説明

エポキシ樹脂組成物及びそれを使用してなるプリント基板

【課題】低誘電性、難燃性及び煮沸後の半田耐熱性に優れたプリント基板及びそれに用いるエポキシ樹脂組成物の提供。
【解決手段】エポキシ樹脂、硬化剤及び反応性難燃剤を含有するエポキシ樹脂組成物であって、前記硬化剤が下記式(I)で表されるビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物、及び該エポキシ樹脂組成物を使用してなるプリント配線基板。但し、式中のmは0〜400の整数であり、X1〜X4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基である。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエポキシ樹脂組成物及び該組成物を使用してなるプリント基板に関し、詳しくは、エポキシ樹脂、ビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂及び反応性難燃剤を含有してなり、低誘電性、難燃性、煮沸後における半田耐熱性に優れたエポキシ樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物は、優れた電気的性能と接着力を有するため、電気・電子機器のプリント基板等の層間絶縁材料としての需要が高い。
特に、現在の電子機器においては、高速且つ大容量の情報を送受信可能とすることが求められているが、機器の小型化により、配線の微細化が進行するにつれ、従来の層間絶縁材料では配線間容量が大きいために、電気信号の伝達の遅延が大きくなり、高速且つ大容量の情報の送受信の妨げとなっていた。
この遅延時間は、配線間容量に比例するので、層間絶縁材料を低誘電率化することによって、配線間容量を低減すれば、電気信号の伝達の高速化が図れる。
【0003】
更に、サーバーやルーターを始めとする通信ネットワーク機器向けのプリント配線基板は、配線距離が長くなるために、伝達損失が高くなる傾向がある。
伝達損失は、層間絶縁材料の誘電率と誘電正接に比例するので、伝達損失を低減するためには、誘電率及び誘電正接を低減することが必要である。
一般的に、層間絶縁材料の誘電率は4.2以下であることが好ましく、更に4.1以下であることが好ましい。
また、層間絶縁材料の誘電正接は0.01以下であることが好ましい。
【0004】
エポキシ樹脂の低誘電性を改善する方法として、シリカフィラーを増量する方法が挙げられるが、この方法では、誘電正接を低減することはできるものの、誘電率が上昇するという問題点がある。
他の方法として、フッ素系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等の、低誘電性に優れた樹脂を添加することが挙げられるが、これらの樹脂は、エポキシ樹脂との相溶性が悪いために、使用するエポキシ樹脂が限定される上、融点が高いのでプリプレグ化が困難であり、また、添加量を増加すると、接着力が低下するという問題点がある。
【0005】
また、プリント基板は樹脂製であるため熱の影響を受けやすいが、機器の小型化により、部品が高密度化して高熱が発生しやすくなるので、耐熱性と共に難燃性の高いことが必要とされる。
更に、基板の高密度化が進み、部品の実装と基板の煮沸洗浄が繰り返し行なわれる傾向にあるが、煮沸洗浄によって銅箔と基板との接着力が低下し、半田の熱によってパターンが基板から剥がれる恐れがある。従って、プリント基板には煮沸後の半田耐熱性を有することが必要とされる。
【0006】
例えば、耐熱性が改善されたプリント基板用樹脂組成物として、ビフェニレンアラルキル型エポキシ樹脂、ノボラック型フェノール樹脂及びポリアミドイミドを組み合わせてフレキシブルプリント配線板に使用することが開示されている(特許文献1、2)が、ポリアミドイミドとエポキシ樹脂との相性がよくないために、各成分の分子量や配合比の調整が煩雑になるという問題点があった。
【0007】
また、半田耐熱性が改善されたエポキシ樹脂組成物として、ビフェニレンアラルキル型エポキシ樹脂及びビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂を組み合わせて使用することが開示されている(特許文献3)が、煮沸後の半田耐熱性は十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−346256号公報
【特許文献2】特開2004−359849号公報
【特許文献3】特開2003−105059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の第1の目的は、難燃性、低誘電性及び煮沸後の半田耐熱性に優れたプリント配線基板に好適なエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、難燃性、煮沸後の半田耐熱性及び低誘電性に優れたプリント配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記の諸目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、エポキシ樹脂及び硬化剤としてビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂を使用すると共に、反応性難燃剤を配合することにより得られたエポキシ樹脂組成物を用いたプリント基板が、耐熱性及び低誘電性に優れていると共に、煮沸後の半田耐熱性にも優れていることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
即ち本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤及び反応性難燃剤を含有するエポキシ樹脂組成物であって、前記硬化剤が下記式(I)で表されるビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物、及び該エポキシ樹脂組成物を使用してなるプリント配線基板である。

但し、上式中のmは0〜400の整数であり、X1〜X4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、Zは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は下記式で表される基である。

但し、Tは直接結合、メチレン、エチリデン、プロピリデン、-O-、-S-又は-SO2-である。
【0012】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、前記エポキシ樹脂として、少なくとも下記式(II)で表されるビフェニレンアラルキル型エポキシ化合物が使用されていることが好ましい。

但し、上式中のnは0〜50の整数であり、X1〜X4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、Yは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は下記式で表される基である。

但し、Tは直接結合、メチレン、エチリデン、プロピリデン、-O-、-S-又は-SO2-である。
また、前記反応性難燃剤は、下記一般式(III)で表されるリン酸アマイド化合物であることが好ましい。

但し、上式中のR1、R2及びR3は水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基若しくはシクロアルキル基、又はハロゲン原子であり、Z及びZ2は直接結合、炭素原子数1〜4のアルキレン基又はアルキリデン基であり、環Cは炭素原子数6〜18のアリーレン基、シクロアルキレン基、アリーレン-アルキレン-アリーレン基又はアリーレン-アルキリデン-アリーレン基である。
更に前記リン酸アマイド化合物は、下記一般式(III-1)で表されるリン酸アマイド化合物であることが好ましい。

本発明のエポキシ樹脂組成物は、更にアミン系エポキシ樹脂用硬化剤を含有してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエポキシ樹脂組成物によって、低誘電性、難燃性及び煮沸後の半田耐熱性に優れたプリント配線基板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、硬化剤として、下記一般式(I)で表されるビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂を含有する。

式中のmは0〜400の整数である。mが400を超えると、粘度が高くなりすぎて、溶剤に溶解させるのが困難になる。
また、X1〜X4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、Zは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は下記式で表される基である。

但し、Tは直接結合、メチレン、エチリデン、プロピリデン、-O-、-S-又は-SO2-である。
【0015】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物においては、前記ビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂に他のフェノール樹脂を組み合わせて使用してもよい。
他のフェノール樹脂としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、第三ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、シクロヘキシルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4'-チオジフェノール、ジヒドロキシジフェニルメタン、ナフトール、テルペンフェノール、フェノール化ジシクロペンタジエン等のフェノール類と、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類より合成されるフェノール樹脂が挙げられる。
これらのフェノール樹脂の使用量は、エポキシ樹脂100質量部に対し0〜100質量部であることが好ましい。
【0016】
本発明で使用するエポキシ樹脂としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、ビスフェノールF、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、ビスフェノールA、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホニルビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール又はビスフェノールAのエチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類;グリシジルメタクリレートの単独重合体または共重合体;N,N-ジグリシジルアニリン、ビス(4-(N-メチル-N-グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体;及びトリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物が挙げられる。
【0017】
また、これらのエポキシ樹脂は、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーによって内部架橋されたものでも、多価フェノール、ポリアミン、カルボニル基含有化合物、ポリリン酸エステル等の多価の活性水素化合物で高分子量化されたものでもよい。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、より優れた難燃性を得るために、エポキシ樹脂として、少なくとも下記一般式(II)で表されるビフェニレンアラルキル型エポキシ樹脂を使用することが好ましい。

但し、式中のnは0〜50の整数である。nが50を超えると粘度が高くなり過ぎて、溶剤に溶解させるのが困難になる。
また、X1〜X4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、Zは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は下記式で表される基である。

但し、Tは直接結合、メチレン、エチリデン、プロピリデン、-O-、-S-又は-SO2-である。
本発明においては、前記エポキシ樹脂の1種のみを使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0019】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物においては、煮沸後の半田耐熱性を良好にするために反応性難燃剤を使用する。
反応性難燃剤としては、例えば、下記の一般式(III)〜(V)のリン系反応性難燃剤等が挙げられる。

但し、式中のR1、R2及びR3は水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基若しくはシクロアルキル基、又はハロゲン原子であり、Z及びZは直接結合、炭素原子数1〜4のアルキレン基又はアルキリデン基であり、環Cは炭素原子数6〜18のアリーレン基、シクロアルキレン基、アリーレン-アルキレン-アリーレン基又はアリーレン-アルキリデン-アリーレン基である。

但し、式中のR1は水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基若しくはシクロアルキル基、又はハロゲン原子である。

但し、式中のR1は水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基若しくはシクロアルキル基、又はハロゲン原子である。
【0020】
これらの反応性難燃剤の中でも、より優れた低誘電性を得るためには、上記一般式(III)で表されるリン酸アマイド化合物を使用することが好ましく、更に、該リン酸アマイド化合物は、下記一般式(III-1)で表されるリン酸アマイド化合物であることが好ましい。

【0021】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、エポキシ樹脂、前記式(I)で表されるビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂、及び反応性難燃剤の使用量を、用途に応じて適宜変えることができる。前記ビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂の使用量は、前記エポキシ樹脂100質量部に対して5〜150質量部であることが好ましく、10〜100質量部であることがより好ましい。
また、前記反応性難燃剤の使用量は、前記エポキシ樹脂100質量部に対して5〜100質量部であることが好ましく、8〜50質量部であることがより好ましい。
【0022】
更に、本発明の樹脂組成物においては、エポキシ樹脂組成物の粘度、硬化特性や硬化後の物性などを制御するために、前記ビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂に他のエポキシ樹脂硬化剤を組み合わせて用いることもできる。
他の硬化剤としては、潜在性硬化剤、酸無水物、ポリアミン化合物等が挙げられる。
これらの硬化剤意の使用量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.001〜50質量部であることが好ましい。
【0023】
上記潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド、ヒドラジド、イミダゾール化合物、アミンアダクト、スルホニウム塩、オニウム塩、ケチミン、酸無水物、三級アミンなどが挙げられる。
これらの潜在性硬化剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物を、取り扱いが容易な一液型の硬化性組成物とすることができるので好ましい。
【0024】
酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物などが挙げられる。
【0025】
ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどの脂環族ポリアミン、m-キシレンジアミンなどの芳香環を有する脂肪族アミン、m-フェニレンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、α,α-ビス(4-アミノフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンなどの芳香族ポリアミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、2,4-ジアミノ−6(2'-メチルイミダゾール(1'))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ−6(2'-ウンデシルイミダゾール(1'))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2'-エチル,4-メチルイミダゾール(1'))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-3,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-3,5-ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類、及び、それらイミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類などのイミダゾール化合物;2-フェニル-4-ヒドロキシ-5-メチルトリアゾール等のトリアゾール化合物等が挙げられる。
【0026】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、添加剤として必要に応じて、天然ワックス類、合成ワックス類および長鎖脂肪族酸の金属塩類等の可塑剤、酸アミド類、エステル類、パラフィン類などの離型剤、ニトリルゴム、ブタジエンゴム等の応力緩和剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤、染料や顔料等の着色剤、酸化安定剤、光安定剤、耐湿性向上剤、チキソトロピー付与剤、希釈剤、消泡剤、他の各種の樹脂、粘着付与剤、帯電防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、さらには、アルコール類、エーテル類、アセタール類、ケトン類、エステル類、アルコールエステル類、ケトンアルコール類、エーテルアルコール類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類やエステルエーテル類、芳香族系溶剤等の有機溶剤等を配合することもできる。
【0027】
本発明のプリント基板は、本発明のエポキシ樹脂組成物をガラスクロスに塗布してなるプリプレグ及び銅箔を積層し、公知の方法により加熱及び加圧を行なうことにより得られる。
プリプレグの枚数は必要に応じて変えることができる。
【0028】
[実施例及び比較例]
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
下記表に示した配合の樹脂組成物を、ディップコーターを用いてIPC規格1078のガラスクロスに塗布して、プリプレグとした。このプリプレグを用いて以下の4項目を評価した。
【0030】
<誘電率、誘電正接>
前記プリプレグ12枚を積層した後、厚さ18μmの銅箔で挟み、真空プレス機を用いて圧力30kgf/cm2、190℃、90分の条件で加圧して、硬化させ、銅張積層基板(CCL)を作製した。
前記基板をエッチング液により銅箔を全て除去した後、インピーダンスアナライザーを用いて、誘電率及び誘電正接を測定した。測定周波数は1GHzとした。
【0031】
<難燃性>
前記プリプレグ4枚積層し、更に、その上下に厚さ18μmの銅箔を積層したものを、真空プレス機を用いて、190℃、圧力30kgf/cm2の条件で90分間加圧し、CCLを作製した。得られた基板の銅箔をエッチング液により全て除去し、UL-94に準じた条件で燃焼試験を実施した。
【0032】
<煮沸後半田耐熱性>
予め回路が形成された基板の上下に前記プリプレグを1枚ずつ積層し、更にその上下に厚さ18μmの銅箔を積層したものを190℃、圧力30kgf/cm2の条件で90分間加圧し、ビルドアップ積層基板を作製した。
得られたビルドアップ基板の銅箔をエッチング液により全て除去した後、25mm角にカットして試験片とした。
得られた試験片を2時間煮沸した後、半田浴に20秒間浸漬し、基板の膨れの発生の有無を確認した。
試験は、半田の温度260℃及び280℃それぞれについて、2片の試験片を使用して行い、下記の基準で評価し、合格は○○のみとした。
○○:2片とも膨れ無し
○×:1片に膨れあり
××:2片とも膨れあり
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

* NR:V-0〜V-2に規定される時間内に試験片の燃焼が終わらなかった。
【0035】
上記表1及び2に示された化合物等は、以下の通りである。
エポキシ樹脂1:NC-3000H(日本化薬(株)製ビフェニレンアラルキル型エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂2:EP-4100E((株)ADEKA製ビスフェノール型エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂3:HP-7200((株)DIC製フェノール−ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂4:JER1031S(三菱樹脂製テトラキスエポキシ樹脂)
エポキシ樹脂5:EOCN-102(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)
フェノール樹脂1:MEH-7851-H(明和化成製ビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂)
フェノール樹脂2:PSM-4327(群栄化学製ノボラック型フェノール樹脂)
フェノール樹脂3:DPP-6095L(新日化製ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂)
反応性難燃剤-1:下記のリン酸アマイド化合物

反応性難燃剤-2:下記のリン酸化合物

反応性難燃剤-3:下記のリン酸化合物

非反応性難燃剤:ポリフェニルホスファゼン
硬化剤:2-フェニル-4,5-ヒドロキシジメチルトリアゾール
フィラー1:水酸化アルミニウム
フィラー2:シリカ
【0036】
表1及び2に示された結果から明らかなように、硬化剤のフェノール樹脂として、ビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂以外のフェノール樹脂のみを配合したエポキシ樹脂組成物を使用したプリント基板は、難燃性を有しておらず、煮沸後の半田耐熱性が劣るものであることが確認された。
また、反応性難燃剤を配合せず、非反応性難燃剤を配合した場合には、煮沸後の半田耐熱性が劣ることが確認された。
【0037】
これに対してエポキシ樹脂、前記式(I)で表わされるビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂及び反応性難燃剤を使用した本発明のエポキシ樹脂組成物を用いたプリント基板は、低誘電性、難燃性、煮沸後の半田耐熱に優れたものであることが確認された。
特に、エポキシ樹脂としてビフェニレンアラルキル型エポキシ樹脂を使用した場合には、難燃性に優れたものが得られると共に、反応性難燃剤として前記式(III-1)で表されるリン酸アマイド化合物を使用した場合には、より優れた低誘電性が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いたプリント基板は、難燃性及び煮沸後の半田耐熱性に優れている上、低誘電率及び低誘電正接であるため、大容量の情報を高速で送受信する必要がある電子機器に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤及び反応性難燃剤を含有するエポキシ樹脂組成物であって、前記硬化剤が下記式(I)で表されるビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物;

但し、式中のmは0〜400の整数であり、X1〜X4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、Zは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は下記式で表される基である;

但し、Tは直接結合、メチレン、エチリデン、プロピリデン、-O-、-S-又は-SO2-である。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂として、少なくとも下記式(II)で表されるビフェニレンアラルキル型エポキシ樹脂が使用されている、請求項1に記載されたエポキシ樹脂組成物;

但し、式中のnは0〜50の整数であり、X1〜X4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、Yは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は下記式で表される基である;

但し、Tは直接結合、メチレン、エチリデン、プロピリデン、-O-、-S-又は-SO2-である。
【請求項3】
前記反応性難燃剤が、下記一般式(III)で表されるリン酸アマイド化合物である、請求項1又は2に記載されたエポキシ樹脂組成物;

但し、式中のR1、R2及びR3は水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基若しくはシクロアルキル基又はハロゲン原子であり、Z1及びZ2は直接結合、炭素原子数1〜4のアルキレン基又はアルキリデン基であり、環Cは炭素原子数6〜18のアリーレン基、シクロアルキレン基、アリーレン-アルキレン-アリーレン基又はアリーレン-アルキリデン-アリーレン基である。
【請求項4】
前記リン酸アマイド化合物が、下記一般式(III-1)で表されるリン酸アマイド化合物である、請求項3に記載されたエポキシ樹脂組成物。

【請求項5】
更に、アミン系エポキシ樹脂用硬化剤を含有する、請求項1〜4の何れかに記載されたエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載されたエポキシ樹脂組成物を使用してなるプリント配線基板。

【公開番号】特開2013−76055(P2013−76055A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108297(P2012−108297)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】