説明

エポキシ樹脂組成物

【課題】その硬化物が高いTgを有し、しかも衝撃強度、引張伸び率、剪断接着強度を初めとする物性において優れた性能を発揮し、高靱性等の機械的特性を良好に達成することができ、とくに複合材料用エポキシ樹脂組成物として好適なエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】2官能型エポキシ樹脂100〜70重量部及び3官能以上のエポキシ樹脂0〜30重量部、ビスフェノール類、ビフェノール類、カテコール類及びハイドロキノン類からなる群から選択される少なくとも1種の2官能フェノール類50〜75重量部並びにイミダゾール硬化触媒、を含むエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物に関し、詳細には複合材料用として好適なエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物は、強化用繊維に含浸させて複合材料を形成することにより、金属に匹敵する優れた機械強度を発揮する軽量材料として航空機、ロケット、大型風車、船体、車体等の大型成型物等に適用されている。
【0003】
複合材料用途に使用されるエポキシ樹脂組成物としては、エポキシ樹脂、フェノールノボラック系硬化剤を含有するプリプレグ用途に使用可能なエポキシ樹脂が特許文献1に開示されている。また、特許文献2にはイミダゾール硬化系複合材料用エポキシ樹脂組成物が開示されている。しかしながら、いずれも硬化物のTg、耐衝撃強度、引張伸び率、剪断接着強度等において、高靱性等の機械的特性を達成することができる性能を有するものではない。さらに、特許文献3には、エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物とを直鎖状に重合してなる熱可塑性樹脂を用いた繊維強化樹脂が開示されているが、イミダゾール硬化系ではない。
【0004】
また、特許文献4にはイミダゾール硬化系エポキシ樹脂に対して1〜20重量%のビスフェノール化合物を配合した構造材用接着剤が開示されているが、解体性向上効果をもたらすものであり、高靱性等の機械的特性を達成することができる性能を有するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−128867号公報
【特許文献2】特開2010−265371号公報
【特許文献3】特開2006−321896号公報
【特許文献4】特開2006−225544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従って、その硬化物が高いTgを有し、しかも耐衝撃強度、引張伸び率、剪断接着強度を初めとする物性において優れた性能を発揮し、高靱性等の機械的特性を達成することができ、とくに複合材料用エポキシ樹脂組成物として好適なエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するべく検討した結果、エポキシ樹脂を2官能フェノール類とともにイミダゾール硬化触媒で硬化させることにより、熱可塑性樹脂の特性と熱硬化樹脂の特性とを併せ持つエポキシ樹脂を得ることができ、その結果、高伸び率、高耐衝撃強度を有し、高靱性等を達成しうる樹脂組成物を見出した。
本発明は、従って、(A):エポキシ樹脂100重量部、
(B):ビスフェノール類、ビフェノール類、カテコール類及びハイドロキノン類からなる群から選択される少なくとも1種の2官能フェノール類50〜75重量部、並びに
(C):イミダゾール硬化触媒、を含むエポキシ樹脂組成物である。
本発明はまた、上記エポキシ樹脂組成物及び強化用繊維を含有する繊維強化エポキシ樹脂複合材料でもある。
【発明の効果】
【0008】
上述の構成により、本発明のエポキシ樹脂組成物は、その硬化物が高いTgを有し、しかも耐衝撃強度、引張伸び率、剪断接着強度を初めとする機械的特性において優れた性能を達成することができる。このため、本発明のエポキシ樹脂組成物は、とくに複合材料用エポキシ樹脂組成物として好適であり、高靱性、高機械強度の複合材料を製造することができる。本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、熱可塑性樹脂の特性と熱硬化性樹脂の特性とを併せ持つと言えるが、その理由としては、本発明において、イミダゾール硬化触媒を用いたことにより、エポキシ樹脂と2官能フェノール類とがリニアに重合しつつ、3次元架橋も行うことによるものであると想定される。
【0009】
従って、本発明の繊維強化エポキシ樹脂複合材料は、高い機械的性能が要求される大型成型物に好適に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記エポキシ樹脂(A)としては、2官能型エポキシ樹脂を必須成分とし、3官能以上のエポキシ樹脂を併用してもよい。上記2官能型エポキシ樹脂としてはとくに限定されるものではなく、例えば、カテコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、t−ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル等のべンゼン環を1個有する一核体芳香族ジエポキシ化合物類;3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(例;セロキサイド2021P(商品名、ダイセル化学工業(株)製))、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド等の脂環式ジエポキシ化合物類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ化合物類及びこれらが部分縮合したオリゴマー混合物等のビスフェノール型エポキシ樹脂類;テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルジグリシジルエーテル、ジメチルジ−t−ブチルビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィドジグリシジルエーテル等の置換ビスフェノール型エポキシ化合物類及びこれらが部分縮合したオリゴマー混合物等の置換ビスフェノール型エポキシ樹脂類;その他、ビスフエノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型又はテトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂類、ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル及びこれらが部分縮合したオリゴマー混合物(ナフタレン型エポキシ樹脂類);ジメチロールシクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,3−シクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,2−シクロヘキサンジグリシジルエーテル、ジメチロールジシクロペンタジエンジグリシジルエーテル等の環状脂肪族アルコールのジエポキシ化合物類;ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロテレフタル酸ジグリシジルエステル等の環状脂肪族ジカルボン酸のジエポキシ化合物類;1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族アルコールのジエポキシ化合物類;Epikote871(商品名、三菱化学(株)製)、Epikote872(商品名、三菱化学(株)製)等のダイマー酸を骨格とするエポキシ樹脂類等の2官能エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのうち、ビスフェノール型エポキシ樹脂類から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
また、3官能以上のエポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールビフェニレンノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、トリフェニルグリシジルエーテルメタン型エポキシ樹脂、更には、これらの臭素化ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂、テトラグリシジルメタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、更には、これらの臭素化エポキシ樹脂等の4官能型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのうち、衝撃強度の観点から、芳香族環を有するエポキシ樹脂(ただし芳香族環を有するエポキシ樹脂のうちアミン型エポキシ樹脂を除く)が好ましく、ノボラック型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0012】
3官能以上のエポキシ樹脂は、併用することにより耐熱性を向上させることができる。3官能以上のエポキシ樹脂は任意成分であるので、使用しなくてもよいが、その配合量としては、2官能型エポキシ樹脂100〜70重量部に対して0〜30重量部が好ましい。より好ましくは2官能型エポキシ樹脂90〜70重量部に対して10〜30重量部である。繊維強化複合材用途においては、本発明の組成物は2官能型エポキシ樹脂と3官能以上のエポキシ樹脂を併用していることが好ましい。
【0013】
上記2官能フェノール類(B)は、ビスフェノール類、ビフェノール類、カテコール類及びハイドロキノン類からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0014】
ビスフェノール類としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールK、ビスフェノールAD、ビスフェノールC、ビスフェノールAF等を挙げることができる。これらのうち、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールADからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0015】
ビフェノール類としては、例えば、テトラメチルビフェノール等を挙げることができる。
【0016】
カテコール類としては、例えば、メチルカテコール等を挙げることができる。
【0017】
ハイドロキノン類としては、例えば、メチルハイドロキノン等を挙げることができる。
【0018】
上記2官能フェノール類(B)としては、これらのうち、ビスフェノール類、ビフェノール類が高衝撃強度の観点から好ましく、ビスフェノール類がより好ましい。
【0019】
上記2官能フェノール類(B)は、エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、50〜75重量部を用いる。50重量部未満であったり、75重量部を超えると衝撃強度が低下する。好ましくは55〜65重量部であり、より好ましくは55〜60重量部である。
【0020】
上記イミダゾール硬化触媒(C)としては、とくに限定されるものではなく、例えば、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物等を挙げることができる。これらのうち、好ましくは、イミダゾール、1−メチルイミダゾールである。
【0021】
上記イミダゾール硬化触媒(C)の配合量は、エポキシ樹脂100重量部あたり、好ましくは、0.1〜20重量部であり、0.5〜10重量部がより好ましく、1〜8重量部がさらに好ましい。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、複合材料用に適した粘度とすることができ、好ましくは成型方法に適した粘度とすることができ、例えば、インフュージョン成型時の粘度としては80℃で300mPa・s以下が好ましく、プリプレグ成型時の粘度としては50℃で100〜1,000Pa・sであることが好ましい。粘度は、レオメータ(例えば、AR−G2:ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)により測定することができる。
【0023】
上記2官能フェノール類(B)が単独で固形であっても、上記エポキシ樹脂(A)、上記2官能フェノール類(B)及び上記イミダゾール硬化触媒(C)の混合物が複合材料用に適した粘度であれば使用することができ、例えば、上記成型時の粘度であればよい。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上述の必須成分:エポキシ樹脂(A)、2官能フェノール類(B)及びイミダゾール硬化触媒(C)からなるもの、すなわち、上述の必須成分のみを含有するものであってもよく、あるいは上記必須成分以外の任意成分、例えば、以下に述べる溶剤、ゴムパウダー、液状ゴム等、をさらに含有するものであってもよい。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、粘度調節等の必要により溶剤を使用してもよい。上記溶剤としては、とくに限定されるものではなく、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、イソホロン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを挙げることができる。
【0026】
上記溶剤を使用する場合の配合量は、エポキシ樹脂100重量部あたり、好ましくは、10〜1000重量部であり、30〜500重量部がより好ましく、50〜300重量部がさらに好ましい。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要により、繊維強化エポキシ樹脂複合材料用エポキシ樹脂組成物に一般的に使用される成分を配合してもよく、特に、ゴムパウダー、液状ゴムを使用してもよい。上記ゴムパウダー、液状ゴムとしては、とくに限定されるものではなく、例えば、アクリルパウダー、カルボキシ末端ブタジエン−ニトリルゴム(CTBN)等を挙げることができる。
【0028】
上記ゴムパウダー、液状ゴムの配合量は、エポキシ樹脂100重量部あたり、好ましくは、0〜50重量部であり、5〜30重量部がより好ましく、10〜20重量部がさらに好ましい。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を所定量にて、公知の方法で混合して製造することができ、例えば、ディスパーサー、ミキサー、混練機、ホモジェナイザー、3本ロール等の周知の手段を用いて混合する工程を有する製造方法で得ることができる。
【0030】
本発明の繊維強化エポキシ樹脂複合材料は、本発明のエポキシ樹脂組成物及び強化用繊維を含有してなる。上記繊維としては、FRPで通常使用される各種の強化用繊維を使用することができ、例えば、カーボン繊維、ガラス繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維等を使用することができる。上記繊維は必要に応じて、カップリング剤等によって表面処理されたものであってもよい。
【0031】
上記強化用繊維の配合量は特に限定されず、通常FRPで使用される配合量とすることができるが、例えば、複合材料中に10〜60体積%程度とすることができるが、強化繊維の配合量が20体積%未満であると、成型品の表面が凹凸になったり、反りやうねりが大きくなる傾向にあり、50体積%を超すと、繊維に樹脂が未含浸となる傾向にあるので、20〜50体積%がより好ましい。
【0032】
本発明の繊維強化エポキシ樹脂複合材料は、本発明のエポキシ樹脂組成物を、上記強化用繊維に含浸させる方法で製造することができる。上記含浸工程は、本発明のエポキシ樹脂組成物と上記強化用繊維とを室温(例えば25℃)〜100℃で混合すればよい。
【0033】
本発明の繊維強化エポキシ樹脂複合材料には、本発明の効果が損われない範囲で、更に、従来公知の各種の無機充填剤を配合してもよい。無機充填剤の種類や配合量は、用途や組成物の粘度に応じて適宜選択することができる。上記無機充填剤としては、例えば、溶融シリカ粉末、石英ガラス粉末、結晶性シリカ粉末、ガラス微小繊維、タルク、アルミナ粉末、珪酸カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末、酸化アンチモン粉末、硫酸バリウム粉末、酸化チタン粉末、水酸化アルミニウム粉末等が挙げられる。
【0034】
上記無機充填剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部あたり、好ましくは、10〜1000重量部であり、20〜500重量部がより好ましく、30〜300重量部がさらに好ましい。
【0035】
さらに、本発明の繊維強化エポキシ樹脂複合材料には、本発明の効果が損われない範囲で、例えば、各種カップリング剤、消泡剤、低応力化剤、難燃剤、ゴム粒子、顔料等を含有することができる。
【0036】
本発明の繊維強化エポキシ樹脂複合材料の成型方法としては、例えば、インフュージョン成型、プリプレグ成型、ハンド・レイ・アップ法、プレス成型法、トランスファー法、射出成型法、パネル成型法、オートクレーブ法、フィラメントワインディング成型法等を適用することができる。
【0037】
成型条件としては、硬化温度100〜180℃、より好ましくは120〜150℃、硬化時間30〜800分、より好ましくは120〜300分であり、プリプレグを製造する場合には、加熱温度25〜100℃、より好ましくは40〜60℃、加熱時間30〜180分、より好ましくは120〜180分である。
【0038】
本発明の繊維強化エポキシ樹脂複合材料は、航空機、ロケット、大型風車、船体、車体等の大型成型物等に適用可能であり、特に、高い機械的性能が要求される用途の部材に適用することができる。また、高靱性等の機械的特性を生かして各種FRP部材に使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において略語の意味は次のとおり。
AER260:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、旭化成社製
BPA:ビスフェノールA
1MIZ:1−メチルイミダゾール
TPP−PB:テトラフェニルホスホニウムブロマイド
TBAB:テトラブチルアンモニウムブロマイド
BDMA:ベンジルジメチルアミン
HX3792:ノバキュア、旭化成ケミカルズ社製
ELM−100:ポリグリシジルアミン型エポキシ樹脂、住友化学社製
DEN438:ノボラック型エポキシ樹脂、ダウケミカル社製
HP7200:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、DIC社製
HP4700:ナフタレン型エポキシ樹脂、DIC社製
BCF:ビスクレゾールフルオレン、JFEケミカル社製
BPS−24C:ビスフェノールS、日華化学社製
【0040】
実施例1〜6、比較例1〜5
エポキシ樹脂組成物の作成
表1、2の配合(重量部)により各成分をミキサーにより混合して、それぞれエポキシ樹脂組成物を得た。つぎに、各エポキシ樹脂組成物を、150℃、180分の条件で硬化させ、Tg、耐衝撃強度を測定した。実施例3については、さらに、引張伸び率、剪断接着強度も測定した。結果を表1、2に示した。
【0041】
評価方法
(1)Tg
JIS K 7121に準拠した。
(2)耐衝撃強度
JIS K 7111−1に準拠した。
(3)引張伸び率
JIS K 7161に準拠した。
(4)剪断接着強度
JIS K 6850に準拠した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
これらの結果から、実施例1〜6のエポキシ樹脂組成物は、高Tgを有し、しかも耐衝撃強度が高く、高靱性であることが実証された。また、実施例3から、引張伸び率、剪断接着強度も良好であることが実証された。一方、比較例1〜5のエポキシ樹脂組成物は、耐衝撃強度が極めて低かった。
【0045】
複合材の作成
実施例1〜6、比較例1〜5で得たエポキシ樹脂組成物を、強化用繊維としてカーボン繊維(三菱レイヨン社製)に繊維体積含有率60%で、80℃にて含浸させ、130℃/3hrの条件で硬化させた。
積層条件は、カーボン繊維のユニディレクショナルファブリックを45°/0/−45°/90°/90°/−45°/0/45°の順で積層する[45/0/−45/90]2S条件である。
成型方法は、実施例1〜6で得たエポキシ樹脂組成物をVaRTM法により、型の上に炭素繊維を積層してからフィルムで密閉し、真空圧を利用して繊維強化材に樹脂を樹脂温度80〜90℃で含浸させ、熱を加えて固めることによって複合材料を成型した。いずれも良好な成型体を得た。一方、比較例1〜5で得たエポキシ樹脂組成物の成型体は、実施例の成型体よりも脆く、衝撃強度の低いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A):エポキシ樹脂100重量部、
(B):ビスフェノール類、ビフェノール類、カテコール類及びハイドロキノン類からなる群から選択される少なくとも1種の2官能フェノール類50〜75重量部並びに
(C):イミダゾール硬化触媒、を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂(A)は、必須成分として2官能型エポキシ樹脂100〜70重量部及び任意成分として3官能以上のエポキシ樹脂0〜30重量部からなり、繊維強化複合材料用である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
2官能型エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂であり、かつエポキシ樹脂(A)、2官能フェノール類(B)及びイミダゾール硬化触媒(C)からなる請求項2記載の組成物。
【請求項4】
3官能以上のエポキシ樹脂は、ノボラック型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である請求項2又は3記載の組成物。
【請求項5】
2官能フェノール類(B)は、ビスフェノール類である請求項1〜4のいずれか記載の組成物。
【請求項6】
ビスフェノール類は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びビスフェノールADからなる群から選択される少なくとも1種である請求項5記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の組成物及び強化用繊維を含有する繊維強化エポキシ樹脂複合材料。
【請求項8】
強化用繊維を20〜50体積%含有する請求項8記載の複合材料。

【公開番号】特開2013−18804(P2013−18804A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150804(P2011−150804)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】