説明

エポキシ樹脂粒子の製造方法及びエポキシ樹脂粒子

【課題】反応可能なエポキシ基を表面又はその近傍に有し、目的に応じたエポキシ基残存率を有するエポキシ樹脂粒子の製造方法及び該製造方法により得られたエポキシ樹脂粒子を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール系樹脂硬化剤及び(C)硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを含む樹脂組成物を、分散剤の存在下水中に分散させて懸濁状態とした後、該懸濁状態の樹脂組成物を加熱硬化させるエポキシ樹脂粒子の製造方法であって、前記樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂のエポキシ基当量(a)に対する(B)フェノール系樹脂硬化剤のフェノール性水酸基当量(b)の割合[(b)/(a)]が0.05〜0.95であることを特徴とするエポキシ樹脂粒子の製造方法及び該製造方法により得られたエポキシ樹脂粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂粒子の製造方法及びエポキシ樹脂粒子に関する。詳しくは、反応性樹脂フィラー、触媒用支持担体、分離剤、イオン交換樹脂のベースポリマー等として好適な、エポキシ基の残存率が高い樹脂粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ基を含有する樹脂粒子は、合成樹脂改質剤、イオン交換樹脂ベースポリマーの製造等に広く使用されている。例えば、特許文献1には、グリシジル(メタ)アクリレートとジビニルベンゼンとを特公昭37−13792号公報記載の方法で共重合させることにより、樹脂粒子を得ることが記載されている。また、特許文献2には、エポキシ樹脂と有機ポリマーと硬化剤とを含む相溶体の油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成し、そこへ水性液体を加えて水中油滴型(O/W)エマルジョンへ転相して乳化する工程を含むエポキシ樹脂粒子の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭52−3989号公報
【特許文献2】特開平1−95134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法により得られるグリシジル(メタ)アクリレートとモノエチレン系不飽和単量体の共重合体では、水溶性修飾基、例えばN−メチル−D−グルカミン等を導入するとベースポリマーの膨潤もしくは溶解により粒子としての取り扱いが困難であった。さらに、使用する重合開始剤種により、グリシジル(メタ)アクリレートのグリシジル基自己開環が起こり、実質的にグリシジル基が残らない等の問題があった。
また、特許文献2の油中水滴型(W/O)エマルジョンから水中油滴型(O/W)エマルジョンへ転相する工程を含むエポキシ樹脂粒子の製造方法では、共存する硬化剤によるエポキシ基開環の問題があり、エポキシ基を残す樹脂粒子の製造には不適切であった。
【0005】
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたもので、反応可能なエポキシ基を表面又はその近傍に有し、さらに目的に応じたエポキシ基残存率を有するエポキシ樹脂粒子を製造する方法及び該製造方法により得られたエポキシ樹脂粒子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、エポキシ基の硬化促進作用がなく、エポキシ樹脂の硬化剤にのみ硬化促進作用があるトリフェニルホスフィンを促進剤として用い、エポキシ樹脂硬化剤であるフェノール樹脂を所定の含有量として、加熱硬化反応後の暗反応を抑えることにより上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール系樹脂硬化剤及び(C)硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを含む樹脂組成物を、分散剤の存在下水中に分散させて懸濁状態とした後、該懸濁状態の樹脂組成物を加熱硬化させるエポキシ樹脂粒子の製造方法であって、前記樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂のエポキシ基当量(a)に対する(B)フェノール系樹脂硬化剤のフェノール性水酸基当量(b)の割合[(b)/(a)]が0.05〜0.95であることを特徴とするエポキシ樹脂粒子の製造方法及び該製造方法により得られたエポキシ樹脂粒子である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反応可能なエポキシ基を表面又はその近傍に有し、さらに目的に応じたエポキシ基残存率を有するエポキシ樹脂粒子を製造することができ、該エポキシ樹脂粒子を用いることにより、エポキシ基残存型の反応性樹脂フィラー、触媒用支持担体、分離剤、イオン交換樹脂のベースポリマー等の製造を容易にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[樹脂組成物]
本発明のエポキシ樹脂粒子の製造方法に用いる樹脂組成物について説明する。該樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール系樹脂硬化剤及び(C)硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを必須成分とするものであり、(A)成分が固体エポキシ樹脂である場合、(A)成分を溶解する(D)有機溶剤を含有することができる。
【0010】
((A)エポキシ樹脂)
本発明に用いる(A)エポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般をいう。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上混合して用いることができる。エポキシ樹脂の軟化点、融点、エポキシ当量に関しては特に制限しない。
【0011】
((B)フェノール系樹脂硬化剤)
本発明に用いる(B)フェノール系樹脂硬化剤としては、1分子中に上記(A)エポキシ樹脂と反応し得るフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般をいう。例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボッラク樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上混合して用いることができる。これらの(B)成分は、軟化点、融点、水酸基当量に関しては特に制限されるものではなく、その要求される特性に準じて選ぶことができる。
また、(B)成分の含有量は、上記(A)成分のエポキシ基当量(a)に対する(B)成分のフェノール性水酸基当量(b)の割合[(b)/(a)]が、0.05〜0.95の範囲となる量である。上記当量比が0.05未満もしくは0.95を超えると、成形作業性が悪く粒子とすることが困難となったりエポキシ基残存率が目的に達しなかったり等し、いずれの場合も好ましくない。
【0012】
((C)硬化促進剤)
本発明において(C)硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィンを用いる。トリフェニルホスフィンであれば、エポキシ基の硬化促進作用がなく、エポキシ樹脂の硬化剤にのみ硬化促進作用があるため、目的に応じたエポキシ基残存率を有するエポキシ樹脂粒子とすることができる。また、トリフェニルホスフィンの他に、トリ(アルキルフェニル)ホスフィンを用いることもでき、例えばトリ−p−トリルホスフィン(北興化学工業社製、商品名:TPTP)等が挙げられる。
この(C)成分の含有量は、エポキシ樹脂組成物に対して0.01〜5質量%であることが好ましい。含有量が0.01質量%以上であれば十分硬化することができ、また5質量%以下であれば、適度な硬化速度を有している。
【0013】
((D)有機溶剤)
(A)成分が固体エポキシ樹脂である場合、該固体エポキシ樹脂を溶解するために(D)有機溶剤を用いることができる。
(D)成分としては、上記固体エポキシ樹脂を溶解できるものであれば特に限定せずに用いることができる。例えばアセトン及びメチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶剤、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族系溶剤等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上混合して用いることができる。特に好適なのは、水への溶解度が低い芳香族系溶剤である。
(D)成分は、樹脂組成物中において10〜70質量%程度となる範囲の量で使用することが好ましい。10質量%以上であれば、溶液として取り扱いが可能となり、水系へ分散が可能となる。また、70質量%以下であれば、合成中に会合がおきにくく反応の進行を妨げない。
【0014】
また、ポーラスな構造を有する樹脂粒子を製造する場合は、常温では(A)成分を溶解しないが、加熱時にエポキシ樹脂を溶解するような溶剤、例えばイソプロピルアルコールが使用できる。この場合の(D)成分の使用量は樹脂組成物中において10〜70質量%程度であることが好ましい。10質量%以上であれば、硬化物の空孔率が低くならず、樹脂粒子表面のエポキシ基数が少なくなりすぎない。また、70質量%以下であれば硬化物の強度が実用上十分に耐えることができる。
【0015】
[エポキシ樹脂粒子の製造方法]
本発明のエポキシ樹脂粒子の製造方法は、公知の水系の懸濁硬化反応を採用することができる。まず、反応槽に水と分散剤をとり、撹拌して水中に分散剤を分散又は溶解させ、前述の(A)〜(C)成分及び必要に応じて(D)成分を含む樹脂組成物を加え分散させて、懸濁状態とする。このとき、加える樹脂組成物が室温付近で相溶していない場合、加熱することによって相溶させることができるが、加熱温度は水の沸点以下であることが好ましい。また、反応槽中の系はpH6〜8であることが好ましい。
次に、系内を反応温度に昇温し、懸濁状態の樹脂組成物を熱硬化させる。反応終了後、必要により各種蒸留操作を行って有機溶剤を取り除いて反応物を取り出し、ろ過によりエポキシ樹脂粒子を単離し、スラリー状等にして洗浄し、分散剤を除去した後、乾燥することによりエポキシ樹脂粒子が得られる。
【0016】
上記製法方法において用いられる分散剤としては、難水溶性金属化合物として、例えば硫酸バリウム及び硫酸カルシウム等の硫酸塩、炭酸バリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩、リン酸カルシウム等のリン酸塩、酸化アルミニウム及び酸化チタン等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及び水酸化第二鉄等の金属水酸化物等を挙げることができる。また、有機系分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ゼラチン、アラビアゴム、高級脂肪酸の金属塩等を挙げることができる。これら分散剤は単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
分散剤の使用量としては、(A)成分100質量部に対し、0.05〜10質量部程度の範囲で用いることが好ましい。
また、樹脂組成物が水溶性である場合や、系の比重を変更したい場合には、水酸化ナトリウム等の塩類も添加することができる。
【0017】
[エポキシ樹脂粒子]
本発明の製造方法により、エポキシ基が5〜95当量%程度、好ましくは15〜85当量%残存したエポキシ樹脂粒子が得られる。なお、エポキシ基残存率は、後述の方法により求めた値である。
本発明はまた、平均粒子径が10μm以上2mm以下であることを特徴とする、前述した製造方法により得られたエポキシ樹脂粒子をも提供する。
本発明の製造方法により得られるエポキシ樹脂粒子の平均粒子径は用途により適宜決定すればよいが、通常10μm以上2mm以下であることが応用製品の使用の観点から好ましい。また、反応性樹脂フィラーとして使用する場合、平均粒子径は20μm以上100μm以下であることが好ましく、イオン交換樹脂のベースポリマーとして使用する場合、平均粒子径は300μm以上1.5mm以下であることが好ましい。
なお、平均粒子径はレーザ回析/散乱式粒子径分布測定装置(Partica LA−920、堀場製作所製)で測定することができる。
【実施例】
【0018】
実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例及び比較例において、エポキシ基残存率は次のようにして求めた。
100mlナスフラスコに試料0.5gを計量し、そこに0.2規定の塩酸水溶液を25.00g、ピリジンを10.00g及びイソプロピルアルコール25.00gを加えた。フラスコ内が溶液である場合は30分、不溶物を含む場合は4時間還流し、0.2規定の水酸化ナトリウム水溶液でpH10.5を当量点として滴定した。
同様に、空試験を行ない、エポキシ当量を下記の式(1)より算出した。
【0019】
【数1】

【0020】
上記方法により算出した反応前後のエポキシ当量から、下記の式(2)よりエポキシ基残存率(当量%)を求めた。
(式2)
エポキシ基残存率=(反応前のエポキシ基当量/反応前のエポキシ基当量)×100
【0021】
[実施例1]
(A)成分としてオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂100質量部(日本化薬社製、商品名:EOCN103S、エポキシ基当量210g/eq)、(B)成分硬化剤としてフェノール樹脂10質量部(昭和高分子社製、商品名:BRG558、水酸基当量106g/eq)、〔水酸基当量/エポキシ基当量=0.2〕、(C)成分硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン5質量部(和光純薬工業社製)、及び(D)成分有機溶剤としてトルエン115質量部(和光純薬工業社製)を混合し、60℃で加熱溶解して樹脂組成物を含む樹脂溶液を調製した。
調製した樹脂溶液を、分散剤としてポリビニルアルコールの存在下、水媒体へ懸濁し90℃にて8時間硬化反応を行った。エポキシ樹脂の懸濁液を水蒸気蒸留してトルエンを除去後ろ過し、水洗浄を繰り返して分散剤を除去し洗浄終了後、40℃にて乾燥しエポキシ樹脂粒子(平均粒子径523μm)を得た。
得られたエポキシ樹脂粒子のエポキシ基当量を、前記の方法により測定したところ275g/eqであった。また、該エポキシ樹脂粒子のエポキシ基残存率は約76当量%であり、これは理論値80当量%に近い値であることから、エポキシ樹脂の暗反応が抑えられたことがわかる。
【0022】
[実施例2]
(A)成分としてオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂100質量部(日本化薬社製、商品名:EOCN103S、エポキシ基当量210g/eq)、(B)成分硬化剤としてフェノール樹脂44.6質量部(昭和高分子社製、商品名:BRG558、水酸基当量106g/eq)、〔水酸基当量/エポキシ基当量=0.9〕、(C)成分硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン5質量部(和光純薬工業社製)、及び(D)成分有機溶剤としてトルエン115質量部(和光純薬工業社製)を混合し、60℃で加熱溶解して樹脂組成物を含む樹脂溶液を調製した。
調製した樹脂溶液を、分散剤としてポリビニルアルコールの存在下、水媒体へ懸濁し90℃にて8時間硬化反応を行った。エポキシ樹脂の懸濁液を水蒸気蒸留してトルエンを除去後ろ過し、水洗浄を繰り返して分散剤を除去し洗浄終了後、40℃にて乾燥しエポキシ樹脂粒子(平均粒子径1.2mm)を得た。
得られたエポキシ樹脂粒子のエポキシ基当量を、前記の方法により測定したところ2,285g/eqであった。また、該エポキシ樹脂粒子のエポキシ基残存率は約9当量%であり、これは理論値10当量%に近い値であることから、エポキシ樹脂の暗反応が抑えられたことがわかる。
【0023】
[実施例3]
(A)成分として脂環式エポキシ樹脂100質量部(ダイセル化学工業社製、商品名:セロキサイド2021P、エポキシ基当量126g/eq)、(B)成分硬化剤としてフェノール樹脂25質量部(昭和高分子社製、商品名:BRG558、水酸基当量106g/eq)、〔水酸基当量/エポキシ基当量=0.3〕、(C)成分硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン5質量部(和光純薬工業社製)、及び(D)成分有機溶剤としてトルエン115質量部(和光純薬工業社製)を混合し、60℃で加熱溶解して樹脂組成物を含む樹脂溶液を調製した。
調製した樹脂溶液を、分散剤としてポリエチレンオキサイドの存在下、水媒体へ懸濁し90℃にて5時間硬化反応を行った。エポキシ樹脂の懸濁液を水蒸気蒸留してトルエンを除去後ろ過し、水洗浄を繰り返して分散剤を除去し洗浄終了後、40℃にて乾燥しエポキシ樹脂粒子(平均粒子径97μm)を得た。
得られたエポキシ樹脂粒子のエポキシ基当量を、前記の方法により測定したところ271g/eqであった。また、該エポキシ樹脂粒子のエポキシ基残存率は約46.5当量%であり、これは理論値50当量%に近い値であることから、エポキシ樹脂の暗反応が抑えられたことがわかる。
【0024】
[実施例4]
(A)成分としてオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂100質量部(日本化薬社製、商品名:EOCN103S、エポキシ基当量210g/eq)、(B)成分硬化剤としてフェノール樹脂25質量部(昭和高分子社製、商品名:BRG558、水酸基当量106g/eq)、〔水酸基当量/エポキシ基当量=0.5〕、(C)成分硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン5質量部(和光純薬工業社製)、及び(D)成分有機溶剤としてトルエン115質量部(和光純薬工業社製)を混合し、60℃で加熱溶解して樹脂組成物を含む樹脂溶液を調製した。
調製した樹脂溶液を、分散剤としてポリビニルアルコールの存在下、水媒体へ懸濁し90℃にて8時間硬化反応を行った。エポキシ樹脂の懸濁液を水蒸気蒸留してトルエンを除去後ろ過し、水洗浄を繰り返して分散剤を除去し洗浄終了後、40℃にて乾燥しエポキシ樹脂粒子(平均粒子径650μm)を得た。
得られたエポキシ樹脂粒子のエポキシ基当量を、前記の方法により測定したところ538g/eqであった。また、該エポキシ樹脂粒子のエポキシ基残存率は約39当量%であり、これは理論値50当量%をやや下回ったものの、エポキシ樹脂の暗反応が大部分抑えられたことがわかる。
【0025】
[比較例1]
(A)成分としてオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂100質量部(日本化薬社製、商品名:EOCN103S、エポキシ基当量210g/eq)、(B)成分硬化剤としてフェノール樹脂10質量部(昭和高分子社製、商品名:BRG558、水酸基当量106g/eq)、〔水酸基当量/エポキシ基当量=0.2〕、(C)成分硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール1質量部(四国化成社製、商品名:2E4MZ)、及び(D)成分有機溶剤としてトルエン115質量部(和光純薬工業社製)を混合し、60℃で加熱溶解して樹脂組成物を含む樹脂溶液を調製した。
調製した樹脂溶液を、分散剤としてポリビニルアルコールの存在下、水媒体へ懸濁し90℃にて8時間硬化反応を行った。エポキシ樹脂の懸濁液を水蒸気蒸留してトルエンを除去後ろ過し、水洗浄を繰り返して分散剤を除去し洗浄終了後、40℃にて乾燥しエポキシ樹脂粒子を得た。
得られたエポキシ樹脂粒子のエポキシ基当量を、前記の方法により測定したところ711g/eqであった。また、該エポキシ樹脂粒子のエポキシ基残存率は約30当量%であり、これは理論値80当量%を大きく下回り、エポキシ樹脂の暗反応を止めることが出来なかった。
【0026】
[比較例2]
(A)成分としてオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂100質量部(日本化薬社製、商品名:EOCN103S、エポキシ基当量210g/eq)、(B)成分硬化剤としてフェノール樹脂1質量部(昭和高分子社製、商品名:BRG558、水酸基当量106g/eq)、〔水酸基当量/エポキシ基当量=0.02〕、(C)成分硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン5質量部(和光純薬工業社製)、及び(D)成分有機溶剤としてトルエン115質量部(和光純薬工業社製)を混合し、60℃で加熱溶解して樹脂組成物を含む樹脂溶液を調製した。
調製した樹脂溶液を、分散剤としてポリエチレンオキサイドの存在下、水媒体へ懸濁し90℃にて8時間硬化反応を行った。エポキシ樹脂の懸濁液を水蒸気蒸留してトルエンを除去後ろ過したが、水洗浄を繰り返しているうちに粒子の崩壊が起こってしまい、実質粒子として取り扱いができなかた。
【0027】
[比較例3]
(A)成分としてオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂100質量部(日本化薬社製、商品名:EOCN103S、エポキシ基当量210g/eq)、(B)成分硬化剤としてフェノール樹脂50質量部(昭和高分子社製、商品名:BRG558、水酸基当量106g/eq)、〔水酸基当量/エポキシ基当量=1〕、(C)成分硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン10質量部(和光純薬工業社製)、及び(D)成分有機溶剤としてトルエン150質量部(和光純薬工業社製)を混合し、60℃で加熱溶解して樹脂組成物を含む樹脂溶液を調製した。
調製した樹脂溶液を、分散剤としてポリビニルアルコールの存在下、水媒体へ懸濁し90℃にて8時間硬化反応を行った。エポキシ樹脂の懸濁液を水蒸気蒸留してトルエンを除去後ろ過し、水洗浄を繰り返して分散剤を除去し洗浄終了後、40℃にて熱風乾燥機にて乾燥を行った。
乾燥終了後のエポキシ樹脂粒子のエポキシ基当量を、前記の方法により測定したところ22,490g/eqであった。また、該エポキシ樹脂粒子のエポキシ基残存率は約1当量%であり、これは理論値0当量%に近い値であるが、残存エポキシ基を使用する目的にはそぐわない。
【0028】
上記実施例及び比較例から以下のことがかわる。
実施例ではいずれも反応前のエポキシ基当量に近いエポキシ基残存量を示した。これに対し、硬化促進剤として汎用されている2−エチル−4−メチルイミダゾールを用いた比較例1では、エポキシ基残存量は大きく下回り、エポキシ樹脂の暗反応を止めることが出来なかった。また、比較例2,3ではいずれも硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを用いているものの、フェノール系樹脂硬化剤の使用量が適正範囲外であるため、粒子として取り扱いが出来なかったり、エポキシ基残存量が使用される目的にはそぐわなかったりと、今後課題が残る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、高残存率でエポキシ基を有するエポキシ樹脂粒子を提供することができる。したがって、本発明で得られるエポキシ樹脂粒子を用いることにより、エポキシ基残存型の反応性樹脂フィラー、触媒用支持担体、分離剤、イオン交換樹脂のベースポリマー等の製造を容易にすることができ、本発明は産業上非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール系樹脂硬化剤及び(C)硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを含む樹脂組成物を、分散剤の存在下水中に分散させて懸濁状態としたとした後、該懸濁状態の樹脂組成物を加熱硬化させるエポキシ樹脂粒子の製造方法であって、前記樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂のエポキシ基当量(a)に対する(B)フェノール系樹脂硬化剤のフェノール性水酸基当量(b)の割合[(b)/(a)]が0.05〜0.95であることを特徴とするエポキシ樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記(A)成分が固体エポキシ樹脂であり、かつ(D)有機溶剤を含む樹脂組成物を用いる請求項1に記載のエポキシ樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
加熱硬化後のエポキシ樹脂粒子中に、エポキシ基が5〜95当量%残存してなる請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
平均粒子径が10μm以上2mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂粒子の製造方法により得られたエポキシ樹脂粒子。

【公開番号】特開2011−111554(P2011−111554A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270267(P2009−270267)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】