説明

エポキシ樹脂組成物、その製造方法、並びに、それを用いた半導体装置

【課題】エポキシ樹脂とシリコーン樹脂の特長である良好な耐熱性、光透過性などの特性を維持しつつ、薄膜硬化性、耐ガス透過性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)〜(D)成分を含有するエポキシ樹脂組成物。(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物、又は式(1)で示されるシリコ−ン変性エポキシ化合物100質量部


(Rは、炭素数1〜20の1価炭化水素基、Rは、N,N’−ジグリシジルトリアジン基、Xは、末端にRを持つ、珪素数1〜61の(ポリ)シロキサン。a、bは0〜30の整数であり、cは0〜10の整数であり、1≦a+b+c≦70である。)(B)硬化剤10〜100質量部(C)1分子中に2個以上のヒドロキシ基又はアルコキシ基を有する、シラン又はシロキサン0.01〜50質量部(D)硬化触媒0.05〜3質量部

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、その製造方法、並びに、それを用いた半導体装置に関し、詳しくは、半導体素子を封止するために好適に用いられる、耐熱性、耐ガス透過性、光透過性、薄膜硬化性などに優れたエポキシ樹脂組成物、その製造方法、並びに、それを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光半導体素子を封止するために用いられる光半導体素子封止材料としては、透明エポキシ樹脂組成物が広く用いられている。この透明エポキシ樹脂組成物は、通常、脂環式エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化触媒を成分として含有しており、キャスティング、トランスファ−成形などの成形方法にて、光半導体素子が配置された金型に上記透明封止材料を流し込み、硬化させることにより、光半導体素子を封止している(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、最近では、青色LEDや白色LEDなどのLED(発光ダイオード:Light Emitting Diode)素子が、ますます高輝度化、高出力化するのに伴い、従来の透明エポキシ樹脂組成物でLED素子を封止すると、それから発せられる波長の短い青色光や紫外線により、上記透明エポキシ樹脂組成物が経時で変色(黄変化)してしまう問題が起きている。また、吸水率が高く、耐湿・耐久性が悪いといった問題も指摘されていた。
【0004】
そのため、光半導体素子の被覆保護用樹脂組成物として、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物、ヒドロシリル化触媒などを必須成分とするシリコ−ン系樹脂組成物(特許文献3参照)、また、JIS硬度をJISA値で50以上とするシリコ−ン樹脂組成物(特許文献4)などのシリコ−ン系樹脂組成物も提案されている。
【0005】
しかしながら、このようなシリコ−ン系樹脂組成物の硬化物は、耐クラック性を改良しようとすると、一般に該硬化物表面にタックが残り、埃が容易に付着するため、光の透過性を損なうという欠点がある。
そこで、この種の問題を解決するため、高硬度シリコ−ン樹脂を光半導体素子の保護被覆用に使用することが提案されている(特許文献5、特許文献6参照)。
【0006】
しかしながら、これらの高硬度シリコ−ン樹脂は、例えば、セラミック及び/又はプラスチックの筐体内に発光素子が配置され、その筐体内部をシリコ−ン樹脂で充填したケ−ス型の発光半導体装置に対し、−40〜120℃の温度範囲で熱衝撃試験を実施した場合、該シリコ−ン樹脂の強靱性、接着性の不足により、セラミック及び/又はプラスチックの筐体から該シリコ−ン樹脂が剥離したり、クラックが入るといった問題が生じていた。
【0007】
これらの欠点を補う可能性をもつ光半導体素子封止用樹脂組成物として、エポキシ樹脂とシリコ−ン樹脂からなるエポキシ−シリコ−ン組成物が提案されている(特許文献7参照)。
しかしながら、この組成物においても接着力不足や光劣化による変色の問題が生じていた。
【0008】
さらに、上記以外の光半導体素子封止用樹脂組成物として、樹脂の強度を向上させ、耐紫外線特性を向上させる目的で、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を持ったシロキサン化合物とシルセスキオキサン化合物をカチオン硬化触媒で硬化させる樹脂組成物が提案されている(特許文献8参照)。
しかしながら、使用しているカチオン硬化触媒より発生するオニウムイオンなどが腐食並びに着色の原因になるといった問題が生じていた。
【0009】
一方、シルセスキオキサン化合物と水素添加エポキシ樹脂を併用し、Bステ−ジ化させてなるエポキシ樹脂組成物が提案されている(特許文献9参照)。
しかしながら、この種の水素添加エポキシ樹脂を使用したものは、耐紫外線特性に劣るという問題が生じていた。
【0010】
さらに、イソシアヌル酸誘導体基含有オルガノポリシロキサン、エポキシ樹脂、フェノ−ル樹脂などを含有するエポキシ樹脂組成物が提案されている(特許文献10参照)。
しかしながら、このイソシアヌル酸誘導体基含有オルガノポリシロキサンは、半導体素子を封止するフェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂への添加剤として、低応力化及び耐熱性を向上させ、難燃性を付与するために用いたものであって、半導体素子の透明封止用樹脂として用いたものではなく、また、そのシリコ−ン主鎖骨格に関しても直鎖のものに限定されたものであった。
【0011】
一方、上記のイソシアヌル酸誘導体基含有オルガノポリシロキサンのように、エポキシ樹脂をシリコ−ン変性にした封止用樹脂を用いた場合、シリコ−ン成分の増加に伴い、熱に対する信頼性の向上が見られる反面、硬化速度の低下により、硬化剤である酸無水物の揮発が進み、その結果、エポキシ基/酸のバランスが崩れるという問題が指摘されていた。特に薄膜LEDのような薄膜光半導体を封止する場合は、樹脂の硬化前に酸無水物系硬化剤が揮発してしまうため、上記封止用樹脂は、薄膜硬化性の点で劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3241338号公報
【特許文献1】特開平7−25987号公報
【特許文献2】特開2002−327126号公報
【特許文献3】特開2002−338833号公報
【特許文献4】特開2002−314139号公報
【特許文献5】特開2002−314143号公報
【特許文献7】特開昭52−107049号公報
【特許文献8】特開2004−238589号公報
【特許文献9】特開2005−263869号公報
【特許文献10】特開2004−99751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂の特長である良好な耐熱性、光透過性などの特性を維持しつつ、薄膜硬化性、耐ガス透過性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、1分子中に2個以上のヒドロキシ基又はアルコキシ基を有する、シラン又はシロキサンを必須成分とすることにより、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂の特長である良好な耐熱性、光透過性などの特性を維持しつつ、薄膜硬化性、耐ガス透過性を向上させることを見出し、かかる知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0015】
かくして、本発明は、下記の(A)〜(D)成分を含有するエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物、又は下記式(1)で示されるシリコ−ン変性エポキシ化合物 100質量部
【化4】

(式中、Rは、同一又は異なった炭素数1〜20の置換又は非置換の1価炭化水素基、Xは、下記式(2)で示される基、Rは、下記式(3)で示される基である。a、bは0〜30の整数であり、cは0〜10の整数であり、1≦a+b+c≦70である。)
【化5】

(式中、R、Rは前記に同じ。d、eは0〜30の整数であり、0≦d+e≦60である。)
【化6】

(B)硬化剤 10〜100質量部
(C)1分子中に2個以上のヒドロキシ基又はアルコキシ基を有する、シラン又はシロキサン 0.01〜50質量部
(D)硬化触媒 0.05〜3質量部
【0016】
また、本発明は、前記エポキシ樹脂組成物を用いてなる半導体装置である。
【0017】
また、本発明は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を100℃以下の低温で反応させた後、(D)成分を混合して、硬化させるエポキシ樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂の特長である良好な耐熱性、光透過性などの特性を維持しつつ、薄膜硬化性、耐ガス透過性に優れたエポキシ樹脂組成物、及び信頼性に優れた半導体装置を提供することができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化特性、成形性能の点で問題のあった酸無水物系の硬化剤を含む従来のエポキシ樹脂組成物とは異なり、良好な硬化特性、成形性能を有する。したがって、光半導体素子などの電子部品の封止、被覆に好適に用いることができ、なかでも、薄膜LEDのような薄膜光半導体素子に対して好適である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳述する。本発明のエポキシ樹脂組成物は、前述したように、(A)〜(D)成分を必須とするエポキシ樹脂組成物である。
(A)成分は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物、又は下記式(1)で示されるシリコ−ン変性エポキシ化合物である。
1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物としては、既存のエポキシ樹脂を用いることができる。このエポキシ樹脂としては、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂、ビスフェノ−ルF型エポキシ樹脂、フェノ−ルノボラック型エポキシ樹脂、クレゾ−ルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノ−ルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などの芳香族系エポキシ樹脂;前記各種エポキシ樹脂の芳香環を水素添加した水添型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂などの脂環式エポキシ樹脂(3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、1,2−エポキシー4−ビニルシクロヘキサンなど);トリグリシジルイソシアヌレ−ト環を含有する非芳香族系エポキシ樹脂などを挙げることができるが、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基があれば上記樹脂に限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独もしくは2種以上用いても何ら差し支えない。なかでも、LEDなどの発光半導体装置を封止するような場合は、光による劣化を防止する観点から、水添型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレ−ト環を含有する非芳香族系エポキシ樹脂が好適に使用される。
【0020】
(A)成分のシリコ−ン変性エポキシ化合物は、下記式(1)で示される。
【0021】
【化7】

(式中、Rは、同一又は異なった炭素数1〜20の置換又は非置換の1価炭化水素基、Xは、式(2)で示される基、Rは、同一又は異なった式(3)で示される基である。a、bは0〜30の整数であり、cは0〜10の整数であり、1≦a+b+c≦70である。)
【0022】
【化8】

(式中、R、Rは前記に同じ。d、eは0〜30の整数であり、0≦d+e≦60である。)
【0023】
【化9】

【0024】
上述したように、Rは、同一又は異なった炭素数1〜20の置換又は非置換の1価炭化水素基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシ基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、ノルボニル基などのシクロアルキル基;フェニル基などのアリ−ル基などであり、さらに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部を、ハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基など、他の基で置換した基、例えば、3,3,3−トリフロロプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−アミノプロピル基なども例示される。Rとしては、特にメチル基、フェニル基が好ましい。また、Rのうち90mol%以上がメチル基であることが好ましい。
【0025】
a、bは0〜30の整数であり、好ましくは0〜20の整数、より好ましくは0〜10の整数である。また、cは0〜10の整数であり、好ましくは0〜5の整数である。また、a+b+cは、1〜70の整数である。また、d、eは0〜30の整数であり、好ましくは0〜20の整数、より好ましくは0〜10の整数である。a、b、d、eが、30を超えるとエポキシ基の比率が低下し、エポキシ基の効果が得られにくいので好ましくない。
【0026】
上記式(1)で示される新規シリコ−ン変性エポキシ化合物は、次のようにして製造することができる。
すなわち、式(1)で示されるシリコ−ン変性エポキシ化合物は、下記式(4)で示される、両末端にヒドロシリル基を有するシロキサン1molに対して、1−アリル−3,5−ジグリシジルイソシアヌレ−トを1.5〜2.5molの範囲、望ましくは2.0〜2.1molの範囲で添加し、白金触媒などのヒドロシリル化触媒の存在下、80〜150℃に加熱して反応させることで容易に製造することができる。なお、このシリコ−ン変性エポキシ化合物は、本発明の樹脂組成物の主剤として使えるほか、各種添加剤、カップリング剤、接着付与剤として有効である。
【0027】
【化10】

(式中、R、Rは前記に同じ。Xは、式(5)で示される基である。a、bは0〜30の整数であり、cは0〜10の整数であり、1≦a+b+c≦70である。)
【0028】
【化11】

(式中、R、Rは前記に同じ。d、eは0〜30の整数であり、0≦d+e≦60である。)
【0029】
1−アリル−3,5−ジグリシジルイソシアヌレ−トの量が1.5mol未満では、未反応のヒドロシリル基が多量に残存し、これを用いたエポキシ樹脂組成物の硬化時に発泡の原因となる。他方、2.5molを超えると、未反応の1−アリル−3,5−ジグリシジルイソシアヌレ−トが系内に残存することから、コスト面だけでなく、特性面からも問題となる。
【0030】
上記シリコ−ン変性エポキシ化合物を製造する際に用いるヒドロシリル化触媒としては、特に限定されるものではなく、白金単体、担体に白金を担持させたもの、塩化白金酸のアルコール溶液、白金―オレフィン錯体などが挙げられるが、具体的には、塩化白金酸2%オクチルアルコ−ル溶液が代表的なものである。その際に使用する白金量としては5〜50ppm程度を反応に使用すればよい。反応時間としては80〜100℃で1〜8時間反応させることにより高収率で所定とするシリコ−ン変性エポキシ化合物を合成することができる。本反応には芳香族系、ケトン系などの溶剤を使用して反応させてもよい。
【0031】
上記式(4)で示される、両末端にヒドロシリル基を有するシロキサンとしては、下記の2化合物を代表例として示すことができる。
【0032】
【化12】

【0033】
【化13】

【0034】
上記式(4)で示される、両末端にヒドロシリル基を有するシロキサンは、単独で、あるいは2〜3種混合して使用してもよい。
【0035】
特に、強靱で柔軟な硬化物を得るためには、[化12]に示すような直鎖状のシロキサンを使用した方がよい。一方、硬くて剛直な硬化物を得るには[化13]に示すような分岐状のシロキサンが望ましい。
【0036】
(A)成分において、式(1)で示されるシリコ−ン変性エポキシ化合物としては、具体的に下記の化合物が例示される。
【0037】
【化14】

(但し、a、c、dは、前記に同じ。)
【0038】
本発明においては、エポキシ基との反応により架橋物を形成するために、(B)成分として、硬化剤を使用する。この硬化剤としては、一般的に使用されるアミン系硬化剤、フェノ−ル系硬化剤、酸無水物系硬化剤のいずれであってもよいが、樹脂組成物に光透過性、耐熱性などを付与する観点から、酸無水物系硬化剤が望ましい。
【0039】
酸無水物系硬化剤としては、無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、あるいは4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、テトラヒドロ無水フタル酸、メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などを挙げることができる。特に、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(リカシッドMH:新日本理化社製、商品名)が、耐変色性の点で好ましい。
【0040】
アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミンなどの脂肪族ポリアミン;メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族アミンが例示される。
【0041】
フェノ−ル系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂;パラキシリレン変性ノボラック樹脂、メタキシリレン変性ノボラック樹脂、オルソキシリレン変性ノボラック樹脂などのキシリレン変性ノボラック樹脂;ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂などのビスフェノール型フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;レゾール型フェノール樹脂;フェノールアラルキル型樹脂;ビフェニルアラルキル型樹脂;トリフェノールメタン型樹脂、トリフェノールプロパン型樹脂などのトリフェノールアルカン型樹脂及びその重合体などのフェノール樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂が例示される。
【0042】
(B)硬化剤の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して、10〜100質量部、より好ましくは、50〜100質量部である。100質量部を超えると、耐湿性等の特性を低下させるおそれがあり、10質量部未満の場合は、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化速度が遅くなる。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(C)成分として、1分子中に2個以上のヒドロキシ基又はアルコキシ基を有する、シラン又はシロキサンを配合させていることにより、特に酸無水物系硬化剤のように揮発しやすい硬化剤を用いた場合であっても、それが揮発する前に樹脂組成物を硬化させることができるようになるため、エポキシ樹脂組成物の硬化性を大幅に向上させることができる。
上記シランには、モノシランに限らず、ケイ素数が2以上のシランも含まれ、そのケイ素数は、通常、1又は2、好ましくは、1である。また、上記シロキサンは、シロキサン結合(Si−O−Si結合)を1個又は2個以上含むものであり、通常、そのシロキサン結合の数は、通常、1〜1000、好ましくは、1〜20の範囲である。2個以上のヒドロキシ基又はアルコキシ基は、同一のケイ素原子であっても、異なるケイ素原子に結合するものであってもよい。また、アルコキシ基は、同一であっても、異なるものであってもよい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基等が例示される。
【0044】
このようなヒドロキシ基又はアルコキシ基を有する、シラン又はシロキサンとしては、例えば、ジヒドロキシジメチルシラン、1,3−ジヒドロキシー1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ジヒドロキシジフェニルシラン、1,3−ジヒドロキシー1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3−ジメトキシー1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ジメトキシジフェニルシラン、1,3−ジメトキシー1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、及び式:MeO(MeSiO)Me(nは1〜10)で表されるシロキサンからなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。これらのうち、特に1,3−ジヒドロキシー1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサンが耐ガス性の点から望ましい。
【0045】
(C)1分子中に2個以上のヒドロキシ基又はアルコキシ基を有する、シラン又はシロキサンの配合量は、上記(A)成分100質量部に対して、0.01〜50質量部、より好ましくは、1〜40質量部、さらに好ましくは、10〜40質量部である。0.01質量部未満の場合は、硬化性を向上させる効果が不足することになり、20質量部を超えると、ゲル化する可能性が上がることとなる。
【0046】
(D)成分の硬化触媒を添加することにより、硬化反応を円滑に、かつ短時間で完了させることができる。硬化触媒としては、第四級ホスホニウム塩の1種又は2種以上、特に下記式(6)、(7)で示される第四級ホスホニウム塩のうち1種又は2種以上を用いる。これにより、基本性能である透明で、表面タック性がなく、リフロ−試験時の変色がなく、高い実装信頼性を得ることができる。下記式(6)、(7)で示される化合物以外の第四級ホスホニウム塩の具体例としては、第四級ホスホニウムのブロマイド塩であるサンアプロ社製「U−CAT5003」(商品名)を挙げることができる。
【0047】
【化15】

【0048】
また、(D)成分の硬化触媒としては、上記式(6)で示される化合物、上記式(7)で示される化合物、及びこれらの化合物以外の第四級ホスホニウム塩のうち少なくとも1種以上を用いた上で、さらにその他の硬化触媒を用いることもできる。このようなその他の硬化触媒としては、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン系硬化触媒;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエタノ−ルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの三級アミン系硬化触媒;2−メチルイミダゾ−ル、2−フェニル−4−メチルイミダゾ−ルなどのイミダゾ−ル類系硬化触媒などを挙げることができる。
【0049】
このような硬化触媒の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して、0.05〜3質量部が好ましい。硬化触媒の配合量が0.05質量部より少ないと、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進させる効果を十分に得ることができないおそれがある。逆に、硬化触媒の配合量が3質量部より多いと、硬化時やリフロ−試験時の変色の原因となるおそれがある。
【0050】
本発明においては、上記(A)〜(D)の必須成分に加えて、例えば、(E)成分として酸化防止剤、(F)成分として紫外線吸収剤、(G)成分として接着付与剤を適宜配合させることができる。
【0051】
(E)成分の酸化防止剤は、樹脂の耐熱性向上などの目的で添加され、具体的には、ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などを、エポキシ樹脂組成物全体に対して、0.1〜5質量%添加することができる。0.1質量%未満では、耐熱性を向上させることができず、5質量%を超えると、耐変色性の低下原因となることがある。
ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤としては、ペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]、N,N'−プロパン−1,3−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト、6,6'−シ゛−tert−ブチル−2,2'−チオジ−p−クレゾ−ル、N,N'−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−シ゛−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸C7−C9側鎖アルキルエステル、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネ−ト、2,2'−エチリデンビス[4,6−シ゛−tert−ブチルフェノ−ル]、3,3',3”,5,5',5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a',a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾ−ル、カルシウムジエチルビス[[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネ−ト]、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾ−ル、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾ−ル、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネ−ト]、ヘキサメチレン ビス[3−(3,5−シ゛−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト、1,3,5−トリス(3,5−シ゛−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、6,6'−ジ゛−tert−ブチル−4,4'−チオジ−m−クレゾ−ル、ジフェニルアミン、N−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルペンテンの反応生成物、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノ−ル、3,4−ジヒドロ−2,5,7,8−テトラメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)−2H−1−ベンゾピラン−6−オ−ル、2',3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]フ゜ロピオニル]]プロピオノヒドラジト゛、ジドデシル 3,3'−チオジプロピオネ−ト、ジオクタデシル 3,3'−チオジプロピオネ−トなどが例示される。
【0052】
リン系酸化防止剤としては、亜リン酸トリフェニル、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、2,2’,2”−ニトリロ[トリエチル−トリス[3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル]]ホスファイト、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネ−トなどが例示される。
【0053】
(F)成分の紫外線吸収剤は、樹脂の耐光性向上などの目的で添加され、具体的には、ヒンダ−ドアミン系紫外線吸収剤などを、エポキシ樹脂組成物全量に対して、0.1〜5質量%添加することができる。0.1質量%未満では、耐光性を向上させることができず、5質量%を超えると、耐変色性の低下原因となることがある。
ヒンダ−ドアミン系紫外線吸収剤としては、2,2,4,4−テトラメチル−20−(β−ミリスチル−オキシカルボニル)−エチル−7−オクサ−3,20−ジアザ−ジスピロ−[5.1.11.2]−ヘネイコサノン−21、2,2,4,4−テトラメチル−20−(β−ラウリル−オキシカルボニル)−エチル−7−オクサ−3,20−ジアザ−ジスピロ−[5.1.11.2]−ヘネイコサノン−21、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネ−ト、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケ−ト、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピヘ゜リジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノ−ル、2,2’,2”−ニトリロ[トリエチル−トリス[3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル]]ホスファイト、2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノ−ルなどが例示される。
【0054】
(G)成分の接着付与剤は、エポキシ樹脂の接着力向上を目的に添加され、各種のシランカップリング剤、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系シランカップリング剤を、エポキシ樹脂組成物全量に対し、0.1〜3質量%添加することができる。0.1質量%未満では、接着力を向上させることができず、3質量%を超えると、耐変色性の低下原因となるからである。
【0055】
さらに、青色LED、紫外LEDなどの発光素子から発せられた発光波長を変換する目的で、各種蛍光体粉末を、エポキシ樹脂組成物全量に対し、1〜100質量%添加することができる。
例えば、黄色蛍光体として、一般式:A12:M(式中、成分Aは、Y,Gd,Tb,La,Lu,Se及びSmからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を有し、成分Bは、Al,Ga及びInからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を有し、成分Mは、Ce,Pr,Eu,Cr,Nd及びErからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を有する)で表されるガーネット型構造の蛍光体粒子が好ましく用いられる。特に、青色LED素子から白色LEDを実現するための白色LED用蛍光体としては、YAl12:Ce蛍光体及び/又は(Y,Gd、Tb)(Al,Ga)12:Ce蛍光体が適している。
【0056】
その他の蛍光体としては、例えば、CaGa:Ce3+、SrGa:Ce3+、YAlO:Ce3+、YGaO:Ce3+、Y(Al,Ga)O:Ce3+、YSiO:Ce3+などが挙げられる。
また、混合色光を作成するためには、これらの蛍光体の他に、希土類元素でド−プされたアルミン酸塩やオルトケイ酸塩などが好適に用いられる。
【0057】
上記成分のほか、LED光拡散効果、蛍光体の沈降防止効果、膨張率の低減効果などの効果を得る目的で、無機充填剤を添加することができる。無機充填剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸カルシウムなどが例示され、単独、又は2種以上を適宜添加することができる。無機充填剤の配合割合は、エポキシ樹脂組成物全量に対し、0.1〜100質量%であることが好ましい。
【0058】
その他、本発明のエポキシ樹脂組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲で各種添加剤を配合することができる。
【0059】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、液状、固形状、粉末状など、幅広い形態として得ることができる。液状の本発明のエポキシ樹脂組成物を得るには、(A)成分、(B)成分、(C)成分並びに、必要に応じて配合される各種成分を適宜配合すればよい。固形状、粉末状として得る場合は、例えば、まず、(A)成分、(B)成分、(C)成分、並びに、必要に応じて配合される各種成分を配合して、ミキサーなどで均一に混合した後、100℃以下の低温にて、1〜100時間、好ましくは2〜12時間、さらに好ましくは2〜5時間反応させて、硬化反応を途中まで進行させ(Bステージ化)、次いで、室温にまで冷却した後、(D)成分を添加して、100℃、2時間、次いで150℃、4時間の条件下で、硬化反応をさらに進行させて硬化させる方法が例示される。この製造方法によると、粘度、硬度などが調整しやすいため好ましい。
【0060】
このようにして得られた本発明のエポキシ樹脂組成物は、半導体の封止、被覆保護などに使用することができ、特には、発光半導体を封止、被覆保護するための材料として好適に使用される。発光半導体としては、発光ダイオ−ド(LED)、有機電界発光素子(有機EL)、レ−ザ−ダイオ−ド、LEDアレイなどを挙げることができる。
【0061】
本発明の半導体装置は、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、その硬化物により、半導体を封止してなるものである。本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体を封止する態様は特に制限されない。例えば、開口部を有する筐体内に配置された発光半導体を覆うように、筐体内に上記エポキシ樹脂組成物を充填し、硬化させることが挙げられる。
また、マトリックス化された基板上にLEDを搭載したものを、印刷法、トランスファ−成形、インジェクション成形、圧縮成形などにより、製造することもできる。LEDなどの発光半導体装置をポッティングやインジェクション成形などで被覆保護する場合、本発明のエポキシ樹脂組成物は液状であることが好ましい。その場合、エポキシ樹脂組成物の粘度としては、25℃の回転粘度計による測定値として10〜1,000,000MPa・S、特には100〜1,000,000MPa・S程度が好ましい。エポキシ樹脂組成物が液状である場合は、少なくとも、(A)成分と(B)成分を別々にして、使用する直前に混合する2液タイプとして用いればよい。
一方、トランスファ−成形などで発光半導体装置を製造する場合には、上記の液状エポキシ樹脂組成物を使用することもできるが、液状エポキシ樹脂組成物を増粘させて固形化(Bステ−ジ化)し、ペレット化したものを使用することができる。
【0062】
半導体素子を封止する際の本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化条件は、25〜200℃、72時間〜3分間と、その作業条件に合わせて任意であり、生産性と発光素子や筐体耐熱性とのバランスを勘案して適宜選定することができる。通常、トランスファ−成形やインジェクション成形の場合は、150〜180℃の温度、20〜50kgf/cmの圧力で1〜5分間成形することで容易に本発明の半導体装置を製造することができる。また、成形後に後硬化(二次硬化又はポストキュア)を150〜200℃で1〜4時間の条件で行うことができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0064】
[実施例1〜4、比較例1、2]
前述した(A)成分、(B)成分、(C)成分、(E)成分、(F)成分、及び(G)成分を80℃で3時間混練して混合し、次いで、これを室温にまで冷却した後、(D)成分を添加し、100℃、2時間、次いで、150℃、4時間の条件下で硬化させることにより、エポキシ樹脂組成物を作製した。こうして得られた各エポキシ樹脂組成物について、下記の特性評価を行った。上記(A)〜(G)成分、及び特性評価の具体的な内容は、以下に示すとおりである。各成分の配合量(質量部)、及び評価結果を表1に示す。
【0065】
(A)成分
1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物として、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(セロキサイド2021P、ダイセル化学工業社製、商品名)を用いた(表1中、エポキシ樹脂と表示)。
シリコ−ン変性エポキシ化合物として、以下の合成例1及び2で製造した2種類のシリコ−ン変性エポキシ化合物を用いた(表1中、それぞれ合成化合物I、IIと表示)。
[シリコ−ン変性エポキシ化合物の合成例1]
1−アリル−3,5−ジグリシジルイソシアヌレ−ト157.0g(0.56mol)と、下記[化16]に示されるハイドロジェンシロキサン184.8g(0.25mol)とを、0.5Lのセパラフラスコに仕込み、塩化白金酸2%オクチルアルコ−ル溶液(Pt量20ppm)を添加して、80〜100℃で6時間反応させた後、未反応物を減圧下で留去することで、下記[化17]に示される無色透明な液体(合成化合物 I)を318g得た。収率は93%であった。
【0066】
【化16】

【0067】
【化17】

(合成化合物 I)
【0068】
得られた無色透明な液体(合成化合物 I)の物性は下記のとおりである。
エポキシ当量(三菱化学社製、GT−100):330g/mol
屈折率(ATAGO社製、RX5000、25℃):1.456
元素分析値:C:0.4088(0.4096)、Si:0.2166(0.2177)、O:0.2363(0.2356)、N:0.0642(0.0651)、H:0.0741(0.0719)(但し、()内は理論値である)
比重(23℃):1.09
粘度(60℃):4.33Pa・S
【0069】
[シリコ−ン変性エポキシ化合物の合成例2]
1−アリル−3,5−ジグリシジルイソシアヌレ−ト56.5g(0.20mol)と、下記[化18]に示されるハイドロジェンシロキサン31.6g(0.10mol)を0.5Lのセパラフラスコに仕込み、塩化白金酸2%オクチルアルコ−ル溶液を(Pt量20ppm)を添加して、80〜100℃で6時間反応させた後、未反応物を減圧下で留去することで、下記[化19]に示される無色透明な液体(合成化合物 II)を79.3g得た。収率は90%であった。
【0070】
【化18】

【0071】
【化19】

(合成化合物 II)
【0072】
得られた無色透明な液体(合成化合物 II)の物性は下記のとおりである。
エポキシ当量(三菱化学社製、GT−100):196g/mol
屈折率(ATAGO社製、RX5000、25℃):1.463
元素分析値 C:0.4891(0.4909)、Si:0.0944(0.0957)、O:0.2482(0.2452)、N:0.1066(0.1073)、H:0.0617(0.0609)(但し、()内は理論値である)
比重(23℃):1.13
粘度(60℃):11.6Pa・S
【0073】
(B)成分
硬化剤として、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(リカシッドMH:新日本理化社製、商品名)を用いた。
【0074】
(C)成分
1,3−ジヒドロキシー1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、又は式:MeO(MeSiO)OMe(nの平均は3.5)で表されるポリシロキサン(表1中、ポリシロキサン I)を用いた。
【0075】
(D)成分
硬化触媒として、第四級ホスホニウムのブロマイド塩(U−CAT5003:サンアプロ社製、商品名)を用いた。
【0076】
(E)成分
ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤として、ペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]を用いた。
【0077】
(F)成分
ヒンダ−ドアミン系紫外線吸収剤として、2,2,4,4−テトラメチル−20−(β−ミリスチル−オキシカルボニル)−エチル−7−オクサ−3,20−ジアザ−ジスピロ−[5.1.11.2]−ヘネイコサノン−21を用いた。
【0078】
(G)成分
接着付与剤として、メルカプト系シラン系カップリング剤であるγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM803、信越化学工業社製、商品名)を用いた。
【0079】
[特性評価法]
(硬化物の外観)
硬化物の外観を目視で観察し、変色の有無、透明性を目視にて評価した。
(硬度)
棒状硬化物に対し、JIS K6301に準拠して硬度を測定した(タイプD)。
(粘度)
回転粘度計(東機産業製、BMタイプ)にて粘度を測定した。
(ガラス転移温度、膨張係数)
棒状硬化物を幅5mm、厚み4mm、長さ15mmに切り出し、熱分析装置:EXSTAR6000TMA(エスアイアイ・ナノテクノロジ−社製)により、膨張係数の変曲点をガラス転移温度(Tg)とした。また、ガラス転移温度前後の試料の伸びを平均膨張係数とした。
(曲げ強さ、曲げ弾性率)
棒状硬化物を幅5mm、厚み4mm、長さ100mmに切り出し、オ−トグラフ測定装置:AGS−50(島津製作所製)にてJIS K6911に準じて測定した。
(光透過性)
1mm厚の硬化サンプルの、150℃×400時間後の波長400nmにおける室温(25℃)での光透過性を分光光度計:U−4100(日立ハイテック社製)にて測定した。また、耐熱試験として180℃×168時間後の透過率を同様に測定した。
(水蒸気透過性)
JIS Z0208に準拠して、水蒸気透過性を測定した。
(薄膜硬化性)
0.18mmシ−トを作成し、その表面の微小硬度を島津ダイナミック超微小硬度計BUH−W201S(島津製作所製、商品名)にて測定した。
【0080】
【表1】

【0081】
表1からわかるように、(C)成分を配合しなかった比較例1及び比較例2のエポキシ樹脂組成物は、硬化が遅く、耐ガス透過性に劣り、薄膜硬化性も低かった。これに対し、(C)成分を配合した本発明のエポキシ樹脂組成物よりなる実施例1〜4は、薄膜硬化性、耐ガス透過性に優れていた。また、(A)成分についてみると、エポキシ樹脂単独で用いた場合よりも、シロキサン鎖の導入により耐熱性の向上が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、特に、光半導体素子などの電子部品の封止、被覆に好適に用いることができ、なかでも、揮発しやすい酸無水物系の硬化剤を含む従来のエポキシ樹脂組成物では迅速な硬化が困難であった、薄膜LEDのような薄膜光半導体素子に対しても好適に用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(D)成分を含有するエポキシ樹脂組成物。
(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物、又は下記式(1)で示されるシリコ−ン変性エポキシ化合物 100質量部
【化1】

(式中、Rは、同一又は異なった炭素数1〜20の置換又は非置換の1価炭化水素基、Xは、下記式(2)で示される基、Rは、下記式(3)で示される基である。a、bは0〜30の整数であり、cは0〜10の整数であり、1≦a+b+c≦70である。)
【化2】

(式中、R、Rは前記に同じ。d、eは0〜30の整数であり、0≦d+e≦60である。)
【化3】

(B)硬化剤 10〜100質量部
(C)1分子中に2個以上のヒドロキシ基又はアルコキシ基を有する、シラン又はシロキサン 0.01〜50質量部
(D)硬化触媒 0.05〜3質量部
【請求項2】
(A)成分の1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が、水添型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、又はイソシアヌレ−ト環を含有するエポキシ樹脂である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(B)成分の硬化剤が、酸無水物である請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
(C)成分の1分子中に2個以上のヒドロキシ基又はアルコキシ基を有する、シラン又はシロキサンが、ジヒドロキシジメチルシラン、1,3−ジヒドロキシー1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ジヒドロキシジフェニルシラン、1,3−ジヒドロキシー1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3−ジメトキシー1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ジメトキシジフェニルシラン、1,3−ジメトキシー1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、及び式:MeO(MeSiO)Me(nは1〜10)で表されるシロキサンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
(D)成分の硬化触媒が、第四級ホスホニウム塩である請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
(E)成分として、酸化防止剤を、エポキシ樹脂組成物全体に対して、0.1〜5質量%含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
(E)成分の酸化防止剤が、ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤である請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
(E)成分の酸化防止剤が、リン系酸化防止剤である請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
(F)成分として、紫外線吸収剤を、エポキシ樹脂組成物全体に対して、0.1〜5質量%含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
(F)成分の紫外線吸収剤が、ヒンダ−ドアミン系紫外線吸収剤である請求項9に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
(G)成分として、接着付与剤を、エポキシ樹脂組成物全体に対して、0.1〜3質量%含有する請求項1〜10のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
(G)成分の接着付与剤が、メルカプト系シランカップリング剤である請求項11に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を用いてなる半導体装置。
【請求項14】
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を100℃以下の低温で反応させた後、(D)成分を混合して、硬化させる請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−57006(P2012−57006A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199690(P2010−199690)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】