説明

エポチロン及びカルボプラチンを用いる併用療法

エポチロン及びカルボプラチンの併用療法は、腫瘍を治療するために有効である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、エポチロン及びカルボプラチンを用いる併用療法及びそれらの投与方法に関する。
発明の背景
エポチロンは、パクリタキセルのものと同様の作用:細胞周期のG2/Mでの閉塞及びチューブリン脱重合の阻害のメカニズムを有する微小管形成の強力な安定剤である。特に興味深いのは、エポチロンB(1)とその誘導体、例えばエポチロンBラクタムと21−アミノエポチロンB、及びエポチロンD(2、“KOS-862としても知られる)とその誘導体である。
【0002】
【化1】

パクリタキセルとは異なり、エポチロンDは、インビトロ及びインビボの双方でパクリタキセル耐性ヒト癌細胞系対するその効能を保持する。エポチロンDは、複数の単剤療法相2臨床試験に入り、及び種々の癌の治療において重要な展望を示す。
併用寮法は、癌治療において重要であり、なぜなら、異なる作用メカニズムを有する薬剤の組み合わせにより強化された細胞毒性をもたらし得るからである。エポチロン(微小管形成)及びカルボプラチン(DNAアルキル化)は、抗腫瘍活性の異なるメカニズムを有するので、タキサン/カルボプラチンの組み合わせを超える、エポチロン/カルボプラチンの組み合わせの非重複毒性及び改良された効能の可能性がある。本発明は、細胞の過剰増殖により特徴付けられる疾患及び種々の癌のための、有意に改良された治療を示すことを期待されるエポチロンD及びカルボプラチン(パラプラチン(商標)、Bristol-Myers Squibb)を使用する併用療法を提供する。
【0003】
【化2】

発明の概要
本発明は、細胞の過剰増殖による疾患を治療するための、そのような治療を必要とする患者にエポチロン及びカルボプラチンの組み合わせを投与することを含む方法を提供する。好ましい実施態様において、エポチロンは、エプチロンDである。別の好ましい実施態様において、細胞の過剰増殖は、癌特には非小細胞肺癌である。好ましい実施態様において、エポチロンは、カルボプラチンの前に又は同時に投与される。
別の実施態様において、カルボプラチン及び医薬的に許容可能なキャリヤと一緒にエポチロンを含む医薬組成物を提供する。キャリヤは、例えば注射用蒸留水(WFI)であってもよい。
別の実施態様において、エポチロンを含む第一医薬組成物及びカルボプラチンを含む第二医薬組成物を含むキットを提供する。
【0004】
発明の詳細な記載
1つの態様において、本発明は、細胞の過剰増殖により特徴付けられる疾患を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする患者(特にヒト)にエポチロン及びカルボプラチンの組み合わせを投与することを含む方法を提供する。
本発明の医薬組成物において使用されるエポチロンは、いずれかのエポチロン、及びより特には有用な治療特性を有するエポチロンであり得る。そのようなエポチロンは、全化学合成、部分的化学合成、又はケモバイオシンセシス及び有機化学、医薬品化学、及び生物工学の技術分野における当業者により知られる材料の組み合わせ使用して得ることができる。有用な治療特性を有するエポチロンの具体例は、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンD、4−デスメチル−エポチロンD、エポチロンBラクタム、21−アミノエポチロンB、9,10−デヒドロエポチロンD、9,10−デヒドロ−26−トリフルオロ−エポチロンD、11−ヒドロキシエポチロンD、19−オキサゾリル−エポチロンD、10,11−デヒドロ−エポチロンD、及び19−オキサゾリル−10、11−デヒドロ−エポチロンDを含むが、これらに制限されることはない。本発明の特定の実施態様において、エポチロンは、エポチロンB、エポチロンBラクタム、21−アミノエポチロンB、エポチロンD及びトランス−9,10−デヒドロエポチロンDからなる群より選択される。それらの製造方法と一緒に適切なエポチロンの多くの詳細例が、当業者が熟知しているであろう文献に記載されている。
【0005】
本発明のある実施態様において、疾患は、癌である。本発明は、数ある中でも、頭部、頚部、鼻腔、副鼻腔、鼻咽腔、口腔、中咽頭、喉頭、下咽頭、唾液腺、及び傍神経節腫の腫瘍を含む頭部及び頚部の癌;肝臓及び胆道系の癌、特には肝細胞癌;腸癌、特には結腸直腸癌;トリート卵巣癌;小細胞及び非小細胞肺癌;乳癌肉腫、例えば繊維肉腫、悪性繊維性組織球腫、胎児性横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、神経線維肉腫、骨肉腫、滑膜肉腫、脂肪肉腫、及び胞状軟部肉腫;中枢神経の腫瘍、特に脳腫瘍;リンパ腫、例えばホギシンリンパ腫、リンパ形質細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、粘膜性関連リンパ組織リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B系統大細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、及びT細胞未分化大細胞リンパ腫を治療する方法を含む。本発明の特別な実施態様において、疾患は、乳癌、結腸直腸癌、及び非小細胞肺癌からなる郡より選択される癌である。
本件明細書に記載される方法の実行及び組成物の使用は、癌性増殖のサイズ又は数の減少、及び/又は関連リンパ腫(適用できるところの)の低減をもたらす結果になるであろう。病理学的に、本件明細書に記載される方法の実行及び組成物の使用により、病理学的に関連する応答、例えば:癌胞増殖の抑制、癌又は腫瘍のサイズの低減、更なる転移の予防、及び腫瘍の血管新生の抑制がもたらされるであろう。そのような疾患を治療する方法は、被検体に対して発明の組み合わせの治療的有効量を投与することを含む。その方法は、必要なら繰り返すことができる。
【0006】
別の態様において、本発明は、本件明細書に載される、ある投薬レジメントにおいて上記の組み合わせを投与することを含む疾患を治療する方法を提供する。エポチロンは、カルボプラチンと同時に投与することができる。あるいはまた、エポチロンは、カルボプラチンの投与より先に投与してもよく、又はカルボプラチンは、エポチロンより前に投与してもよい。更に、2つの薬剤を、別々に投与するそれらの実施態様について、第二薬剤の投与は、遅れて、併用療法の大きな治療効果を提供し得る。薬理学及び薬剤技術分野における当業者は、非同時治療を施すことにおいて一時的要因を決定するのに適切な概念、方法及び材料を熟知しているであろう。関連要因の例として、患者のサーカディアンリズム、治療される疾患に関連する細胞周期特性(例えば腫瘍細胞タイプ)、及び使用されている薬剤の薬物動態パラメータが挙げられるが、それらに制限されることはない。
別の態様において、本発明は、カルボプラチン及び医薬的許容可能なキャリヤと一緒にエプチロンを含む医薬組成物を提供する。エポチロン及びカルボプラチンを、適切な比において提供して、2つの薬剤の有効治療投与量を提供する。
【0007】
別の態様において、本発明は、エポチロン及びカルボプラチンを別々の薬剤として使用して併用療法を促進するキットを提供する。ある実施態様において、そのようなキットは、2つの薬剤について別々の医薬組成物、即ち、エポチロンを含む第一医薬組成物及びカルボプラチンを含む第二組成物を含む。これらの医薬組成物は、必要な賦形剤と一緒に適切な量においてエポチロン又はカルボプラチンを含む濃縮物又はリオフィレート(lyophilate)であり得、患者への注入の前に水性媒体を用いて希釈する状態になり得、又はそれらは、患者に直接の注入をする状態になっている水性エマルジョンであり得る。
以下の実施例は、単に、本発明を実行することにおいて当該技術分野における当業者の助けとなる本発明のある態様を説明するだけでなく、及びどんな方法でも本発明の範囲を制限されることはない。
【0008】
実施例1−培養NSCLC細胞系におけるエポチロンD及びカルボプラチンの間の相乗性
ヒトNSCLC(非小細胞細胞肺癌)細胞系A549、H23、H226、H358、H460、及びH522を、96ウェルプレート(5000細胞/ウェル)において播種し;一晩のインキュベーション後、細胞を、エポチロンD、又はカルボプラチンのみ又は組み合わせにおいてのエポチロンD及びカルボプラチンで処理した。各薬剤のIC50値を得てすぐに、併用薬物治療を、2つの薬剤の不変比率で設計し、及び治療スケジュールは、変動し:エポチロンD又はカルボプラチンのいずれかを、24時間後に添加される第二薬剤とともに最初に投与した。細胞の生存を、MTSアッセイにより検定した。カルボプラチンを、最初に投与した時の穏やかな拮抗作用が、観察されたが、エポチロンDが最初に投与され次いで試験される全細胞系においてカルボプラチンが投与された時、著しい相乗性が測定された。表1に示されるように、エポチロンDは、強力な細胞毒性効果を培養非小細胞肺癌(NSCLC)ヒト癌細胞系の範囲に対して示し、一方カルボプラチンは、実質的に10,000nMの濃度で不活性である。細胞を、エポチロンD又はカルボプラチンで、1pM〜10μMの変化する濃度で3日間処理した。細胞の生存を、MTSアッセイ(promega)を用いて測定した。IC50を、50%まで細胞増殖を抑制するのに必要な薬剤の濃縮物として定義する。
【0009】

図1は、賦形剤の組み合わせの結果を示す。全6個の細胞系において、最初にエポチロンD次いでカルボプラチンでの処理が、強力な相乗性において生じ、一方最初にカルボプラチン次いでエポチロンDでの処理が、穏やかな拮抗作用において生じた。カルボプラチンが、表1においてNSCLC細胞系に対して実質的に不活性であると示されるので、エポチロンをともなう併用療法における相乗作用の発生は、期待されない。
【0010】
実施例2−マウス異種移植におけるエポチロンD及びカルボプラチン間の相乗性
薬剤の併用をまた、ヒト細胞肺癌異種移植MV522及びSK−MESを有するヌードマウスにおいて試験した。ヌードマウスホストにおいて皮下に増大する腫瘍から取り入れるヒト腫瘍癌のフラグメントを、皮下に移植した。腫瘍が、サイズ約60〜75mgである時(移植後10〜14日)、マウスは、治療及び制御グループに適合する一組だった。エポチロンDを、腹腔内で7日間1日2回(6〜14mg/kg/日)、カルボプラチンを、腹腔内で5日間毎日(10〜40mg/kg/日)、エポチロンD(第一)及びカルボプラチン(第二)の種々の組み合わせ、又はベヒクルコントロールを与えた。単一薬剤としてのエポチロンD及びカルボプラチンは、投与量依存方法において抗増殖作用(腫瘍サイズとして測定)を発揮した。薬剤の併用は、拮抗作用において生じなかったが、複数の組み合わせは、動物の体重損失が、十分に許容され及び可逆的である状況下で添加剤又は相乗効果を証明した。動物を、ベヒクル、エポチロンD(MV522について8mg/kg及びSKMESについて14mg/kg、7日間1日2回)のみ、又はカルボプラチン(10mg/kg、5日間1日1回)のみ、又はエポチロンD次いでカルボプラチンで処理した実験の結果を図2において示す。MV522及びSKMES異種移植モデルにおいて、エポチロンD及びカルボプラチンの併用療法は、いずれかの薬剤の単一薬剤治療について大幅に少ない投与量で強力な腫瘍抑制を生み出した。動物の全体重損失を、十分に許容及び可逆化した。
【0011】
実施例3−細胞周期のエポチロンD及びカルボプラチンの効果
細胞を、エポチロンDのみ(8nM)、カルボプラチンのみ(15uM)をともなって、又はエポチロンD(8nM)次いでカルボプラチン(15uM)をともなって処理した。細胞を、ヨウ化プロピジウムで染色し、及びフローサイトメトリーにより分析した。結果を図3において示す。エポチロンD及びカルボプラチンの組み合わせを用いる細胞の治療は、増加するサブ−G1個体群をもたらし、アポトーシスの誘導を示す。
本発明の前述の詳細な記載は、主に又は排他的に、本発明の特定部又は態様に関係しているパッセージを含む。これが、明瞭及び便利であり、特定の特性が、まさに開示されるパッセージ以上に適切であり得、及び本件明細書の開示が、異なるパッセージにおいて知られている情報のすべての適切な併用を含むことが、理解されるべきである。同様に、本件明細書の種々の図及び記載は、本発明の特定の実施態様に関するけれども、特定の特徴が、特別な図又は実施態様との関連で開示されるもの、そのような特性をまた、適切な程度まで、別の図又は実施態様との関連で、別の特性との組み合わせで、又は通常の本発明において使用することができることが理解されるべきである。
【0012】
更に、本発明は、特に、ある好ましい実施態様に関して記載されたが、本発明は、そのような好ましい実施態様に制限されることはない。むしろ、本発明の範囲は、添付の請求項により定義される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、組み合わせエポチロン及びカルボプラチンのインビトロ試験についてデータを示す。
【図2】図2a及び2bは、どちらか1つの薬剤のみと比較して、エポチロン−カルボプラチンの併用療法についてマウス異種移植のデータを示す。
【図3】図3は、どちらか1つの薬剤のみと比較して、エポチロン−カルボプラチンの併用療法について細胞周期のデータを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の過剰増殖により特徴付けられる疾患を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする患者にエポチロン及びカルボプラチンの組み合わせを投与することを含む方法。
【請求項2】
エポチロンが、エポチロンDである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
疾患が、癌である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
疾患が、非小細胞肺癌である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
疾患が、癌である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
疾患が、非小細胞肺癌である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
患者を、最初に、エポチロンを用いて治療し及び次いで、カルボプラチンを用いて治療する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
患者を、同時にエポチロン及びカルボプラチンを用いて治療する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
カルボプラチン及び医薬的に許容可能なキャリヤと一緒にエポチロンを含む医薬組成物。
【請求項10】
エポチロンが、エポチロンDである請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
エポチロンを含む第一医薬組成物及びカルボプラチンを含む第二医薬組成物を含むキット。
【請求項12】
エポチロンが、エポチロンDである請求項11に記載のキット。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−530567(P2007−530567A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505131(P2007−505131)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/009657
【国際公開番号】WO2005/098027
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(504269110)コーザン バイオサイエンシス インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】