説明

エポキシ樹脂硬化剤、エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物、風力発電用ブレード及び風力発電用ブレードの製造方法

【課題】低粘度で、かつポットライフが長く、さらに低コストで製造できるエポキシ樹脂硬化剤、該エポキシ樹脂硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物、該エポキシ樹脂組成物を硬化させた、機械特性に優れたエポキシ樹脂硬化物を提供すること。
【解決手段】分子内に2個以上のアミノ基を有し、且つ該アミノ基に由来する活性水素を有する非変性ポリアミノ化合物(A)と、下記一般式(2)で示されるフェネチル化ポリアミノ化合物(B)とを含有する、エポキシ樹脂硬化剤。


(式中、Wは、フェニレン基又はシクロへキシレン基である。R1、R2及びR3は、少なくとも1つは水素原子であり、水素原子ではないものはフェネチル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非変性ポリアミノ化合物と、特定構造のポリアミノ化合物とを含有するエポキシ樹脂硬化剤、該エポキシ樹脂硬化剤とエポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物、該エポキシ樹脂組成物を硬化させたエポキシ樹脂硬化物に関する。さらに、本発明は、前記エポキシ樹脂組成物に強化繊維を含有した、風力発電用ブレード用のエポキシ樹脂組成物、該エポキシ樹脂組成物を硬化してなる風力発電用ブレード、及び該風力発電用ブレードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策に伴うCO2削減の観点から、風力発電の導入が世界的に極めて活発に進められている。風力発電装置では、羽根であるブレードが風を受けて回転することによって、発電が行われる。ブレードは軽くて高強度である必要があり、ブレードの構成材料としては、一般に、ガラス繊維及びエポキシ樹脂のような、繊維強化樹脂(FRP)が用いられている。
【0003】
最近では、風力発電装置の風車のサイズが次第に大きくなっている。現在、日本で最大の風車は、定格出力が3MW、ローター直径が90mとなっており、ドイツでは定格出力が6MW、ローター直径が126mのものがある。大きな直径を有する風車が利用される洋上風車を多数設置する構想もあり、2020年頃には、定格出力10MW、ローター直径が180mという巨大な風車の登場が予想されている(非特許文献1参照)。そこで、エポキシ樹脂組成物の機械的特性のより一層の向上が必要とされている。
【0004】
ところで、船や航空機等、大型で機能性を重視した繊維強化樹脂の成型においては、従来からRTM(Resin Transfer Molding)工法等が採用されているが、大掛かりな設備投資や多額の成型費用がかかる。そのため、大型の風力発電用ブレードに関しては、インフュージョン成形やプリプレグ成形にて成形されるようになってきた。インフュージョン成形は、上型にフイルムを使用し、下型と該フイルムとの気密性を保ち、真空圧によって樹脂を充填し、かつ繊維へ含浸させるクローズドモールド成形法である。また、プリプレグ成形は、繊維に樹脂組成物を含浸させたプリプレグを型内に積層してから、プレス又は真空にて加圧しながら加熱硬化させる方法である。
大型風力発電用ブレードのインフュージョン成形やプリプレグ成形で使用するエポキシ樹脂組成物は、その成形法の特徴上、低粘度であることが要求されるため、液状で低粘度のエポキシ樹脂と液状で低粘度のエポキシ硬化剤が使用される。エポキシ硬化剤としては、イソホロンジアミン、ポリエーテル骨格のポリアミノ化合物等が使用されているが、機械的特性の向上に限界があった。他にも、比較的低粘度であることを謳ったエポキシ樹脂硬化剤も知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−67895号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】牛山泉「トコトンやさしい風力発電の本」、日本工業新聞社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載されたエポキシ樹脂硬化剤やエポキシ樹脂組成物は、従来のものに比べて低粘度ではあるものの、インフュージョン成形やプリプレグ成形に利用可能な程度に粘度が低いわけではなく、インフュージョン成形やプリプレグ成形によって風力発電用ブレードを製造することは困難であった。さらに、製造コスト面及びポットライフの点で更なる改良の余地があった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、低粘度で、かつポットライフが長く、さらに低コストで製造できるエポキシ樹脂硬化剤、該エポキシ樹脂硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物、該エポキシ樹脂組成物を硬化させた、機械特性に優れたエポキシ樹脂硬化物を提供することにある。さらに、本発明の目的は、前記エポキシ樹脂組成物に強化繊維を含有した、風力発電用ブレード用のエポキシ樹脂組成物、該エポキシ樹脂組成物を硬化してなる、機械特性に優れた風力発電用ブレード、及び該風力発電用ブレードの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、非変性ポリアミノ化合物と、特定構造のポリアミノ化合物とを含有するエポキシ樹脂硬化剤をエポキシ樹脂組成物に含有させることにより、硬化して得られたエポキシ樹脂硬化物が優れた機械的特性を示すこと、及び前記エポキシ樹脂硬化剤及びエポキシ樹脂組成物がインフュージョン成形やプリプレグ成形に利用可能な程度に粘度が低いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は下記[1]〜[11]に関する。
[1]分子内に2個以上のアミノ基を有し、且つ該アミノ基に由来する活性水素を有する非変性ポリアミノ化合物(A)と、
下記一般式(1)で示されるポリアミノ化合物(b)とスチレンとの付加反応により得られる下記一般式(2)で示されるフェネチル化ポリアミノ化合物(B)
とを含有する、エポキシ樹脂硬化剤。
【0011】
【化1】

(式中、Wは、フェニレン基又はシクロへキシレン基である。)
【化2】

(式中、Wは、フェニレン基又はシクロへキシレン基である。R1、R2及びR3は、少なくとも1つは水素原子であり、水素原子ではないものはフェネチル基である。)
【0012】
[2]非変性ポリアミノ化合物(A)とフェネチル化ポリアミノ化合物(B)の含有割合[(A):(B)]が、質量比で1:9〜9:1である、上記[1]に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
[3]前記非変性ポリアミノ化合物(A)が、脂肪族ポリアミノ化合物、芳香環を有する脂肪族ポリアミノ化合物、脂環式ポリアミノ化合物、芳香族ポリアミノ化合物、ポリエーテル骨格を有するポリアミノ化合物及びノルボルナン骨格を有するポリアミノ化合物から選択される少なくとも1種である、上記[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
[4]前記非変性ポリアミノ化合物(A)が、脂環式ポリアミノ化合物及びポリエーテル骨格を有するポリアミノ化合物の2種である、上記[3]に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
[5]上記[1]に記載のエポキシ樹脂硬化剤とエポキシ樹脂とを含有する、エポキシ樹脂組成物。
[6]さらに強化繊維を含有する、上記[5]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[7]前記強化繊維が、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維及び金属繊維から選択される少なくとも1種である、上記[6]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[8]上記[5]〜[7]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させた、エポキシ樹脂硬化物。
[9]風力発電用ブレード用である、上記[6]又は[7]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[10]上記[6]又は[7]に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる、風力発電用ブレード。
[11]上記[5]に記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維を用いて、インフュージョン成形法又はプリプレグ成形法によって成形することを特徴とする、風力発電用ブレードの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インフュージョン成形やプリプレグ成形によって風力発電用ブレードを製造することが容易な、低粘度のエポキシ樹脂硬化剤を低コストで提供することができる。該エポキシ樹脂硬化剤は、ポットライフが長く、かつほどよい温度(例えば30〜100℃程度)にてエポキシ樹脂組成物を硬化させることができるため、工業的に有用である。該エポキシ樹脂硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物の硬化物、特に、さらに強化繊維を含有するエポキシ樹脂組成物の硬化物は、機械的特性に優れており、風力発電用ブレード用途に適している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[エポキシ樹脂硬化剤]
本発明のエポキシ樹脂硬化剤は、分子内に2個以上のアミノ基を有し、且つ該アミノ基に由来する活性水素を有する非変性ポリアミノ化合物(A)と、
下記一般式(1)で示されるポリアミノ化合物(b)とスチレンとの付加反応により得られる下記一般式(2)で示されるフェネチル化ポリアミノ化合物(B)
とを含有する、エポキシ樹脂硬化剤である。
【化3】

(式中、Wは、フェニレン基又はシクロへキシレン基である。)
【化4】

(式中、Wは、フェニレン基又はシクロへキシレン基である。R1、R2及びR3は、少なくとも1つは水素原子であり、水素原子ではないものはフェネチル基である。)
【0015】
(非変性ポリアミノ化合物(A))
非変性ポリアミノ化合物(A)は、分子内に2個以上のアミノ基を有し、且つ該アミノ基に由来する活性水素を有する化合物である。ここで、非変性ポリアミノ化合物(A)の「非変性」とは、アミノ基に由来する活性水素がその他の置換基によって置換されていないものを言う。非変性ポリアミノ化合物(A)の代わりに変性ポリアミノ化合物を用いると、硬化性樹脂組成物のポットライフが短くなるほか、粘度が高くなるため、インフュージョン成形やプリプレグ成形によって風力発電用ブレードを製造することが困難となる。
非変性ポリアミノ化合物(A)の具体例としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミノ化合物;キシリレンジアミン等の芳香環を有する脂肪族ポリアミノ化合物;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノメチルピペラジン、ノルボルナン骨格を有するポリアミノ化合物等の脂環式ポリアミノ化合物;フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族ポリアミノ化合物;ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミンなどのポリエーテル骨格を有するポリアミノ化合物等が挙げられる。なお、アミノ基の窒素原子が芳香環と直接結合しているものは「芳香族」と称し、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基と直接結合しているものは、分子内に芳香族環を有していたとしても、「脂肪族」又は「脂環式」と称する。さらに、分子内に脂環式炭化水素基(環を形成する炭素原子の一部が窒素原子となっていてもよい。)を有する場合には、アミノ基の窒素原子が直接結合している対象に関わらず、主に「脂環式」と称する。
【0016】
脂肪族ポリアミノ化合物の炭素数は、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6である。芳香環を有する脂肪族ポリアミノ化合物の芳香環以外の部位の炭素数は、好ましくは1〜5であり、芳香環の数は、好ましくは1〜3、より好ましくは1である。該芳香環としては、ベンゼン環、アントラセン環などの環形成炭素数6〜12の芳香環などが挙げられる。脂環式ポリアミノ化合物の環形成炭素数は、好ましくは3〜10、より好ましくは1〜6である。芳香族ポリアミノ化合物の環形成炭素数は、好ましくは6〜12、より好ましくは6〜10である。ポリエーテル骨格を有するポリアミノ化合物のポリエーテル骨格としては、ポリオキシエチレン骨格、ポリオキシプロピレン骨格などが挙げられる。ポリエーテル骨格の繰り返し数(n)は、好ましくは1〜100、より好ましくは2〜70、さらに好ましくは2〜40、特に好ましくは2〜10である。
【0017】
これらの中でも、非変性ポリアミノ化合物(A)としては、価格や粘度、エポキシ樹脂硬化物の機械的特性等の観点から、脂環式ポリアミノ化合物及びポリエーテル骨格のポリアミノ化合物の2種を用いることが好ましく、イソホロンジアミン及びポリエーテル骨格のポリアミノ化合物の2種を用いることがより好ましく、イソホロンジアミン及びポリオキシプロピレンジアミンの2種を用いることがさらに好ましい。
ポリエーテル骨格を有するポリアミノ化合物は市販されており、HUNTSMAN社製のJEFFAMINE D−230、D−400、D−2000、D−4000、HK−511、ED−600、ED−900、ED−2003、EDR−148、EDR−176、T−403、T−3000、T−5000が挙げられる。これらの中でも、粘度及びエポキシ樹脂硬化物の機械的特性の観点から、JEFFAMINE D−230が好ましい。
【0018】
(フェネチル化ポリアミノ化合物(B))
前記一般式(1)で示されるポリアミノ化合物(b)とスチレンとの付加反応により得られる前記一般式(2)で示されるフェネチル化ポリアミノ化合物(B)には、未反応のポリアミノ化合物(b)が混入していることもあるが、混入したポリアミノ化合物(b)は、前記非変性ポリアミノ化合物(A)に相当するものである。ポリアミノ化合物(B)中の該ポリアミノ化合物(b)の混入量は、非変性ポリアミノ化合物(A)とフェネチル化ポリアミノ化合物(B)との混合比の調整を容易にする観点から、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。該ポリアミノ化合物(b)の混入量は、本発明のエポキシ樹脂硬化剤中の非変性ポリアミノ化合物(A)の含有量として考慮されるべきものである。
【0019】
−ポリアミノ化合物(b)−
前記一般式(1)において、Wは、フェニレン基又はシクロへキシレン基を示す。Wとしては、エポキシ硬化物の機械的特性の観点から、フェニレン基が好ましい。
前記ポリアミノ化合物(b)としては、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン(MXDA)、p−キシリレンジアミン、1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂硬化物の機械的特性の観点から、m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0020】
ポリアミノ化合物(b)とスチレンとの付加反応により得られる前記一般式(2)で示されるフェネチル化ポリアミノ化合物(B)は、ポリアミノ化合物(b)が有するアミノ基の活性水素の1つ〜3つがフェネチル基に置換したものに相当し、通常、それらの混合物である。フェネチル化ポリアミノ化合物(B)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ゆえに、フェネチル化ポリアミノ化合物(B)を表す一般式(2)中のR1〜R3は、少なくとも1つが水素原子であり、水素原子でないものはフェネチル基であるが、粘度及びエポキシ樹脂硬化物の機械的特性の観点から、R1〜R3が全て水素原子であるものと、R1及びR3が水素原子で、R2がフェネチル基であるものが好ましい。
【0021】
なお、ポリアミノ化合物(b)とスチレンとの付加反応は、強塩基性を呈する触媒(以下、強塩基性触媒と称する)の存在下に実施することが好ましい。強塩基性触媒としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ金属アミド、アルキル化アルカリ金属などが挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。アルカリ金属アミドとしては、MNRR':Mは、アルカリ金属、R及びR'は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である)で表されるものがあり、具体的には、リチウムアミド(LiNH2)、ナトリウムアミド(NaNH2)、カリウムアミド(KNH2)などが挙げられる。アルキル化アルカリ金属としては、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等の炭素数1〜10のアルキルリチウムなどが挙げられる。
これらの中でも、強塩基性触媒としては、アルカリ金属アミドが好ましく、リチウムアミド(LiNH2)がより好ましい。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂硬化剤は、前記非変性ポリアミノ化合物(A)と前記フェネチル化ポリアミノ化合物(B)とを含有するものである。エポキシ樹脂硬化剤において、非変性ポリアミノ化合物(A)とフェネチル化ポリアミノ化合物(B)の含有割合[(A):(B)]は、質量比で、好ましくは1:9〜9:1である。フェネチル化ポリアミノ化合物(B)の含有割合が1割以上であれば、エポキシ樹脂硬化物の機械的特性が良好となり、9割以下であれば、硬化剤としての機能が良好となる。この観点から、非変性ポリアミノ化合物(A)とフェネチル化ポリアミノ化合物(B)の含有割合[(A):(B)]は、より好ましくは2:8〜8:2、より好ましくは4:6〜8:2、さらに好ましくは5:5〜8:2、特に好ましくは6:4〜8:2である。
【0023】
(変性ポリアミノ化合物(A’))
なお、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、本発明のエポキシ樹脂硬化剤は、前記非変性ポリアミノ化合物(A)と前記フェネチル化ポリアミノ化合物(B)と共に、下記方法などによって得られる変性ポリアミノ化合物(A’)などの、その他の硬化剤を含有してもよい。
該変性ポリアミノ化合物(A’)としては、前記非変性ポリアミノ化合物(A)を以下の(1)〜(5)等の変性方法によって変性したものが挙げられる。
(1)フェノール系化合物とアルデヒド化合物とのマンニッヒ反応による変性。
(2)エポキシ化合物との反応による変性。
(3)カルボキシル基を有する化合物との反応による変性。
(4)アクリル系化合物とのマイケル付加反応による変性。
(5)上記(1)〜(4)のうちの少なくとも2種の組み合わせによる変性。
その他の硬化剤としては、エポキシ樹脂硬化剤として公知の硬化剤を用いることができる。本発明のエポキシ樹脂硬化剤が、前記非変性ポリアミノ化合物(A)と前記フェネチル化ポリアミノ化合物(B)との混合物ではないその他の硬化剤を含有する場合、本発明の効果を効率的に発現する観点から、前記非変性ポリアミノ化合物(A)と前記フェネチル化ポリアミノ化合物(B)との合計含有量が、本発明のエポキシ樹脂硬化剤全量に対して好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上となるようにする。
【0024】
[エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記本発明のエポキシ樹脂硬化剤とエポキシ樹脂とを含有するものである。該エポキシ樹脂としては、本発明のエポキシ樹脂硬化剤の活性水素と反応するグリシジル基を持つエポキシ樹脂であればいずれも使用することができるが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を単独で又は混合して用いることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、さらに、充填材、可塑剤などの改質成分、揺変剤などの流動調整成分、顔料、レベリング剤、粘着付与剤などのその他の成分を用途に応じて含有させてもよい。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、粘度を低減し、含浸性を良くするため、希釈剤を含有させてもよい。該希釈剤としては、分子内にグリシジルエーテルタイプのエポキシ基や、脂環式基含有エポキシ基を有する化合物であればよく、公知のものを使用することができる。
グリシジルエーテルタイプのエポキシ基を有する化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等の単官能エポキシ希釈剤;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多官能エポキシ希釈剤が挙げられる。
また、脂環式基含有エポキシ基を有する化合物(以下、脂環式エポキシ化合物と称する)としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキレート、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、1,2:8,9ジエポキシリモネン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等を挙げることができる。脂環式エポキシ化合物としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えばダイセル化学工業(株)製のセロキサイド2021、2081、2000、3000、サイクロマーM100等が挙げられる。
希釈剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂硬化剤の活性水素当量と、エポキシ樹脂及び希釈剤のエポキシ当量との比率が、2/3〜3/2(好ましくは1/1程度)となる量であれば特に制限はないが、通常、エポキシ樹脂及び希釈剤の合計100質量部に対して、好ましくは20〜60質量部程度である。
【0026】
(風力発電用ブレード用エポキシ樹脂組成物)
前記エポキシ樹脂組成物に、さらに強化繊維を含有させることにより、風力発電用ブレードに最適なエポキシ樹脂組成物が得られる。強化繊維としては、風力発電用ブレード用のエポキシ樹脂組成物に用いられる公知の強化繊維を用いることができ、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維及び金属繊維などが挙げられる。強化繊維は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ガラス繊維は、短繊維でも長繊維でもよい。炭素繊維は、レーヨンやポリアクリロニトリル(PAN)などを原料として製造したものであってもよいし、石油や石炭などのピッチを原料として紡糸して製造したものであってもよい。ボロン繊維は、タングステン線を芯材として、化学蒸着法により得ることができる。金属繊維の金属としては、ステンレス、鉄、金、銀、アルミニウムなどが挙げられる。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂組成物を、好ましくは30〜100℃、より好ましくは40〜80℃で加温して硬化することにより、エポキシ樹脂硬化物を得ることができる。特に、強化繊維を含有するエポキシ樹脂組成物を硬化させることによって、本発明の風力発電用ブレードを製造することができる。
硬化温度が30℃以上であれば、エポキシ樹脂の硬化が十分に進み、エポキシ樹脂硬化物の機械的特性が優れたものとなる。また、100℃以下であれば、大型の風力発電用ブレードの製作においてコスト面で有利であり、設備を設けることも容易であり、さらに、インフュージョン成形用のエポキシ製の成形型の損傷や、他材料への熱的悪影響も少ない。
【0028】
[風力発電用ブレードの製造方法]
本発明の風力発電用ブレードは、(1)強化繊維を含有するエポキシ樹脂組成物をインフュージョン成形法によって成形するか、又は、(2)エポキシ樹脂組成物と強化繊維とを用いてプリプレグ成形法によって成形することによって製造することができる。また、小型の風力発電用ブレードであれば、(3)手で塗布する方法であるオープンモールド成形法を利用して製造することも可能である。
インフュージョン成形法を利用する場合、型内に強化繊維織物を積層した後、真空圧を利用してエポキシ樹脂組成物を注入し、エポキシ樹脂組成物を強化繊維へ含浸させ、次いで真空に加圧したまま加熱することによって硬化させ、風力発電用ブレードを製造することができる。エポキシ樹脂組成物を速やかに強化繊維織物へ含浸させる観点から、エポキシ樹脂組成物の30℃における粘度は好ましくは100〜250mPa・s、より好ましくは100〜230mPa・s、さらに好ましくは100〜210mPa・sである。また、ポットライフが長ければ、強化繊維へのエポキシ樹脂組成物の含浸にかける時間を充分に確保でき、作業性が良好となる。
プリプレグ成形法を利用する場合、予めエポキシ樹脂組成物を強化繊維織物に含浸させてプリプレグを形成し、該プリプレグを型内に積層し、プレス又は真空に加圧しながら加熱硬化させることで、風力発電用ブレードを製造することができる。この場合も、エポキシ樹脂組成物を速やかに強化繊維織物へ含浸させる観点から、エポキシ樹脂組成物の30℃における粘度は好ましくは100〜250mPa・s、より好ましくは100〜230mPa・s、さらに好ましくは100〜210mPa・sである。また、ポットライフが長ければ、強化繊維へのエポキシ樹脂組成物の含浸にかける時間を充分に確保でき、作業性が良好となる。
風力発電用ブレードは、半分の羽根を2枚作製して、それらを接着することによって1枚の羽根を製造してもよいし、一度に1枚の羽根を作製してもよい。
【実施例】
【0029】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、エポキシ樹脂硬化物の各種評価及び測定は、以下の方法に従って行った。
【0030】
〈エポキシ樹脂硬化物の製造方法及び機械的特性の評価方法〉
エポキシ樹脂組成物をシリコン型に注入し、60℃にて7時間加熱することによって硬化させ、エポキシ樹脂硬化物を得た。該エポキシ樹脂硬化物の引張強度及び曲げ強度を、以下の通りにして測定した。
引張強度:ISO527−1、527−2に準拠し、23℃における引張強度を測定した。
曲げ強度:ISO178に準拠し、23℃における曲げ強度を測定した。
【0031】
〈エポキシ樹脂組成物のポットライフの測定方法〉
E型粘度計「TVE−22H型粘度計 コーンプレートタイプ」(東機産業(株)製)を用いて30℃でのエポキシ樹脂組成物の経時的な粘度変化を測定し、1,000mPa・sに到達するまでの時間(分)を測定した。値が大きいほど、ポットライフが長いことを示す。
【0032】
〈フェネチル化ポリアミノ化合物(B)、エポキシ樹脂硬化剤及びエポキシ樹脂組成物の粘度の測定方法〉
E型粘度計「TVE−22H型粘度計 コーンプレートタイプ」(東機産業(株)製)を用いて30℃におけるフェネチル化ポリアミノ化合物(B)、エポキシ樹脂硬化剤及びエポキシ樹脂組成物の粘度を測定した。
【0033】
〈フェネチル化ポリアミノ化合物(B−1)の合成〉
合成例1
撹拌装置、温度計、窒素導入管、滴下漏斗及び冷却管を備えた2Lフラスコに、m−キシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学(株)製、以下同様。)817.2g(6.0mol)及びリチウムアミド(Merk社製、試薬)2.9g(0.13mol)を仕込み、窒素気流下、撹拌しながら80℃に昇温した。80℃に保ちながら、スチレン(和光純薬(株)製、試薬特級)625.2g(6.0mol)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で1時間保った。
その後、80℃の蒸留水618.2gを添加し、15分間撹拌後5分間静置した。2層に分離したフラスコ内液の下層を別のフラスコに移し、同様の操作を7回繰り返した後、下層に溶解した蒸留水を減圧蒸留して留去し、フェネチル化ポリアミノ化合物(B−1)1117.3gを得た。フェネチル化ポリアミノ化合物(B−1)の粘度は、58mPa・s(30℃)であり、未反応MXDAの含有量は0.7質量%であった。
【0034】
〈フェネチル化ポリアミノ化合物(B−2)の合成〉
合成例2
合成例1と同様のフラスコに、MXDA817.2g(6.0mol)とリチウムアミド3.0g(0.13mol)を仕込み、窒素気流下、撹拌しながら80℃に昇温した。80℃に保ちながら、スチレン875.3g(8.4mol)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で1時間保った。
その後、80℃の蒸留水645.2gを添加し、合成例1と同様の操作を行い、フェネチル化ポリアミノ化合物(B−2)1354.2gを得た。フェネチル化ポリアミノ化合物(B−2)の粘度は、54mPa・s(30℃)であり、未反応MXDAの含有量は6.7質量%であった。
【0035】
実施例1
非変性ポリアミノ化合物(A)であるイソホロンジアミン及びポリオキシプロピレンジアミン(JEFFAMINE(登録商標)D−230、重量平均分子量230)と、合成例1で得たフェネチル化ポリアミノ化合物(B−1)を10:63:27の質量比で混合し、エポキシ樹脂硬化剤(i)を得た。該エポキシ樹脂硬化剤(i)の粘度は、13mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂硬化剤(i)と、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名:JER828、三菱化学(株)製)と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:SR−16H、阪本薬品工業(株)製)とを表1に示す質量比で配合し、エポキシ樹脂組成物(I)を調製した。エポキシ樹脂組成物(I)の粘度は、166mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂組成物(I)をシリコン型に注入し、60℃にて7時間加熱することによって硬化させ、エポキシ樹脂硬化物(I’)を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物(I)のポットライフ、及びエポキシ樹脂硬化物(I’)の機械的特性を評価した。結果を表1に示す。
【0036】
実施例2
非変性ポリアミノ化合物(A)であるイソホロンジアミン及びポリオキシプロピレンジアミン(JEFFAMINE(登録商標)D−230、重量平均分子量230)と、合成例1で得たフェネチル化ポリアミノ化合物(B−1)を10:36:54の質量比で混合し、エポキシ樹脂硬化剤(ii)を得た。該エポキシ樹脂硬化剤(ii)の粘度は、22mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂硬化剤(ii)と、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名:JER828、三菱化学(株)製)と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:SR−16H、阪本薬品工業(株)製)とを表1に示す質量比で配合し、エポキシ樹脂組成物(II)を調製した。エポキシ樹脂組成物(II)の粘度は、185mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂組成物(II)をシリコン型に注入し、60℃にて7時間加熱することによって硬化させ、エポキシ樹脂硬化物(II’)を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物(II)のポットライフ、及びエポキシ樹脂硬化物(II’)の機械的特性を評価した。結果を表1に示す。
【0037】
実施例3
実施例1において、フェネチル化ポリアミノ化合物(B−1)の代わりに、合成例2で得たフェネチル化ポリアミノ化合物(B−2)を用いたこと以外は同様にして、エポキシ樹脂硬化剤(iii)を得た。該エポキシ樹脂硬化剤(iii)の粘度は、13mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂硬化剤(iii)とビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名:JER828、三菱化学(株)製)と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:SR−16H、阪本薬品工業(株)製)とを表1に示す質量比で配合し、エポキシ樹脂組成物(III)を調製した。エポキシ樹脂組成物(III)の粘度は164mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂組成物(III)をシリコン型に注入し、60℃にて7時間加熱することによって硬化させ、エポキシ樹脂硬化物(III’)を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物(III)のポットライフ、及びエポキシ樹脂硬化物(III’)の機械的特性を評価した。結果を表1に示す。
【0038】
実施例4
実施例2において、フェネチル化ポリアミノ化合物(B−1)の代わりに、合成例2で得たフェネチル化ポリアミノ化合物(B−2)を用いたこと以外は同様にして、エポキシ樹脂硬化剤(iv)を得た。該エポキシ樹脂硬化剤(iv)の粘度は、21mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂硬化剤(iv)とビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名:JER828、三菱化学(株)製)と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:SR−16H、阪本薬品工業(株)製)とを表1に示す質量比で配合し、エポキシ樹脂組成物(IV)を調製した。エポキシ樹脂組成物(IV)の粘度は、191mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂組成物(IV)をシリコン型に注入し、60℃にて7時間加熱することによって硬化させ、エポキシ樹脂硬化物(IV’)を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物(IV)のポットライフ、及びエポキシ樹脂硬化物(IV’)の機械的特性を評価した。結果を表1に示す。
【0039】
実施例5
非変性ポリアミノ化合物(A)であるイソホロンジアミン及びポリオキシプロピレンジアミン(JEFFAMINE(登録商標)D−230、重量平均分子量230)と、合成例1で示したフェネチル化ポリアミノ化合物(B−1)を20:56:24の質量比で混合し、エポキシ樹脂硬化剤(v)を得た。該エポキシ樹脂硬化剤(v)の粘度は、13mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂硬化剤(v)とビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名:JER828、三菱化学(株)製)と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:SR−16H、阪本薬品工業(株)製)とを表2に示す質量比で配合し、エポキシ樹脂組成物(V)を調製した。エポキシ樹脂組成物(V)の粘度は、187mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂組成物(V)をシリコン型に注入し、60℃にて7時間加熱することによって硬化させ、エポキシ樹脂硬化物(V’)を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物(V)のポットライフ、及びエポキシ樹脂硬化物(V’)の機械的特性を評価した。結果を表2に示す。
【0040】
実施例6
非変性ポリアミノ化合物(A)であるイソホロンジアミン及びポリオキシプロピレンジアミン(JEFFAMINE(登録商標)D−230、重量平均分子量230)と合成例1で示したフェネチル化ポリアミノ化合物(B−1)を20:32:48の質量比で混合し、エポキシ樹脂硬化剤(vi)を得た。該エポキシ樹脂硬化剤(vi)の粘度は、20mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂硬化剤(vi)とビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名:JER828、三菱化学(株)製)と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:SR−16H、阪本薬品工業(株)製)とを表2に示す質量比で配合し、エポキシ樹脂組成物(VI)を調製した。エポキシ樹脂組成物(VI)の粘度は、205mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂組成物(VI)をシリコン型に注入し、60℃にて7時間加熱することによって硬化させ、エポキシ樹脂硬化物(VI’)を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物(VI)のポットライフ、及びエポキシ樹脂硬化物(VI’)の機械的特性を評価した。結果を表2に示す。
【0041】
実施例7
実施例5において、フェネチル化ポリアミノ化合物(B−1)の代わりに、合成例2で得たフェネチル化ポリアミノ化合物(B−2)を用いたこと以外は同様にして、エポキシ樹脂硬化剤(vii)を得た。該エポキシ樹脂硬化剤(vii)の粘度は、12mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂硬化剤(vii)とビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名:JER828、三菱化学(株)製)と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:SR−16H、阪本薬品工業(株)製)とを表2に示す質量比で配合し、エポキシ樹脂組成物(VII)を調製した。エポキシ樹脂組成物(VII)の粘度は、182mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂組成物(VII)をシリコン型に注入し、60℃にて7時間加熱することによって硬化させ、エポキシ樹脂硬化物(VII’)を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物(VII)のポットライフ、及びエポキシ樹脂硬化物(VII’)の機械的特性を評価した。結果を表2に示す。
【0042】
実施例8
実施例6において、フェネチル化ポリアミノ化合物(B−1)の代わりに、合成例2で得たフェネチル化ポリアミノ化合物(B−2)を用いたこと以外は同様にして、エポキシ樹脂硬化剤(viii)を得た。該エポキシ樹脂硬化剤(viii)の粘度は、19mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂硬化剤(viii)とビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名:JER828、三菱化学(株)製)と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:SR−16H、阪本薬品工業(株)製)とを表2に示す質量比で配合し、エポキシ樹脂組成物(VIII)を調製した。エポキシ樹脂組成物(VIII)の粘度は、208mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂組成物(VIII)をシリコン型に注入し、60℃にて7時間加熱することによって硬化させ、エポキシ樹脂硬化物(VIII’)を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物(VIII)のポットライフ、及びエポキシ樹脂硬化物(VIII’)の機械的特性を評価した。結果を表2に示す。
【0043】
比較例1(フェネチル化ポリアミノ化合物(B)を使用しない場合)
非変性ポリアミノ化合物(A)であるイソホロンジアミン及びポリオキシプロピレンジアミン(JEFFAMINE(登録商標)D−230、重量平均分子量230)を10:90の質量比で混合し、エポキシ樹脂硬化剤(ix)を得た。該エポキシ樹脂硬化剤(ix)の粘度は、8mPa・s(30℃)であった。
得られたエポキシ樹脂硬化剤(ix)とビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名:JER828、三菱化学(株)製)と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:SR−16H、阪本薬品工業(株)製)とを表1に示す質量比で配合し、エポキシ樹脂組成物(IX)を調製した。エポキシ樹脂組成物(IX)の粘度は、148mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂組成物(IX)をシリコン型に注入し、60℃にて7時間加熱することによって硬化させ、エポキシ樹脂硬化物(IX’)を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物(IX)のポットライフ、及びエポキシ樹脂硬化物(IX’)の機械的特性を評価した。結果を表1に示す。
【0044】
比較例2(非変性ポリアミノ化合物(A)を使用しない場合)
合成例1で得たフェネチル化ポリアミノ化合物(B−1)とビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名:JER828、三菱化学(株)製)と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:SR−16H、阪本薬品工業(株)製)とを表1及び表2に示す質量比で配合し、エポキシ樹脂組成物(X)を調製した。エポキシ樹脂組成物(X)の粘度は、255mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂組成物(X)をシリコン型に注入し、60℃にて7時間加熱することによって硬化させ、エポキシ樹脂硬化物(X’)を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物(X)のポットライフ、及びエポキシ樹脂硬化物(X’)の機械的特性を評価した。結果を表1及び2に示す。
【0045】
比較例3(非変性ポリアミノ化合物(A)を使用しない場合)
合成例2で得たフェネチル化ポリアミノ化合物(B−2)とビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名:JER828、三菱化学(株)製)と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:SR−16H、阪本薬品工業(株)製)とを表1及び表2に示す質量比で配合し、エポキシ樹脂組成物(XI)を調製した。エポキシ樹脂組成物(XI)の粘度は、239mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂組成物(XI)をシリコン型に注入し、60℃にて7時間加熱することによって硬化させ、エポキシ樹脂硬化物(XI’)を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物(XI)のポットライフ、及びエポキシ樹脂硬化物(XI’)の機械的特性を評価した。結果を表1及び2に示す。
【0046】
比較例4(フェネチル化ポリアミノ化合物(B)を使用しない場合)
非変性ポリアミノ化合物(A)であるイソホロンジアミン及びポリオキシプロピレンジアミン(JEFFAMINE(登録商標)D−230、重量平均分子量230)を20:80の質量比で混合し、エポキシ樹脂硬化剤(xii)を得た。該エポキシ樹脂硬化剤(xii)の粘度は、8mPa・s(30℃)であった。
得られたエポキシ樹脂硬化剤(xii)とビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名:JER828、三菱化学(株)製)と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:SR−16H、阪本薬品工業(株)製)とを表2に示す質量比で配合し、エポキシ樹脂組成物(XII)を調製した。エポキシ樹脂組成物(XII)の粘度は、158mPa・s(30℃)であった。
エポキシ樹脂組成物(XII)をシリコン型に注入し、60℃にて7時間加熱することによって硬化させ、エポキシ樹脂硬化物(XII’)を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物(XII)のポットライフ、及びエポキシ樹脂硬化物(XII’)の機械的特性を評価した。結果を表2に示す。
【0047】
比較合成例1(変性ポリアミノ化合物の合成)
攪拌装置、温度計、窒素導入管、滴下漏斗、冷却管を備えた2Lフラスコに、MXDA612.9g(4.5mol)とフェノール(和光純薬工業(株)製)423.5g(4.5mol)を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら80℃に昇温した。80℃に保ちながら、ホルマリン(三菱ガス化学(株)製、8%メタノール含有37%水溶液)243.3g(3.0mol)を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃に昇温し、1.5時間反応を行った。その後、生成した水を留去しながら2時間かけて150℃まで昇温し、同温度で1時間反応を行い、マンニッヒ反応による変性ポリアミノ化合物(A'−1)1068.2gを得た。変性ポリアミノ化合物(A'−1)の粘度は1,600mPa・s(30℃)であり、未反応MXDAの含有量は30質量%であった。
【0048】
比較合成例2(変性ポリアミノ化合物の合成)
攪拌装置、温度計、窒素導入管、滴下漏斗、冷却管を備えた2Lフラスコに、MXDA817.2g(6.0mol)を仕込み、窒素気流下に攪拌しながら80℃に昇温した。80℃に保ちながら、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名:エピコート828、エポキシ当量190g/eq、ジャパンエポキシレジン(株)製)456.0gを2時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃に昇温して2時間反応を行い、変性ポリアミノ化合物(A'−2)1264.8gを得た。変性ポリアミノ化合物(A'−2)の粘度は6,000mPa・s(30℃)であり、未反応MXDAの含有量は48.4質量%であった。
【0049】
比較例5(非変性ポリアミノ化合物(A)の代わりに変性ポリアミノ化合物を使用した場合)
比較合成例1で得た変性ポリアミノ化合物(A'−1)と、合成例1で得たフェネチル化ポリアミノ化合物(B−1)を、50:50の質量比で混合し、エポキシ樹脂硬化剤(xiii)を得た。該エポキシ樹脂硬化剤(xiii)の粘度は、260mPa・s(30℃)であり、高かった。
得られたエポキシ樹脂硬化剤(xiii)とビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名:JER828、三菱化学(株)製)と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:SR−16H、阪本薬品工業(株)製)とを48:80:20の質量比で配合し、エポキシ樹脂組成物(XIII)を調製した。エポキシ樹脂組成物(XIII)の粘度は、580mPa・s(30℃)であり、高かった。
得られたエポキシ樹脂組成物(XIII)のポットライフ、及びエポキシ樹脂硬化物(XIII’)の機械的特性を評価した。結果を表1及び2に示す。エポキシ樹脂組成物(XIII)のポットライフは20分であり、本発明のエポキシ樹脂組成物に比べ、ポットライフが短かった。また、機械的特性については、エポキシ樹脂組成物がゲル化してしまい、うまく硬化物が得られず、測定不能であった。
【0050】
比較例6(非変性ポリアミノ化合物(A)の代わりに変性ポリアミノ化合物を使用した場合)
比較合成例2で得た変性ポリアミノ化合物(A'−2)と、合成例1で得たフェネチル化ポリアミノ化合物(B−1)を、50:50の質量比で混合し、エポキシ樹脂硬化剤(xiv)を得た。該エポキシ樹脂硬化剤(xiv)の粘度は、560mPa・s(30℃)であり、高かった。
得られたエポキシ樹脂硬化剤(xiii)とビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名:JER828、三菱化学(株)製)と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:SR−16H、阪本薬品工業(株)製)とを45:80:20の質量比で配合し、エポキシ樹脂組成物(XIV)を調製した。エポキシ樹脂組成物(XIV)の粘度は、720mPa・s(30℃)であり、高かった。
得られたエポキシ樹脂組成物(XIV)のポットライフ、及びエポキシ樹脂硬化物(XIV’)の機械的特性を評価した。結果を表1及び2に示す。エポキシ樹脂組成物(XIV)のポットライフは30分であり、本発明のエポキシ樹脂組成物に比べ、ポットライフが短かった。また、機械的特性については、エポキシ樹脂組成物がゲル化してしまい、うまく硬化物が得られず、測定不能であった。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
[表1及び2中の注釈の説明]
*1:イソホロンジアミン及びポリオキシプロピレンジアミン(JEFFAMINE(登録商標)D−230、重量平均分子量230)を10:90の質量比で混合したエポキシ樹脂硬化剤(ix)
*2:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名:JER828、三菱化学(株)製)
*3:1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:SR−16H、阪本薬品工業(株)製)
*4:活性水素当量/エポキシ当量=1/1となるように配合した。
*5:非変性ポリアミノ化合物(A)であるイソホロンジアミン及びポリオキシプロピレンジアミン(JEFFAMINE(登録商標)D−230、重量平均分子量230)を20:80の質量比で混合したエポキシ樹脂硬化剤(xii)
*6:ゲル化してしまい、硬化物を作製できず、測定不能であった。
【0054】
表1及び2より、本発明のエポキシ樹脂硬化剤及びエポキシ樹脂組成物は、30℃における粘度が低く、かつポットライフが長いため、インフュージョン成形やプリプレグ成形によって風力発電用ブレードを製造することが可能であることがわかる。また、本発明のエポキシ樹脂硬化物は、比較例のいずれのエポキシ樹脂硬化物よりも機械的特性が改善されており、風力発電用ブレード用途として工業的に注目され得る材料である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のエポキシ樹脂硬化剤は、常温(30℃程度)で低粘度の液状であり、ほどよい温度(30〜100℃程度)でエポキシ樹脂組成物を硬化させることが可能であり、また、硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物の機械的特性に優れる。そのため、本発明のエポキシ樹脂硬化剤硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物は、風力発電用ブレード(特に洋上風力発電用の大型ブレード)や、船、航空機向けの大型部品用のインフュージョン成形用材料として有用である。その他、各種FRP(Fiber Reinforced Plastics)成型品、各種コーティング材料、接着剤、装飾材料等に使用される熱硬化性樹脂組成物の硬化剤、塗料用樹脂原料等に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に2個以上のアミノ基を有し、且つ該アミノ基に由来する活性水素を有する非変性ポリアミノ化合物(A)と、
下記一般式(1)で示されるポリアミノ化合物(b)とスチレンとの付加反応により得られる下記一般式(2)で示されるフェネチル化ポリアミノ化合物(B)
とを含有する、エポキシ樹脂硬化剤。
【化1】

(式中、Wは、フェニレン基又はシクロへキシレン基である。)
【化2】

(式中、Wは、フェニレン基又はシクロへキシレン基である。R1、R2及びR3は、少なくとも1つは水素原子であり、水素原子ではないものはフェネチル基である。)
【請求項2】
非変性ポリアミノ化合物(A)とフェネチル化ポリアミノ化合物(B)の含有割合[(A):(B)]が、質量比で1:9〜9:1である、請求項1に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
【請求項3】
前記非変性ポリアミノ化合物(A)が、脂肪族ポリアミノ化合物、芳香環を有する脂肪族ポリアミノ化合物、脂環式ポリアミノ化合物、芳香族ポリアミノ化合物、ポリエーテル骨格を有するポリアミノ化合物及びノルボルナン骨格を有するポリアミノ化合物から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
【請求項4】
前記非変性ポリアミノ化合物(A)が、脂環式ポリアミノ化合物及びポリエーテル骨格を有するポリアミノ化合物の2種である、請求項3に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
【請求項5】
請求項1に記載のエポキシ樹脂硬化剤とエポキシ樹脂とを含有する、エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
さらに強化繊維を含有する、請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記強化繊維が、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維及び金属繊維から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させた、エポキシ樹脂硬化物。
【請求項9】
風力発電用ブレード用である、請求項6又は7に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
請求項6又は7に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる、風力発電用ブレード。
【請求項11】
請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維を用いて、インフュージョン成形法又はプリプレグ成形法によって成形することを特徴とする、風力発電用ブレードの製造方法。

【公開番号】特開2012−219115(P2012−219115A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83163(P2011−83163)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】