説明

エポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物

【課題】本発明は、その硬化物において難燃性、耐熱性、フレキシビリティーに優れたエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。。
【解決手段】
例えば下記式(1)で表されるポリイミド構造を有するエポキシ樹脂用硬化剤。
【化1】


本発明のエポキシ樹脂用硬化剤はエポキシ樹脂と混合することにより、目的とするエポキシ樹脂組成物とすることができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、溶剤に混合しワニスとしてシート状の硬化物にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なエポキシ樹脂用硬化剤、該硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物及び該組成物を有するシートに関する。本発明のシートはフレキシブル印刷配線板材料を構成する材料、即ち、フレキシブル印刷配線用基板、カバーレイ材料、ボンディングシート等に好適に使用できる。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。一般にエポキシ樹脂及びその硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物は、その応用分野よって、特に電子・電気部品の材料として利用する場合、難燃性を付与することが要求されている。この難燃性を付与する方法として、難燃剤をエポキシ樹脂組成物中に含有させる方法が最も一般的である。例えば、テトラブロモビスフェノールAおよびそのエポキシ化物、或いはテトラブロモビスフェノールAにビスフェノールA型エポキシ樹脂を反応させた化合物などのエポキシ樹脂成分そのものにハロゲン原子を含有させた化合物を含有させたり、アンチモン化合物等の難燃性助剤を含有させたりする方法が一般的に知られている。
またエポキシ樹脂の硬化物としては酸無水物やアミン系化合物が知られているが電気・電子部品分野では耐熱性などの信頼性の面からフェノールノボラックが使用されることが多い。また、フェノール性水酸基を有するポリアミド樹脂をエポキシ樹脂の硬化剤として使用し、硬化物の耐熱性や靭性を改良する方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−313787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記したような臭素を含有する難燃剤は、難燃性には優れているものの廃棄、焼却時に環境汚染の原因となる物質を発生させる可能性がある点が指摘されている。
また難燃性助剤として使用されるアンチモン化合物も同様にその毒性が懸念されている。このような状況の基、近年の環境保護意識の高まりから、エポキシ樹脂組成物においてもハロゲンフリー、アンチモンフリーの要望が高まっている。
また、フェノールノボラックを硬化剤として使用したエポキシ樹脂の硬化物は信頼性には優れているものの、その硬化物は剛直でフレキシビリティーに欠ける。近年の電気・電子部品の形態は従来の大型パッケージやガラス繊維を基材とした基板だけではなく、ポリイミドやPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、金属箔上にワニス状態で塗布した後、溶剤を除去するシート状の成形物が開発されている。
このような場合使用される樹脂には、電気・電子部品の信頼性という面からは硬化物の耐熱性が要求されている。更に上記のようなワニス状エポキシ樹脂組成物はエポキシ樹脂と硬化剤成分とが貯蔵時に反応し、粘度変化等の経時安定性が指摘される場合が多い。
本発明は、その硬化物において難燃性、耐熱性、フレキシビリティーに優れたエポキシ樹脂組成物を提供することを主要な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、本発明を完成さるに至った。
即ち、本発明は
(1)下記式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
(式(1)中Xは、直接結合、−O−、−CO−または−SO−を、またnは、1〜100の整数をそれぞれ表す。)
【0008】
【化2】

【0009】
(式(2)中mは、1〜100の整数を表す。)
【0010】
【化3】

【0011】
(式(3)中Xは、直接結合、−O−、−CO−または−SO−を、Rは芳香族残基を、また、a、bは、それぞれ1〜100の整数を表す。)
【0012】
【化4】

【0013】
(式(4)中Rは、芳香族残基を、また、c、dは、それぞれ1〜100の整数をそれぞれ表す。)
(2)前記式(1)で表される構造を有する化合物であって、nの平均値が15〜40であるエポキシ樹脂用硬化剤
のいずれかで表される構造を有するエポキシ樹脂用硬化剤
(3)エポキシ樹脂(成分A)及び、上記(1)または(2)記載の硬化剤(成分B)を含有するエポキシ樹脂組成物
(4)成分Aが、ビフェニル骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂である上記(3)記載のエポキシ樹脂
(5)成分A中のエポキシ基1モルに対して、成分B中の活性水素のモル数が0.7〜1.2となる割合で混合された上記(3)または(4)記載のエポキシ樹脂組成物
(6)硬化促進剤を含有する上記(3)〜(5)のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物
(7)上記(3)〜(6)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を溶剤に溶解してなるワニス
(8)平面状支持体の両面または片面に上記(3)〜(6)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物からなる層を有するシート
(9)平面状支持体がポリイミドフィルムである上記(8)記載のシート
(10)平面状支持体が金属箔である上記(8)記載のシート
(11)平面状支持体が剥離フィルムである上記(8)記載のシート
(12)上記(7)記載のワニスを基材に含浸させて加熱乾燥して得られるプリプレグ
(13)上記(3)〜(6)のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物の硬化物は、難燃性、フレキシビリティー、耐熱性に優れており、しかもそのワニスは貯蔵安定性に優れているため、成形材料、注型材料、積層材料、塗料、レジストなどの広範囲の用途に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、ポリマー構造中にフェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂であり、前記式(1)〜(4)のいずれかによって表される構造を有する。
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、対応する構造をそれぞれ有する芳香族ジアミンと芳香族四塩基酸二無水物を、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤に溶解し、加熱しポリアミック酸を得たのち、トルエンなどの共沸溶媒を加えて加熱還流することによりイミド化を行い、得ることができる。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤の前駆体となるポリアミック酸を得る反応において、用いることができる芳香族ジアミンとしては、ジアミノヒドロキシピリミジン類を必須とし、これ以外の芳香族ジアミンを併用してもよい。ジアミノヒドロキシピリミジン類としては、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン、2,5−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン、4,5−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン等が挙げられ、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジンが好ましい。
【0017】
ジアミノヒドロキシピリミジン類以外の芳香族ジアミンとしては、分子中にアミノ基を2個以上有し、芳香族環を有する化合物であれば特に制限はないが、具体的には、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、3,4'−ジアミノジフェニルプロパン等のジアミノジフェニルプロパン類;4,4'−[1,3−フェニレンビス(1−メチリデン)]ビスアニリン等のビスアニリン類、4,4'−[1,4−フェニレンビス(1−メチリデン)]ビスアニリン、p−フェニレンジアミン;m−フェニレンジアミン、クロル−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン類;4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、2,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル等のジアミノジフェニルエーテル類;1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン;4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,4'−ジアミノジフェニルメタン等のジアミノジフェニルメタン類;4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'−ジアミノジフェニルスルフィド等のジアミノジフェニルスルフィド類;4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン等のジアミノジフェニルスルホン類;1,5−ジアミノナフタレン;等のジアミノナフタレン類;3,3'−ジメチルベンジジン、3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン、3,3'−ジクロロベンジジン、2,2'−ジクロロベンジジン、3,3',5,5'−テトラクロロベンジジン等のベンジジン類;2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、3,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ビス(4−アミノフェノキシ)安息香酸等の芳香族ジアミン等が挙げられ、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、2,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン及び3,5−ジアミノ安息香酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族ジアミンが好ましい。
これらジアミノヒドロキシピリミジン類以外の芳香族ジアミンの使用量は、ジアミノヒドロキシピリミジン類1モルに対して通常0〜15モル、好ましくは0.05〜9.5モルである。
【0018】
芳香族四塩基酸二無水物としては、前記式(1)〜(4)に対応する芳香族環に4つのカルボキシル基が結合した構造の化合物の2無水物であれば特に制限はない。使用できる芳香族四塩基酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物;3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等のビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフォン酸二無水物、、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物等を挙げることができ、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物が好ましい。
これら芳香族四塩基酸二無水物は単独で、もしくは2種以上を併用することができる。本発明において、芳香族四塩基酸二無水物とアミン成分(ジアミノヒドロキシピリミジン類と必要により他の芳香族ジアミン)は、前者1モルに対して後者が通常0.95〜1.05モル、好ましくは0.97〜1.03モルとなる割合で使用する。この範囲を外れると、モル比のバランスがくずれたことに起因する特性の低下を招くことがあり、粘度にも影響し、ハンドリングを困難にする場合がある。
【0019】
このポリアミック酸は、前記ジアミン成分と前記芳香族四塩基酸二無水物とを所定の割合で、有機溶媒中で反応して得ることができる。有機溶媒は、得られるポリアミック酸の良溶媒であれば特に制限はないが、ポリアミック酸を加熱脱水する際の加熱条件下で、蒸発除去できるものを選択するのが好ましい。使用できる有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(以下DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(以下DMAC)、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グライム、ジグライム、トリグライムなどが挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは二種以上混合して用いることができる。溶媒の使用量は、反応が進行する程度であれば特に制限はないが、反応混合物中で占める割合が50重量%を超過すると、溶媒不足のためポリイミド化が遅くなったり、生成したポリイミドの一部が析出を生じたりすることがあり好ましくない。
反応は、通常45〜100℃で1〜20時間、好ましくは5〜10時間かけて行う。
【0020】
このようにして得られたポリアミック酸において、好ましい分子構造を例示すると、例えば式(5)〜(8)で表される構造が挙げられる。
【0021】
【化5】

【0022】
【化6】

【0023】
【化7】

【0024】
【化8】

【0025】
(式(5)〜(8)中X、n、m、Rは、a、b、c、dはそれぞれ式(1)〜(4)におけるのと同じ意味を表す。)
【0026】
前記式(5)において、nは、通常1〜100の整数を、好ましくは15〜40の整数を、式(6)において、mは、通常1〜100の整数をそれぞれ表し、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)でその値を推定することができる。なお、式(5)のポリアミック酸の分子量は、数平均分子量で通常500〜50000、好ましくは7500〜20000であり、式(6)のポリアミック酸の分子量は、数平均分子量で通常360〜40000である。
【0027】
前記式(7)におけるa及びb、また、式(8)におけるc及びdは、ジアミノヒドロキシピリミジン類と他の芳香族ジアミンの仕込み比によって決定され、GPCより求めた分子量から計算可能である。なお、a〜dは整数で、それぞれ通常1〜100であるが、分子全体の平均値で見ると、通常a=3〜30、b=3〜30、c=3〜30、d=3〜30の正数となる。また同様に平均値でa+bが通常6〜60、好ましくは15〜60、c+dは通常6〜60、好ましくは15〜60の正数となる。
【0028】
このポリアミック酸の溶液を加熱し、イミド化することによって本発明のエポキシ樹脂用硬化剤とすることができるが、イミド化によって生じた水を系外に取り除かないと、逆反応が起こる。そのため、水と反応しないが、共沸するトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素を添加し、脱水する方法がよい。
【0029】
また、イミド化促進触媒として知られている無水酢酸、β−ピコリン、ピリジン、ヒドロキシピリジン、ピリジン−γ−ブチロラクトンなどを加えて反応を進行しやすくすることもできる。
イミド化反応の温度は通常110〜350℃、反応時間は通常1〜5時間である。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び硬化剤として、前記イミド化反応で得られたポリイミド樹脂を含有する。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、成分Aとして用いられるエポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するものであるならば特に限定されないが、機械強度、難燃性などの面からベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環のような芳香族環を有するエポキシ樹脂が好ましい。具体的には、ノボラック型エポキシ樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などが挙げられ、中でもビフェニル骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0031】
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤としては、この本発明のエポキシ樹脂用硬化剤以外に他の硬化剤を併用してもよい。併用しうる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、フェノールノボラック、トリフェニルメタン及びこれらの変性物、フェノールアラルキル樹脂、イミダゾール、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらを併用する場合、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤が全硬化剤に占める割合としては、通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上である。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2活性水素当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して0.7活性水素当量に満たない場合、あるいは1.2活性水素当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。なお、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤用ポリイミド樹脂の水酸基当量は反応時に仕込んだジアミン成分とジカルボン酸類の比率から算出することができる。
【0033】
また上記硬化剤を用いる際に硬化促進剤を併用しても差し支えない。用いうる硬化促進剤の具体例としては例えば2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4、5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5、4、0)ウンデセン−7などの3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物などが挙げられる。硬化促進剤はエポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5.0重量部が必要に応じて用いられる。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂組成物は必要により無機充填材を含有する。用いうる無機充填材の具体例としては、シリカ、アルミナ、タルク等が挙げられる。無機充填材は本発明のエポキシ樹脂組成物中においては0〜90重量%を占める量が用いられる。更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルチミン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの離型剤、顔料などの種々の配合剤を添加することができる。
【0035】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えば、エポキシ樹脂と硬化剤、並びに必要により硬化促進剤及び無機充填材及び配合剤とを必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで十分に混合することにより本発明のエポキシ樹脂組成物を得て、そのエポキシ樹脂組成物を溶融注型法あるいはトランスファー成型法、圧縮成型法などによって成型し、更に80〜200℃で2〜10時間加熱することにより、本発明の硬化物を得ることができる。
【0036】
本発明のワニスは、本発明のエポキシ樹脂組成物を溶剤に溶解して得られる。用いられる溶剤としては、例えば、γ−ブチロラクトン類、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどのアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。得られたワニス中の固形分濃度は通常10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%である。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物からなる層を有するシートは上記ワニスをそれ自体公知のグラビアコート法、スクリーン印刷法、メタルマスク法、スピンコート法などの各種塗工方法による平面状支持体上に乾燥後の厚さが所定の厚さ、例えば、5〜100μmになるように塗布後乾燥して得られるが、どの塗工法を用いるかは基材の種類、形状、大きさ、塗膜の膜厚により適宜選択される。平面状支持体としては、例えばポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種高分子及び/またはその共重合体から作られるフィルム、或いは銅箔等の金属箔であり、ポリイミド又は金属箔が好ましい。更にこのシートを加熱することによりシート状の硬化物を得ることができる。本発明のシートの好ましい用途としてはフレキシブル印刷配線用基板、カバーレイ材料、ボンディングシートといったフレキシブル印刷配線板材料が挙げられる。
【0038】
また本発明のワニスを、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形して硬化物を得ることもできる。この際の溶剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。
【実施例】
【0039】
次に本発明を更に実施例により、更に具体的に説明する。以下において、部は特に断りのない限り重量部である。
【0040】
実施例1
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、撹拌機を備えた三口フラスコにNMP260gと2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン42.0gを入れ、窒素ガスを流し、激しく撹拌しながら、60℃まで加熱した。そこに3,3'4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物98.0gを加え、100℃で15時間反応させた。室温まで放冷後、窒素加圧下、PTFE(ポリ(テトラフルオロエチレン))メンブラン(3μm)で濾過し不純物を除去して、目的とするポリアミック酸を含み、固形分濃度35重量%の組成物を得た。この組成物の25℃での粘度は3,300mPa・sであった。
この組成物の一部を取り、メタノール中に投入し、析出物を濾別し、真空下100℃で乾燥して、ポリアミック酸を単離し、NMR、GPCを測定し、前記(式5)(X=直接結合、n=23(平均値)、数平均分子量=9,600、重量平均分子量=11,700)で表される構造を確認した。
NMR測定は、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)溶媒にて行った。なお、GPC測定は、以下の条件にて行った。
【0041】
カラム :Shodex KD-806M×2本
溶離液 :10mM LiBrを含むDMF
流速 :1mL/min
温度 :40℃
検出器 :RI(RI-101型:Shodex製)
標準物質:ポリスチレン
【0042】
NMR(δ、ppm、CDCl3)
:4.6、4.9、6.2、6.4、9.6〜9.9、13.1 br
【0043】
さらにこの組成物を三口フラスコにとり、Dean−Stark凝縮器を取り付け、トルエン50mlを加え、内温200℃まで加熱し、イミド化に伴って発生する水をトルエンと共に共沸留去した。もはや水が留出されなくなるまで加熱、撹拌、還流を続けた。放冷後、新たにNMPを加えて固形分濃度を30重量%に調整した。
この組成物の25℃での粘度は、265mPa・sであった。
この組成物の一部をとり、メタノールにあけ、析出したポリイミド(本発明のエポキシ樹脂用硬化剤)を濾取し、メタノールで洗浄後、減圧下、150℃で乾燥して、粉末状ポリイミドを単離した。
【0044】
実施例2
硬化剤として実施例1で得たエポキシ樹脂用硬化剤及びフェノールアラルキル樹脂(商品名;ザイロックXLC-3L、三井化学製)、エポキシ樹脂としてビフェニル骨格含有エポキシ樹脂(商品名;NC−3000−H、日本化薬株式会社製、エポキシ当量290g/eq、軟化点70℃)、硬化促進剤として2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2PHZ−PW、四国化成製)を、また溶剤としてシクロペンタノンを、表1に示される割合で混合し(単位;部)、本発明のワニスを得た。
【0045】
表1
エポキシ樹脂用硬化剤 20
ザイロック 9.30
エポキシ樹脂 30
2PHZ−PW 0.60
シクロペンタノン 40
【0046】
実施例3
実施例2で得たワニスをポリイミドフィルム(商品名;ユーピレックス25-SGA、宇部興産製)に、27.5μmの厚さで塗布し、130℃で10分乾燥させ、Bステージ化した。このフィルム同士をそれぞれのワニス面が内側になるように熱プレス機により、180℃でプレス圧30Kg/cmにて、30分間かけて熱圧着した。このはり合わせフィルムの接着強度は、0.975Kg/cmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)〜(4)
【化1】

(式(1)中Xは、直接結合、−O−、−CO−または−SO−を、またnは、1〜100の整数をそれぞれ表す。)
【化2】

(式(2)中mは、1〜100の整数を表す。)
【化3】

(式(3)中Xは、直接結合、−O−、−CO−または−SO−を、Rは芳香族残基を、また、a、bは、それぞれ1〜100の整数を表す。)
【化4】

(式(4)中Rは、芳香族残基を、また、c、dは、それぞれ1〜100の整数をそれぞれ表す。)
のいずれかで表される構造を有するエポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項2】
前記式(1)で表される構造を有する化合物であって、nの平均値が15〜40であるエポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項3】
エポキシ樹脂(成分A)及び、請求項1または2記載の硬化剤(成分B)を含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
成分Aが、ビフェニル骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂である請求項3記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
成分A中のエポキシ基1モルに対して、成分B中の活性水素のモル数が0.7〜1.2モルとなる割合で混合された請求項3または4記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
硬化促進剤を含有する請求項3〜5のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を溶剤に溶解してなるワニス。
【請求項8】
平面状支持体の両面または片面に請求項3〜6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物からなる層を有するシート。
【請求項9】
平面状支持体がポリイミドフィルムである請求項8記載のシート。
【請求項10】
平面状支持体が金属箔である請求項8記載のシート。
【請求項11】
平面状支持体が剥離フィルムである請求項8記載のシート。
【請求項12】
請求項7記載のワニスを基材に含浸させて加熱乾燥して得られるプリプレグ。
【請求項13】
請求項3〜6のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。

【公開番号】特開2006−16547(P2006−16547A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197267(P2004−197267)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】