1付加物の収率及び選択性を高めることができるので生産性向上の観点から好ましい。
脱水方法は特に限定されず、例えば反応原料、溶媒及び触媒を反応装置に入れた後に、所定の温度、圧力にて脱水操作を行うことができる。また、金属水素化物等の乾燥剤を用いる等の常法により脱水乾燥することができる。
【0027】
製造原料となる多価アルコール化合物とエポキシ化合物の割合(エポキシ化合物のモル数/多価アルコール化合物のモル数)は、生産性向上の観点から、0.3〜1が好ましく、0.5〜1がより好ましく、0.7〜0.9が更に好ましい。
【0028】
活性水素を有しないエーテル系溶媒の使用量は、1:1付加物の選択性を高める観点から、多価アルコール化合物100質量部に対して、好ましくは1〜500質量部、より好ましくは20〜200質量部、更に好ましくは40〜150質量部、特に好ましくは50〜130質量部である。
【0029】
触媒の使用量は、1:1付加物の選択性の観点から、多価アルコール化合物100質量部に対して、0.05〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましく、3〜7質量部が更に好ましい。
【0030】
反応温度は、1:1付加物の収率や選択性を高める生産性の観点から、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは150℃以上であり、更に好ましくは160℃以上であり、特に好ましくは180℃以上であり、付加物の着色及び/又は臭いの観点から、好ましくは250℃以下であり、より好ましくは220℃以下であり、更に好ましくは210℃であり、特に好ましくは200℃以下である。
【0031】
反応圧力は特に限定はないが、反応原料及び溶媒の蒸気圧以上が好ましい。設備負荷の観点から好ましくは2000hPa以下、より好ましくは1500hPa以下、更に好ましくは1100hPa以下である。
また、本反応は、付加物の着色及び/又は臭いの観点から、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、アルゴンガス、又は窒素ガス雰囲気下において行うことがより好ましい。
【0032】
反応方式は、反応途中で反応容器への原料の投入及び生成物の反応容器からの抜き出しを行う連続式、及び反応終了後に生成物を反応容器から抜き出すバッチ式のいずれでもよく、その他の公知の反応方式(滴下式等)を採用することもできる。
【0033】
連続式としては、触媒を充填固定化し、そこに多価アルコール化合物、エポキシ化合物及び溶媒を通液することで反応を進行させる固定床反応方式、又は固体触媒を原料とともに反応器に供給する方式等が挙げられる。反応後の触媒の分離の観点から、固定床反応方式が好ましい。
バッチ式の場合、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、溶媒及び触媒を反応開始前に反応容器内に投入する一括式、及び、原料の何れかを、他の原料が既に投入されている反応容器内に滴下する滴下方式のいずれでも良い。
その他の反応方式として滴下式を採用する場合は、1:1付加物の選択性を高める観点から、エポキシ化合物を反応系に滴下することが好ましい。
反応時間の短縮ができる点で、反応方式は一括式の方が好ましい。
【0034】
反応後の触媒の分離方法は特に限定されないが、加温により低粘度化された反応後の生成物を濾過することにより分離する方法を適用することができる。また、低粘度化するための各種溶媒(水、低級1価アルコール等)や濾過助剤(珪藻土、セルロース系助剤、活性白土等)を添加し、触媒を濾過する等の方法を用いることもできる。
【0035】
本発明の製造方法により、1:1付加物を含むエポキシ化合物付加物(1:1付加物を含む混合物)が得られる。ここで1:1付加物とは、1分子の多価アルコール化合物に1分子のエポキシ化合物が付加した化合物をいう。
得られたエポキシ化合物付加物は、そのままの混合物として、又は精製操作により1:1付加物の純度を更に上げたものとして、洗浄剤、可溶化剤、乳化剤、分散剤や起泡剤として香粧品、医薬品などの分野で利用することができる。
【実施例】
【0036】
<測定方法>
表1に示す実施例及び比較例における反応終了後混合物中に含まれる各化合物の組成は、試料にテトラデカンを内部標準として添加し、トリメチルシリル化剤(GLサイエンス社製、TMSI−H)を添加し混合し、固形分をろ別後、以下の条件のガスクロマトグラフィーにて定量分析した。モノアルキルエーテル(1:1付加物)の選択性は、下記の式から算出した。
モノアルキルエーテル選択性=反応生成物中のモノアルキルエーテル濃度(質量%)÷(反応生成物中のモノアルキルエーテル濃度(質量%)+反応生成物中のジアルキルエーテル濃度(質量%))×100
【0037】
・装置:HEWLETT PACKARD社製、HP6850Series GC System
・カラム:DB1-HT(J&W社製、内径0.25 mm、長さ15 m、膜厚 0.1mm)
・キャリアガス:He、1.0 mL/分
・注入口温度:300℃
・検出:FID方式、300℃
・カラム温度条件:60℃(2分保持)→10℃上昇/分→350℃(5分保持)
【0038】
実施例1
ジグリセリン(東京化成社製)25.1gと触媒1.25g、溶媒27.8gを160℃、攪拌下混合した後に、1mmHgの減圧下で脱水処理を1時間行った。
脱水処理後、窒素ガス雰囲気下200℃に昇温し、ラウリルグリシジルエーテル29.3gを攪拌下混合した後、4時間反応を行った。ジグリセリン転化率は66%、ラウリルモノアルキルエーテル(1:1付加物)の選択性は83%であった。
【0039】
比較例1
ジグリセリン(東京化成社製)30.0gと触媒1.50gを160℃、攪拌下混合した後に、1mmHgの減圧下で脱水処理を1時間行った。
脱水処理後、窒素ガス雰囲気下200℃に昇温し、ラウリルグリシジルエーテル35.0gを攪拌下混合した後、2時間反応を行った。ジグリセリン転化率は66%、モノアルキルエーテルの選択性は74%であった。
【0040】
実施例2
ジグリセリン(東京化成社製)18.0gと触媒0.900g、ラウリルグリシジルエーテル21.1g、溶媒20.0gを攪拌下混合した後に、窒素ガス雰囲気下200℃に昇温し、4.5時間反応を行った。ジグリセリン転化率は48%、モノアルキルエーテルの選択性は81%であった。
【0041】
実施例3
ジグリセリン(東京化成社製)60.0gと触媒3.00g、溶媒104gを攪拌下混合した後、窒素ガス雰囲気下200℃に昇温し、ラウリルグリシジルエーテルを10.5g/時間で1時間滴下した。その後、200℃で熟成し、ラウリルグリシジルエーテルの消失を確認した後、再びラウリルグリシジルエーテルを10.5g/時間で1時間滴下し、熟成した。ジグリセリン転化率は28%、モノアルキルエーテルの選択性は96%であった。
【0042】
実施例4
ジグリセリン(東京化成社製)19.4gと触媒0.900g、ラウリルグリシジルエーテル22.6g、溶媒17.1gを攪拌下混合した後に、窒素ガス雰囲気下180℃に昇温し、10時間反応を行った。ジグリセリン転化率は48%、モノアルキルエーテルの選択性は78%であった。
【0043】
実施例5
ジグリセリン(東京化成社製)20.5gと触媒0.960g、ラウリルグリシジルエーテル23.9g、溶媒14.6gを攪拌下混合した後に、窒素ガス雰囲気下180℃に昇温し、7.2時間反応を行った。ジグリセリン転化率は49%、モノアルキルエーテルの選択性は77%であった。
【0044】
比較例2
ジグリセリン(東京化成社製)25.8gと触媒1.30g、ラウリルグリシジルエーテル30.1gを攪拌下混合した後に、窒素ガス雰囲気下200℃に昇温し、2.5時間反応を行った。ジグリセリン転化率は48%、モノアルキルエーテルの選択性は72%であった。
【0045】
比較例3
ジグリセリン(東京化成社製)9.10gと触媒0.440g、ラウリルグリシジルエーテル10.4g、溶媒19.7gを攪拌下混合した後に、窒素ガス雰囲気下200℃に昇温し、5.5時間反応を行った。モノアルキルエーテル体の生成は確認できなかった。
【0046】
比較例4
ジグリセリン(東京化成社製)60.0gと触媒3.00gを攪拌下混合した後、窒素ガス雰囲気下200℃に昇温し、ラウリルグリシジルエーテルを10.5g/時間で1時間滴下した。その後、200℃で熟成し、ラウリルグリシジルエーテルの消失を確認した後、再びラウリルグリシジルエーテルを10.5g/時間で1時間滴下し、熟成し、これを2回繰りかえした。ジグリセリン転化率は30%、モノアルキルエーテルの選択性は85%であった。
【0047】
比較例5
ジグリセリン(東京化成社製)25.0gと三フッ化ホウ素ジエチルエーテル(和光純薬工業社製)0.250g、ラウリルグリシジルエーテル29.3g、溶媒27.8gを攪拌下混合した後に、窒素ガス雰囲気下90℃に昇温し、3時間反応を行った。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、ジグリセリン転化率は26%、モノアルキルエーテルの選択性は55%であった。
【0048】
比較例6
ジグリセリン(東京化成社製)30.0gと三フッ化ホウ素ジエチルエーテル(和光純薬製)0.310g、ラウリルグリシジルエーテル35.1gを攪拌下混合した後に、窒素ガス雰囲気下90℃に昇温し、3時間反応を行った。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、ジグリセリン転化率は25%、モノアルキルエーテルの選択性は57%であった。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、3、及び実施例3と比較例4の結果から、本発明に係る活性水素を有しないエーテル系溶媒存在下にて固体触媒を用いて多価アルコール化合物とエポキシ化合物とを反応させると1:1付加物の選択性が高いことが分かった。
また、実施例3と比較例4の結果から、選択性面で有利な滴下式反応においても活性水素を有しないエーテル系溶媒存在下にて1:1付加物の選択性が高いことが確認でき、反応形式を問わず、本発明の有用性が確認できた。
比較例5及び比較例6の結果から、均一触媒を用いて多価アルコール化合物とエポキシ化合物とを反応させた場合は、本発明に係る活性水素を有しないエーテル系溶媒存在下であっても、1:1付加物の選択性の向上は認められなかった。
【0051】
(1)グリシジルエーテル:一般的な製造方法により合成できる。例えば、特許3544134号公報に記載しているようにアルコール類とα-エピハロヒドリンとを反応させた後、アルカリ処理により閉環させることで得られる。
(2)γ-アルミナ:水澤化学社から購入した
(3)KW2000:キョーワード2000(組成式:Mg0.7Al0.31.15)、協和化学社製
(4)TEG-DME:テトラエチレングリコールジメチルエーテル(沸点275℃),和光純薬工業社製
(5)N−メチルピロリドン:(沸点202℃),和光純薬工業社製
(6)TrEG-DME:トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点216℃),和光純薬工業社製

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコール化合物とエポキシ化合物とを下記一般式(4)の活性水素を有しないエーテル系溶媒の存在下にて固体触媒を用い、加熱して反応させるエポキシ化合物付加物の製造方法。
2−O−〔(PO)m/(EO)n〕−R3 (4)
〔式中、R2、R3は、炭素数1〜8のアルキル基であり、POとEOはそれぞれプロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m、nはPO又はEOの付加モル数を示し、それぞれ0〜10であり、mとnの合計は2〜20である。POとEOの付加順序は問わない。また、“/”は、POとEOの付加形態がブロックでもランダムでもよいことを意味する。〕
【請求項2】
多価アルコール化合物、一般式(4)の活性水素を有しないエーテル系溶媒及び固体触媒を混合し、脱水処理をした後にエポキシ化合物を添加し、加熱して反応させる請求項1記載のエポキシ化合物付加物の製造方法。
【請求項3】
固体触媒が、アルミニウム、マグネシウム又は亜鉛を含有するものである請求項1又は2記載のエポキシ化合物付加物の製造方法。
【請求項4】
多価アルコール化合物がグリセリン及び/又はポリグリセリンである請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
エポキシ化合物がグリシジルエーテルである請求項1〜4のいずれか1項記載のエポキシ化合物付加物の製造方法。
【請求項6】
一般式(4)の活性水素を有しないエーテル系溶媒の沸点が100℃以上である請求項1〜5のいずれか1項記載のエポキシ化合物付加物の製造方法。

【公開番号】特開2013−14559(P2013−14559A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150083(P2011−150083)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】