説明

エポキシ樹脂及び分散プロセスのための金属安定剤

(a)第11族〜第13族の金属及びそれらの組合せからなる群より選択される金属を含む金属含有化合物を含む安定剤を、分散物を提供するために分散剤に混合すること、及び、(b)分散物をワニスに加えることを含む方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示される実施形態は分散物に関する。より具体的には、本明細書中に開示される実施形態は、エポキシ樹脂を含有するワニスにおいて使用される分散物に関する。
【背景技術】
【0002】
無鉛はんだを義務づける近年制定された法律により、プリント回路基板(PCB)がさらされる温度が約260℃に上がっている。これらの温度は、何らかの不良が許容され得る単純な基板を除いて、現在の臭素化エポキシ樹脂−ジシアンジアミド(DICY)硬化技術の本来の熱安定性を越えている。この増大した温度は言い換えれば、電気用積層物が、非常に異なる温度プロフィルの流動はんだ付け及び再加工にさらされることにより、このため、電気用積層物には、増大した耐熱性が要求される。この問題の結果として、産業界はDICYからフェノール系キュアリング剤に転換しつつある。フェノール系キュアリング剤の使用により、受け入れられ得る耐熱性がもたらされるが、新しい問題が生じており、これらには、脆さ、銅及びガラスに対する接着不良、並びに、積層物を厚さ許容限界の範囲内で製造する際のある困難さが含まれる。脆さは粗いドリル穴表面を引き起こし、その結果として、銅メッキに関する問題を生じさせ、最終的には基板不良を引き起こすので、脆さは特別な問題である。
【0003】
従って、エポキシ樹脂の熱安定性を、他の積層物特性に対する著しい不都合な影響を有することなく増大させることが望ましいと考えられる。1つの方法が、金属安定剤をエポキシ樹脂に加えることである。しかしながら、金属安定剤は時間の経過とともに沈降する可能性があり、それにより、貯蔵安定性の妨げとなっている。エポキシ樹脂についての望ましい貯蔵寿命は12ヶ月であり、しかしながら、金属安定剤が数日後には沈降し得る。この不均一性は商業的観点からは望ましくない。従って、沈降する量を減らす、金属安定剤をエポキシ樹脂に取り込むための方法が望ましいと考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの実施形態において、(a)第11族〜第13族の金属及びそれらの組合せからなる群より選択される金属を含む金属含有化合物を含む安定剤を、分散物を提供するために分散剤に混合すること、及び、(b)前記分散物をワニスに加えることを含むか、又は、上記の(a)及び(b)からなるか、又は、上記の(a)及び(b)から本質的になる方法が開示される。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の1つの実施形態において、(a)第11族〜第13族の金属及びそれらの組合せからなる群より選択される金属を含む金属含有化合物を含む安定剤を、分散物を提供するために分散剤に混合すること、及び、(b)前記分散物をワニスに加えることを含むか、又は、上記の(a)及び(b)からなるか、又は、上記の(a)及び(b)から本質的になる方法が開示される。
【0006】
好適な金属含有化合物はどれも、本明細書中に開示される実施形態において安定剤として使用することができる。一般に、金属含有化合物における金属は、元素周期表の第11族〜第13族の金属及びそれらの組合せからなる群より選択される。これらの金属には、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム及びタリウムが含まれる。第11族〜第13族の金属に加えて、鉛及びスズもまた使用することができる。1つの実施形態において、金属は亜鉛である。
【0007】
本明細書中に開示される実施形態において、金属含有化合物は一般に、金属塩、金属水酸化物、金属酸化物、金属アセチルアセトナート、有機金属化合物及びそれらのいずれか2つ以上の組合せであり得る。金属が亜鉛である1つの実施形態において、金属含有化合物が、亜鉛塩、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート、有機亜鉛化合物及びそれらのいずれか2つ以上の組合せからなる群より選択される。1つの実施形態において、金属含有化合物は酸化亜鉛であり得る。1つの実施形態において、金属含有化合物はジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(これはまた、「ジラム」として公知である)である。
【0008】
安定剤は一般に、樹脂配合物の総重量に基づいて約0.1重量パーセント〜約40重量パーセントの範囲における量で存在させることができる。
【0009】
好適な分散剤はどれも使用することができる。例としては、ポリフェノール、ポリエポキシド、無水物及びポリアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
ポリフェノールの例としては、ノボラック(例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラックなど)、ビスフェノール(例えば、ビスフェノールF(ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAなど)、及び、過剰なポリフェノールをジエポキシドと縮合することによって調製されるフェノールオリゴマーが挙げられる。
【0011】
ポリエポキシドの例としては、上記で列挙されたポリフェノールのグリシジルエーテル、すなわち、ポリフェノールと、ポリエポキシドとの縮合生成物である固体のエポキシ樹脂が含まれ、具体的な例が、D.E.H.(商標)シリーズのオリゴマー(例えば、D.E.H.(商標)661及び同663など)、及び、流れ調整剤(例えば、D.E.R.(商標)692及びD.E.R.(商標)6508など)である。他の例としては、臭素含有エポキシド(例えば、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルなど)、及び、臭素化オリゴマー(例えば、D.E.R.(商標)592、D.E.R.(商標)593、D.E.R.(商標)539、D.E.R.(商標)530、D.E.R.(商標)538、D.E.R.(商標)514及びD.E.R.(商標)560など)が挙げられる。
【0012】
無水物の例としては、ナド酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、無水マレイン酸とオレフィン(例えば、スチレンなど)とのコポリマーが挙げられる。
【0013】
ポリアミンの例としては、ジシアンジアミド、芳香族アミン、例えば、メチレンジアニリン及びトルエンジアミンなど、脂環式アミン、例えば、エタノールアミン、アミン化ポリオール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン及び関連オリゴマーなど、並びに、脂環式アミン、例えば、N−アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び異性体などが挙げられる。
【0014】
1つの実施形態において、高剪断混合を、安定剤を分散剤と混合するために利用することができる。これらは一般に、駆動される垂直軸と、高剪断のディスク様ブレードとを含む。ブレードは、静止した混合物容器の内部における放射状の流れパターンを生じさせる。ブレードは、容器の内容物をブレードの鋭い刃先に引き寄せる渦流を生じさせる。その後、ブレードの刃先が固形物をばらばらに引き裂き、これにより、それらのサイズを小さくし、同時に、固体粒子を分散剤に分散させる。これらのミキサーは非常に大きい速度を有し、一般には少なくとも500rpmを有する。
【0015】
安定剤を分散剤と混合するために有用である別の方法が、共押出しによる方法である。安定剤及び分散剤が、固形物をより小さい粒子サイズに砕くために粉末ミキサーに加えられる。その後、これらの成分が押出し機に導入され、エポキシ樹脂のガラス転移温度よりも高い温度で、一般には0℃〜200℃の間の温度で共押出しされる。成分が共押出しされるスクリュー速度が一般には0rpm〜500rpmの間である。
【0016】
安定剤を分散剤と混合するために有用である別の方法がボールミルである。安定剤/分散剤の混合物が、ある量のガラスビーズと一緒に垂直のカラムチャンバーに装入される。2つの円形ディスクの撹拌のもと、ガラスビーズが相互に衝突し、粉砕し、これにより、固体凝集物をより効率的に砕き、それにより、安定剤のより小さい平均粒子サイズを最終的な混合物においてもたらすために意図される強い剪断力を生じさせる。工業的規模では、ダイアフラムポンプが、安定剤/分散剤の混合物をより効率的に装入するために水平のミルチャンバーに接続され、かつ、はるかにより大きい硬度を有する酸化ジルコニウム被覆のガラスビーズが、ガラスビーズに取って代わるために使用される。
【0017】
その後、分散物はワニスに加えることができる。その後、ワニスは、沈降した固体粒子をかき混ぜることを最初に必要とすることなく、すぐに使用できる状態であり得る。エポキシ樹脂に加えて、ワニスはまた、キュアリング剤、硬化剤及び触媒を含有することができる。
【0018】
エポキシ樹脂成分は、1つ又はそれ以上の反応性オキシラン基(これは本明細書中では「エポキシ基」又は「エポキシ官能性」として示される)を含有するどのような物質も含めて、組成物を成形することにおいて有用であるどのようなタイプのエポキシ樹脂も可能である。本明細書中に開示される実施形態において有用なエポキシ樹脂には、モノ官能性エポキシ樹脂、多官能性又はポリ官能性のエポキシ樹脂、及び、それらの組合せが含まれ得る。モノマー状エポキシ樹脂及びポリマー状エポキシ樹脂は、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式のエポキシ樹脂が可能である。ポリマー状エポキシには、末端エポキシ基を有する線状ポリマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、ポリマー骨格のオキシランユニット(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)、及び、ペンダント状エポキシ基を有するポリマー(例えば、グリシジルメタクリラートのポリマー又はコポリマーなど)が挙げられる。これらのエポキシは純粋な化合物であってもよく、しかし、一般には、分子あたり1つ又は2つ以上のエポキシ基を含有する化合物の混合物である。いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂はまた、さらなる架橋を生じさせるために、無水物、有機酸、アミノ樹脂、フェノール樹脂、又は、(触媒されるときには)エポキシ基と高い温度で反応し得る反応性の−OH基を含むことができる。1つの実施形態において、エポキシ樹脂が、グリシジルエーテルを、オキサゾリジノン成分を形成するためのビスフェノール化合物(例えば、ビスフェノールA又はテトラブロモビスフェノールAなど)と接触させることによって製造される。
【0019】
一般に、エポキシ樹脂は、グリシジル化樹脂、脂環式樹脂及びエポキシ化オイルなどが可能である。グリシジル化樹脂はしばしば、グリシジルエーテル(例えば、エピクロロヒドリンなど)と、ビスフェノール化合物(例えば、ビスフェノールAなど)との反応生成物;C〜C28アルキルグリシジルエーテル;C〜C28アルキル−及びアルケニル−グリシジルエステル;C〜C28アルキル−モノフェノールグリシジルエーテル及びC〜C28アルキル−ポリフェノールグリシジルエーテル;多価フェノール(例えば、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン(すなわち、ビスフェノールF)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン(すなわち、ビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン及びトリス(4−ヒドロキシフェニル)メタンなど)のポリグリシジルエーテル;上記ジフェノールの塩素化生成物及び臭素化生成物のポリグリシジルエーテル;ノボラックのポリグリシジルエーテル;芳香族ヒドロカルボン酸の塩をジハロアルカン又はジハロゲンジアルキルエーテルによりエステル化することによって得られるジフェノールのエーテルをエステル化することによって得られるジフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノール系化合物と、少なくとも2つのハロゲン原子を含有する長鎖ハロゲンパラフィンとを縮合することによって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテルである。本明細書中に開示される実施形態において有用なエポキシ樹脂の他の例としては、ビス−4,4’−(1−メチルエチリデン)フェノールジグリシジルエーテル及び(クロロメチル)オキシランビスフェノールAジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0020】
いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂には、グリシジルエーテルタイプ、グリシジルエステルタイプ、脱環式タイプ、複素環式タイプ及びハロゲン化エポキシ樹脂などが含まれ得る。好適なエポキシ樹脂の限定されない例としては、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂、ヒドロキノンエポキシ樹脂、スチルベンエポキシ樹脂、並びに、それらの混合物及び組合せが含まれ得る。
【0021】
好適なポリエポキシ化合物には、レゾルシノールジグリシジルエーテル(1,3−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゼン)、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(2,2−ビス(p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)プロパン)、トリグリシジルp−アミノフェノール(4−(2,3−エポキシプロポキシ)−N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アニリン)、ブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル(2,2−ビス(4−(2,3−エポキシプロポキシ)3−ブロモ−フェニル)プロパン)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(2,2−ビス(p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)メタン)、meta−及び/又はpara−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(3−(2,3−エポキシプロポキシ)N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アニリン)、そして、テトラグリシジルメチレンジアニリン(N,N,N’,N’−テトラ(2,3−エポキシプロピル)4,4’−ジアミノジフェニルメタン)、並びに、2つ以上のポリエポキシ化合物の混合物が含まれ得る。見出される有用なエポキシ樹脂のより網羅的な列挙を、Lee,H.及びNeville,K.、Handbook of Epoxy Resins、McGraw-Hill Book Company(1982年再発行)において見出すことができる。
【0022】
他の好適なエポキシ樹脂には、芳香族アミン及びエピクロロヒドリンに基づくポリエポキシ化合物が含まれ、例えば、N,N’−ジグリシジル−アニリン;N,N’−ジメチル−N,N’−ジグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N−ジグリシジル−4−アミノフェニルグリシジルエーテル;及びN,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−プロピレンビス−4−アミノベンゾアートなどが挙げられる。エポキシ樹脂にはまた、芳香族ジアミン、芳香族モノ第一級アミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、ポリカルボン酸の1つ又はそれ以上のグリシジル誘導体が含まれ得る。
【0023】
有用なエポキシ樹脂には、例えば、多価ポリオール(例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセロール及び2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンなど)のポリグリシジルエーテル;脂肪族ポリカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び二量化リノール酸など)のポリグリシジルエーテル;ポリフェノール(例えば、ビスフェノールA、ビス−フェノールF、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン及び1,5−ジヒドロキシナフタレンなど)のポリグリシジルエーテル;アクリラート成分又はウレタン成分を有する修飾エポキシ樹脂;グリシジルアミンエポキシ樹脂;並びにノボラック樹脂が挙げられる。
【0024】
エポキシ化合物は脂環式エポキシド又は脱環式エポキシドが可能である。脂環式エポキシドの例としては、ジカルボン酸の脂環式エステルのジエポキシド、例えば、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)オキサラート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジパート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジパート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ピメラートなど;ビニルシクロヘキセンジエポキシド;リモネンジエポキシド;及びジシクロペンタジエンジエポキシドなどが挙げられる。ジカルボン酸の脂環式エステルの他の好適なジエポキシドが、例えば、米国特許第2,750,395号に記載される。
【0025】
他の脂環式エポキシドには、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート系化合物が含まれ、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート;3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキサンカルボキシラート;6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート;3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシラート;3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシラート;3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシラートなどが挙げられる。他の好適な3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート系化合物が、例えば、米国特許第2,890,194号に記載される。
【0026】
有用であるさらなるエポキシ含有物質には、グリシジルエーテルモノマーに基づくものが挙げられる。例が、多価フェノール(例えば、ビスフェノール化合物など)を過剰なクロロヒドリン(例えば、エピクロロヒドリンなど)と反応することによって得られる多価フェノールのジグリシジルエーテル又はポリグリシジルエーテルである。そのような多価フェノールには、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(これはビスフェノールFとして公知である)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(これはビスフェノールAとして公知である)、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジブロモフェニル)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(4’−ヒドロキシ−フェニル)エタン、又は、酸条件下で得られる、フェノール系化合物とホルムアルデヒドとの縮合物(例えば、フェノールノボラック及びクレゾールノボラックなど)が挙げられる。このタイプのエポキシ樹脂の例が、米国特許第3,018,262号に記載される。他の例としては、多価アルコール(例えば、1,4−ブタンジオールなど)又はポリアルキレングリコール(例えば、ポリプロピレングリコールなど)のジグリシジルエーテル又はポリグリシジルエーテル、及び、脂環式ポリオール(例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンなど)のジグリシジルエーテル又はポリグリシジルエーテルが挙げられる。他の例がモノ官能性樹脂であり、例えば、クレシルグリシジルエーテル又はブチルグリシジルエーテルなどである。
【0027】
別の種類のエポキシ化合物が、多価カルボン酸(例えば、フタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸又はヘキサヒドロフタル酸など)のポリグリシジルエステル及びポリ(β−メチルグリシジル)エステルである。さらなる種類のエポキシ化合物が、アミン、アミド及び複素環式窒素塩基のN−グリシジル誘導体であり、例えば、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルビス(4−アミノフェニル)メタン、トリグリシジルイソシアヌラート、N,N’−ジグリシジルエチルウレア、N,N’−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン及びN,N’−ジグリシジル−5−イソプロピルヒダントインなどである。
【0028】
さらに別のエポキシ含有物質が、グリシドールのアクリル酸エステル(例えば、グリシジルアクリラート及びグリシジルメタクリラートなど)と、1つ又はそれ以上の共重合可能なビニル化合物とのコポリマーである。そのようなコポリマーの例が、1:1のスチレン−グリシジルメタクリラート、1:1のメチル−メタクリラートグリシジルアクリラート、及び、62.5:24:13.5のメチルメタクリラート−エチルアクリラート−グリシジルメタクリラートである。
【0029】
容易に入手することができるエポキシ化合物には、オクタデシレンオキシド;グリシジルメタクリラート;ビスフェノールAのジグリシジルエーテル;D.E.R.(商標)331(ビスフェノールAの液状エポキシ樹脂)及びD.E.R.(商標)332(ビスフェノールAのジグリシジルエーテル)(これらは、The Dow Chemical Company(Midland、Michigan)から入手可能である);ビニルシクロヘキセンジオキシド;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート;3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシラート;ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジパート;ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル;ポリプロピレングリコールで修飾された脂肪族エポキシ;ジペンテンジオキシド;エポキシ化ポリブタジエン;エポキシ官能性を含有するシリコーン樹脂;難燃性エポキシ樹脂(例えば、The Dow Chemical Company(Midland、Michigan)から入手可能なD.E.R.(商標)530、同539、同542、同560、同592及び同593の商品名で入手可能な臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂など);フェノールホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル(例えば、The Dow Chemical Company(Midland、Michigan)から入手可能なD.E.N.(商標)431及びD.E.N.(商標)438の商品名で入手可能なものなど);及びレゾルシノールジグリシジルエーテルが挙げられる。具体的には示されないが、The Dow Chemical Companyから入手可能なD.E.R.(商標)及びD.E.N.(商標)の商品名名称での他のエポキシ樹脂もまた使用することができる。
【0030】
他の好適なエポキシ樹脂が、例えば、米国特許第7,163,973号、同第6,632,893号、同第6,242,083号、同第7,037,958号、同第6,572,971号、同第6,153,719号及び同第5,405,688号、並びに、米国特許出願公開第20060293172号及び同第20050171237号に開示される(これらのそれぞれが本明細書によって参照により本明細書中に組み込まれる)。
【0031】
他の好適なエポキシ樹脂には、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、アリールシアナート樹脂、アリールトリアジン樹脂及びマレイミド樹脂が挙げられる。上記で列挙されたエポキシ樹脂のいずれかの混合物もまた、当然のことではあるが、使用することができる。
【0032】
硬化剤(又はキュアリング剤)を、熱硬化組成物を形成するための硬化性組成物の架橋を促進させるために備えることができる。硬化剤は個別に使用することができ、又は、2つ以上の混合物として使用することができる。いくつかの実施形態において、硬化剤には、ジシアンジアミド(dicy)又はフェノール系キュアリング剤(例えば、ノボラック、レゾール、ビスフェノールなど)が含まれ得る。他の硬化剤には、その一部が上記で開示されるが、改良された(オリゴマー状)エポキシ樹脂が含まれ得る。改良されたエポキシ樹脂硬化剤の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(又はテトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル)及び過剰なビスフェノール又は(テトラブロモビスフェノール)から調製されるエポキシ樹脂が含まれ得る。ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)などの無水物もまた使用することができる。
【0033】
硬化剤にはまた、第一級ポリアミン及び第二級ポリアミン並びにそれらの付加物、無水物、そして、ポリアミドが含まれ得る。例えば、多官能性アミンには、脂肪族アミン化合物、例えば、ジエチレントリアミン(D.E.H.(商標)20、これは、The Dow Chemical Company(Midland、Michigan)から入手可能である)、トリエチレンテトラミン(D.E.H.(商標)24、これは、The Dow Chemical Company(Midland、Michigan)から入手可能である)、テトラエチレンペンタミン(D.E.H.(商標)26、これは、The Dow Chemical Company(Midland、Michigan)から入手可能である)など、同様にまた、上記アミンと、エポキシ樹脂、希釈剤又は他のアミン反応性化合物との付加物が含まれ得る。芳香族アミン(例えば、メタフェニレンジアミン及びジアミンジフェニルスルホンなど)、脂肪族ポリアミン(例えば、アミノエチルピペラジン及びポリエチレンポリアミンなど)及び芳香族ポリアミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン及びジエチルトルエンジアミンなど)もまた使用することができる。
【0034】
無水物硬化剤には、例えば、とりわけ、ナド酸メチル無水物(nadic methyl anhydride)、ヘキサヒドロフタル酸無水物、トリメリト酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水フタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物及びメチルテトラヒドロフタル酸無水物が含まれ得る。
【0035】
硬化剤には、フェノール由来ノボラック又は置換フェノール由来ノボラック、或いは、無水物が含まれ得る。好適な硬化剤の限定されない例としては、フェノールノボラック硬化剤、クレゾールノボラック硬化剤、ジシクロペンタジエンビスフェノール硬化剤、リモネン型硬化剤、無水物及びそれらの混合物が挙げられる。
【0036】
いくつかの実施形態において、フェノールノボラック硬化剤はビフェニル成分又はナフチル成分を含有することができる。フェノール性ヒドロキシ基が化合物のビフェニル成分又はナフチル成分に結合することができる。このタイプの硬化剤は、例えば、欧州特許第915118A1号に記載される方法に従って調製することができる。例えば、ビフェニル成分を含有する硬化剤を、フェノールをビスメトキシ−メチレンビフェニルと反応することによって調製することができる。
【0037】
他の実施形態において、硬化剤には、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素モノエチルアミン及びジアミノシクロヘキサンが含まれ得る。硬化剤にはまた、イミダゾール系化合物、それらの塩及び付加物が含まれ得る。これらのエポキシ硬化剤は典型的には室温で固体である。好適なイミダゾール系硬化剤の例が欧州特許第906927A1号に開示される。他の硬化剤には、フェノール系、ベンゾオキサジン、芳香族アミン、アミドアミン、脂肪族アミン、無水物及びフェノール系化合物が挙げられる。
【0038】
いくつかの実施形態において、硬化剤は、アミノ基あたり500までの分子量を有するポリアミド又はアミノ化合物、例えば、芳香族アミン又はグアニジン誘導体であり得る。アミノ系キュアリング剤の例としては、4−クロロフェニル−N,N−ジメチル−ウレア及び3,4−ジクロロフェニル−N,N−ジメチル−ウレアが挙げられる。
【0039】
本明細書中に開示される実施形態において有用な硬化剤の他の例としては、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホン;メチレンジアニリン;ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(これは、Hexion Chemical Co.からEPON1062として入手可能である);及びビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(これは、Hexion Chemical Co.からEPON1061として入手可能である)が挙げられる。
【0040】
エポキシ化合物のためのチオール系硬化剤もまた使用することができ、これらが、例えば、米国特許第5,374,668号に記載される。本明細書中で使用されるように、「チオール」にはまた、ポリチオール系又はポリメルカプタン系のキュアリング剤が挙げられる。例示的なチオールには、脂肪族チオール、例えば、メタンジチオール、プロパンジチオール、シクロヘキサンジチオール、2−メルカプトエチル−2,3−ジメルカプトスクシナート、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセタート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセタート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(チオグリコラート)、ペンタエリトリトールテトラ(メルカプトプロピオナート)、ペンタエリトリトールテトラ(チオグリコラート)、エチレングリコールジチオグリコラート、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオナート)、プロポキシル化アルカンのトリ−グリシジルエーテルのトリス−メルカプタン誘導体、及び、ジペンタエリトリトールポリ(β−チオプロピオナート)など;脂肪族チオールのハロゲン置換された誘導体;芳香族チオール、例えば、ジメルカプトベンゼン、トリスメルカプトベンゼン又はテトラメルカプトベンゼン、ビス(メルカプトアルキル)ベンゼン、トリス(メルカプトアルキル)ベンゼン又はテトラキス(メルカプトアルキル)ベンゼン、ジメルカプトビフェニル、トルエンジチオール及びナフタレンジチオールなど;芳香族チオールのハロゲン置換された誘導体;複素環含有チオール、例えば、アミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、アルコキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、アリールオキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン及び1,3,5−トリス(3−メルカプトプロピル)イソシアヌラートなど;複素環含有チオールのハロゲン置換された誘導体;少なくとも2つのメルカプト基を有し、かつ、メルカプト基に加えてイオウ原子を含有するチオール化合物、例えば、ビス(メルカプトアルキルチオ)ベンゼン、トリス(メルカプトアルキルチオ)ベンゼン又はテトラキス(メルカプトアルキルチオ)ベンゼン、ビス(メルカプトアルキルチオ)アルカン、トリス(メルカプトアルキルチオ)アルカン又はテトラキス(メルカプトアルキルチオ)アルカン、ビス(メルカプトアルキル)ジスルフィド、ヒドロキシアルキルスルフィドビス(メルカプトプロピオナート)、ヒドロキシアルキルスルフィドビス(メルカプトアセタート)、メルカプトエチルエーテルビス(メルカプトプロピオナート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(メルカプトアセタート)、チオジグリコール酸ビス(メルカプトアルキルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトアルキルエステル)、4,4−チオ酪酸ビス(2−メルカプトアルキルエステル)、3,4−チオフェンジチオール、ビスムチオール(bismuththiol)及び2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどが挙げられる。
【0041】
硬化剤はまた、求核性物質が可能であり、例えば、アミン、第三級ホスフィン、求核性アニオンを伴う第四級アンモニウム塩、求核性アニオンを伴う第四級ホスホニウム塩、イミダゾール系化合物、求核性アニオンを伴う第三級アルセニウム(arsenium)塩、及び、求核性アニオンを伴う第三級スルホニウム塩などが可能である。
【0042】
エポキシ樹脂、アクリロニトリル又はメタクリラートとの付加物形成によって修飾される脂肪族ポリアミンもまた、場合により、キュアリング剤として利用される。加えて、様々なマンニッヒ塩基を使用することができる。アミン基が芳香族環に直接に結合する芳香族アミンもまた、場合により使用される。
【0043】
本明細書中に開示される実施形態において硬化剤として有用である、求核性アニオンを伴う第四級アンモニウム塩には、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムアセタート、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムシアニド、セチルトリエチルアンモニウムアジド、N,N−ジメチルピロリジニウムイソシアナート、N−メチルピリジニウムフェノラート、N−メチル−o−クロロピリジニウムクロリド及びメチルビオロゲンジクロリドなどが含まれ得る。
【0044】
本明細書中における使用のための硬化剤の好適性を、製造者の仕様書を参照することによって、又は、日常的な実験によって求めることができる。製造者の仕様書を、キュアリング剤が、液状又は固体のエポキシと混合するための所望される温度で非晶質固体又は結晶性固体であるかを明らかにするために使用することができる。代替では、固体のキュアリング剤を、固体キュアリング剤の非晶質性又は結晶性、及び、液体形態又は固体形態のどちらかで樹脂組成物と混合するためのキュアリング剤の好適性を求めるために、示差走査熱量測定法(DSC)を使用して試験することができる。
【0045】
上記で記載されるエポキシ硬化剤(又はキュアリング剤)の1つ又はそれ以上の混合物もまた使用することができる。
【0046】
必要な場合には、触媒を、上記で記載されるワニスに加えることができる。触媒には、分子あたり1つのイミダゾール環を有する化合物(例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−フェニル−4−ベンジルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1)’]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1)’]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1)’]−エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾリウム−イソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾリウム−イソシアヌル酸付加物、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−ベンジル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなど)、及び、上記で名前が挙げられたヒドロキシメチル含有イミダゾール化合物(例えば、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−ベンジル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなど)を脱水することによって、また、それらをホルムアルデヒドと縮合することによって得られる、分子あたり2つ以上のイミダゾール環を有する化合物(例えば、4,4’−メチレン−ビス−(2−エチル−5−メチルイミダゾールなど))を含めて、様々なイミダゾール化合物が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0047】
他の実施形態において、好適な触媒には、アミン系触媒、例えば、N−アルキルモルホリン、N−アルキルアルカノールアミン、N,N−ジアルキルシクロヘキシルアミン及びアルキルアミン(但し、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びそれらの異性形態である)、及び、複素環式アミンなどが含まれ得る。
【0048】
非アミン系触媒もまた使用することができる。ビスマス、鉛、スズ、チタン、鉄、アンチモン、ウラン、カドミウム、コバルト、トリウム、アルミニウム、水銀、亜鉛、ニッケル、セリウム、モリブデン、バナジウム、銅、マンガン及びジルコニウムの有機金属化合物を使用することができる。例示的な例としては、硝酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、塩化第二鉄、三塩化アンチモン、酢酸第一スズ、オクタン酸第一スズ及び2−エチルヘキサン酸第一スズが挙げられる。使用することができる他の触媒が、例えば、PCT公開番号国際公開第00/15690号に開示される(これはその全体が参照により組み込まれる)。
【0049】
いくつかの実施形態において、好適な触媒には、求核性のアミン及びホスフィン、とりわけ、窒素複素環化合物、例えば、アルキル化イミダゾール(例えば、2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール)及び他の複素環化合物(例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロオクテン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、ピペリジンなど)など;トリアルキルアミン(例えば、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ベンジルジメチルアミンなど);ホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリエチルホスフィンなど);第四級塩(例えば、トリエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムアセタート、トリフェニルホスホニウムアセタート及びトリフェニルホスホニウムヨージドなど)が含まれ得る。上記で記載された触媒の1つ又はそれ以上の混合物もまた使用することができる。
【0050】
1つの実施形態において、溶媒もまた、ワニスに加えることができる。好適な溶媒には、水、及び、沸点が200℃未満である有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。これらの溶媒の例としては、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール及びイソブタノール、各種メトキシプロパノール(すなわち、Dowanol(商標)PM)、各種メトキシプロピルアセタート(Dowanol(商標)PMA)、及び、N,N’−ジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0051】
分散プロセスを助けるために表面処理されている金属安定剤を使用することが好都合であり得る。そのような表面処理は、粒子が比較的容易に分離されることを可能にし、また、再凝集する傾向を低下させる。表面処理の例としては、カルボン酸、スルホン酸及び硫酸、リン酸及びホスホン酸、並びに、関連する界面活性剤が挙げられる。具体的な例が、脂肪族カルボン酸(例えば、酢酸、オレイン酸及びステアリン酸など)、フェニルスルホン酸、トルエンスルホン酸、長鎖アルコールのスルファートエステルである。他の処理には、シラン及びシリコーンが挙げられる。
【0052】
そのような処理は、典型的には不活性な表面層を形成することによって、固体の表面特性を変化させるために設計される。代替では、表面を被覆し、本発明の成分と相互作用するために設計される処理が可能である。具体的な例が、各種アミノプロピルトリメトキシシラン、各種エポキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランである。
【0053】
配合物に加えられる分散助剤が当分野では周知である。非常に多数の商標登録された添加物が利用可能であり、例えば、BYKから得られる添加物が利用可能である。
【0054】
いくつかの実施形態において、フィラーを使用することができる。好適なフィラーには、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、タルク、金属粉、二酸化チタン、浸潤化剤、顔料、着色剤、離型剤、カップリング剤、イオン捕捉剤、UV安定剤、軟化剤及び粘着性付与剤が含まれ得る。添加物及びフィラーにはまた、とりわけ、フュームドシリカ、骨材(例えば、ガラスビーズなど)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオール樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、グラファイト、二硫化モリブデン、研磨顔料、粘度降下剤、窒化ホウ素、雲母、核剤及び安定剤が含まれ得る。フィラーには、0.5nmから100ミクロンにまで及ぶ粒子サイズを有し得る機能性又は非機能性の粒子状フィラーが挙げられることがあり、場合により、例えば、アルミナ三水和物、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、金属酸化物及びナノチューブが挙げられる。フィラー及び改質剤は、エポキシ樹脂組成物への添加に先立って、水分を追い出すために予熱することができる。加えて、必要に応じて使用されるこれらの添加物は、硬化前及び/又は硬化後において組成物の特性に対する影響を有する可能性があり、ワニス及び所望される反応生成物を配合するときには考慮に入れなければならない。シラン処理されたフィラーを使用することができる。
【0055】
他の実施形態において、本明細書中に開示されるワニスはまた、ナノフィラーを含むことができる。ナノフィラーは、無機又は有機又は金属のものが可能であり、粉末、ウィスカー、繊維、プレート又はフィルムの形態が可能である。ナノフィラーは一般に、少なくとも1つの大きさ(長さ、幅又は厚さ)が約0.1ナノメートル〜約100ナノメートルであるフィラーのどれもが、又は、そのようなフィラーの組合せのどれもが可能である。例えば、粉末については、少なくとも1つの大きさが粒度として特徴付けられ得る;ウィスカー及び繊維については、少なくとも1つの大きさが直径である;プレート及びフィルムについては、少なくとも1つの大きさが厚さである。例えば、粘土を、エポキシ樹脂に基づくマトリックスに分散させることができ、また、粘土は、剪断下でエポキシ樹脂に分散されるときには、非常に薄い成分層に砕くことができる。ナノフィラーには、粘土、有機粘土、カーボンナノチューブ、ナノウィスカー(例えば、SiCなど)、SiO、周期表のs群、p群、d群及びf群から選択される元素、そのように選択される1つ又はそれ以上の元素のアニオン又は塩、金属、金属酸化物及びセラミックスが含まれ得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、複合物を、本明細書中に開示されるワニスを硬化させることによって形成することができる。他の実施形態では、複合物を、硬化性エポキシ樹脂組成物を基体又は強化材に適用することによって形成することができ、例えば、基体又は強化材に含浸して、或いは、基体又は強化材を被覆して、プレプレグを形成し、そのプレプレグを圧力下で硬化させて、電気用積層体組成物を形成することなどによって形成することができる。
【0057】
ワニスが、上記で記載されるように製造された後、ワニスを、電気用積層体組成物の硬化前、硬化中又は硬化後において上記基体の表面、内部又は間に配置することができる。例えば、複合物を、基体をワニスにより被覆することによって形成することができる。被覆を、スプレーコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーター又はグラビアコーターによるコーティング、はけ塗り、及び、ディッピングコーティング又は浸漬コーティングを含めて、様々な手順によって行うことができる。
【0058】
様々な実施形態において、基体は単層又は多層が可能である。例えば、基体は、とりわけ、例えば、2つの合金の複合物、多層ポリマー品及び金属被覆ポリマーであり得る。他の様々な実施形態において、硬化性組成物の1つ又はそれ以上の層を基体に配置することができる。基体層及び電気用積層体組成物層の様々な組合せによって形成される他の多層複合物もまた、本明細書中では想定される。
【0059】
いくつかの実施形態において、ワニスの加熱を、例えば、温度感受性基体の過熱を避けるように限局的に行うことができる。他の実施形態において、加熱には、基体及び組成物を加熱することが含まれ得る。
【0060】
本明細書中に開示されるワニスの硬化は、エポキシ樹脂、硬化剤、及び、(使用されるならば)触媒に依存して、数分から数時間に至るまでの期間、少なくとも約30℃から約250℃に至るまでの温度を必要とし得る。他の実施形態において、硬化を、数分から数時間に至るまでの期間、少なくとも100℃の温度で行うことができる。後処理も同様に使用することができ、そのような後処理は通常、約100℃〜250℃の間の温度においてである。
【0061】
いくつかの実施形態において、硬化を、発熱を防止するために段階的に行うことができる。段階化では、例えば、ある温度で所定の期間硬化させ、その後、より高い温度で所定の期間硬化させることが挙げられる。段階化された硬化は2つ以上の硬化段階を含むことができ、いくつかの実施形態では約180℃よりも低い温度で開始することができ、他の実施形態では約150℃よりも低い温度で開始することができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、硬化温度は、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃又は180℃の下限から、250℃、240℃、230℃、220℃、210℃、200℃、190℃、180℃、170℃、160℃の上限にまで及ぶことができる(但し、範囲はいずれかの下限からいずれかの上限までであり得る)。
【0063】
本明細書中に開示されるワニスは、高強度のフィラメント又は繊維(例えば、炭素(グラファイト)、ガラス及びホウ素など)を含有する複合物において有用であり得る。複合物は、複合物の総体積に基づいて、いくつかの実施形態では約30%〜約70%のこれらの繊維を含有することができ、他の実施形態では40%〜70%のこれらの繊維を含有することができる。
【0064】
例えば、繊維強化複合物をホット・メルト・プレプレギングによって形成することができる。プレプレギング法は、繊維及びエポキシ樹脂の複合物を提供するために積み上げられ、硬化させられるプレプレグを得るために、連続繊維の帯又は織物に溶融形態での本明細書中に記載されるような熱硬化性組成物を含浸することによって特徴づけられる。
【0065】
他の加工技術を、本明細書中に開示される組成物を含有する電気用積層体複合物を形成するために使用することができる。例えば、フィラメント巻き、溶媒プレプレギング及び引抜きが、ワニスが使用され得る典型的な加工技術である。その上、束の形態での繊維をワニスにより被覆し、例えば、フィラメント巻きなどによって積み上げ、硬化させて、複合物を形成することができる。
【0066】
本明細書中に記載されるワニス及び複合物は、接着剤、構造用及び電気用の積層物、被覆、海洋用の被覆、複合物、粉末被覆、接着剤、注入成形物、航空宇宙産業用の構造物として、また、エレクトロニクス産業用の回路基板などとして有用であり得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、ワニスは、様々な基体の表面、内部又は間に配置され得る複合物、被覆、接着剤又はシーラントにおいて使用することができる。他の実施形態において、ワニスを基体に適用して、エポキシに基づくプレプレグを得ることができる。本明細書中で使用されるように、基体には、例えば、ガラス布、ガラス繊維、ガラス紙、紙、並びに、ポリエチレン及びポリプロピレンの類似する基体が挙げられる。得られたプレプレグは所望のサイズに切断することができる。電気伝導層を電気伝導性材料により積層物/プレプレグの表面に形成することができる。本明細書中で使用されるように、好適な電気伝導性材料には、電気伝導性金属、例えば、銅、金、銀、白金及びアルミニウムなどが挙げられる。そのような電気用積層物は、例えば、電気機器又はエレクトロニクス機器のための多層印刷回路基板として使用することができる。マレイミド−トリアジン−エポキシポリマーのブレンド混合物から作製される積層物は、HDI(高密度相互接続)基板を製造するためにとりわけ有用である。HDI基板の例としては、携帯電話において使用される基板、又は、相互接続(IC)基体のために使用される基板が挙げられる。
【実施例】
【0068】
下記の実施例は、本発明を例示するために、また、本発明がどのようにしてなされ、使用されるかを当業者に教示するために意図される。下記の実施例は、本発明を限定することをいかなる点においても意図されない。
【0069】
下記の実施例において、成分は下記の通りである:
D.E.R.(商標)530−A80:過剰なビスフェノールAジグリシジルエーテルをテトラブロモビスフェノールAと縮合することによって調製される臭素化エポキシ(アセトンにおいて80%の固形分)
D.E.R.(商標)592−A80:過剰なビスフェノールAジグリシジルエーテルをメチレンジイソシアナート及びテトラブロモビスフェノールAと縮合することによって調製される臭素化エポキシ(アセトンにおいて80%の固形分)
D.E.R.(商標)383:ビスフェノールAのジグリシジルエーテル
D.E.N.(商標)438EK85は、アセトン及びフェノールの縮合重合により調製されるノボラックである(MEKにおいて85%の固形分)。
Nano−ZnOは、Aldrichから得られる酸化亜鉛であり、平均粒子サイズが1μm未満である。
NanoTek(商標)ZnOは、Nanophase Technologiesから得られる酸化亜鉛であり、平均粒子サイズが100mnm未満である。
NanoGard(商標)ZnOは、Nanophase Technologiesから得られる酸化亜鉛であり、平均粒子サイズが100mnm未満である。
Zn(acac)は、Aldrichから得られる亜鉛アセチルアセトナートである。
MEKは、Aldrichから得られるメチルエチルケトンである。
下記の実施例において、4つのマスターバッチを、高剪断ミキサーを使用して分散させた。
【0070】
実施例1
50グラム量のD.E.R.(商標)530−A80及び17.15グラム量のNano−ZnOを高剪断ミキサーで分散させた。高剪断ミキサーが、発熱を伴って3000rpm〜5000rpmで作動した。30mL量のMEKを加えて、粘度を調節した。混合物は流動性になった。20mLのMEKを用いた場合、混合物は、流動しないペーストであった。安定剤の重量パーセントが(総固形分に対して)30.01wt%であった。総固形分の重量パーセントが62.70%であった。
【0071】
実施例2
50グラム量のD.E.R.(商標)530−A80及び17.15グラム量のZn(acac)を高剪断ミキサーで分散させた。高剪断ミキサーが、発熱を伴って3000rpm〜5000rpmで作動した。さらなる溶媒は加えられず、その結果、ゆっくり流動するペーストである混合物が生じた。安定剤の重量パーセントが(総固形分に対して)30.01wt%であった。総固形分の重量パーセントが85.11%であった。
【0072】
実施例3
50グラム量のD.E.R.(商標)592−A80及び17.15グラム量のNano−ZnOを高剪断ミキサーで分散させた。高剪断ミキサーが、発熱を伴って3000rpm〜5000rpmで作動した。20mL量のMEKを加えて、粘度を調節した。混合物は流動性ペーストであった。安定剤の重量パーセントが(総固形分に対して)30.01wt%であった。総固形分の重量パーセントが68.73%であった。
【0073】
実施例4
25グラム量のD.E.R.(商標)530−A80及び8.57グラム量のZn(acac)を高剪断ミキサーで分散させた。高剪断ミキサーが、激しい発熱を伴って3000rpm〜5000rpmで作動し、これにより、非常に粘性のペーストが生じた。10mL量のMEKを加えた。しかし、混合物は、均質なペーストを達成するために振とうしなければならなかった。安定剤の重量パーセントが(総固形分に対して)30.00wt%であった。総固形分の重量パーセントが85.11%であった。
【0074】
実施例5〜実施例12
実施例5〜実施例12が下記の表Iに詳しく記載される。
【表1】

【0075】
実施例13
固体のマスターバッチを、下記の表IIに詳しく記載されるように共押出しによって調製した。ニート(neat)D.E.R.(商標)592及びZnOが2ガロンのプラスチック製バケットに計り取られる。その後、この混合物を、26℃の一定温度において2300rpmで15秒間、Prismミキサーでブレンド混合した。このブレンド混合プロセスをさらに2回繰り返した。その後、粉末状混合物が、400rpmのスクリュー速度で作動する二軸スクリュー押出し機(Prism TSE−24−PC粉末被覆押出し機)に導入される。押出し機は、25℃、75℃、90℃で設定される3つの加熱帯域を備えた。生じた灰白色の固体を小型のドラムフレーカーによりフレークにした。
【表2】

【0076】
実施例14
本実施例では、分散物を、事前に分散された酸化亜鉛をエポキシ樹脂に滴下により加えることによって調製し、その後、穏やかな振とうとともに1時間撹拌した。これは下記の表IIIに詳しく記載される。
【表3】

【0077】
実施例16
分散物をボールミル混合により調製した。原料及びガラスビーズを、冷却水をジャケットに循環させながら、2800rpmで30分間、2Lのボールミルでかき混ぜた。その後、ガラスビーズを、キャニスターの底の近くに取り付けられたフィルターによって除いた。分散物における成分の量が下記の表IVに詳しく記載される。
【表4】

【0078】
本発明が例示目的のために詳細に記載されているが、本発明は、それによって限定されるように解釈してはならず、その精神及び範囲に挙げられるすべての変化及び改変を包含することが意図されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第11族〜第13族の金属及びそれらの組合せからなる群より選択される金属を含む金属含有化合物を含む安定剤を、分散物を提供するために分散剤に混合すること;
(b)前記分散物をワニスに加えること
を含む方法。
【請求項2】
前記混合が高剪断混合である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高剪断混合の速度が少なくとも500rpmである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合がボールミル混合である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記混合が粉末ミキサーにおいて行われ、その後、共押出しが行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記混合のための期間が少なくとも30秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分散剤が、ポリフェノール、ポリエポキシド、無水物、ポリアミン及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記金属が亜鉛である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記金属含有化合物が、亜鉛塩、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート、有機亜鉛化合物及びそれらのいずれか2つ以上の組合せからなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ワニスがさらに、不活性フィラー、溶媒及びそれらの混合物からなる群より選択される成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記安定剤が、前記分散物の総重量に基づいて約5重量パーセント〜約75重量パーセントの範囲で前記分散物に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載される方法によって製造されるワニス。
【請求項13】
請求項12に記載されるワニスから調製されるプレプレグ。
【請求項14】
請求項12に記載されるワニスから調製される電気用積層物。
【請求項15】
請求項12に記載されるワニスから調製される被覆。
【請求項16】
請求項12に記載されるワニスから調製される複合物。
【請求項17】
請求項12に記載されるワニスから調製される注入成形物。
【請求項18】
請求項12に記載されるワニスから調製される接着剤。

【公表番号】特表2012−514661(P2012−514661A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543960(P2011−543960)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000016
【国際公開番号】WO2010/078690
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】