説明

エポキシ樹脂混合物、エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよびそれらの硬化物

【課題】硬化物が高い熱伝導性に優れ、低粘度で作業性に優れたエポキシ樹脂混合物の提供。
【解決手段】特定の構造を有するヒドロキシアセトフェノンと、下記式(6)


で表される化合物との反応によって得られるフェノール化合物(a)とエピハロヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂(A)、及び液状エポキシ樹脂(B)を含有するエポキシ樹脂混合物、該エポキシ樹脂混合物と硬化剤、好ましくは更に熱伝導率20W/m・K以上の無機充填剤を含有してなるエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なエポキシ樹脂混合物およびエポキシ樹脂組成物に関する。また、かかるエポキシ樹脂組成物により形成されるプリプレグ等の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物は、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。近年、これらの分野に用いられるエポキシ樹脂の硬化物には、高純度化を始め、難燃性、耐熱性、耐湿性、強靭性、低線膨張率、低誘電率特性など諸特性の一層の向上が求められている。
【0003】
特に、エポキシ樹脂組成物の代表的な用途である電気・電子産業分野においては、多機能化、高性能化、コンパクト化を目的とした半導体の高密度実装やプリント配線板の高密度配線化が進んでいるが、高密度実装化や高密度配線化に伴って半導体素子やプリント配線板の内部から発生する熱が増加し、誤作動を引き起こす原因となりうる。そのため、発生した熱をいかにして効率よく外部に放出させるかということが、エネルギー効率や機器設計の上からも重要な課題となっている。
【0004】
エポキシ樹脂の高熱伝導化を実現する手段として、メソゲン基を構造中に導入することが特許文献1に報告されており、同文献にはメソゲン基を有するエポキシ樹脂として、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂などが記載されている。またビフェニル骨格以外のエポキシ樹脂としてはフェニルベンゾエート型のエポキシ樹脂が記載されているが、該エポキシ樹脂は酸化によるエポキシ化反応によって製造する必要があることから、安全性やコストに難があり実用的とは言えない。ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を用いた例としては特許文献2〜4が挙げられ、中でも特許文献3には高熱伝導率を有する無機充填材を併用する手法が記載されている。しかしながら、これら文献に記載の手法により得られる硬化物の熱伝導性は市場の要望を満足するレベルでは無く、比較的安価に入手可能なエポキシ樹脂を用いた、より高い熱伝導率を有する硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物が求められている。
【0005】
また、半導体の高密度実装性に優れ、ICやLSIチップのパッケージの主流となりつつあるBGAでは、パッケージの片面にチップを搭載しチップとパッケージ基板上の導体パターンを金の細線ワイヤで結線後、トランスファー成形によりエポキシ樹脂組成物などを用いて封止するため、成形時にワイヤの変形が起こりにくい低粘度の樹脂組成物が求められている。
【0006】
そこで、先端材料分野の進歩に伴い、作業性に優れ、より高性能なベースレジンとして、高熱伝導性に優れたエポキシ樹脂の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本国特開平11−323162号公報
【特許文献2】日本国特開2004−2573号公報
【特許文献3】日本国特開2006−63315号公報
【特許文献4】日本国特開2003−137971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような問題を解決すべく検討の結果なされたものであり、その硬化物が高い熱伝導性を有し、粘度が低く作業性に優れたエポキシ樹脂混合物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明を完成させるに到った。
すなわち本発明は、
(1)下記式(1)〜(5)
【0010】
【化1】

【0011】
(式(1)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、水酸基、ニトロ基又は炭素数1〜10のアルコキシ基のいずれかを表す。lはR1の数を表し、1〜4の整数である。)
【0012】
【化2】

【0013】
(式(2)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜15のアルキルカルボニル基、炭素数2〜10のアルキルエステル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、モルホリニルカルボニル基、フタルイミド基、ピペロニル基又は水酸基のいずれかを表す。)
【0014】
【化3】

【0015】
(式(3)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数0〜10のアルキルカルボニル基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルキルエステル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は水酸基のいずれかを表す。nは炭素数を表し、0、1、2のいずれかの整数を表す。mはRの数を表し、1≦m≦n+2の関係を満たす。)
【0016】
【化4】

【0017】
(式(4)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は水酸基のいずれかを表す。)
【0018】
【化5】

【0019】
(式(5)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルエステル基又は水酸基のいずれかを表す。また、mは1〜10の整数である。)
で表される化合物の一種以上と、
下記式(6)
【0020】
【化6】

【0021】
(式(6)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、水酸基、ニトロ基、ホルミル基、アリル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基のいずれかを表す。kはRの数を表し、1〜4の整数である。)で表される化合物との反応によって得られるフェノール化合物(a)とエピハロヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂(A)、及び液状エポキシ樹脂(B)を含有するエポキシ樹脂混合物、
(2)前記液状エポキシ樹脂(B)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂またはビスフェノールF型エポキシ樹脂であることを特徴とする(1)に記載のエポキシ樹脂混合物、
(3)エポキシ樹脂(A)の占める割合が1〜50質量%であり、液状エポキシ樹脂(B)の占める割合が50〜99質量%である(1)または(2)のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂混合物、
(4)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂混合物、硬化剤を含有してなるエポキシ樹脂組成物、
(5)熱伝導率20W/m・K以上の無機充填材を含有してなる(4)に記載のエポキシ樹脂組成物、
(6)半導体封止用途に用いられる(5)に記載のエポキシ樹脂組成物、
(7)(6)に記載のエポキシ樹脂組成物及びシート状の繊維基材からなるプリプレグ、
(8)(6)に記載のエポキシ樹脂組成物、または請求項7に記載のプリプレグを硬化してなる硬化物、
に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のエポキシ樹脂混合物は、その硬化物が熱伝導に優れ、エポキシ樹脂混合物が粘度が低く、作業性に優れているため、半導体封止材料、プリプレグを始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に使用する場合に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のエポキシ樹脂混合物は、下記エポキシ樹脂(A)を含有し、さらに下記液状エポキシ樹脂(B)を含有する混合物からなる。まずはエポキシ樹脂(A)の前駆体であるフェノール化合物(a)について説明する。
フェノール化合物(a)は下記式(1)〜(5)で表される化合物から選ばれる一種以上と下記式(6)で表される化合物との反応によって得られる。
【0024】
【化7】

【0025】
(式(1)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、水酸基、ニトロ基、又は炭素数1〜10のアルコキシ基のいずれかを表す。lはR1の数を表し、1〜4の整数である。)
【0026】
式(1)においてRはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、水酸基又は炭素数1〜10のアルコキシ基であることが好ましく、特に水素原子、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましい。
【0027】
フェノール化合物(a)を得るために、式(6)で表される化合物との反応に用いられる式(1)で表される化合物の具体例としては、2−ヒドロキシアセトフェノン、3−ヒドロキシアセトフェノン、4−ヒドロキシアセトフェノン、2’,4’−ジヒドロキシアセトフェノン、2’,5’−ジヒドロキシアセトフェノン、3’,4’−ジヒドロキシアセトフェノン、3’,5’−ジヒドロキシアセトフェノン、2’,3’,4’−トリヒドロキシアセトフェノン、2’,4’,6’−トリヒドロキシアセトフェノン一水和物、4’−ヒドロキシ−3’−メチルアセトフェノン、4’−ヒドロキシ−2’−メチルアセトフェノン、2’−ヒドロキシ−5’−メチルアセトフェノン、4’−ヒドロキシ−3’−メトキシアセトフェノン、2’−ヒドロキシ−4’−メトキシアセトフェノン、4’−ヒドロキシ−3’−ニトロアセトフェノン、4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメトキシアセトフェノン、4’,6’−ジメトキシ‐2’−ヒドロキシアセトフェノン、2’−ヒドロキシ−3’,4’−ジメトキシアセトフェノン、2’−ヒドロキシ−4’,5’−ジメトキシアセトフェノン、5−アセチルサリチル酸メチル、2’,3’−ジヒドロキシ−4’−メトキシアセトフェノン水和物、が挙げられる。これらのうち、得られるフェノール化合物をエポキシ化した際の溶剤溶解性が高く、かつエポキシ樹脂組成物の硬化物が高い熱伝導性を示すことから、4’−ヒドロキシ−3’−メトキシアセトフェノン、4’−ヒドロキシアセトフェノンが好ましい。
【0028】
【化8】

【0029】
(式(2)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜15のアルキルカルボニル基、炭素数2〜10のアルキルエステル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、モルホリニルカルボニル基、フタルイミド基、ピペロニル基又は水酸基のいずれかを表す。)
【0030】
フェノール化合物(a)を得るために、式(6)で表される化合物との反応に用いられる式(2)で表される化合物の具体例としては、アセトン、1,3−ジフェニル−2−プロパノン、2−ブタノン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、アセチルアセトン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、イソアミルメチルケトン、エチルイソブチルケトン、4−メチル−2−ヘキサノン、2,5−ヘキサンジオン、1,6−ジフェニル−1,6−ヘキサンジオン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−メチル−4−ヘプタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、6−メチル−2−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、4−オクタノン、5−メチル−2−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、4−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、5−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、6−ウンデカノン、2−メチル−4−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、6−ドデカノン、2−テトラデカノン、3−テトラデカノン、8−ペンタデカノン、10−ノナデカノン、7−トリデカノン、2−ペンタデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、11−ヘンエイコサノン、12−トリコサノン、14−ヘプタコサノン、16−ヘントリアコンタノン、18−ペンタトリアコンタノン、4−エトキシ−2−ブタノン、4−(4−メトキシフェニル)−2−ブタノン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−メトキシフェニルアセトン、メトキシアセトン、フェノキシアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸tert−ブチル、アセト酢酸3−ペンチル、アセト酢酸アミル、アセト酢酸イソアミル、アセト酢酸ヘキシル、アセト酢酸ヘプチル、アセト酢酸n−オクチル、アセト酢酸ベンジル、アセチルこはく酸ジメチル、アセトニルマロン酸
ジメチル、アセトニルマロン酸ジエチル、アセト酢酸−2−メトキシエチル、アセト酢酸アリル、4−sec−ブトキシ−2−ブタノン、ベンジルブチルケトン、ビスデメトキシクルクミン、1,1−ジメトキシ−3−ブタノン、1,3−ジアセトキシアセトン、4−ヒドロキシフェニルアセトン、4−(4−ヒドロキシフェニル) −2−ブタノン、イソアミルメチルケトン、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、5−ヘキセン−2−オン、アセトニルアセトン、3,4−ジメトキシフェニルアセトン、ピペロニルメチルケトン、ピペロニルアセトン、フタルイミドアセトン、4−イソプロポキシ−2−ブタノン、4−イソブトキシ−2−ブタノン、アセトキシ−2−プロパノン、N−アセトアセチルモルホリン、1−アセチル−4−ピペリドン、などが挙げられる。これらのうち、得られるフェノール化合物をエポキシ化した際の溶剤溶解性が高く、かつエポキシ樹脂組成物の硬化物が高い熱伝導性を示すことから、アセトンが好ましい。
【0031】
【化9】

【0032】
(式(3)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数0〜10のアルキルカルボニル基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルキルエステル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は水酸基のいずれかを表す。nは炭素数を表し、0、1、2のいずれかの整数を表す。mはRの数を表し、1≦m≦n+2の関係を満たす。)
【0033】
尚、式(3)中、Rが炭素数0のアルキルカルボニル基である場合とは、一般式(3)の主骨格であるシクロアルカンを構成する炭素原子を含んでなるカルボニル構造を示し、例えば1,3−シクロペンタンジオン等が挙げられる。
【0034】
フェノール化合物(a)を得るために、式(6)で表される化合物との反応に用いられる式(3)で表される化合物の具体例としては、シクロペンタノン、3−フェニルシクロペンタノン、2−アセチルシクロペンタノン、1,3−シクロペンタンジオン、2−メチル−1,3−シクロペンタンジオン、2−エチル−1,3−シクロペンタンジオン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、4−tert−ブチルシクロヘキサノン、4−ペンチルシクロヘキサノン、3−フェニルシクロヘキサノン、4−フェニルシクロヘキサノン、3,3−ジメチルシクロヘキサノン、3,4−ジメチルシクロヘキサノン、3,5−ジメチルシクロヘキサノン、4,4−ジメチルシクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、2−アセチルシクロヘキサノン、4−シクロヘキサノンカルボン酸エチル、1,4−シクロヘキサンジオンモノエチレンケタール、ビシクロヘキサン−4,4’−ジオンモノエチレンケタール、1,4−シクロヘキサンジオンモノ−2,2−ジメチルトリメチレンケタール、2−アセチル−5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、1,3−シクロヘキサンジオン、1,4−シクロヘキサンジオン、2−メチル−1,3−シクロヘキサンジオン、5−メチル−1,3−シクロヘキサンジオン、ジメドン、1,4−シクロヘキサンジオン−2,5−ジカルボン酸ジメチル、4,4’−ビシクロヘキサノン、2,2−ビス(4−オキソシクロヘキシル)プロパン、シクロヘプタノン、などが挙げられる。これらのうち、得られるフェノール化合物をエポキシ化した際の溶剤溶解性が高く、かつエポキシ樹脂組成物の硬化物が高い熱伝導性を示すことから、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、4−メチルシクロヘキサノンが好ましい。
【0035】
【化10】

【0036】
(式(4)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、又は、水酸基のいずれかを表す。)
【0037】
式(4)においてRはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、又は水酸基であることが好ましい。
【0038】
フェノール化合物(a)を得るために、式(6)で表される化合物との反応に用いられる式(4)で表される化合物の具体例としては、ジアセチル、2,3−ペンタンジオン、3,4−ヘキサンジオン、5−メチル−2,3−ヘキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、などが挙げられる。これらのうち、得られるフェノール化合物をエポキシ化した際の溶剤溶解性が高く、かつエポキシ樹脂組成物の硬化物が高い熱伝導性を示すことから、ジアセチルが好ましい。
【0039】
【化11】

【0040】
(式(5)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルエステル基、又は、水酸基のいずれかを表す。また、mは1〜10の整数である。)
【0041】
式(5)においてRはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は水酸基であることが好ましい。
【0042】
フェノール化合物(a)を得るために、式(6)で表される化合物との反応に用いられる式(5)で表される化合物の具体例としては、ジアセト酢酸エチル、2,5−ヘキサンジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、3−ブチル−2,4−ペンタンジオン、3−フェニル−2,4−ペンタンジオン、4−アセチル−5−オキソヘキサン酸エチルなどが挙げられる。これらのうち、得られるフェノール化合物をエポキシ化した際の溶剤溶解性が高く、かつエポキシ樹脂組成物の硬化物が高い熱伝導性を示すことから、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、3−エチル−2,4−ペンタンジオンが好ましい。
【0043】
【化12】

【0044】
(式(6)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、水酸基、ニトロ基、ホルミル基、アリル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基のいずれかを表す。kはRの数を表し、0〜4の整数である。)
【0045】
上記式(6)においてRはそれぞれ独立して存在し、炭素数1〜3のアルコキシ基であることが好ましい。
【0046】
フェノール化合物(a)を得るために、式(1)〜(5)で表される化合物から選ばれる1種以上との反応に用いられる式(6)で表される化合物の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2,3‐ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、シリンガアルデヒド、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、イソバニリン、4−ヒドロキシ−3−ニトロベンズアルデヒド、5−ヒドロキシ−2−ニトロベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロベンズアルデヒド、バニリン、o−バニリン、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−5−ニトロ−m−アニスアルデヒド、2−ヒドロキシ−5−メチルイソフタルアルデヒド、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド、1−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−5−メトキシベンズアルデヒド、5−ニトロバニリン、5−アリル−3−メトキシサリチルアルデヒド、3,5−ジ−tert−ブチルサリチルアルデヒド、3−エトキシサリチルアルデヒド、4−ヒドロキシイソフタルアルデヒド、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンズアルデヒド、2,4,6−トリヒドロキシベンズアルデヒド、2,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド、2,3,4−トリヒドロキシベンズアルデヒド、3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド、3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、などが挙げられる。これらは1種のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。これらのうち、得られるフェノール化合物をエポキシ化した際の溶剤溶解性が高く、エポキシ樹脂組成物の硬化物が特に高い熱伝導性を示すことから、バニリンを単独で使用するのが好ましい。
【0047】
フェノール化合物(a)は、酸性条件下もしくは塩基性条件下、式(1)〜(5)で表される化合物の一種以上と式(6)で表される化合物とのアルドール縮合反応によって得られる。
式(6)で表される化合物は式(1)で表される化合物1モルに対して1.0〜1.05モル、式(2)、式(3)、式(4)および式(5)で表される化合物1モルに対して2.0〜3.15モルを使用する。
【0048】
酸性条件下でアルドール縮合反応を行う場合、用い得る酸性触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸のような無機酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、複数の種類を併用してもよい。酸性触媒の使用量は、式(6)で表される化合物1モルに対して0.01〜1.0モル、好ましくは0.2〜0.5モルである。
【0049】
一方、塩基性条件下でアルドール縮合反応を行う場合、用い得る塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等の金属水酸化物、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウム等の炭酸アルカリ金属塩、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソブチルアミン、ピリジン及びピペリジン等のアミン誘導体、並びにジメチルアミノエチルアルコール及びジエチルアミノエチルアルコール等のアミノアルコール誘導体が挙げられる。塩基性条件の場合も、先に挙げた塩基性触媒を単独で使用してもよく、複数の種類を併用してもよい。塩基性触媒の使用量は、式(6)で表される化合物1モルに対して0.1〜2.5モル、好ましくは0.2〜2.0モルである。
【0050】
フェノール化合物(a)を得る反応では、必要に応じて溶剤を使用してもよい。用い得る溶剤としては、例えばケトン類のように式(6)で表される化合物との反応性を有するものでなければ特に制限はないが、原料の式(6)で表される化合物を容易に溶解させる点ではアルコール類を溶剤として用いるのが好ましい。
【0051】
反応温度は通常10〜90℃であり、好ましくは35〜70℃である。反応時間は通常0.5〜10時間であるが、原料化合物の種類によって反応性に差があるため、この限りではない。反応終了後、樹脂として取り出す場合には、反応物を水洗後または水洗無しに、加熱減圧下で反応液から未反応物や溶媒等を除去する。結晶で取り出す場合、大量の水中に反応液を滴下することにより結晶を析出させる。塩基性条件で反応を行った場合は生成したフェノール化合物(a)が水中に溶け込むこともありうるので、塩酸を加えるなどして中性〜酸性条件にして結晶として析出させる。
【0052】
フェノール化合物(a)としては、該フェノール化合物のエポキシ化合物(A)が優れた溶剤溶解性を示し、なおかつ高い熱伝導率有する硬化物が得られることから、式(6)で表される化合物と式(3)で表される化合物との反応により得られたフェノール化合物(a)が好ましい。
【0053】
液状エポキシ樹脂(B)の前駆体であるフェノール化合物(b)について説明する。
フェノール化合物(b)としては、エピハロヒドリンと反応させて得られるエポキシ樹脂が室温(25℃)で液状となるものであれば、特に問題なく使用することができるが、得られるエポキシ樹脂の粘度が、室温(25℃)でE型粘度計での測定値が20Pa・s以下のものが好ましく、粘度が5.0Pa・s以下となるものを使用することが好適である。
このようなフェノール化合物(b)の具体例としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシンノボラック、ジヒドロキシナフタレンが挙げられるが、常温で液状であれば問題なく使用できる。
市販品として得られるものとしては三菱化学製のjER827、828、828EL、828XA、806、807、152、630、871、191P、YX−8000、YX8034、YL980、YL983U、DIC製のEPICLON840、840S、850、850S、EXA850CRP、850―LC、HP4032D、EXA−4850シリーズ、EXA−4816、EXA−4822、HP−820、日本化薬製のRE−310、410、303、304、403、404などが挙げられる。
尚、液状エポキシ樹脂とは室温(25℃)で液状のエポキシ樹脂を示す。
【0054】
次に、本発明のエポキシ樹脂混合物を得る手法について説明する。
エポキシ樹脂(A)及び(B)は、上記手法によって得られたフェノール化合物(a)、フェノール化合物(b)とエピハロヒドリンとを反応させ、エポキシ化することにより得られる。エポキシ化の際には、フェノール化合物(a)、フェノール化合物(b)を各々エポキシ化してから混合しても良いし、あらかじめフェノール化合物(a)とフェノール化合物(b)を混合してからエポキシ化しても良い。また、本発明のエポキシ樹脂を得る際に、フェノール化合物(a)、フェノール化合物(b)とともにその他のフェノール化合物を併用しても良い。
併用できるフェノール化合物(a)、フェノール化合物(b)以外のフェノール化合物としては、エポキシ樹脂の原料として通常用いられるフェノール化合物であれば特に制限なく用いることができるが、硬化物が高い熱伝導率を有し、エポキシ樹脂混合物の作業性に優れるという本発明の効果が損なわれる恐れがあるので、併用し得るフェノール化合物の使用量は極力少ないことが好ましい。
【0055】
あらかじめフェノール化合物(a)、フェノール化合物(b)を混合してからエポキシ化を行う際、フェノール化合物(a)、(b)の総量に占めるフェノール化合物(a)の量の和は1〜50質量%、さらに好ましくは10〜50質量%であることが望ましい。フェノール化合物(a)の量の割合が小さいと硬化物の熱伝導性が低くなり、割合が大きいと粘度が高くなり作業性が悪くなる。
【0056】
以下、エポキシ化の手順についてはフェノール化合物(a)、フェノール化合物(b)を各々エポキシ化する場合でも、あらかじめフェノール化合物(a)とフェノール化合物(b)を混合してからエポキシ化する場合でも同様に行える。
【0057】
本発明のエポキシ樹脂混合物に含有されるエポキシ樹脂を得る反応において、エピハロヒドリンとしてはエピクロルヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が使用できるが、工業的に入手が容易なエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量は、フェノール化合物の水酸基1モルに対し通常2〜20モル、好ましくは2〜15モル、特に好ましくは2〜6.5モルである。エポキシ樹脂は、アルカリ金属酸化物の存在下でフェノール化合物とエピハロヒドリンとを付加させ、次いで生成した1,2−ハロヒドリンエーテル基を閉環させてエポキシ化する反応により得られる。この際、エピハロヒドリンを上記のように通常より顕著に少ない量で使用することで、エポキシ樹脂の分子量を延ばすとともに分子量分布を広げることができる。この結果、得られるエポキシ樹脂は、比較的低い軟化点を有する樹脂状物として系中から取り出せ、優れた溶剤溶解性を示す。
【0058】
エポキシ化反応に使用できるアルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、これらは固形物をそのまま使用しても、あるいはその水溶液を使用してもよい。水溶液を使用する場合は、該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に、減圧下または常圧下で連続的に留出させた水及びエピハロヒドリンの混合液から分液により水を除去し、エピハロヒドリンのみを反応系内に連続的に戻す方法でもよい。アルカリ金属水酸化物の使用量は、フェノール化合物の水酸基1モルに対して通常0.9〜3.0モル、好ましくは1.0〜2.5モル、より好ましくは1.0〜2.0モル、特に好ましくは1.0〜1.3モルである。
また、本発明者等は、エポキシ化反応において、特にフレーク状の水酸化ナトリウムを用いることで、水溶液とした水酸化ナトリウムを使用するよりも得られるエポキシ樹脂に含まれるハロゲン量を顕著に低減させることが可能となることを知見するに至った。このハロゲンはエピハロヒドリン由来のものであり、エポキシ樹脂中に多く混入するほど硬化物の熱伝導性の低下が引き起こされる。更にこのフレーク状の水酸化ナトリウムは、反応系内に分割添加されることが好ましい。分割添加を行なうことで、反応温度の急激な減少を防ぐことができ、これにより不純物である1,3−ハロヒドリン体やハロメチレン体の生成を防止することができ、より熱伝導率の高い硬化物の形成が可能となる。
【0059】
エポキシ化反応を促進するために、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加することが好ましい。4級アンモニウム塩の使用量としては、本発明のフェノール化合物の水酸基1モルに対し通常0.1〜15gであり、好ましくは0.2〜10gである。
【0060】
また、エポキシ化の際に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが反応進行上好ましい。中でも、アルコール類またはジメチルスルホキシドが好ましい。アルコール類を用いた場合にはエポキシ樹脂が高い収率で得ることができる。一方、ジメチルスルホキシドを用いた場合にはエポキシ樹脂中のハロゲン量をより低減させることができる。
【0061】
上記アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの使用量に対し通常2〜50質量%、好ましくは4〜35質量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの使用量に対し通常5〜100質量%、好ましくは10〜80質量%である。
【0062】
反応温度は通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間である。
反応終了後、反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下で反応液からエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また得られたエポキシ樹脂中に含まれるハロゲン量をさらに低減させるために、回収した本発明のエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行ない、閉環を確実なものにすることも出来る。この場合、アルカリ金属水酸化物の使用量は、フェノール化合物の水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0063】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下で溶剤を留去することによりエポキシ樹脂が得られる。また、エポキシ樹脂が結晶として析出する場合は、大量の水に生成した塩を溶解した後に、エポキシ樹脂の結晶を濾取してもよい。
【0064】
エポキシ樹脂の総量に占めるエポキシ樹脂(A)の量は1〜50質量%、さらに好ましくは10〜50質量%であることが望ましい。エポキシ樹脂(A)の量の割合が小さいと硬化物の熱伝導性が低くなり、割合が大きいとエポキシ樹脂混合物の粘度が高くなり、作業性に劣る。
エポキシ樹脂(A)においては、エポキシ当量は350g/eq.以下が好ましく、特に300g/eq.以下が好ましい。
エポキシ樹脂(B)においては、エポキシ当量は通常163g/eq.〜210g/eq.であり、163g/eq.〜200g/eq.が好ましく、特に163g/eq.〜195g/eq.が好ましい。
また、エポキシ樹脂(B)の粘度としては、室温(25℃)でE型粘度計により測定した値が通常20Pa・s以下であり、15Pa・s以下がより好ましく、5.0Pa・s以下がさらに好ましい。
エポキシ樹脂の総量に占めるエポキシ樹脂(B)の量は50〜99質量%、さらに好ましくは50〜90質量%であることが望ましい。
そして、上記の好ましいエポキシ当量を有する各エポキシ樹脂の混合物は本発明として好ましい態様である。
【0065】
こうして得られたエポキシ樹脂混合物は低粘度で作業性に優れ、硬化物が高い熱伝導率を有し、さらに、本発明のエポキシ樹脂混合物は、メソゲン基を有するエポキシ樹脂と比較して低い融点を有し、さらに溶剤溶解性にも優れるため、均一な硬化物を与え得る。
【0066】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について記載する。本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂混合物を必須成分として含有する。
【0067】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂は単独でまたは他のエポキシ樹脂と併用して使用することが出来る。
【0068】
他のエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビスフェノールAD及びビスフェノールI等)やフェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン及びジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド及びシンナムアルデヒド等)との重縮合物、キシレン等の芳香族化合物とホルムアルデヒドの重縮合物とフェノール類との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン及びイソプレン等)との重合物、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン及びベンゾフェノン等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジメタノール類(ベンゼンジメタノール及びビフェニルジメタノール等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジクロロメチル類(α,α’−ジクロロキシレン及びビスクロロメチルビフェニル等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ビスアルコキシメチル類(ビスメトキシメチルベンゼン、ビスメトキシメチルビフェニル及びビスフェノキシメチルビフェニル等)との重縮合物、ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物、並びにアルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられるが、通常用いられるエポキシ樹脂であればこれらに限定されるものではない。これらは、1種類のみ使用しても、2種以上を併用してもよい。
他のエポキシ樹脂を併用する場合、室温で液状が保たれる範囲での混合であれば問題なく、本発明のエポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分に占める本発明のエポキシ樹脂混合物の割合は30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、特に好ましくは100質量%(他のエポキシ樹脂を併用しない場合)である。本発明のエポキシ樹脂組成物としては、エポキシ樹脂として本発明のエポキシ樹脂を100質量%使用するのが最も好ましい。
【0069】
本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物及びフェノール系化合物等が挙げられる。これら他の硬化剤の具体例を下記(a)〜(e)に示す。
(a)アミン系化合物 ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン及びナフタレンジアミン等
(b)酸無水物系化合物 無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルヘキサヒドロ無水フタル酸等
(c)アミド系化合物 ジシアンジアミド、若しくはリノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂等、
【0070】
(d)フェノール系化合物多価フェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン及び1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等);フェノール類(例えば、フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン及びジヒドロキシナフタレン等)と、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド及びフルフラール等)、ケトン類(p−ヒドロキシアセトフェノン及びo−ヒドロキシアセトフェノン等)、若しくはジエン類(ジシクロペンタジエン及びトリシクロペンタジエン等)との縮合により得られるフェノール樹脂;前記フェノール類と、置換ビフェニル類(4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル及び4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)等との重縮合により得られるフェノール樹脂;前記フェノール類及び/又は前記フェノール樹脂の変性物;テトラブロモビスフェノールA及び臭素化フェノール樹脂等のハロゲン化フェノール類
(e)その他イミダゾール類、BFアミン錯体、グアニジン誘導体
【0071】
これら他の硬化剤の中ではジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン及びナフタレンジアミンなどのアミン系化合物、並びにカテコールとアルデヒド類、ケトン類、ジエン類、置換ビフェニル類又は置換フェニル類との縮合物などの活性水素基が隣接している構造を有する硬化剤がエポキシ樹脂の配列に寄与するため好ましい。
硬化剤は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。全硬化剤の使用量は、全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.5〜2.0当量が好ましく、0.6〜1.5当量が特に好ましい。
【0072】
本発明のエポキシ樹脂組成物は必要に応じて熱伝導に優れた無機充填材を含有させることで、その硬化物にさらに優れた高熱伝導性を付与することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する無機充填材は、エポキシ樹脂組成物の硬化物に、より高い熱伝導率を付与する目的で加えられるもので、無機充填材自体の熱伝導率が低すぎる場合には、エポキシ樹脂と硬化剤の組み合わせにより得られた高熱伝導率が損なわれる恐れがある。従って、本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する無機充填材としては、熱伝導率が高いものほど好ましく、通常20W/m・K以上、好ましくは30W/m・K以上、より好ましくは50W/m・K以上の熱伝導率を有するものであれば何ら制限はない。尚、ここでいう熱伝導率とは、ASTM E1530に準拠した方法で測定した値である。この様な特性を有する無機充填材の具体例としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化チタン、酸化亜鉛、炭化タングステン、アルミナ、酸化マグネシウム等の無機粉末充填材、合成繊維、セラミックス繊維等の繊維質充填材、着色剤等が挙げられる。これら無機充填材の形状は、粉末(塊状、球状)、単繊維、長繊維等いずれであってもよいが、特に、平板状のものであれば、無機充填材自身の積層効果によって硬化物の熱伝導性がより高くなり、硬化物の放熱性が更に向上するので好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物における無機充填材の使用量は、エポキシ樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して通常2〜1000質量部であるが、熱伝導率を出来るだけ高める為には、本発明のエポキシ樹脂組成物の具体的な用途における取り扱い等に支障を来たさない範囲で、可能な限り無機充填材の使用量を増やすことが好ましい。これら無機充填材は1種のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0073】
また、充填材全体としての熱伝導率を20W/m・K以上に維持できる範囲であれば、熱伝導率が20W/m・K以上の無機充填材に熱伝導率が20W/m・K未満の充填材を併用しても構わないが、出来るだけ熱伝導率の高い硬化物を得るという本発明の目的からして、熱伝導率が20W/m・K未満の充填材の使用は最小限に留めるべきである。併用し得る充填材の種類や形状に特に制限はない。
【0074】
本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体封止用途に用いる場合、硬化物の耐熱性、耐湿性、力学的性質などの点から、エポキシ樹脂組成物中において75〜93質量%を占める割合で熱伝導率が20W/m・K以上の無機充填材使用するのが好ましい。この場合、残部はエポキシ樹脂成分、硬化剤成分及びその他必要に応じて添加される添加剤であり、添加剤としては併用できる他の無機充填材や後述する硬化促進剤等である。
【0075】
本発明のエポキシ樹脂組成物には硬化促進剤を含有させることもできる。使用できる硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン及び1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン及びトリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート及びテトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート及びN−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。硬化促進剤は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01〜15質量部が必要に応じ用いられる。
【0076】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じてシランカップリング剤、離型剤及び顔料等種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂並びに各種熱可塑性樹脂等を添加することができる。熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の具体例としては、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、シアナート樹脂、イソシアナート化合物、ベンゾオキサジン化合物、ビニルベンジルエーテル化合物、ポリブタジエンおよびこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、インデン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレン、ジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂は本発明のエポキシ樹脂組成物中において60質量%以下を占める量が用いられる。
【0077】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られ、その好ましい用途としては半導体封止材やプリント配線版等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られているのと同様の方法で容易にその硬化物とすることが出来る。例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物の必須成分であるエポキシ樹脂、硬化剤及び熱伝導率が20W/m・K以上の無機充填材、並びに必要により硬化促進剤、配合剤、各種熱硬化性樹脂や各種熱可塑性樹脂等を、必要に応じて押出機、ニーダ又はロール等を用いて均一になるまで充分に混合して得られた本発明のエポキシ樹脂組成物を、溶融注型法あるいはトランスファー成型法やインジェクション成型法、圧縮成型法などによって成型し、更にその融点以上で2〜10時間加熱することにより本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得ることが出来る。前述の方法でリードフレーム等に搭載された半導体素子を封止することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体封止用途に用いることができる。
【0078】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は溶剤を含むワニスとすることもできる。該ワニスは、例えば、少なくとも本発明のエポキシ樹脂混合物を含み、必要に応じて熱伝導率が20W/m・K以上の無機充填材などのその他の成分を含む混合物を、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のエステル類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ及びソルベントナフサ等の石油系溶剤等の有機溶剤と混合することにより得ることが出来る。溶剤の量はワニス全体に対し通常10〜95質量%、好ましくは15〜85質量%である。
上記のようにして得られるワニスをガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維及び紙などの繊維基材に含浸させた後に加熱によって溶剤を除去すると共に、本発明のエポキシ樹脂組成物を半硬化状態とすることにより、本発明のプリプレグを得ることが出来る。尚、ここで言う「半硬化状態」とは、反応性の官能基であるエポキシ基が一部未反応で残っている状態を意味する。該プリプレグを熱プレス成型して硬化物を得ることが出来る。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例で更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。合成例、実施例、比較例において部は質量部を意味する。
なお、エポキシ当量、融点、軟化点、吸湿率、熱伝導率は以下の条件で測定した。
・エポキシ当量
JIS K−7236に記載された方法で測定し、単位はg/eq.である。
・融点
Seiko Instruments Inc.製 EXSTAR6000
測定試料 2mg〜5mg 昇温速度 10℃/min.
・軟化点
JIS K−7234に準拠した方法で測定し、単位は℃である。
・熱伝導率
ASTM E1530に準拠した方法で測定し、単位はW/m・Kである。
・粘度
E型粘度計で25℃にて測定し、単位はPa・sである。
【0080】
合成例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、4’−ヒドロキシアセトフェノン136部、バニリン152部およびエタノール200部を仕込み、溶解した。これに97質量%硫酸20部を添加後60℃まで昇温し、この温度で10時間反応後、反応液を水1200部に注入し、晶析させた。結晶を濾別後、水600部で2回水洗し、その後真空乾燥し、黄色結晶のフェノール化合物1を256部得た。得られた結晶のDSC測定による吸熱ピーク温度は233℃であった。
【0081】
合成例2
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、4’−ヒドロキシ−3’−メトキシアセトフェノン166部、4−ヒドロキシベンズアルデヒド122部およびエタノール200部を仕込み、溶解した。これに97%硫酸20部を添加後50℃まで昇温し、この温度で10時間反応後、反応液を水1200部に注入し、晶析させた。結晶を濾別後、水600部で2回水洗し、その後真空乾燥し、茶褐色結晶のフェノール化合物2を285部得た。得られた結晶のDSC測定による吸熱ピーク温度は193℃であった。
【0082】
合成例3
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、4−メチルシクロヘキサノン56部、バニリン152部およびエタノール150部を仕込み、溶解した。97質量%硫酸10部を添加後50℃まで昇温し、この温度で10時間反応後、トリポリリン酸ナトリウム25部を加え、30分間撹拌した。その後メチルイソブチルケトンを500部添加後、水200部で2回水洗し、その後エバポレーターにて溶剤を留去し、半固形のフェノール化合物3を304部得た。
合成例4
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、アセトン29部、バニリン152部およびエタノール300部を仕込み、溶解した。これに50%水酸化ナトリウム水溶液80部を添加後45℃まで昇温し、この温度で120時間反応後、反応液を1.5N塩酸800mLに注入し、晶析させた。結晶を濾別後、水600部で2回水洗し、その後真空乾燥し、黄色結晶のフェノール化合物4を165部得た。得られた結晶の融点はDSC測定により201℃であった。
【0083】
合成例5
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに窒素パージを施しながら、合成例1で得られたフェノール化合物1を135部、エピクロルヒドリン370部、ジメチルスルホキシド(以下、DMSO)93部を加え、撹拌下、70℃にまで昇温し、溶解し、フレーク状の水酸化ナトリウム41部を90分間かけて分割添加した後、70℃のまま2.5時間反応を行なった。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて135℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物をメチルイソブチルケトン(以下、MIBK)440部に溶解した後に水洗し塩を取り除いた。水洗後、MIBK溶液を70℃に昇温し、撹拌下で30%水酸化ナトリウム水溶液11部を添加し、1時間反応を行なった後、洗浄水が中性になるまで水洗を行ない、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にMIBK等を留去することでエポキシ樹脂1を200部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は240g/eq.、軟化点は56℃であった。
【0084】
合成例6
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに窒素パージを施しながら、合成例2で得られたフェノール化合物2を135部、エピクロルヒドリン370部、ジメチルスルホキシド(以下、DMSO)93部を加え、撹拌下、70℃にまで昇温し、溶解し、フレーク状の水酸化ナトリウム41部を90分間かけて分割添加した後、70℃のまま2.5時間反応を行なった。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて135℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物をMIBK440部に溶解した後に水洗し塩を取り除いた。水洗後、MIBK溶液を70℃に昇温し、撹拌下で30%水酸化ナトリウム水溶液11部を添加し、1時間反応を行なった後、洗浄水が中性になるまで水洗を行ない、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にMIBK等を留去することでエポキシ樹脂2を201部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は243g/eq.、軟化点は60℃であった。
【0085】
合成例7
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに窒素パージを施しながら、合成例3で得られたフェノール化合物3を190部、エピクロルヒドリン370部、ジメチルスルホキシド(以下、DMSO)93部を加え、撹拌下、70℃にまで昇温し、溶解し、フレーク状の水酸化ナトリウム41部を90分間かけて分割添加した後、70℃のまま2.5時間反応を行なった。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて135℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物をMIBK492部に溶解した後に水洗し塩を取り除いた。水洗後、MIBK溶液を70℃に昇温し、撹拌下で30%水酸化ナトリウム水溶液11部を添加し、1時間反応を行なった後、洗浄水が中性になるまで水洗を行ない、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にMIBK等を留去することでエポキシ樹脂3を224部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は270g/eq.、軟化点は62℃であった。
【0086】
合成例8
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに窒素パージを施しながら、合成例4で得られたフェノール化合物4を163部、エピクロルヒドリン370部、ジメチルスルホキシド(以下、DMSO)93部を加え、撹拌下、70℃にまで昇温し、溶解し、フレーク状の水酸化ナトリウム41部を90分間かけて分割添加した後、70℃のまま2.5時間反応を行なった。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて135℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物をMIBK438部に溶解した後に水洗し塩を取り除いた。水洗後、MIBK溶液を70℃に昇温し、撹拌下で30%水酸化ナトリウム水溶液11部を添加し、1時間反応を行なった後、洗浄水が中性になるまで水洗を行ない、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にMIBK等を留去することでエポキシ樹脂4を200部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は240g/eq.、軟化点は52℃であった。
【0087】
実施例1〜8
合成例で得たエポキシ樹脂1〜4をそれぞれフラスコに入れ、オイルバスにて加温して融解させた中に、エポキシ樹脂5,6を表1の割合(部)で配合し、EP混合物1〜8を得た。これらの粘度を測定した結果を表1に示した。
【0088】
【表1】

【0089】
エポキシ樹脂5:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:RE−410S 日本化薬製 エポキシ当量185g/eq.)
エポキシ樹脂6:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:jER806L 三菱化学製 エポキシ当量165g/eq.)
【0090】
実施例9〜24
実施例1〜8で得られたEP混合物1〜8の他、各種成分を表2の割合(部)で配合した後に、型に流し込み、160℃で2時間、更に180℃で8時間加熱を行い、本発明のエポキシ樹脂組成物及び比較用樹脂組成物の硬化物を得た。これら硬化物の熱伝導率を測定した結果を表2に示した。
【0091】
【表2】

【0092】
硬化剤1:酸無水物系硬化剤(商品名:カヤハードMCD 日本化薬製 粘度0.25Pa・s)
硬化剤2:芳香族アミン系硬化剤(商品名:カヤハードA−A 日本化薬製 粘度2.5Pa・s)
【0093】
硬化促進剤:2E4MZ(四国化成製)
【0094】
以上の結果より、本発明のエポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物の硬化物は、優れた熱伝導性を有することが確認できた。また、本発明のエポキシ樹脂混合物について、粘度が極めて低いことが確認された。したがって本発明のエポキシ樹脂は、電気・電子部品用絶縁材料及び積層板(プリント配線板など)等に使用する場合に極めて有用である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のエポキシ樹脂混合物の硬化物は、従来のエポキシ樹脂の硬化物と比較して優れた熱伝導性を有するとともに、エポキシ樹脂混合物は液状で低粘度であり作業性にも優れる。従って、封止材、プリプレグ等として電気・電子材料、成型材料、注型材料、積層材料、塗料、接着剤、レジスト、光学材料などの広範囲の用途に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)〜(5)
【化1】

(式(1)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、水酸基、ニトロ基又は炭素数1〜10のアルコキシ基のいずれかを表す。lはR1の数を表し、1〜4の整数である。)
【化2】

(式(2)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜15のアルキルカルボニル基、炭素数2〜10のアルキルエステル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、モルホリニルカルボニル基、フタルイミド基、ピペロニル基又は水酸基のいずれかを表す。)
【化3】

(式(3)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数0〜10のアルキルカルボニル基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルキルエステル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は水酸基のいずれかを表す。nは炭素数を表し、0、1、2のいずれかの整数を表す。mはRの数を表し、1≦m≦n+2の関係を満たす。)
【化4】

(式(4)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は水酸基のいずれかを表す。)
【化5】

(式(5)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルエステル基又は水酸基のいずれかを表す。また、mは1〜10の整数である。)
で表される化合物の一種以上と、
下記式(6)
【化6】

(式(6)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、水酸基、ニトロ基、ホルミル基、アリル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基のいずれかを表す。kはRの数を表し、1〜4の整数である。)で表される化合物との反応によって得られるフェノール化合物(a)とエピハロヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂(A)、及び液状エポキシ樹脂(B)を含有するエポキシ樹脂混合物。
【請求項2】
前記液状エポキシ樹脂(B)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂またはビスフェノールF型エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂混合物。
【請求項3】
エポキシ樹脂(A)の占める割合が1〜50質量%であり、液状エポキシ樹脂(B)の占める割合が50〜99質量%である請求項1または請求項2に記載のエポキシ樹脂混合物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂混合物、硬化剤を含有してなるエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
熱伝導率20W/m・K以上の無機充填材を含有してなる請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
半導体封止用途に用いられる請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物及びシート状の繊維基材からなるプリプレグ。
【請求項8】
請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物、または請求項7に記載のプリプレグを硬化してなる硬化物。


【公開番号】特開2013−112694(P2013−112694A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257460(P2011−257460)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】