説明

エポキシ樹脂の改質方法

【課題】簡便にエポキシ樹脂の分子量分布を調整するエポキシ樹脂の改質方法を提供すること。
【解決手段】
エポキシ樹脂、あるいはエポキシ樹脂をその良溶媒に溶解させた溶液とエポキシ樹脂の貧溶媒を混合し、貧溶媒溶解成分(低分子量エポキシ樹脂)と、良溶媒溶解成分(エポキシ樹脂オリゴマーまたはエポキシ樹脂ポリマー)とを分離する工程を含むエポキシ樹脂の改質方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子量のエポキシ樹脂と低分子量のエポキシ樹脂を分離するエポキシ樹脂の改質方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。従来工業的に最も使用されているエポキシ樹脂としてはビスフェノールAにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物が知られている。
【0003】
近年、電気・電子分野の高密度化、高速化に伴い、従来のエポキシ樹脂では対応しきれなくなり、多くの材料メーカーから多種多様なエポキシ樹脂の提案がなされている。エポキシ樹脂の高機能化には二種の手段がある。ひとつは特殊な骨格をエポキシ樹脂に導入する方法であり、もう1つが分子量分布を制御する方法である。
【0004】
前者で言えば、例えば難燃性を持たせるためビフェニル、ナフチルのような多環芳香族を導入する。強靭性を向上させるためジシクロへキシル基等を導入する。などが挙げられる。
後者では、極端な低分子量化で結晶性エポキシ樹脂とし、固形でかつ、低粘度な樹脂とする。逆に高分子量化を行い、硬化性、耐熱性、フィルム形成性を向上させる等が挙げられる。
このような化合物の合成法としては、例えば低分子量体の場合、原料フェノール樹脂においてフェノール類と何らかの化合物の縮合反応により合成を行うのであれば、大過剰なフェノール類を用いる、フェノール樹脂から分子蒸留により、低分子量体を取り出すまたは再結晶を行うなどの手法が用いられる(特許文献1、2)。高分子量体の場合、エポキシ樹脂を何らかのリンカーでつなぎ高分子量化する(特許文献3)。あるいは蒸留により、低分子量成分を除くことで高分子量の化合物を得るなどの手法(特許文献4)が用いられていた。
【0005】
【特許文献1】特開2004−238501号
【特許文献2】特開3539772号
【特許文献3】特開2001−172362号
【特許文献4】特許3142164号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、蒸留、晶析などの手法に寄らない、低分子量エポキシ樹脂、あるいは高分子量エポキシ樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意研究の結果、本発明を完成した。即ち、本発明は、
(1)分子量分布を有するエポキシ樹脂を溶媒(良溶媒)に溶解し、次いで該溶媒及び分子量の大きいエポキシ樹脂に対する溶解性の低い溶媒(貧溶媒)を添加してエポキシ樹脂の貧溶媒を混合し、次いで貧溶媒溶解成分(低分子量エポキシ樹脂)と、良溶媒溶解成分(エポキシ樹脂オリゴマーまたはエポキシ樹脂ポリマー)とを分離する工程を含むエポキシ樹脂の改質方法、
(2)良溶媒がケトン系、あるいはエステル系溶剤であることを特徴とする(1)に記載のエポキシ樹脂のエポキシ樹脂の改質方法、
(3)エポキシ樹脂とエポキシ樹脂の貧溶媒を混合し、貧溶媒溶解成分(低分子量エポキシ樹脂)と、残渣(エポキシ樹脂オリゴマーまたはエポキシ樹脂ポリマー)とを分離する工程を含むエポキシ樹脂の改質方法、
(4)貧溶媒がアルコール類であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂の改質方法、

に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法は種々のエポキシ樹脂に適応できる。本発明の方法によれば簡便に分子量の制御されたエポキシ樹脂を得ることができ、得られたエポキシ樹脂は、近年の高機能化が求められる高信頼性半導体封止用等の電気・電子部品絶縁材料用、及び積層板(プリント配線板、ビルドアップ基板)やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)、さらには光学材料を始めとする各種複合材料、接着剤、塗料、光部品材料等に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
エポキシ樹脂の溶剤溶解性は一般にアルコールや炭化水素系の化合物への溶解性が低く、また高分子量になるにつれてその溶剤への溶解性の低下は顕著であり、構造により芳香族炭化水素類やケトン類、エステル類等にも溶解度が低くなる傾向がある。本発明においてはこの溶解度を調節することで低分子量のエポキシ樹脂とオリゴマーレベルのエポキシ樹脂を簡便に分離することに成功した。
【0010】
本発明の方法は大きく分類すると以下3工程からなる。すなわち(a)エポキシ樹脂が溶解しやすい溶剤(良溶媒)にエポキシ樹脂を溶解させエポキシ樹脂と溶媒を均一に混合する工程、
(b)工程(a)で得られた混合物をエポキシ樹脂が溶解しにくい溶剤(貧溶媒)と混合し、二層分離させる工程、
(c)二層に分離した溶液あるいは懸濁液を分離し、それぞれ溶剤回収をする工程
からなる。
なお、工程(a)において、良溶媒を使用せずに、液状のエポキシ樹脂をそのまま、あるいは固体状のエポキシ樹脂を加熱溶融して工程(b)に供することもできる。また、良溶媒を使用する場合であっても、樹脂を加熱溶融してもよい。
【0011】
ここで用いることのできるエポキシ樹脂は市販品でも合成したものであってもかまわない。構造としては特に限定は無いがフェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル樹脂が好ましい。具体的にはフェノール、アルキルあるいはアリール置換フェノール、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビスフェノールAD等)、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)等のフェノール類と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド、フルフラール等)との重縮合物をグリシジル化してなるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、上記フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物をグリシジル化してなるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、フルオレノン、アントラキノン等)との重合物をグリシジル化してなるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、あるいはトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノール類と芳香族ジメタノール類(ベンゼンジメタノール、α,α,α’,α’−ベンゼンジメタノール、ビフェニルジメタノール、α,α,α’,α’−ビフェニルジメタノール等)との重合物をグリシジル化してなるフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール類と芳香族ジクロロメチル類(α,α’−ジクロロキシレン、ビスクロロメチルビフェニル等)との重合物をグリシジル化してなるフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0012】
用いられる良溶媒としてはケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、非プロトン性極性溶剤、あるいは芳香族炭化水素類が挙げられる。具体的にはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチル、カルビトールアセテート、ガンマブチロラクトン等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられ、ケトン系またはエステル系溶媒が好ましい。これらは単独で用いても良く、他の溶剤と混合して用いても良い。ただし、後述する貧溶媒によって選択されるべきである。すなわち、例えば極性の近しい溶剤を使用した場合、二層分離することなく、均一な溶液になる。あるいはものによってはコロイド状に分散するだけとなる可能性もある。したがって、樹脂、良溶媒、貧溶媒の組合せは十分に考慮する必要がある。またこの溶剤の選択により、樹脂の分子量分布が決定される。
【0013】
用いられる貧溶媒は、分子量の大きいエポキシ樹脂の溶解性は低く、前記良溶媒に溶解しないものであれば特に制限なく使用でき、例えばアルコール類、ケトン類、エステル類、脂肪族・芳香族炭化水素類が挙げられ、これらは含水溶媒であってもよい。貧溶媒となるかどうかについては用いる樹脂によが、樹脂の貧溶媒への溶出が重要になる。基本的には上記に示す貧溶媒のうち有機溶剤が好ましい。具体的にはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、メチルイソブチルケトン、3−ヘキサノン等の鎖状ケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル等のエステル類、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素が挙げられる。中でもアルコール類が最も好ましく、さらに良溶媒がケトン系またはエステル系溶媒であり、貧溶媒がアルコール類である組合せが好ましい。貧溶媒は単独で用いても良く、他の溶剤と混合して用いても良い。
【0014】
以下に各工程における説明を行う。
・工程(a);良溶媒の使用量は樹脂に対し、500重量%以下、好ましくは100重量%以下である。加熱温度は室温〜200℃である。室温において溶解、あるいは液状である樹脂は加熱しなくとも良い。
・工程(b);貧溶媒の使用量は樹脂に対し、50〜1000重量%であり、好ましくは50〜300重量%である。混合の際、十分に樹脂が分散するように、加熱や攪拌を行うことは好ましい。この工程(a)における良溶媒と工程(b)における貧溶媒の組み合わせや使用量によって得られるエポキシ樹脂の純度、軟化点を制御することができる。例えば、一般に低分子量物が少ないほうが、軟化点が高くなる。
・工程(c);工程(c)において、工程(b)からの静置時間は2層分離した段階であれば特に指定はされないが10分〜5時間を目安とすることが好ましい。得られた溶液あるいは懸濁液を加熱減圧下、溶剤回収することで目的とするエポキシ樹脂をそれぞれ得ることができる。
【0015】
このようにして得られるエポキシ樹脂は従来法に比べ簡便な条件で取り出すことが可能であり、得られたエポキシ樹脂は、例えば低分子量分(貧溶媒抽出分)は、結晶性エポキシ樹脂とし、固形でかつ、低粘度な樹脂とする、あるいは半固形、液状とし、液状組成物として扱えるようにするといったことも可能である。高分子量分(良溶媒抽出分)は、耐熱性、フィルム形成性を向上させることができる上、2官能体を除去することで軟化点を上げているため、高軟化点にもかかわらず分子量分布が小さく、かつ硬化性に優れたエポキシ樹脂が得られる。
【0016】
こうして得られた(改質された)エポキシ樹脂は、硬化剤と混合して硬化性樹脂組成物とすることができる。この硬化性樹脂組成物において、本発明で得られるエポキシ樹脂は単独でまたは他のエポキシ樹脂と併用して使用することが出来る。併用する場合、本発明で得られるエポキシ樹脂のエポキシ樹脂中に占める割合は5重量%以上が好ましく、特に10重量%以上が好ましい。本発明で得られる低分子量エポキシ樹脂は硬化性樹脂組成物の添加剤、例えば低粘度化剤、として使用することも可能であり、さらには高密度の実装技術が必要である、最先端の封止材には低粘度のエポキシ樹脂が必要とされており、そのような用途に好適である。本発明で得られる高分子量エポキシ樹脂は硬化性樹脂組成物の添加剤、あるいは改質材として使用することが可能であり、少量で可とう性等を向上させることができる。通常靭性等の特性を向上させるためにはゴム成分や、熱可塑性樹脂を改質剤として添加する方法が一般的であるが、一般に靭性と引き換えに耐熱性等の機械的特性を低下させることは周知の事実である。しかしながら高分子量エポキシ樹脂は添加剤として使用しても、その耐熱性を低下させること無く物性を改質することが可能である。
【0017】
前記で得られたエポキシ樹脂と併用されうる他のエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビスフェノールAD等)、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等)との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジメタノール類(ベンゼンジメタノール、α,α,α’,α’−ベンゼンジメタノール、ビフェニルジメタノール、α,α,α’,α’−ビフェニルジメタノール等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジクロロメチル類(α,α’−ジクロロキシレン、ビスクロロメチルビフェニル等)との重縮合物、ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物、アルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられるが、通常用いられるエポキシ樹脂であればこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0018】
硬化性樹脂組成物における硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物などが挙げられる。用いうる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビスフェノールAD等)、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等)との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジメタノール類(ベンゼンジメタノール、α,α,α’,α’−ベンゼンジメタノール、ビフェニルジメタノール、α,α,α’,α’−ビフェニルジメタノール等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジクロロメチル類(α,α’−ジクロロキシレン、ビスクロロメチルビフェニル等)との重縮合物、ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物、及びこれらの変性物、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられるがこれらに限定されることはない。
【0019】
硬化性樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.5〜1.5当量が好ましく、0.6〜1.2当量が特に好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.5当量に満たない場合、あるいは1.5当量を超える場合、いずれも硬化が不完全になり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0020】
また上記硬化剤を用いる際に硬化促進剤を併用しても差し支えない。用いうる硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。硬化促進剤を使用する場合の使用量はエポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜15重量部が必要に応じ用いられる。
【0021】
更に、硬化性樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤やシランカップリング材、離型剤、顔料等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これら無機充填剤は、硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性、耐湿性、力学的性質などの面から、硬化性樹脂組成物中で50〜90重量%を占める割合で使用するのが好ましい。
【0022】
更に硬化性樹脂組成物には、必要に応じて公知の添加剤を配合することが出来る。用いうる添加剤の具体例としては、ポリブタジエン及びこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、フッ素樹脂、マレイミド系化合物、シアネートエステル系化合物、シリコーンゲル、シリコーンオイル、並びにシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、石英粉、アルミニウム粉末、グラファイト、タルク、クレー、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、アスベスト、マイカ、ガラス粉末、ガラス繊維、ガラス不織布または、カーボン繊維等の無機充填材、シランカップリング剤のような充填材の表面処理剤、離型剤、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤が挙げられる。
【0023】
硬化性樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られる。そして、硬化性樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えば、エポキシ樹脂と硬化剤、並びに必要により硬化促進剤及び無機充填剤、配合剤、各種熱硬化性樹脂とを必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合することより硬化性樹脂組成物を得て、その硬化性樹脂組成物を溶融注型法あるいはトランスファー成型法やインジェクション成型法、圧縮成型法などによって成型し、更に80〜200℃で2〜10時間に加熱することにより硬化物を得ることができる。
【0024】
硬化性樹脂組成物は、溶剤を含有させワニスとしても使用できる。
このワニスに添加される任意成分としては、特に限定はないが、好ましくはエポキシ樹脂と共に膜を形成する高分子類、エポキシ化合物類、それに付随する添加物等が挙げられる。高分子類はワニスで使用する溶剤に溶解するものが好ましい。本発明のワニスに用いられる溶剤としては、例えばγ−ブチロラクトン類、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、好ましくは低級アルキレングリコールモノ又はジ低級アルキルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、好ましくは2つのアルキル基が同一でも異なってもよいジ低級アルキルケトン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。これらは単独で合っても、また2以上の混合溶媒であってもよい。

得られたワニス中の固形分濃度は通常10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは25〜70重量%である。残部は溶剤である。
【0025】
上記のワニスをそれ自体公知のグラビアコート法、スクリーン印刷、メタルマスク法、スピンコート法などの各種塗工方法により基材上、好ましくは平面支持体面に塗布後乾燥することにシート状物が得られる。そのようにして得られるシートの厚さ(乾燥後の厚さ)は、例えば5〜300μm、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜160μm程度が好ましい。平面支持体面に塗布する場合、必要に応じて、片面、両面又は部分的であってもよい。どの塗工法を用いるかは基材の種類、形状、大きさ、塗膜の膜厚により適宜選択される。基材としては、例えばポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種高分子及び/またはその共重合体から作られるフィルム、或いは銅箔等の金属箔などがあげられ、ポリイミドからなるフィルム又は金属箔が好ましい。このようにして得られたシートは電気・電子部品などの基板などとして有用である。
【0026】
また、剥離フィルム上に該ワニスを塗布し加熱下で溶剤を除去、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤を得ることが出来る。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することが出来る。
【0027】
本発明で得られる硬化物は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用される一般の用途が挙げられ、例えば、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止剤の他、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
【0028】
接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
【0029】
封止剤としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSIなど用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TABなど用のといったポッティング封止、フリップチップなどの用のアンダーフィル、QFP、BGA、CSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)などを挙げることができる。
【実施例】
【0030】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また実施例において、エポキシ当量、溶融粘度、軟化点は以下の条件で測定した。
1)エポキシ当量JIS K−7236に準じた方法で測定した。
2)軟化点JIS K−7234に準じた方法で測定
3)GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)の測定条件は以下の通りである。
機種:Shodex SYSTEM−21カラム:KF−804L+KF−803L(×2本)連結溶離液:THF(テトラヒドロフラン); 1ml/min.40℃ 検出器:UV(254nm;UV−41)
サンプル:約0.4%THF溶液 (20μlインジェクト)
検量線:Shodex製標準ポリスチレン使用
【0031】
実施例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂(日本化薬株式会社製 EOCN−104S)100部、メチルイソブチルケトン50部を加え、100℃で十分に溶解させた。60℃まで冷却後、メタノール200部を加え、得られた懸濁液を、還流下、1時間攪拌した後、50℃で30分静置し、二層に分離することを確認した。二層に分離した上層部をデカンテーションで抜き取り、残渣にさらにメチルイソブチルケトン25部、メタノール200部を追加し、再度還流下、1時間攪拌した。この後、50℃で30分静置し、二層に分離することを確認した。二層に分離した上層部をデカンテーションで分離し、一回目のものと合わせ、上層液(L1)と、残渣である下層液(H1)をそれぞれ得た。
得られた上層液(L1)から加熱減圧下溶剤回収をすることで目的とする低分子量エポキシ樹脂(LEP1)が得られた。さらに下層液(H1)から加熱減圧下溶剤回収をすることで目的とする高分子量エポキシ樹脂(HEP1)を得た。詳細なデータについては下記表1に示す。
【0032】
実施例2、実施例3
実施例1のエポキシ樹脂をジシクロペンタジエン架橋型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、XD−1000、実施例2)トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、EPPN−501H、実施例3)に変えた以外は同様の操作を行い、それぞれジシクロペンタジエン架橋型エポキシ樹脂からLEP2、HEP2を、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂からはLEP3、HEP3を得た。同様に詳細は下記表1に示す。
【0033】
【表1】

表中
sp:軟化点 ICI:ICI粘度 WPE:エポキシ当量 MW:重量平均分子量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量分布を有するエポキシ樹脂を溶媒(良溶媒)に溶解し、次いで該溶媒及び分子量の大きいエポキシ樹脂に対する溶解性の低い溶媒(貧溶媒)を添加してエポキシ樹脂の貧溶媒を混合し、次いで貧溶媒溶解成分(低分子量エポキシ樹脂)と、良溶媒溶解成分(エポキシ樹脂オリゴマーまたはエポキシ樹脂ポリマー)とを分離する工程を含むエポキシ樹脂の改質方法。
【請求項2】
良溶媒がケトン系、あるいはエステル系溶剤であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂の改質方法。
【請求項3】
エポキシ樹脂とエポキシ樹脂の貧溶媒を混合し、貧溶媒溶解成分(低分子量エポキシ樹脂)と、残渣(エポキシ樹脂オリゴマーまたはエポキシ樹脂ポリマー)とを分離する工程を含むエポキシ樹脂の改質方法。
【請求項4】
貧溶媒がアルコール類であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂の改質方法。

【公開番号】特開2006−233078(P2006−233078A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51102(P2005−51102)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】