説明

エポキシ硬化剤

【課題】 エポキシ樹脂との反応性が低く、作業可能時間の長時間化が可能なアミン組成物を提供する。
【解決手段】 炭素数1〜6のN−アルキル化アミノ基(R−NH−:ここでRは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)、アミノ基(HN−)及びイミノ基(−NH−)からなる群より選択される1種又は2種の置換基を分子内に有し、かつ分子内に活性アミン水素原子を2個有するアルキル化ポリアルキレンポリアミンを含有するアミン組成物をエポキシ硬化剤として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ硬化剤、それを含有するエポキシ樹脂組成物、及びそれから得られるエポキシ樹脂硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂をエポキシ硬化剤によって硬化、固化又は架橋して得られるエポキシ樹脂硬化物は、金属、木材、コンクリート等の表面コーティング等に使用されている。構造物表面に均一な皮膜を形成する際、低反応性のエポキシ硬化剤が一般的に使用されている。例えば、入り組んだ構造を有する構造物表面や大型の構造物表面に皮膜を形成する場合には、作業時間を十分に確保するという観点から低反応性のエポキシ硬化剤が求められている。
【0003】
低反応性のエポキシ硬化剤として、ポリエーテルポリアミンが一般的に使用されている。しかしながらポリエーテルポリアミンを使用した場合でも、作業時間が十分に確保されない場合がある。
【0004】
そこで、ポリアルキレンポリアミンの反応性をさらに低減したジアルキルジエチレントリアミン類(例えば、特許文献1、特許文献2参照)が提案されているが、依然として反応性は高く、入り組んだ構造を有する構造物表面や大型の構造物表面のコーティング材料として使用する場合には十分でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,280,043号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2157112号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、エポキシ樹脂との反応性が低く、作業可能時間の長時間化が可能なエポキシ樹脂硬化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、エポキシ硬化剤について、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下に示すとおりのエポキシ硬化剤、それを含有するエポキシ樹脂組成物、及びそれから得られるエポキシ樹脂硬化物である。
【0008】
[1]炭素数1〜6のN−アルキル化アミノ基(R−NH−:ここでRは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)、アミノ基(HN−)及びイミノ基(−NH−)からなる群より選択される1種又は2種の置換基を分子内に有し、かつ分子内に活性アミン水素原子を2個有するアルキル化ポリアルキレンポリアミンを含有するエポキシ硬化剤。
【0009】
[2]アルキル化ポリアルキレンポリアミンが、下記式(1)
【0010】
【化1】

(式中、R〜Rは各々独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、nは0〜6の範囲である。ただし、R〜Rは全て水素原子又は全てアルキル基になることはない。)
で示されるアルキル化ポリアルキレンポリアミンであることを特徴とする上記[1]に記載のエポキシ硬化剤用アミン組成物。
【0011】
[3]アルキル化ポリアルキレンポリアミンが、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジsec−ブチル−エチレンジアミン、N,N’,N”−トリイソプロピルジエチレントリアミン、N,N’,N”−トリsec−ブチル−ジエチレントリアミン、N,N’−ジイソプロピル−N,N’−ビス[2−(イソプロピルアミノ)エチル]−1,2−エタンジアミン、及びN,N’−sec−ブチル−N,N’−ビス[2−(sec−ブチルアミノ)エチル]−1,2−エタンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]に記載のエポキシ硬化剤。
【0012】
[4]上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のエポキシ硬化剤とエポキシ樹脂とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【0013】
[5]上記[4]に記載のエポキシ樹脂組成物を反応して得られるエポキシ樹脂硬化物。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエポキシ硬化剤によれば、一般に使用されるエポキシ硬化剤用アミンより反応性が低く、作業可能時間の長時間化が可能なエポキシ硬化剤用アミン組成物を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明のエポキシ硬化剤は、炭素数1〜6のN−アルキル化アミノ基(R−NH−:ここでRは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)、アミノ基(HN−)及びイミノ基(−NH−)からなる群より選択される1種又は2種の置換基を分子内に有し、かつ分子内に活性アミン水素原子を2個有するアルキル化ポリアルキレンポリアミンを含有することをその特徴とする。
【0017】
本発明で用いられるアルキル化ポリアルキレンポリアミンは、活性アミン水素原子を2個有するため、エポキシ樹脂との反応性が非常に遅い。したがって、エポキシ樹脂との反応速度を抑制し、作業可能時間の長時間化することができる。なお、本発明において、「活性アミン水素原子」とは、エポキシ基と反応可能な、窒素原子に付加した水素原子を意味する。
【0018】
本発明で用いられるアルキル化ポリアルキレンポリアミンにおいて、炭素数1〜6のN−アルキル化アミノ基(R−NH−:ここでRは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)中のアルキル基(R)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0019】
本発明で用いられるアルキル化ポリアルキレンポリアミンは、ポリアルキレンポリアミン鎖の末端に1級アミノ基を有する場合、エポキシ樹脂との反応性が高くなり作業時間が短くなる。よって、アルキル化ポリアルキレンポリアミンとしては、末端に1級アミノ基を有さない化合物がより好ましい。
【0020】
本発明で用いられるアルキル化ポリアルキレンポリアミンとしては、具体的には、炭素数1〜6のN−アルキル化アミノ基(R−NH−:ここでRは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)、アミノ基(HN−)及びイミノ基(−NH−)からなる群より選択される2種以上の置換基を分子内に有し、かつ分子内に活性アミン水素原子を2個有する、上記式(1)で示されるアルキル化ポリアルキレンポリアミンが例示される。
【0021】
上記式(1)において、R〜Rは各々独立して、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。好ましくはR及びRが水素原子である。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、nは0〜6の整数である。
【0022】
本発明で用いられるアルキル化ポリアルキレンポリアミンの好適な例としては、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジsec−ブチル−エチレンジアミン、N,N’,N”−トリイソプロピルジエチレントリアミン、N,N’,N”−トリsec−ブチル−ジエチレントリアミン、N,N’−ジイソプロピル−N,N’−ビス[2−(イソプロピルアミノ)エチル]−1,2−エタンジアミン、N,N’−sec−ブチル−N,N’−ビス[2−(sec−ブチルアミノ)エチル]−1,2−エタンジアミン等が挙げられる。
【0023】
本発明のエポキシ硬化剤において、上記したアルキル化ポリアルキレンポリアミンの含有量は、エポキシ硬化剤全体に対して、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上である。含有量が多いほど、エポキシ樹脂との反応性が低下し、作業可能時間が長くなる。
【0024】
本発明のエポキシ硬化剤は、上記したアルキル化ポリアルキレンポリアミンを含有するものであって、それ以外の成分を必ずしも必要とするものではないが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その他のアミンを含有していてもよい。このようなアミンとしては、例えば、3個以上の活性アミン水素原子を有する多官能性アミンが挙げられる。このような多官能性アミンであっても、エポキシ樹脂との反応性が著しく向上させる成分については、全く使用しないか、又はエポキシ樹脂との低反応性を維持できる範囲で使用することが望ましい。
【0025】
3個以上の活性アミン水素原子を有する多官能性アミンとしては、例えば、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミンの他、脂肪族アミン、芳香族アミン若しくは脂環式アミンのマンニッヒ塩基誘導体、脂肪族アミン、芳香族アミン若しくは脂環式アミンのポリアミド誘導体、脂肪族アミン、芳香族アミン若しくは脂環式アミンのアミン付加誘導体等が知られている。
【0026】
脂肪族アミンとしては、例えば、ポリエチレンアミン(EDA、DETA、TETA、TEPA、PEHA等)、ポリプロピレンアミン、アミノプロピル化エチレンジアミン(Am3、Am4、Am5等)、アミノプロピル化プロピレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、3,3,5−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、3,5,5−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン[Dytek(登録商標)−Aとして市販されている]等、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
また、ハンツマン(Huntsman)社からジェファーミン(Jeffamine)の商品名で入手できるポリ(アルキレンオキシド)ジアミンやトリアミンも、このような脂肪族アミンとして例示される。ジェファーミンとしては、特に限定するものではないが、例えば、ジェファーミンD−230、ジェファーミンD−400、ジェファーミンD−2000、ジェファーミン)D−4000、ジェファーミンT−403、ジェファーミンEDR−148、ジェファーミンEDR−192、ジェファーミンC−346、ジェファーミンED−600、ジェファーミンED−900、ジェファーミンED−2001等、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
また、脂環式アミン又は芳香族アミンとしては、特に限定するものではないが、例えば、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、水素化オルトトルエンジアミン、水素化メタトルエンジアミン、メタキシリレンジアミン、水素化メタキシリレンジアミン(1,3−BACとして市販されている)、イソホロンジアミン、各種の異性体又はノルボルナンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、メチレン架橋ポリ(シクロヘキシル−芳香族)アミンの混合物等、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0029】
マンニッヒ塩基誘導体は、例えば、上記した脂肪族アミン、脂環式アミン又は芳香族アミンとフェノール若しくは置換フェノール及びホルムアルデヒドとの反応により作られ得る。ポリアミド誘導体は、例えば、上記した脂肪族アミン、脂環式アミン又は芳香族アミンと、二量体脂肪酸、又は二量体脂肪酸及び脂肪酸の混合物との反応により調製され得る。アミドアミン誘導体は、例えば、脂肪族アミン、脂環式アミン又は芳香族アミンと脂肪酸との反応により調製され得る。アミン付加物は、例えば、脂肪族アミン、脂環式アミン又は芳香族アミンと、エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Fのジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂等)との反応により調製され得る。なお、脂肪族アミン、脂環式アミン又は芳香族アミンに、単官能エポキシ樹脂(例えば、フェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、他のアルキルグリシジルエーテル等)を付加してもよい。
【0030】
本発明において、上記したアルキル化ポリアルキレンポリアミンの製造方法は特に限定するものではないが、対応するポリアルキレンポリアミンを部分的にN−アルキル化することで得られる。例えば、少なくとも2個の窒素原子を有する少なくとも1種のポリアルキレンポリアルキレンポリアミン、少なくとも1種のアルキル化剤、及び水素を触媒の存在下で反応することで得られる。
【0031】
ここで用いられるポリアルキレンポリアミンとしては、特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレンポリアミン、ポリプロピレンポリアミン及びそれらの組合せが挙げられる。ポリエチレンポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、及び他の高次ポリエチレンポリアミンが挙げられる。また、例えば、TETAは線状TETAだけでなく、トリス−アミノエチレンアミンも含んでいてもよい。
【0032】
ここで用いられるアルキル化剤としては、特に限定するものではないが、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、炭素数1〜6のアルデヒド、炭素数2〜6のケトン等が挙げられる。
【0033】
ここで用いられる触媒としては、例えば、ニッケル、ラネーニッケル、ラネーコバルト白金黒、酸化白金、パラジウム、パラジウム/活性炭(Pd/C)、等、一般に用いられる水素化触媒が挙げられ、これらのいずれを用いてもよい。触媒の添加量はポリアルキレンポリアミンに対して0.1〜10重量%の範囲が好ましい。
【0034】
アルキル化剤とポリアルキレンポリアミンとのモル反応比(アルキル化剤/ポリアルキレンポリアミン)は、特に限定するものではないが、好ましくは2以上、さらに好ましくは2.1以上である。これは、モル反応比が2.1以上の場合、アルキル化されずに残存する未反応のポリアルキレンポリアミンが1重量%以下となるためである。
【0035】
次に本発明のエポキシ樹脂組成物について説明する。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記した本発明のエポキシ硬化剤とエポキシ樹脂とを含有することをその特徴とする。
【0037】
本発明において、エポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂硬化物の製造に一般に用いられる未硬化のエポキシ樹脂でよく、特に限定するものではないが、例えば、1分子当たり2以上の1,2−エポキシ基を含有する未硬化のエポキシ樹脂が挙げられる。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等が例示される。これらのエポキシ樹脂は無溶媒のものでも、溶媒で希釈したものでも使用することができる。
【0038】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、エポキシ樹脂硬化物を形成する際には、従来公知の可塑剤を使用することができる。このような可塑剤としては、特に限定するものではないが、ベンジルアルコール、ノニルフェノール、種々のフタル酸エステル等が好適なものとして挙げられる。
【0039】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、エポキシ樹脂硬化物を形成する際には、溶媒、充填剤、顔料、顔料分散剤、レオロジー修飾剤、チキソトロピー剤、流動化及び平滑化補助剤、消泡剤等を用いてもよい。好適な溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素化合物、脂肪族炭化水素化合物、エステル、ケトン、エーテル、アルコール等が挙げられる。
【0040】
上記した本発明のエポキシ硬化剤用アミン組成物を反応させることで、エポキシ樹脂硬化物が得られる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるこのではない。
【0042】
<反応性の測定>
エポキシ硬化剤及びエポキシ樹脂(エピコート828、三菱化学社製)を20mlのサンプル瓶に秤量し、スパチュラで均一になるまで混合した後、25℃の一定条件において硬化し、振動式粘度計(商品名:VM−1G−MJ、山一電機社製)、データ収集システム(商品名:NR−1000、Keyence社製)を用いて粘度の経時変化を測定した。混合後、粘度値が1000cPに到達するまでの時間により反応性を評価した。1000cP到達時間が長いほど、反応性が低く、作業可能時間が長いことを意味する。
【0043】
合成例1.
10Lオートクレーブ中にジエチレントリアミン(DETA)1500g(14.5mol)、アセトン1689g(29.1mol)、メタノール3189g、Pd/C触媒128gを仕込んだ。オートクレーブを窒素、その次に水素でパージし、オートクレーブ中の空気を除去した。オートクレーブを水素で3MPaに加圧して、120℃まで0.5時間で昇温した。オートクレーブ内圧を水素で3MPaに保ち、さらに6時間反応を行った。反応終了後、オートクレーブを冷却、減圧し、反応性生物をろ過して触媒を除去した。エバポレーターでメタノール、アセトン、生成水を除去し、イソプロピル化ジエチレントリアミン混合物を得た。
【0044】
得られたイソプロピル化ジエチレントリアミン混合物から、トリイソプロピル化ジエチレントリアミン(A)290g、ジイソプロピル化ジエチレントリアミン(B)1630g、をそれぞれ蒸留分離した。
【0045】
合成例2.
10Lオートクレーブ中にエチレンジアミン(EDA)1000g(16.6mol)、アセトン2251g(38.8mol)、メタノール3251g、Pd/C触媒130.1gを仕込んだ。オートクレーブを窒素、その次に水素でパージし、オートクレーブ中の空気を除去した。オートクレーブを水素で3MPaに加圧して、120℃まで0.5時間で昇温した。オートクレーブ内圧を水素で3MPaに保ち、さらに6時間反応を行った。反応終了後、オートクレーブを冷却、減圧し、反応性生物をろ過して触媒を除去した。エバポレーターでメタノール、アセトン、生成水を除去し、イソプロピル化エチレンジアミン混合物を得た。
【0046】
得られたイソプロピル化エチレンジアミン混合物から、ジイソプロピル化エチレンジアミン2100gを蒸留分離した。
【0047】
合成例3.
10Lオートクレーブ中にトリエチレンテトラミン(TETA)1100g(7.5mol)、メチルエチルケトン2172.9g(30.1mol)、メタノール3272.9g、Pd/C触媒130gを仕込んだ。オートクレーブを窒素、その次に水素でパージし、オートクレーブ中の空気を除去した。オートクレーブを水素で3MPaに加圧して、120℃まで0.5時間で昇温した。オートクレーブ内圧を水素で3MPaに保ち、さらに6時間反応を行った。反応終了後、オートクレーブを冷却、減圧し、反応性生物をろ過して触媒を除去した。エバポレーターでメタノール、メチルエチルケトン、生成水を除去し、sec−ブチル化トリエチレンテトラミン混合物を得た。
【0048】
得られたsec−ブチル化トリエチレンテトラミン混合物から、テトラsec−ブチル化トリエチレンテトラミン820gを蒸留分離した。
【0049】
実施例1.
合成例1で得たトリイソプロピル化ジエチレントリアミン0.03g、及びジイソプロピル化ジエチレントリアミン3.35g及びエポキシ樹脂(エピコート828、三菱化学社製)10gを20mlのサンプル瓶に秤量し、スパチュラで均一になるまで混合した後、25℃の一定条件において硬化、振動式粘度計(商品名:VM−1G−MJ、山一電機社製)、データ収集システム(商品名:NR−1000、Keyence社製)を用いて粘度の経時変化を測定した。混合後、粘度値が1000cPに到達するまでの時間を測定したところ、8.6時間であった。
【0050】
実施例2〜実施10、参考例及び比較例1〜比較例3.
表1、表2に示す種類と量のアミンを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その結果を表1、表2に併せて示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

この表から、本発明のエポキシ硬化剤を含有する実施例1〜実施例9の場合の方が、本発明のエポキシ硬化剤を含有しない比較例1〜比較例3の場合よりも、長い作業時間を達成できることが分かる。
【0053】
また、アルキル化ポリアルキレンポリアミン以外に、3個以上の活性アミン水素原子を有する多官能性アミンを併用する場合、エポキシ樹脂との反応性に影響を与えない多官能性アミンについては好適に使用できるが(実施例10参照)、エポキシ樹脂との反応性を著しく向上させる成分を多量に使用すると、本発明の趣旨を逸脱することが理解される(参考例参照)。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のエポキシ樹脂硬化剤は、硬化剤として反応性が低く、エポキシ樹脂と混合して使用する際に、十分な作業時間を達成することができるため、入り組んだ構造を有する構造物表面や大型構造物表面のコーティングなど、長い作業時間を必要とする用途で、好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1〜6のN−アルキル化アミノ基(R−NH−:ここでRは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)、アミノ基(HN−)及びイミノ基(−NH−)からなる群より選択される1種又は2種の置換基を分子内に有し、かつ分子内に活性アミン水素原子を2個有するアルキル化ポリアルキレンポリアミンを含有するエポキシ硬化剤。
【請求項2】
アルキル化ポリアルキレンポリアミンが、下記式(1)
【化1】

(式中、R〜Rは各々独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、nは0〜6の範囲である。ただし、R〜Rは全て水素原子又は全てアルキル基になることはない。)
で示されるアルキル化ポリアルキレンポリアミンであることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ硬化剤用アミン組成物。
【請求項3】
アルキル化ポリアルキレンポリアミンが、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジsec−ブチル−エチレンジアミン、N,N’,N”−トリイソプロピルジエチレントリアミン、N,N’,N”−トリsec−ブチル−ジエチレントリアミン、N,N’−ジイソプロピル−N,N’−ビス[2−(イソプロピルアミノ)エチル]−1,2−エタンジアミン、及びN,N’−sec−ブチル−N,N’−ビス[2−(sec−ブチルアミノ)エチル]−1,2−エタンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ硬化剤。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のエポキシ硬化剤とエポキシ樹脂とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を反応して得られるエポキシ樹脂硬化物。