説明

エポキシ樹脂及びそれを用いたエポキシ樹脂組成物

【課題】防食性に優れ、低温環境でも硬化性に優れるエポキシ樹脂を提供し、さらには当該エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の水酸基を有するエポキシ樹脂の水酸基を、(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を有する化合物によって、ウレタン(メタ)アクリレート化したことを特徴とするエポキシ樹脂及びそれを用いたエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食性に優れ、低温環境でも硬化性に優れるエポキシ樹脂に関し、さらには当該エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、エポキシ樹脂にアミン系硬化剤を加えたものが、防食性、接着性などに優れることから、防食塗料として用いられている。その用途の一つに、船舶のバラストタンク用塗料がある。しかし、このエポキシ樹脂の防食塗料は、低温環境(冬季の0〜5℃)での硬化性が低く、施工に時間がかかるという問題があった。そこで、低温環境下での施工には、エポキシ樹脂の代わりに、低温硬化性が高いポリイソシアネートを用いたエポキシウレタン樹脂(エポキシポリオール−ポリイソシアネート系)が用いられているのが現状である。しかし、通常のエポキシ樹脂と比べてエポキシウレタン樹脂は、ポリイソシアネートを用いるため、湿気によるポリイソシアネートの分解、その分解で発生する二酸化炭素による塗膜中での発泡、さらには防食性が不十分であるという問題がある。また、エポキシポリオールは分子量が大きいため、ハイソリッド化が困難という問題もある。
【0003】
そこで、低温環境でも硬化性が高いポリイソシアネートを用いないエポキシ樹脂の防食塗料が求められている。このエポキシ樹脂の低温硬化性を向上するものとして、マンニッヒ反応物をエポキシ変性したアミン系硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物(例えば、特許文献1参照。)やエポキシ樹脂と3官能以上のアクリレート化合物を併用したエポキシ樹脂組成物(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。しかしながら、これらのエポキシ樹脂組成物でも低温硬化性は十分ではなく、さらなる高い低温硬化性が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−172195号公報
【特許文献2】特開2002−256139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、防食性に優れ、低温環境でも硬化性に優れるエポキシ樹脂を提供することであり、さらには当該エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、水酸基を有するエポキシ樹脂の水酸基をウレタン(メタ)アクリレート化したエポキシ樹脂を用いることにより低温硬化性に優れたエポキシ樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、水酸基を有するエポキシ樹脂の水酸基を、(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を有する化合物によって、ウレタン(メタ)アクリレート化したことを特徴とするエポキシ樹脂及びそれを用いたエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエポキシ樹脂は、防食性、接着性、さらには低温硬化性に優れるため、低温環境下で施工する防食塗料用の樹脂として適している。また、本発明のエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物は、船舶用防食塗料、橋梁等の鋼構造物用防食塗料として有用であり、特にバラストタンクの内面用の防食塗料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のエポキシ樹脂は、水酸基を有するエポキシ樹脂の水酸基を、(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を有する化合物によって、ウレタン(メタ)アクリレート化したエポキシ樹脂である。なお、本発明において、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基をいい、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートをいう。
【0010】
本発明で用いるエポキシ樹脂としては、分子内にエポキシ基及び水酸基を有する化合物であればよく、その構造等に特に制限はない。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ノニルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、t−ブチルカテコール型エポキシ樹脂等の多価エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、硬化性が良好であり、且つ得られる硬化塗膜の防食性に優れる点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂を用いることが好ましく、特にグリシジル化したビスフェノールAとビスフェノールAとを縮合した一般式(1’)で表されるエポキシ樹脂が好ましい。
【0011】
【化1】

(上記式(1’)中、nは1〜7の整数を表す。)
【0012】
上記一般式(1’)中の水酸基に(メタ)アクロイル基及びイソシアネート基を有する化合物を反応させて、得られるのが本発明のエポキシ樹脂の1つの例で、下記一般式(1)で表されるものである。
【0013】
【化2】

(上記一般式(1)中、Xは、置換基を有してもよい直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表す。また、nは、1〜7の整数を表す。)
【0014】
また、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック型樹脂のフェノール性水酸基に、上記一般式(1’)で表されるエポキシ樹脂を反応させて、下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂(一般式(2)中のRが一般式(3’)であるもの)を得た後、さらに一般式(3’)中の水酸基に(メタ)アクロイル基及びイソシアネート基を有する化合物を反応させて、得られた下記一般式(2)中のRを一般式(3)としたものが本発明のエポキシ樹脂のもう1つの例である。
【0015】
【化3】

(上記一般式(2)中、Rは、それぞれ独立して炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基、又は水素原子を表す。また、mは、0〜3の整数を表す。)
【0016】
【化4】

(上記式(3’)中、pは1〜5の整数を表す。)
【0017】
【化5】

(上記一般式(3)中、Xは置換基を有してもよい直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。また、pは1〜5の整数を表す。)
【0018】
また、上記一般式(1)又は一般式(3)中のXは、置換基を有してもよい直鎖又は分岐のアルキレン基を表すが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、下記式(4)、式(5)等が挙げられる。
【0019】
【化6】

【0020】
前記(メタ)アクロイル基及びイソシアネート基を有する化合物としては、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、1,1−ビス(メタクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2−(アクリロイルエトキシ)−エチルイソシアネート、2−(メタクリロイルエトキシ)−エチルイソシアネート等が挙げられる。
【0021】
水酸基を有するエポキシ樹脂の水酸基を、(メタ)アクロイル基及びイソシアネート基を有する化合物によって、ウレタン(メタ)アクリレート化する際の反応条件としては、反応温度40〜100℃で、残留イソシアネートのピークが赤外吸光スペクトル(IR)で検出限界以下となるまで反応を行うのが好ましい。
【0022】
前記ウレタン(メタ)アクリレート化は、無溶媒でも反応可能であるが、溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、アセトニトリル、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、N−メチルピロリドン等を用いてもよい。
【0023】
また、本発明におけるウレタン(メタ)アクリレート化には、ウレタン化触媒を使用することができる。ウレタン化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等のアミン、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫等の金属塩、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物などが挙げられる。
【0024】
本発明で用いるアミン系硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ポリアミン、複素環式ポリアミン等やそれらのエポキシ付加物、マンニッヒ変性化物、ポリアミドの変性物を用いることができる。例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン等が挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0025】
上記のアミン系硬化剤の中でも、硬化性に優れる点からフェノール類及びホルムアルデヒドを反応させて得られるマンニッヒ変性化物が好ましく、硬化物の防食性能に優れる点からダイマー酸等のカルボン酸を反応させて得られるポリアミドが好ましい。
【0026】
また、主剤であるエポキシ樹脂と硬化剤であるアミンとの配合比は、当量比でエポキシ基:アミン中の活性水素=1:0.5〜1:1.5が好ましく、特に1:0.8〜1:1.1が好ましい。なお、アミン中の活性水素とは、アミンの窒素原子に結合している水素原子をいい、水素原子1つを1当量とする。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、前記エポキシ樹脂と前記アミン系硬化を用いること以外、なんら制限されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲において、硬化促進剤を適宜併用して用いることも可能である。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物又は防食塗料に塗工適性を付与するため、溶剤を配合してもよい。この溶剤としては、上記のウレタン(メタ)アクリレート化に用いることができる溶媒の他に、イソプロピルアルコールやイソブタノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
【0029】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物又は防食塗料には、用途、特性等の目的に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、顔料、石油樹脂、造膜助剤、消泡剤、ハジキ防止剤、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜併用して配合することができる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。
【0031】
(実施例1:一般式(2)のエポキシ樹脂の合成)
温度計、撹拌装置を付した4つ口フラスコに、エポキシ当量476g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン1050」;上記一般式(1’)のエポキシ樹脂で、nが平均2.2のもの)476質量部とキシレン231質量部を仕込み、溶解する。触媒としてジブチル錫ジラウレート(日東化成株式会社製ネオスタンU−200)0.03質量部を加え、50度で2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製「カレンズAOI」)36質量部を1時間かけて分割添加し、添加後さらに2時間反応させる。IRによって、イソシアネート基(2250cm−1付近)の消失を確認後、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(以下、「BHT」という。)0.05質量部を加え、不揮発分70質量%のエポキシ樹脂(A−1)を得た。
【0032】
(実施例2:一般式(3)のエポキシ樹脂の合成)
温度計、撹拌装置、窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコに、エポキシ当量189g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850」;上記一般式(1’)のエポキシ樹脂で、nが平均0.1のもの)189質量部とビスフェノールA30質量部、水酸基当量102g/eqのフェノールノボラック(DIC株式会社製「M−70G」)23質量部を仕込む。80℃に昇温し、テトラメチルアンモニウムクロライド0.04質量部を加え、140℃で5時間反応させる。エポキシ当量が470g/eqを超えたことを確認後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850」)296質量部とキシレン101質量部を加え、50℃に冷却する。触媒としてジブチル錫ジラウレート(日東化成株式会社製ネオスタンU−200)0.03質量部を加えた後、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製「カレンズAOI」)41質量部を1時間かけて分割添加し、添加後さらに2時間反応させる。IRによって、イソシアネート基(2250cm−1付近)の消失を確認後、BHT0.05質量部とイソブタノール43質量部を加え、不揮発分80質量%のエポキシ樹脂(A−2)を得た。
【0033】
(調製例1)
温度計、撹拌装置を付した4つ口フラスコに、エポキシ当量476g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン1050」)476質量部とペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM−306」)24質量部及びキシレン214質量部を仕込み、溶解することにより、不揮発分70質量%のエポキシ樹脂と多官能アクリレートとの樹脂組成物(A−3)を得た。
【0034】
(調製例2)
温度計、撹拌装置、窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコに、エポキシ当量189g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850」)189質量部とビスフェノールA30質量部、水酸基当量102g/eqのフェノールノボラック(DIC株式会社製「M−70G」)23質量部を仕込む。80℃に昇温し、テトラメチルアンモニウムクロライド0.04質量部を加え、140℃で5時間反応させる。フェノール性水酸基の消失を確認後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850」)296質量部とキシレン99質量部とイソブタノール42質量部を加える。さらにペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM−306」)27質量部を加え、撹拌均一することにより、不揮発分80質量%のエポキシ樹脂と多官能アクリレートとの樹脂組成物(A−4)を得た。
【0035】
(調製例3)
温度計、撹拌装置、窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコに、エポキシ当量189g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850」)189質量部とビスフェノールA30質量部、水酸基当量102g/eqのフェノールノボラック(DIC株式会社製「M−70G」)23質量部を仕込む。80℃に昇温し、テトラメチルアンモニウムクロライド0.04質量部を加え、140℃で5時間反応させる。フェノール性水酸基の消失を確認後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850」)296質量部とキシレン99質量部とイソブタノール42質量部を加えることにより、不揮発分80質量%のエポキシ樹脂組成物(A−5)を得た。
【0036】
上記の実施例1、2で得られたエポキシ樹脂(A−1)及び(A−2)、調製例1〜3で得られた樹脂組成物(A−3)〜(A−5)及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン1050−70X」;「エピクロン1050」の樹脂分70質量%のキシレン溶液)の性状値を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
(調製例4:アミン系硬化剤の調製)
温度計、撹拌装置、窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコに、ポリアミドアミン(DIC株式会社製「TD−977」)280質量部、マンニッヒ型ポリアミン(DIC株式会社製「F−4」)120質量部及び2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(エアープロダクツジャパン株式会社製「アンカミンK−54」)38質量部を仕込んだ後、50℃で均一に混合して、不揮発成分66.5質量%、活性水素当量200g/eq(溶液値)のアミン系硬化剤を得た。
【0039】
(実施例3)
上記の実施例1で得られたエポキシ樹脂(A−1)(不揮発分70質量%)100質量部、キシレン17質量部及び上記の調製例4で得られたアミン系硬化剤24.6質量部を均一に混合して、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0040】
(実施例4)
上記の実施例2で得られたエポキシ樹脂(A−2)(不揮発分80質量%)100質量部、キシレン17質量部及び上記の調製例4で得られたアミン系硬化剤51.6質量部を均一に混合して、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0041】
(比較例1)
上記の調製例1で得られた樹脂組成物(A−3)(不揮発分70質量%)100質量部、キシレン17質量部及び上記の調製例4で得られたアミン系硬化剤25.2質量部を均一に混合して、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0042】
(比較例2)
上記の調製例2で得られた樹脂組成物(A−4)(不揮発分80質量%)100質量部、キシレン17質量部及び上記の調製例4で得られたアミン系硬化剤53.7質量部を均一に混合して、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0043】
(比較例3)
上記の調製例3で得られた樹脂組成物(A−5)(不揮発分80質量%)100質量部、キシレン17質量部及び上記の調製例4で得られたアミン系硬化剤56.5質量部を均一に混合して、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0044】
(比較例4)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン1050−70X」、不揮発分70質量%)100質量部、キシレン17質量部及び上記の調製例4で得られたアミン系硬化剤26.5質量部を均一に混合して、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0045】
(低温硬化性試験)
上記の実施例3、4及び比較例1〜4で得られたエポキシ樹脂組成物をガラス板(厚さ2.0mm)に乾燥後の塗膜厚が100μmになるようにガムテープ堰を用いて塗布し、5℃の雰囲気下に放置して、塗膜硬化速度試験機(理研工学製「RCIドライングレコーダー」)を用いて、低温硬化性として半硬化時間及び完全硬化時間(単位:時間)を測定した。なお、半硬化時間及び完全硬化時間の判定基準は、以下の通りである。
半硬化時間:引っ掻き跡が急激に狭くなるまでの時間。
完全硬化時間:引っ掻き跡がなくなるまでの時間。
【0046】
(耐水性試験)
上記の実施例3、4及び比較例1〜4で得られたエポキシ樹脂組成物を#240のサンドペーパーで表面処理を行った冷却圧延鋼板に、バーコーターを用いて乾燥膜厚が50μmとなるように塗布し、25℃で1週間養生して、耐水性試験の試験片を得た。得られた試験片を水中に40℃で1週間浸漬し、ブリスター発生の有無を目視で確認した。
【0047】
(防食性試験)
上記の耐水性試験と同様に得られた試験片を用いて、防食性試験を行った。防食性試験は、JIS K−5600−7−1(1999)に準拠して行った。試験片にカッターでクロスカットを入れた後、試験器内に置き、300hr試験を行った後、フラット部のブリスター発生の有無を目視で確認し、クロスカット部からの塗膜の膨れ幅を測定した。なお、膨れ幅の単位はmmである。
【0048】
実施例3、4及び比較例1〜4で得られたエポキシ樹脂組成物の組成と試験結果を表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
表2に示した実施例3及び4の結果から、本発明のエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物は、低温硬化性、防食性に優れることが分かった。
【0051】
比較例1及び2は、エポキシ樹脂と3官能以上のアクリレート化合物を用いた例であるが、耐水性及び防食性は問題なかったが、低温硬化性はやや不十分であった。
【0052】
比較例3及び4は、ウレタンアクリレート化していないエポキシ樹脂を用いた例であるが、耐水性及び防食性は問題なかったが、低温硬化性が非常に低いことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有するエポキシ樹脂の水酸基を、(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を有する化合物によって、ウレタン(メタ)アクリレート化したことを特徴とするエポキシ樹脂。
【請求項2】
下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂。
【化1】

(上記一般式(1)中、Xは、置換基を有してもよい直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表す。また、nは、1〜7の整数を表す。)
【請求項3】
下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂。
【化2】

(上記一般式(2)中、Rは、それぞれ独立して下記一般式(3)を表し、Rは、それぞれ独立して炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基、又は水素原子を表す。また、mは、0〜3の整数を表す。)
【化3】

(上記一般式(3)中、Xは置換基を有してもよい直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。また、pは1〜5の整数を表す。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のエポキシ樹脂及びアミン系硬化剤を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4記載のエポキシ樹脂組成物からなることを特徴とする防食塗料。

【公開番号】特開2010−59345(P2010−59345A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228197(P2008−228197)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】