説明

エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板および半導体装置

【課題】多量の無機充填材を均一に含み、耐熱性及び難燃性に優れ、基材への含浸性が良好なエポキシ樹脂組成物を提供し、前記エポキシ樹脂組成物を用いて、タック性が良好で、取り扱い易いプリプレグを提供する。さらに、前記プリプレグを用いて作製した金属張積層板及び/又は前記プリプレグ又は前記エポキシ樹脂組成物を用いて、ENEPIG工程を簡易に行うことができるプリント配線板を提供し、前記プリント配線板を用いて、性能に優れる半導体装置を提供する。
【解決手段】固形のエポキシ樹脂と、平均粒子径が1nm以上100nm以下であるシリカナノ粒子と、平均粒子径が前記シリカナノ粒子の平均粒子径よりも大きく、且つ0.1μm以上5.0μm以下であるシリカ粒子と、を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板および半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化等の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、さらには高密度実装化等が進んでいる。そのため、これらに使用される高密度実装対応のプリント配線板等は、従来にも増して、小型薄型化、高密度化、及び多層化が進んでいる。従って、薄型化による基板自体の剛性の低下に対応するため、低熱膨張性に優れ、リフローで部品を接続する際に反りが小さいもの、高密度化によるプリント配線板の発熱量の増加に対応するため、耐熱性に優れるもの、プリント配線板の多層化に対応するため、メッキプロセス時のデスミア性に優れ、上層金属配線と下層金属配線との通電性を十分に確保できるもの、さらに、より迅速な大量生産に対応するため、生産工程が簡便なもの等が求められる。
【0003】
プリント配線板の製造に用いられるプリプレグは、一般的に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂組成物を溶剤に溶解させて樹脂ワニスとし、これを基材に含浸させて加熱乾燥させることにより作製される。プリント配線板の耐熱性、低熱膨張性、及び難燃性等を向上させるため、無機充填材を含有させた樹脂ワニスを用いたプリプレグの作製が行われている。
しかし、無機充填材を多量に含有した樹脂ワニスは粘度が高くなるため、基材への樹脂組成物の充分量の含浸及び無機充填材の均一な含浸が困難となる。樹脂組成物の主成分として液状のエポキシ樹脂を用いることにより、多量の無機充填材を含有させた樹脂ワニスの粘度を下げることも考えられるが、当該樹脂ワニスを用いて作製したプリプレグは、乾燥により溶剤を除去した後、タック性(粘着性)が大きく、べたつき、取り扱いが難しいという問題点がある。
【0004】
特許文献1では、平均粒子径0.1μm以上5μm以下の球状シリカ粒子と、平均粒子径1nm以上50nm以下のシリカナノ粒子とを有機溶剤に分散させたスラリー組成物は、球状シリカ粒子とシリカナノ粒子との粒子径の違いにより、シリカフィラーの最密充填状態を形成し、前記スラリー組成物にエポキシ樹脂を配合して作製したワニス組成物は、均一且つ高配合割合でシリカフィラーを含有することが開示されている。さらに、前記ワニス組成物を用いて得られた絶縁フィルム及びプリプレグも開示されている。しかしながら、特許文献1では、実施例で使用されているエポキシ樹脂は、無溶剤の状態で液状のエポキシ樹脂のみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−36916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第一の目的は、多量の無機充填材を均一に含み、耐熱性及び難燃性に優れ、基材への含浸性が良好なエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
本発明の第二の目的は、前記エポキシ樹脂組成物を用いて、耐熱性及び難燃性に優れ、さらに、タック性が良好で、取り扱い易いプリプレグを提供することにある。
本発明の第三の目的は、前記プリプレグを用いて作製した金属張積層板の提供、及び当該金属張積層板及び/又は前記プリプレグ又は前記エポキシ樹脂組成物を用いて、耐熱性及び難燃性に優れ、さらに、ENEPIG法(Electroless Nickel Electroless Palladium Immersion Gold)によるメッキ処理を行う場合に、表面処理を行わなくてもメッキ工程での導通不良を防止できるプリント配線板を提供することにある。
本発明の第四の目的は、前記プリント配線板を用いて作製した、性能に優れる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、下記(1)〜(10)に記載の本発明により達成される。
(1)固形のエポキシ樹脂と、平均粒子径が1nm以上100nm以下であるシリカナノ粒子と、平均粒子径が前記シリカナノ粒子の平均粒子径よりも大きく、且つ0.1μm以上5.0μm以下であるシリカ粒子と、を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
(2)前記シリカナノ粒子の平均粒子径が40nm以上100nm以下である上記(1)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(3)さらに、シアネート樹脂を含むものである上記(1)又は(2)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(4)さらに、マレイミド樹脂を含むものである上記(1)乃至(3)のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物。
(5)前記固形のエポキシ樹脂は、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種である上記(1)乃至(4)のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物。
(6)上記(1)乃至(5)のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物を基材に含浸してなることを特徴とするプリプレグ。
(7)基材中に上記(1)乃至(5)のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物を含浸してなる樹脂含浸基材層の少なくとも片面に金属箔を有することを特徴とする金属張積層板。
(8)上記(6)に記載のプリプレグ又は当該プリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の少なくとも片面に金属箔を重ね、加熱加圧することにより得られる上記(7)に記載の金属張積層板。
(9)上記(7)又は(8)に記載の金属張積層板を内層回路基板に用いてなることを特徴とするプリント配線板。
(10)内層回路上に、上記(6)に記載のプリプレグを絶縁層に用いてなるプリント配線板。
(11)内層回路上に、上記(1)乃至(5)のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物を絶縁層に用いてなるプリント配線板。
(12)上記(9)乃至(11)のいずれか一に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなることを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エポキシ樹脂組成物に含有させる無機充填材として、シリカナノ粒子と、当該シリカナノ粒子より粒子径の大きいシリカ粒子とを用いることにより、前記エポキシ樹脂組成物中に多量の無機充填材を含有させることができ、前記エポキシ樹脂組成物は耐熱性及び難燃性が向上する。さらに、シリカナノ粒子とシリカ粒子とが同符号の表面ゼータ電位を有し、電気的に反発し合うため、前記シリカナノ粒子及び前記シリカ粒子がエポキシ樹脂組成物中で均一に分散される。従って、前記エポキシ樹脂組成物を用いてプリプレグを作製する際に、多量の無機充填材を基材中に均一に含浸させることができる。
また、前記エポキシ樹脂組成物は、固形のエポキシ樹脂を用いることにより、プリプレグを作製する際に基材への含浸性を十分に保ちつつも、乾燥により溶剤を除去した後、タック性が良好で、取り扱いが容易なプリプレグが得られる。
前記プリプレグを用いて作製した金属張積層板、及び当該金属張積層板及び/又は前記プリプレグ又は前記エポキシ樹脂組成物を用いて作製したプリント配線板は、ENEPIG法によるメッキ処理を行う場合に、表面処理をしなくても導通不良が発生しない。
また、本発明によれば、前記プリント配線板を用いて、性能に優れる半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のプリプレグの製造に用いられる含浸塗布設備の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の金属張積層板の製造方法の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の金属張積層板の製造方法の他の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の金属張積層板の製造に用いられる、金属箔、絶縁樹脂層、及び基材について、各々の幅方向寸法の形態の一例を示す概略図である。
【図5】(1)本発明の金属張積層板の製造に用いられる、絶縁樹脂層付き金属箔を製造する装置形態の一例を示す概略側断面図であり、(2)本発明の金属張積層板を製造する装置形態の一例を示す概略側断面図である。
【図6】実施例1で得られた金属張積層板の金属箔層の表面を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板および半導体装置について説明する。なお、樹脂組成物に含有される各成分の含有量百分率は、溶剤を除く全成分の全量(100重量%)としたときの割合である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、常温で固形のエポキシ樹脂と、平均粒子径が1nm以上100nm以下であるシリカナノ粒子と、平均粒子径が前記シリカナノ粒子の平均粒子径よりも大きく、且つ0.1μm以上5.0μm以下であるシリカ粒子と、を含むことを特徴とする。
また、本発明のプリプレグは、上記に記載のエポキシ樹脂組成物を基材に含浸してなることを特徴とする。
また、本発明の金属張積層板は、上記に記載のプリプレグ又は当該プリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の少なくとも片面に金属箔を有することを特徴とする。
また、本発明のプリント配線板は、上記に記載の金属張積層板を内層回路基板に用いてなることを特徴とする。
また、本発明のプリント配線板は、内層回路上に、上記に記載のプリプレグを絶縁層に用いてなることを特徴とする。
また、本発明のプリント配線板は、内層回路上に、上記に記載のエポキシ樹脂組成物を絶縁層に用いてなることを特徴とする。
また、本発明の半導体装置は、上記に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなることを特徴とする。
【0011】
(エポキシ樹脂組成物)
まず、エポキシ樹脂組成物について説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、固形のエポキシ樹脂を含有し、好ましくは組成物全体としても固形である。固形のエポキシ樹脂を含むことにより、液状のエポキシ樹脂を用いる場合と異なり、得られるプリプレグのタック性が良好でべたつきがなくなり、取り扱いが容易となる。従来、固形のエポキシ樹脂を用いて調製したエポキシ樹脂組成物は、これを溶剤で溶解し、ワニスにして用いる場合でも、粘度が高いために基材への含浸性が低いと考えられており、無機充填材を多量に含有させる場合には、特に含浸性が落ちると考えられていた。これに対し、本発明のエポキシ樹脂組成物は、無機充填剤を多量に含有しているため、粘度が高いまま、又はより粘度が高くなる場合も多いが、ミクロンサイズのシリカ粒子と、ナノサイズのシリカナノ粒子とを組み合わせて用いることにより、十分な含浸性を示すことが判明した。また、プリプレグのべたつきを防止する観点から、固形のエポキシ樹脂にその他の成分を配合したエポキシ樹脂組成物が無溶剤の状態で固形であることが好ましい。
尚、本発明において、エポキシ樹脂又はエポキシ樹脂組成物が「固形」とは、無溶剤の状態で、常温の範囲で固形であること、すなわち流動性を有さず、一定の形状を保つことを意味する。また、本発明において「常温」とは、自然環境下で通常遭遇する周囲環境の温度であり、少なくとも5〜35℃の範囲を含む。
固形のエポキシ樹脂は、市販のものを入手することができる。また、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂組成物を合成する際に、化学構造の骨格、エポキシ当量、及び分子量等の諸条件を選択又は調節することで、固形とすることができる。一般に分子量が高くなれば固形になるが、芳香族構造等の分子間相互作用するような構造を有する場合は、分子量が小さくても固形になる。
【0012】
前記エポキシ樹脂としては、固形のものであれば特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4’−(1,4−フェニレンジイソプロピリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4’−(1,3−フェニレンジイソプロピリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタンノボラック型エポキシ樹脂、1,1,2,2−(テトラフェノール)エタンのグリシジルエーテル類、3官能、又は4官能のグリシジルアミン類、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、メトキシナフタレン変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、メトキシナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、上記エポキシ樹脂をハロゲン化した難燃化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用することもでき、1種類又は2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用することもできる。
これらのエポキシ樹脂の中でも特に、軟化点が40℃以上、150℃以下のものが好ましく、さらに好ましくは、50℃以上、100℃以下である。前記の範囲の軟化点を有するエポキシ樹脂は、ハンドリング性に優れる。さらに好ましくは、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これにより、耐熱性及び難燃性を向上させ、且つ、プリプレグのタック性を良好にし、取り扱いを容易にさせることができる。
【0013】
前記エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物全体の5重量%以上、30重量%以下とすることが好ましい。含有量が前記下限値未満であると、エポキシ樹脂の硬化性が低下したり、当該エポキシ樹脂組成物より得られるプリプレグ、又はプリント配線板の耐湿性が低下したりする場合がある。また、前記上限値を超えると、プリプレグ又はプリント配線板の線熱膨張率が大きくなったり、耐熱性が低下したりする場合がある。
【0014】
前記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量100以上、3000以下が好ましい。重量平均分子量が前記下限未満であると、エポキシ樹脂が室温で液状、又は半固形状態になることがあり、前記上限値を超えるとエポキシ樹脂組成物の流動性が低下し、基材に含浸できない場合がある。重量平均分子量を前記範囲内とすることにより、これらの特性のバランスに優れた組成物とすることができる。
前記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算の重量分子量として特定することができる。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、平均粒子径が1nm以上100nm以下であるシリカナノ粒子と、平均粒子径が前記シリカナノ粒子の平均粒子径よりも大きく、且つ0.1μm以上5.0μm以下であるシリカ粒子とを含む。このように、シリカナノ粒子とシリカ粒子とが異なる粒子径を有し、さらに、いずれも負の表面ゼータ電位を有するため電気的に反発し合うことで、シリカナノ粒子とシリカ粒子が前記エポキシ樹脂組成物中で高濃度で均一に分散されると考えられる。
前記シリカナノ粒子及び前記シリカ粒子の平均粒子径は、例えば、レーザー回折散乱法により測定することができる。シリカナノ粒子(シリカ粒子)を水中で超音波により分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(HOEIBA製、LA−500)により、シリカナノ粒子(シリカ粒子)の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径を平均粒子径とする。具体的には、シリカナノ粒子及びシリカ粒子等の無機充填材の平均粒子径はD50で規定される。
【0016】
前記シリカナノ粒子は、平均粒子径が1nm以上100nm以下であり、含浸性の点から、40nm以上100nm以下が好ましい。1nm未満では、基材のフィラメント間を広げることができず、また100nmより大きい場合は、フィラメント間に入り込むことができない場合があるからである。特に50nm以上70nm以下が好ましく、さらに好ましくは50nm以上60nm以下である。
【0017】
前記シリカナノ粒子の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物全体の1〜50重量%であることが好ましく、特に5〜20重量%であることが好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に含浸性に優れる。
【0018】
前記シリカ粒子は、平均粒子径が前記シリカナノ粒子の平均粒子径よりも大きく、且つ0.1μm以上5.0μm以下であり、含浸性の点から、特に0.3μm以上1.5μm以下が好ましい。
【0019】
前記シリカナノ粒子及び前記シリカ粒子の製造方法は、特に限定されないが、例えば、VMC(Vaporized Metal Combustion)法、PVS(Physical Vapor Synthesis)法等の燃焼法、破砕シリカを火炎溶融する溶融法、沈降法、ゲル法等が挙げられ、これらの中でもVMC法が特に好ましい。
前記VMC法とは、酸素含有ガス中で形成させた化学炎中にシリコン粉末を投入し、燃焼させた後、冷却することで、シリカ粒子を形成させる方法である。前記VMC法では、投入するシリコン粉末の粒子径、投入量、火炎温度等を調整することにより、得られるシリカ微粒子の粒子径を調整できるため、粒子径の異なるシリカナノ粒子とシリカ粒子とを製造することができる。
【0020】
前記シリカ粒子の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物全体の10〜90重量%であることが好ましく、特に30〜80重量%であることが好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に含浸性に優れる。
【0021】
前記シリカナノ粒子の含有量に対する、前記シリカ粒子の含有量の重量比(シリカ粒子の重量/シリカナノ粒子の重量)は、特に限定されないが、1〜80であることが好ましく、特に2〜20であることが好ましい。重量比が前記範囲内であると、特に成形性を向上することができる。重量比が前記範囲より大きい又は小さいと、含浸性が悪くなり、ボイド発生による半田耐熱性、絶縁信頼性の低下が起こりやすくなる。
【0022】
前記シリカナノ粒子及び前記シリカ粒子は、例えば、燃焼法等の乾式の溶融シリカや、沈降法やゲル法等の湿式のゾルゲルシリカ等として用いてもよいが、有機溶媒に分散したスラリーとして用いることが好ましい。これにより分散性を向上させることができるからである。
前記有機溶媒としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物に用いる樹脂に応じて適宜選択すればよい。例えば、MEK、シクロヘキサノン、MIBK等が挙げられる。シリカナノ粒子のようなナノサイズの粒子は、凝集し易く、樹脂組成物に配合する際に2次凝集等を形成してしまうことが多いが、スラリー状の粒子を用いることで、このような2次凝集を防止することができる。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、シアネート樹脂を含むことが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。
前記シアネート樹脂の入手方法としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類やナフトール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。また、このようにして調製された市販品を用いることもできる。
【0024】
前記シアネート樹脂の種類としては、特に限定されないが、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂、及びナフトールアラルキル型シアネート樹脂等を挙げることができる。
【0025】
前記シアネート樹脂は、分子内に2個以上のシアネート基(−O−CN)を有することが好ましい。例えば、2,2’−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、1,1’−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン))ベンゼン、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル、フェノールノボラック型シアネートエステル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−又は2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4−ジシアナトビフェニル、及びフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型の多価フェノール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂、ナフトールアラルキル型の多価ナフトール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂等が挙げられる。これらの中で、フェノールノボラック型シアネート樹脂が難燃性、及び低熱膨張性に優れ、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、及びジシクロペンタジエン型シアネートエステルが架橋密度の制御、及び耐湿信頼性に優れている。特に、フェノールノボラック型シアネート樹脂が低熱膨張性の点から好ましい。また、更に他のシアネート樹脂を1種類あるいは2種類以上併用したりすることもでき、特に限定されない。
【0026】
前記シアネート樹脂は、単独で用いてもよいし、重量平均分子量の異なるシアネート樹脂を併用したり、1種類または2種類以上の前記シアネート樹脂とそれらのプレポリマーとを併用したりすることもできる。
前記プレポリマーは、通常、前記シアネート樹脂を加熱反応等により、例えば3量化することで得られるものであり、エポキシ樹脂組成物の成形性、流動性を調整するために好ましく使用されるものである。
前記プレポリマーは、特に限定されないが、例えば、3量化率が20〜50重量%のプレポリマーを用いることができ、良好な成形性、流動性を発現することができる。この3量化率は、例えば赤外分光分析装置を用いて求めることができる。
【0027】
前記シアネート樹脂の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物全体の5〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは10〜50重量%であり、特に好ましくは10〜40重量%である。含有量が前記範囲内であると、シアネート樹脂は、効果的に耐熱性、及び難燃性の向上を発現させることができる。シアネート樹脂の含有量が前記下限未満であると熱膨張性が大きくなり、耐熱性が低下する場合があり、前記上限値を超えるとエポキシ樹脂組成物を用いて作製したプリプレグの強度が低下する場合がある。
前記シアネート樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量100以上、3000以下が好ましい。重量平均分子量が前記下限未満であると、エポキシ樹脂組成物のタック性が悪いことがあり、前記上限値を超えるとエポキシ樹脂組成物の作業性及び含浸性が悪いことがある。
前記シアネート樹脂の重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算の重量分子量として特定することができる。
【0028】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、特に限定されないが、マレイミド樹脂を含むことが好ましい。これにより、耐熱性を向上させることができる。
前記マレイミド樹脂としては、特に限定されないが、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等のビスマレイミド樹脂が挙げられる。また、更に他のマレイミド樹脂を1種類あるいは2種類以上併用したりすることもでき、特に限定されない。
【0029】
前記マレイミド樹脂は、単独で用いてもよいし、重量平均分子量の異なるマレイミド樹脂を併用したり、前記マレイミド樹脂とそのプレポリマーとを併用したりすることもできる。
【0030】
前記マレイミド樹脂の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物全体の1〜30重量%であることが好ましく、特に5〜20重量%が好ましい。
前記マレイミド樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量100以上、3000以下が好ましい。重量平均分子量が前記下限未満であると、エポキシ樹脂組成物のタック性が悪いことがあり、前記上限値を超えるとエポキシ樹脂組成物の作業性及び含浸性が悪いことがある。
前記マレイミド樹脂の重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算の重量分子量として特定することができる。
【0031】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、フェノール系硬化剤を使用することができる。フェノール系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類等公知慣用のものを単独あるいは2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0032】
前記フェノール系硬化剤の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂との当量比(フェノール性水酸基当量/エポキシ基当量)が1.0未満、0.1以上が好ましい。これにより、未反応のフェノール系硬化剤の残留がなくなり、吸湿耐熱性が向上する。更に、高いレベルの吸湿耐熱性を必要とする場合、フェノール系硬化剤の含有量は0.2〜0.5の範囲が特に好ましい。また、フェノール樹脂は、硬化剤として作用するだけでなく、シアネート基とエポキシ基との硬化を促進することができる。
前記フェノール系硬化剤のフェノール系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量100以上、3000以下が好ましい。重量平均分子量が前記下限未満であると、エポキシ樹脂組成物のタック性が悪いことがあり、前記上限値を超えるとエポキシ樹脂組成物の作業性及び含浸性が悪いことがある。
前記フェノール系樹脂の重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算の重量分子量として特定することができる。
【0033】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、カップリング剤を使用することが好ましい。これにより、エポキシ樹脂等の樹脂と無機充填材であるシリカナノ粒子及びシリカ粒子との界面の濡れ性を向上させることにより、基材に対して樹脂及び無機充填材を均一に定着させ、耐熱性、特に吸湿後の半田耐熱性を向上させることができる。
【0034】
前記カップリング剤は、例えば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル型カップリング剤等が挙げられる。
【0035】
前記カップリング剤の含有量は、特に限定されないが、無機充填材(シリカナノ粒子及びシリカ粒子)100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、特に0.1〜2重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であると前記無機充填材を十分に被覆できないため耐熱性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると反応に影響を与え、曲げ強度等が低下する場合がある。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、上記成分以外の添加物を、特性を損なわない範囲で添加することができる。上記成分以外の成分は、例えば、イミダゾール類、トリフェニルホスフィン、及び4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤、アクリル系重合物等の表面調整剤、染料及び顔料等の着色剤等を挙げることができる。
【0037】
(プリプレグ)
次に、本発明のプリプレグについて説明する。本発明のプリプレグは上記本発明のエポキシ樹脂組成物を基材に含浸してなるものである。本発明では、エポキシ樹脂組成物の主成分として、固形のエポキシ樹脂を用いることにより、低タック性を有し、取り扱い易いプリプレグを得ることができる。前記基材としては、例えばガラス織布、ガラス不織布、ガラスペーパー等のガラス繊維基材、紙、アラミド樹脂、ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、フッ素樹脂等の合成繊維等からなる織布や不織布、金属繊維、カーボン繊維、鉱物繊維等からなる織布、不織布、マット類等が挙げられる。これらの基材は単独又は混合して使用してもよい。これらの中でもガラス繊維基材が好ましい。これにより、プリプレグの剛性、寸法安定性を向上することができる。
【0038】
前記エポキシ樹脂組成物を基材に含浸する際には、前記エポキシ樹脂組成物を溶媒に溶解させ、樹脂ワニスとして用いる。前記溶媒は、前記エポキシ樹脂組成物に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。前記樹脂ワニスの固形分(溶剤を除く全成分)は、特に限定されないが、前記エポキシ樹脂組成物の溶剤を除く全成分の30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましい。これにより、樹脂ワニスの基材への含浸性を向上できる。
【0039】
前記樹脂ワニスを前記基材に含浸させる方法は、例えば基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターによる塗布する方法、スプレーによる吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、基材に対するエポキシ樹脂組成物の含浸性を向上することができる。尚、基材を樹脂ワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。図1に示すように、基材1を、含浸槽2の前記エポキシ樹脂ワニス3中に浸漬して、基材1にエポキシ樹脂ワニス3を含浸
する。その際、含浸槽2が備えるディップロール4(図1では3本)によって基材1はエ
ポキシ樹脂ワニス3中に浸漬される。次いで、エポキシ樹脂ワニス3を含浸した基材1を、垂直方向に引き上げて、水平方向に並設され、対向している1対のスクイズロール又は、コンマロール(図1の5はスクイズロール)の間を通して、基材1へのエポキシ樹脂ワニス3の塗布量を調整する。その後、エポキシ樹脂ワニス3が塗布された基材1を、乾燥機6で所定の温度で加熱して、塗布されたワニス中の溶剤を揮発させると共にエポキシ樹脂組成物を半硬化させてプリプレグ7を製造する。なお、図1中の上部ロール8はプリプレグ7を進行方向に移動させるために、プリプレグ7の進行方向と同方向に回転している。また、前記エポキシ樹脂ワニスの溶剤を乾燥させる条件は、温度90〜180℃、時間1〜10分で乾燥させることにより半硬化のプリプレグ7を得ることができる。
【0040】
(金属張積層板)
次に、金属張積層板について説明する。本発明の金属張積層板は、基材に上記のエポキシ樹脂組成物を含浸してなる樹脂含浸基材層の少なくとも片面に金属箔を有するものである。
本発明の金属張積層板は、例えば、上記のプリプレグ又は当該プリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の少なくとも片面に金属箔を張り付けることで製造できる。
プリプレグ1枚のときは、その上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。また、プリプレグを2枚以上積層することもできる。プリプレグ2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔あるいはフィルムを重ねる。次に、プリプレグと金属箔とを重ねたものを加熱加圧成形することで金属張積層板を得ることができる。
【0041】
前記加熱する温度は、特に限定されないが、120〜220℃が好ましく、特に150〜200℃が好ましい。前記加圧する圧力は、特に限定されないが、0.5〜5MPaが好ましく、特に1〜3MPaが好ましい。また、必要に応じてクリーンオーブン等で150〜300℃の温度で後硬化を行ってもかまわない。
【0042】
また、本発明の金属張積層板を製造する別の方法として、図2に示す絶縁樹脂層付き金属箔を用いた金属張積層板の製造方法が挙げられる。まず、金属箔11に均一な絶縁樹脂層12をコーターで塗工した絶縁樹脂層付き金属箔10を準備し、ガラス繊維等の基材20の両側に、絶縁樹脂層付き金属箔10、10を絶縁樹脂層を内側にして配し(図2(a))、真空中で加熱60〜130℃、加圧0.1〜5MPaでラミネート含浸させる方法により、プリプレグ40が形成され、金属箔付きプリプレグ41を得る(図2(b))。次いで、金属箔付きプリプレグ41を直接加熱加圧成形することで、金属張積層板51を得ることができる(図2(c))。
さらに、本発明の金属張積層板を製造する別の方法として、図3に示す絶縁樹脂層付き高分子フィルムシートを用いた金属張積層板の製造方法も挙げられる。まず、高分子フィルムシート31に、均一な絶縁樹脂層32をコーターで塗工した絶縁樹脂層付き高分子フィルムシート30を準備し、基材2の両側に絶縁樹脂層付き高分子フィルムシート30、30を絶縁樹脂層を内側にして配し(図3(a))、真空中で加熱60〜130℃、加圧0.1〜5MPaでラミネート含浸させる方法により、プリプレグ40が形成され、高分子フィルムシート付きプリプレグ42を得ることができる(図3(b))。次いで、高分子フィルムシート付きプリプレグ42の少なくとも片面の高分子フィルムシート31を剥離後(図3(c))、高分子フィルムシート31を剥離した面に金属箔11を配し(図3(d))、加熱加圧成形することで金属張積層板52を得ることができる(図3(e))。さらに、両面の高分子フィルムシートを剥離する場合は、前述のプリプレグ同様に、2枚以上積層することもできる。プリプレグを2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔または高分子フィルムシートを配し、加熱加圧成形することで金属張積層板を得ることができる。前記加熱加圧成形する条件としては、温度は、特に限定されないが、120〜220℃が好ましく、特に150〜200℃が好ましい。前記加圧する圧力は、特に限定されないが、0.1〜5MPaが好ましく、特に0.5〜3MPaが好ましい。本発明では、高分子フィルムシート付きでプリプレグを作製するため、プリプレグの表面平滑性が高く低圧成形が可能となる。また、必要に応じてクリーンオーブン等で150〜300℃の温度で後硬化を行ってもかまわない。
【0043】
また、別の方法として、本発明の金属張積層板は、WO2007/040125に記載されているような方法によって製造することもできる。この方法は、(a)片面側に絶縁樹脂層が形成された第一及び第二の絶縁樹脂層付き金属箔の絶縁樹脂層側を、基材の両面側にそれぞれ重ね合わせ、減圧条件下でこれらを接合する工程と、(b)前記接合後に、前記絶縁樹脂の溶融温度以上の温度で加熱処理する工程とを有することを特徴とする、金属張積層板の製造方法である。尚、前記絶縁樹脂層は、本発明のエポキシ樹脂組成物からなる。
前記(a)工程での減圧条件は、常圧より700Torr以上減圧した条件であることが好ましく、さらに好ましくは、常圧より740Torr以上減圧した条件である。
前記(b)工程での加熱温度は、前記絶縁樹脂の溶融温度以上の温度、つまり本発明のエポキシ樹脂組成物の溶融温度以上の温度である。前記(b)工程により、絶縁層付き金属箔と基材とが接合した時点で残存していたボイドを消失させることができ、非充填部分が非常に少ない、あるいは、実質的に存在しない金属張積層板を製造することができる。
【0044】
前記(a)〜(b)工程により製造される金属張積層板は、例えば図4(1)〜(3)に示したような、第一及び第二の絶縁樹脂層付き金属箔61、61として、基材62よりも幅方向寸法が大きい金属箔を有するとともに、基材62よりも幅方向寸法が大きい絶縁樹脂層を有するものを用いた形態が挙げられる。この形態では、前記(a)工程において、基材62の幅方向寸法の内側領域(基材62が存在する領域)では、第一及び第二の絶縁樹脂層付き金属箔61、61は、それぞれ基材62と接合することができる。また、基材62の幅方向寸法の外側領域(基材62が存在していない領域)では、第一及び第二の絶縁樹脂層付き金属箔61、61それぞれが有する絶縁樹脂層面を直接接合することができる(図4(2))。これらの接合は減圧下で実施するため、基材62の内部、あるいは、絶縁樹脂層付き金属箔61と基材62との接合面等に非充填部分が残存していても、これらをボイドとすることができるので、前記(b)工程の加熱処理により非充填部分を容易に消失させることができ、前記(b)工程において、幅方向の周辺部から空気が進入して新たなボイドが形成されるのを防ぐことができる(図4(3))。
尚、第一及び第二の絶縁樹脂層付き金属箔61、61のうち一方又は両方が、基材62と幅方向寸法が同じ絶縁樹脂層を有していてもよいが、より簡易に絶縁樹脂層により基材を封じて密閉することができ、ボイドが少ない金属張積層板を製造することができる点から、図4に示す形態が好ましい。
【0045】
図5(1)は、図4等の金属張積層板の製造に用いられる、絶縁樹脂層付き金属箔を製造する装置形態の一例を示す概略側断面図であり、図5(2)は、前記金属張積層板を製造する装置形態の一例を示す概略側断面図である。
図5(1)において、金属箔70aは、例えば長尺のシート品を巻物形態にしたもの等を用い、これにより連続的に巻き出すことにより供給することができる。絶縁樹脂液71は、絶縁樹脂液の供給装置(不図示)により、所定量が連続的に金属箔70a上に供給される。ここで絶縁樹脂液として、本発明のエポキシ樹脂組成物を溶剤に溶解、分散させた塗布液が用いられる。絶縁樹脂液71の塗工量は、コンマロール72と、コンマロール72のバックアップロール73とのクリアランスにより制御することができる。所定量の絶縁樹脂液が塗工された金属箔70bは、横搬送型の熱風乾燥装置74、74の内部を移送し、絶縁樹脂液中に含有される有機溶剤等を実質的に乾燥除去し、必要に応じて、硬化反応を途中まで進めた絶縁樹脂層付き金属箔70cとすることができる。絶縁樹脂層付き金属箔70cは、そのまま巻き取ることもできるがラミネートロール76、76により、絶縁樹脂層が形成された側に保護フィルム75を重ね合わせ、保護フィルム75がラミネートされた絶縁樹脂層付き金属箔70dとし、これを巻き取って巻物形態の絶縁樹脂層付き金属箔77を得ている。
【0046】
図5(2)は、前記(a)〜(b)工程を実施できる装置の一例を示す概略側断面図である。図5(2)において(a)工程は、真空ラミネート装置80を使用して実施される。真空ラミネート装置80の内部には、前記(a)工程で得られた絶縁樹脂層付き金属箔77、77と、基材81とが、それぞれ連続的に供給可能に設置されている。絶縁樹脂層付き金属箔77、77は、絶縁樹脂層表面に前記保護フィルムがラミネートされているので、巻き取りロール83により、当該保護フィルムを剥離しながら連続的に供給される(絶縁樹脂層付き金属箔70e、70e)。また、基材81aは、巻物形態の基材81から連続的に供給される。絶縁樹脂層付き金属箔70e、70eは、それぞれ絶縁樹脂層側で基材(繊維布)81aを挟む形態で重ね合わされ、ラミネートロール84、84により接合される。このとき、絶縁樹脂層は、ほぼ無溶剤状態の未硬化物又は半硬化物であるが、熱溶融により流動化しているので、基材81aに含浸される。接合後の接合物82aは、そのまま次工程に送ることもできるし、ラミネートロール85、85、同86、86、同87、87により、温度と圧力を作用させて、絶縁樹脂層付き金属箔と基材との接合温度を調整することもできる。接合後の接合物82bは、横搬送型の熱風乾燥装置88、88間を移送し、絶縁樹脂の溶融温度以上の温度で加熱処理する。これにより、接合物の内部に残存している非充填部分を消失させることができる。加熱処理後の金属張積層板82cは、ピンチロール89、89で挟みながら、これを連続的に巻き取ることにより、巻物形態の金属張積層板90とすることができる。
【0047】
また、本発明の金属張積層板は、当該金属張積層板を構成するエポキシ樹脂組成物の粘度が高いため、加熱加圧成形時のエポキシ樹脂組成物のフローが少ない。これにより、加熱加圧中の積層板内における溶融樹脂の不均一な移動が抑制され、金属張積層板表面のスジ状のムラを防止し、且つ均一な厚みとすることができる。
【0048】
(プリント配線板)
次に、本発明のプリント配線板について説明する。本発明のプリント配線板は、上記に記載の金属張積層板を内層回路基板に用いてなる。また、本発明のプリント配線板は、内層回路上に、上記に記載のプリプレグを絶縁層に用いてなる。また、本発明のプリント配線板は、内層回路上に、上記に記載のエポキシ樹脂組成物を絶縁層に用いてなる。これにより、耐熱性及び難燃性に優れ、且つ、ENEPIG法によるメッキ処理を行う場合に、表面処理を行わなくても導通不良が生じないプリント配線板を得ることができる。
【0049】
本発明においてプリント配線板とは、絶縁層の上に金属箔等の導電体で回路を形成したものであり、片面プリント配線板(一層板)、両面プリント配線板(二層板)、及び多層プリント配線板(多層板)のいずれであってもよい。多層プリント配線板とは、メッキスルーホール法やビルドアップ法等により3層以上に重ねたプリント配線板であり、内層回路基板に絶縁層を重ね合わせて加熱加圧成形することによって得ることができる。
前記内層回路基板は、例えば、本発明の金属張積層板の金属層に、エッチング等により所定の導体回路を形成し、導体回路部分を黒化処理したものを好適に用いることができる。
前記絶縁層としては、本発明のプリプレグ、又は本発明のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂フィルムを用いることができる。尚、前記絶縁層として、前記プリプレグ又は前記エポキシ樹脂組成物からなる樹脂フィルムを用いる場合は、前記内層回路基板は本発明の金属張積層板からなるものでなくてもよい。
【0050】
以下、本発明のプリント配線板の代表例として、本発明の金属張積層板を内層回路基板に用い、本発明のプリプレグを絶縁層として用いる場合の多層プリント配線板について説明する。
前記金属張積層板の片面又は両面に導体回路を形成し、内層回路基板を作製する。場合によっては、ドリル加工、レーザー加工によりスルーホールを形成し、メッキ等で両面の電気的接続をとることもできる。この内層回路基板の内層回路上に前記プリプレグを重ね合わせて加熱加圧形成することで絶縁層を形成する。同様にして、エッチング等で導体回路を形成した導体回路層と絶縁層とを交互に繰り返し形成することにより、多層プリント配線板を得ることができる。
【0051】
具体的には、前記プリプレグと前記内層回路基板とを合わせて、真空加圧式ラミネーター装置などを用いて真空加熱加圧成形させ、その後、熱風乾燥装置等で絶縁層を加熱硬化させる。ここで加熱加圧成形する条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度60〜160℃、圧力0.2〜3MPaで実施することができる。また、加熱硬化させる条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、時間30〜120分間で実施することができる。
【0052】
尚、次工程においてレーザーを照射し、絶縁層に開口部を形成するが、その前に絶縁層の基材(高分子フィルムシート31、保護フィルム75等)を剥離する必要がある。基材の剥離は、絶縁層を形成後、加熱硬化の前、又は加熱硬化後のいずれに行っても特に問題はない。
【0053】
次に、絶縁層にレーザーを照射して、開孔部を形成する。前記レーザーは、エキシマレーザー、UVレーザー及び炭酸ガスレーザー等が使用できる。
【0054】
レーザー照射後の樹脂残渣(スミア)等は過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤等により除去する処理、すなわちデスミア処理を行うことが好ましい。デスミア処理が不十分で、デスミア性が十分に確保されていないと、開孔部に金属メッキ処理を行っても、スミアが原因で上層金属配線と下層金属配線との通電性が十分に確保されなくなるおそれがある。また、平滑な絶縁層の表面をデスミア処理と同時に粗化することができ、続く金属メッキにより形成する導電配線回路と絶縁層の密着性を上げることができる。
【0055】
次に、外層回路を形成する。外層回路の形成方法は、金属メッキにより絶縁樹脂層間の接続を図り、エッチングにより外層回路パターン形成を行う。
【0056】
前記内層回路にさらに絶縁層を積層し、前記同様回路形成を行って外層回路としても良いが、多層プリント配線板では、外層回路形成後、最外層にソルダーレジストを形成する。ソルダーレジストの形成方法は、特に限定されないが、例えば、ドライフィルムタイプのソルダーレジストを外層回路に積層(ラミネート)し、露光、及び現像してソルダーレジストを形成する方法、又は液状レジストを印刷し、露光、及び現像してソルダーレジストを形成する方法が例示できる。尚、得られた多層プリント配線板を半導体装置に用いる場合、半導体素子を実装するため、多層プリント配線板に接続用電極部を設ける。接続用電極部は、金メッキ、ニッケルメッキ及び半田メッキ等の金属皮膜で適宜被覆することができる。
【0057】
前記金メッキの代表的な方法の1つとして、ニッケル−パラジウム−金無電解メッキ法がある。この方法では、接続用電極部に、クリーナー等の適宜の方法により前処理を行った後、パラジウム触媒を付与し、その後さらに、無電解ニッケルメッキ処理、無電解パラジウムメッキ処理、及び無電解金メッキ処理を順次行う。
ENEPIG法は、前記ニッケル−パラジウム−金無電解メッキ法の無電解金メッキ処理段階において、置換金メッキ処理を行う。下地メッキとしての無電解ニッケルメッキ皮膜と、無電解金メッキ皮膜との間に無電解パラジウムメッキ皮膜を設けることによって、接続用電極部における導体材料の拡散防止性、耐食性が向上する。下地ニッケルメッキ皮膜の拡散防止を図ることができるので、Au−Au接合の信頼性が向上し、また金によるニッケル酸化を防止することができるので、熱負荷の大きい鉛フリー半田接合の信頼性も向上する。ENEPIG法では、通常、無電解パラジウムメッキ処理を行う前に表面処理を行って、メッキ工程での導通不良の発生を防ぐ必要があり、導通不良が甚だしい場合には隣接する端子間でショートを起こす原因となる。一方、本発明のプリント配線板は、表面処理を行わなくても上記のような導通不良がなく、簡単にメッキ処理を行うことができる。
【0058】
(半導体装置)
次に、本発明の半導体装置について説明する。前記で得られたプリント配線板に半田バンプを有する半導体素子を実装し、半田バンブを介して、前記プリント配線板との接続を図る。そして、プリント配線板と半導体素子との間には液状封止樹脂を充填し、半導体装置を形成する。半田バンプは、錫、鉛、銀、銅、ビスマス等からなる合金で構成されることが好ましい。
【0059】
半導体素子とプリント配線板との接続方法は、フリップチップボンダー等を用いて、基板上の接続用電極部と半導体素子の半田バンプとの位置合わせを行ったあと、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、プリント配線板と半田バンプとを溶融接合することにより接続する。尚、接続信頼性を良くするため、予めプリント配線板上の接続用電極部に半田ペースト等、比較的融点の低い金属の層を形成しておいてもよい。この接合工程に先んじて、半田バンプ及び/又はプリント配線板上の接続用電極部の表層にフラックスを塗布することで接続信頼性を向上させることもできる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
(1)エポキシ樹脂組成物含有樹脂ワニスの調製
まず、シリカナノ粒子(平均粒子径56nm)9.950重量%と、粒子A(シリカ、アドマテックス社製、SO25R、平均粒子径0.5μm)54.725重量%とをジメチルアセトアミド、MEK(比率ジメチルアセトアミド:MEK=1:3)に分散させて、無機充填剤(シリカナノ粒子及びシリカ粒子)の濃度が60重量%の無機充填剤スラリーを調製した。次に、無機充填剤スラリーに固形エポキシ樹脂A(日本化薬(株)製、NC3000、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、重量平均分子量1300、軟化点57℃、エポキシ当量276g/eq)9.800重量%と、シアネート樹脂A(ロンザジャパン(株)製、PT30、ノボラック型シアネート樹脂、重量平均分子量380)17.500重量%と、硬化剤としてフェノール樹脂A(明和化成(株)製、MEH7851)7.700重量%と、エポキシシランカップリング剤(日本ユニカー社製、A187)0.325重量%とを溶解・混合させ、高速撹拌装置を用い撹拌して、エポキシ樹脂組成物が固形分基準で70重量%の樹脂ワニスを得た。
【0062】
(2)プリプレグの作製
前記樹脂ワニスをガラス織布(厚さ94μm、日東紡績製Eガラス織布、WEA−2116)に含浸し、180℃の加熱炉で2分間乾燥して、プリプレグ中のエポキシ樹脂組成物が固形分基準で約49重量%のプリプレグを得た。
【0063】
(3)金属張積層板の作製
前記プリプレグを4枚重ね、その両面に12μmの銅箔(三井金属鉱業社製、3EC−VLP箔)を重ねて、圧力3MPa、温度220℃で2時間加熱加圧成形し、厚さ0.124mmの両面に銅箔を有する金属張積層板を得た。
【0064】
(4)プリント配線板の製造
両面に銅箔を有する前記金属張積層板を、ドリル機で開孔後、無電解メッキで上下銅箔間の導通を図り、両面の銅箔をエッチングすることにより内層回路を両面に形成した(L(導体回路幅(μm))/S(導体回路間幅(μm))=50/50)。
次に、内層回路に過酸化水素水と硫酸を主成分とする薬液(旭電化工業(株)製、テックSO−G)をスプレー吹き付けすることにより、粗化処理による凹凸形成を行った。
【0065】
次に前記プリプレグを内層回路上に真空積層装置を用いて積層し、温度170℃、時間60分間加熱硬化し、積層体を得た。
その後、得られた積層体が有するプリプレグに、炭酸レーザー装置を用いてφ60μmの開孔部(ブラインド・ビアホール)を形成し、70℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレートコンパクト CP)に15分浸漬後、中和して粗化処理を行った。
次に、脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅メッキ皮膜による約0.5μmの給電層を形成した。この給電層表面に、厚さ25μmの紫外線感光性ドライフィルム(旭化成社製、AQ−2558)をホットロールラミネーターにより貼り合わせ、最小線幅/線間が20/20μmのパターンが描画されたクロム蒸着マスク(トウワプロセス社製)を使用して、位置を合わせ、露光装置(ウシオ電機社製UX−1100SM−AJN01)にて露光、炭酸ソーダ水溶液にて現像し、めっきレジストを形成した。
【0066】
次に、給電層を電極として電解銅めっき(奥野製薬社製81−HL)を3A/dm、30分間行って、厚さ約25μmの銅配線を形成した。ここで2段階剥離機を用いて、前記めっきレジストを剥離した。各薬液は、1段階目のアルカリ水溶液層にはモノエタノールアミン溶液(三菱ガス化学社製R−100)、2段階目の酸化性樹脂エッチング剤には過マンガン酸カリウムと水酸化ナトリウムを主成分とする水溶液(日本マクダーミッド社製、マキュダイザー9275、9276)、中和には酸性アミン水溶液(日本マクダーミッド社製マキュダイザー9279)をそれぞれ用いた。
【0067】
そして、給電層を過硫酸アンモニウム水溶液(メルテックス(株)製、AD−485)に浸漬処理することで、エッチング除去し、配線間の絶縁を確保した。次に、絶縁層を温度200℃、時間60分で最終硬化させ、最後に回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ社製、PSR4000/AUS308)を形成し、プリント配線板を得た。
前記プリント配線板の半導体素子の半田バンプ配列に相当する接続用電極部にENEPIG処理を施した。ENEPIG処理は、[1]クリーナー処理、[2]ソフトエッチング処理、[3]酸洗処理、[4]プレディップ処理、[5]パラジウム触媒付与、[6]無電解ニッケルメッキ処理、[7]無電解パラジウムメッキ処理、[8]無電解金メッキ処理の工程で行われた。
【0068】
(5)半導体装置の製造
上記ENEPIG処理を施されたプリント配線板を50mm×50mmの大きさに切断し使用した。半導体素子(TEGチップ、サイズ15mm×15mm、厚み0.8mm)は、Sn/Pb組成の共晶で形成された半田バンプを有し、半導体素子の回路保護膜がポジ型感光性樹脂(住友ベークライト社製、CRC-8300)で形成されたものを使用した。半導体装置の組み立ては、以下によって行われた。まず、半田バンプにフラックス材を転写法により均一に塗布し、次にフリップチップボンダー装置を用い、プリント配線板上に加熱圧着により半導体素子を搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4152S)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで半導体装置を得た。尚、液状封止樹脂の硬化条件は、温度150℃、120分の条件であった。
【0069】
(実施例2)
エポキシ樹脂組成物含有樹脂ワニスの成分を、固形エポキシ樹脂A8.400重量%、シアネート樹脂Aを15.000重量%、フェノール樹脂Aを6.600重量%、シリカナノ粒子9.950重量%、粒子B(シリカ、アドマテックス社製、SO32R、平均粒子径1.1μm)59.700重量%、エポキシシランカップリング剤0.350重量%とした以外は、実施例1と同様にした。
【0070】
(実施例3)
エポキシ樹脂組成物含有樹脂ワニスの成分を、固形エポキシ樹脂B(大日本インキ化学工業(株)製、EXA7320、ナフタレン型、重量平均分子量750、軟化点58℃、エポキシ当量250g/eq)13.860重量%、シアネート樹脂A13.860重量%、シリカナノ粒子9.950重量%、粒子A61.690重量%、硬化触媒A(四国化成工業(株)製、キュアゾール2P4MHZ、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール)0.280重量%、エポキシシランカップリング剤0.360重量%とした以外は、実施例1と同様にした。
【0071】
(実施例4)
シリカナノ粒子を6.965重量%、粒子Aを用いずに粒子Bを64.675重量%用いた以外は、実施例3と同様にした。
【0072】
(実施例5)
硬化触媒Aを用いずに、硬化触媒B(住友ベークライト(株)製、C05−MB、テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン−2,3−ジオキシ)フェニルシリケート)を0.280重量%用いた以外は、実施例4と同様にした。
【0073】
(実施例6)
エポキシ樹脂組成物含有樹脂ワニスの成分を、固形エポキシ樹脂A15.444重量%、半固形エポキシ樹脂D(DIC(株)製、HP4032D、ナフタレン型、分子量280、エポキシ当量143g/eq)1.931重量%、シアネート樹脂B(東都化成(株)製SN485の誘導体、ナフトール型)12.741重量%、マレイミド樹脂8.494重量%、シリカナノ粒子9.950重量%、粒子A41.790重量%、粒子C(シリコーン複合パウダー、信越化学工業(株)製、KMP600)8.955重量%、硬化触媒C(オクチル酸亜鉛)0.390重量%、エポキシシランカップリング剤0.305重量%とした以外は、実施例1と同様にした。尚、上記エポキシ樹脂が「半固形」とは、無溶剤の状態で、常温の範囲で一部は流動し、その他の部分は流動しない(これは融点が常温付近にある為)ことを意味する。
【0074】
(実施例7)
エポキシ樹脂組成物含有樹脂ワニスの成分を、固形エポキシ樹脂C(DIC(株)製、N665EXPS、クレゾールノボラック型、重量平均分子量1250、軟化点58℃、エポキシ当量201g/eq)17.820重量%、フェノール樹脂B(住友ベークライト(株)製、PR51470)11.880重量%、シリカナノ粒子9.950重量%、シリカ粒子A29.850重量%、粒子D(水酸化アルミニウム、日本軽金属(株)製、BE033、平均粒子径2μm)19.900重量%、粒子E(タルク、富士タルク工業(株)製、LMS200、平均粒子径5μm)9.950重量%、硬化触媒D(ジシアンジアミド)0.300重量%、エポキシシランカップリング剤0.350重量%とした以外は、実施例1と同様にした。
【0075】
(実施例8)
硬化触媒Aを用いずに、硬化触媒F(シグマアルドリッチ社製、テトラフェニルホスフォニウムテトラフェニルボレート)を0.280重量%用いた以外は、実施例4と同様にした。
【0076】
(実施例9)
金属張積層板の作製方法を以下に変更した以外は、エポキシ樹脂組成物含有樹脂ワニスの成分を実施例8と同じにした。樹脂ワニスを12μmの銅箔(三井金属鉱業社製、3EC−VLP箔)のマット面に流延塗布して、温度140℃で時間10分で溶剤を揮発乾燥させて、樹脂層の厚みが30μmになるようにした。前記樹脂層付きの銅箔を、ガラス織布(厚さ94μm、日東紡績製Eガラス織布、WEA−2116)の両面に樹脂層がガラス織布に接するように配し、圧力0.5MPa、温度140℃で1分間の条件で真空プレス中で加熱加圧して、エポキシ樹脂組成物を含浸させた。次いで圧力1MPa、温度220℃で2時間加熱加圧成形し、厚さ0.124mmの両面に銅箔を有する金属張積層板を得た。
【0077】
(比較例1)
シリカナノ粒子を用いず、粒子Bを69.650重量%とした以外は、実施例2と同様にした。
【0078】
(比較例2)
シリカナノ粒子を用いず、粒子Bを71.640重量%とした以外は、実施例5と同様にした。
【0079】
(比較例3)
エポキシ樹脂組成物含有樹脂ワニスの成分を、液状エポキシ樹脂E(東都化成(株)製、ZX1059、分子量330、エポキシ当量165g/eq)29.700重量%、シリカナノ粒子9.950重量%、シリカ粒子B59.700重量%、硬化触媒E(四国化成工業(株)製、2PHZ、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール)0.300重量%、エポキシシランカップリング剤0.350重量%とした以外は、実施例1と同様にした。尚、上記エポキシ樹脂が「液状」とは、無溶剤の状態で、常温の範囲で流動することを意味する。
【0080】
実施例及び比較例で得られたプリプレグ、金属張積層板、プリント配線板、及び半導体装置等について以下の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。得られた結果を表1に示す。
【0081】
(1)含浸性
得られた金属張積層板の断面観察を行った。断面観察には、走査電子顕微鏡を用いた。含浸性は、断面観察において、観察されたボイドの面積で以下のように評価した。
○:全面積10%未満の箇所で、未含浸ボイドが見られたが、金属張積層板は実用可能レベルであった。
△:全面積10〜30%の箇所で、未含浸ボイドが見られ、金属張積層板は実用不可であった。
×:全面積50%以上の箇所で、未含浸ボイドが見られ、金属張積層板は実用不可であった。
【0082】
(2)半田耐熱性
得られた金属張積層板から50mm角にサンプルを切り出し、3/4エッチングし、プレッシャークッカーを用いて121℃、2時間処理後、260℃の半田に30秒浸漬させ、膨れの有無を観察した。各符号は以下のとおりである。
○:異常なし
×:膨れが発生
【0083】
(3)タック性
25℃の環境下で、作製したプリプレグを100枚重ねて、72時間放置した。放置後のプリプレグを剥がした際の樹脂はがれ度合いを観察し、以下のとおり評価した。
○:樹脂が剥がれていない。
×:樹脂が剥がれている。
【0084】
(4)ENEPIG特性
以下の手順でENEPIG工程を行って作製したプリント配線板の細線間の金属析出をSEM観察により確認した。各実施例及び比較例で作製したプリント配線板をテストピースとして用いた。
[1]クリーナー処理
クリーナー液として上村工業(株)製ACL−007を用い、上記テストピースを液温50℃のクリーナー液に5分間浸漬した後、3回水洗した。
[2]ソフトエッチング処理
クリーナー処理後、ソフトエッチング液として過硫酸ソーダと硫酸の混液を用い、上記テストピースを液温25℃のソフトエッチング液に1分間浸漬した後、3回水洗した。
[3]酸洗処理
ソフトエッチング処理後、上記テストピースを液温25℃の硫酸に1分間浸漬した後、3回水洗した。
[4]プレディップ処理
酸洗処理後、上記テストピースを液温25℃の硫酸に1分間浸漬した。
[5]パラジウム触媒付与工程
プレディップ処理後、端子部分にパラジウム触媒を付与するために、パラジウム触媒付与液として上村工業(株)製KAT−450を用いた。上記テストピースを、液温25℃の当該パラジウム触媒付与液に2分間浸漬した後、3回水洗した。
[6]無電解Niめっき処理
パラジウム触媒付与工程の後、上記テストピースを液温80℃の無電解Niめっき浴(上村工業(株)製NPR−4)に35分間浸漬した後、3回水洗した。
[7]無電解Pdめっき処理
無電解Niめっき処理後、上記テストピースを液温50℃の無電解Pdめっき浴(上村工業(株)製TPD−30)に5分間浸漬した後、3回水洗した。
[8]無電解Auめっき処理
無電解Pdめっき処理後、上記テストピースを液温80℃の無電解Auめっき浴(上村工業(株)製TWX−40)に30分間浸漬した後、3回水洗した。
各符号は以下の通りである。
○:テストピース50μm×50μmの範囲で回路間の面積における金属析出部の割合が面積で5%以下
×:5%以上
【0085】
(5)難燃性
前記金属張積層板の製造において、前記プリプレグを10枚重ね、その両面に12μmの銅箔を重ねて、圧力3MPa、温度220℃で2時間加熱加圧成形し、厚さ1.02mmの両面金属張積層板を得た。前記で得られた金属張積層板の銅箔をエッチングし、UL−94規格に従い、1.0mm厚のテストピースを垂直法により測定し、以下のとおり評価した。
V−0:5本のテストピースはいずれも、一部燃焼した、又は、全く燃焼しなかった。
規格外:5本のテストピース中1本以上が全焼した。
NA:基材が組成物を含浸できないためテストピースを作成できなかった。
【0086】
(6)スジ状ムラの発生状況
図6は、実施例1で得られた金属張積層板の表面を撮影した写真である。写真に示したように、実施例1の金属張積層板の金属箔層の表面には、スジ状のムラが見られなかった。
【0087】
【表1】

【0088】
表1に記載されている評価結果より、以下のことがわかる。
比較例1及び比較例2では、本発明で特定したシリカナノ粒子を用いなかったことに起因し、タック性は良好であるものの、プリプレグ含浸性、半田耐熱性、ENEPIG特性、及び難燃性は実用可能なレベルに達していなかった。
比較例3では、本発明で特定した固形のエポキシ樹脂を用いなかったことに起因し、含浸性は良好であるものの、半田耐熱性、タック性、ENEPIG特性、及び難燃性は実用可能なレベルに達していなかった。
実施例1〜9で得られた本発明のプリプレグ、プリント配線板、及び半導体装置は、含浸性、半田耐熱性、タック性、ENEPIG特性、及び難燃性のすべてが良好であった。従って、本発明で特定した、固形のエポキシ樹脂と、シリカナノ粒子と、シリカ粒子とを含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物を用いることにより、性能の優れたプリプレグ、金属張積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得られることがわかる。
【符号の説明】
【0089】
1…基材
2…含浸槽
3…エポキシ樹脂ワニス
4…ディップロール
5…スクイズロール
6…乾燥機
7…プリプレグ
8…上部ロール
10…絶縁樹脂層付き金属箔
11…金属箔
12…絶縁樹脂層
20…基材
30…絶縁樹脂層付き高分子フィルムシート
31…高分子フィルムシート
32…絶縁樹脂層
40…プリプレグ
41…金属箔付きプリプレグ
42…高分子フィルムシート付きプリプレグ
51…金属張積層板
52…金属張積層板
61…絶縁樹脂層付き金属箔
62…基材
70a、70b…金属箔
70c、70d、70e…絶縁樹脂層付き金属箔
71…絶縁樹脂液
72…コンマロール
73…バックアップロール
74…熱風乾燥装置
75…保護フィルム
76…ラミネートロール
77…絶縁樹脂層付き金属箔
80…真空ラミネート装置
81、81a…基材
82a、82b…接合物
82c…金属張積層板
83…巻き取りロール
84、85、86、87…ラミネートロール
88…熱風乾燥装置
89…ピンチロール
90…金属張積層板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形のエポキシ樹脂と、平均粒子径が1nm以上100nm以下であるシリカナノ粒子と、平均粒子径が前記シリカナノ粒子の平均粒子径よりも大きく、且つ0.1μm以上5.0μm以下であるシリカ粒子と、を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記シリカナノ粒子の平均粒子径が40nm以上100nm以下である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、シアネート樹脂を含むものである請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、マレイミド樹脂を含むものである請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記固形のエポキシ樹脂は、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を基材に含浸してなることを特徴とするプリプレグ。
【請求項7】
基材中に請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を含浸してなる樹脂含浸基材層の少なくとも片面に金属箔を有することを特徴とする金属張積層板。
【請求項8】
請求項6に記載のプリプレグ又は当該プリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の少なくとも片面に金属箔を重ね、加熱加圧することにより得られる請求項7に記載の金属張積層板。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の金属張積層板を内層回路基板に用いてなることを特徴とするプリント配線板。
【請求項10】
内層回路上に、請求項6に記載のプリプレグを絶縁層に用いてなるプリント配線板。
【請求項11】
内層回路上に、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を絶縁層に用いてなるプリント配線板。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか一項に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−202140(P2011−202140A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230580(P2010−230580)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】