説明

エマルション及びその製造法

【課題】 従来の粘着付与樹脂、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤、顔料等のエマルションの耐水性、及びCR、SBR、ACM等のエマルションへの配合効果を改良するためのエマルション、並びにその製造法を提供する。
【解決手段】 3wt%以下の従来型乳化剤を含有し、親水基含有ポリマーによって疎水性物質が乳化安定化されており、平均粒径10〜200nmであるエマルション、及びその製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水基含有ポリマーによって疎水性物質が乳化安定化されている平均粒径10〜200nmのエマルション、及びその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤、及び有機顔料など、水に溶けない疎水性物質を、乳化剤を用いて水中に強制乳化した、所謂エマルションは、接着剤、粘着剤、プライマー、塗料、コーティング剤、バインダー、繊維加工、紙加工、皮革仕上げ加工、手袋、指サック、気球、フロアポリッシュ、トナー、インキなど幅広い用途で使用されている。また、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、磁性粒子などの無機微粒子を、乳化剤等を用いて水中に分散させて得られるこれらの分散液も、各種用途で利用されている。
【0003】
例えば、上記の粘着付与樹脂、可塑剤、及び軟化剤のエマルションは、クロロプレン系ポリマー(以下CRと略称することがある)エマルション接着剤、スチレンブタジエン系ポリマー(以下SBRと略称することがある)エマルション接着剤、アクリル系ポリマー(以下ACMと略称することがある)エマルション粘着剤、ACMエマルション塗料、エチレン/酢酸ビニル系ポリマー(以下EVAと略称することがある)エマルション接着剤、ポリオレフィン系樹脂エマルションコーティング剤、エポキシ系樹脂エマルション接着剤等にタック性、柔軟性、造膜性、ポリオレフィン接着性などを付与する目的で配合される。
【0004】
上記の酸化防止剤や紫外線吸収剤のエマルションは、上記エマルション接着剤、エマルション粘着剤、エマルション塗料、及びエマルションコーティング剤等(以下これらを合わせて、エマルション接着剤等と略称することがある)の老化防止、着色防止を目的として配合される。
【0005】
上記の架橋剤のエマルション(例えば、ブロック化イソシアネート等)は、エマルション接着剤等の強度や耐熱性向上を目的として配合される。
【0006】
上記の顔料のエマルションは、エマルション接着剤等に着色を施す目的で配合されるほか、これ自体、水性インクとしても使用される。
【0007】
従来の粘着付与樹脂、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤、及び顔料エマルションは、一般的な水溶性の乳化剤又は水溶性ポリマーを用いて、粘着付与樹脂、又は可塑剤を水中に強制的に乳化、分散させて製造される。これらエマルションは、有機溶剤を殆ど含まないため、安全や環境の面ではメリットがあるが、多量の乳化剤を含むため、上記水性接着剤、粘着剤、コーティング剤、塗料などの接着性、付着性、耐水性は必ずしも満足できるものではなかった。また、例えば、従来のエマルションは、300nm程度の平均粒径を有するものが殆どであり、従来から使用されている、有機溶剤を用いた溶剤系CR接着剤、SBR接着剤、ACM粘着剤、ACM塗料、ポリオレフィンコーティング剤などと比較すると、均一性がはるかに低いため、粘着付与樹脂、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤、及び顔料などの配合効果が小さい問題があった。
【0008】
そこで、粘着付与樹脂エマルションをACMエマルションに配合するのではなく、アクリルモノマーを乳化重合してACMエマルションを製造する際に、ACMエマルション粒子内に粘着付与樹脂を複合化(内部添加)させる試みが行われている。例えば、予め粘着付与樹脂を溶解させたアクリルモノマーを、乳化剤を用いて水中に乳化し、ラジカル開始剤を加えて乳化重合を行う方法が開示されている(特許文献1)。
【0009】
しかしながら、粘着付与樹脂が析出し易く、最終的にアクリルポリマーと粘着付与樹脂は独立した粒子を形成する旨が記載されている。また、一般的な水溶性の乳化剤を多量に用いるため、これら乳化剤による接着性、付着性、耐水性への影響は解消されていない。
【0010】
また、一般的な乳化剤の代わりに、アクリルオリゴマーを用い、酸変性した粘着付与樹脂を強制的にエマルション化する方法(特許文献2)、分子内に有機酸を含有するメタクリル酸エステル系ポリマーを用いて粘着付与樹脂を強制的にエマルション化する方法(特許文献3)、スチレンスルホン酸/メタクリル酸エステルランダム共重合体を用いて粘着付与樹脂を強制的にエマルション化する方法(特許文献4)が開示されている。
【0011】
しかしながら、特許文献2で得られるエマルションは粒径が大きいため、粘着付与樹脂エマルションの配合効果は依然小さく、また、粘着付与樹脂が酸性基を有するため、CRエマルション、SBRエマルション、ACMエマルション、エポキシ樹脂エマルション、ポリオレフィン樹脂エマルション等のベースエマルションポリマーとの相溶性に制約がある。特許文献3、4は粒径に言及していないが、ポリマー末端ではなく、分子内に親水基を有するポリマーでは、エマルションの安定化に必要な親水基含有ポリマーの使用量が多くなり、また、エマルションの小粒径化に限界がある。また、特許文献4は、一般的な乳化剤の代わりに、スチレンスルホン酸/メタクリル酸エステルランダム共重合体等、純水に可溶なポリマーを用いるため、耐水性は必ずしも満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3964264号公報
【特許文献2】特開2005−330436号公報
【特許文献3】特許第3953796号公報
【特許文献4】特公平7−24747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のように、従来型乳化剤の含有量が少なく、かつ、小粒径の粘着付与樹脂、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤、及び顔料等のエマルションが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記した課題を解決するために鋭意検討した結果、従来の乳化剤の代わりに、特定の親水基含有ポリマーを用い、親水性溶剤の共存下、粘着付与樹脂、可塑剤等の疎水性物質を強制乳化することにより、平均粒径10〜200nmで、かつ従来型乳化剤を全く含まない又は従来型乳化剤の含有量が大幅に低減された粘着付与樹脂や可塑剤等のエマルションが得られ、従来の課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、3wt%以下の従来型乳化剤を含有し、親水基含有ポリマーによって疎水性物質が乳化安定化されており、平均粒径10〜200nmであるエマルション、及びその製造法である。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明のエマルションは、3wt%以下の従来型乳化剤を含有するものである。3wt%以下の従来型乳化剤を含有するとは、従来のエマルションで使用されている従来型乳化剤を含まない又は従来型乳化剤の含有量が著しく低減されたものをいう。従来型乳化剤を含まないものとは、従来型乳化剤の含有量が0wt%であることをいい、本発明の効果を考慮すると、これが最も好ましい。従来型乳化剤の含有量が著しく低減されたものとは、0wt%を超えて3wt%以下の従来型乳化剤を含有することをいうが、接着性、付着性、耐水性の観点から、0wt%を超えて2wt%以下が好ましい。従来型乳化剤が3wt%を超えると、これらエマルションを配合してなるCRエマルション接着剤、SBRエマルション接着剤、ACMエマルション粘着剤、ACMエマルション塗料、EVAエマルション接着剤、ポリオレフィン系樹脂エマルションコーティング剤などの接着性、耐水性低下が顕著になる。ここに、従来型乳化剤としては、従来から使用されている水溶性のアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤等があげられ、例えば、アニオン性乳化剤としては、ロジン酸塩、脂肪酸塩、アルケニルコハク酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルサクシネートスルホン酸塩、ポリオキシエチレン多環式フェニルエーテル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸メタクリル酸共重合体塩、ポリスチレンスルホン酸アクリル酸共重合体塩、ポリスチレンスルホン酸アクリル酸エステル共重合体塩、ポリビニルスルホン酸共重合体塩、ポリイソプレンスルホン酸共重合体塩、ポリアクリル酸エステルアクリル酸共重合体塩、ポリメタクリル酸エステルメタクリル酸共重合体塩、ポリアクリルアミドアクリル酸共重合体、ポリメタクリルアミドメタクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩、高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩、高級脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩等があげられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシアルキレン多環式フェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコキシド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等が挙げられ、カチオン性乳化剤としては、アルキルアミン塩、アルキル型四級アンモニウム塩、脂肪酸アミドアミン塩、アルキルアミノ酸塩等があげられ、両性乳化剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミノスルホベタイン、アルキルスルホベタイン等があげられる。また、プロペニル基、アリール基、メタクリロイル基などラジカル重合性不飽和結合を有する上記タイプのアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤等があげられる。
【0017】
本発明のエマルションは、親水基含有ポリマーによって疎水性物質が乳化安定化されているものである。乳化安定化されているとは、疎水性物質の微粒子表面に上記親水基含有ポリマーが吸着することによって、疎水性物質が水中に安定に分散している状態をいう。親水基含有ポリマーとは、CR、アクリル系ポリマーをベースとするポリマーで、乳化剤の代わりとなるものであり、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミン基、水酸基、硫酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アミン塩、硫酸塩又はポリアルキレンオキサイドから選択される親水基を含有するものであれば特に限定するものではないが、例えば、(A)下記一般式(1)で表されるクロロプレン系ブロック共重合体又はクロロプレン系グラフト共重合体(以下、両親媒性CRブロック共重合体、両親媒性CRグラフト共重合体と略称する)、(B)カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミン基、水酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アミン塩又はポリアルキレンオキサイドから選択される親水基が、ポリマー中にランダムに分布した構造を有する親水基含有クロロプレン系ランダム共重合体(以下、親水基含有CRランダム共重合体と略称する)、(C)下記一般式(2)で表される末端親水基含有クロロプレン系ポリマー、末端親水基含有アクリル酸エステル系ポリマー、及び末端親水基含有メタクリル酸エステル系ポリマーの群から選ばれる1種以上のポリマー、等があげられる。
【0018】
【化1】

(式中、水溶性ポリマー又は水溶性オリゴマーは、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミン基、水酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アミン塩又はポリアルキレンオキサイドから選択される親水基を有する水溶性ポリマー又は水溶性オリゴマーを表す。)
【0019】
【化2】

(式中、Pはクロロプレン系ポリマー、アクリル酸エステル系ポリマー、又はメタクリル酸エステル系ポリマーを表し、Xはカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミン基、硫酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アミン塩、硫酸塩又はポリアルキレンオキサイドを表し、Rはアルキル基、アリール基、置換アルキル基又は置換アリール基を表し、nは1〜3の整数を表す。)
親水基含有ポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量は特に制限するものではないが、乳化能を維持したり、ラテックス粘度の上昇を抑制するためには、500〜100000が好ましく、1000〜10000がさらに好ましい。
【0020】
親水基含有ポリマーによって乳化安定化されている疎水性物質は、乳化の際に使用する有機溶剤に可溶、又は乳化温度で液体状態であれば、特に限定するものではなく、例えば、粘着付与樹脂、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤、顔料、樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマー等があげられ、これらのうち、比較的低分子量で乳化し易いため、粘着付与樹脂、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤、顔料が好ましい。
【0021】
疎水性物質である粘着付与樹脂とは、CR、SBR、ACM、EVA、エポキシ樹脂、ポリオレフィンなどと相溶し、これら用途や目的に応じてタック性、柔軟性、接着性、付着性を付与するものであれば特に限定するものではなく、例えば、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族−芳香族共重合系石油樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、ロジン酸エステル樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂、これらの樹脂の水素添加物、これらの樹脂の酸変性物等があげられる。
【0022】
疎水性物質である可塑剤とは、CR、SBR、ACM、EVA、エポキシ樹脂、ポリオレフィン等と相溶し、これら用途や目的に応じてタック性、柔軟性を付与するものであれば特に限定するものではなく、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジアミル、フタル酸ジカプリル、フタル酸ジウンデシルなどのフタル酸エステル系、フマル酸ジブチル、フマル酸ジイソブチルなどのフマル酸エステル系、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレシル、リン酸トリフェニルなどのリン酸エステル系、クエン酸トリメチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリヘキシル、アセチルクエン酸トリブチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートなどのクエン酸エステル系、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジ(2−メチルエチル)、アジピン酸ジヘキシルなどのアジピン酸ジエステル系、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチルなどの酒石酸ジエステル系、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジプロピル、セバシン酸ジノニルなどのセバシン酸ジエステル系、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチルなどのコハク酸ジエステル系、二酢酸グリセロール、三酢酸グリセロール(トリアセチン)、一乳酸二酢酸グリセロール、グリコール酸メチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタリルブチル、二酢酸エチレングリコール、二酪酸エチレングリコール、二酢酸トリエチレングリコール、二酪酸トリエチレングリコール、ジプロピオン酸トリエチレングリコールなどのグリコール酸ジエステル系、その他、芳香族又は脂肪族ポリカルボン酸のポリアルキルエステル、N、N−ジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DCHBSA)、N−シクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(BBS)、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(OBS)、N、N−ジイソプロピルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DPBS)等が挙げられる。
【0023】
疎水性物質である軟化剤とは、ゴムや樹脂に相溶し、これらを軟化させるものであれば特に限定するものではなく、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、塩素化パラフィンなどの鉱物油、菜種油、エポキシ化大豆油、ひまし油、あまに油、やし油などの植物油、エチレン−α−オレフィン共重合体オリゴマー等が挙げられる。
【0024】
疎水性物質である酸化防止剤とは、ゴムや樹脂の酸化を防止するものであれば特に限定するものではなく、例えば、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(ノルマルオクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−オルト−クレゾール、イソオクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカンなどのフェノール系酸化防止剤、2,2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル−ベンゾトリアゾール、4,4’−ビス−(2,2−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ビス(1,2,2,6、6−ペンタメチル−4−ピペリジルデカンジオナートなどのアミン系酸化防止剤、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾールなどのイオウ系酸化防止剤、トリスノニルフェニルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどのリン系酸化防止剤、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルなどの安定ラジカル系酸化防止剤等が挙げられる。
【0025】
疎水性物質である紫外線吸収剤とは、紫外線吸収能を有し、ゴムや樹脂の劣化を抑えるものであれば特に限定するものではなく、例えば、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、蓚酸アニリド誘導体、ヒンダードアミン等が挙げられる。
【0026】
疎水性物質である架橋剤とは、ゴムや樹脂の架橋剤や架橋促進剤として作用するものであれば特に限定するものではなく、例えば、ポリイソシアネート、ブロック化ポリイソシアネート、アミノ樹脂、アジリジン化合物、メチロール化メラミン、高分子多硫化物、ポリアミン、オキシム類、アルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
【0027】
疎水性物質である顔料とは、CR、SBR、ACM、EVA、エポキシ樹脂、ポリオレフィンに用途や目的に応じて着色できるもの、又はそれ自体でインキとして使用できるようなものであれば特に限定するものではないが、小粒径のエマルションを得るために、有機溶剤に可溶なものが好ましく、例えば、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17などのアゾ顔料、銅フタロシアニンブルー又はその誘導体(C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4)、アルミニウムフタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ48、C.I.ピグメントオレンジ49、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット42などのキナクリドン系顔料の他、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン、インダンスレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アニリンブラック顔料、複素環式イエロー系顔料等が挙げられる。
【0028】
上記の疎水性物質は、1種でも良く、2種以上を併用したものでも良い。
【0029】
本発明のエマルションの平均粒径は、10〜200nmである。平均粒径が10nm未満であると、エマルションの粘度が高くなり、固形分を高くすることができなくなる。平均粒径が200nmを超えると、粘着付与樹脂、又は可塑剤エマルション配合効果の低下が顕著になる。エマルションの粘度を考慮すると、10〜150nmが好ましい。
【0030】
本発明では、粘着付与樹脂や可塑剤等の疎水性物質のエマルションを製造する際に、3wt%以下の従来型乳化剤、親水基含有ポリマー(例えば、両親媒性CRブロック共重合体、両親媒性CRグラフト共重合体、親水基含有CRランダム共重合体、又は特定の末端親水基含有クロロプレン系ポリマー、末端親水基含有アクリル酸エステル系ポリマー及び末端親水基含有メタクリル酸エステル系ポリマーの群から選ばれる1種以上のポリマー)を用いることに特徴がある。
【0031】
本発明のエマルションの製造法としては、親水基含有ポリマー及び疎水性物質を親水性溶剤に溶解し、得られた混合溶液に、攪拌下、水を添加して転相乳化するものである。
【0032】
先ず、両親媒性CRブロック共重合体、両親媒性CRグラフト共重合体、及びこれらを用いた粘着付与樹脂や可塑剤等の疎水性物質のエマルションの製造法について説明する。
【0033】
両親媒性CRブロック共重合体とは、疎水性のクロロプレン系ポリマー又はクロロプレン系オリゴマー鎖の末端に水溶性オリゴマー又は水溶性ポリマーがブロック的に結合したものであり、両親媒性CRグラフト共重合体とは、疎水性のクロロプレン系ポリマー又はクロロプレン系オリゴマーの幹に水溶性オリゴマー又は水溶性ポリマーの枝が結合(グラフト)したものであり、適当量の親水性溶剤の存在下、粘着付与樹脂、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤、顔料等の疎水性物質を水中に乳化する能力、すなわち界面活性を有するポリマーをいい、下記一般式(1)で表されるものである。
【0034】
【化3】

(式中、水溶性ポリマー又は水溶性オリゴマーは、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミン基、水酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アミン塩又はポリアルキレンオキサイドから選択される親水基を有する水溶性ポリマー又は水溶性オリゴマーを表す。)
上記一般式(1)中の水溶性ポリマー又は水溶性オリゴマーとしては、例えば、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリ(無水)マレイン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアルキレンオキサイド等があげられる。
【0035】
ここに、上記一般式(1)で表される両親媒性CRブロック共重合体としては、例えば、ポリメタクリル酸−CRジブロック共重合体、ポリアクリル酸−CRジブロック共重合体、安息香酸ビニル/スチレン共重合体−CRジブロック共重合体、無水マレイン酸/スチレン共重合体−CRジブロック共重合体、無水マレイン酸/p−メトキシスチレン共重合体−CRジブロック共重合体、無水マレイン酸/イソブチレン共重合体−CRジブロック共重合体、無水マレイン酸/クロロプレン共重合体−CRジブロック共重合体、マレイン酸/スチレン共重合体−CRジブロック共重合体、マレイン酸/クロロプレン共重合体−CRジブロック共重合体、無水マレイン酸/2,3−ジクロロブタジエン/クロロプレン共重合体−CRジブロック共重合体、ポリメタクリル酸メトキシエチレングリコール−CRブロック共重合体、ポリメタクリル酸ポリアルキレングリコール−CRブロック共重合体、ポリメタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル−CRブロック共重合体、ポリスチレンスルホン酸−CRブロック共重合体、ポリイソプレンスルホン酸(共)重合体−CRブロック共重合体、ポリ2−(メタクリロイルオキシ)エチルフォスフェート(共)重合体−CRブロック共重合体等があげられる。また、上記一般式(1)で表される両親媒性CRグラフト共重合体としては、例えば、ポリメタクリル酸グラフトCR、ポリスチレンスルホン酸グラフトCR、ポリスチレン/マレイン酸共重合体グラフトCR、ポリメタクリル酸ポリアルキレングリコールグラフトCR等があげられる。
【0036】
上記両親媒性CRブロック共重合体、及び両親媒性CRグラフト共重合体中の親水性ポリマーブロック又は親水性オリゴマーブロックの含有量は、特に限定するものではないが、粘着付与樹脂、可塑剤等の疎水性物質を乳化する能力が十分高く、耐水性を維持(当該ブロック共重合体自身が水不溶性であり、基本的に純水には溶解しない)するためには、1〜50wt%が好ましく、1〜40wt%がさらに好ましい。
【0037】
上記両親媒性CRブロック共重合体の製造法としては、リビング重合によって親水性モノマーを重合後、続いてクロロプレンをブロック共重合する方法、親水性ポリマーブロック又は親水性オリゴマーブロックを有するアゾ化合物(所謂水溶性マクロアゾ開始剤)をラジカル開始剤に用いてクロロプレン等をラジカル重合する方法等があるが、CRに効率良く親水性ポリマーブロック又は親水性オリゴマーブロックを導入できる点で、リビング重合の中でも、特にリビングラジカル重合法を利用するのが良い。リビングラジカル重合法としては、例えば、ジチオカルバミン酸エステル化合物、キサントゲン酸エステル化合物など、開始剤兼連鎖移動剤兼停止剤として作用する所謂イニファーターを重合制御剤として用い、紫外線照射下、炭素−イオウ結合の開裂と再結合を繰返しながらモノマーをラジカル重合させるイニファーター重合法(イニファーター重合法に関しては、Polymer Preprints、Japan(高分子学会予稿集)Vol.31、No.6(1982)、1289〜1292頁、Polymer Preprints、Japan(高分子学会予稿集)Vol.32、No.6(1983)、1047〜1050頁に詳しく述べられている)、ジチオカルボン酸エステル化合物、ジチオカルバミン酸エステル化合物、キサントゲン酸エステル化合物、有機テルル化合物、有機セレン化合物等を重合制御剤として用い、モノマー及びポリマーの成長ラジカルがこれらの化合物へ可逆的な付加開裂移動反応を繰返しながらラジカル重合する所謂RAFT(可逆的付加開裂移動)重合法(RAFT重合に関しては、WO98/01478(Ezio Rizzardo他)、WO98/58974、WO99/35178(Charmot Dominique他)、高分子論文集、64巻、6号、329頁、2007年(山子茂ら)に詳しく述べられている)、安定ニトロキシルラジカルを用いるTEMPO法、ヨウ素化合物を用いるヨウ素移動重合法、ジフェニルエチレン類存在下で親水性モノマーをラジカル重合後、クロロプレンをラジカル重合する方法があり、これらを利用して、両親媒性CRブロック共重合体を合成できる。
【0038】
両親媒性CRグラフト共重合体の製造法としては、有機溶媒中、ベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物を用いて親水性モノマーをCRにグラフト重合する方法、CRに少量含まれるアリル塩素を開始剤として親水性モノマーを原子移動重合(ATRP)する方法がある。ATRP法は、開始剤として有機ハロゲン化物を、触媒として塩化第一銅、臭化第一銅、鉄錯体、ルテニウム錯体などの金属錯体を、触媒を活性化させるための配位子としてビピリジン、ポリアミン等の窒素化合物を用いてラジカル重合性モノマーをリビングラジカル重合する方法であり、CRに通常含まれる1,2−結合由来のアリル塩素を開始剤に利用して、親水性モノマーをATRP重合すれば、両親媒性のCR系グラフトポリマーを得ることができる。ATRP法に関しては、Chemical Reviews、vol.101、2921−2990頁、2001年(K.Matyjaszewski他)、Chemical Reviews、vol.101、3689−3745頁、2001年(M.Sawamoto他)に詳しく述べられており、これらの触媒系を本発明でも用いることができる。
【0039】
従来型乳化剤の代わりに使用する両親媒性CRブロック共重合体,両親媒性CRグラフト共重合体の主成分はクロロプレンであるが、CRの特性及び乳化剤としての作用を損なわず、従来型乳化剤のように純水には溶解せず、実質的に純水に不溶な性質を損なわない範囲でクロロプレンと共重合可能なモノマーを共重合しても良い。クロロプレンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−(N−ピペリジルメチル)−1,3−ブタジエン、2−トリエトキシメチル−1,3−ブタジエン、2−(N,N−ジメチルアミノ)−1,3−ブタジエン、N−(2−メチレン−3−ブテノイル)モルホリン、2−メチレン−3−ブテニルホスホン酸ジエチルなどの1,3-ブタジエン類、スチレン、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−シアノスチレン、p−アセトキシスチレン、塩化p−スチレンスルホニル、エチルp−スチレンスルホニル、p−ブトキシスチレン、4−ビニル安息香酸、3−イソプロペニル−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネート、スチレンスルホン酸などのスチレン類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸メトキシエチレングリコール、メタクリル酸エチルカルビトール、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸3−(ジメチルアミノ)プロピル、メタクリル酸2−(イソシアナート)エチル、メタクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフロロプロピル、メタクリル酸2,2,2−トリフロロエチル、メタクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフロロプロピル、メタクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチルなどのメタクリル酸エステル類、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−ブトキシエチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ボルニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、アクリル酸2,2,3,3−テトラフロロプロピル、アクリル酸2,2,2−トリフロロエチル、アクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフロロプロピル、アクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチルなどのアクリル酸エステル類、その他、アクリルアミド、メタクリルサミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−シアノエチルアクリレート、無水マレイン酸、マレイン酸、無水シトラコン酸、ビニル酢酸、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルフタレート、モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルサクシネート、モノ2−(アクリロイルオキシ)エチルサクシネート、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、メタクリル酸、アクリル酸、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ジアセトンメタクリレート、ビニルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、デヒドロアラニン等があげられる。中でも、クロロプレンとのラジカル共重合性が比較的高い点で、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、α−シアノエチルアクリレート、無水マレイン酸、マレイン酸が好ましい。クロロプレンとの共重合性が最も高い2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンが更に好適である。
【0040】
本発明の粘着付与樹脂や可塑剤等の疎水性物質のエマルションは、これら疎水性物質を乳化分散する際に、両親媒性CRブロック共重合体、又は両親媒性CRグラフト共重合体、及び適当量の親水性溶剤を用いて製造することに特徴がある。
【0041】
その方法としては、両親媒性CRブロック共重合体、又は両親媒性CRグラフト共重合体と粘着付与樹脂や可塑剤等の疎水性物質、及び必要に応じて有機溶剤に可溶な従来型乳化剤を、親水性溶剤(又は少なくとも親水性溶剤を含む有機溶剤)に溶解する。この際、親水基が酸性基の場合、塩基性化合物を加えて予め中和する。塩基性化合物としては、当該溶液に可溶なものであれば特に制限はないが、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピペラジン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モノイソパノールアミン等のアミン類があげられる。これら混合溶液に、攪拌下、水、又は従来型乳化剤を含んだ水を徐々に添加し、転相乳化することにより、両親媒性CRブロック共重合体、又は両親媒性CRグラフト共重合体で乳化安定化された粘着付与樹脂や可塑剤等の疎水性物質のエマルションが生成する。その後、有機溶剤を減圧下、留去することにより、本発明の粘着付与樹脂や可塑剤等の疎水性物質のエマルションが得られる。
【0042】
また、別の方法としては、両親媒性CRブロック共重合体、又は両親媒性CRグラフト共重合体と粘着付与樹脂、可塑剤等の疎水性物質、及び必要に応じて有機溶剤に可溶な従来型乳化剤を、親水性溶剤(又は少なくとも親水性溶剤を含む有機溶剤)に溶解する。これら混合溶液に、攪拌下、塩基性化合物を含んだ水、又は塩基性化合物と従来型乳化剤を含んだ水を徐々に添加し、転相乳化することにより、両親媒性CRブロック共重合体、又は両親媒性CRグラフト共重合体で乳化安定化された粘着付与樹脂、可塑剤等の疎水性物質のエマルションが生成する。その後、有機溶剤を減圧下、留去することにより、本発明の粘着付与樹脂、可塑剤等の疎水性物質のエマルションが得られる。ここで使用する塩基性化合物は、上記アミン類の他、水に可溶なアンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基である。親水性溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、イソプロパノール、エタノール、メトキシエタノール、ジメトキシエタン、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブタノール、メタノール等が使用でき、これらは1種でも2種以上併用するものでもよい。また、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、トルエン等の有機溶剤に親水性溶剤を含むものでもよい。
【0043】
ここで、両親媒性CRブロック共重合体、又は両親媒性CRグラフト共重合体の使用量は、粘着付与樹脂、可塑剤等の疎水性物質を安定に乳化できれば特に制限はないが、粘着付与樹脂、可塑剤等の効果を十分引き出すため、粘着付与樹脂、可塑剤等の疎水性物質に対して30重量部以下が好ましく、コストを考慮すると20重量部以下がより好ましい。
【0044】
次に、親水基含有CRランダム共重合体、及びこれらを用いた粘着付与樹脂、可塑剤等の疎水性物質のエマルションの製造法について説明する。
【0045】
親水基含有CRランダム共重合体とは、クロロプレン系ポリマーの主鎖中に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミン基、硫酸基、カルボン酸基又はポリアルキレンオキサイドから選択される親水基がランダムに分布した構造を有するポリマーであり、乳化剤の代わりとなり、親水性溶剤の共存下、粘着付与樹脂や可塑剤等の疎水性物質を乳化安定化できる能力を有するものである。
【0046】
親水基含有CRランダム共重合体としては、例えば、クロロプレン/無水マレイン酸共重合体、クロロプレン/マレイン酸共重合体、クロロプレン/無水シトラコン酸共重合体、クロロプレン/メタクリル酸共重合体、クロロプレン/ビニル酢酸共重合体、クロロプレン/イソプレンスルホン酸共重合体、クロロプレン/p−アセトキシスチレンランダム共重合体、クロロプレン/ビニル安息香酸共重合体、クロロプレン/2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン/無水マレイン酸共重合体、クロロプレン/p−スチレンスルホン酸エチルエステルランダム共重合体、クロロプレン/スチレンスルホン酸ランダム共重合体、クロロプレン/ビニルスルホン酸ランダム共重合体、クロロプレン/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ランダム共重合体、クロロプレン/2−アクリルアミド−1−メチルスルホン酸ランダム共重合体、クロロプレン/2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ランダム共重合体、クロロプレン/2−(N−ピペリジルメチル)−1,3−ブタジエンランダム共重合体、クロロプレン/2−(N,N−ジメチルアミノ)−1,3−ブタジエンランダム共重合体、クロロプレン/N−(2−メチレン−3−ブテノイル)モルホリンランダム共重合体、クロロプレン/デヒドロアラニンランダム共重合体、クロロプレン/メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチルランダム共重合体、クロロプレン/メタクリル酸メトキシエチレングリコールランダム共重合体、クロロプレン/2−(メタクリロイルオキシ)エチルフォスフェート共重合体、クロロプレン/メタクリル酸ポリエチレンオキサイドランダム共重合体等があげられる。
【0047】
親水基含有CRランダム共重合体が有する親水基とは、水溶性を有する基であれば特に限定するものではなく、例えば、酸性官能基(スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、アミン基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アミン塩)、水酸基、ポリアルキレンオキサイド等があげられる。これらのうち、より少ない量で疎水性物質を乳化できる点で、酸性官能基、ポリアルキレンオキサイド基がより好ましい。親水基含有CRランダム共重合体中の親水基の含有量は、特に限定するものではないが、十分な乳化力を得るとともに、耐水性を維持するためには、1〜40wt%が好ましく、1〜20wt%がさらに好ましい。
【0048】
従来型乳化剤の代わりに使用する親水基含有CRランダム共重合体の主成分はクロロプレンであるが、CRの特性を損なわず、かつ水不溶性を損なわない範囲でクロロプレンと共重合可能なモノマーを共重合しても良い。クロロプレンと共重合可能なモノマーとしては、上記両親媒性CRブロック共重合体、両親媒性CRグラフト共重合体において説明したものと同じである。
【0049】
上記親水基含有CRランダム共重合体の製造に用いる親水基含有ラジカル重合性モノマーは、例えば、スルホン酸基含有モノマーとしては、スチレンスルホン酸、4−(メタクリロイルオキシ)ブチルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、これらの塩等があげられ、リン酸基含有モノマーとしては、2−(メタクリロイルオキシ)エチルフォスフェート及びその塩等があげられ、カルボキシル基含有モノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、ビニル安息香酸、ビニル酢酸、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、無水シトラコン酸、モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルフタレート、モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルサクシネート、モノ2−(アクリロイルオキシ)エチルサクシネート、これらの塩等があげられ、水酸基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアククリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等があげられ、ポリアルキレンオキサイド含有モノマーとしては、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート等があげられ、アミノ基含有モノマーとしては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、デヒドロアラニン、2−(N−ピペリジルメチル)−1,3−ブタジエン、2−(N,N−ジメチルアミノ)−1,3−ブタジエン、N−(2−メチレン−3−ブテノイル)モルホリン、N−ブチル−N−メチル−2−メチレン−3−ブテンアミド等があげられ、四級アンモニウム塩含有モノマーとしては、[(2−メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロライド、[(2−アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロライド等があげられる。これらのうち、有機溶剤への溶解性及びクロロプレンとの共重合性が比較的高い、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステル、無水シトラコン酸、フマル酸、フマル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニル酢酸、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、デヒドロアラニン、2−(N−ピペリジルメチル)−1,3−ブタジエン、2−(N,N−ジメチルアミノ)−1,3−ブタジエン、N−(2−メチレン−3−ブテノイル)モルホリン、N−ブチル−N−メチル−2−メチレン−3−ブテンアミド等から選択されるモノマーであることが好ましい。また、上記親水基含有CRランダム共重合体の製造法として、クロロプレンと、親水基へ変換可能な官能基を含有するモノマーとをラジカル共重合した後、加水分解などの反応によって親水基へ変換する方法も可能であり、例えば、スルホン酸へ変換可能な官能基を有するモノマーとしては、p−スチレンスルホン酸アルキルエステル、p−クロロスルホニルスチレン等があげられ、カルボキシル基へ変換可能な官能基を有するモノマーとしては、t−ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート、デヒドロアラニン、2−(N−ピペリジルメチル)−1,3−ブタジエン、2−(N,N−ジメチルアミノ)−1,3−ブタジエン、N−(2−メチレン−3−ブテノイル)モルホリン、N−ブチル−N−メチル−2−メチレン−3−ブテンアミド等があげられ、水酸基へ変換可能な官能基を有するモノマーとしては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等があげられる。
【0050】
本発明のエマルションを外部からの水分に対する耐水性が必要な接着剤、プライマー、シーリング材用途に使用する場合、上記した親水基の中では、より少ない親水基含量でラテックス安定性を発現できるスルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基等の酸性基又はこれらの酸性基へ変換可能な官能基の利用が好ましい。さらに、上記親水基含有モノマー、ラジカル開始剤及び連鎖移動剤の重合溶媒への溶解性を考慮するとカルボキシル基含有モノマー、ポリアルキレンオキサイド含有モノマーの使用が好ましく、価格等を考慮すると、モノマーとしては無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、ビニル酢酸、メタクリル酸、アクリル酸が特に好ましい。
【0051】
親水基含有CRランダム共重合体の製造法としては、クロロプレン等と親水基を含有するモノマー又は親水基へ変換可能な官能基を含有するモノマーをラジカル共重合する方法、反応性乳化剤とクロロプレンをラジカル共重合する方法などがあるが、CR骨格への親水性基導入量を簡便に制御できる方法として、クロロプレン等と親水基を含有するモノマー又は親水基へ変換可能な官能基を含有するモノマーをラジカル共重合する方法が好ましい。ここでいうラジカル共重合法は、従来の伝統的なラジカル重合法であり、溶媒又は無溶媒下、ラジカル開始剤及び分子量調節剤存在下でクロロプレン等と親水基を含有するモノマー又は親水基へ変換可能な官能基を含有するモノマーをラジカル共重合するものである。ラジカル開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどのパーオキサイド化合物、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート等のアゾ化合物等を用いることができる。上記分子量調節剤としては、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルチウラムジスルフィド、2,2’−ジチオジプロピオン酸、3,3’−ジチオジプロピオン酸、4,4’−ジチオジブタン酸、2,2’−ジチオビス安息香酸等のジスルフィド類、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸、3−メルカプト安息香酸、4−メルカプト安息香酸、チオマロン酸、ジチオコハク酸、チオマレイン酸、チオマレイン酸無水物、ジチオマレイン酸、チオグルタール酸、システイン、ホモシステイン、5−メルカプトテトラゾール酢酸、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸等のメルカプタン類、ヨードホルム等のハロゲン化炭化水素、ジフェニルエチレン、p−クロロジフェニルエチレン、p−シアノジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマー、ベンジルジチオベンゾエート、2−シアノプロプ−2−イルジチオベンゾエート、有機テルル化合物、イオウ等を用いることができるが、ラテックス安定性がより優れる点で、キサントゲンジスルフィド等のジスルフィド、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸等のカルボキシル基含有メルカプタン、ポリエチレングリコールチオールが特に好ましい。
【0052】
上記親水基含有CRランダム共重合体を用いた、粘着付与樹脂、可塑剤等の疎水性物質のエマルションの製造法は、上記両親媒性CRブロック共重合体、両親媒性CRグラフト共重合体を用いた場合と同様である。
【0053】
次に、末端親水基含有クロロプレン系ポリマー、末端親水基含有アクリル酸エステル系ポリマー、末端親水基含有メタクリル酸エステル系ポリマー、及びこれらを用いた粘着付与樹脂、可塑剤等の疎水性物質のエマルションの製造法について説明する。
【0054】
末端親水基含有クロロプレン系ポリマー、末端親水基含有アクリル酸エステル系ポリマー、又は末端親水基含有メタクリル酸エステル系ポリマーとは、共役ジエン系ポリマー、アクリル酸エステル系ポリマー、メタクリル酸エステル系ポリマーをベースとするポリマーで、ポリマー骨格の末端に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミン基、硫酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アミン塩、硫酸塩又はポリアルキレングリコールなどの親水基を導入することによって、乳化剤の代わりとなるものであり、親水性溶剤の共存下、粘着付与樹脂、可塑剤等の疎水性物質を水中に乳化安定化させる能力を有するポリマーであり、下記一般式(2)で表される。
【0055】
【化4】

(式中、Pはクロロプレン系ポリマー、アクリル酸エステル系ポリマー、又はメタクリル酸エステル系ポリマーを表し、Xはカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミン基、硫酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アミン塩、硫酸塩又はポリアルキレンオキサイドを表し、Rはアルキル基、アリール基、置換アルキル基又は置換アリール基を表し、nは1〜3の整数を表す。)
末端親水基含有クロロプレン系ポリマーは、2−クロロ−1,3−ブタジエンモノマー単位を必須成分とするポリマーである。
【0056】
末端親水基含有クロロプレン系ポリマーは、例えば、下記一般式(3)で表される親水基含有チオール化合物、下記一般式(4)で表される親水基含有ジスルフィド化合物、又は、下記一般式(3)で表される親水基含有チオール化合物及び下記一般式(4)で表される親水基含有ジスルフィド化合物の存在下で、2−クロロ−1,3−ブタジエン及びこれらと共重合可能なモノマーをラジカル重合して得られるポリマーであるが、親水基としては、重合溶媒への溶解性の面でカルボン酸基、ポリアルキレングリコール基が好適であり、更に入手性の面でカルボン酸基が好適である。
【0057】
【化5】

(式中、Xはカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミン基、硫酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アミン塩、硫酸塩又はポリアルキレンオキサイドを表し、R’はアルキル基、アリール基、置換アルキル基又は置換アリール基を表し、nは1〜3の整数を表す。)
【0058】
【化6】

(式中、Xはカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミン基、硫酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アミン塩、硫酸塩又はポリアルキレンオキサイドを表し、R’はアルキル基、アリール基、置換アルキル基又は置換アリール基を表し、nは0〜3の整数を表す。)
上記親水基含有チオール化合物としては、例えば、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸、3−メルカプト安息香酸、4−メルカプト安息香酸、チオマロン酸、ジチオコハク酸、チオマレイン酸、チオマレイン酸無水物、ジチオマレイン酸、チオグルタール酸、システイン、ホモシステイン、5−メルカプトテトラゾール酢酸、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸、ポリエチレンオキサイドチオール等があげられ、親水基含有ジスルフィド化合物としては、例えば、2,2’−ジチオジプロピオン酸、3,3’−ジチオジプロピオン酸、4,4’−ジチオジブタン酸、2,2’−ジチオビス安息香酸、6,6’−ジチオジニコチン酸等があげられる。
【0059】
末端親水基クロロプレン系ポリマーは、上記の他、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、マクロアゾ開始剤(和光純薬工業製、VPE−0201)などの親水基含有ラジカル開始剤を多量に用いて2−クロロ−1,3−ブタジエンをラジカル重合し、開始剤中の親水基をポリマー末端に導入する方法、又は、2−クロロ−1,3−ブタジエンをアニオン重合した後、アニオン成長末端をマレイン酸ジエステル等でキャッピングした後、末端エステル基を加水分解するなどの方法によっても製造することができる。
【0060】
従来型乳化剤の代わりに使用する末端親水基含有クロロプレン系ポリマーの主成分は2−クロロ−1,3−ブタジエンモノマー単位であるが、クロロプレン系ポリマーの特性及び乳化剤としての作用を損なわず、従来型乳化剤のように純水には溶解せず、実質的に純水に不溶な性質を損なわない範囲で2−クロロ−1,3−ブタジエンと共重合可能なモノマーを共重合しても良い。2−クロロ−1,3−ブタジエンと共重合可能なモノマーとしては、上記両親媒性CRブロック共重合体、両親媒性CRグラフト共重合体において説明したものと同じである。
【0061】
上記末端親水基含有クロロプレン系ポリマー中の親水基は、使用するチオール化合物、ジスルフィド化合物、ラジカル開始剤、又はカップリング剤の種類に応じて、ポリマー末端に1〜3個存在する。
【0062】
上記末端親水基含有クロロプレン系ポリマーの製造は、従来の伝統的なラジカル重合法によってできる。例えば、適当な溶媒中又は無溶媒で、過酸化物、アゾ化合物等のラジカル開始剤、チオール化合物、ジスルフィド化合物等の分子量調節剤(連鎖移動剤)の存在下で、クロロプレン等をラジカル重合するものである。この際、親水基含有チオール化合物、親水基含有ジスルフィド化合物を使用すれば、これらへのクロロプレンラジカルの連鎖移動反応により、末端親水基含有クロロプレン系ポリマーが生成する。上記化合物への連鎖移動反応を利用して、末端官能性(酸性基などの親水基も含まれる)ポリマーを合成する方法は、成長ラジカルや開始剤ラジカルが官能基含有チオール化合物、官能基含有ジスルフィド化合物に連鎖移動することにより生成した官能基含有イオウラジカルによりモノマーの重合が再開始されることにより、ポリマー末端にチオール化合物由来の官能基がポリマー末端に導入されるものである。この方法は、先端高分子材料シリーズ1 高性能液状ポリマー材料(丸善株式会社 1990年発行、13頁、32頁)に記載されている。
【0063】
ラジカル開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などのパーオキサイド化合物、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート、マクロアゾ開始剤(和光純薬工業製、VPE−0201等)等のアゾ化合物等を用いることができる。
【0064】
上記末端親水基含有クロロプレン系ポリマーを合成する際の溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタンなどのエーテル類、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼンなどの芳香族類、ジクロロメタン、1,1,2−トリクロロエタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール、メトキシブタノール、メトキシエタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、アセト酢酸エチルなどのエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体又は水を、上記チオール化合物、ジスルフィド化合物の溶解性に応じて選択できる。クロロプレン及びこれと共重合するモノマー類にこれらの化合物が溶解すれば、無溶媒でも良い。
【0065】
上記末端親水基含有クロロプレン系ポリマーを用いた、粘着付与樹脂、可塑剤等の疎水性物質のエマルションの製造法は、上記両親媒性CRブロック共重合体、両親媒性CRグラフト共重合体を用いた場合と同様である。
【0066】
末端親水基含有アクリル酸エステル系ポリマーは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ボルニルの群から選ばれる1種以上のモノマー単位を必須成分とするポリマーであり、上記末端親水基含有クロロプレン系ポリマーと同じ方法で製造される。当該末端親水基含有アクリル酸エステル系ポリマーは、アクリル酸エステル系ポリマーの特性及び乳化剤としての作用を損なわず、従来型乳化剤のように純水には溶解せず、実質的に純水に不溶な性質を損なわない範囲でこれらアクリル酸エステル系モノマーと共重合可能なモノマーを共重合しても良く、エマルション化する粘着付与樹脂、可塑剤等の疎水性物質の種類、及び用途に応じて適宜調整すれば良い。上記アクリル酸エステルと共重合可能なモノマーとしては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、2−(N−ピペリジルメチル)−1,3−ブタジエン、2−トリエトキシメチル−1,3−ブタジエン、2−(N,N−ジメチルアミノ)−1,3−ブタジエン、N−(2−メチレン−3−ブテノイル)モルホリン、2−メチレン−3−ブテニルホスホン酸ジエチルなどの1,3−ブタジエン類、スチレン、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−シアノスチレン、p−アセトキシスチレン、塩化p−スチレンスルホニル、エチルp−スチレンスルホニル、p−ブトキシスチレン、4−ビニル安息香酸、3−イソプロペニル−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネート、スチレンスルホン酸などのスチレン類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸メトキシエチレングリコール、メタクリル酸エチルカルビトール、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸3−(ジメチルアミノ)プロピル、メタクリル酸2−(イソシアナート)エチル、メタクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフロロプロピル、メタクリル酸2,2,2−トリフロロエチル、メタクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフロロプロピル、メタクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチルなどのメタクリル酸エステル類、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−ブトキシエチル、アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、アクリル酸2,2,3,3−テトラフロロプロピル、アクリル酸2,2,2−トリフロロエチル、アクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフロロプロピル、アクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチルなどのアクリル酸エステル類、その他、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−シアノエチルアクリレート、無水マレイン酸、マレイン酸、無水シトラコン酸、ビニル酢酸、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルフタレート、モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルサクシネート、モノ2−(アクリロイルオキシ)エチルサクシネート、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、メタクリル酸、アクリル酸、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ジアセトンメタクリレート、ビニルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、デヒドロアラニン等があげられる。
【0067】
上記末端親水基含有アクリル酸エステル系ポリマーを用いた、粘着付与樹脂、可塑剤等の疎水性物質のエマルションの製造法は、上記両親媒性CRブロック共重合体、両親媒性CRグラフト共重合体を用いた場合と同様である。
【0068】
末端親水基含有メタクリル酸エステル系ポリマーは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル及びメタクリル酸ボルニルの群から選ばれる1種以上のモノマー単位を必須成分とするポリマーであり、上記末端親水基含有アクリル酸エステル系ポリマーと同じ方法で製造される。当該末端親水基含有メタクリル酸エステル系ポリマーは、メタクリル酸エステル系ポリマーの特性及び乳化剤としての作用を損なわず、従来型乳化剤のように純水には溶解せず、実質的に純水に不溶な性質を損なわない範囲でこれらメタクリル酸エステル系モノマーと共重合可能なモノマーを共重合しても良く、エマルション化する粘着付与樹脂や可塑剤等の疎水性物質の種類、及び用途に応じて適宜調整すれば良い。上記アクリル酸エステルと共重合可能なモノマーとしては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、2−(N−ピペリジルメチル)−1,3−ブタジエン、2−トリエトキシメチル−1,3−ブタジエン、2−(N,N−ジメチルアミノ)−1,3−ブタジエン、N−(2−メチレン−3−ブテノイル)モルホリン、2−メチレン−3−ブテニルホスホン酸ジエチルなどの1,3−ブタジエン類、スチレン、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−シアノスチレン、p−アセトキシスチレン、塩化p−スチレンスルホニル、エチルp−スチレンスルホニル、p−ブトキシスチレン、4−ビニル安息香酸、3−イソプロペニル−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネート、スチレンスルホン酸などのスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸酸t−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ボルニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸メトキシエチレングリコール、アクリル酸エチルカルビトール、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸3−(ジメチルアミノ)プロピル、アクリル酸2−(イソシアナート)エチル、アクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル、アクリル酸2,2,3,3−テトラフロロプロピル、アクリル酸2,2,2−トリフロロエチル、アクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフロロプロピル、アクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−ブトキシエチル、アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、アクリル酸2,2,3,3−テトラフロロプロピル、アクリル酸2,2,2−トリフロロエチル、アクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフロロプロピル、アクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチルなどのアクリル酸エステル類の他、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−シアノエチルアクリレート、無水マレイン酸、マレイン酸、無水シトラコン酸、ビニル酢酸、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルフタレート、モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルサクシネート、モノ2−(アクリロイルオキシ)エチルサクシネート、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、メタクリル酸、アクリル酸、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ジアセトンメタクリレート、ビニルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、デヒドロアラニン等があげられる。
【0069】
上記末端親水基含有メタクリル酸エステル系ポリマーを用いた、粘着付与樹脂、可塑剤等の疎水性物質のエマルションの製造法は、上記両親媒性CRブロック共重合体、両親媒性CRグラフト共重合体を用いた場合と同様である。
【0070】
本発明のエマルションは、CRエマルション接着剤、SBRエマルション接着剤、ACMエマルション粘着剤、ACMエマルション塗料、EVAエマルション接着剤、ポリオレフィン系樹脂エマルションコーティング剤、ポリオレフィン系樹脂エマルションプライマー、エポキシ系樹脂エマルション接着剤等にタック性、柔軟性、造膜性、ポリオレフィン接着性、老化防止、着色防止、着色性、硬化性などを付与する目的で配合することができる。また、単独でトナー、電極バインダーや水性インキの原料として使用することができる。この際、本発明のエマルションに、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、エポキシ樹脂等の受酸剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸などのpH調整剤、カルボン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、アンモニウム塩などのpH緩衝剤、濡れ剤、消泡剤、凍結防止剤、疎水化セルロース、ポリアクリル酸共重合体、ポリメタクリル酸共重合体、会合型ノニオン界面活性剤、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアルコール、クレーなどの増粘剤を配合しても良い。
【発明の効果】
【0071】
本発明のエマルションは、従来のエマルションに対して、耐水性、及びCR、SBR、ACM等のエマルションへの配合効果が著しく改良されたものである。
【実施例】
【0072】
本発明をより具体的に説明するため以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0073】
なお、本発明の親水基含有ポリマーの数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw及び分子量分布Mw/Mnは、東ソー(株)製GPC8220により次の条件で測定した(溶離液=テトラヒドロフラン、流速=1.0ml/min、カラム温度=40℃、ピーク検出=示差屈折計、充填カラム=TSK−gel(登録商標)G7000Hxl/GMHxl/GMHxl/G3000Hxl/ガードカラムH−L、分子量計算=ポリスチレン換算)。CRラテックスポリマーの数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw及び分子量分布Mw/Mnは、東ソー(株)製GPC8220により次の条件で測定した(溶離液=テトラヒドロフラン、流速=1.0ml/min、カラム温度=40℃、ピーク検出=示差屈折計、充填カラム=TSK−gel(登録商標)G7000Hxl/GMHxl/GMHxl/ガードカラムH−L、分子量計算=ポリスチレン換算)。
【0074】
重合中のモノマー転化率は、島津製作所ガスクロマトグラフGC−17A(GLサイエンス社製キャピラリーカラムNEUTRABOND−5、水素炎イオン化検出器)を用い、ベンゼンを標準物質として算出した。
【0075】
CRラテックス及びエマルションの粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布計マイクロトラックUPA(日機装(株)製)を用いて測定した。
【0076】
CRラテックスの機械的安定性は、マーロン試験法によるゴム析出率から評価した。
【0077】
親水基を含有する水不溶性ポリマー中のカルボキシル基量は、水酸化カリウムによる中和滴定により測定した。
【0078】
親水基を含有する水不溶性ポリマー、及びラテックスポリマー中の塩素量は、酸素フラスコ燃焼−イオンクロマトグラフ法により以下の条件で測定した。重合体試料20mgを精秤後、フラスコ燃焼法により燃焼、30%過酸化水素水100μlを添加したN/100水酸化ナトリウム水溶液10mlからなる吸収液に吸収させた。該吸収液を純水で50mlにメスアップし、吸収液中の塩化物イオンをイオンクロマトグラフィーで定量した。イオンクロマトグラフィーの測定条件は、東ソー(株)製イオンクロマトグラフ、カラム=TSKgel(登録商標)IC−Anion−PWXL PEEK、溶離液=1.3mMグルコン酸カリウム、1.3mMホウ砂、30mMホウ酸、10体積%アセトニトリル、0.5体積%グリセリン水溶液、カラム温度=40℃、流速=1.2ml/min、検出器=電気伝導度検出器であった。
【0079】
エマルションの接着剤配合剤としての性能評価は、以下の方法で行った。2枚の10号綿帆布に、以下の合成例7で合成したCRラテックス(CRラテックス100重量部に対して、エマルション40重量部、大崎工業製の酸化亜鉛エマルション、AZ−SW1重量部、信化学工業製の濡れ剤、オルフィンEXP.4036を1重量部配合したもの)を刷毛で塗布し、オーブン中70℃で3分乾燥(以上の塗布−乾燥の操作を2回繰返した)後、再度刷毛塗りし、常温でオープンタイム(一定時間放置)を取った後、ハンドローラーで圧着した。圧着後、直ちに25mm幅に裁断し、引っ張り速度100mm/minの条件でテンシロン型引っ張り試験機を用いて180°T型剥離試験を行った。また、上記試験片を常温で5日養生後、同様に剥離試験を行った。接着性は、オープンタイムによる剥離強度及び剥離状態の変化から評価した。即ち、接着性が十分な場合、長いオープンタイムを取っても剥離強度の低下は小さいが、不十分な場合には接着剤界面での剥離(所謂糊分かれ)が顕著になり剥離強度の低下が増大する。耐水性は、上記5日養生後の試験片を、水道水に常温で3日間浸漬後、濡れた状態で上記と同様、180°T型剥離試験を行い評価した。
【0080】
合成例1(親水基含有ポリマー(両親媒性CRブロック共重合体)の合成)
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた1000mlパイレックス(登録商標)ガラスフラスコに下記一般式(5)で表されるキサントゲン酸エステル7.50g(35.0mmol)、下記一般式(6)で表されるキサントゲン酸ジスルフィド4.25g(17.5mmol)、メタクリル酸25.00g(290.7mmol)、メチルエチルケトン50.00gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、攪拌しながら、30℃の恒温槽内において80mmの距離から紫外線(ウシオ電気(株)製、UM452(450W))を照射しながら12時間重合した。この時点でのメタクリル酸の重合転化率は80%だった。続いて、単蒸留したクロロプレン125.00g(1.41mol)、メチルエチルケトン300mlを添加し、窒素雰囲気下、十分攪拌しながら、30℃で14時間紫外線照射を行った。クロロプレン転化率は51%、メタクリル酸のトータル転化率は86%だった。内容物を3000mlのメタノールに投入してポリマーを単離し、乾燥した。GPCにより測定したポリマーの数平均分子量Mnは2600、重量平均分子量Mwは5200及び分子量分布Mw/Mnは2.0、ポリマーの塩素含量は27.3wt%、イオウ含量は2.5wt%であった。赤外吸収スペクトルには、メタクリル酸中のカルボン酸及びCR中の不飽和結合由来のピークが観測され、生成ポリマーは、CRの良溶剤であるトルエン、クロロホルムに溶解しなかったが、非溶媒であるアセトンに溶解した。また、生成ポリマーのアセトン溶液は、トリエチルアミン水溶液に溶解した。以上の結果から、メタクリル酸含量23wt%の組成を有するポリメタクリル酸−CRジブロック体(カルボキシル基量=2.67ミリモル/g)が生成したと判断した。
【0081】
【化7】

【0082】
【化8】

合成例2(親水基含有ポリマー(両親媒性CRグラフト共重合体)の合成)
還流冷却管、三方コックを備えた1000ml褐色ガラスフラスコに、n−ドデシルメルカプタン3.00g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)4.00g、及びトルエン300.0gを仕込んで溶解後、クロロプレン160.0gを添加し、凍結−脱気−融解を2回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、50℃のオイルバスで74時間加熱しながら重合し、CRのトルエン溶液を得た。74時間後のクロロプレンの重合転化率は98.5%だった。ここへメタクリル酸50.00g、ベンゾイルパーオキサイド0.50gを添加し、窒素雰囲気下、90℃で5時間加熱しながら重合した。内容物を2000mlのメタノールへ投入してポリマーを分離し、乾燥した。GPCにより測定した生成ポリマーの数平均分子量Mnは9500、重量平均分子量Mwは19800であった。ポリマーの塩素含量は31.2wt%、赤外吸収スペクトルには、メタクリル酸中のカルボン酸及びCR中の不飽和結合由来のピークが観測された。以上の結果からメタクリル酸含量22wt%のポリメタクリル酸−CRグラフト共重合体(カルボキシル基量=2.56ミリモル/g)が生成したと判断した。
【0083】
合成例3(親水基含有ポリマー(親水基含有CRランダム共重合体)の合成)
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた500mlガラスフラスコにテトラヒドロフラン92.52g、ジチオビス(チオ蟻酸)O,O−ジイソプロピル3.00g、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)0.80g及びマレイン酸22.08gを仕込んで溶解した後、クロロプレン33.55gを添加し、凍結−脱気−融解を2回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、50℃のオイルバスで加熱しながら92時間重合した。室温まで冷却し、安定剤としてフェノチアジンを0.33g添加した。この時点でのクロロプレンの重合転化率は76.5%だった。内容物を2000mlの純水に注ぎポリマーを析出させ、減圧乾燥し、クロロプレン−マレイン酸ランダム共重合体を得た。乾燥ポリマーの重量は25.12g、GPCにより測定した生成ポリマーの数平均分子量Mnは7900、重量平均分子量Mwは13500であった。中和滴定により測定した生成ポリマー中のカルボン酸基含量は7.0wt%だった(カルボキシル基量=1.56ミリモル/g)。
【0084】
合成例4(親水基含有ポリマー(末端親水基含有クロロプレン系ポリマー)の合成)
三方コックを備えた1000ml褐色ガラスフラスコに、窒素雰囲気下、チオリンゴ酸43.00g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)9.60g、クロロプレン330.00g、及びアセトン215.00gを仕込んで溶解し、マグネチックスターラーで攪拌しながら、50℃のオイルバスで70時間加熱重合し、末端親水基含有クロロプレン系ポリマー(クロロプレン系ポリマー−チオリンゴ酸)のアセトン溶液(溶液中のカルボキシル基量=1.09ミリモル/g)を得た。70時間後のクロロプレンの重合転化率は98.5%だった。
【0085】
GPCにより測定した生成ポリマーの数平均分子量Mnは2200、重量平均分子量Mwは4800であった。
【0086】
合成例5(親水基含有ポリマー(末端親水基含有アクリル酸エステル系ポリマー)の合成)
三方コックを備えた200mlガラスフラスコに、チオリンゴ酸5.28g、4,4‘−アゾビス(4−シアノペンタン酸)0.69g、及びテトラヒドロフラン50.00gを仕込んで溶解後、メタクリル酸メチル25.00g、アクリル酸ブチル10.00gを添加し、凍結−脱気−融解を2回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、60℃のオイルバスで24時間加熱重合し、末端親水基含有ポリメタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル共重合体のテトラヒドロフラン溶液を得た(溶液中のカルボキシル基量=0.83ミリモル/g)。24時間後のメタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチルの重合転化率は91.0%及び98.5%だった。
【0087】
GPCにより測定した生成ポリマーの数平均分子量Mnは1800、重量平均分子量Mwは3700であった。
【0088】
合成例6(親水基含有ポリマー(末端親水基含有メタクリル酸エステル系ポリマー)の合成)
三方コックを備えた200mlガラスフラスコに、チオリンゴ酸5.28g、2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル0.35g、及びアセトン50.00gを仕込んで溶解後、メタクリル酸メチル35.37gを添加し、凍結−脱気−融解を2回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、60℃のオイルバスで27時間加熱して重合し、末端親水基含有ポリメタクリル酸メチルのアセトン溶液(溶液中のカルボキシル基量=0.80ミリモル/g)を得た。27時間後のメタクリル酸メチルの重合転化率は89.3%だった。
【0089】
GPCにより測定した生成ポリマーの数平均分子量Mnは1500、重量平均分子量Mwは2800であった。
【0090】
合成例7(CRラテックスの合成)
2000mlセパラブルフラスコに、水酸化カリウム4.51g、水酸化ナトリウム0.83g、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩1.01g及び純水320.00gを仕込んでこれらを溶解し、50℃に加温した。別途、合成例4で合成した末端親水基含有クロロプレン系ポリマーのアセトン溶液35.00g、アセトン50.00g、及びノニオン乳化剤(日本乳化剤製、ニューコールN−714)1.80gを混合、溶解して得た溶液を、攪拌下、上記セパラブルフラスコに添加することにより、末端親水基含有クロロプレン系ポリマーのシード分散液を調製した。ここに、n−ドデシルメルカプタン0.80g、クロロプレン400.00gを仕込んでモノマーを乳化した。0.8L/分の流速で20分間、窒素を流すことにより系内を脱気した後、還元剤としてエリソルビン酸0.25g、ハイドロサルファイトナトリウム0.05gを添加し、開始剤として過硫酸カリウム0.60wt%、アントラキノンスルホン酸ナトリウム0.02wt%の混合溶液を7ml/hの速度でフィードしながら15℃で重合を行った結果、スケールが発生することなく乳化重合が進行した。8時間重合後、重合停止剤として、フェノール系酸化防止剤(川口化学製、アンテージW−500)の8.6wt%クロロプレン溶液7.00gを添加して重合を停止した。クロロプレンの重合転化率は91.2%だった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマー、アセトン及び水分を留去し、CRラテックスを得た(固形分51wt%、平均粒径110nm)。
【0091】
実施例1
合成例1で得たポリメタクリル酸−CRジブロック体1.00g(カルボキシル基量=2.67ミリモル)、テルペンフェノール樹脂(荒川化学製、タマノール803L)10.00g(カルボキシル基量=8.9ミリモル)、トリエチルアミン1.20g、及びアセトン12.00gを100mlのガラスビーカーに秤量し、完全に溶解した。このアセトン溶液に、マグネチックスターラー攪拌下、12.00gの純水をゆっくり滴下した。その後、ロータリーエバポレーターでアセトンと水分を留去し、エマルション−Aを得た(固形分52wt%、平均粒径160nm)。
【0092】
得られたエマルション−Aを用いて接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表1に示す。比較例のエマルションと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べてコンタクト接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0093】
【表1】

実施例2
合成例2で得たポリメタクリル酸−CRグラフト共重合体1.00g(カルボキシル基量=2.56ミリモル)、テルペンフェノール樹脂(荒川化学製、タマノール803L)10.00g(カルボキシル基量=8.9ミリモル)、トリエチルアミン1.20g、及びアセトン12.00gを100mlのガラスビーカーに秤量し、完全に溶解した。このアセトン溶液に、マグネチックスターラー攪拌下、12.00gの純水をゆっくり滴下した。その後、ロータリーエバポレーターでアセトンと水分を留去し、エマルション−Bを得た(固形分52wt%、平均粒径170nm)。
【0094】
得られたエマルション−Bを用いて接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表1に示す。比較例のエマルションと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べてコンタクト接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0095】
実施例3
合成例3で得たクロロプレン−マレイン酸ランダム共重合体2.0g(カルボキシル基量=3.11ミリモル)、テルペンフェノール樹脂(荒川化学製、タマノール803L)10.00g(カルボキシル基量=8.9ミリモル)、N,N’−ジエチルアミノエタノール1.80g、及びアセトン12.00gを100mlのガラスビーカーに秤量し、完全に溶解した。このアセトン溶液に、マグネチックスターラー攪拌下、12.00gの純水をゆっくり滴下した。その後、ロータリーエバポレーターでアセトンと水分を留去し、エマルション−Cを得た(固形分52wt%、平均粒径195nm)。
【0096】
得られたエマルション−Cを用いて接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表1に示す。比較例のエマルションと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べてコンタクト接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0097】
実施例4
合成例4で得たクロロプレン系ポリマー−チオリンゴ酸のアセトン溶液2.85g(カルボキシル基量=3.11ミリモル)、ノニオン乳化剤(ライオン製、エソミンT−25)0.10g、テルペンフェノール樹脂(荒川化学製、タマノール803L)10.00g(カルボキシル基量=8.9ミリモル)、N,N’−ジエチルアミノエタノール1.75g、及びアセトン12.00gを100mlのガラスビーカーに秤量し、完全に溶解した。このアセトン溶液に、マグネチックスターラー攪拌下、12.00gの純水をゆっくり滴下した。その後、ロータリーエバポレーターでアセトンと水分を留去し、エマルション−Dを得た(固形分52wt%、平均粒径165nm、エマルション固形分中の従来型乳化剤0.73wt%)。
【0098】
得られたエマルション−Dを用いて接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表1に示す。比較例のエマルションと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べてコンタクト接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0099】
実施例5
合成例5で得た末端親水基含有ポリメタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル共重合体のテトラヒドロフラン溶液4.47g(カルボキシル基量=3.71ミルモル)、ノニオン乳化剤(ライオン製、エソミンT−25)0.10g、テルペンフェノール樹脂(荒川化学製、タマノール803L)10.00g(カルボキシル基量=8.9ミリモル)、N,N’−ジエチルアミノエタノール1.85g、及びテトラヒドロフラン12.00gを100mlのガラスビーカーに秤量し、完全に溶解した。このテトラヒドロフラン溶液に、マグネチックスターラー攪拌下、12.00gの純水をゆっくり滴下した。その後、ロータリーエバポレーターでテトラヒドロフランと水分を留去し、エマルション−Eを得た(固形分52wt%、平均粒径190nm、エマルション固形分中の従来型乳化剤0.73wt%)。
【0100】
得られたエマルション−Eを用いて接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表1に示す。比較例のエマルションと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べてコンタクト接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0101】
実施例6
合成例6で得た末端親水基含有ポリメタクリル酸メチルのアセトン溶液4.78g(カルボキシル基量=3.82ミリモル)、ノニオン乳化剤(花王製、アミート320)0.10g、テルペンフェノール樹脂(荒川化学製、タマノール803L)10.00g(カルボキシル基量=8.9ミリモル)、トリエチルアミン1.30g、及びアセトン12.00gを100mlのガラスビーカーに秤量し、完全に溶解した。このアセトン溶液に、マグネチックスターラー攪拌下、12.00gの純水をゆっくり滴下した。その後、ロータリーエバポレーターでアセトンと水分を留去し、エマルション−Fを得た(固形分52wt%、平均粒径185nm、エマルション固形分中の従来型乳化剤0.75wt%)。
【0102】
得られたエマルション−Fを用いて接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表1に示す。比較例のエマルションと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べてコンタクト接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0103】
実施例7
合成例4で得たクロロプレン系ポリマー−チオリンゴ酸のアセトン溶液2.85g(カルボキシル基量=3.11ミリモル)、ノニオン乳化剤(花王製、アミート320)0.15g、テルペンフェノール樹脂(荒川化学製、タマノール803L)10.00g(カルボキシル基量=8.9ミリモル)、フェノール系酸化防止剤W−500(川口化学製)0.15g、N,N’−ジエチルアミノエタノール1.75g、及びアセトン12.50gを100mlのガラスビーカーに秤量し、完全に溶解した。このアセトン溶液に、マグネチックスターラー攪拌下、12.00gの純水をゆっくり滴下した。その後、ロータリーエバポレーターでアセトンと水分を留去し、エマルション−Gを得た(固形分52wt%、平均粒径155nm、エマルション固形分中の従来型乳化剤1.10wt%)。
【0104】
得られたエマルション−Gを用いて接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表1に示す。比較例のエマルションと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べてコンタクト接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0105】
比較例1
市販のエマルション(荒川化学工業製、E−200NT)を用いて接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表1に示す。実施例のエマルションと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が大きいことが明らかである。
【0106】
比較例2
合成例4で得たクロロプレン系ポリマー−チオリンゴ酸のアセトン溶液2.85g(カルボキシル基量=3.11ミリモル)、テルペンフェノール樹脂(荒川化学製、タマノール803L)10.00g(カルボキシル基量=8.9ミリモル)、N,N’−ジエチルアミノエタノール1.75g、及びアセトン12.00gを100mlのガラスビーカーに秤量し、完全に溶解した。このアセトン溶液に、マグネチックスターラー攪拌下、アニオン乳化剤(花王製、ペレックスSSH、有効成分50wt%)1.00gを12.00の純水に溶解した水溶液をゆっくり滴下した。その後、ロータリーエバポレーターでアセトンと水分を留去し、エマルション−Hを得た(固形分52wt%、平均粒径180nm、エマルション固形分中の従来型乳化剤3.56wt%)。
【0107】
得られたエマルション−Hを用いて接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表1に示す。実施例のエマルションと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が大きいことが明らかである。
【0108】
比較例3
合成例4で得たクロロプレン系ポリマー−チオリンゴ酸のアセトン溶液2.85g(カルボキシル基量=3.11ミリモル)、ノニオン乳化剤(ライオン製、エソミンT−25)0.05g、テルペンフェノール樹脂(荒川化学製、タマノール803L)15.00g(カルボキシル基量=13.35ミリモル)、N,N’−ジエチルアミノエタノール1.90g、及びアセトン12.00gを100mlのガラスビーカーに秤量し、完全に溶解した。このアセトン溶液に、マグネチックスターラー攪拌下、12.00gの純水をゆっくり滴下した。その後、ロータリーエバポレーターでアセトンと水分を留去し、エマルション−Iを得た(固形分52wt%、平均粒径330nm)。
【0109】
得られたエマルション−Iを用いて接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表1に示す。結果を表1に示す。実施例のエマルションと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下がやや大きいことが明らかである。また、該組成物を常温で保存中、沈殿が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3wt%以下の従来型乳化剤を含有し、親水基含有ポリマーによって疎水性物質が乳化安定化されており、平均粒径10〜200nmであることを特徴とするエマルション。
【請求項2】
疎水性物質が、粘着付与樹脂、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤及び顔料の群から選ばれる1種以上の物質であることを特徴とする請求項1に記載のエマルション。
【請求項3】
親水基含有ポリマーが、下記一般式(1)で表されるクロロプレン系ブロック共重合体又はクロロプレン系グラフト共重合体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエマルション。
【化1】

(式中、水溶性ポリマー又は水溶性オリゴマーは、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミン基、水酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アミン塩又はポリアルキレンオキサイドから選択される親水基を有する水溶性ポリマー又は水溶性オリゴマーを表す。)
【請求項4】
親水基含有ポリマーが、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミン基、水酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アミン塩又はポリアルキレンオキサイドから選択される親水基が、ポリマー中にランダムに分布した構造を有する親水基含有クロロプレン系ランダム共重合体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエマルション。
【請求項5】
親水基含有ポリマーが、下記一般式(2)で表される末端親水基含有クロロプレン系ポリマー、末端親水基含有アクリル酸エステル系ポリマー及び末端親水基含有メタクリル酸エステル系ポリマーの群から選ばれる1種以上のポリマーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエマルション。
【化2】

(式中、Pはクロロプレン系ポリマー、アクリル酸エステル系ポリマー、又はメタクリル酸エステル系ポリマーを表し、Xはカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミン基、硫酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アミン塩、硫酸塩又はポリアルキレンオキサイドを表し、Rはアルキル基、アリール基、置換アルキル基又は置換アリール基を表し、nは1〜3の整数を表す。)
【請求項6】
末端親水基含有アクリル酸エステル系ポリマーが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル及びアクリル酸ボルニルの群から選ばれる1種以上のモノマー単位を必須成分とするポリマーであることを特徴とする請求項5に記載のエマルション。
【請求項7】
末端親水基含有メタクリル酸エステル系ポリマーが、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル及びメタクリル酸ボルニルの群から選ばれる1種以上のモノマー単位を必須成分とするポリマーであることを特徴とする請求項5に記載のエマルション。
【請求項8】
親水基含有ポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で求めた数平均分子量が500〜100000であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかの項に記載のエマルション。
【請求項9】
親水基含有ポリマー及び疎水性物質を親水性溶剤に溶解し、得られた混合溶液に、攪拌下、水を添加して転相乳化することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかの項に記載のエマルションの製造法。
【請求項10】
疎水性物質が、粘着付与樹脂、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤及び顔料の群から選ばれる1種以上の物質であることを特徴とする請求項9に記載のエマルションの製造法。
【請求項11】
親水基含有ポリマーが、下記一般式(1)で表されるクロロプレン系ブロック共重合体又はクロロプレン系グラフト共重合体であることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のエマルションの製造法。
【化3】

(式中、水溶性ポリマー又は水溶性オリゴマーは、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミン基、水酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アミン塩又はポリアルキレンオキサイドから選択される親水基を有する水溶性ポリマー又は水溶性オリゴマーを表す。)
【請求項12】
親水基含有ポリマーが、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミン基、水酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アミン塩又はポリアルキレンオキサイドから選択される親水基が、ポリマー中にランダムに分布した構造を有する親水基含有クロロプレン系ランダム共重合体であることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のエマルションの製造法。
【請求項13】
親水基含有ポリマーが、下記一般式(2)で表される末端親水基含有クロロプレン系ポリマー、末端親水基含有アクリル酸エステル系ポリマー及び末端親水基含有メタクリル酸エステル系ポリマーの群から選ばれる1種以上のポリマーであることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のエマルションの製造法。
【化4】

(式中、Pはクロロプレン系ポリマー、アクリル酸エステル系ポリマー、又はメタクリル酸エステル系ポリマーを表し、Xはカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミン基、硫酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アミン塩、硫酸塩又はポリアルキレンオキサイドを表し、Rはアルキル基、アリール基、置換アルキル基又は置換アリール基を表し、nは1〜3の整数を表す。)
【請求項14】
末端親水基含有アクリル酸エステル系ポリマーが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル及びアクリル酸ボルニルの群から選ばれる1種以上のモノマー単位を必須成分とするポリマーであることを特徴とする請求項13に記載のエマルションの製造法。
【請求項15】
末端親水基含有メタクリル酸エステル系ポリマーが、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル及びメタクリル酸ボルニルの群から選ばれる1種以上のモノマー単位を必須成分とするポリマーであることを特徴とする請求項13に記載のエマルションの製造法。
【請求項16】
親水性溶剤が、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、イソプロパノール、エタノール、メトキシエタノール、ジメトキシエタン、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブタノール及びメタノールから選択される1種以上の溶剤であることを特徴とする請求項9〜請求項15のいずれかの項に記載のエマルションの製造法。
【請求項17】
請求項1〜請求項8のいずれかの項に記載のエマルションを含むことを特徴とする接着剤、粘着剤、プライマー、塗料、コーティング剤、バインダー、トナー又はインキ。

【公開番号】特開2011−12196(P2011−12196A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158429(P2009−158429)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】