説明

エポキシ樹脂組成物及び絶縁接着剤

【課題】絶縁接着剤として、ガラス転移温度(Tg)が高く、低弾性率(応力緩和性)及び低熱膨張率の各特性に優れた低弾性熱硬化性樹脂用エポキシ樹脂組成物、及び、電気部品等に好適な絶縁接着剤を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)コアシェル型低弾性フィラー及び(C)ポリアミド樹脂を含有して得られるエポキシ樹脂組成物、及び、該組成物を含有する熱硬化性絶縁接着剤で、前記ポリアミド樹脂(C)の含有量が、エポキシ樹脂(A)100質量部に対し50〜150質量部であり、コアシェル型低弾性フィラー(B)の含有量が全配合物中の20〜50質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエポキシ樹脂組成物及び絶縁接着剤に関し、特に、エポキシ樹脂、低弾性フィラー及びポリアミド樹脂を適量含有してなり、絶縁接着剤として好適なエポキシ樹脂組成物及び該組成物から得られる絶縁接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
低弾性熱硬化性樹脂は、衝撃吸収性に優れるだけでなく、その応力緩和能によって、外力によるひずみ及び硬化物中のひずみを緩和することができるため、種々の被着体に対して高い接着力を発現することが知られている。特に、衝撃試験や熱サイクル試験等、ひずみが発生しやすい構造体の接着剤として低弾性熱硬化性樹脂は好適に用いられているが、一般的に、熱膨張率が高い上ガラス転移点(Tg)が低いという欠点があった。
【0003】
例えば、液晶性ポリマー、エポキシ樹脂および硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物である、低弾性熱硬化性樹脂が既に提案されている(特許文献1)が、ここで得られる樹脂は、熱膨張性が十分に低くはないという欠点があった。また、エポキシ樹脂、架橋微粒子及び硬化剤を含有する低弾性率熱硬化性樹脂組成物(特許文献2)の場合には、耐熱性が不十分であるだけでなく熱膨張性も十分に低くはないという欠点があった。更に、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、硬化促進剤、コアシェル構造架橋ゴムからなる絶縁樹脂組成物(特許文献3)の場合には、低弾性で且つ熱膨張性が十分に低いという要求が満たされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−194687号公報
【特許文献2】特開2005−36136号公報
【特許文献3】特開2001−123044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の第1の目的は、絶縁接着剤として好適な低弾性熱硬化性樹脂用エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、低弾性率(応力緩和性)、高いガラス転移温度(Tg)、及び低熱膨張率の各特性に優れた、絶縁接着剤を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の諸目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、エポキシ樹脂、コアシェル型低弾性フィラー及びポリアミド樹脂を所定量含有してなるエポキシ樹脂組成物が、上記目的を達成し得ることを見出し本発明に到達した。
【0007】
即ち本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)コアシェル型低弾性フィラー及び(C)ポリアミド樹脂を含有して得られるエポキシ樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂(C)の含有量が、エポキシ樹脂(A)100質量部に対し50〜150質量部であり、コアシェル型低弾性フィラー(B)の含有量が全配合物中の20〜50質量%であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物、及び、該組成物を含有してなる絶縁接着剤である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、低弾性率(応力緩和性)であるだけでなく、ガラス転移温度(Tg)が高く、熱膨張率が低いため熱応力に対する信頼性が高い。加えて、シリコンウェハに対しても十分な接着性を有している上良好な絶縁性を示すため、熱サイクル試験や衝撃試験が要求される電子部品用絶縁接着剤として、また、それ自身を絶縁層とする電子基板などの用途に好適に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明に使用される(A)成分であるエポキシ樹脂としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族または脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類およびグリシジルメタクリレートの単独重合体または共重合体;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物があげられる。
【0010】
また、これらのエポキシ樹脂は末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されたものあるいは多価の活性水素化合物(多価フェノール、ポリアミン、カルボニル基含有化合物、ポリリン酸エステル等)で高分子量化したものでもよい。本発明においては、特にナフタレン型エポキシ樹脂が、高いガラス転移温度を有すると共に熱膨張性が低いため好ましい。
【0011】
本発明に使用される(B)成分であるコアシェル型低弾性フィラーとは、エラストマー又はゴム状のポリマーを主成分とするコア層と、ゴム弾性を示さない架橋ポリマー成分からなるシェル層とから構成されるポリマー粒子である。この粒子の粒径は特に限定されるものではないが、0.01〜50μm程度であることが好ましい。粒径が大きいと絶縁性が低下するおそれがあり、粒径が小さすぎると、樹脂組成物の粘度が上がり、また凝集し易くなるおそれがあるため好ましくない。
本発明で使用することができるコアシェル型低弾性フィラーとしては、例えば、株式会社信越シリコーン製のKMP−605(商品名)、ガンツ化成株式会社製のスタフィロイドAC−4030(商品名)、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製のGENIOPERL P52(商品名)等があげられる。
【0012】
本発明で使用する(C)成分であるポリアミド樹脂としては、汎用のポリアミド樹脂を挙げることができるが、本発明においては、その繰り返し単位中にフェノール性水酸基を有し、下記一般式(I)又は(II)で表されるポリアミド樹脂を使用することが、エポキシ樹脂と反応させることにより硬化物が強靭となるため好ましい。
【0013】

但し(I)式中の環Aは、炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらはハロゲン原子、水酸基、及び/又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていても良い。(I)式中のRは炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基又はアリーレン基若しくは炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらはハロゲン原子、水酸基及び/又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。
【0014】

但し(II)式中の環Bは、炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリール基を表し、これらはハロゲン原子、水酸基及び/又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。
【0015】
前記一般式(I)における環A又は一般式(II)における環Bで表される、炭素原子数6〜18のアリーレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,5−ナフチレン基、2,5−ナフチレン基、アントラセン−ジイル、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−p−ターフェニレン基、4,4’−m−ターフェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,5−ジメチル−1,4−フェニレン基などが挙げられる。
【0016】
前記一般式(I)における環A又は一般式(II)における環Bで表される炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基としては、メチリデンジフェニレン基、エチリデンジフェニレン基、プロピリデンジフェニレン基、イソプロピリデンジフェニレン基、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェニレン基、プロピリデン−3,3’,5,5’−テトラフルオロジフェニレン基、フルオレン−9−イリデンジフェニレン基などが挙げられる。
【0017】
前記一般式(I)におけるRで表される炭素原子数2〜10のアルキレン基としては、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレンなどが挙げられる。
【0018】
前記一般式(I)におけるRで表される炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基としては、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビシクロヘキサン、ジシクロヘキサンなどに係る2価の基が挙げられる。
【0019】
前記一般式(I)におけるRで表されるアリーレン基としては、環Aにおけるものと同様の基が挙げられる。
【0020】
前記一般式(I)におけるRで表されるアルキリデンジアリール基としては、環Aにおけるものと同様の基が挙げられる。
【0021】
本発明で使用される前記一般式(I)のポリアミド化合物の構造には、フェノール性水酸基と該フェノール性水酸基に隣接するアミド基とで、脱水閉環した下記一般式(VI)の構造が含まれる。
【0022】

但し、(VI)式中の環A及びRは、前記一般式(I)における環A及びRと同じである。
【0023】
本発明で使用するポリアミド化合物(C)としては、その硬化物の物性(高いガラス転移温度、低い線膨張係数、引張強度、伸び、可撓性)の点から、繰り返し単位中に、前記一般式(I)又は(II)の構造のみのものを含む、下記一般式(III)又は(IV)の構造を有するものが好ましい。
【0024】

但し、(III)式中の環Aは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらはハロゲン原子、水酸基及び/又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていても良い。Rは炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基又はアリーレン基、若しくは炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらはハロゲン原子、水酸基及び/又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。nは正数である。
【0025】

但し、(IV)式中の環Bは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらはハロゲン原子、水酸基及び/又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。mは正数である。
【0026】
前記一般式(III)における環Aで表されるアリーレン基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0027】
前記一般式(III)における環Aで表されるアルキリデンジアリーレン基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0028】
前記一般式(III)におけるRで表される炭素原子数2〜10のアルキレン基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0029】
前記一般式(III)におけるRで表される炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0030】
前記一般式(III)におけるRで表されるアリーレン基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0031】
前記一般式(III)におけるRで表されるアルキリデンジアリール基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0032】
前記一般式(IV)における環Bで表されるアリーレン基としては、前記一般式(II)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0033】
前記一般式(IV)における環Bで表されるアルキリデンジアリーレン基としては、前記一般式(II)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0034】
本発明で用いられるポリアミド化合物のより具体的な構造としては、例えば、以下のNo.1〜13の構造が挙げられる。ただし、本発明は以下の例示によりなんら制限を受けるものではない。
【0035】

【0036】

【0037】

【0038】

【0039】

【0040】

【0041】

【0042】

【0043】

【0044】

【0045】

【0046】

【0047】

【0048】
本発明で使用されるポリアミド化合物は、フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミンから得ることができる。即ち、このポリアミド化合物は、フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミンと、ジカルボン酸類(各種芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸等)を原料として構成されるポリアミド化合物である。アミノ基と隣接する位置につくフェノール性水酸基の数は特に限定されず、例えば原料の芳香族ジアミン1分子について、1個〜4個である。
【0049】
勿論このポリアミド化合物は、フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有するジアミン以外のジアミン化合物(各種芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン等)を、更に原料構成成分としてもよいし、フェノール性水酸基を含有するジカルボン酸を更に使用しても良い。
【0050】
フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミンの例としては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−トリレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3'−ジエトキシ−4,4'−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3'−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジアミノジフェニルチオエーテル、2,2'−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2'−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフォキサイド、4,4'−ジアミノジフェニルスルフォン、ベンチジン、3,3'−ジメチルベンチジン、3,3'−ジメトキシベンチジン、3,3'−ジアミノビフェニル、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、o−キシリレンジアミン、2,2'−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2'−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ベンゼン、1,3'−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−エチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−プロピルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジプロピルフェニル)メタン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン等の、芳香族ジアミンのアミノ基と隣接する位置に、水酸基が1個〜4個結合しているものが挙げられる。但し、本発明においてはこれらに限定されるものではない。またこれらは1種又は2種以上混合して用いても良いし、水酸基の結合していない芳香族ジアミンと併用してもよい。水酸基の結合していない芳香族ジアミンの例としては上記したものが挙げられる。
【0051】
また、フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミンと反応し、本発明で使用するポリアミド化合物を形成するジカルボン酸類の例としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4'−オキシ二安息香酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、3,3'−メチレン二安息香酸、4,4'−メチレン二安息香酸、4,4'−チオ二安息香酸、3,3'−カルボニル二安息香酸、4,4'−カルボニル二安息香酸、4,4'−スルフォニル二安息香酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシイソフタル酸、3−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸、2,2’−ビス(3−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。またこれらは1種又は2種以上混合して用いても良い。
【0052】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記した、(A)エポキシ樹脂、(B)コアシェル型低弾性フィラー及び(C)ポリアミド樹脂を含有して得られるエポキシ樹脂組成物である。ここで、ポリアミド樹脂の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対し50〜150質量部であり、60〜100質量部であることが好ましい。50質量部未満であると、弾性率及び熱膨張率が上昇するので、硬化後に、十分に熱応力を緩和することができない。また、150質量部を超えるとPCT(プレッシャークッカー試験)後のシリコンウェハへの接着性が低下するため好ましくない。
また、コアシェル型低弾性フィラーの配合量は、全配合物中の20〜50質量%であり、30〜40質量%であることが好ましい。20質量%未満であると、弾性率が上昇したり、接着性が低下したりするおそれがあり、50質量%よりも多く使用した場合には、熱膨張率が上昇するので好ましくない。
【0053】
更に、本発明のエポキシ樹脂組成物には、エポキシ樹脂に使用される硬化剤を使用する事ができる。硬化剤としては、潜在性硬化剤、酸無水物、ポリアミン化合物、ポリフェノール化合物及びカチオン系光開始剤などが挙げられる。
【0054】
上記潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド、ヒドラジド、イミダゾール化合物、アミンアダクト、スルホニウム塩、オニウム塩、ケチミン、酸無水物、三級アミンなどが挙げられる。これらの潜在性硬化剤を使用した場合には、本発明の組成物を、取り扱いが容易な一液型の硬化性組成物とすることができるので好ましい。
【0055】
前記酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物などが挙げられる。
【0056】
ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどの脂環族ポリアミン、m−キシレンジアミンなどの芳香環を有する脂肪族アミン、m−フェニレンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどの芳香族ポリアミンが挙げられる。
【0057】
前記ポリフェノール化合物としては、例えば、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、テルペンジフェノール、テルペンジカテコール、1,1,3−トリス(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)ブタン、ブチリデンビス(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。これらの中でも、特にフェノールノボラックを使用した場合には、得られるエポキシ樹脂の電気特性及び機械強度が積層板に適しているので好ましい。
【0058】
前記イミダゾール化合物としては、例えば2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル,4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類;及び、それらイミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類が挙げられる。
【0059】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、他の添加物を加えることができる。このような添加物としては、例えば天然ワックス類、合成ワックス類および長鎖脂肪族酸の金属塩類等の可塑剤;酸アミド類、エステル類、パラフィン類などの離型剤;ニトリルゴム、ブタジエンゴム等の応力緩和剤;三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化錫、水酸化錫、酸化モリブデン、硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、赤燐、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム等の無機難燃剤;テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモベンゼン、ブロム化フェノールノボラック等の臭素系難燃剤;前記した以外のリン系難燃剤;シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤;染料や顔料等の着色剤;酸化安定剤、光安定剤、耐湿性向上剤、チキソトロピー付与剤、希釈剤、消泡剤、他の各種の樹脂、粘着付与剤、帯電防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、更には、アルコール類、エーテル類、アセタール類、ケトン類、エステル類、アルコールエステル類、ケトンアルコール類、エーテルアルコール類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類やエステルエーテル類、芳香族系溶剤などの、有機溶剤等を配合することもできる。
以下実施例によって本発明のエポキシ樹脂組成物を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0060】
〔参考例〕下記ポリアミド樹脂の合成
2,2’-ビストリフルオロメチルビフェニル-4,4’-ジアミン160.1g(0.5モル)及び2,4-ジアミノフェノール・2塩酸塩98.5g(0.5モル)を、N−メチル-2-ピロリドン(以下NMPとする)1550g及びピリジン275.3g(3.5モル)の混合溶媒に加熱溶解させた。
別にイソフタロイルクロライド192.9g(0.95モル)をNMP770gに溶解させ、上記溶液に、−20〜−10℃で滴下して反応させた。全量を滴下した後、更に室温で1時間熟成した。約15リットルのイオン交換水を用いて沈殿精製した後、ろ過し、順次、イオン交換水及びメタノールで洗浄した。150℃で3時間減圧乾燥して濃紫色粉末311g(収率90%)を得た。
得られた化合物の赤外吸収スペクトルからアミド結合の形成が確認され、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから、重量平均分子量が16300のポリマーであることが確認された。
また、粘度は285cps(25℃、30重量%NMP溶液)で、OH当量は704g/eqであった。
【0061】

【0062】
[実施例1〜8及び比較例1〜4]
下記表1及び2に示した配合の樹脂組成物をプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、離型処理を施したPETフィルムに乾燥後の樹脂の厚さが30〜40μmとなるように塗布し、100℃で10分かけて溶媒を乾燥させた。その後180℃で1時間かけて硬化物を作製し、各種の物性を測定した。
【0063】
(ガラス転移温度〔Tg〕)
作製した硬化物を5x50mmの大きさに成形し、熱分析装置(DMS-6100;エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)で動的粘弾性を測定すると共に、tanδの極大値を示す温度を求めてガラス転移点とした。
【0064】
(弾性率〔E‘〕)
JIS K7162 5Aに記載されたダンベル型試験片を用い、引張り試験(引張り速度5mm/分)によって得られた初期弾性率を記載した。
【0065】
(熱膨張係数〔CTE〕)
上記で作製した硬化物を3x50mmの大きさに成形し、熱分析装置(TMA/SS6100;エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)を用いて加熱膨張曲線を測定した。30〜125℃の範囲の伸び率から、熱膨張係数を算出した。
【0066】
(接着性)
接着試験については、下記表1及び2に示した配合の樹脂組成物をプロピレングリコールモノメチルエーテルにて希釈し、シリコンウエハ上に乾燥後の樹脂の厚さが30〜40μmとなるように塗布した後、100℃で10分かけて溶媒を乾燥させ、その後180℃で1時間かけて樹脂を硬化させて試験片を得た。得られた試験片を用いて、JIS D0202の碁盤目試験方法に準拠したセロハン粘着テープによるピールテストを行い、残部を各表に示した。更に、121℃/2.1atm/100%RH条件のプレッシャークッカー試験を96時間行った後に、硬化後と同様の接着試験を行い、残部を各表に示した。
【0067】
【表1】

【0068】
エポキシ樹脂1 :アデカレジンEP-4100E((株)ADEKA製のビスフェノールA型エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂2 :EPICLON
HP-4032(大日本インキ化学工業(株)製のナフタレン型
エポキシ樹脂)
低弾性フィラー1:KMP-605((株)信越シリコーン製のシリコーン複合パウダー)
平均粒径2μm
低弾性フィラー2:X-52-7030((株)信越シリコーン製のシリコーン複合パウダー)
平均粒径0.8μm
低弾性フィラー3:スタフィロイドAC-4030(ガンツ化成(株)製のコアシェルゴム)
平均粒径0.5μm
低弾性フィラー4:GENIOPERL P52(旭化成ワッカーシリコーン(株)製のコアシェル型
シリコーンパウダー)平均粒径0.1〜0.2μm
ポリアミド樹脂 :上記参考例のポリアミド樹脂
硬化剤1 :2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール
硬化剤2 :ジシアンジアミド
シランカップリング剤:KBM-403((株)信越シリコーン製の3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)
【0069】
【表2】

【0070】
表1及び2の結果から明らかなように、本発明の樹脂は比較例のものより格段に接着性が優れていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、低弾性率(応力緩和性)であるだけでなく、ガラス転移温度(Tg)が高く、熱膨張率が低いため熱応力に対する信頼性が高い上、シリコンウェハに対しても十分な接着性を有しており、また、良好な絶縁性を示すため、熱サイクル試験や衝撃試験が要求される電子部品用絶縁接着剤として、また、それ自身を絶縁層とする電子基板などの用途に好適に使用することができるので、産業上極めて有意義である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)コアシェル型低弾性フィラー及び(C)ポリアミド樹脂を含有して得られるエポキシ樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂(C)の含有量が、エポキシ樹脂(A)100質量部に対し50〜150質量部であり、コアシェル型低弾性フィラー(B)の含有量が全配合物中の20〜50質量%であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(A)が、ナフタレン型エポキシ樹脂である、請求項1に記載されたエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記コアシェル型低弾性フィラー(B)が、エラストマー又はゴム状のポリマーを主成分とするコア層と、ゴム弾性を示さない架橋ポリマー成分からなるシェル層とから構成されるポリマー粒子である、請求項1又は2に記載されたエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂(C)が、繰り返し単位中に、下記一般式(I)又は(II)で表されるフェノール性水酸基を有する構造を有するポリアミド樹脂である、請求項1〜3の何れかに記載されたエポキシ樹脂組成物;

但し、(I)式中の環Aは、炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表す。これらはハロゲン原子、水酸基及び/又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。(I)式中のRは、炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基又はアリーレン基、若しくは炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらはハロゲン原子、水酸基及び/又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。

但し、(II)式中の環Bは、炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリール基を表し、これらはハロゲン原子、水酸基、又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。
【請求項5】
前記ポリアミド樹脂(C)の構造が、下記一般式(III)又は(IV)で表されるフェノール性水酸基を有する構造である、請求項4に記載されたエポキシ樹脂組成物;

但し、(III)式中の環Aは、炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらはハロゲン原子、水酸基及び/又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。(III)式中のRは、炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基又はアリーレン基、若しくは炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらはハロゲン原子、水酸基及び/又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。nは正数である。

但し、(IV)式中の環Bは、炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらはハロゲン原子、水酸基及び/又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。mは正数である。
【請求項6】
前記環Aがフェニレン基又はナフチレン基である、請求項4又は5に記載されたエポキシ樹脂組成物。
前記
【請求項7】
Rがフェニレン基又はナフチレン基である、請求項4〜6の何れかに記載されたエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載されたエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする絶縁接着剤。

【公開番号】特開2012−177013(P2012−177013A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39837(P2011−39837)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】