説明

エポキシ化合物及びカルボン酸化合物を含むリソグラフィー用下層膜形成組成物

半導体装置製造のリソグラフィープロセスに使用される、リソグラフィー用下層膜形成組成物、及びフォトレジストに比べて大きなドライエッチング速度を有する下層膜を提供する。 具体的には、強酸触媒による架橋反応を利用することなく下層膜を形成するための組成物であり、エポキシ基を有する成分(高分子化合物、化合物)と、フェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する成分(高分子化合物、化合物)とを含む下層膜形成組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、新規なリソグラフィー用下層膜形成組成物、該組成物より形成される下層膜、及び該下層膜を用いたフォトレジストパターンの形成方法に関するものである。また、本発明は、半導体装置製造のリソグラフィープロセスにおいて半導体基板上に塗布されたフォトレジスト層への露光照射光の基板からの反射を軽減させる下層反射防止膜、凹凸のある半導体基板を平坦化するための平坦化膜、加熱焼成時などに半導体基板から発生する物質によるフォトレジスト層の汚染を防止する膜等として使用できるリソグラフィー用下層膜、該下層膜を形成するための下層膜形成組成物及び該下層膜の形成方法に関するものである。また、本発明は、半導体基板に形成されたホールを埋め込むために使用することができるリソグラフィー用下層膜形成組成物に関するものである。
【背景技術】
従来から半導体デバイスの製造において、フォトレジストを用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。前記微細加工はシリコンウエハ等の半導体基板上にフォトレジストの薄膜を形成し、その上に半導体デバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線などの活性光線を照射し、現像し、得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することにより、基板表面に、前記パターンに対応する微細凹凸を形成する加工法である。ところが、近年、半導体デバイスの高集積度化が進み、使用される活性光線もKrFエキシマレーザー(248nm)からArFエキシマレーザー(193nm)へと短波長化される傾向にある。これに伴い活性光線の基板からの乱反射や定在波の影響が大きな問題となってきた。そこで、この問題を解決すべく、フォトレジストと基板の間に反射防止膜(Bottom Anti−Reflective Coating、BARC)を設ける方法が広く検討されている。かかる反射防止膜としては、その使用の容易さなどから、吸光性物質と高分子化合物等とからなる有機反射防止膜について数多くの検討が行われており、例えば、架橋反応基であるヒドロキシル基と吸光基を同一分子内に有するアクリル樹脂型反射防止膜や架橋反応基であるヒドロキシル基と吸光基を同一分子内に有するノボラック樹脂型反射防止膜等が挙げられる(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
有機反射防止膜に要求される特性としては、光や放射線に対して大きな吸光度を有すること、フォトレジスト層とのインターミキシングが起こらないこと(フォトレジスト溶剤に不溶であること)、加熱焼成時に反射防止膜から上層のフォトレジストへの低分子物質の拡散が生じないこと、フォトレジストに比べて大きなドライエッチング速度を有すること等がある(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照。)。
また、近年、半導体装置のパターンルールの微細化の進行に伴い明らかになってきた配線遅延の問題を解決するために、配線材料として銅を使用する検討が行われている。そして、それと共に半導体基板への配線形成方法としてデュアルダマシンプロセスの検討が行われている。そして、デュアルダマシンプロセスではビアホールが形成され、大きなアスペクト比を有する基板に対して反射防止膜が形成されることになる。そのため、このプロセスに使用される反射防止膜に対しては、ホールを隙間なく充填することができる埋め込み特性や、基板表面に平坦な膜が形成されるようになる平坦化特性などが要求されている。
しかし、有機系反射防止膜用材料を大きなアスペクト比を有する基板に適用することは難しく、近年、埋め込み特性や平坦化特性に重点をおいた材料が開発されるようになってきた(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照。)。
また、半導体などのデバイス製造において、誘電体層によるフォトレジスト層のポイズニング効果を減少させるために、架橋可能なポリマー等を含む組成物より形成されるバリア層を誘電体層とフォトレジスト層の間に設けるという方法が開示されている(例えば、特許文献7参照。)。
このように、近年の半導体装置の製造においては、反射防止効果を初め、さまざまな効果を達成するために、半導体基板とフォトレジスト層の間、すなわちフォトレジスト層の下層として、有機化合物を含む組成物から形成される有機系の下層膜が配置されるようになってきている。
下層膜にはインターミキシングを起こさないことが要求されるため、下層膜の形成には架橋反応が利用されることが多い。そして、そのような架橋性下層膜を形成するための組成物としては、ポリマー、架橋剤及び架橋触媒としてのスルホン酸化合物よりなるものが使用されている(例えば、特許文献1、特許文献3、特許文献4、特許文献6参照。)。しかし、スルホン酸化合物という強酸を含んでいるため、これらの組成物には保存安定性に問題があると考えられている。
そのため、強酸触媒を必要としない架橋反応を利用して形成される下層膜、及びそのための組成物が望まれていた。
ところで、芳香族化合物乃至脂環式化合物で置換されたトリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートを広域紫外線吸収剤に用いるという技術が知られており(例えば、特許文献8参照。)、また、シアヌール酸化合物を含む反射防止膜形成組成物が知られている(例えば、特許文献9参照。)。
【特許文献1】:米国特許第5919599号明細書
【特許文献2】:米国特許第5693691号明細書
【特許文献3】:特開2000−294504号公報
【特許文献4】:特開2002−47430号公報
【特許文献5】:特開2002−190519号公報
【特許文献6】:国際公開第02/05035号パンフレット
【特許文献7】:特開2002−128847号公報
【特許文献8】:特開平11−279523号公報
【特許文献9】:国際公開第02/86624号パンフレット
【非特許文献1】:トム・リンチ(Tom Lynch)他3名、「プロパティアンドパーフォーマンスオブニアーUVリフレクティビティコントロールレーヤー(Properties and Performance of Near UV Reflectivity Control Layers)」、(米国)、インアドバンスインレジストテクノロジーアンドプロセシングXI(in Advances in Resist Technology and Processing XI)、オムカラム・ナラマス(Omkaram Nalamasu)編、プロシーディングスオブエスピーアイイー(Proceedings of SPIE)、1994年、第2195巻(Vol.2195)、p.225−229
【非特許文献2】:ジー・テイラー(G.Taylor)他13名、「メタクリレートレジストアンドアンチリフレクティブコーティングフォー193nmリソグラフィー(Methacrylate Resist and Antireflective Coatings for 193nm Lithography)」、(米国)、インマイクロリソグラフィー1999:アドバンスインレジストテクノロジーアンドプロセシングXVI(in Microlithography 1999:Advances in Resist Technology and Processing XVI)、ウイル・コンレイ(Will Conley)編、プロシーディングスオブエスピーアイイー(Proceedings of SPIE)、1999年、第3678巻(Vol.3678)、p.174−185
【非特許文献3】:ジム・ディー・メーダー(Jim D.Meador)他6名、「リセントプログレスイン193nmアンチリフレクティブコーティングス(Recent Progress in 193nm Antireflective Coatings)」、(米国)、インマイクロリソグラフィー1999:アドバンスインレジストテクノロジーアンドプロセシングXVI(in Microlithography 1999:Advances in Resist Technology and Processing XVI)、ウイル・コンレイ(Will Conley)編、プロシーディングスオブエスピーアイイー(Proceedings of SPIE)、1999年、第3678巻(Vol.3678)、p.800−809
こうした現状に鑑み本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、エポキシ基を有する化合物(高分子化合物)とフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する化合物(高分子化合物)を用いることにより、スルホン酸化合物等の強酸触媒を必要としない架橋反応を利用した下層膜を形成できることを見出し、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明の目的は、半導体装置の製造に用いることのできる下層膜形成組成物を提供することにある。そして、上層として塗布、形成されるフォトレジスト層とのインターミキシングを起こさず、フォトレジスト層に比較して大きなドライエッチング速度を有するリソグラフィー用下層膜及び該下層膜を形成するための下層膜形成組成物を提供することである。また、本発明は、強酸触媒を必要としない架橋反応を利用して形成される下層膜、該下層膜の形成方法及びそのための下層膜形成組成物を提供することである。
さらに、本発明は、半導体装置製造のリソグラフィープロセスにおいて、半導体基板上に形成されたフォトレジスト層への露光照射光の基板からの反射を軽減させる下層反射防止膜、凹凸のある半導体基板を平坦化するための平坦化膜、加熱焼成時などに半導体基板から発生する物質によるフォトレジスト層の汚染を防止する膜、等として使用できるリソグラフィー用下層膜及び下層膜を形成するための下層膜形成組成物を提供することである。そして、下層膜形成組成物を用いたリソグラフィー用下層膜の形成方法、及びフォトレジストパターンの形成方法を提供することにある。
【発明の開示】
本発明は、第1観点として、エポキシ基を有する高分子化合物及びフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物を含むことを特徴とする下層膜形成組成物、
第2観点として、エポキシ基を有する高分子化合物及び少なくとも二つのフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する分子量2000以下の化合物を含むことを特徴とする下層膜形成組成物、
第3観点として、少なくとも二つのエポキシ基を有する分子量2000以下の化合物及びフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物を含むことを特徴とする下層膜形成組成物、
第4観点として、フェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造、及びエポキシ基を有する高分子化合物を含むことを特徴とする下層膜形成組成物、
第5観点として、前記カルボキシル基を有する高分子化合物がアクリル酸又はメタクリル酸を単位構造として含むものである第1観点又は第3観点に記載の下層膜形成組成物、
第6観点として、前記フェノール性水酸基を有する高分子化合物がヒドロキシスチレンを単位構造として含むものである第1観点又は第3観点に記載の下層膜形成組成物、
第7観点として、前記少なくとも二つのエポキシ基を有する分子量2000以下の化合物が、少なくとも三つのエポキシ基を含み、かつ芳香環構造を含まない化合物である第3観点に記載の下層膜形成組成物、
第8観点として、前記少なくとも二つのカルボキシル基を有する分子量2000以下の化合物が、式(1)

(式中、p及びqは1〜6の数を表し、Rは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数3〜6のアルケニル基、ベンジル基、フェニル基又は−(CH2)rCOOH(式中、rは1〜6の数を表す)を表す。)で表される化合物である第2観点に記載の下層膜形成組成物、
第9観点として、前記少なくとも二つのエポキシ基を有する分子量2000以下の化合物が、式(2)

(式中、A、A及びAはそれぞれ水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Rは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数3〜6のアルケニル基、ベンジル基、フェニル基又は式(3)を表す。)

で表される化合物である第3観点に記載の下層膜形成組成物、
第10観点として、前記少なくとも二つのフェノール性水酸基を有する分子量2000以下の化合物が、ヒドロキシスチレンオリゴマー、置換ビフェノール化合物、置換トリスフェノール化合物、メチロール化フェノール化合物、メチロール化ビスフェノール化合物、置換フェノールノボラック、置換クレゾールノボラックからなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物である第2観点に記載の下層膜形成組成物、
第11観点として、吸光性化合物を更に含む、第1観点乃至第10観点のいずれか一つに記載の下層膜形成組成物、
第12観点として、第1観点乃至第11観点のいずれか一つに記載の下層膜形成組成物を基板上に塗布し焼成することによる、半導体装置の製造に用いる下層膜の形成方法、
第13観点として、第1観点乃至第11観点のいずれか一つに記載の下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成して下層膜を形成する工程、該下層膜上にフォトレジスト層を形成する工程、前記下層膜と前記フォトレジスト層で被覆された半導体基板を露光する工程、露光後に前記フォトレジスト層を現像する工程、を含む半導体装置の製造に用いるフォトレジストパターンの形成方法、
第14観点として、前記露光が248nm、193nm又は157nmの波長の光により行われる第13観点に記載のフォトレジストパターンの形成方法、である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明はエポキシ基を有する高分子化合物及びフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物を含む下層膜形成組成物、エポキシ基を有する高分子化合物及び少なくとも二つのフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する分子量2000以下の化合物を含む下層膜形成組成物、少なくとも二つのエポキシ基を有する分子量2000以下の化合物及びフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物を含む下層膜形成組成物、及び、エポキシ基及びフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物を含む下層膜形成組成物、である。
本発明の下層膜形成組成物は、基本的にエポキシ基を有する高分子化合物又は分子量2000以下の化合物、フェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物又は分子量2000以下の化合物、又は、フェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物、及び溶媒からなり、任意成分として吸光性化合物、界面活性剤等を含有するものである。本発明の下層膜形成組成物の固形分は、組成物の全質量に対して例えば0.1〜70質量%であり、また、例えば0.1〜50質量%であり、または、0.5〜50質量%である。ここで固形分とは、下層膜形成組成物の全成分から溶剤成分を除いたものである。そして、固形分中でのエポキシ基を有する成分(高分子化合物、化合物)及びフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する成分(高分子化合物、化合物)の割合としては70質量%以上であり、例えば80〜100質量%であり、また、80〜99質量%であり、または90〜99質量%である。
本発明の下層膜形成組成物はエポキシ基を有する高分子化合物及びフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物を含むものである。
エポキシ基を有する高分子化合物としては、エポキシ基を有する高分子化合物であれば、特に制限なく使用することができる。このような高分子化合物は、エポキシ基を有する付加重合性モノマーを用いた付加重合により製造することができ、また、水酸基を有する高分子化合物とエピクロルヒドリン、グリシジルトシレート等のエポキシ基を有する化合物との反応により製造することができる。
エポキシ基を有する付加重合性モノマーとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等を挙げることができる。そして、エポキシ基を有する高分子化合物は、このようなモノマー一種のみから製造され、または、二種以上のモノマーの組合せより製造される。
また、本発明のエポキシ基を有する高分子化合物としては、前記のエポキシ基を有する付加重合性モノマーと他の付加重合性モノマーの重合によって製造された高分子化合物を使用することもできる。
他の付加重合性モノマーとしては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、アクリルアミド化合物、メタクリルアミド化合物、ビニル化合物、スチレン化合物、マレイミド化合物、マレイン酸無水物、アクリロニトリル等が挙げられる。
アクリル酸エステル化合物としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−エチル−2−アダマンチルアクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルアクリレート、2−メトキシブチル−2−アダマンチルアクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルアクリレート、8−エチル−8−トリシクロデシルアクリレート、5−アクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン等が挙げられる。
メタクリル酸エステル化合物としては、エチルメタクリレート、ノルマルプロピルメタクリレート、ノルマルペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,2−トリクロロエチルメタクリレート、メチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ノルマルラウリルメタクリレート、ノルマルステアリルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、ノルマルブトキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルメタクリレート、2−メトキシブチル−2−アダマンチルメタクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、8−エチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、5−メタクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン等が挙げられる。
また、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物としては下式(a)〜(g)で表される化合物を挙げることもできる。

アクリルアミド化合物としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。
メタクリル酸アミド化合物としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド等が挙げられる。
ビニル化合物としては、ビニルエーテル、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等が挙げられる。
スチレン化合物としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
エポキシ基を有する高分子化合物は、また、水酸基を有する高分子化合物とエピクロルヒドリン、グリシジルトシレート等のエポキシ基を有する化合物から製造することができる。例えば、フェノールノボラックとエピクロルヒドリンから製造されるエポキシフェノールノボラックや、その他エポキシクレゾールノボラック、エポキシナフトールノボラック等が挙げられる。
本発明の下層膜形成組成物に使用されるエポキシ基を有する高分子化合物の具体例としては、例えば、ポリグリシジルアクリレート、ポリグリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリレートとベンジルメタクリレートの共重合体、グリシジルアクリレートとエチルメタクリレートの共重合体、グリシジルメタクリレートと2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの共重合体、グリシジルメタクリレートとベンジルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体、グリシジルメタクリレートとスチレンの共重合体、グリシジルメタクリレートとスチレンと2−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体等が挙げられる。
フェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物としてはフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物であれば、特に制限なく使用することができる。本発明において、保護されたカルボキシル基とは、カルボキシル基をアルキルビニルエーテルによりヘミアセタールエステル体にしたもの、アミンによりアミド体にしたもの、アルコールによりエステル体にしたもの、イソブテンによりtert−ブチルエステル体にしたもの、又はシリルハライド化合物によりシリルエステルにしたもの等である。そしてこのような保護されたカルボキシル基としては例えば、式(i)〜(m)

(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基、ベンジル基又はフェニル基を表す。)で表されるような基である。Rとしては、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、及びノルマルブチル基等である。
このような高分子化合物は、フェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する付加重合性モノマーを用いた付加重合により製造することができる。
フェノール性水酸基を有する付加重合性モノマーとしてはヒドロキシスチレン等が挙げられる。
カルボキシル基を有する付加重合性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸、ビニル酢酸等が挙げられる。
保護されたカルボキシル基を有する付加重合性モノマーとしては、1−メトキシエチルメタクリレート、1−エトキシエチルメタクリレート、1−イソプロポキシエチルメタクリレート等のメタクリル酸ヘミアセタールエステル化合物、1−メトキシエチルアクリレート、1−tert−ブトキシエチルアクリレート、1−イソプロポキシエチルアクリレート等のアクリル酸ヘミアセタールエステル化合物、マレイン酸ヘミアセタールエステル化合物、フマル酸ヘミアセタールエステル化合物、イタコン酸ヘミアセタールエステル化合物、アクリルアミド化合物、メタクリルアミド化合物、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、メタクリル酸−tert−ブチルエステル、アクリル酸−tert−ブチルエステル、アクリル酸トリメチルシリルエステル、メタクリル酸トリメチルシリルエステル等が挙げられる。
酸無水物構造を有する付加重合性モノマーとしては、無水マレイン酸、非環状無水物をもったメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、ビニル化合物等が挙げられる。
そして、フェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物は、このようなモノマー一種のみから製造され、または、二種以上のモノマーの組合せより製造される。
また、本発明のフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物としては、前記のフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する付加重合性モノマーと他の付加重合性モノマーの重合によって製造された高分子化合物を使用することもできる。
他の付加重合性モノマーとしては、前記のアクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、アクリルアミド化合物、メタクリルアミド化合物、ビニル化合物、スチレン化合物、マレイミド化合物、マレイン酸無水物、アクリロニトリル等が挙げられる。
本発明の下層膜形成組成物に使用されるフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物の具体例としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とベンジルメタクリレートの共重合体、ポリ(4−ヒドロキシスチレン)、メタクリル酸とメチルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体、メタクリル酸とベンジルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体、4−ヒドロキシスチレンとエチルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体、4−ヒドロキシスチレンとエチルメタクリレートの共重合体、4−ヒドロキシスチレンとスチレンの共重合体、1−ノルマルプロポキシエチルメタクリレートとベンジルメタクリレートの共重合体、1−ノルマルプロポキシエチルアクリレートとベンジルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体、マレイン酸無水物とエチルメタクリレートの共重合体、4−ヒドロキシスチレンとマレイン酸無水物とイソプロピルアクリレートの共重合体等が挙げられる。
またフェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、その他、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ナフトールノボラック等が挙げられる。
本発明の下層膜形成組成物はエポキシ基を有する高分子化合物及び、フェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物を含むものであり、その含有割合としては、質量比で、エポキシ基を有する高分子化合物/フェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物、として例えば10/1〜1/10であり、好ましくは5/1〜1/5であり、または3/1〜1/3である。また、本発明の下層膜形成組成物に含まれる、このような高分子化合物の分子量としては、重量平均分子量として1000〜500000であり、好ましくは1000〜200000であり、又は3000〜150000であり、又は3000〜50000である。
本発明の下層膜形成組成物はエポキシ基及びフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物を含むものである。
このような高分子化合物は、フェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する付加重合性モノマーとエポキシ基を有する付加重合性モノマーの重合により製造することができる。付加重合性モノマーとしては、それぞれ、前記のものを挙げることができる。
本発明の下層膜形成組成物に使用されるエポキシ基及びフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物の具体例としては、例えば、アクリル酸とグリシジルアクリレートの共重合体、メタクリル酸とグリシジルメタクリレートの共重合体、メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとベンジルメタクリレートの共重合体、4−ヒドロキシスチレンとグリシジルメタクリレートの共重合体、4−ヒドロキシスチレンとメタクリル酸とグリシジルメタクリレートの共重合体、スチレンと無水マレイン酸とグリシジルメタクリレートの共重合体、グリシジルメタクリレートと1−ノルマルプロポキシエチルメタクリレートの共重合体、グリシジルメタクリレートとベンジルメタクリレートと1−ノルマルプロポキシエチルメタクリレートの共重合体等が挙げられる。
本発明の下層膜形成組成物に含まれる、このような高分子化合物の分子量としては、重量平均分子量として1000〜500000であり、好ましくは1000〜200000であり、又は3000〜150000であり、又は3000〜50000である。
本発明で用いられる、付加重合性モノマーより製造される高分子化合物はランダム重合体、ブロック重合体あるいはグラフト重合体のいずれであってもよい。そして、そのような高分子化合物はラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などの方法により製造することができる。また、その形態は溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の方法が挙げられる。
本発明の下層膜形成組成物はエポキシ基を有する高分子化合物及び少なくとも二つのフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する分子量2000以下の化合物を含むものである。
エポキシ基を有する高分子化合物としては、前記の高分子化合物を使用することができる。
少なくとも二つのフェノール性水酸基を有する分子量2000以下の化合物としては、例えば、ヒドロキシスチレンオリゴマー、置換ビフェノール化合物、置換トリスフェノール化合物、メチロール化フェノール化合物、メチロール化ビスフェノール化合物、置換フェノールノボラック、置換クレゾールノボラックが挙げられる。
少なくとも二つのカルボキシル基を有する分子量2000以下の化合物としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,4−トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、ブタンテトラカルボン酸等が挙げられる。また、式(1)

で表される化合物が挙げられる。ここで、p及びqは1〜6の数を表し、Rは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数3〜6のアルケニル基、ベンジル基、フェニル基又は−(CH)rCOOH(式中、rは1〜6の数を表す)を表す。Rとしては、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、及び2−プロペニル基等である。式(1)の化合物の具体例としては、例えばトリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌル酸、トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌル酸等である。
少なくとも二つの酸無水物構造を有する分子量2000以下の化合物としては、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物等が挙げられる。
少なくとも二つの保護されたカルボキシル基有する分子量2000以下の化合物としては、例えば、それぞれプロピルビニルエーテルでヘミアセタール化されたテレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、イソフタル酸、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌル酸、トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、ブタンテトラカルボン酸等が挙げられる。
これらの化合物は一種のみを用いることができるが、また、二種以上の化合物を組み合わせて使用することもできる。
本発明の下層膜形成組成物におけるエポキシ基を有する高分子化合物と少なくとも二つのフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する分子量2000以下の化合物の含有割合としては、質量比で、エポキシ基を有する高分子化合物/少なくとも二つのフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する分子量2000以下の化合物、として、例えば10/1〜1/10であり、好ましくは5/1〜1/5であり、または3/1〜1/3である。
また、本発明の下層膜形成組成物は少なくとも二つのエポキシ基を有する分子量2000以下の化合物、及びフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物を含むものである。
フェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物としては、前記の高分子化合物を使用することができる。
少なくとも二つのエポキシ基を有する分子量2000以下の化合物としては、例えば、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフルオロアセトンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル等が挙げられる。また、式(2)

で表される化合物が挙げられる。ここで、A、A及びAはそれぞれ水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Rは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数3〜6のアルケニル基、ベンジル基、フェニル基又は式(3)を表す。Rとしては、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、2,3−エポキシプロピル基及び2−プロペニル基等である。

式(2)の化合物の具体例としては、例えばトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。これらの化合物は一種のみを用いることができるが、また、二種以上の化合物を組み合わせて使用することもできる。
本発明の下層膜形成組成物における少なくとも二つのエポキシ基を有する分子量2000以下の化合物及びフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物の含有割合としては、質量比で、少なくとも二つのエポキシ基を有する分子量2000以下の化合物/フェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物、として、例えば10/1〜1/10であり、好ましくは5/1〜1/5であり、または3/1〜1/3である。
本発明の下層膜形成組成物は前記のように、エポキシ基を有する成分(高分子化合物、化合物)と、フェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する成分(高分子化合物、化合物)とを含むものである。この組成物が半導体基板上に塗布され、焼成により下層膜が形成される際に、エポキシ基とフェノール性水酸基、カルボキシル基または酸無水物構造が反応しエポキシ基の開環反応が起こる。また、保護されたカルボキシル基は焼成中にカルボキシル基を与え、その後エポキシ基との反応が起こる。すなわち、高分子化合物同士、又は高分子化合物と分子量2000以下の化合物とが反応することになり、その結果、高分子化合物同士、又は高分子化合物と分子量2000以下の化合物よりなる三次元の架橋構造を形成することとなる。そして、架橋構造のため、形成される下層膜は強固なものとなり、その上層に塗布されるフォトレジスト組成物に一般的に使用されている有機溶剤、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ピルビン酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等に対する溶解性が低いものとなる。このため、本発明の下層膜形成組成物より形成される下層膜はフォトレジストとのインターミキシングを起こさないものとなる。
また、エポキシ基とフェノール性水酸基、カルボキシル基または酸無水物構造との反応は焼成条件下で容易に進行するため、触媒を必要としないものである。そのため、本発明の下層膜形成組成物には、従来の架橋性下層膜を形成するための組成物において架橋触媒として汎用されていたスルホン酸化合物を添加する必要がないものである。
架橋構造を形成するためには分子量2000以下の化合物には少なくとも二つのエポキシ基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造が含まれていることが必要である。三つ以上のエポキシ基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造が含まれている化合物が好ましく用いられる。
本発明の下層膜形成組成物には、上記以外に必要に応じて更に、吸光性化合物レオロジー調整剤、接着補助剤、界面活性剤などを添加することができる。
吸光性化合物としては、下層膜の上に設けられるフォトレジスト層中の感光成分の感光特性波長領域における光に対して高い吸収能を有し、基板からの反射によって生じる定在波や基板表面の段差による乱反射を防げるものであれば特に制限なく使用することができる。下層膜形成組成物に吸光性化合物が添加された場合、形成される下層膜は高い反射光防止効果を有することとなり、反射防止膜としての機能に優れたものとなる。
そのような吸光性化合物としては、例えば、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アゾ化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、アントラキノン化合物、トリアジン化合物、トリアジントリオン化合物、キノリン化合物などを使用することができる。ナフタレン化合物、アントラセン化合物、トリアジン化合物、トリアジントリオン化合物が好ましく用いられる。そして、吸光性化合物も前記のエポキシ基を有する成分と反応できることが好ましく、そのため、カルボキシル基又はフェノール性水酸基を有する化合物が好ましく使用される。具体例としては、例えば、1−ナフタレンカルボン酸、2−ナフタレンカルボン酸、1−ナフトール、2−ナフトール、ナフチル酢酸、1−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、3,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、6−ブロモ−2−ヒドロキシナフタレン、2,6−ナフタレンジカルボン酸、9−アントラセンカルボン酸、10−ブロモ−9−アントラセンカルボン酸、アントラセン−9,10−カルボン酸、1−アントラセンカルボン酸、1−ヒドロキシアントラセン、1,2,3−アントラセントリオール、2,7,9−アントラセントリオール、安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、4−ブロモ安息香酸、3−ヨード安息香酸、2,4,6−トリブロモフェノール、2,4,6−トリブロモレゾルシノール、3,4,5−トリヨード安息香酸、2,4,6−トリヨード−3−アミノ安息香酸、2,4,6−トリヨード−3−ヒドロキシ安息香酸、2,4,6−トリブロモ−3−ヒドロキシ安息香酸、等を挙げることができる。
これら吸光性化合物は1種のみを用いることもできるが、2種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明の下層膜形成組成物に吸光性化合物が含まれる場合その添加量は、固形分中、30質量%以下であり、例えば1〜20質量%であり、又は1〜10質量%である。
レオロジー調整剤は、主に下層膜形成組成物の流動性を向上させ、特に焼成工程において、ホール内部へ下層膜形成組成物の充填性を高める目的で添加される。具体例としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルイソデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジノルマルブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソオクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジノルマルブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、またはノルマルブチルステアレート、グリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体を挙げることができる。これらのレオロジー調整剤は、下層膜形成組成物の固形分中、通常10質量%未満の割合で添加される。
接着補助剤は、主に基板あるいは反射防止膜又はフォトレジスト層と下層膜形成組成物より形成された下層膜の密着性を向上させ、特に現像において剥離しないようにする目的で添加される。具体例としては、例えば、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、ビニルトリクロロシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環状化合物や、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア等の尿素化合物を挙げることができる。これらの接着補助剤は、下層膜形成全組成物の固形分中、通常2質量%未満の割合で添加される。
本発明の下層膜形成組成物には、ピンホールやストレーション等の発生がなく、表面むらに対する塗布性をさらに向上させるために、界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフエノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロツクコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、商品名エフトップEF301,EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製)、商品名メガファックF171、F173、R−08、R−30(大日本インキ(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、商品名アサヒガードAG710,サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等を上げることができる。これらの界面活性剤の添加量は、本発明の下層膜形成組成物の固形分中、1質量%以下である。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上を組み合わせて添加することもできる。
本発明の下層膜形成組成物において、前記の高分子化合物等の固形分を溶解させる為の溶剤としては、種々の溶剤を使用することができる。例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、等を用いることができる。これらの有機溶剤は単独で、または2種以上の組合せで使用される。さらに、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の高沸点溶剤を混合して使用することができる。
以下、本発明の下層膜形成組成物の使用について説明する。
半導体基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、ガラス基板、ITO基板等)の上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明の下層膜形成組成物が塗布され、その後、焼成することにより下層膜が形成される。焼成する条件としては、焼成温度80℃〜250℃、焼成時間0.3〜60分間の中から適宜、選択される。下層膜の膜厚としては、例えば0.01〜3.0μmであり、また、例えば0.03〜1.0μmである。
次いで、下層膜の上に、フォトレジスト層が、直接又は反射防止膜の形成後、形成され、その後、露光、現像、ドライエッチングによる基板加工が行なわれる。
本発明の下層膜形成組成物より形成される下層膜は、半導体装置製造のプロセスにおいては、フォトレジストの露光、現像、基板の加工などの後、最終的には、完全に除去されるものであり、その除去は、通常、ドライエッチングによって行なわれる。
本発明の下層膜の上層に塗布、形成されるフォトレジストとしてはネガ型、ポジ型いずれも使用でき、ノボラック樹脂と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジストなどがあり、例えば、シプレー社製商品名APEX−E、住友化学工業(株)製商品名PAR710、信越化学工業(株)製商品名SEPR430等が挙げられる。そして、フォトレジストを形成後、所定のマスクを通して露光し、現像、リンス、乾燥することによりフォトレジストパターンを得ることができる。必要に応じて露光後加熱(PEB:Post Exposure Bake)を行うこともできる。
本発明のリソグラフィープロセス用下層膜形成組成物を使用して形成した下層膜の上に形成されたポジ型フォトレジストの現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。さらに、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、アニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第四級アンモニウム塩、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びコリンである。
半導体基板上に本発明の下層膜が形成される前又は後に有機系反射防止膜層が塗布、形成されることもできる。そこで使用される反射防止膜組成物としては特に制限はなく、これまでリソグラフィープロセスにおいて慣用されているものの中から任意に選択して使用することができ、また、慣用されている方法、例えば、スピナー、コーターによる塗布及び焼成によって反射防止膜を形成することができる。反射防止膜組成物としては、例えば、吸光性化合物、樹脂及び溶剤を主成分とするもの、化学結合により連結した吸光性基を有する樹脂、架橋剤及び溶剤を主成分とするもの、吸光性化合物、架橋剤及び溶剤を主成分とするもの、吸光性を有する高分子架橋剤及び溶剤を主成分とするもの、等が挙げられる。これらの反射防止膜組成物はまた、必要に応じて、酸成分、酸発生剤成分、レオロジー調整剤等を含むことができる。吸光性化合物としては、反射防止膜の上に設けられるフォトレジスト中の感光成分の感光特性波長領域における光に対して高い吸収能を有するものであれば用いることができ、例えば、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アゾ化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、アントラキノン化合物、トリアジン化合物等が挙げられる。樹脂としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリスチレン、ノボラック樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。化学結合により連結した吸光性基を有する樹脂としては、アントラセン環、ナフタレン環、ベンゼン環、キノリン環、キノキサリン環、チアゾール環といった吸光性芳香環構造を有する樹脂を挙げることができる。
本発明の下層膜形成組成物が塗布される基板はまた、その表面にCVD法などで形成された無機系の反射防止膜を有するものであってもよく、その上に本発明の下層膜を塗布、形成することもできる。
本発明の下層膜形成組成物より形成される下層膜は、また、リソグラフィープロセスにおいて使用される光の波長によっては、その光に対する吸収を有することがあり、そのような場合には、基板からの反射光を防止する効果を有する層、すなわち、反射防止膜として使用することができる。
下層膜をKrFエキシマレーザー(波長248nm)の照射光を使用したリソグラフィープロセスで反射防止膜として使用する場合、下層膜形成組成物固形分中には、アントラセン環又はナフタレン環を有する成分が含まれていることが好ましい。そして、下層膜をArFエキシマレーザー(波長193nm)の照射光を使用したリソグラフィープロセスで反射防止膜として使用する場合、下層膜形成組成物固形分中には、ベンゼン環を有する成分が含まれていることが好ましい。また、下層膜をF2エキシマレーザー(波長157nm)の照射光を使用したリソグラフィープロセスで反射防止膜として使用する場合、下層膜形成組成物固形分中には、臭素原子又はヨウ素原子を有する成分が含まれていることが好ましい。
さらに、本発明の下層膜は、基板とフォトレジストとの相互作用の防止するための層、フォトレジストに用いられる材料又はフォトレジストへの露光時に生成する物質の基板への悪影響を防ぐ機能とを有する層、加熱焼成時に基板から生成する物質の上層フォトレジストへの拡散、悪作用を防ぐ機能を有する層、半導体基板誘電体層によるフォトレジスト層のポイズニング効果を減少させるためのバリア層として使用することも可能である。
更に、下層膜形成組成物より形成される下層膜は、デュアルダマシンプロセスで用いられるビアホールが形成された基板に適用され、ホールを隙間なく充填することができる埋め込み材として、又は、基板表面を平坦化するための平坦化材として使用することもできる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
【実施例】
合成例1
ベンジルメタクリレート5.44g、グリシジルメタクリレート5.0g及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート5.6gを乳酸エチル64gに溶解させた後、反応液を70℃に昇温し、同時に反応液中に窒素を流した。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2gを添加した。窒素雰囲気下で24時間撹拌後、重合停止剤として4−メトキシフェノール0.05gを添加し、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体を含む溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は25000であった。
合成例2
ベンジルメタクリレート5.44gとグリシジルメタクリレート10.6gを乳酸エチル64gに溶解させた後、反応液を70℃に昇温し、同時に反応液中に窒素を流した。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2gを添加した。窒素雰囲気下で24時間撹拌後、重合停止剤として4−メトキシフェノール0.05gを添加し、ベンジルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体を含む溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は22000であった。
合成例3
ベンジルメタクリレート5.44g、メタクリル酸5.3g及びグリシジルメタクリレート5.3gを乳酸エチル64gに溶解させた後、反応液を70℃に昇温し、同時に反応液中に窒素を流した。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2gを添加した。窒素雰囲気下で24時間撹拌後、重合停止剤として4−メトキシフェノール0.05gを添加し、ベンジルメタクリレート、メタクリル酸及びグリシジルメタクリレートの共重合体を含む溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は114000であった。
合成例4
グリシジルメタクリレート16gを乳酸エチル64gに溶解させた後、反応液を70℃に昇温し、同時に反応液中に窒素を流した。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2gを添加した。窒素雰囲気下で24時間撹拌後、重合停止剤として4−メトキシフェノール0.05gを添加し、ポリグリシジルメタクリレートを含む溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は20000であった。
合成例5
クレゾールノボラック樹脂(旭チバ(株)製品、商品名ECN1299、重量平均分子量3900)10gをプロピレングリコールモノメチルエーテル80gに溶解させた。その溶液に、9−アントラセンカルボン酸9.7gとベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.26gを添加した後、105℃で24時間反応させ、下式(4)の高分子化合物を含む溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は5600であった。

【実施例1】
トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌル酸0.3gと合成例1で得た高分子化合物1.2gを含む溶液6gを混合し、乳酸エチル28.5gを加えた後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、その後、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して下層膜形成組成物溶液を調製した。
【実施例2】
トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌル酸0.3gと合成例2で得た高分子化合物1.2gを含む溶液6gを混合し、乳酸エチル28.5gを加えた後、実施例1と同様の方法により濾過をして下層膜形成組成物溶液を調製した。
【実施例3】
ポリアクリル酸0.8gとトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート0.7gを混合し、乳酸エチル28.5gを加えた後、実施例1と同様の方法により濾過をして下層膜形成組成物溶液を調製した。
【実施例4】
合成例3で得た高分子化合物1.5gを含む溶液7.5gに乳酸エチル22.5gに加えた後、実施例1と同様の方法により濾過をして下層膜形成組成物溶液を調製した。
【実施例5】
合成例4で得た高分子化合物0.75gを含む溶液3.75gとポリアクリル酸0.75gを混合し、乳酸エチル25.5gを加えた後、実施例1と同様の方法により濾過をして濾過をして下層膜形成組成物溶液を調製した。
比較例1
上記合成例5で得た高分子化合物2gを有する溶液10gに、架橋剤としてヘキサメトキシメチルメラミン0.53g、p−トルエンスルホン酸1水和物0.05gを混合し、乳酸エチル14.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテル1.13g、及びシクロヘキサノン2.61gに溶解させ9%溶液とした後、実施例1と同様の方法により濾過をして下層膜形成組成物溶液を調製した。
有機溶剤に対する溶解性の試験
実施例1〜5、及び比較例1で得た溶液をスピナーにより、シリコンウエハー上に塗布した。ホットプレート上で205℃1分間焼成し、下層膜(膜厚0.23μm)を形成した。この下層膜をフォトレジストに使用する溶剤、例えば乳酸エチル、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルに浸漬し、その溶剤に不溶であることを確認した。
インターミキシングの試験
実施例1〜5、及び比較例1で得た溶液をスピナーにより、シリコンウエハー上に塗布した。ホットプレート上で205℃1分間焼成し、下層膜(膜厚0.23μm)を形成し、その膜厚を測定した。この下層膜の上に、市販のフォトレジスト溶液(住友化学工業(株)製、PAR710等)をスピナーにより塗布した。ホットプレート上で90℃1分間加熱し、フォトレジストを露光後、露光後加熱(PEB)を90℃1.5分間行った。フォトレジストを現像させた後、下層膜の膜厚を測定し、実施例1〜5、及び比較例1で得た下層膜とフォトレジスト層とのインターミキシングが起こらないことを確認した。
光学パラメータの測定
実施例1で調製した下層膜形成組成物溶液をスピナーにより、シリコンウェハー上に塗布した。ホットプレート上で205℃1分間焼成し、下層膜(膜厚0.08μm)を形成した。そして、これらの下層膜を分光エリプソメーターにより、波長193nmでの屈折率(n値)及び減衰係数(k値)を測定したところ、屈折率(n値)は1.82であり、減衰係数(k値)は0.32であった。
ドライエッチング速度の測定
実施例1で調製した下層膜形成組成物溶液をスピナーにより、シリコンウェハー上に塗布した。ホットプレート上で205℃1分間焼成し、下層膜を形成した。そして日本サイエンティフィック製RIEシステムES401を用い、ドライエッチングガスとしてCFを使用した条件下でドライエッチング速度を測定した。また、同様にフォトレジスト溶液(住友化学工業(株)製、商品名PAR710)をスピナーにより、シリコンウェハー上に塗布後、加熱しフォトレジストの膜を作成した。そして日本サイエンティフィック製RIEシステムES401を用い、ドライエッチングガスとしてCFを使用した条件下でドライエッチング速度を測定した。実施例1の下層膜と住友化学工業(株)製フォトレジスト、商品名PAR710のドライエッチング速度を比較したところ、下層膜のドライエッチングの速度はフォトレジストの1.3倍であった。
以上説明したように、本発明は、強酸触媒を必要としない架橋反応を利用して形成される下層膜及び該下層膜を形成するための下層膜形成組成物についてのものである。
本発明の下層膜形成組成物は、強酸触媒成分を含まないため、保存安定性に優れたものである。
本発明の下層膜形成組成物により、フォトレジストと比較して大きなドライエッチング速度を有し、更にフォトレジストとのインターミキシングが起こさない、優れた下層膜を提供することができる。そして、本発明の下層膜は、反射防止膜、平坦化膜、フォトレジスト層の汚染防止膜として用いることができる。これにより、半導体装置製造のリソグラフィープロセスにおけるフォトレジストパターンの形成を、容易に、精度良く行うことができるようになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基を有する高分子化合物及びフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物を含むことを特徴とする下層膜形成組成物。
【請求項2】
エポキシ基を有する高分子化合物及び少なくとも二つのフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する分子量2000以下の化合物を含むことを特徴とする下層膜形成組成物。
【請求項3】
少なくとも二つのエポキシ基を有する分子量2000以下の化合物及びフェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造を有する高分子化合物を含むことを特徴とする下層膜形成組成物。
【請求項4】
フェノール性水酸基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基または酸無水物構造、及びエポキシ基を有する高分子化合物を含むことを特徴とする下層膜形成組成物。
【請求項5】
前記カルボキシル基を有する高分子化合物がアクリル酸又はメタクリル酸を単位構造として含むものである請求項1又は請求項3に記載の下層膜形成組成物。
【請求項6】
前記フェノール性水酸基を有する高分子化合物がヒドロキシスチレンを単位構造として含むものである請求項1又は請求項3に記載の下層膜形成組成物。
【請求項7】
前記少なくとも二つのエポキシ基を有する分子量2000以下の化合物が、少なくとも三つのエポキシ基を含み、かつ芳香環構造を含まない化合物である請求項3に記載の下層膜形成組成物。
【請求項8】
前記少なくとも二つのカルボキシル基を有する分子量2000以下の化合物が、式(1)

(式中、p及びqは1〜6の数を表し、Rは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数3〜6のアルケニル基、ベンジル基、フェニル基又は−(CH)rCOOH(式中、rは1〜6の数を表す)を表す)で表される化合物である請求項2に記載の下層膜形成組成物。
【請求項9】
前記少なくとも二つのエポキシ基を有する分子量2000以下の化合物が、式(2)

(式中、A、A及びAはそれぞれ水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Rは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数3〜6のアルケニル基、ベンジル基、フェニル基又は式(3)を表す)

で表される化合物である請求項3に記載の下層膜形成組成物。
【請求項10】
前記少なくとも二つのフェノール性水酸基を有する分子量2000以下の化合物が、ヒドロキシスチレンオリゴマー、置換ビフェノール化合物、置換トリスフェノール化合物、メチロール化フェノール化合物、メチロール化ビスフェノール化合物、置換フェノールノボラック、置換クレゾールノボラックからなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物である請求項2に記載の下層膜形成組成物。
【請求項11】
吸光性化合物を更に含む、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の下層膜形成組成物。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の下層膜形成組成物を基板上に塗布し焼成することによる、半導体装置の製造に用いる下層膜の形成方法。
【請求項13】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成して下層膜を形成する工程、該下層膜上にフォトレジスト層を形成する工程、前記下層膜と前記フォトレジスト層で被覆された半導体基板を露光する工程、露光後に前記フォトレジスト層を現像する工程、を含む半導体装置の製造に用いるフォトレジストパターンの形成方法。
【請求項14】
前記露光が248nm、193nm又は157nmの波長の光により行われる請求項13に記載のフォトレジストパターンの形成方法。

【国際公開番号】WO2004/090640
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505235(P2005−505235)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004764
【国際出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】