説明

エポキシ樹脂組成物の製造方法、エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂組成物の製造用液

【課題】自動加圧ゲル化装置に適用可能な注形用樹脂として、機械的強度に優れた2液性のエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂及び電融アルミナ又は焼結アルミナを含む第1液を調整し、次いで、アミノシランで表面処理した電融アルミナ又は焼結アルミナ、酸無水物及び硬化促進剤を含む第2液を調整し、次いで、前記第1液及び前記第2液を配合するとともに硬化させて、前記第1液及び前記第2液中の成分を含むエポキシ樹脂組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物の製造方法、エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂組成物の製造用液に関し、特に、SFガスを用いるガス絶縁開閉装置内で使用される注形絶縁物として用いる、自動加圧ゲル化法に適した注形用エポキシ樹脂組成物、およびコーテイング用エポキシ樹脂組成物、並びにその製造方法、その製造用液に関する。さらには、前記樹脂組成物を用いた注形品及びコーティング剤、並びにこれらを用いるガス絶縁開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
SFガスが充填されたガス絶縁開閉装置内で、遮断器や断路器を操作すると前記装置内でアークが飛び、前記装置内に充填されたSFが分解してSFやSOFなどの分解ガスが発生する。これらの分解ガスは装置内の微量水分と反応して、最終的にフッ酸(HF)ガスに変換する。
SF→SF,SOF
SF+HO→SOF+2HF
SOF+HO→SO+2HF
【0003】
このようにして形成されたHFガスは、前記装置を構成する注形樹脂中のシリカやFRP中のガラスと反応して潮解性のHSiFを形成し、それらの絶縁特性を大きく低下させる。
SiO+4HF→SiF+2H
SiF+2HF→HSiF
【0004】
したがって、ガス絶縁開閉装置内で用いられる絶縁スペーサなどの注形品にはHFガスに侵されないアルミナ充填のエポキシ注形品を適用している。また、FRPは耐SF分解ガス性のコーティングを施して使用するのが一般的であり、絶縁物以外の機器もHFガスに侵される恐れがある材料は同様に耐SF分解ガス性のコーテイングを施して使用している。この耐SF分解ガス性のコーテイング剤にも充填剤としてアルミナが配合される場合が多い。
【0005】
絶縁スペーサなどの注形品は一般に固形エポキシ樹脂、アルミナ、固形硬化剤を加熱しながらダイナミックミキサーで混合し、真空注形・硬化する方法が取られている。この方法は実績があるが、毎回混合容器の洗浄が必要であること、金型内での一次硬化に15時間程度を要し1日の製造個数は金型の個数に制約を受けることなどの問題があった。
【0006】
樹脂注入装置として、樹脂吐出用シリンダーポンプ(ドージングポンプ)を搭載した注入装置を使用し、樹脂混合にスタティックミキサーを適用すれば、装置の洗浄が不要で、連続注形が可能となる。更に、反応性の早い樹脂を使用して前記注入装置と加圧ゲル化法を組み合わせた自動加圧ゲル化法を適用すれば、1つの金型で数多くの注形品を連続的に注形・硬化することができる。従来法では絶縁スペーサの注形は1型に対し1日で1個しかできないが、自動加圧ゲル化法では1型で1日24個の絶縁スペーサを得ることが可能となる。しかし、従来の樹脂は流動性が悪いためスタティックミキサーに適さなかった。
【0007】
自動加圧ゲル化法を適用するためには、液状エポキシ樹脂、液状酸無水物を使用するとともに、これら少なくとも一方の液中にアルミナを配合した2液性エポキシ樹脂組成物とする必要がある。しかしながら、アルミナは酸無水物と粒子界面の接着性が悪いため、酸無水物側にアルミナを配合すると、これを用いた注形硬化物の機械的強度と耐クラック性が極端に低下し実用に耐えないものとなってしまう。したがって、従来は酸無水物側にアルミナを配合せず、エポキシ樹脂側のみにアルミナを配合していたため、エポキシ樹脂側の粘度が高く、装置への仕込み作業に多大な時間を要していた上に、機械強度も満足できるレベルではなかった。
【0008】
このようなアルミナ充填エポキシ樹脂組成物の機械的強度の改善手法としては、特許文献1に開示されているように、角の取れたアルミナをシランカップリング剤で表面処理し、これをエポキシ樹脂に含有させてエポキシ樹脂組成物を得る方法、特許文献2に開示されているように、アルミナをシランカップリング剤で表面処理した後、ドロマイトとの混合系を作製し、このような混合系からエポキシ樹脂組成物を得る方法、特許文献3では、球状アルミナとシリカとをエポキシ樹脂に配合してエポキシ樹脂組成物を得る方法などが開示されている。
【0009】
さらに、特許文献4には、特にスピロ環骨格エポキシ樹脂や臭素化エポキシ樹脂、ナフタレン環骨格エポキシ樹脂などの特殊なエポキシ樹脂と、酸無水物、硬化促進剤、カップリング剤、及び充填剤を配合してエポキシ樹脂組成物を得る方法が開示されている。また、特許文献5では、エポキシ樹脂に対してナノ粒子を配合したエポキシ樹脂組成物が開示されている。さらに、特許文献6では、エポキシ樹脂に対してゴム粒子を配合させることによってエポキシ樹脂組成物を得ることが開示されている。
【0010】
上述した従来のエポキシ樹脂組成物においては、いずれの場合も従来型の注形法を用いたものであって、2液性エポキシ樹脂組成物には何ら関係するものではない。したがって、自動加圧ゲル化法を用いて目的とするエポキシ樹脂組成物を得ることはできない。
【特許文献1】特許第2830301号公報
【特許文献2】特許第2847936号公報
【特許文献3】特開平7―150016号公報
【特許文献4】特開平7−242732号公報
【特許文献5】特開2006−57017号公報
【特許文献6】特開平7−109337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、自動加圧ゲル化装置に適用可能な注形用樹脂として、機械的強度に優れた2液性のエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく、本発明の一態様は、エポキシ樹脂及び電融アルミナ又は焼結アルミナを含む第1液を調整する工程と、アミノシランで表面処理した電融アルミナ又は焼結アルミナ、酸無水物及び硬化促進剤を含む第2液を調整する工程と、前記第1液及び前記第2液を配合するとともに硬化させて、前記第1液及び前記第2液中の成分を含むエポキシ樹脂組成物を得る工程と、を具えることを特徴とする、エポキシ樹脂組成物の製造方法に関する。
【0013】
また、本発明の一態様は、エポキシ樹脂及び電融アルミナ又は焼結アルミナを含むように調整された第1液、及び アミノシランで表面処理した電融アルミナ又は焼結アルミナ、酸無水物及び硬化促進剤を含むように調整された第2液を具えることを特徴とする、エポキシ樹脂組成物の製造用液に関する。
【0014】
本発明の上記態様によれば、エポキシ樹脂及び電融アルミナ又は焼結アルミナを含むように調整された第1液と、アミノシランで表面処理した電融アルミナ又は焼結アルミナ、酸無水物及び硬化促進剤を含むように調整された第2液とを準備し、これらの液を配合するとともに硬化させることによって、目的とするエポキシ樹脂組成物を得るようにしている。
【0015】
上述したように、アルミナは酸無水物と粒子界面の接着性が悪いため、酸無水物を含む液中にアルミナを配合すると、これを用いた得たエポキシ樹脂組成物の機械的強度と耐クラック性が極端に低下し実用に耐えないものとなってしまう。しかしながら、本態様では、アルミナの表面を予めアミノシランで表面処理しているので、前記アルミナはその表面に結合したアミノシランの存在によって前記酸無水物との接着性が増大する。したがって、このようなアルミナ及び酸無水物を配合させてエポキシ樹脂組成物を得ても、その機械的強度を十分に高く保持しておくことが可能となるとともに、耐クラック性をも向上させることができるようになる。
【0016】
また、前記アルミナと前記酸無水物との混合を、エポキシ樹脂を含む液とは別の液中で実施しているので、前記エポキシ樹脂を含む液の粘度が極端に高くなって装置への仕込み作業に多大な時間を要するということがなくなる。また、粘度の増大によって上述したアルミナなどの樹脂組成物中での分散性が低下してしまい、それに伴って目的とするエポキシ樹脂粗生物の機械的強度が劣化してしまうというような問題も生じない。
【0017】
換言すれば、本発明の上記態様によれば、自動加圧ゲル化装置に適用可能な注形用樹脂として、機械的強度に優れた2液性のエポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【0018】
なお、目的とするエポキシ樹脂組成物は、上記製造方法などを経ることによって得ることができるが、具体的には以下のような形態として得ることができる。すなわち、本発明の一態様において、前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、電融アルミナ又は焼結アルミナと、アミノシランで表面処理した電融アルミナ又は焼結アルミナと、酸無水物と、硬化促進剤とを含むことを特徴として、定義付けることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の上記態様によれば、自動加圧ゲル化装置に適用可能な注形用樹脂として、機械的強度に優れた2液性のエポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の詳細並びにその他の特徴及び利点について、発明を実施するための最良の形態に基づいて説明する。
【0021】
本実施態様において、最初に、エポキシ樹脂及び電融アルミナ又は焼結アルミナを含む第1液を調整する。このエポキシ樹脂は、1分子当り2個以上の1,2−エポキシ基を有する一般的なエポキシ樹脂で良く、代表的には液状のビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、脂環式ジグリシジルエステル、のいずれかを単独あるいは混合して用いる。
【0022】
なお、目的とする樹脂組成物に対して比較的高い耐熱性が要求される場合は、前記エポキシ樹脂に加えて、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、アルキル置換3官能型エポキシ樹脂、及びテトラフェニロールエタン型4官能エポキシ樹脂などの耐熱性附与エポキシ樹脂を追加のエポキシ樹脂として一種以上配合させることができる。なお、このような耐熱性付与エポキシ樹脂を、上記一般的なエポキシ樹脂の代わりに用いても良い。
【0023】
前記電融アルミナ又は前記焼結アルミナは汎用のものを用いることができるが、特にはα結晶性のアルミナを用いることが好ましい。このようなα結晶性のアルミナは、化学的に安定であるとともに、機械的強度に優れるなどの諸特性を有している。したがって、最終的に得るエポキシ樹脂組成物の化学的安定性及び機械的強度などをも向上させることができるようになる。
【0024】
なお、上記電融アルミナ又は前記焼結アルミナは、目的とするエポキシ樹脂組成物中で、充填剤として機能する。
【0025】
次に、本実施態様においては、アミノシランで表面処理した電融アルミナ又は焼結アルミナ、酸無水物及び硬化促進剤を含む第2液を調整する。前記電融アルミナ又は焼結アルミナは、上記第1液において使用するアルミナと同様に構成することができ、好ましくはα結晶性のアルミナを用いる。
【0026】
また、上記アルミナに対して表面処理を行うアミノシランは、前記アルミナの、同液中に含まれる酸無水物に対する接着性が向上するものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、及び3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランから選ばれる少なくとも一種を用いる。これによって、上述した作用効果をより顕著に発現させることができる。
【0027】
なお、前記電融アルミナ又は前記焼結アルミナに対する前記アミノシランの処理量が、0.1重量%〜3重量%であることが好ましい。前記処理量が、0.1重量%より少ない場合はアミノシランによる表面処理効果が小さく機械特性の改善度合いが少ない。一方、3重量%よりも多くなると、アルミナ表面に付着するカップリング剤が多重層状をなし、機械強度が低下する。また必要以上の使用はコストアップ要因となる。良好なアミノシラン処理は予めアルミナとアミノシランを混合し、乾燥することにより得られる。
【0028】
一方、アルミナに対してアミノシラン以外の表面処理剤を用いて処理を実施した場合、上述した酸無水物との接着性を増大させることはできない。
【0029】
また、アミノシランで表面処理した上記電融アルミナ又は前記焼結アルミナは、目的とするエポキシ樹脂組成物中で、充填剤として機能する。
【0030】
上記第2液中の酸無水物は、エポキシ樹脂と反応して三次元架橋網目構造を形成し、高い機械的強度を付与させるために用いるものである。このような酸無水物としては、4−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水添メチルナジック酸無水物などである。これらの酸無水物は、上述のような三次元架橋網目構造を簡易に構成するとともに、アミノシランで表面処理されたアルミナと高い接着性を呈するようになる。さらに、前記酸無水物は、アクリルゴムまたはMBSゴムまたはシリコーンゴムをコアとし、外皮にアクリルゴムまたは架橋化ゴムのシェルを有するコア−シェルゴムを分散した改質酸無水物として構成することもできる。
【0031】
また、上記第2液中の硬化促進剤は、第三アミンまたは第四アンモニウム化合物、イミダゾール、アルカリ金属アルコキシドなどが適しているが、これらに限定されるものではない。
【0032】
次に、上述のようにして得た第1液及び第2液を配合及び必要に応じて混合するとともに、加熱硬化させることによって、目的とするエポキシ樹脂組成物を得る。なお、加熱硬化は1段の処理で行うこともできるし、多段の処理で行うこともできる。すなわち、1次硬化の後、2次硬化を行うなどの方法を採用することができる。
【0033】
なお、上述した配合及び硬化を、上述した第1液及び第2液からなるエポキシ樹脂組成物製造用液の特徴である自動加圧ゲル化法を用いて行うこともできる。この方法は、所定の注入装置から上記第1液及び第2液を所定の金型内に充填し、この金型内で加熱硬化させてエポキシ樹脂組成物を自動的かつ連続的に得る方法である。この場合でも、前記アルミナと前記酸無水物との混合を、エポキシ樹脂を含む液(第1液)とは別の液(第2液)中で実施しているので、前記エポキシ樹脂を含む液の粘度が極端に高くなって前記注入装置から金型への仕込み作業に多大な時間を要するということがなくなる。
【0034】
以上のようにして得たエポキシ樹脂組成物は、内部にアルミナを含んでいるので、SFガスが分解することによって生成されるHFガスなどに対して高い耐性を示すようになる。したがって、前記エポキシ樹脂組成物を含む絶縁物は、耐SFガス絶縁物として良好に機能する。また、上記エポキシ樹脂組成物をコーティング剤として構成することもできる。この場合、前記コーティング剤で所定の絶縁物をコーティングすることによって、耐SFガス用部品を得ることができる。
【0035】
なお、上記絶縁物及び部品を用いることによって、耐SFガス絶縁開閉装置などの、SFガスに対して耐性を呈する実用機を製造することができる。
【実施例】
【0036】
次に、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では自動加圧ゲル化方法を用いることなく、汎用の硬化方法に基づいて目的とするエポキシ樹脂組成物を得た。
【0037】
(実施例1〜4)
最初に、エポキシ樹脂としてエピコート#828(ビスフェノールAタイプ、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)、アルミナとして平均粒径13μmのαアルミナを用いて第1液を調整した。次いで、平均粒径13μmのαアルミナにTSL8331(3−アミノプロピルトリエトキシシラン、GE東芝シリコーン製)の20wt%メタノール溶液を添加、ヘンシェルミキサーで1時間混合後、100℃で乾燥し、前記αアルミナの表面に対してアミノシラン処理を実施した。次いで、このようにしてアミノシラン処理されたαアルミナに、酸無水物としてHN2200(4−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、日立化成製)、及び硬化促進剤としてDY064(トリス(ジアミノメチル)フェノール、ハンツマン製)を添加して第2液を得た。
【0038】
なお、第2液を調整する際の、αアルミナに対するアミノシラン溶液の添加量を0.1重量%、1重量%、3重量%、及び5重量%と順次に変化させて実施例1〜4とした。
【0039】
次いで、上記第1液及び第2液を混合し、120℃に予熱した型に注形して0.5Torrで20分間真空脱泡した。型の中で120℃×1.5時間の一次硬化を行ない、離型後、150℃×15時間の二次硬化を行なった。このようにして得たエポキシ樹脂組成物に対して、ガラス転移温度、引張強度、曲げ強度及び破壊靭性値などの諸特性を調べて評価した。結果を表1に示す。
【0040】
(比較例1)
第2液を調整する際に、アミノシラン処理していないαアルミナを用いた以外は、実施例1〜4と同様にしてエポキシ樹脂組成物を作製した。次いで、このようにして得たエポキシ樹脂組成物に対して、実施例同様に、ガラス転移温度、引張強度、曲げ強度及び破壊靭性値などの諸特性を調べて評価した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1から明らかなように、実施例で得たエポキシ樹脂組成物は、比較例で得たエポキシ樹脂組成物に比較して、アミノシラン処理したαアルミナを含む第2液を用いて前記エポキシ樹脂組成物を作製していることより、引張強度、曲げ強度及び破壊靱性を勘案した総合的な機械的強度において、優れていることが分かる。
【0043】
(比較例2)
TSL8331(3−アミノプロピルトリエトキシシラン、GE東芝シリコーン製)に代えて、TSL8350(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、GE東芝シリコーン製)20wt%メタノール溶液を1%添加してαアルミナの表面処理を実施した以外は、実施例と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得た。次いで、このようにして得たエポキシ樹脂組成物に対して、実施例同様に、ガラス転移温度、引張強度、曲げ強度及び破壊靭性値などの諸特性を調べて評価した。結果を表2に示す。
【0044】
なお、表2においては、本比較例に対して、同じ量のアミノシランを用いて表面処理を実施した実施例2の結果を対比して示している。
【0045】
【表2】

【0046】
表2から明らかなように、第2液中のアルミナに対して、アミノシランに代えてグリシドキシシランを用いて表面処理を実施した場合は、引張強度、曲げ強度及び破壊靭性値のいずれの機械的特性においても劣化していることが判明した。
【0047】
(実施例5〜7)
最初に、エポキシ樹脂としてエピコート#828(ビスフェノールAタイプ、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)及びEOCN−103S(o−クレゾールノボラックタイプ、エポキシ当量215、日本化薬製)、アルミナとして平均粒径13μmのαアルミナを用いて第1液を調整した。次いで、平均粒径13μmのαアルミナにSH6026(3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランのメタノール溶液、東レ・ダウコーニング製)を1wt%添加、ヘンシェルミキサーで1時間混合後、100℃で乾燥し、前記αアルミナの表面に対してアミノシラン処理を実施した。
【0048】
次いで、このようにしてアミノシラン処理されたαアルミナに、酸無水物としてHN5500(メチルHHPA、日立化成製)にコアシェルゴム粒子スタフィロイドAC−3355(アクリル系コアシェルゴム、武田薬品工業製)及び硬化促進剤としてDY064(トリス(ジアミノメチル)フェノール、ハンツマン製)を添加して第2液を得た。
【0049】
なお、第2液を調整する際の、アミノシラン処理αアルミナの含有量を200重量部、250重量部、及び300重量部と順次に変化させて実施例5〜7とした。
【0050】
次いで、上記第1液及び第2液を混合し、120℃に予熱した型に注形して0.5Torrで20分間真空脱泡した。型の中で120℃×1.5時間の一次硬化を行ない、離型後、150℃×15時間の二次硬化を行なった。このようにして得たエポキシ樹脂組成物に対して、ガラス転移温度、引張強度、曲げ強度及び破壊靭性値などの諸特性を調べて評価した。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
(比較例3)
第2液を調整する際に、アミノシラン処理していないαアルミナを用いた以外は、実施例5〜7と同様にしてエポキシ樹脂組成物を作製した。次いで、このようにして得たエポキシ樹脂組成物に対して、実施例同様に、ガラス転移温度、引張強度、曲げ強度及び破壊靭性値などの諸特性を調べて評価した。結果を表3に示す。
【0053】
表3から明らかなように、実施例5〜7で得たエポキシ樹脂組成物は、比較例3で得たエポキシ樹脂組成物に対して、アミノシラン処理したαアルミナを含む第2液を用いて前記エポキシ樹脂組成物を作製していることより、引張強度、曲げ強度及び破壊靭性値のいずれの機械的特性においても優れていることが判明した。
【0054】
以上、本発明について具体例を挙げながら詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂及び電融アルミナ又は焼結アルミナを含む第1液を調整する工程と、
アミノシランで表面処理した電融アルミナ又は焼結アルミナ、酸無水物及び硬化促進剤を含む第2液を調整する工程と、
前記第1液及び前記第2液を配合するとともに硬化させて、前記第1液及び前記第2液中の成分を含むエポキシ樹脂組成物を得る工程と、
を具えることを特徴とする、エポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記アミノシランは、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、及び3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記電融アルミナ又は前記焼結アルミナに対する前記アミノシランの処理量が、0.1重量%〜3重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂は、1分子当り2個以上の1,2−エポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂は、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、アルキル置換3官能型エポキシ樹脂、及びテトラフェニロールエタン型4官能エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の追加のエポキシ樹脂を含むことを特徴とする、請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記電融アルミナ又は前記焼結アルミナは、α−結晶性のアルミナであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一に記載の方法で製造されたことを特徴とする、エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
エポキシ樹脂と、電融アルミナ又は焼結アルミナと、アミノシランで表面処理した電融アルミナ又は焼結アルミナと、酸無水物と、硬化促進剤とを含むことを特徴とする、エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記アミノシランは、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、及び3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項8に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
前記アミノシランの含有量が、前記電融アルミナ又は焼結アルミナに対して0.1重量%〜3重量%であることを特徴とする、請求項8又は9に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂は、1分子当り2個以上の1,2−エポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
前記エポキシ樹脂は、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、アルキル置換3官能型エポキシ樹脂、及びテトラフェニロールエタン型4官能エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の追加のエポキシ樹脂を含むことを特徴とする、請求項11に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
前記電融アルミナ又は前記焼結アルミナは、α−結晶性のアルミナであることを特徴とする、請求項8〜12のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
請求項7〜13のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物を含むことを特徴とする、耐SFガス絶縁物。
【請求項15】
請求項14に記載の絶縁物を含むことを特徴とする、耐SFガス絶縁開閉装置。
【請求項16】
請求項7〜13のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物を含むことを特徴とする、コーティング剤。
【請求項17】
請求項16に記載のコーティング剤を含むことを特徴とする、耐SFガス用部品。
【請求項18】
請求項17に記載の部品を含むことを特徴とする、耐SFガス絶縁開閉装置。
【請求項19】
エポキシ樹脂及び電融アルミナ又は焼結アルミナを含むように調整された第1液、及び アミノシランで表面処理した電融アルミナ又は焼結アルミナ、酸無水物及び硬化促進剤を含むように調整された第2液を具えることを特徴とする、エポキシ樹脂組成物の製造用液。
【請求項20】
前記アミノシランは、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、及び3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項19に記載のエポキシ樹脂組成物の製造用液。
【請求項21】
前記電融アルミナ又は前記焼結アルミナに対する前記アミノシランの処理量が、0.1重量%〜3重量%であることを特徴とする、請求項19又は20に記載のエポキシ樹脂組成物の製造用液。

【公開番号】特開2009−67884(P2009−67884A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237454(P2007−237454)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(395002434)東芝変電機器テクノロジー株式会社 (59)
【Fターム(参考)】