エポキシ基含有ビフェニル化合物およびその製造方法、並びに表面改質剤、接着助剤および接着剤
【課題】 高い耐熱性を有する表面改質剤、接着助剤および接着剤用途に適したエポキシ基含有ビフェニル化合物およびその製造方法の提供。
【解決手段】一般式(2)で例示されるヒドロシリル化工程を経由するエポキシ基含有ビフェニル化合物。(Rはアルキル基であり、mは0〜4の整数である。このエポキシ基含有ビフェニル化合物としては、Rがメチル基であり、mが3であることが好ましい。)
【解決手段】一般式(2)で例示されるヒドロシリル化工程を経由するエポキシ基含有ビフェニル化合物。(Rはアルキル基であり、mは0〜4の整数である。このエポキシ基含有ビフェニル化合物としては、Rがメチル基であり、mが3であることが好ましい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などの表面改質剤や接着助剤、あるいは封止材として使用することのできるエポキシ基含有ビフェニル化合物およびその製造方法、並びに表面改質剤、接着助剤および接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば無機物質よりなる基材に、接着させたい物体を接着させるための接着剤として、熱硬化性樹脂などよりなる有機接着剤を用いる場合、基材の表面を例えばシランカップリング剤やチタンカップリング剤などの表面改質剤により改質することが行われている。
表面改質剤としては、特に、エポキシ基を含有するシランカップリング剤が、高い表面改質性を有するものとして知られている。これは、基材の表面(改質表面)において強固なシロキサンネットワークが形成されるためであり、当該基材の表面に有機接着剤への高い接着性が付与される。なお、表面改質性を有さないが、エポキシ基を有して耐熱性の高い化合物が非特許文献1および特許文献1,2に開示されている。
【0003】
一方、最近、電子回路の高密度化・高機能化のために作製した回路基板を積層することが行われており、十数層の積層基板などが要求され始めている。従来、回路基板としては熱硬化性樹脂よりなるものが使用されてきたが、熱硬化性樹脂は以下のような欠点が指摘されている。
すなわち、熱硬化性樹脂は誘電率や吸水性などの諸物性で液晶ポリマーフィルムのようなエンジニアリングプラスチックスに劣ることや、熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂よりなる液晶ポリマーフィルムとを接着する場合にその接着性が不十分となること、さらには、熱硬化性樹脂はリサイクルができないことなどが指摘されている。
従って、熱可塑性エンジニアリングプラスチックスのみからなる回路基板による積層基板が今後必要不可欠となると考えられている。
【0004】
しかしながら、現在では、エポキシ基を有するシランカップリング剤によって銅箔表面を前処理し、液晶ポリマーフィルムと銅箔とを融着させることが試みられているものの、液晶ポリマーフィルムの融着点が300℃と高く、一方で従来のエポキシ基を有するシランカップリング剤(例えば「KBM−403」(信越化学社製)など)は耐熱性が低いため、この融着において十分な密着性が得られない、という問題がある。
【0005】
特許文献3には、耐熱性を有するシランカップリング剤であって高い表面改質性を有するものが提案されているが、このシランカップリング剤は、フルオロアルキル鎖を有するために撥水撥油作用を発揮し、これによって非付着性、非接着性、防汚性、潤滑性、光沢性などを発現する耐熱離型剤であって、接着性は有さないものである。
【0006】
【非特許文献1】J Nat Prod Vol.64 No.5 Page608−611(2001)
【特許文献1】特開平7−53671号公報
【特許文献2】特開平5−301452号公報
【特許文献3】特許第3939226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、高い耐熱性を有し、接着に供することのできるエポキシ基含有ビフェニル化合物並びに表面改質剤、接着助剤および接着剤を提供することにある。
本発明の別の目的は、上記のエポキシ基含有ビフェニル化合物を得ることができるエポキシ基含有ビフェニル化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0009】
【化1】
〔上記一般式(1)において、Yはエポキシ基を含有する基、Zはアルキレン基、MはIV族元素、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基またはイソシアネート基である。また、nは1〜3の整数である。〕
【0010】
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物においては、MがSiまたはTiであることが好ましい。
【0011】
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物としては、下記一般式(2)で表されるものであることが好ましい。
【0012】
【化2】
〔上記一般式(2)において、Rはアルキル基である。また、mは0〜4の整数である。〕
【0013】
また、このエポキシ基含有ビフェニル化合物としては、Rがメチル基であり、mが3であることが好ましい。
【0014】
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物の製造方法は、上記のエポキシ基含有ビフェニル化合物を製造する方法であって、
下記反応式(3)に示される反応を行って下記構造式(4)で表される中間体〔A〕を得、当該中間体〔A〕を用いて下記反応式(5)に示される反応を行って下記構造式(6)で表される中間体〔B〕を得、当該中間体〔B〕を用いて下記反応式(7)に示される反応を行うことを特徴とする。
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
【化5】
【0018】
【化6】
【0019】
【化7】
【0020】
本発明の表面改質剤は、上記のエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなることを特徴とする。
また、本発明の接着助剤は、上記のエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなり、有機接着剤が適用される無機物質よりなる基材の表面の改質に供されることを特徴とする。
前記有機接着剤としてはエポキシ樹脂よりなるものを用いることが好ましい。
【0021】
本発明の接着剤は、上記のエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなり、無機物質よりなる基材と、有機または無機物質よりなる接着対象体との接着に供されることを特徴とする。
この接着剤は、前記接着対象体が、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂よりなるものである場合に好適に使用される。
【発明の効果】
【0022】
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物によれば、高い耐熱性を得ることができる。
この理由としては、ビフェニル環の熱安定性に由来するものと推測される。
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物の製造方法によれば、上記のエポキシ基含有ビフェニル化合物を得ることができる。
【0023】
本発明の表面改質剤によれば、当該表面改質剤が高い耐熱性を有するエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなるために、改質された基材の表面について、高い耐熱性が得られる。
この理由としては、シロキサンネットワークと、改質された基材の表面において規則正しく配列したビフェニル環同士のπ−π相互作用との2つの結合系を有し、さらに前記π−π相互作用を形成するビフェニル環が各々高い熱安定性を有するためであると考えられる。
【0024】
本発明の接着助剤によれば、当該接着助剤を使用して、例えば有機接着剤が適用される無機物質よりなる基材の表面にこの接着助剤および有機接着剤を介して接着対象体を接着させた複合体を得ることができ、例えばこの複合体が胃カメラなどの殺菌消毒のために使用毎に高温で加熱されるものであったとしても、当該接着助剤が高い耐熱性を有するエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなるために、接着部位の熱劣化の程度を小さく抑制することができ、従って、この複合体について、高い使用耐久性を得ることができる。
【0025】
また、本発明の接着剤によれば、当該接着剤を使用して、例えば無機物質よりなる基材の表面にこの接着剤を介して接着対象体を接着させた複合体を得ることができ、これにより上述と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0027】
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物は、上記一般式(1)で表されるものである。
上記一般式(1)において、Yはエポキシ基を含有する基、Zはアルキレン基、MはIV族(IVA族またはIVB族)元素、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基またはイソシアネート基である。
【0028】
上記一般式(1)におけるMの具体例としては、例えばSi(ケイ素)、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、Zr(ジルコニウム)およびSn(スズ)などが挙げられ、これらのうち、特にSiおよびTiが好ましい。
【0029】
エポキシ基含有ビフェニル化合物を構成するエポキシ基を含有する基Yとしては、具体的には例えば下記式(8−a)〜式(8−d)で表されるものなどを挙げることができる。
なお、本発明において、「エポキシ基を含有する基」とは、−O−が橋かけ構造の形態となっている部位を含む有機基をいう。
【0030】
【化8】
【0031】
エポキシ基含有ビフェニル化合物を構成するアルキレン基Zは、例えば式[−(CH2 )m −]で表されるものを挙げることができる。ただし、前記式において、mは0〜4の整数であり、好ましくはmは3である。
基Zとしては、例えばメチレン基[−CH2 −]、エチレン基[−CH2 CH2 −]、トリメチレン基[−CH2 CH2 CH2 −]、メチルメチレン基[−CH(CH3 )−]、メチルエチレン基[−CH(CH3 )CH2 −]などを挙げることができ、これらのうち、表面改質剤または接着剤として用いた場合に基材の表面に密に並ぶことができることから、直鎖状に近い形状を有する基が好ましい。
【0032】
エポキシ基含有ビフェニル化合物を構成する基Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基またはイソシアネート基である。
ハロゲン原子としてはフッ素(F),塩素(Cl),臭素(Br),ヨウ素(I)を挙げることができる。
また、アルコキシ基は、−ORで表され(ただし、Rはアルキル基である。)、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などを挙げることができる。
また、アシルオキシ基としては、例えばアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基などを挙げることができる。
さらに、イソシアネート基[−NCO]を挙げることができる。
【0033】
上記一般式(1)において、nは、1〜3の整数を示す。
上記一般式(1)中のnが2である場合は、当該一般式(1)で表されるエポキシ基含有ビフェニル化合物がそれ自体で高い重合性を有するものとなる。
【0034】
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物としては、上記一般式(2)で表されるものが好ましい。
【0035】
そして、本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物としては、特に、上記一般式(2)においてRがメチル基であり、mが3である4−(2,3−エポキシプロピル)−4’−(3−トリメトキシシリルプロピル)ビフェニルを好ましく挙げることができる。以下、この化合物を「特定のエポキシ基含有ビフェニル化合物」という。
【0036】
〔特定のエポキシ基含有ビフェニル化合物の製造方法〕
このような特定のエポキシ基含有ビフェニル化合物は、具体的には、上記反応式(3)に示されるように、出発原料4,4’−ジブロモビフェニルとアリルブロミドとのグリニアル反応により、上記構造式(4)で表される4−アリル−4’−ブロモビフェニル(中間体〔A〕)を得、反応式(5)に示されるように、この中間体〔A〕とエピクロロヒドリンとのグリニアル反応によりハロアルコールを導入し(下記反応式(5−a)参照。)、単離せずに、続けて水酸化ナトリウムを加え、分子内ウィリアムソン合成により上記構造式(6)で表される4−アリル−4’−(2,3−エポキシプロピル)ビフェニル(中間体〔B〕)を得(下記反応式(5−b)参照。)、その後、反応式(7)に示されるように、この中間体〔B〕を塩化白金酸触媒下でトリメトキシシランとヒドロシリル化反応させることにより、得ることができる。
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
上記反応式(7)で示される工程において用いられる塩化白金酸触媒としては、具体的には、例えば塩化白金(IV)酸六水和物(H2 PtCl6 ・6H2 O)が挙げられる。
塩化白金酸触媒の使用量は、中間体〔B〕100質量部に対して0.01〜0.50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.10質量部である。
【0040】
〔用途〕
以上のようなエポキシ基含有ビフェニル化合物は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などの、有機接着剤が適用される、例えばガラス、金属などの無機物質よりなる基材の表面の改質に供される接着助剤などの表面改質剤や、無機物質よりなる基材と有機または無機物質よりなる接着対象体との接着に供される接着剤、あるいは封止材などとして好適に用いることができる。
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物は、基材上に接着すべき接着対象体の種類によって、それが当該エポキシ基含有ビフェニル化合物によって直接接着できるものである場合は接着剤として用い、直接接着できないものである場合は接着助剤として適用可能な別の有機接着剤と共に使用すればよい。
【0041】
接着助剤として用いる場合の無機物質に適用される有機接着剤としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびフラン樹脂などの熱硬化性樹脂よりなる接着剤を挙げることができる。
また、接着剤として用いる場合、接着される接着対象体としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ABS樹脂、高軟化点を有する、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂などの樹脂などの熱可塑性樹脂;上記に挙げた熱硬化性樹脂;ポリブタジエンラバー、ポリイソプレンラバー、エチレン−プロピレンラバー(EPM、EPDM)、スチレン−ブタジエンラバー(SBR)、ニトリルラバー、エピクロルヒドリンラバー、ネオプレンラバー、ブチルラバー、ポリサルファイド、ウレタンラバーなどのエラストマー・ゴムなどよりなるものを挙げることができる。
【0042】
以上、説明したようなエポキシ基含有ビフェニル化合物によれば、高い耐熱性を得ることができる。
この理由としては、ビフェニル環の熱安定性に由来するものと推測される。
【0043】
また、以上のようなエポキシ基含有ビフェニル化合物を表面改質剤として用いる場合に、この表面改質剤によれば、当該表面改質剤が高い耐熱性を有するエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなるために、改質された基材の表面について、高い耐熱性が得られる。
この理由としては、シロキサンネットワークと、改質された基材の表面において規則正しく配列したビフェニル環同士のπ−π相互作用との2つの結合系を有し、さらに前記π−π相互作用を形成するビフェニル環が各々高い熱安定性を有するためであると考えられる。
そして、以上のようなエポキシ基含有ビフェニル化合物を接着助剤として用いる場合に、この接着助剤によれば、当該接着助剤を使用して、例えば有機接着剤が適用される無機物質よりなる基材の表面にこの接着助剤および有機接着剤を介して接着対象体を接着させた複合体を得ることができ、例えばこの複合体が胃カメラなどの殺菌消毒のために使用毎に高温で加熱されるものであったとしても、当該接着助剤が高い耐熱性を有するエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなるために、接着部位の熱劣化の程度を小さく抑制することができ、従って、この複合体について、高い使用耐久性を得ることができる。
【0044】
また、以上のようなエポキシ基含有ビフェニル化合物を接着剤として用いる場合に、この接着剤によれば、当該接着剤を使用して、例えば無機物質よりなる基材の表面にこの接着剤を介して接着対象体を接着させた複合体を得ることができ、これにより上述と同様の効果を得ることができる。
【0045】
以上、本発明について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
<実施例1>
【0048】
〔中間体〔A〕の合成例〕
滴下ロートを装備した二口500mLナスフラスコにマグネシウム2.76g(113.6mmol)、THF5.0mLを加え、テトラヒドロフラン(THF)185mLに溶解させた4,4’−ジブロモビフェニル27.28g(87.4mmol)を加え、8時間、66℃で還流した。続いて室温に戻した後、アリルブロミド22.2mL(262.2mmol)を徐々に滴下し、24時間、室温で撹拌した。さらに、これを室温に戻し、氷冷下、希塩酸(およそ0.1モル水溶液)50mLを徐々に加え、THFで抽出した。その後蒸留し、メタノールで再結晶し、収率22%で白色固体の生成物を得た。この生成物の沸点は11Paで110℃、融点は103℃であった。
【0049】
この生成物について、 1H−NMRスペクトル測定、FT−IRスペクトル測定、およびMassスペクトル測定を行ったところ、 1H−NMRスペクトル測定の結果においてはビフェニル基に結合するメチレン−CH2 −由来のピークが3.42ppm、−CH=CH2 に由来するピークが5.05ppm〜6.01ppm、ビフェニル基由来のピークが7.23〜7.55ppmに確認され、積分比も一致し、また、FT−IRスペクトル測定の結果においては2900〜3100cm-1付近にビフェニル基のC−Hに由来するνC−Hの吸収、1100cm-1付近にベンゼン環とブロムの結合に由来するνPh−Brの吸収、1600cm-1付近にC=Cに由来するνC=Cの吸収、900cm-1付近にC=Cに由来するσC=Cの吸収が確認され、さらに、Massスペクトル測定の結果においては分子イオンピークが確認され、これらの結果より、当該生成物が上記構造式(4)で表される4−アリル−4’−ブロモビフェニル(中間体〔A〕)であることが同定された。 1H−NMRスペクトル測定、Massスペクトル測定、FT−IRスペクトル測定の結果を、それぞれ図1、図2および図3に示す。
なお、 1H−NMRスペクトル測定は「BrukerDPX400型(400MHz)」(Bruker社製)、Massスペクトル測定は「JMS−SX 102A」(日本電子社製)、FT−IRスペクトル測定は「Nicolet AVATAR 360」(Nicolet社製)によって行った。
【0050】
〔中間体〔B〕の合成例〕
滴下ロートを装備した二口200mLナスフラスコにMg金属粉末0.448g(18.4mmol)、THF4mLを加え、THF15mLに溶解させたBr2PA5.02g(18.4mmol)を加えた。次に18時間撹拌した後、エピクロロヒドリン2.17mL(27.7mmol)を氷冷下で徐々に滴下し、20時間撹拌した。さらに15mLの希塩酸(およそ0.1モル水溶液)を氷冷下で徐々に滴下し、THFで抽出した。
抽出した油層を減圧留去し、残留物をメタノールに溶解させ、氷冷下で水酸化ナトリウムを加え、2時間撹拌した。反応溶液にTHF20mL加え、水で洗浄後、エーテル層を減圧留去し、クロロホルム:へキサン=3:1の展開溶液を用いてカラム分離(シリカゲル「ワコーゲル C−300」(和光純薬工業(株)製);直径6cm×長さ71cmのガラスカラムを使用)し、収率43%で白色固体の生成物を得た。この生成物の融点は67℃であった。
【0051】
この生成物について、 1H−NMRスペクトル測定、FT−IRスペクトル測定、およびMassスペクトル測定を行ったところ、 1H−NMRスペクトル測定の結果においてはビフェニル基に結合するメチレン−CH2 −に由来するピークが2.88ppm、−CH−O−に由来するピークが3.18ppm、−O−CH2 −に由来するピークが2.80ppmと2.59ppmに確認され、積分比も一致し、また、FT−IRスペクトル測定の結果においては、−C−O−C−に由来するνC−Oの吸収が1200cm-1付近に確認され、さらに、Massスペクトル測定の結果においては分子イオンピークが確認され、これらの結果より、当該生成物が上記構造式(6)で表される4−アリル−4’−(2,3−エポキシプロピル)ビフェニル(中間体〔B〕)であることが同定された。 1H−NMRスペクトル測定、Massスペクトル測定、FT−IRスペクトル測定の結果を、それぞれ図4、図5および図6に示す。
なお、 1H−NMRスペクトル測定は「BrukerDPX400型(400MHz)」(Bruker社製)、Massスペクトル測定は「JMS−SX 102A」(日本電子社製)、FT−IRスペクトル測定は「Nicolet AVATAR 360」(Nicolet社製)によって行った。
【0052】
〔シランカップリング剤〔C〕の合成例〕
二口100mLナスフラスコに窒素雰囲気下でE2PA3.03g(12.12mmol)を採取し、溶媒としてTHF8mL、続いてトリメトキシシラン3.08mL(24.24mL)を加え、最後に触媒として0.1MのH2 PtCl6 /THF溶液0.03mL(0.003mmol)を撹拌しながら加えた。50℃で9日間撹拌後、溶媒と過剰のトリメトキシシランを減圧留去し、残留物である無色透明な液体状の生成物を得た。
【0053】
この生成物について、 1H−NMRスペクトル測定、FT−IRスペクトル測定、およびMassスペクトル測定を行ったところ、 1H−NMRスペクトル測定の結果により、ほぼ生成物のみが得られたことが確認された。また、 1H−NMRスペクトル測定の結果においては−CH2 −CH2 −CH2 −に由来するピークがそれぞれ2.67、1.78、0.72ppm、−OCH3 に由来するピークが3.57ppmに確認され、積分比も一致し、また、FT−IRスペクトル測定の結果においては、1085cm-1付近に−Si−O−に由来するνSi−Oの吸収が確認され、さらに、Massスペクトル測定の結果においては分子イオンピークが確認され、これらの結果より、当該生成物が下記構造式(9)で表される4−(2,3−エポキシプロピル)−4’−(3−トリメトキシシリルプロピル)ビフェニルであることが同定された。以下、これを「シランカップリング剤〔C〕」という。 1H−NMRスペクトル測定、Massスペクトル測定、FT−IRスペクトル測定の結果を、それぞれ図7、図8および図9に示す。
なお、 1H−NMRスペクトル測定は「BrukerDPX400型(400MHz)」(Bruker社製)、Massスペクトル測定は「JMS−SX 102A」(日本電子社製)、FT−IRスペクトル測定は「Nicolet AVATAR 360」(Nicolet社製)によって行った。
【0054】
【化11】
【0055】
以上のようにして得られたシランカップリング剤〔C〕について、以下のように耐熱性評価を行った。
【0056】
<実験例G−1>
(1)改質剤評価用溶液の調製
シランカップリング剤〔C〕を、濃度15mMのトルエン溶液として調製した。これを表面改質用溶液という。
(2)板ガラスの洗浄処理
板ガラスを、1N水酸化ナトリウム水溶液に2時間浸漬した後、蒸留水で十分に洗浄し、減圧乾燥させた。
(3)板ガラスの表面改質処理
上記(2)において洗浄した板ガラスを、直ちに、窒素雰囲気下、表面改質用溶液中に浸漬し、65℃で2時間、表面改質処理を施した。その後、板ガラスをトルエンでよく洗浄し、次いで、加水分解性基(メトキシ基)をヒドロキシ基とさせる目的で蒸留水中に数分浸漬させ、続いて、シロキサンネットワークを構築させる目的で、オーブン中において、大気圧、150℃で30分間加熱した。その後、デシケーター中において室温まで冷却し、表面改質ガラスを得た。
(4)表面改質ガラスの熱曝露処理
この表面改質ガラスを、温度αのオーブン中で時間βにわたって加熱する熱曝露処理した。ただし、この実験例G−1において、αは20℃、βは120分間である。
(5)接触角の測定
熱曝露処理を施した表面改質ガラスについて、その表面に対する水の接触角を測定した。接触角の測定は、0.9μLの水滴を水平な板ガラス上に滴下する液滴法を用いた。結果を図10に示す。
【0057】
<実験例G−2〜G−5>
実験例G−1において、熱曝露処理をそれぞれ温度200℃(実験例G−2)、250℃(実験例G−3)、300℃(実験例G−4)、350℃(実験例G−5)のオーブン中で加熱して行ったことの他は同様にして、耐熱性評価を行った。結果を図10に示す。
【0058】
<実験例G−6〜G−13>
実験例G−1において、熱曝露処理を温度300℃のオーブン中でそれぞれ30分間(実験例G−6)、60分間(実験例G−7)、90分間(実験例G−8)、120分間(実験例G−9)、150分間(実験例G−10)、180分間(実験例G−11)、210分間(実験例G−12)、240分間(実験例G−13)にわたって加熱して行ったことの他は同様にして、耐熱性評価を行った。結果を図11に示す。
なお、実験例G−9は、上記実験例G−4の繰り返し実験である。
【0059】
<比較実験例N−1>
上述の実験例G−1において、シランカップリング剤〔C〕の代わりに下記構造式(10)で表される3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「KBM−403」(信越化学社製)を用いたことの他は同様にして、耐熱性評価を行った。結果を図10に示す。
【0060】
【化12】
【0061】
<比較実験例N−2〜N−5>
比較実験例N−1において、熱曝露処理をそれぞれ温度200℃(比較実験例N−2)、250℃(比較実験例N−3)、300℃(比較実験例N−4)、350℃(比較実験例N−5)のオーブン中で加熱して行ったことの他は同様にして、耐熱性評価を行った。結果を図10に示す。
【0062】
図10および図11から明らかなように、本発明に係るシランカップリング剤〔C〕は、比較に用いたビフェニル環を含有しない3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに比して耐熱性が向上されていることが確認された。また、耐熱温度300℃で3時間程度の耐久性を示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などの表面改質剤や接着助剤、あるいは封止材などとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例1において得られた中間体〔A〕の 1H−NMRスペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図2】実施例1において得られた中間体〔A〕のMassスペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図3】実施例1において得られた中間体〔A〕のFT−IRスペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図4】実施例1において得られた中間体〔B〕の 1H−NMRスペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図5】実施例1において得られた中間体〔B〕のMassスペクトル測定測定の結果を示すグラフである。
【図6】実施例1において得られた中間体〔B〕のFT−IRスペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図7】実施例1において得られたシランカップリング剤〔C〕の 1H−NMRスペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図8】実施例1において得られたシランカップリング剤〔C〕のMassスペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図9】実施例1において得られたシランカップリング剤〔C〕のFT−IRスペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図10】実験例G−1〜実験例G−5および比較実験例N−1〜比較実験例N−5の結果を示すグラフである。
【図11】実験例G−6〜実験例G−13の結果を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などの表面改質剤や接着助剤、あるいは封止材として使用することのできるエポキシ基含有ビフェニル化合物およびその製造方法、並びに表面改質剤、接着助剤および接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば無機物質よりなる基材に、接着させたい物体を接着させるための接着剤として、熱硬化性樹脂などよりなる有機接着剤を用いる場合、基材の表面を例えばシランカップリング剤やチタンカップリング剤などの表面改質剤により改質することが行われている。
表面改質剤としては、特に、エポキシ基を含有するシランカップリング剤が、高い表面改質性を有するものとして知られている。これは、基材の表面(改質表面)において強固なシロキサンネットワークが形成されるためであり、当該基材の表面に有機接着剤への高い接着性が付与される。なお、表面改質性を有さないが、エポキシ基を有して耐熱性の高い化合物が非特許文献1および特許文献1,2に開示されている。
【0003】
一方、最近、電子回路の高密度化・高機能化のために作製した回路基板を積層することが行われており、十数層の積層基板などが要求され始めている。従来、回路基板としては熱硬化性樹脂よりなるものが使用されてきたが、熱硬化性樹脂は以下のような欠点が指摘されている。
すなわち、熱硬化性樹脂は誘電率や吸水性などの諸物性で液晶ポリマーフィルムのようなエンジニアリングプラスチックスに劣ることや、熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂よりなる液晶ポリマーフィルムとを接着する場合にその接着性が不十分となること、さらには、熱硬化性樹脂はリサイクルができないことなどが指摘されている。
従って、熱可塑性エンジニアリングプラスチックスのみからなる回路基板による積層基板が今後必要不可欠となると考えられている。
【0004】
しかしながら、現在では、エポキシ基を有するシランカップリング剤によって銅箔表面を前処理し、液晶ポリマーフィルムと銅箔とを融着させることが試みられているものの、液晶ポリマーフィルムの融着点が300℃と高く、一方で従来のエポキシ基を有するシランカップリング剤(例えば「KBM−403」(信越化学社製)など)は耐熱性が低いため、この融着において十分な密着性が得られない、という問題がある。
【0005】
特許文献3には、耐熱性を有するシランカップリング剤であって高い表面改質性を有するものが提案されているが、このシランカップリング剤は、フルオロアルキル鎖を有するために撥水撥油作用を発揮し、これによって非付着性、非接着性、防汚性、潤滑性、光沢性などを発現する耐熱離型剤であって、接着性は有さないものである。
【0006】
【非特許文献1】J Nat Prod Vol.64 No.5 Page608−611(2001)
【特許文献1】特開平7−53671号公報
【特許文献2】特開平5−301452号公報
【特許文献3】特許第3939226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、高い耐熱性を有し、接着に供することのできるエポキシ基含有ビフェニル化合物並びに表面改質剤、接着助剤および接着剤を提供することにある。
本発明の別の目的は、上記のエポキシ基含有ビフェニル化合物を得ることができるエポキシ基含有ビフェニル化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0009】
【化1】
〔上記一般式(1)において、Yはエポキシ基を含有する基、Zはアルキレン基、MはIV族元素、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基またはイソシアネート基である。また、nは1〜3の整数である。〕
【0010】
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物においては、MがSiまたはTiであることが好ましい。
【0011】
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物としては、下記一般式(2)で表されるものであることが好ましい。
【0012】
【化2】
〔上記一般式(2)において、Rはアルキル基である。また、mは0〜4の整数である。〕
【0013】
また、このエポキシ基含有ビフェニル化合物としては、Rがメチル基であり、mが3であることが好ましい。
【0014】
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物の製造方法は、上記のエポキシ基含有ビフェニル化合物を製造する方法であって、
下記反応式(3)に示される反応を行って下記構造式(4)で表される中間体〔A〕を得、当該中間体〔A〕を用いて下記反応式(5)に示される反応を行って下記構造式(6)で表される中間体〔B〕を得、当該中間体〔B〕を用いて下記反応式(7)に示される反応を行うことを特徴とする。
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
【化5】
【0018】
【化6】
【0019】
【化7】
【0020】
本発明の表面改質剤は、上記のエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなることを特徴とする。
また、本発明の接着助剤は、上記のエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなり、有機接着剤が適用される無機物質よりなる基材の表面の改質に供されることを特徴とする。
前記有機接着剤としてはエポキシ樹脂よりなるものを用いることが好ましい。
【0021】
本発明の接着剤は、上記のエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなり、無機物質よりなる基材と、有機または無機物質よりなる接着対象体との接着に供されることを特徴とする。
この接着剤は、前記接着対象体が、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂よりなるものである場合に好適に使用される。
【発明の効果】
【0022】
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物によれば、高い耐熱性を得ることができる。
この理由としては、ビフェニル環の熱安定性に由来するものと推測される。
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物の製造方法によれば、上記のエポキシ基含有ビフェニル化合物を得ることができる。
【0023】
本発明の表面改質剤によれば、当該表面改質剤が高い耐熱性を有するエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなるために、改質された基材の表面について、高い耐熱性が得られる。
この理由としては、シロキサンネットワークと、改質された基材の表面において規則正しく配列したビフェニル環同士のπ−π相互作用との2つの結合系を有し、さらに前記π−π相互作用を形成するビフェニル環が各々高い熱安定性を有するためであると考えられる。
【0024】
本発明の接着助剤によれば、当該接着助剤を使用して、例えば有機接着剤が適用される無機物質よりなる基材の表面にこの接着助剤および有機接着剤を介して接着対象体を接着させた複合体を得ることができ、例えばこの複合体が胃カメラなどの殺菌消毒のために使用毎に高温で加熱されるものであったとしても、当該接着助剤が高い耐熱性を有するエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなるために、接着部位の熱劣化の程度を小さく抑制することができ、従って、この複合体について、高い使用耐久性を得ることができる。
【0025】
また、本発明の接着剤によれば、当該接着剤を使用して、例えば無機物質よりなる基材の表面にこの接着剤を介して接着対象体を接着させた複合体を得ることができ、これにより上述と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0027】
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物は、上記一般式(1)で表されるものである。
上記一般式(1)において、Yはエポキシ基を含有する基、Zはアルキレン基、MはIV族(IVA族またはIVB族)元素、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基またはイソシアネート基である。
【0028】
上記一般式(1)におけるMの具体例としては、例えばSi(ケイ素)、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、Zr(ジルコニウム)およびSn(スズ)などが挙げられ、これらのうち、特にSiおよびTiが好ましい。
【0029】
エポキシ基含有ビフェニル化合物を構成するエポキシ基を含有する基Yとしては、具体的には例えば下記式(8−a)〜式(8−d)で表されるものなどを挙げることができる。
なお、本発明において、「エポキシ基を含有する基」とは、−O−が橋かけ構造の形態となっている部位を含む有機基をいう。
【0030】
【化8】
【0031】
エポキシ基含有ビフェニル化合物を構成するアルキレン基Zは、例えば式[−(CH2 )m −]で表されるものを挙げることができる。ただし、前記式において、mは0〜4の整数であり、好ましくはmは3である。
基Zとしては、例えばメチレン基[−CH2 −]、エチレン基[−CH2 CH2 −]、トリメチレン基[−CH2 CH2 CH2 −]、メチルメチレン基[−CH(CH3 )−]、メチルエチレン基[−CH(CH3 )CH2 −]などを挙げることができ、これらのうち、表面改質剤または接着剤として用いた場合に基材の表面に密に並ぶことができることから、直鎖状に近い形状を有する基が好ましい。
【0032】
エポキシ基含有ビフェニル化合物を構成する基Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基またはイソシアネート基である。
ハロゲン原子としてはフッ素(F),塩素(Cl),臭素(Br),ヨウ素(I)を挙げることができる。
また、アルコキシ基は、−ORで表され(ただし、Rはアルキル基である。)、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などを挙げることができる。
また、アシルオキシ基としては、例えばアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基などを挙げることができる。
さらに、イソシアネート基[−NCO]を挙げることができる。
【0033】
上記一般式(1)において、nは、1〜3の整数を示す。
上記一般式(1)中のnが2である場合は、当該一般式(1)で表されるエポキシ基含有ビフェニル化合物がそれ自体で高い重合性を有するものとなる。
【0034】
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物としては、上記一般式(2)で表されるものが好ましい。
【0035】
そして、本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物としては、特に、上記一般式(2)においてRがメチル基であり、mが3である4−(2,3−エポキシプロピル)−4’−(3−トリメトキシシリルプロピル)ビフェニルを好ましく挙げることができる。以下、この化合物を「特定のエポキシ基含有ビフェニル化合物」という。
【0036】
〔特定のエポキシ基含有ビフェニル化合物の製造方法〕
このような特定のエポキシ基含有ビフェニル化合物は、具体的には、上記反応式(3)に示されるように、出発原料4,4’−ジブロモビフェニルとアリルブロミドとのグリニアル反応により、上記構造式(4)で表される4−アリル−4’−ブロモビフェニル(中間体〔A〕)を得、反応式(5)に示されるように、この中間体〔A〕とエピクロロヒドリンとのグリニアル反応によりハロアルコールを導入し(下記反応式(5−a)参照。)、単離せずに、続けて水酸化ナトリウムを加え、分子内ウィリアムソン合成により上記構造式(6)で表される4−アリル−4’−(2,3−エポキシプロピル)ビフェニル(中間体〔B〕)を得(下記反応式(5−b)参照。)、その後、反応式(7)に示されるように、この中間体〔B〕を塩化白金酸触媒下でトリメトキシシランとヒドロシリル化反応させることにより、得ることができる。
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
上記反応式(7)で示される工程において用いられる塩化白金酸触媒としては、具体的には、例えば塩化白金(IV)酸六水和物(H2 PtCl6 ・6H2 O)が挙げられる。
塩化白金酸触媒の使用量は、中間体〔B〕100質量部に対して0.01〜0.50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.10質量部である。
【0040】
〔用途〕
以上のようなエポキシ基含有ビフェニル化合物は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などの、有機接着剤が適用される、例えばガラス、金属などの無機物質よりなる基材の表面の改質に供される接着助剤などの表面改質剤や、無機物質よりなる基材と有機または無機物質よりなる接着対象体との接着に供される接着剤、あるいは封止材などとして好適に用いることができる。
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物は、基材上に接着すべき接着対象体の種類によって、それが当該エポキシ基含有ビフェニル化合物によって直接接着できるものである場合は接着剤として用い、直接接着できないものである場合は接着助剤として適用可能な別の有機接着剤と共に使用すればよい。
【0041】
接着助剤として用いる場合の無機物質に適用される有機接着剤としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびフラン樹脂などの熱硬化性樹脂よりなる接着剤を挙げることができる。
また、接着剤として用いる場合、接着される接着対象体としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ABS樹脂、高軟化点を有する、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂などの樹脂などの熱可塑性樹脂;上記に挙げた熱硬化性樹脂;ポリブタジエンラバー、ポリイソプレンラバー、エチレン−プロピレンラバー(EPM、EPDM)、スチレン−ブタジエンラバー(SBR)、ニトリルラバー、エピクロルヒドリンラバー、ネオプレンラバー、ブチルラバー、ポリサルファイド、ウレタンラバーなどのエラストマー・ゴムなどよりなるものを挙げることができる。
【0042】
以上、説明したようなエポキシ基含有ビフェニル化合物によれば、高い耐熱性を得ることができる。
この理由としては、ビフェニル環の熱安定性に由来するものと推測される。
【0043】
また、以上のようなエポキシ基含有ビフェニル化合物を表面改質剤として用いる場合に、この表面改質剤によれば、当該表面改質剤が高い耐熱性を有するエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなるために、改質された基材の表面について、高い耐熱性が得られる。
この理由としては、シロキサンネットワークと、改質された基材の表面において規則正しく配列したビフェニル環同士のπ−π相互作用との2つの結合系を有し、さらに前記π−π相互作用を形成するビフェニル環が各々高い熱安定性を有するためであると考えられる。
そして、以上のようなエポキシ基含有ビフェニル化合物を接着助剤として用いる場合に、この接着助剤によれば、当該接着助剤を使用して、例えば有機接着剤が適用される無機物質よりなる基材の表面にこの接着助剤および有機接着剤を介して接着対象体を接着させた複合体を得ることができ、例えばこの複合体が胃カメラなどの殺菌消毒のために使用毎に高温で加熱されるものであったとしても、当該接着助剤が高い耐熱性を有するエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなるために、接着部位の熱劣化の程度を小さく抑制することができ、従って、この複合体について、高い使用耐久性を得ることができる。
【0044】
また、以上のようなエポキシ基含有ビフェニル化合物を接着剤として用いる場合に、この接着剤によれば、当該接着剤を使用して、例えば無機物質よりなる基材の表面にこの接着剤を介して接着対象体を接着させた複合体を得ることができ、これにより上述と同様の効果を得ることができる。
【0045】
以上、本発明について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
<実施例1>
【0048】
〔中間体〔A〕の合成例〕
滴下ロートを装備した二口500mLナスフラスコにマグネシウム2.76g(113.6mmol)、THF5.0mLを加え、テトラヒドロフラン(THF)185mLに溶解させた4,4’−ジブロモビフェニル27.28g(87.4mmol)を加え、8時間、66℃で還流した。続いて室温に戻した後、アリルブロミド22.2mL(262.2mmol)を徐々に滴下し、24時間、室温で撹拌した。さらに、これを室温に戻し、氷冷下、希塩酸(およそ0.1モル水溶液)50mLを徐々に加え、THFで抽出した。その後蒸留し、メタノールで再結晶し、収率22%で白色固体の生成物を得た。この生成物の沸点は11Paで110℃、融点は103℃であった。
【0049】
この生成物について、 1H−NMRスペクトル測定、FT−IRスペクトル測定、およびMassスペクトル測定を行ったところ、 1H−NMRスペクトル測定の結果においてはビフェニル基に結合するメチレン−CH2 −由来のピークが3.42ppm、−CH=CH2 に由来するピークが5.05ppm〜6.01ppm、ビフェニル基由来のピークが7.23〜7.55ppmに確認され、積分比も一致し、また、FT−IRスペクトル測定の結果においては2900〜3100cm-1付近にビフェニル基のC−Hに由来するνC−Hの吸収、1100cm-1付近にベンゼン環とブロムの結合に由来するνPh−Brの吸収、1600cm-1付近にC=Cに由来するνC=Cの吸収、900cm-1付近にC=Cに由来するσC=Cの吸収が確認され、さらに、Massスペクトル測定の結果においては分子イオンピークが確認され、これらの結果より、当該生成物が上記構造式(4)で表される4−アリル−4’−ブロモビフェニル(中間体〔A〕)であることが同定された。 1H−NMRスペクトル測定、Massスペクトル測定、FT−IRスペクトル測定の結果を、それぞれ図1、図2および図3に示す。
なお、 1H−NMRスペクトル測定は「BrukerDPX400型(400MHz)」(Bruker社製)、Massスペクトル測定は「JMS−SX 102A」(日本電子社製)、FT−IRスペクトル測定は「Nicolet AVATAR 360」(Nicolet社製)によって行った。
【0050】
〔中間体〔B〕の合成例〕
滴下ロートを装備した二口200mLナスフラスコにMg金属粉末0.448g(18.4mmol)、THF4mLを加え、THF15mLに溶解させたBr2PA5.02g(18.4mmol)を加えた。次に18時間撹拌した後、エピクロロヒドリン2.17mL(27.7mmol)を氷冷下で徐々に滴下し、20時間撹拌した。さらに15mLの希塩酸(およそ0.1モル水溶液)を氷冷下で徐々に滴下し、THFで抽出した。
抽出した油層を減圧留去し、残留物をメタノールに溶解させ、氷冷下で水酸化ナトリウムを加え、2時間撹拌した。反応溶液にTHF20mL加え、水で洗浄後、エーテル層を減圧留去し、クロロホルム:へキサン=3:1の展開溶液を用いてカラム分離(シリカゲル「ワコーゲル C−300」(和光純薬工業(株)製);直径6cm×長さ71cmのガラスカラムを使用)し、収率43%で白色固体の生成物を得た。この生成物の融点は67℃であった。
【0051】
この生成物について、 1H−NMRスペクトル測定、FT−IRスペクトル測定、およびMassスペクトル測定を行ったところ、 1H−NMRスペクトル測定の結果においてはビフェニル基に結合するメチレン−CH2 −に由来するピークが2.88ppm、−CH−O−に由来するピークが3.18ppm、−O−CH2 −に由来するピークが2.80ppmと2.59ppmに確認され、積分比も一致し、また、FT−IRスペクトル測定の結果においては、−C−O−C−に由来するνC−Oの吸収が1200cm-1付近に確認され、さらに、Massスペクトル測定の結果においては分子イオンピークが確認され、これらの結果より、当該生成物が上記構造式(6)で表される4−アリル−4’−(2,3−エポキシプロピル)ビフェニル(中間体〔B〕)であることが同定された。 1H−NMRスペクトル測定、Massスペクトル測定、FT−IRスペクトル測定の結果を、それぞれ図4、図5および図6に示す。
なお、 1H−NMRスペクトル測定は「BrukerDPX400型(400MHz)」(Bruker社製)、Massスペクトル測定は「JMS−SX 102A」(日本電子社製)、FT−IRスペクトル測定は「Nicolet AVATAR 360」(Nicolet社製)によって行った。
【0052】
〔シランカップリング剤〔C〕の合成例〕
二口100mLナスフラスコに窒素雰囲気下でE2PA3.03g(12.12mmol)を採取し、溶媒としてTHF8mL、続いてトリメトキシシラン3.08mL(24.24mL)を加え、最後に触媒として0.1MのH2 PtCl6 /THF溶液0.03mL(0.003mmol)を撹拌しながら加えた。50℃で9日間撹拌後、溶媒と過剰のトリメトキシシランを減圧留去し、残留物である無色透明な液体状の生成物を得た。
【0053】
この生成物について、 1H−NMRスペクトル測定、FT−IRスペクトル測定、およびMassスペクトル測定を行ったところ、 1H−NMRスペクトル測定の結果により、ほぼ生成物のみが得られたことが確認された。また、 1H−NMRスペクトル測定の結果においては−CH2 −CH2 −CH2 −に由来するピークがそれぞれ2.67、1.78、0.72ppm、−OCH3 に由来するピークが3.57ppmに確認され、積分比も一致し、また、FT−IRスペクトル測定の結果においては、1085cm-1付近に−Si−O−に由来するνSi−Oの吸収が確認され、さらに、Massスペクトル測定の結果においては分子イオンピークが確認され、これらの結果より、当該生成物が下記構造式(9)で表される4−(2,3−エポキシプロピル)−4’−(3−トリメトキシシリルプロピル)ビフェニルであることが同定された。以下、これを「シランカップリング剤〔C〕」という。 1H−NMRスペクトル測定、Massスペクトル測定、FT−IRスペクトル測定の結果を、それぞれ図7、図8および図9に示す。
なお、 1H−NMRスペクトル測定は「BrukerDPX400型(400MHz)」(Bruker社製)、Massスペクトル測定は「JMS−SX 102A」(日本電子社製)、FT−IRスペクトル測定は「Nicolet AVATAR 360」(Nicolet社製)によって行った。
【0054】
【化11】
【0055】
以上のようにして得られたシランカップリング剤〔C〕について、以下のように耐熱性評価を行った。
【0056】
<実験例G−1>
(1)改質剤評価用溶液の調製
シランカップリング剤〔C〕を、濃度15mMのトルエン溶液として調製した。これを表面改質用溶液という。
(2)板ガラスの洗浄処理
板ガラスを、1N水酸化ナトリウム水溶液に2時間浸漬した後、蒸留水で十分に洗浄し、減圧乾燥させた。
(3)板ガラスの表面改質処理
上記(2)において洗浄した板ガラスを、直ちに、窒素雰囲気下、表面改質用溶液中に浸漬し、65℃で2時間、表面改質処理を施した。その後、板ガラスをトルエンでよく洗浄し、次いで、加水分解性基(メトキシ基)をヒドロキシ基とさせる目的で蒸留水中に数分浸漬させ、続いて、シロキサンネットワークを構築させる目的で、オーブン中において、大気圧、150℃で30分間加熱した。その後、デシケーター中において室温まで冷却し、表面改質ガラスを得た。
(4)表面改質ガラスの熱曝露処理
この表面改質ガラスを、温度αのオーブン中で時間βにわたって加熱する熱曝露処理した。ただし、この実験例G−1において、αは20℃、βは120分間である。
(5)接触角の測定
熱曝露処理を施した表面改質ガラスについて、その表面に対する水の接触角を測定した。接触角の測定は、0.9μLの水滴を水平な板ガラス上に滴下する液滴法を用いた。結果を図10に示す。
【0057】
<実験例G−2〜G−5>
実験例G−1において、熱曝露処理をそれぞれ温度200℃(実験例G−2)、250℃(実験例G−3)、300℃(実験例G−4)、350℃(実験例G−5)のオーブン中で加熱して行ったことの他は同様にして、耐熱性評価を行った。結果を図10に示す。
【0058】
<実験例G−6〜G−13>
実験例G−1において、熱曝露処理を温度300℃のオーブン中でそれぞれ30分間(実験例G−6)、60分間(実験例G−7)、90分間(実験例G−8)、120分間(実験例G−9)、150分間(実験例G−10)、180分間(実験例G−11)、210分間(実験例G−12)、240分間(実験例G−13)にわたって加熱して行ったことの他は同様にして、耐熱性評価を行った。結果を図11に示す。
なお、実験例G−9は、上記実験例G−4の繰り返し実験である。
【0059】
<比較実験例N−1>
上述の実験例G−1において、シランカップリング剤〔C〕の代わりに下記構造式(10)で表される3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「KBM−403」(信越化学社製)を用いたことの他は同様にして、耐熱性評価を行った。結果を図10に示す。
【0060】
【化12】
【0061】
<比較実験例N−2〜N−5>
比較実験例N−1において、熱曝露処理をそれぞれ温度200℃(比較実験例N−2)、250℃(比較実験例N−3)、300℃(比較実験例N−4)、350℃(比較実験例N−5)のオーブン中で加熱して行ったことの他は同様にして、耐熱性評価を行った。結果を図10に示す。
【0062】
図10および図11から明らかなように、本発明に係るシランカップリング剤〔C〕は、比較に用いたビフェニル環を含有しない3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに比して耐熱性が向上されていることが確認された。また、耐熱温度300℃で3時間程度の耐久性を示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のエポキシ基含有ビフェニル化合物は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などの表面改質剤や接着助剤、あるいは封止材などとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例1において得られた中間体〔A〕の 1H−NMRスペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図2】実施例1において得られた中間体〔A〕のMassスペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図3】実施例1において得られた中間体〔A〕のFT−IRスペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図4】実施例1において得られた中間体〔B〕の 1H−NMRスペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図5】実施例1において得られた中間体〔B〕のMassスペクトル測定測定の結果を示すグラフである。
【図6】実施例1において得られた中間体〔B〕のFT−IRスペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図7】実施例1において得られたシランカップリング剤〔C〕の 1H−NMRスペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図8】実施例1において得られたシランカップリング剤〔C〕のMassスペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図9】実施例1において得られたシランカップリング剤〔C〕のFT−IRスペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図10】実験例G−1〜実験例G−5および比較実験例N−1〜比較実験例N−5の結果を示すグラフである。
【図11】実験例G−6〜実験例G−13の結果を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とするエポキシ基含有ビフェニル化合物。
【化1】
〔上記一般式(1)において、Yはエポキシ基を含有する基、Zはアルキレン基、MはIV族元素、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基またはイソシアネート基である。また、nは1〜3の整数である。〕
【請求項2】
MがSiまたはTiであることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ基含有ビフェニル化合物。
【請求項3】
下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項2に記載のエポキシ基含有ビフェニル化合物。
【化2】
〔上記一般式(2)において、Rはアルキル基である。また、mは0〜4の整数である。〕
【請求項4】
Rがメチル基であり、mが3であることを特徴とする請求項3に記載のエポキシ基含有ビフェニル化合物。
【請求項5】
請求項4に記載のエポキシ基含有ビフェニル化合物を製造する方法であって、
下記反応式(3)に示される反応を行って下記構造式(4)で表される中間体〔A〕を得、当該中間体〔A〕を用いて下記反応式(5)に示される反応を行って下記構造式(6)で表される中間体〔B〕を得、当該中間体〔B〕を用いて下記反応式(7)に示される反応を行うことを特徴とするエポキシ基含有ビフェニル化合物の製造方法。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなることを特徴とする表面改質剤。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなり、有機接着剤が適用される無機物質よりなる基材の表面の改質に供されることを特徴とする接着助剤。
【請求項8】
前記有機接着剤が、エポキシ樹脂よりなるものであることを特徴とする請求項7に記載の接着助剤。
【請求項9】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなり、無機物質よりなる基材と、有機または無機物質よりなる接着対象体との接着に供されることを特徴とする接着剤。
【請求項10】
前記接着対象体が、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂よりなるものであることを特徴とする請求項9に記載の接着剤。
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とするエポキシ基含有ビフェニル化合物。
【化1】
〔上記一般式(1)において、Yはエポキシ基を含有する基、Zはアルキレン基、MはIV族元素、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基またはイソシアネート基である。また、nは1〜3の整数である。〕
【請求項2】
MがSiまたはTiであることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ基含有ビフェニル化合物。
【請求項3】
下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項2に記載のエポキシ基含有ビフェニル化合物。
【化2】
〔上記一般式(2)において、Rはアルキル基である。また、mは0〜4の整数である。〕
【請求項4】
Rがメチル基であり、mが3であることを特徴とする請求項3に記載のエポキシ基含有ビフェニル化合物。
【請求項5】
請求項4に記載のエポキシ基含有ビフェニル化合物を製造する方法であって、
下記反応式(3)に示される反応を行って下記構造式(4)で表される中間体〔A〕を得、当該中間体〔A〕を用いて下記反応式(5)に示される反応を行って下記構造式(6)で表される中間体〔B〕を得、当該中間体〔B〕を用いて下記反応式(7)に示される反応を行うことを特徴とするエポキシ基含有ビフェニル化合物の製造方法。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなることを特徴とする表面改質剤。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなり、有機接着剤が適用される無機物質よりなる基材の表面の改質に供されることを特徴とする接着助剤。
【請求項8】
前記有機接着剤が、エポキシ樹脂よりなるものであることを特徴とする請求項7に記載の接着助剤。
【請求項9】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエポキシ基含有ビフェニル化合物よりなり、無機物質よりなる基材と、有機または無機物質よりなる接着対象体との接着に供されることを特徴とする接着剤。
【請求項10】
前記接着対象体が、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂よりなるものであることを特徴とする請求項9に記載の接着剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−132637(P2009−132637A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308960(P2007−308960)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】
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