説明

エポキシ樹脂組成物

【課題】JHS426に基づいて、ひび割れ含浸材料の試験方法が定められ、これに適う浸透性が良く、曲げ強度が得られる剥落用エポキシ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】エポキシ樹脂主剤、エポキシ樹脂硬化剤、ポリオレフィン系樹脂からなるパルプ状物質を含むことを特徴とする浸透用エポキシ樹脂組成物とすることであり、浸透性と未硬化での樹脂の流下防止を両立できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の補修において、微小割れに適した浸透用エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
はく落防止工法においてO.2mm以下のクラックが有る場合、ひび割れ注入は行わず、プライマーの処理のみで済ませている。この施工は橋梁などの天井面を施工することが多く、組成物は揺変性を付与しなければ、液だれを生じ、ひび割れに対して補強効果を奏しないものであった。また、溶剤形のものは浸透はするものの、コンクリート基材に吸い込んでしまい効果がなかった。また、吸い込みを抑制しても溶剤による固形分が低く効率よく、効果をだすことができなかった。
【0003】
エポキシ樹脂主剤(A) を主成分とするA液とその硬化剤(B)を主成分とするB液とからなる2液型のエポキシ樹脂組成物(AB)を用いる。この樹脂組成物(AB)は、(イ)クリア系の組成物であること、(ロ)2液配合後の組成物の粘度が100〜2000mPa・s/20℃の範囲内にあること、(ハ)5rpmにおける粘度と50rpmにおける粘度の比率η5 /η50が1.1〜2.0の範囲内にあること、(ニ)0.2mmの間隔をあけて突き合わせ対向させた試験片に対する間隙への下面からの浸透深さが15mm以上であること、の要件を全て満足することが開示されている。(特許文献1)
【特許文献1】特開2002−121901号公報
【0004】
前記文献では配合組成物の粘度、構造粘性指数、浸透性目標値が発明となり、具体的な配合は多くの実験をする必要があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題点は、JHS426(日本道路公団規格)に基づいて、ひび割れ含浸材料の試験方法が定められ、これに適う浸透性が良く、曲げ強度が得られる剥落用エポキシ樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エポキシ樹脂主剤、エポキシ樹脂硬化剤、ポリオレフィン系樹脂からなるパルプ状物質を含むことを特徴とする浸透用エポキシ樹脂組成物であり、天井等の重力に反する際でも効果的な補強ができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリオレフィン系樹脂からなるパルプ状物質を揺変剤として配合することにより、組成物の粘度に比例しない浸透性が得られ、垂れを防げる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の作用としては、パルプ状物質がエポキシ樹脂を担持する効果とエポキシ樹脂とパルプ状物質のポリオレフィン系樹脂との親和性と割れ部の表面材料との親和性による差により浸透性が可能になるものと思われる。ポリオレフィン系樹脂からなるパルプ状物質を含むエポキシ組成物により、浸透して硬化までに流下することなく、ひび割れ部位に樹脂が留まり補強効果が得られる。微粉末シリカ等の揺変剤では流下を防ぐ程度の配合では浸透性を損なう。
【0009】
ポリオレフィン系樹脂からなるパルプ状物質
揺変剤として用いるポリオレフィン系樹脂からなるパルプ状物質とはポリオレフィン系樹脂の極細繊維をフィブリル化したものであり、代表的な商品にケミベスト(R)(三井化学(株)、商品名)がある。この製品は繊維の原料或いは後処理により、親水性、疎水性のタイプがあり、どちらも効果が得られ、また 繊維長も、各種あるが、揺変性の要求程度、作業性により、適宜に使用する。繊維長0.1mmのものが扱い易い。前記揺変剤の添加量はエポキシ主剤100重量部に対して1を超え、5未満であり、好ましくは2〜4重量部である。
【0010】
エポキシ樹脂主剤
エポキシ樹脂主剤は、エポキシ樹脂に、必要に応じて希釈剤、反応促進剤、充填剤、着色剤等を配合される。エポキシ当量は300〜500、好ましくは350〜450であり、粘度として2〜6Pa・s/23℃ 3〜4.5Pa・sがさらに好ましい。
エポキシ樹脂としては、たとえばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジアリールスルホン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂およびそれらの変性物などを単独あるいは併せて用いてもよい。
希釈剤としては、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェノールモノグリシジルエーテル、2官能としては、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,2:8,9ジエポキシリモネン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、多官能としてはグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。非反応性希釈剤としては、ベンジルアルコール、ブチルジグリコール、パインオイル、キシレン樹脂、トルエン樹脂、ミネラルスピリット、灯油等が挙げられる。
【0011】
エポキシ樹脂硬化剤
本発明の上記主剤のエポキシ樹脂に用いる硬化剤は、末端にアミノ基を有する化合物として、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、m−キシリレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン類、3級アミン塩類、ポリアミド樹脂類、イミダゾール類、ジシアンジアミド類、ケチミン類、イソシアネート化合と有機アミンとの反応物の他三フッ化ホウ素錯化合物類、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ドデシニル無水コハク酸、無水ピロメリット酸、無水クロレン酸などの無水カルボン酸類、フェノール類、カルボン酸類などが挙げられ、これらは単独もしくは併用で使用できる。
【0012】
その他
一般に用いられている消泡剤、接着助剤、老化防止剤、安定剤などの添加剤を必要に応じて使用することができる。
主剤、硬化剤中に微調整のためにヒュームドシリカ等の揺変剤を配合することもできる。
【0013】
以下 実施例と比較例を示し、評価結果を示す。
【実施例1】
【0014】
エポキシ樹脂主剤として jER828(ジャパンエポキシレジン(株)製ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂)65重量部、jER807(ジャパンレジン(株)、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂)15重量部、AED−9(ピイ・ティ・アイ・ジャパン(株)、アルキルC12−C13グリシジルエーテル)12重量部、ベンジルアルコール5重量部、ケミベストFDSS−50(三井化学(株)製親水性、密度:0.96(g/cm)平均繊維長:0.1mm)3重量部を混合撹拌して主剤とし、硬化剤としてジェファーミンD230(ジェファーソンケミカル社、商品名、ポリオキシプロピレンジアミン)を50重量部、ガスカミン240(三菱瓦斯化学(株)、商品名、メタキシレンジアミンとスチレンの反応生成物)を50重量部配合したものを硬化剤とし、3:1で混合したものを実施例1のエポキシ樹脂組成物とした。粘度は3600mPa・s/25℃であった。
【0015】
比較例1
実施例1のケミベストFDSS−50を無添加にし、他は同じに行い比較例1とした。組成物の粘度は2300mPa・s/25℃であった。
比較例2
実施例1のケミベストFDSS−50の替わりにアエロジルRY200(日本アエロジル(株)、商品名、比表面積100±20m/g)とし、他は同じに行い比較例2とした。組成物の粘度は3600mPa・s/25℃であった。
比較例3
ジョリエースJE−70A(アイカ工業(株)、商品名、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、30%、n−ブタノール、MEK溶液)、JE−70B(アイカ工業(株)、商品名、変性ポリアミドアミン25%イソプロピルアルコール、酢酸ブチル溶液)を1:1で混合したものを比較例3とした。組成物の粘度は10mPa・s/25℃であった。
【0016】
【表1】

【0017】
含浸深さ:下記試験方法で、行い。曲げ強度測定後破断面より、左端、中央、右端の浸透深さを測定し、その平均値(mm)を記した。
曲げ強度:下記試験の強度を記した。単位はMPa
試験方法:以下 実施例・比較例の組成物を単に組成物という。
1.JISR5201に準拠し作成された40×40×160のモルタルを、アムスラー試験機を用いて曲げ破壊する。
2.得られたモルタル破壊面を清掃し、アルミホイルをスペーサーとし、ひび割れが0.2mm程度となるよう組み立てる。
3.組成物の施工が上向きになる様、モルタル試験体を設置する。(施工面が下面となる)
4.組成物を上向きに40×40mmの面積に0.25kg/mに相当する0.4gを塗布した。尚、塗布は刷毛を使用した。
5.1週間養生を行い、インストロン万能試験機を用いてJISR5201の曲げ試験方法に準拠し試験を行う。
塗布適性:上記 刷毛で塗布した際、組成物の落下があるか、抵抗が大きいものを×とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂主剤、エポキシ樹脂硬化剤、ポリオレフィン系樹脂からなるパルプ状物質を含むことを特徴とする浸透用エポキシ樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−297516(P2008−297516A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147907(P2007−147907)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】