説明

エマルションポリマー接着剤

【課題】本発明は、高剥離および高温凝集の感圧接着剤を形成するのに好適な多段階ポリマーエマルションに関する。
【解決手段】(a)第1ポリマーと強化ポリマーの全重量を基準として90〜99.5重量%の第1ポリマー、ここで、当該第1ポリマーは少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーから形成され、−20℃未満のTgを有し、第1ポリマーにおけるモノマー1kgあたり3〜12mmoleの連鎖移動剤の存在下で重合される;並びに(b)第1ポリマーと強化ポリマーの全重量を基準として0.5〜10重量%の強化ポリマー、ここで、当該強化ポリマーは60℃以上のTgを有するか、または2以上のアルファ,ベータ−エチレン性不飽和基を有するモノマーから形成されるか、またはそれらの組み合わせである;を含む多段階エマルションポリマーが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高剥離(peel)、高温凝集および他の感圧接着剤(PSA)特性のバランスを備えたラテックスポリマーエマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
歴史的に、このような性能特性のバランスを必要とする用途には、溶媒ベースの接着剤が好まれてきた。しかし、環境への配慮が溶媒の排除を支持している。エマルションPSAを用いて達成可能なこのことおよびより高いコーティング速度は溶媒ベースのPSAの代わりに、それらの使用を支持する。典型的には、そのような高くかつ望ましい水準の剥離および接着を示すPSAは、高温での劣った凝集強さという犠牲の下にそれを成し遂げる。
【0003】
米国特許出願第12/004,242号は、第1段階ポリマーが−40℃未満のホモポリマーTgを有するモノマーを少なくとも40%と、30℃未満のホモポリマーTgを有する軟質親水性非イオン性モノマーを10〜50%含む、2段階プロセスにより形成される水不溶性ラテックスポリマーの水性分散物を開示する。得られる組成物は向上した耐水性のPSAとして有用でありうる。これらのポリマーは様々な連鎖移動剤の存在下で形成されうる。米国特許出願第12/004,242号は凝集/接着バランスに関連する問題を解決することを試みるが、それは高温でのこれら所望の性能特性のバランスを達成する本発明のラテックスの形成に取り組むものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第12/004,242号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、連鎖移動剤および強化第2段階ポリマーの厳選したバランスを使用することによりこの問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は多段階(multi−staged)乳化重合プロセスによって形成される感圧接着剤を提供する。得られる接着剤は少なくとも1種の軟質第1ポリマーおよび少なくとも1種の強化ポリマー(reinforcing polymer)を含む。本発明によると、第1軟質ポリマーは、モノマー1kgあたり3〜12mmoleの連鎖移動剤の存在下での重合段階で形成され、当該第1ポリマーは−20℃未満のTgを有する。その後の重合段階において、当該第1ポリマーの存在下で強化ポリマーが形成される。得られるポリマーは高剥離であり、同時に他のPSA特性の良好なバランスも保持しているPSAとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において使用される場合、用語「(メタ)」の後に別の用語、例えば、アクリラートが続く用法は、アクリラートおよびメタクリラートの双方を意味する。例えば、用語「(メタ)アクリラート」はアクリラートまたはメタクリラートをいい;用語「(メタ)アクリル」はアクリルまたはメタクリルをいい;用語「(メタ)アクリロニトリル」はアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルをいい;用語「(メタ)アクリルアミド」はアクリルアミドまたはメタクリルアミドをいう。用語「(コ)ポリマー」は、本明細書において使用される場合、ホモポリマーおよびコポリマーをいう。
【0008】
本明細書において使用される場合、「ガラス転移温度」または「T」はガラス状ポリマーがポリマー鎖のセグメント運動を受けるであろう以上の温度を意味する。ポリマーのガラス転移温度はFox式により推定されうる;Bulletin of the American Physical Society,1,3,p.123(1956)を参照。本明細書において報告されるTの値はFox式を用いて計算される。
【0009】
本明細書において使用される場合、「多段階ポリマー」は、第1のまたは前の段階のポリマーの存在下で第2段階ポリマーおよびその後の段階のポリマーが重合される、2つの段階(「2段階」)または2より多い段階で形成されるポリマーを意味する。多段階ポリマーは、それにブレンドされる、混合されるまたは別の方法で添加される他のポリマーをさらに含むことができる。
【0010】
本明細書において使用される場合、「強化(reinforcing)ポリマー」は第1ポリマーの存在下で重合されるポリマーであって、60℃以上のTgを有するか、もしくは2以上のアルファ,ベータ−エチレン性不飽和基を有するモノマーから形成されるか、またはこれらの組み合わせであるポリマーを意味する。
【0011】
本発明のある実施形態においては、(a)第1ポリマーと強化ポリマーの全重量を基準として90〜99.5重量%の第1ポリマー、ここで、当該第1ポリマーは少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーから形成され、−20℃未満のTgを有し、第1ポリマーにおけるモノマー1kgあたり3〜12mmoleの連鎖移動剤の存在下で重合される;並びに(b)第1ポリマーと強化ポリマーの全重量を基準として0.5〜10重量%の強化ポリマー;を含む多段階エマルションポリマーが提供される。強化ポリマーを形成するために使用されるモノマーは第1ポリマー中に分散され、強化ポリマーを形成するためのモノマーの重合前に第1ポリマーを膨潤させることができる。
【0012】
本発明のある実施形態においては、(a)少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーの第1段階ポリマーの乳化重合工程、ここで、当該第1段階ポリマーは−20℃未満のTgを有し、重合は第1段階においてモノマー1kgあたり3〜12mmoleの連鎖移動剤の存在下で行われる;(b)強化ポリマーを形成するためのモノマーを第1段階ポリマーに添加する工程、ここで、当該モノマーは(i)60℃以上のTgを有するポリマーを形成することができるモノマー、および(ii)2以上のアルファ,ベータ−エチレン性不飽和基を有するモノマー、および(iii)これらの組み合わせからなる群から選択され、当該添加は有意な重合が起こらない条件下で行われる;並びに(c)強化ポリマーを形成するためのモノマーを第1段階ポリマーの存在下で重合する工程;を含む方法により製造されるラテックスポリマーエマルションが提供される。
【0013】
本発明の別の実施形態においては、(a)第1ポリマーと強化ポリマーの全重量を基準として90〜99.5重量%の第1ポリマー、ここで、当該第1ポリマーは少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーから形成され、−20℃未満のTgを有し、第1ポリマーにおけるモノマー1kgあたり3〜12mmoleの連鎖移動剤の存在下で重合される;並びに(b)第1ポリマーと強化ポリマーの全重量を基準として0.5〜10重量%の強化ポリマー;を含む多段階エマルションポリマーから形成される膜並びに基体を含む複合物品が提供される。
【0014】
本発明の別の実施形態においては、(a)少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーの第1段階ポリマーの乳化重合工程、ここで、当該第1段階ポリマーは−20℃未満のTgを有し、当該重合は第1段階におけるモノマー1kgあたり3〜12mmoleの連鎖移動剤の存在下で行われる;(b)強化ポリマーを形成するためのモノマーを第1段階ポリマーに添加する工程、ここで、強化ポリマーが60℃以上のTgを有するか、または2以上のアルファ,ベータ−エチレン性不飽和基を有するモノマーから形成されるか、またはこれらの組み合わせであるように当該モノマーが選択され、および当該添加は有意な重合が起こらない条件下で行われる;並びに(c)強化ポリマーを形成するためのモノマーを第1段階ポリマーの存在下で重合する工程;を含む方法により製造されるラテックスポリマーエマルションから形成される膜、並びに基体を含む複合物品が提供される。
【0015】
これらの実施形態においては、基体はテープもしくはラベル裏地(backing)、剛性もしくは柔軟な膜、金属化膜、合成発泡体および天然発泡体、熱可塑性基体および熱硬化性基体(すなわち、PVCおよびPETの様なプラスチック)、フロック(flocked)基体、可塑化ポリマー系基体および非−可塑化ポリマー系基体、紙、厚紙、プラスチック系複合体、セルロース系複合体、金属および他の物質を含むことができる。ある実施形態においては、基体は少なくとも1種の可塑剤を含むかもしくは含まないポリ塩化ビニル樹脂を含む。粘着テープ(mounting tape)用途においては、基体はプラスチック、金属、プラスター、木材、セルロール系複合体、プラスチック複合体、およびこれらの組み合わせであることができる。基体に存在する可塑剤はポリマー系可塑剤またはモノマー系可塑剤であることができ、好ましくはそのような可塑剤はモノマー系可塑剤である。
【0016】
乳化重合による水不溶性ラテックスポリマーの水性分散物の製造は当該技術分野において周知である。乳化重合の実施は、D.C.Blackley、Emulsion Polymerization(Wiley、1975)に詳細に論じられている。本発明の第1のおよびそれに続く水不溶性ラテックスポリマーを製造するために、従来の乳化重合技術が使用されることができる。乳化重合の実施は、H.Warson、The Applications of Synthetic Resin Emulsions,Chapter 2(Ernest Benn Ltd.,London 1972)にも論じられている。
【0017】
よって、モノマーはアニオン性、カチオン性または非イオン性分散剤で、例えば、全モノマーの重量に基づいて約0.25重量%〜5重量%の分散剤を用いて乳化されうる。アニオン性および非イオン性乳化剤の組み合わせも使用されうる。高分子量ポリマー、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、およびポリビニルアルコールが乳化安定剤および保護コロイドとして使用されることができ、ポリアクリル酸のように高分子電解質として使用されうる。
【0018】
好適なカチオン性分散剤には塩化ラウリルピリジニウム、セチルジメチルアミンアセタート、およびアルキル基が8〜18の炭素原子を有する塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウムが挙げられる。
【0019】
好適なアニオン性分散剤には、例えば、高級脂肪アルコール硫酸塩例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど;アルキルアリールスルホン酸塩、例えば、イソプロピルベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはカリウム、またはイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムもしくはカリウムなど;高級アルキルスルホコハク酸アルカリ金属塩、例えば、オクチルスルホコハク酸ナトリウム、N−メチル,N−パルミトイルタウリンナトリウム、オレイルイソチオン酸ナトリウムなど;並びにアルキルアリールポリエトキシエタノール硫酸またはスルホン酸のアルカリ金属塩、例えば、1〜5のオキシエチレン単位を有するtert−オクチルフェノキシポリエトキシエチル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0020】
好適な非イオン性分散剤としては、約7〜18の炭素原子のアルキル基および約6〜約60のオキシエチレン単位を有するアルキルフェノキシポリエトキシエタノール、例えば、ヘプチルフェノキシポリエトキシエタノール、メチルオクチルフェノキシポリエトキシエタノールなど;メチレン結合アルキルフェノールのポリエトキシエタノール誘導体;硫黄含有薬剤、例えば、約6〜約60モルのエチレンオキシドをノニルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどと、またはアルキル基が6〜16の炭素原子を含むアルキルチオフェノールと縮合させることにより製造されるもの;長鎖カルボン酸、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸などのエチレンオキシド誘導体、またはトール油中に認められるもののような酸の混合物の、1分子あたり6〜60のオキシエチレン単位を含むエチレンオキシド誘導体;長鎖アルコール、例えば、オクチル、デシル、ラウリルまたはセチルアルコールの類似エチレンオキシド縮合物、疎水性炭化水素鎖を有するエーテル化もしくはエステル化ポリヒドロキシ化合物のエチレンオキシド誘導体、例えば、6〜60のオキシエチレン単位を含むモノステアリン酸ソルビタン;また、長鎖もしくは分岐鎖アミン、例えば、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミンおよびオクタデシルアミンの、6〜60のオキシエチレン単位を含むエチレンオキシド縮合物;エチレンオキシドセクションが1以上の疎水性プロピレンオキシドセクションと一緒になったブロックコポリマーが挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸塩およびエトキシ化アルキルフェノールの混合物が使用されうる。
【0021】
フリーラジカル型の重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウムもしくはカリウムが単独で、もしくはレドックス系の酸化成分として使用されることができ、レドックス系はピロ亜硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウムまたはホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムなどの還元成分も含む。還元成分は多くの場合促進剤と称される。一般的に、触媒、触媒系またはレドックス系と称される開始剤および促進剤は、共重合されるモノマーの重量に基づいてそれぞれ、約0.01%以下から3%までの割合で使用されうる。レドックス触媒系の例としては、t−ブチルヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム/Fe(II)、および過硫酸アンモニウム/重亜硫酸ナトリウム/ヒドロ亜硫酸ナトリウム/Fe(II)が挙げられる。従来のように、重合温度は室温から90℃もしくはそれより高くてもよく、使用される触媒系に最適化されうる。乳化重合はシードを使用してもよいし、シードを使用しなくてもよい。シードを使用する(seeded)重合は、シードを使用しない(unseeded)重合よりもより均一な物理特性を有するラテックスポリマーの水性分散物を生じさせる傾向にある。
【0022】
メルカプタン、ポリメルカプタンおよびポリハロゲン化合物をはじめとする連鎖移動剤は重合混合物中に使用され、第1ポリマーのポリマー分子量を抑制する。それらは強化ポリマーの形成においても使用されうる。使用されうる連鎖移動剤の例には、長鎖アルキルメルカプタン、例えば、t−ドデシルメルカプタン、3−メルカプトプロピオン酸メチル、アルコール、例えば、イソプロパノール、イソブタノール、ラウリルアルコールもしくはt−オクチルアルコール、四塩化炭素、テトラクロロエチレンおよびトリクロロブロモエタンが挙げられる。本発明においては、連鎖移動剤は第1ポリマーのためのモノマー混合物に、第1段階におけるモノマー1キログラムあたり3または4mmoleの下限から、9または12mmoleの上限で添加される。全ての範囲は境界値を含み、組み合わせ可能である。強化ポリマーの形成において、さらなる連鎖移動剤が使用されることができる。
【0023】
重合プロセスは熱型またはレドックス型であることができ、すなわち、フリーラジカルは開始剤種の熱的な解離によって単に発生させられうるか、またはレドックス系が使用されうる。重合されるモノマーの全部または一部を含むモノマーエマルションは、モノマー、水および乳化剤を用いて製造されうる。水中に触媒を含む触媒溶液が別に製造されうる。モノマーエマルションおよび触媒溶液が、乳化重合の期間にわたって重合容器に共に供給されうる。反応容器自体は最初に水を収容することができる。反応容器はシードエマルションを追加的に含むこともでき、さらに重合触媒の初期投入を追加的に含むことができる。乳化重合中の反応容器の温度は冷却によって制御され、重合反応によってもしくは反応容器を加熱することによって生じた熱を除去することができる。いくつかのモノマーエマルションが同時に、反応容器に共に供給されてもよい。複数のモノマーエマルションが共に供給される場合には、それらは異なるモノマー組成のものであることができる。様々なモノマーエマルションが共に供給されるシークエンスおよび速度は乳化重合プロセス中で変更されうる。1種以上のモノマーエマルションの添加が完了した後、重合反応混合物がモノマー低減工程にかけられ、未反応モノマーおよび未反応重合触媒種の濃度を最小限にすることができる。反応容器の内容物のpHは乳化重合プロセスの過程中で変えられることもできる。熱的およびレドックス重合プロセスの双方が使用されうる。
【0024】
第1段階ポリマーを製造するのに使用されるモノマーは、合成樹脂エマルション技術において従来的に使用される如何なるものであってもよい。接着剤コーティング組成物において使用されるラテックスポリマーを製造するためには、アクリル系モノマーが好ましい。アクリル系モノマーの例としては、アクリルおよびメタクリル酸の(C−C24)アルキルエステルが挙げられる。本発明において使用される第1段階ポリマーを形成するのに使用されうるアクリルおよびメタクリル酸のエステルの(C−C24)アルキル基の例としては、メチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル、ラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリル基などが挙げられる。特定の例としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、もしくはアクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸イソデシル、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸sec−ブチル、およびメタクリル酸t−ブチルが挙げられる。本発明のラテックスポリマーの製造において、アクリルおよびメタクリル酸の(C−C12)アルキルエステルが好ましい。モノマー組成は、−20℃未満;または−30℃以下;または−40℃以下のランダムコポリマーのガラス転移温度(Tg)特性を有する第1段階ポリマーを生じさせるように選択される。
【0025】
ある実施形態においては、本発明の第1ポリマーは、−40℃未満のホモポリマーTgを有する少なくとも1種のモノマーを第1ポリマーにおけるモノマーの少なくとも40重量%、並びに30℃以下の、好ましくは10℃未満のホモポリマーTgを有する少なくとも1種の親水性非イオン性モノマーを10〜50重量%含む。親水性モノマーは25℃で約2%以上の水可溶性を有し;好ましいモノマーはアクリル酸エチル、アクリル酸メチルおよび酢酸ビニルを含む。
【0026】
本発明の第1ポリマーの製造におけるアクリル系モノマーとのコモノマーとして、少ない割合(すなわち、全モノマー組成の5重量%未満)で有用な他のモノエチレン性不飽和重合性モノマーには、ハロゲン化ビニリデン、ハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、およびプロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、並びにエチレンとそのようなビニルエステルとの混合物、メタクリル酸ジエチレングリコールモノメチルもしくはモノブチルエーテルなどのアルコールエーテルのアクリルおよびメタクリル酸エステル、ベータ−アクリルオキシプロピオン酸の(C−C10)アルキルエステル、並びにアクリル酸の高級オリゴマー、スチレン並びにアルキル置換スチレンおよびビニル芳香族、例えば、アルファ−メチルスチレン、エチレンと他のアルキルオレフィン、例えば、プロピレン、ブチレン、ペンテンなどとの混合物、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ビニル2−メトキシエチルエーテル、ビニル2−クロロエチルエーテルなどのビニルエーテルなどが挙げられる。アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチルが第1ポリマーに特に好ましいモノマーである。ある好ましい実施形態においては、第1ポリマーは、50℃を超えるホモポリマーTgを有する少なくとも1種の非イオン性モノエチレン性不飽和モノマー、例えば、メタクリル酸メチル、またはスチレンもしくは他のスチレン系モノマーを0.25〜5%含む。
【0027】
本発明の第1ポリマーの製造において有用な追加のモノエチレン性不飽和重合性コモノマーには、ヒドロキシ官能性ビニルモノマー、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ブタンジオール、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、およびメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルが挙げられる。有用なモノマーのさらなる例としては、不飽和脂肪族ジカルボン酸の部分エステル、特にそのような酸のアルキルハーフエステルが挙げられる。そのような部分エステルの例には、イタコン酸、フマル酸およびマレイン酸の、アルキル基が1〜6の炭素原子を含むアルキルハーフエステルがある。このグループの化合物の代表的なメンバーとしては、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチルおよびマレイン酸モノメチルが挙げられる。少量の他のコモノマー、例えば、接着速進コモノマーなども使用されうる。これらのモノマーは、アクリル系モノマーと共重合されることができ、第1ポリマーを生じさせることができる。
【0028】
本発明の第1ポリマーの形成において、アクリル系モノマーおよび他のモノマーと共重合されうるアルファ,ベータ−エチレン性不飽和カルボン酸の例には、アクリル酸、メタクリル酸、ベータ−アクリルオキシプロピオン酸、およびアクリル酸の高級オリゴマー、並びにこれらの混合物、エタアクリル酸、イタコン酸、アコニット酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸、アルファ−クロロアクリル酸、ケイヒ酸、メサコン酸並びにこれらの混合物が挙げられる。アクリル酸およびメタクリル酸が好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。アルファ,ベータ−エチレン性不飽和カルボン酸が、第1ポリマーのモノマー組成の、モノマーの全重量を基準にして、10重量%、5重量%もしくは3.5重量%の上限から、0.1重量%、0.25重量%もしくは0.5重量%の下限までの範囲の量を構成するのが好ましい。全ての範囲は包括的で、組み合わせ可能である。
【0029】
モノエチレン性不飽和モノマーに加えて、少なくとも2つのアルファ,ベータ−エチレン性不飽和部位を有するアルファ,ベータ−エチレン性不飽和モノマー、すなわち、ジ−または多−エチレン性不飽和モノマーが少しの割合で、第1ポリマー製造におけるコモノマーとして使用されうる。しかし、多−エチレン性不飽和モノマーを使用することは必須ではない。
【0030】
ある好ましい実施形態においては、第1ポリマーは重合性界面活性剤の存在下で形成されうる。好適なエチレン性不飽和界面活性剤モノマーとしては、これに限定されないが、例えば、少なくとも1種の酸(ここで、当該酸はスルホン酸、カルボン酸もしくはリン酸またはその混合物である)、および少なくとも1種の窒素含有塩基(nitrogenous base)(ここで、当該窒素含有塩基は少なくとも1つの窒素原子および少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を含有する)を含む塩もしくは第4級窒素化合物が挙げられる。他の好適な例は、米国特許出願公開第2003/0149119号に記載されている。
【0031】
他の好適な重合性界面活性剤モノマーには、ノニルフェノキシプロペニルポリエトキシ化スルファート(例えば、Daiichi CorpからのHitenol(商標)として);アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム(例えば、Henkel CorpからのTrem(商標)LF−40として);ジ−(トリシクロ(5.2.1.0 2,6)デセ−3−エン−(8または9)オキシエチルスルホコハク酸アンモニウム;およびジ−(トリシクロ(5.2.1.0 2,6)デセ−3−エン−(8または9)スルホコハク酸アンモニウムが挙げられる。さらに、不飽和C−C30有機酸のアンモニウムおよび金属塩が、単独でまたは上記界面活性剤との組み合わせで使用されうる。これらの酸の例には、アルファメチルケイヒ酸、アルファフェニルケイヒ酸、オレイン酸、リネオリン酸(lineolic acid)(米国特許第5,362,832号に記載される)、リンシノレイン酸(rincinoleic acid)、トール油ロジンおよび脂肪酸の不飽和画分、不均化ロジン酸、大豆油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、ひまわり油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、ベニバナ油脂肪酸、モノオレイン酸ソルビタン、アビエチン酸、セスキオレイン酸ポリ(オキシエチレン)ソルビトールおよびEmpol(商標)1010ダイマー酸がある。さらなる好適な重合性界面活性剤モノマーには、例えば、(米国特許第4,246,387号に記載されるような)マレアート誘導体および(特開昭62−227435号に記載されるような)アルキルフェノールエトキシラートのアリル誘導体も挙げられる。使用される界面活性剤の量は、モノマーの全重量に基づいて、典型的には、0.1〜6重量%、好ましくは0.1〜2重量%である。
【0032】
さらに、約35,000未満の数平均分子量および少なくとも40℃の軟化点を有する低分子量ポリマー成分(米国特許第4,912、169号に記載される)が、第1ポリマーにおけるモノマーの重量に基づいて、2、3または5重量%の下限および15、20または25重量%の上限(全ての範囲は境界値を含み、組み合わせ可能である)で、別の分散物として混合されることができ、または第1および/もしくは第2段階ポリマーの存在下で、別の重合工程として形成されうる。あるいは、第1段階ポリマーは低分子量ポリマー成分の存在下で形成されうる。低分子量ポリマー系添加剤は上記タイプの重合性界面活性剤を使用して形成されうる。低分子量ポリマー系添加剤はラテックスエマルションポリマーにおいて粘着付与剤として機能しうる。
【0033】
重合禁止剤が場合によって、第1ポリマー製造の重合プロセスに添加されうる。2−段階および多−段階ポリマーの場合には、第1ポリマーの製造後で、第2もしくはその後の段階の前に、重合禁止剤が添加されることができ、あるいは本発明の組成物を製造する方法における第2もしくはその後の段階は禁止剤を添加することなく行われうる。
【0034】
プロセスの第2の段階においては、強化ポリマーを形成するために使用されるモノマーは60℃以上のTgを有するポリマーを形成するようなモノマー;2以上のアルファ,ベータ−エチレン性不飽和基を有するモノマー;またはこの組み合わせを含む。少なくとも2つのアルファ,ベータ−エチレン性不飽和部位を有するアルファ,ベータ−エチレン性不飽和モノマーは「多官能性モノマー」もしくは「MFM」と称されうる。ある実施形態においては、強化ポリマーは、強化ポリマーの全重量を基準にして、1〜100重量%、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜100重量%のMFMを含む。ある実施形態においては、強化ポリマーは60℃以上のTgを有することができ、MFMを含まないことができる。
【0035】
60℃以上のTgを有する強化ポリマーの製造に使用されるモノマーには、メタクリル酸メチル、スチレンおよび他のスチレン系モノマー、メタクリル酸イソボルニル並びにメタクリル酸t−ブチルが挙げられる。
【0036】
MFMの例としては、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール、ジメタクリル酸ポリプロピレングリコール、ジメタクリル酸ネオペンチルグリコール、ジアクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジアクリル酸ネオペンチルグリコール、トリメタクリル酸トリメチロールエタン、トリアクリル酸ジペンタエリスリトール、テトラアクリル酸ジペンタエリスリトール、ペンタアクリル酸ジペンタエリスリトール、クロレンド酸ジメタアリル、クロレンド酸ジアリル、フマル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、イソシアン酸トリアリル、トリメリット酸トリアリル、ジアクリル酸1,6−ヘキセンジオール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、ジアクリル酸トリプロピレングリコール、メタクリル酸ジアリルおよびジビニルベンゼンが挙げられる。
【0037】
MFMは2つのアルファ,ベータ−エチレン性不飽和部位を有するモノマー、および3つのアルファ,ベータ−エチレン性不飽和部位を有するモノマーからなる群から選択されることが好ましい。2つのアルファ,ベータ−エチレン性不飽和部位を有するモノマーはジアクリル酸エステルおよびジメタクリル酸エステルから選択されることも好ましい。3つのアルファ,ベータ−エチレン性不飽和部位を有するモノマーはトリアクリル酸エステルおよびトリメタクリル酸エステルから選択されることも好ましい。別の実施形態においては、2つのアルファ,ベータ−エチレン性不飽和部位を有するモノマーが、多官能性スチレン系モノマー、例えば、ジビニルベンゼンを含む群から選択されることが好ましく、これは単独で使用されうるかまたは他の好適なMFMと組み合わせて使用されうる。好ましいジアクリル酸エステルおよびジメタクリル酸エステルのなかで、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジアクリル酸1,6−ヘキセンジオール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、およびジアクリル酸トリプロピレングリコールが特に好ましい。好ましいトリアクリル酸エステルおよびトリメタクリル酸エステルのなかで、トリアクリル酸トリメチロールプロパンおよびトリメタクリル酸トリメチロールプロパンが特に好ましい。
【0038】
MFMとして有用な他のモノマーには、ジイソシアナートおよびトリイソシアナートから選択される少なくとも1種の化合物と、アクリル酸ヒドロキシ(C−C)アルキルおよびメタクリル酸ヒドロキシ(C−C)アルキルから選択される少なくとも1種の化合物との反応生成物が挙げられる。これらの例としては、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピルと2,4−トルエンジイソシアナートとの反応生成物、およびアクリル酸2−ヒドロキシエチルとヘキサメチレンジイソシアナートとの反応生成物が挙げられる。同様に、ジ−およびトリ−エポキシ官能性化合物から選択される少なくとも1種の化合物と、アクリル酸およびメタクリル酸から選択される少なくとも1種の化合物との反応生成物が使用されうる。さらに、ジ(C−C)アルコキシ化(C−C)アルカンジオール、トリ(C−C)アルコキシ化(C−C12)アルカントリオール、およびジ(C−C)アルコキシ化ビスフェノールAから選択される少なくとも1種の化合物と、アクリル酸およびメタクリル酸から選択される少なくとも1種の化合物との反応生成物から選択されるモノマーが使用されうる。トリメチロールプロパンとベータ−アクリルオキシプロピオン酸との反応生成物も使用されうる。
【0039】
好ましくは、強化ポリマーを形成するために使用されるモノマーは、それらが低い水溶解度を有するモノマーを実質的な割合で含むように選択されるべきである。少ない量、すなわち、強化ポリマーの全重量を基準にして約5重量%未満の水可溶性モノマー、例えば、メタクリル酸またはアクリル酸のようなエチレン性不飽和カルボン酸が、強化ポリマーを形成するために使用されるモノマー中に含まれうる。低い水溶解度を有するMFMの例としては、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン(25℃での水溶解度;<0.01g/HO100g(すなわち、<0.01重量%))、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール(<0.01重量%)、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコール(0.07重量%)、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール(0.05重量%)、トリアクリル酸トリメチロールプロパン(0.17重量%)、ジメタクリル酸エチレングリコール(0.28重量%)およびジメタクリル酸ジエチレングリコール(0.33重量%)が挙げられる。
【0040】
さらに、感圧接着剤は可塑剤、粘着付与剤、架橋剤、多価金属イオン塩、消泡剤、増粘剤、レオロジー改質剤、顔料および湿潤剤を含みうる。
【0041】
本発明において有用な具体的な粘着付与剤には、高軟化点の粘着付与剤および低軟化点の粘着付与剤が挙げられる。典型的には、それらは、ポリマーの全重量に基づいて、50、35および25重量%の上限から、0.5、1および2重量%の下限までの範囲で存在する。全ての範囲は境界値を含み、組み合わせ可能である。ここで使用される場合、高軟化点の粘着付与剤は100℃以上、好ましくは100〜130℃の軟化点を有する粘着付与剤として定義され;低軟化点の粘着付与剤は100℃未満、好ましくは70℃から100℃までの軟化点を有する。粘着付与剤樹脂には、ロジン、ロジンエステル、C5〜C9ベースの炭化水素、並びにロジンと炭化水素樹脂とのハイブリッドブレンドが挙げられる。典型的には、これらの化合物は水性分散物として添加される。本発明のある実施形態においては、エマルションポリマーは、70℃以上の軟化点を有する粘着付与剤をさらに含む。
【0042】
好ましくは、強化ポリマーを形成するために使用されるモノマーを第1段階ポリマーに添加した後、充分な時間は、モノマーがラテックス粒子を膨潤させるのを可能にすることができる。強化ポリマーを形成するために使用されるモノマーは、低い水溶解度を有するこれらのモノマーのみを含むように選択されうる。低い水溶解度とは、周囲温度での、約2g未満/水100g(2重量%未満)の水中での溶解度を意味する。好ましくは、そのモノマーは、モノマー膨潤第1段階ポリマーが追加のアルファ,ベータ−エチレン性不飽和モノマーで膨潤され本質的に平行化するまで、第1段階ポリマーを膨潤させることができる。強化ポリマーを形成するために使用されるモノマーの好ましくは50%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満が、強化ポリマーを形成するために使用されるモノマーの添加の完了前に重合される。膨潤プロセス中に、水性分散物は撹拌されうる。
【0043】
第1段階ポリマーが膨潤され本質的に平行化した後、強化ポリマーを形成するために使用されるモノマーが、モノマー膨潤された当初ラテックスポリマー内で重合される。すなわち、第1段階ポリマーが膨潤され本質的に平行化するまでに、有効量の開始剤もしくは他の重合促進剤は存在しないか、またはモノマー混合物に導入されず;有効量の開始剤もしくは他の促進剤の導入前の条件は、ここにおいては有意な重合が起こらない条件と称されるものである。このような条件は1)第1段階ポリマーを形成するために使用される開始剤で残留しているものを分解することによって、例えば、その開始剤を熱的に分解するような温度および時間で第1段階ポリマーの分散物を維持することよって;2)好適な還元剤の添加によって、第1段階ポリマーを形成するために使用される開始剤で残留しているものを分解することによって;3)分散物の温度を下げることにより、分散物中のラジカルの形成を低減もしくは除去することによって;4)分散物へのフリーラジカル開始剤の添加によって;または上記項目の2以上の組み合わせによって;水性分散物中の重合を低減させることにより達成されうる。この第2のまたはそれに続く段階の重合は従来のフリーラジカル発生開始剤系によって開始されうる。好ましくは、その開始はレドックス開始の方法により起こる。
【0044】
上述のラテックスポリマーエマルションPSAは様々な基体に適用され、本発明の複合体を形成することができる。基体はテープまたはラベル裏地、剛性または柔軟な膜、金属化膜、合成発泡体および天然発泡体、熱可塑性基体および熱硬化性基体(すなわち、PVCおよびPETのようなプラスチック)、フロック基体、可塑化ポリマー系基体および非可塑化ポリマー系基体、紙、厚紙、プラスチック系複合体、セルロース系複合体、金属並びに他の物質を含むことができる。ある実施形態においては、基体は、少なくとも1種の可塑剤を含むかもしくは含まないポリ塩化ビニル樹脂を含む。接着テープ用途においては、基体はプラスチック、金属、プラスター、木材、セルロース系複合体、プラスチック複合体およびその組み合わせであることができる。基体とポリマーエマルションとの複合体を製造する方法は当業者に周知である。
【0045】
本発明のある実施形態においては、基体とポリマーとの複合体は低エネルギー基体、例えば、自動車用途の低エネルギー基体に接着させられる。このような低エネルギー基体には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、レンズフィニッシュ(lens finished)PP、タルク−充填PPおよび熱可塑性ポリオレフィン(TPO)並びに充填TPOが挙げられる。
【実施例】
【0046】
第1段階重合が連鎖移動剤なしで行われた多段階乳化重合の比較サンプルが次のように製造された。次の物質を含むモノマーエマルションが製造された:
【0047】
【表1】

【0048】
スターラー、温度計、および還流凝縮器を備えた5リットルの四つ口丸底フラスコに、800gの脱イオン(DI)水を入れ、これは窒素雰囲気中で83〜85℃に加熱された。
【0049】
83〜86℃で、次の物質がフラスコに入れられた:
【表2】

【0050】
これらの添加の直後、モノマーエマルションが80分の供給をもたらす様に計算された速度で供給された。必要に応じて冷却することにより83−85℃の温度が維持された。
モノマーエマルション供給の終わり近くで、次の溶液が準備された:
次の物質を含む第二のモノマーエマルション:
【表3】

【0051】
および、触媒AおよびB:
【表4】

【0052】
モノマーエマルション供給が完了したとき、温度は83−85℃で30分間保たれた。次いで、反応生成物は60℃に冷却され、その時点で第2のモノマーエマルションが5分間の供給をもたらす様に計算された速度で供給された。第2のモノマーエマルション供給が完了したとき、温度は59−61℃で5分間保たれた。5分間の保持後、触媒Aおよび触媒Bがフラスコに添加された。反応生成物はその温度で20分間保持された。保持中、次の溶液が準備された:
【0053】
【表5】

【0054】
保持が完了した後、触媒溶液Cおよび触媒溶液Dが30分の供給をもたらす様に計算された速度で供給された。次いで、中和剤が10分の供給をもたらすように計算された速度で供給された。次いで、反応生成物は室温まで冷却され、100メッシュ(ふるいの開口0.149mm)を通してろ過された。
【0055】
前述の比較例Aは、第1段階において0mmol/kgモノマーMMPで、2重量%の強化ポリマーで製造された。次の表は他の比較例(B〜L)および本発明の実施例(1〜4)における成分についての重量を有する:
【0056】
【表6】

【0057】
【表7】

表2に示される試験結果は下記のように行われた。
【0058】
試験のための接着剤ストリップの製造
コロナ処理された50ミクロンのポリエチレンテレフタラート(PET)膜のシートが、RK Print Coat Instruments K202 Control Coater上で、US−56マイヤーロッド(meyer rod)を用いて、50g/m被覆重量を送達するスピード4で設定されて、直接、湿潤エマルションPSAで被覆された。被覆されたPETシートを10分間空気乾燥させ、次いで、105℃で3分間オーブン乾燥させた。次いで、PSAで被覆されたPETフェースストック(facestock)はChemsultants RP−12シリコーン剥離ライナー(release liner)で閉じられた。そのシートは、標準のまな板を用いて、グレイン(grain)のドローダウンで、1インチ幅のストリップに切断された。切断されたストリップは、次いで、22℃、50%湿度に制御された温度および湿度の部屋で一晩老化させた。接着剤ストリップは、次いで、試験に使用される準備ができた。
【0059】
24時間ステンレス鋼(SS)180°剥離
接着剤ストリップの剥離ライナーが取り除かれ、次いで露出したストリップが清浄な5cm×15cmステンレス鋼パネルに縦方向に貼り付けられた。その上にストリップを備えたパネルは、次いでChemInstruments Rolldown自動化ローラー上に置かれ、これはそのパネルに対して1分間あたり30cmの速度で2kgローラーを適用した。準備されたストリップを次いで22℃、50%の湿度で24時間、温度および湿度制御室内で老化させた。24時間後、パネル上のストリップはAnalogic Measurometer II剥離試験器上に配置され、1分間あたり30cmの速度で180°剥離を行った。測定はオンス単位であり、これはポンドに変換された(1ポンド=16オンス=4.4ニュートン)。
【0060】
2.5cm×2.5cm×1.8kg室温(RT)剪断試験
接着剤ストリップの剥離ライナーが取り除かれ、次いで、露出したストリップが清浄な5cm×15cmステンレス鋼パネルに縦方向に、ストリップの約1インチがパネルの端から突き出ているように貼り付けられた。その上にストリップを備えたパネルは次いでChemInstruments Rolldown自動化ローラー上に置かれ、これはそのパネルに対して1分間あたり30cmの速度で2kgローラーを適用した。余分な長さのストリップが突き出ているパネルの端部上に2.5cmの金属スタンプのセットが配置され、そのストリップの2.5cm×2.5cmの部分が刃で切断された。残りの長さのテープがパネルから取り除かれ、次いでパネルは剪断バー(shear bar)のために準備された。パネルから突き出ている余分なテープが2.5cm×2.5cmの正方形の厚紙で強化され、次いで、マスキングテープおよびステープルでさらに強化された。次に穴あけパンチが使用され、強化した突き出ている領域の中央部に穴を開けた。次いで、パネルはScientific Machine&Co.剪断バー上のスロットに備え付けられた。タイマーがゼロにされ、1.8kgのおもりがストリップの穴につり下げられた。測定は時間単位であった。
【0061】
65℃での加熱剪断
接着剤ストリップの剥離ライナーが取り除かれ、次いで、露出したストリップが清浄な5cm×7.5cmステンレス鋼パネルに横方向に、ストリップの約2.5cmがパネルの端から突き出ているように貼り付けられた。その上にストリップを備えたパネルは次いでChemInstruments Rolldown自動化ローラー上に置かれ、これはそのパネルに対して1分間あたり30cmの速度で2kgローラーを適用した。余分な長さのストリップが突き出ているパネルの端部上に2.5cmの金属スタンプのセットが配置され、そのストリップの2.5cm×2.5cmの部分が刃で切断された。残りの長さのテープがパネルから取り除かれ、次いでパネルは加熱剪断試験のために準備された。パネルから突き出ている余分なテープが2.5cm×2.5cmの正方形の厚紙で強化され、次いで、マスキングテープおよびステープルでさらに強化された。次に穴あけパンチが使用され、強化した突き出ている領域の中央部に穴を開けた。次いで、パネルは、Gruenbergオーブン中で65℃に設定されたChemInstruments30 Bank Shear Tester上のスロットに備え付けられた。タイマーがゼロにされ、1kgのおもりがストリップの穴につり下げられた。測定は分単位であった。
【0062】
剪断接着破壊温度(Shear Adhesion Failure Temperature(SAFT))
接着剤ストリップの剥離ライナーが取り除かれ、次いで、露出したストリップが清浄な5cm×7.5cmステンレス鋼パネルに横方向に、ストリップの約2.5cmがパネルの端から突き出ているように貼り付けられた。その上にストリップを備えたパネルは次いでChemInstruments Rolldown自動化ローラー上に置かれ、これはそのパネルに対して1分間あたり30cmの速度で2kgローラーを適用した。そのローラーはパネル上で上がって戻る全サイクルを完了させ、パネルに適切な量の圧力を適用することを完了させた。余分な長さのストリップが突き出ているパネルの端部上に2.5cmの金属スタンプのセットが配置され、そのストリップの2.5cm×2.5cmの部分が刃で切断された。残りの長さのテープがパネルから取り除かれ、次いでパネルはSAFT試験のために準備された。パネルから突き出ている余分なテープが2.5cm×2.5cmの正方形の厚紙で強化され、次いで、マスキングテープおよびステープルでさらに強化された。次に穴あけパンチが使用され、強化した突き出ている領域の中央部に穴を開けた。次いで、パネルは、Gruenbergオーブン中で40℃に設定されたChemInstruments30 Bank Shear Tester上のスロットに備え付けられた。タイマーがゼロにされ、1kgのおもりがストリップの穴につり下げられ、SAFTプログラムが開始されたた。40℃で20分の保持、次いで試験が終了したときの205℃まで1分間あたり0.5℃の温度上昇を行った。測定は分単位であり、次いでSAFTチャートを通じて、温度に変換し、接着剤SAFT温度を与えた。
【0063】
ループタック試験
12.5cmの接着剤ストリップの剥離ライナーが取り除かれ、次いで、露出したストリップは、その両端を接着剤側を外側にして付着させることによりループに形作られた。マスキングテープがその端部の周りに巻き付けられ、ループを固定し、その固定された領域にステープルが押しつけられ、ループ試験器へのより良好な接続のための端部を作り出した。ループの固定された端部がChatillon DFM10ループタック試験器のクランプに取り付けられた。次いで、2.5cm幅のステンレス鋼パネルがその基体領域に備え付けられ、ねじを締められた。ロードセルがゼロにされ、試験が開始された。ループはパネルの2.5cm×2.5cm断面を覆うように下まで運ばれ、次いで、直ちに持ち上げられ、タックを測定した。測定はポンド単位であった(1ポンド=4.4ニュートン)。
【0064】
表2に示されるデータはそれぞれのパラメータについて3回の測定の平均である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1ポリマーと強化ポリマーの全重量を基準として90〜99.5重量%の第1ポリマー、ここで、当該第1ポリマーは少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーから形成され、−20℃未満のTgを有し、第1ポリマーにおけるモノマー1kgあたり3〜12mmoleの連鎖移動剤の存在下で重合される;並びに
(b)第1ポリマーと強化ポリマーの全重量を基準として0.5〜10重量%の強化ポリマー、ここで、当該強化ポリマーは60℃以上のTgを有するか、または2以上のアルファ,ベータ−エチレン性不飽和基を有するモノマーから形成されるか、またはそれらの組み合わせである;
を含む多段階エマルションポリマー。
【請求項2】
強化ポリマーを形成するために使用されるモノマーが第1ポリマー中に分散され、強化ポリマーを形成するために使用されるモノマーの重合前に第1ポリマーを膨潤させる、請求項1に記載のエマルションポリマー。
【請求項3】
連鎖移動剤がメルカプタン、ポリメルカプタン、アルコールおよびポリハロゲン化合物からなる群から選択される、請求項1に記載のエマルションポリマー。
【請求項4】
第1ポリマーにおけるモノマー1kgあたり4〜9mmoleの連鎖移動剤の存在下で第1ポリマーが重合される、請求項1に記載のエマルションポリマー。
【請求項5】
強化ポリマーが、2以上のアルファ,ベータ−エチレン性不飽和基を有するモノマーを、強化ポリマーの全重量を基準にして1〜100重量%含む、請求項1に記載のエマルションポリマー。
【請求項6】
70℃以上の軟化点を有する粘着付与剤をさらに含む請求項1に記載のエマルションポリマー。
【請求項7】
(a)少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーの第1段階ポリマーの乳化重合工程、ここで、当該第1段階ポリマーは−20℃未満のTgを有し、重合は第1段階におけるモノマー1kgあたり3〜12mmoleの連鎖移動剤の存在下で行われる;
(b)強化ポリマーを形成するためのモノマーを第1段階ポリマーに添加する工程、ここで、強化ポリマーが60℃以上のTgを有するか、または2以上のアルファ,ベータ−エチレン性不飽和基を有するモノマーから形成されるか、またはこれらの組み合わせであるように前記モノマーが選択され、当該添加は有意な重合が起こらない条件下で行われる;並びに
(c)強化ポリマーを形成するためのモノマーを第1段階ポリマーの存在下で重合する工程;
を含む方法により製造されるラテックスポリマーエマルション。
【請求項8】
第1ポリマーにおけるモノマー1kgあたり4〜9mmoleの連鎖移動剤の存在下で第1ポリマーが重合される、請求項7に記載のラテックスポリマーエマルション。
【請求項9】
基体および多段階エマルションポリマーから形成される複合物品であって、
当該エマルションポリマーが、
(a)第1ポリマーと強化ポリマーの全重量を基準として90〜99.5重量%の第1ポリマー、ここで、当該第1ポリマーは少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーから形成され、−20℃未満のTgを有し、第1ポリマーにおけるモノマー1kgあたり3〜12mmoleの連鎖移動剤の存在下で重合される;並びに
(b)第1ポリマーと強化ポリマーの全重量を基準として0.5〜10重量%の強化ポリマー、ここで、当該強化ポリマーは60℃以上のTgを有するか、または2以上のアルファ,ベータ−エチレン性不飽和基を有するモノマーから形成されるか、またはそれらの組み合わせである;
を含む、複合物品。
【請求項10】
基体が、テープ裏地およびラベル裏地、剛性膜および柔軟な膜、金属化膜、合成発泡体および天然発泡体、熱可塑性基体および熱硬化性基体、フロック基体、可塑化ポリマー系基体および非−可塑化ポリマー系基体、紙、厚紙、プラスチック系複合体、セルロース系複合体、並びに金属からなる群から選択される請求項9に記載の複合物品。
【請求項11】
第1ポリマーにおけるモノマー1kgあたり4〜9mmoleの連鎖移動剤の存在下で第1ポリマーが重合される、請求項9に記載の複合物品。

【公開番号】特開2010−13641(P2010−13641A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−139340(P2009−139340)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】