説明

エポキシ樹脂硬化剤及びエポキシ樹脂組成物

【課題】塗膜外観、耐水性、接着性、低温硬化性などの諸物性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂硬化剤を提供する。
【解決手段】
下記ポリアミン化合物(A)と(B)とを含有するエポキシ樹脂硬化剤であって、(A)100重量部に対して(B)を5〜50重量部配合してなるエポキシ樹脂硬化剤。
(A) 1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、フェノール及び/又は炭素数1〜12のアルキル基を有するフェノール、並びにホルムアルデヒドの重縮合物であって、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとフェノール及び/又は炭素数1〜12のアルキル基を有するフェノールの反応比(=[フェノール及び/又は炭素数1〜12のアルキル基を有するフェノールの物質量]/[1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの物質量])が0.9〜1.5の範囲であり、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとホルムアルデヒドの反応比(=[ホルムアルデヒドの物質量]/[1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの物質量])が0.5〜1.2の範囲であるポリアミン化合物
(B) 式 (R)N-HC-A-CH-NHR で示されるポリアミン化合物
(Aはフェニレン基であり、Rは水素原子又はフェネチル基である。複数のRは同一でも異なっていてもよく、Rの少なくとも一つはフェネチル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗膜外観、耐水性、接着性、低温硬化性に優れるエポキシ樹脂硬化剤、該エポキシ樹脂硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物、該エポキシ樹脂組成物を硬化させてなるエポキシ樹脂硬化物に関するものである。詳しくは特定のポリアミン化合物を特定の割合で混合してなるエポキシ樹脂硬化剤であり、船舶塗料、重防食塗料、構造用接着剤、土木・建築用接着剤などに好適に使用できる。
【背景技術】
【0002】
各種ポリアミン化合物がエポキシ樹脂硬化剤及びその原料として広く用いられていることは良く知られている。特に、脂肪族ポリアミン化合物は常温硬化用のエポキシ樹脂硬化剤として広く用いられており、脂肪族ポリアミンを利用した常温硬化用エポキシ樹脂組成物は、船舶・橋梁・陸海上鉄構築物用防食塗料等の塗料分野、コンクリート構造物のライニング・補強・補修、建築物の床材、上下水道設備のライニング、舗装材、接着剤等の土木・建築分野に広く利用されている。
【0003】
脂肪族ポリアミンの中で、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは他の脂肪族ポリアミンに比べて低温硬化性に優れ、耐薬品性、耐候性に優れた硬化物を与える等の特徴を有している。
【0004】
一方で、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは、大気中の二酸化炭素を吸収してカルバミン酸塩を生成、さらに吸湿することにより重炭酸塩を生成する。この重炭酸塩に由来する塗膜のべたつき、塗膜外観が低下するという問題を有している。また、硬化エポキシ樹脂塗膜上に水滴が付着するとその部分が白化する問題を有している。
【0005】
塗膜のべたつき、水滴が付着した場合の塗膜の白化を防止するため、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンやその変性物を含むポリアミン化合物と炭素数が16〜18のアルキルアミン化合物を配合してなるエポキシ樹脂硬化剤(特許文献1参照。)が提案されている。この方法により塗膜のべたつき、水滴が付着した場合の白化は防止できるが、該エポキシ樹脂硬化剤は保存中にアルキルアミンの結晶が析出する、硬化剤が固化するという問題があった。
【0006】
保存安定性を改善する方法として1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び/又はその変性物を含むポリアミン化合物、炭素数12のアルキル基を有する成分を含有するか若しくはヨウ素価が50以上である脂肪アミン化合物及び硬化促進剤とからなるエポキシ樹脂硬化剤(特許文献2参照。)が提案されている。この方法により保存安定性は改善されるが、低温条件においては硬化速度が不十分、高湿条件においては塗膜の光沢が失われるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−3282号公報
【特許文献2】特開2001−163955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は上記課題を解決し、塗膜外観、耐水性、接着性、低温硬化性などの諸物性に優れたエポキシ樹脂硬化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、フェノール及び/又は炭素数1〜12のアルキル基を有するフェノール(以下、フェノール系化合物と称することがある)、並びにホルムアルデヒドの重縮合物と下記(1)式で示されるポリアミン化合物とを含有するエポキシ樹脂硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物が優れた塗膜外観、耐水性、接着性、低温硬化性を与えることを見出した。
(R)N−HC−A−CH−NHR (1)
(式(1)中、Aはフェニレン基であり、Rは水素原子又はフェネチル基である。複数のRは同一でも異なっていてもよく、Rの少なくとも一つはフェネチル基である。)
【0010】
すなわち本発明は1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、フェノール系化合物、及びホルムアルデヒドの重縮合物であって、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとフェノール系化合物の反応比(=[フェノール系化合物の物質量]/[1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの物質量])が0.9〜1.5の範囲であり、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとホルムアルデヒドの反応比(=[ホルムアルデヒドの物質量]/[1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの物質量])が0.5〜1.2の範囲であるポリアミン化合物(A)と(1)式で示されるポリアミン化合物(B)とを含有するエポキシ樹脂硬化剤であって、ポリアミン化合物(A)100重量部に対してポリアミン化合物(B)を5〜50重量部配合してなるエポキシ樹脂硬化剤に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエポキシ樹脂硬化剤は塗膜外観、耐水性、接着性、低温硬化性などの諸物性に優れ、船舶塗料、重防食塗料、構造用接着剤、土木・建築用接着剤などに好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のエポキシ樹脂硬化剤は1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、フェノール系化合物、及びホルムアルデヒドの重縮合物であるポリアミン化合物(A)と(1)式で示されるポリアミン化合物(B)とを含有する。
【0013】
ポリアミン化合物(A)に使用するフェノール系化合物はフェノール及び/又は炭素数1〜12のアルキル基を有するフェノールである。炭素数1〜12のアルキル基を有するフェノールとしては特に限定されず、例えばクレゾール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、n−プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、あるいはこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。中でもフェノール及び/又はクレゾールが好ましく、フェノール及び/又はクレゾールを使用することにより得られるエポキシ樹脂硬化剤を低粘度にすることができる。
【0014】
1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとフェノール系化合物の反応比(=[フェノール系化合物の物質量]/[1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの物質量])は0.9〜1.5の範囲であることが好ましく、さらには0.95〜1.3が好ましく、1.0〜1.2が特に好ましい。該反応比が0.9未満であると得られるエポキシ樹脂組成物の耐水性、低温硬化性が不十分であり、反応比が1.5を超えると得られるエポキシ樹脂硬化剤が著しく増粘するため好ましくない。
【0015】
1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとホルムアルデヒドの反応比(=[ホルムアルデヒドの物質量]/[1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの物質量])は0.5〜1.2の範囲であることが好ましく、さらには0.6〜1.0が好ましく、0.65〜0.9が特に好ましい。該反応比が0.5未満であると得られるエポキシ樹脂組成物の耐水性、低温硬化性が不十分であり、反応比が1.2を超えると得られるエポキシ樹脂硬化剤が著しく増粘するため好ましくない。
【0016】
1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、フェノール系化合物、及びホルムアルデヒドを重縮合させる方法としては従来公知の方法が使用できる。例えば、反応装置に1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとフェノール系化合物を仕込み、ホルムアルデヒドを滴下し、加熱、重縮合する方法が挙げられる。この場合の反応温度、反応時間は特に限定されないが、1例として1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとフェノール系化合物を80℃まで昇温した後、液温を80〜85℃に保持してホルムアルデヒド水溶液の滴下を行い、滴下終了後還流温度まで昇温し、還流を1時間保持した後に150℃まで昇温して150℃で1時間脱水、縮合を行う方法がある。
【0017】
ポリアミン化合物(B)は(3)式で示されるポリアミン化合物とスチレンの反応によって得られる。(3)式で示されるポリアミン化合物としてはメタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、あるいはこれらの混合物が例示できる。中でもメタキシリレンジアミンが好適に使用される。
N−CH−A−CH−NH (3)
(式(3)中、Aはフェニレン基である。)
【0018】
ポリアミン化合物(B)中に(2)式で示されるポリアミン化合物が80重量%以上含まれることが好ましく、さらには90重量%以上含まれることが好ましい。(2)式で示されるポリアミン化合物が80重量%未満であると、得られるエポキシ樹脂硬化剤の耐水性、低温硬化性が不十分となるため好ましくない。
RHN−HC−A−CH−NHR (2)
(式(2)中、Aはフェニレン基であり、Rは水素原子又はフェネチル基である。複数のRは同一でも異なっていてもよく、Rの少なくとも1つはフェネチル基である。)
【0019】
本発明のエポキシ樹脂硬化剤はポリアミン化合物(A)と(B)とを含有するものであるが、ポリアミン化合物(A)に配合するポリアミン化合物(B)の配合量は、ポリアミン化合物(A)100重量部に対して5〜50重量部の範囲であることが好ましく、さらには10〜40重量部が好ましく、15〜30重量部が特に好ましい。5重量部未満であると塗膜外観の改善効果が不十分であり、50重量部を超えると低温硬化性が不十分となるため好ましくない。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂硬化剤は、単独で使用しても良いし、他のポリアミン化合物と混合して使用しても良い。混合する他のポリアミン化合物としては、脂肪族ポリアミン化合物、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン等;芳香環をもった脂肪族ポリアミン化合物、例えばキシリレンジアミン等;脂環族ポリアミン化合物、例えばメンセンジアミン、N−アミノメチルピペラジン等;芳香族ポリアミン化合物、例えばフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等;その他ポリエーテル骨格のポリアミノ化合物、ノルボルナン骨格のポリアミン化合物等が挙げられる。これらポリアミン化合物は変性せずに混合しても良いし、カルボキシル基を有する化合物との反応によるアミド変性、エポキシ化合物との付加反応によるアダクト変性、ホルムアルデヒドとフェノール類との反応によるマンニッヒ変性などの変性を行った後に混合しても良い。この場合の混合比は、本発明のエポキシ樹脂硬化剤の特徴が損なわれない範囲であれば特に限定されるものではない。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を含むものである。本発明のエポキシ樹脂組成物に使用されるエポキシ樹脂は、本発明のエポキシ樹脂硬化剤に含まれるアミノ基由来の活性水素と反応するグリシジル基を有するエポキシ樹脂であれば、特に限定されず、例えば、レソルシノール、ヒドロキノン等の単核二価フェノール化合物のジグリシジルエーテル化合物;4,4’−イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)、4,4’−メチレンジフェノール(ビスフェノールF)等の多核二価フェノール化合物のジグリシジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール等のジオール類のジグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族、芳香族又は脂環族二塩基酸のジグリシジルエステル化合物等が挙げられる。中でも4,4’−イソプロピリデンジフェノールジグリシジルエーテル(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)及び4,4’−メチレンジフェノールジグリシジルエーテル(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、ならびにこれらの混合物を主成分とするものが好適に用いられる。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂組成物には用途に応じて充填材、可塑剤などの改質成分、反応性又は非反応性の希釈剤、揺変性付与材などの流動調整成分、顔料、粘着付与剤などの成分やハジキ防止剤、流展剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化促進剤などの添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で用いることができる。
【0023】
上記希釈剤としては特に限定されず、非反応性希釈剤としては例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルなどの可塑剤系;キシレン樹脂、トルエン樹脂などの液状樹脂;ベンジルアルコール、ブチルジグリコールなどのアルコール類などが挙げられる。反応性希釈剤としては例えばブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、メタクレジルグリシジルエーテル、パラクレジルグリシジルエーテル、オルソクレジルグリシジルエーテル、ネオデカン酸グリシジルエステルなどの単官能型グリシジル化合物;1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルなどの多官能型グリシジル化合物などが挙げられる。これら非反応性及び反応性希釈剤は本発明の効果を損なわない範囲で用いることができる。
【0024】
上記硬化促進剤としては特に限定されず、例えば、トリメチルアミン、エチルジメチルアミン、プロピルジメチルアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、1,8−ジアザビスシクロ(5.4.0)ウンデセン−1(DBU)、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−10)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)等の第三アミン類;フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、シクロペンタジエンクレゾール等のフェノール類等が挙げられる。これらの硬化促進剤は本発明の効果を損なわない範囲で用いることができる。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の配合比は、エポキシ樹脂のエポキシ基数に対するエポキシ樹脂硬化剤の活性水素数の比が0.7〜1.2の範囲となることが好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ基数に対するエポキシ樹脂硬化剤の活性水素数の比が0.7未満であると、硬化物の架橋度が不十分であり、また1.2を超えると親水性のアミノ基が過多となり、耐水性が損なわれる。
【0026】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、公知の方法で硬化させ、硬化塗膜等のエポキシ樹脂硬化物とすることができる。硬化条件は用途に応じて本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。但し本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、(1)式で示される化合物の含有率の測定、(2)式で示される化合物の含有率の測定及びエポキシ樹脂硬化塗膜性能の評価は以下の方法にて行った。
【0028】
<(1)式及び(2)式で示される化合物の含有率の測定>
ガスクロマトグラフィーGC−14A(株式会社島津製作所製)により下記の条件で測定した。
カラム:フロンティアラボ株式会社製UltraAlloy−1
(長さ15m、Film厚1.5μm、内径0.5mm)
キャリアーガス:ヘリウム 流速:5.3ml/min
内部標準物質:α,α’−Bis(4−aminophenyl)−1,4−diisopropylbenzene
溶媒:メタノール
試料注入量:0.5μl
温度条件;INJ,DET:300℃ COL:250℃/10min→20℃/min昇温→300℃/18.7min
【0029】
<エポキシ樹脂硬化塗膜性能評価>
エポキシ樹脂組成物を5℃80%RHの条件下で、#240サンドペーパ処理を行い、キシレン脱脂した冷間圧延鋼板(SPCC−SB)(JIS G 3141)に200μmの厚さで塗装した。
外観:塗装7日後の塗膜外観(光沢、透明性、平滑性)を目視で評価した。
乾燥性:塗装16時間後、1、4、7日後の塗膜を指触により4段階(◎:優秀 ○:良好 △:やや不良 ×:不良)で評価した。
耐水性:塗装16時間後、1、4、7日後の塗膜上に水滴を滴下し、1日放置後の塗膜の変化を目視により4段階(◎:優秀 ○:良好 △:やや不良 ×:不良)で評価した。
硬化速度:エポキシ樹脂組成物をガラス板(25×350×2mm)に76μmのアプリケータを使用して塗布し、RCI硬化速度試験機により5℃80%RHの条件下で測定した。
【0030】
<合成例1>
攪拌装置、温度計、窒素導入管、滴下漏斗及び冷却管を備えた内容積0.5リットルのセパラブルフラスコに1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学株式会社製)227.6g、フェノール(関東化学株式会社製)150.6gを仕込み、窒素気流下、攪拌しながら80℃に昇温した。80℃を保ちながらホルムアルデヒド37%水溶液86.6g(関東化学株式会社製)を1時間かけて滴下した。滴下終了後98℃まで昇温して1時間保持した後、150℃まで昇温して脱水を行い、ポリアミン化合物A391.7gを得た。反応比(=1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの物質量/フェノールの物質量/ホルムアルデヒドの物質量)は1.0/1.0/0.67であった。
【0031】
<合成例2>
合成例1と同様のフラスコに1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学株式会社製)184.9g、p−tert−ブチルフェノール(関東化学株式会社製)195.3gを仕込み、窒素気流下、攪拌しながら80℃に昇温した。80℃を保ちながらホルムアルデヒド37%水溶液70.4g(関東化学株式会社製)を1時間かけて滴下した。滴下終了後98℃まで昇温して1時間保持した後、150℃まで昇温して脱水を行い、ポリアミン化合物B391.4gを得た。反応比(=1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの物質量/p−tert−ブチルフェノールの物質量/ホルムアルデヒドの物質量)は1.0/1.0/0.67であった。
【0032】
<合成例3>
合成例1と同様のフラスコに1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学株式会社製)227.6g、フェノール(関東化学株式会社製)120.5gを仕込み、窒素気流下、攪拌しながら80℃に昇温した。80℃を保ちながらホルムアルデヒド37%水溶液77.9g(関東化学株式会社製)を1時間かけて滴下した。滴下終了後98℃まで昇温して1時間保持した後、150℃まで昇温して脱水を行い、ポリアミン化合物C423.8gを得た。反応比(=1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの物質量/フェノールの物質量/ホルムアルデヒドの物質量)は1.0/0.8/0.6であった。
【0033】
<合成例4>
合成例1と同様のフラスコにメタキシリレンジアミン(三菱ガス化学株式会社製)217.9g、フェノール(関東化学株式会社製)150.6gを仕込み、窒素気流下、攪拌しながら80℃に昇温した。80℃を保ちながらホルムアルデヒド37%水溶液86.6g(関東化学株式会社製)を1時間かけて滴下した。滴下終了後98℃まで昇温して1時間保持した後、150℃まで昇温して脱水を行い、ポリアミン化合物D379.3gを得た。反応比(=メタキシリレンジアミンの物質量/フェノールの物質量/ホルムアルデヒドの物質量)は1.0/1.0/0.67であった。
【0034】
<実施例1>
145mlガラス製マヨネーズ瓶に、合成例1で得られたポリアミン化合物Aを80.0g、G−240(三菱ガス化学株式会社製、アミン活性水素当量(以下、AHEW):103g/eq、(2)式で示されるポリアミンの含有量は90.5%)を20.0g秤量し、40℃で2分攪拌し、エポキシ樹脂硬化剤A100gを得た。エポキシ樹脂硬化剤Aを用いてビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:JER807、エポキシ当量:169g/eq)と表1に示す割合で配合し、5℃、80%RHの条件下で硬化させてエポキシ樹脂硬化塗膜を作製して性能評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0035】
<実施例2>
145mlガラス製マヨネーズ瓶に、合成例2で得られたポリアミン化合物Bを80.0g、G−240(三菱ガス化学株式会社製、AHEW:103g/eq、(2)式で示されるポリアミンの含有量は90.5%)を20.0g秤量し、40℃で2分攪拌し、エポキシ樹脂硬化剤B100gを得た。エポキシ樹脂硬化剤Bを用いてビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:JER807、エポキシ当量:169g/eq)と表1に示す割合で配合し、5℃、80%RHの条件下で硬化させてエポキシ樹脂硬化塗膜を作製して性能評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0036】
<比較例1>
ポリアミン化合物Aをエポキシ樹脂硬化剤Cとして使用し、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:JER807、エポキシ当量:169g/eq)と表1に示す割合で配合し、5℃、80%RHの条件下で硬化させてエポキシ樹脂硬化塗膜を作製して性能評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0037】
<比較例2>
145mlガラス製マヨネーズ瓶に、合成例1で得られたポリアミン化合物Aを80.0g、ベンジルアルコール(関東化学株式会社製)を20.0g秤量し、40℃で2分攪拌し、エポキシ樹脂硬化剤D100gを得た。エポキシ樹脂硬化剤Dを用いてビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:JER807、エポキシ当量:169g/eq)と表1に示す割合で配合し、5℃、80%RHの条件下で硬化させてエポキシ樹脂硬化塗膜を作製して性能評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0038】
<比較例3>
145mlガラス製マヨネーズ瓶に、合成例3で得られたポリアミン化合物Cを80.0g、G−240(三菱ガス化学株式会社製、AHEW:103g/eq、(2)式で示されるポリアミンの含有量は90.5%)を20.0g秤量し、40℃で2分攪拌し、エポキシ樹脂硬化剤E100gを得た。エポキシ樹脂硬化剤Eを用いてビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:JER807、エポキシ当量:169g/eq)と表1に示す割合で配合し、5℃、80%RHの条件下で硬化させてエポキシ樹脂硬化塗膜を作製して性能評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0039】
<比較例4>
145mlガラス製マヨネーズ瓶に、合成例4で得られたポリアミン化合物Dを80.0g、G−240(三菱ガス化学株式会社製、AHEW:103g/eq、(2)式で示されるポリアミンの含有量は90.5%)を20.0g秤量し、40℃で2分攪拌し、エポキシ樹脂硬化剤F100gを得た。エポキシ樹脂硬化剤Fを用いてビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:JER807、エポキシ当量:169g/eq)と表1に示す割合で配合し、5℃、80%RHの条件下で硬化させてエポキシ樹脂硬化塗膜を作製して性能評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ポリアミン化合物(A)と(B)とを含有するエポキシ樹脂硬化剤であって、(A)100重量部に対して(B)を5〜50重量部配合してなるエポキシ樹脂硬化剤。
(A)1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、フェノール及び/又は炭素数1〜12のアルキル基を有するフェノール、並びにホルムアルデヒドの重縮合物であって、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとフェノール及び/又は炭素数1〜12のアルキル基を有するフェノールの反応比(=[フェノール及び/又は炭素数1〜12のアルキル基を有するフェノールの物質量]/[1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの物質量])が0.9〜1.5の範囲であり、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとホルムアルデヒドの反応比(=[ホルムアルデヒドの物質量]/[1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの物質量])が0.5〜1.2の範囲であるポリアミン化合物。
(B)(1)式で示されるポリアミン化合物
(R)N−HC−A−CH−NHR (1)
(式(1)中、Aはフェニレン基であり、Rは水素原子又はフェネチル基である。複数のRは同一でも異なっていてもよく、Rの少なくとも一つはフェネチル基である。)
【請求項2】
前記ポリアミン化合物(A)が1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、フェノール及び/又はクレゾール、並びにホルムアルデヒドの重縮合物である請求項1記載のエポキシ樹脂硬化剤。
【請求項3】
前記ポリアミン化合物(B)中に(2)式で示されるポリアミン化合物を80重量%以上含む請求項1又は2記載のエポキシ樹脂硬化剤。
RHN−HC−A−CH−NHR (2)
(式(2)中、Aはフェニレン基であり、Rは水素原子又はフェネチル基である。複数のRは同一でも異なっていてもよく、Rの少なくとも1つはフェネチル基である。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなるエポキシ樹脂硬化物。
【請求項6】
請求項4記載のエポキシ樹脂組成物よりなる塗料。
【請求項7】
船舶塗料、又は重防食塗料である請求項6記載の塗料。
【請求項8】
請求項4記載のエポキシ樹脂組成物よりなる接着剤。
【請求項9】
構造用接着剤、又は土木・建築用接着剤である請求項8記載の接着剤。

【公開番号】特開2011−6499(P2011−6499A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148212(P2009−148212)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】