説明

エマルション型樹脂組成物

低温での造膜が可能で、しかも、硬度、耐汚染性、耐水性、耐候性等の物性に優れた塗膜を形成し得るエマルション型樹脂組成物を提供する。
最低造膜温度が0℃以下であり、実質的に揮発性有機化合物を含まないエマルション型樹脂組成物であって、このエマルション型樹脂組成物を23℃で24時間乾燥することにより得られる皮膜のケーニッヒ硬度が5回以上で、吸水率が20質量%未満であることを特徴とするエマルション型樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外装用塗料、内装用塗料等の分野で有用なエマルション型樹脂組成物に関し、詳細には、造膜性が良好で、かつ、硬度、耐汚染性、耐水性、耐候性等の特性に優れた塗膜を形成し得るエマルション型樹脂組成物に関するものである。また、このエマルション型樹脂組成物を含む塗料、およびこの塗料から得られる塗膜も本発明に含まれる。
【背景技術】
【0002】
建築物用塗料としては、環境への悪影響を懸念して、有機溶剤型塗料から水性塗料への転換が進んでおり、中でもエマルション型樹脂組成物が多用されるようになってきた。このエマルション型樹脂組成物は、樹脂粒子同士が融着しあいながら、水が揮散することで塗膜を形成する。加熱乾燥を行える場合は、樹脂粒子が柔らかくなるため融着が容易であり、水も揮散しやすいが、例えば、建築物の内壁や外壁に塗装する場合等は常温での乾燥となるので、エマルションの造膜性が問題となってくる。
【0003】
すなわち、塗膜の耐汚染性、耐摩耗性等の特性を考慮すると、比較的硬い樹脂を塗膜構成成分とすることが望ましいが、硬い樹脂はTgが高いため、常温では樹脂粒子同士の融着が起こりにくく、造膜性に劣る。この低造膜性の問題を解決するために、樹脂粒子を可塑化させて融着・塗膜化を促進させる有機溶剤を、成膜助剤として、エマルション中に存在させる手段が採用されていた。この成膜助剤としては、例えば、テキサノール(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)や、ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)等が用いられていた。
【0004】
しかしながら、近年、環境問題が重視されており、シックハウス症候群対策としての建築物内装用塗料はもとより、外装用塗料においても揮発性有機化合物(VOC)を含まない(VOCフリー)塗料が求められ、上記した成膜助剤的な有機溶剤の使用が容認されなくなってきた。
【0005】
このため、高いTgを有するポリマーと、低いTgを有するポリマーを混合して、低Tgポリマーで造膜性を確保して、VOCフリー化すると共に、高Tgポリマーにより塗膜物性を好適なレベルにするという試みが多数なされている(例えば、特開平5−112758号公報、特表2001−514312号公報、特開2004−59622号公報等)。
【0006】
しかしながら、これらの文献に記載の各発明では、VOCフリーは達成されているものの、造膜性の改善が充分とは言えなかったり、逆に造膜性は良好でも、硬度や耐水性等の塗膜物性が不充分な場合があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明では、低温での造膜が可能で、しかも、硬度、耐汚染性、耐水性、耐候性等の物性に優れた塗膜を形成し得るエマルション型樹脂組成物の提供を課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、最低造膜温度が0℃以下であり、実質的に揮発性有機化合物を含まないエマルション型樹脂組成物であって、このエマルション型樹脂組成物を23℃で24時間乾燥することにより得られる皮膜のケーニッヒ硬度が5回以上で、吸水率が20質量%未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、揮発性有機化合物(VOC)を配合することなく、最低造膜温度(MFT)が0℃以下である塗料用のエマルション型樹脂組成物を提供することができた。このエマルション型樹脂組成物は、得られる塗膜が良好な硬度と吸水率を有するため、例えば、建築外装用塗料や内装用塗料等に適用するのに好適である。特に、ガラス転移温度(Tg)が50〜150℃であり、重量平均分子量が5,000〜50,000である水分散性ポリマー(A)が含まれているエマルション型樹脂組成物の場合、VOCフリーでもMFTを低く抑えることができ、かつ、得られる塗膜の硬度と吸水率に優れているため、本発明の好ましい実施態様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
前記したように、高Tgポリマーと低Tgポリマーとを混合使用することで、造膜性を確保してVOCフリー化すると共に塗膜物性を好適なレベルにするという試みが多数なされてきた。しかし、これらの従来技術では、各ポリマーの分子量については何ら検討されていない。本発明者等は、より卓越した塗膜物性を得ることができ、かつ、VOCフリーを達成し得るエマルション型樹脂組成物について検討を行った結果、高Tgポリマーの分子量を低く抑えることが効果的であることを見出し、上記本発明に到達したのである。以下、本発明を詳細に説明するが、本発明における「ポリマー」には、ホモポリマーはもとより、コポリマーや三元以上の共重合体も含まれるものとする。また、本発明の「モノマー」は、いずれも付加重合型モノマーである。
【0011】
まず、本発明のエマルション型樹脂組成物は、VOCフリーである。本発明の大前提だからである。ここで、VOCとは、WHOによって分類された室内空気汚染源となる可能性のある有機化合物のうちの沸点が50−100℃〜240−260℃である揮発性有機化合物のことである。本発明のエマルション型樹脂組成物は、1質量%以下のVOCであれば含んでいてもよい。VOCは0.5質量%以下が好ましく、0質量%が最も好ましい。なお、本発明では、VOCには後述する中和剤は含まない。本発明では、成膜助剤に用いられる有機溶剤をエマルション型樹脂組成物に配合しないことでVOCフリーを達成するものだからである。
【0012】
また、本発明のエマルション型樹脂組成物は、その最低造膜温度(MFT)が0℃以下である。エマルション型樹脂組成物を塗料とした後に、建築物外壁等へ外気の中で塗装する際の実用的なレベルを考慮して、0℃以下と定めた。MFTは、JIS K6828−2(2003)に準じて測定され、適当な温度勾配を有する平板の上に帯状にエマルションを塗布したときの造膜した部分と造膜していない部分との境界温度であり、「亀裂のない均一皮膜が得られる最低温度」と定義される。本発明では、MFTテスター(テスター産業社製「TP−801 LT型」)を用い、ステンレス鋼製の溝なし平板上に250μm(ウエット)の皮膜をアプリケーターで作製して、測定温度範囲−5℃〜+30℃で最低造膜温度(℃)を測定した。皮膜の亀裂の有無は、上記JIS K6828−2に準じて目視で判定した。
【0013】
さらに、本発明のエマルション型樹脂組成物を23℃で24時間乾燥することにより得られる皮膜は、そのケーニッヒ(KOENIG)硬度が5回以上となる。ケーニッヒ硬度は7回以上が好ましく、10回以上がさらに好ましい。なお、この「皮膜」は、本発明のエマルション型樹脂組成物のみから形成された膜を指し、本発明のエマルション型樹脂組成物に塗料用添加剤等を配合した後の塗料から得られる「塗膜」ではない。以下の説明では、便宜上、本発明のエマルション型樹脂組成物のみから得られる膜を「皮膜」と、本発明の塗料から得られる膜を「塗膜」という。上記皮膜のケーニッヒ硬度が5回未満では、本発明で目的とする優れた硬度を有する塗膜を得ることができない。
【0014】
ケーニッヒ硬度は、振り子式硬度計(ケーニッヒ式;モデル299;エリクセン(独)社製)を用いて測定する値を採用する。具体的には、ガラス板上にアプリケーターでエマルション型樹脂組成物の250μm(ウエット;固形分濃度40〜60%)の皮膜を作製し、23℃で24時間放置した後、この塗装板を上記振り子式硬度計にセットし、測定開始角度を6°とし、測定終了角度が3°を下回るまでの振り子(タングステンカーバイド鋼球)の往復回数をケーニッヒ硬度(回)とした。皮膜にタックがあれば、振り子が止まってしまうため、この回数が多いほど、硬度が硬く、性能がよいことを示す。
【0015】
本発明のエマルション型樹脂組成物を23℃で24時間乾燥することにより得られる皮膜は、その吸水率が20質量%未満となる。吸水率が20質量%以上になると耐水性が低下して、例えば、建築外装に適用した場合に、降雨等によって塗膜が外壁から剥離したり、塗膜にフクレが発生するおそれがあり好ましくない。吸水率は15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。本発明では、下記方法により測定した値を吸水率として採用した。
【0016】
エマルション型樹脂組成物を、乾燥膜厚250μmになるように離型紙上に塗工して、23℃で24時間乾燥させる。得られた皮膜を適宜(5cm×5cm程度)切り出し、精秤後、23℃の水道水に24時間浸漬し、取り出して水滴を除去し、精秤する。100×(浸漬後の試料の質量−浸漬前の試料の質量)/浸漬前の試料の質量により、吸水率(質量%)を求めた。なお、n=3とし、その平均値を吸水率とした。
【0017】
VOCフリーで、MFTが0℃以下で、しかも、ケーニッヒ硬度および吸水率が上記好適範囲に入っている皮膜を得るためには、本発明のエマルション型樹脂組成物に、Tgが50〜150℃であり、重量平均分子量(Mw)が5,000〜50,000である水分散性ポリマー(A)が含まれていることが望ましい。この水分散性ポリマー(A)として高Tgで、分子量が比較的小さいものを用いることで、造膜性を損なわずに皮膜の硬度を確保することができる。水分散性ポリマー(A)のTgが50℃未満では、ケーニッヒ硬度を5回以上にすることが難しく、150℃を超えるとMFTを0℃以下にするのが難しくなる。より好ましいTgの下限は55℃であり、上限は145℃である。また、Mwが5,000より小さいと、分子量が小さすぎて、ケーニッヒ硬度や吸水率を好適範囲に保持できなくなる場合があるが、Mwが50,000を超えるとMFTを0℃以下に保てなくなるおそれがある。より好ましいMwの下限は5,500であり、上限は20,000であり、さらに好ましいMwの上限は10,000である。
【0018】
上記水分散性ポリマー(A)は、「水分散性」であるから水に溶けるポリマーであってはならないが、部分的に水に溶解するように、水溶性モノマーを共重合したものであることが好ましく、特に、酸価が20〜70mgKOH/gであると造膜性が一層優れたものとなるため好ましい。この範囲の酸価を有するポリマーは、部分的に水に溶解するため(全部は溶けない)、水によるポリマーの可塑化効果が発現し、エマルション粒子同士が融着し易くなって、造膜性を高めるのではないかと考えられる。このような造膜性の向上効果を期待するのであれば、水分散性ポリマー(A)の酸価を20mgKOH/g以上にすることが望ましい。酸価の下限は25mgKOH/gがより好ましく、35mgKOH/gがさらに好ましい。ただし、酸価が70mgKOH/gを超えると、水溶性ポリマーとなってしまったり、前記した皮膜の吸水率が高くなりすぎるため、好ましくない。酸価は、酸基含有モノマーの使用量から計算で求められる他、得られた水分散性ポリマー(A)の酸価は、KOHを用いて滴定により求めることができる。酸価を滴定で求める際には、テトラヒドロフランとメタノールと水との混合溶媒に水分散性ポリマー(A)を溶解させてから、塩酸で、中和されているカルボン酸塩を酸に戻し、その後KOHで中和滴定を行うとよい。
【0019】
また、水分散性ポリマー(A)が水に溶けない、とは、重合生成物の中和物が、無色透明な溶液状を呈するのではなく、粒子によって光が散乱して白濁して見える状態を指すものとする。
【0020】
本発明のエマルション型樹脂組成物には、塗料としたときの物性を種々変化させるため、上記水分散性ポリマー(A)の他に、水分散性ポリマー(B)が含まれていることが好ましい。このとき水分散性ポリマー(B)のTgが0℃以下(より好ましくは−10℃以下)であれば、造膜性が格段に向上し、塗膜の弾性等の物性も良好となるため、本発明の好ましい実施態様である。ただし、水分散性ポリマー(B)のTgが低すぎると、塗膜が粘着性を帯びることがあるため、Tgの下限は−40℃(より好ましくは−35℃)とすることが好ましい。
【0021】
本発明のエマルション型樹脂組成物において水分散性ポリマー(A)と水分散性ポリマー(B)とを併用する場合には、水分散性ポリマー(A)と水分散性ポリマー(B)の合計を100質量%としたときに、水分散性ポリマー(A)が10〜50質量%、水分散性ポリマー(B)が50〜90質量%となるようにすることが好ましい。水分散性ポリマー(A)を20〜40質量%とし、水分散性ポリマー(B)を80〜60質量%とするのがより好ましい。水分散性ポリマー(A)が多い場合は造膜性が低下する傾向があり、水分散性ポリマー(B)が多すぎると、皮膜硬度が低下する傾向がある。
【0022】
また、本発明のエマルション型樹脂組成物には、上記水分散性ポリマー(B)に加えて、さらに、重量平均分子量が50,000より大きい水分散性ポリマー(C)が含まれていてもよい。塗膜硬度が向上するからである。この点で、水分散性ポリマー(C)のTgは0℃以上が好ましい。より好ましいTgは30℃以上、さらに好ましいTgは50℃以上である。
【0023】
この場合の各ポリマーの比率は、水分散性ポリマー(A)〜(C)の合計を100質量%としたときに、水分散性ポリマー(A)が10〜50質量%、水分散性ポリマー(B)が85〜20質量%、水分散性ポリマー(C)が5〜30質量%となるようにすることが好ましい。水分散性ポリマー(A)や(C)が多い場合は造膜性が低下する傾向があり、水分散性ポリマー(B)が多すぎると、皮膜硬度が低下する傾向がある。
【0024】
水分散性ポリマー(A)〜(C)の合成に用い得るラジカル重合性モノマーは、特に限定されないが、水分散性ポリマー(A)の酸価を上記好適範囲に調整するには、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、ビニル安息香酸、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシル基末端カプロラクトン変性アクリレート(例えば「プラクセル(登録商標)FA」シリーズ;ダイセル工業社製)、カルボキシル基末端カプロラクトン変性メタクリレート(例えば「プラクセル(登録商標)FMA」シリーズ;ダイセル工業社製)等のカルボキシル基含有モノマーを使用する。これらは2種以上を併用してもよい。中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。もちろん、水分散性ポリマー(B)や(C)を合成する際にこれらのカルボキシル基含有モノマーを用いてもよい。
【0025】
その他の使用可能なモノマーとしては、以下のラジカル重合性モノマー類が好適なものとして挙げられる。
【0026】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルまたはシクロアルキルエステルモノマー類。
【0027】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業株式会社製の「プラクセル(登録商標)F」シリーズ等)等のヒドロキシル基含有モノマー類。
【0028】
メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルコキシアルキルエステル類。
【0029】
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシラン等のヒドロキシシランおよび/または加水分解性シラン基含有ビニル系モノマー類。
【0030】
(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、モルホリンのエチレンオキサイド付加(メタ)アクリレート、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルサクシンイミド、N−ビニルメチルカルバメート、N,N−メチルビニルアセトアミド、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン、(メタ)アクリロニトリル等の窒素含有モノマー類。
【0031】
(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸2−アジリジニルエチル等のアジリジニル基含有モノマー類。
【0032】
グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジルアクリレート、α−メチルグリシジルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製の「MGMA」)、グリシジルアリルエーテル、オキソシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製の「サイクロマー(登録商標)A400」等)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製の「サイクロマー(登録商標)M100」等)等のエポキシ基含有モノマー類。
【0033】
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルメチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー類。
【0034】
アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(ビニルエチルケトン等)、(メタ)アクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニルアクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート等のカルボニル基含有モノマー類。
【0035】
パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート類。
【0036】
4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(例えば、旭電化工業社製「アデカスタブ(登録商標)LA−87」)、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン(例えば、旭電化工業社製「アデカスタブ(登録商標)LA−82」)、4−(メタ)アクリロイル−1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の紫外線安定性モノマー類。
【0037】
2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−tert−オクチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5’−t−ブチル−3’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5’−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3’−t−ブチルフェニル]−4−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収性モノマー類。
【0038】
2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ]プロポキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収性モノマー類。
;等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0039】
水分散性ポリマー(A)、(B)および(C)のTgの調整は、ホモポリマーのTg(K)とモノマーの質量分率から、下記計算式を用いて求めることができる。この計算Tgを目安にして、モノマー組成を決定することが好ましい。
【0040】
【数1】

【0041】
式中、Tgは求めるポリマーのガラス転移温度(K)を示し、W1、W2、…Wnは、各モノマーの質量分率を示し、Tg1、Tg2、…Tgnは、対応するモノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)を示す。なお、ホモポリマーのTgは、「POLYMER HANDBOOK」(第4版;John Wiley & Sons, Inc.発行)等の刊行物に記載されている数値を採用すればよい。また、ポリマーのTgは、DSC(示差走査熱量測定装置)、DTA(示差熱分析装置)、TMA(熱機械測定装置)によって測定可能である。
【0042】
本発明のエマルション型樹脂組成物は、乳化剤の存在下または不存在下における乳化重合法により得ることが好ましいが、懸濁重合法のほか、塊状重合法や溶液重合法で得られたポリマーを、後分散する方法によってエマルション化しても構わない。また、水分散性ポリマー(A)と水分散性ポリマー(B)、さらに必要により水分散性ポリマー(C)を併用する場合には、これらを別々に重合してからブレンドしてもよく、多段乳化重合法を採用してポリマー(A)、(B)および(C)からなるエマルションを合成してもよい。
【0043】
多段重合法を採用して、ポリマー(A)と(B)を合成する場合には、例えば、ポリマー(A)の原料モノマーを先に重合して、その後ポリマー(B)の原料モノマーを後から重合する方法、その逆の方法、各ポリマーの原料モノマーを何段かに分けて重合する方法、いずれも採用可能であるが、ポリマー(A)の原料モノマーを最終段よりも前の段階で重合する方法、特にポリマー(A)を先に重合してその後ポリマー(B)を後から重合する方法を採用すると、造膜性に優れたエマルションが得られ、塗膜の伸び物性も良好になるため好ましい。なお、水分散性ポリマー(C)をも含ませる場合には、ポリマー(A)よりも先に、ポリマー(C)の重合を行うことが好ましい。原料モノマーの添加方法は、一括添加、モノマー滴下、プレエマルション滴下等、いずれでもよい。
【0044】
乳化重合には、ラジカル重合開始剤として公知のものが特に限定されず使用できる。具体的には、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の過硫酸塩・過酸化物類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ系化合物を挙げることができる。使用量は、原料モノマー100質量%に対し0.1〜1質量%程度が好ましい。また、重合速度を促進させるためや低温で重合する時には、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤を組み合わせてもよい。
【0045】
また、乳化剤も特に限定されず、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸アンモニウム等のアルキルアリルポリエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、スルホン酸基または硫酸エステル基を有するモノマーや(メタ)アクリロイル基を有する乳化剤のような反応性乳化剤等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、反応性ノニオン界面活性剤等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;(変性)ポリビニルアルコール等の公知の乳化剤(分散剤)を添加して行えばよい。
【0046】
上記乳化剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができ、原料モノマー100質量%に対して0.01〜10質量%程度使用するとよい。なお、水分散性ポリマー(A)のMwを調整するためには、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトエタノール、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤を用いる。これらは、水分散性ポリマー(A)の原料モノマー100質量%に対して、0.5〜10質量%使用するとよい。多すぎると、水分散性ポリマー(A)の分子量を低下させるおそれがある。
【0047】
特に限定されないが、重合温度は0〜100℃、好ましくは50〜90℃とし、重合時間は1〜15時間とする。
【0048】
本発明のエマルション型樹脂組成物は、安定性を向上させるため、中和剤によって中和されていることが好ましい。中和剤としては、特に限定されるわけではなく、従来公知の、酸性基を中和する際に用いられる中和剤がいずれも使用可能である。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物類;水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物類;アンモニア;ジメチルアミノエタノール、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の水溶性有機アミン等が挙げられる。これらの中でも、アンモニア、ジメチルアミノエタノール、トリメチルアミン等が好ましい。
【0049】
エマルション型樹脂組成物に中和剤を添加する場合、水分散性ポリマー(A)と水分散性ポリマー(B)とが有するカルボキシル基量1当量に対し、0.5〜1.5当量の中和剤を添加することが好ましい。より好ましい中和剤量の下限は0.6当量、さらに好ましくは0.7当量である。より好ましい中和剤量の上限は1.2当量、さらに好ましくは1.0当量である。なお、水分散性ポリマー(C)を用いる場合は、水分散性ポリマー(A)、水分散性ポリマー(B)および水分散性ポリマー(C)が有するカルボキシル基の合計量1当量に対し、上記範囲とする。
【0050】
中和剤の添加時期は特に限定されない。例えば、多段乳化重合を用いて、1段目で水分散性ポリマー(A)の原料モノマーを重合し、2段目で水分散性ポリマー(B)の原料モノマーを重合する場合、2段目の重合が終了した後に中和剤を一括添加すればよい。また、中和剤100質量%のうち、0〜50質量%(より好ましくは10〜30質量%)を1段目の重合後に反応容器内に一括添加し、中和剤50〜100質量%(より好ましくは70〜90質量%)を、2段目の原料モノマーの重合中に反応容器に滴下してもよい。後者の添加法を採用することが望ましく、得られるエマルション型樹脂組成物の経時安定性が一層優れたものとなり、さらに、エマルション皮膜の硬度と塗膜硬度も非常に良好となる。
【0051】
本発明のエマルション型樹脂組成物は、樹脂成分が、水分散性ポリマー(A)と水分散性ポリマー(B)とからなる態様か、さらに水分散性ポリマー(C)を含む態様が最も好ましい。このエマルション型樹脂組成物は、建築外装用・内装用塗料の主成分として好適に使用できる。塗料として用いるときには、架橋剤を添加して、塗膜を架橋させることにより塗膜物性を向上させることが好ましい。架橋剤としては、水分散性ポリイソシアネートか、ヒドラジン化合物が好ましいものとして挙げられる。
【0052】
水分散性ポリイソシアネートとは、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート等の脂肪族または脂環族系のポリイソシアネート(これらの誘導体も含む)のイソシアネート基の一部に、エチレンオキサイド鎖を連結して、水に分散可能としたものである。例えば、日本ポリウレタン工業社製の「アクアネート(登録商標)100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」等;住化バイエルウレタン社製の「バイヒジュールTPLS−2032」、「SUB−イソシアネート−L801」等;三井武田ケミカル社製の「タケネート(登録商標)WD−720」、「タケネートWD−725」、「スタフィロイドWD−220」等;大日精化工業社製「レザミン(登録商標)D−56」等として上市されているので、これらを用いればよい。
【0053】
水分散性ポリイソシアネートを用いる場合は、水分散性ポリマー(A)、(B)、(C)のうち、本発明のエマルション型樹脂組成物に用いられるポリマーのいずれか1種以上に、架橋点としてヒドロキシル基を導入しておくことが好ましいが、イソシアネート基はカルボキシル基とも反応するので、ヒドロキシル基はなくてもよい。水分散性ポリイソシアネートは、カルボキシル基とヒドロキシル基との合計を1当量としたときに、イソシアネート基が0.5〜2.5当量となるように使用することが好ましい。
【0054】
ヒドラジン化合物は、2〜10個、好ましくは4〜6個の炭素原子を有するジカルボン酸ジヒドラジドが好適である。このヒドラジン化合物は、前記カルボニル基含有モノマー由来のカルボニル基と架橋反応するので、ヒドラジン化合物を架橋剤として用いる場合は、水分散性ポリマー(A)、(B)、(C)のうち、本発明のエマルション型樹脂組成物に用いられるポリマーのいずれか1種以上に、カルボニル基含有モノマー由来のユニットを導入しておく。ヒドラジン化合物の使用量は、カルボニル基1当量に対し、0.1〜5当量が好ましい。
【0055】
上記ジカルボン酸ジヒドラジドの具体例としては、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等が挙げられる。また、2〜4個の炭素原子を有する脂肪族水溶性ヒドラジン、すなわち、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン等も、利用可能である。
【0056】
本発明のエマルション型樹脂組成物を含む塗料には、必要に応じて慣用の塗料配合に使用される原材料、および各種添加剤を用いることができる。例えば、顔料、無機系または有機系充填材、増粘剤、滑剤、親水化剤、水溶性または水性樹脂、分散剤(前述の乳化剤)、耐水化剤、架橋剤、成膜助剤、熱可融性物質、pH調整剤、粘性調整剤等が添加可能なものとして挙げられる。顔料としては、二酸化チタン、リトポン、酸化鉄、酸化クロム等の無機顔料や、公知の有機顔料等の塗料用顔料が用いられ、充填材としては、炭酸カルシウム、バライト、マイカ、珪砂等が用いられる。また増粘剤としては、酸化ポリエチレン系、アマイド系、架橋ポリアクリル系、シリカ系等のチキソトロピック付与効果のある公知の化合物を用いるとよい。
【0057】
塗料として顔料と充填材を添加する場合、塗料固形分中の顔料と充填材との体積濃度PVCが40体積%を超えない範囲にすると、良好な塗膜性能が得られ、好ましい。また塗料粘度は、塗装方法に応じて適宜変更すればよいが、通常5〜40Pa・s(23℃)に調製する。
【0058】
本発明の塗料を適用することのできる対象(被塗物)は、特に限定されないが、建築外装用塗料としての性能向上を目的としている点から、外壁構成材に適用することが推奨される。具体的には、モルタル、コンクリート、ALC(軽量気泡コンクリート)、PC(プレストレストコンクリート)板、スレート板、各種(金属系や石膏系等)サイディングボード等の無機系材料や、木材、各種プラスチック(FRPを含む)等の有機系材料が挙げられる。また本発明の塗料は付着性に優れているので、上記材料等に形成されている塗膜の上に、直接塗装することも可能である。このような塗膜を構成する既存の仕上げ塗材としては、単層弾性塗材、合成樹脂エマルションペイント、ウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂系エナメル塗料、塩化ビニル樹脂系塗料、吹付タイル、樹脂リシン系塗料その他公知の各種有機系塗料、またセメントリシン系、セメントスタッコ系、ケイ酸質系等の無機系塗料がある。
【0059】
塗装方法は、ローラー法、エアスプレー法、エアレススプレー法等の公知の方法を採用できる。塗布量は、塗料の固形分濃度や比重、被塗物の種類や用途、模様の有無等に応じ、適宜変更するとよい。
【実施例】
【0060】
以下実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお以下特にことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示すものとする。
【0061】
合成例1
まず、一段目の乳化重合において、水分散性ポリマー(A)の合成を行った。滴下ロート、撹拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却器を備えたフラスコに、脱イオン水を273.2部仕込んだ。別途、「ハイテノール(登録商標)18E」(第一工業製薬社製のアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩)の20%水溶液7.5部、脱イオン水10.6部と、表1にNo.1−1として示した一段目モノマーの全てをよく混合してプレエマルションを調製し、滴下ロートに仕込んだ。次いで、プレエマルションのうちの42.3部をフラスコに一気に添加して、緩やかに窒素ガスを吹き込みながら、撹拌下で75℃に昇温した。
【0062】
ここに、5%の過硫酸カリウム水溶液を30.0部添加し、重合を開始した。このとき、フラスコの内温を80℃まで昇温して、10分間維持した。ここまでを初期反応とした。初期反応終了後、内温を80℃に維持したまま、上記の一段目用のプレエマルションの残りを15分間に亘って均一滴下した。滴下終了後、脱イオン水10部で滴下ロートを洗浄し、洗浄液をフラスコに添加した。その後、同温度で30分間保持し、一段目の重合を終了した。固形分濃度17%の水分散性ポリマー(A)のエマルションが得られた。
【0063】
ここでサンプリングを行い、後述する条件でGPCにより重量平均分子量(Mw)を測定した。また、サンプリングしたエマルションに、合成した水分散性ポリマー(A)に含まれるカルボキシル基と同当量のアンモニアを加えて、カルボキシル基を中和した後のエマルションの状態を目視で観察した。これらの測定結果と水分散性ポリマー(A)の計算Tgおよび計算酸価を、表1および3に併記した。
【0064】
次に、引き続いて、二段目の乳化重合により水分散性ポリマー(B)の合成を行った。「アクアロン(登録商標)KH−10」(第一工業製薬社のアニオン系反応性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩)の25%水溶液54部、脱イオン水112.5部、表2にNo.1−2として示した二段目のモノマーの全てをよく混合してプレエマルションを調製し、滴下ロートから165分間に亘って水分散性ポリマー(A)のエマルションが入っている上記フラスコに均一滴下した。滴下中は、内温を80℃に維持した。滴下終了後、脱イオン水10部で滴下ロートを洗浄し、洗浄液をフラスコに添加した。その後、同温度で30分間保持し、二段目の重合を終了した。続いて、10%アンモニア水を、全モノマー中のカルボキシル基1当量に対し、0.9当量となるように添加して、80℃で60分間撹拌を続け、室温まで冷却した後、100メッシュの金網で濾過して、本発明のエマルション型樹脂組成物No.1を得た。なお、二段目のモノマーから得られる水分散性ポリマー(B)の計算Tgを表2〜3に併記した。
【0065】
合成例2
初期と一段目用に表1のNo.2−1を用い、プレエマルションを調製する際の「ハイテノール18E」の20%水溶液量を22.8部に変え、脱イオン水量を31.8部に変えた以外は、合成例1と同様にして初期反応を行った。続いて、一段目用のプレエマルションの残りを60分間にわたって滴下した以外は、合成例1と同様にして一段目の重合を行った。二段目用に表2のNo.2−2を用い、プレエマルションを調製する際の「アクアロンKH−10」の25%水溶液量を42部とし、脱イオン水を87.5部とし、滴下時間を120分とした以外は合成例1と同様にして二段目の重合を行った。各特性値を表1〜3に示した。
【0066】
合成例3
初期と一段目用に表1のNo.3−1を、二段目用に表2のNo.3−2を用いた以外は合成例2と同様に二段重合を行った。各特性値を表1〜3に示した。
【0067】
合成例4
初期と一段目用に表1のNo.4−1を、二段目用に表2のNo.4−2をそれぞれ用いた以外は合成例2と同様に二段重合を行った。各特性値を表1〜3に示した。
【0068】
合成例5
初期と一段目用に表1のNo.5−1を、二段目用に表2のNo.5−2をそれぞれ用いた以外は合成例2と同様に二段重合を行った。各特性値を表1〜3に示した。
【0069】
合成例6
初期と一段目用に表1のNo.6−1を、二段目用に表2のNo.6−2をそれぞれ用いた以外は合成例2と同様に二段重合を行った。各特性値を表1〜3に示した。この例は、連鎖移動剤量を多くして、水分散性ポリマー(A)のMwを小さくした例である。
【0070】
合成例7
初期と一段目用に表1のNo.7−1を、二段目用に表2のNo.7−2をそれぞれ用いた以外は合成例2と同様に二段重合を行った。各特性値を表1〜3に示した。この例は、水分散性ポリマー(A)の酸価が小さい例である。
【0071】
合成例8
初期と一段目用に表1のNo.8−1を、二段目用に表2のNo.8−2をそれぞれ用いた以外は合成例2と同様に二段重合を行った。各特性値を表1〜3に示した。この例は、連鎖移動剤量を少なくして、水分散性ポリマー(A)のMwを大きくした例である。
【0072】
合成例9
初期と一段目用に表1のNo.9−1を、二段目用に表2のNo.9−2をそれぞれ用いた以外は合成例2と同様に二段重合を行った。各特性値を表1〜3に示した。この例は、水分散性ポリマー(A)の酸価が大きい例である。
【0073】
合成例10
初期と一段目用に表4のNo.10−1を、二段目用に表5のNo.10−2をそれぞれ用いた以外は合成例2と同様に二段重合を行った。各特性値を表4〜6に示した。この例は、水分散性ポリマー(A)のTgが高い例である。
【0074】
合成例11
初期と一段目用に表4のNo.11−1を、二段目用に表5のNo.11−2をそれぞれ用いた以外は合成例2と同様に二段重合を行った。各特性値を表4〜6に示した。この例は、水分散性ポリマー(A)のTgが低い例である。
【0075】
合成例12
初期と一段目用に表4のNo.12−1を、二段目用に表5のNo.12−2をそれぞれ用いた以外は合成例2と同様に二段重合を行った。各特性値を表4〜6に示した。
【0076】
合成例13
一段目用に表4のNo.11−1を、二段目用に表5のNo.11−2をそれぞれ用いた。一段目では、プレエマルションを調製する際の「ハイテノール18E」の20%水溶液量を3.8部に変え、脱イオン水量を5.3部に変え、全量を一気に添加して、30分重合した以外は、合成例1と同様にして一段目の重合を行った。二段目においては、プレエマルションを調製する際の「アクアロンKH−10」の25%水溶液量を57部とし、脱イオン水を118.8部とし、滴下時間を180分とした以外は合成例1と同様にして二段目の重合を行った。各特性値を表4〜6に示した。この例は、水分散性ポリマー(A)の比率が少ない例である。
【0077】
合成例14
初期と一段目用に表4のNo.14−1を用い、プレエマルションを調製する際の「ハイテノール18E」の20%水溶液量を30.4部に変え、脱イオン水量を42.4部に変えた以外は、合成例1と同様にして初期反応を行った。続いて、一段目用のプレエマルションの残りを80分間にわたって滴下した以外は、合成例1と同様にして一段目の重合を行った。二段目用に表5のNo.14−2を用い、プレエマルションを調製する際の「アクアロンKH−10」に変えて「ハイテノール18E」の20%水溶液45部を用い、脱イオン水量を66部とし、滴下時間を100分とした以外は合成例1と同様にして二段目の重合を行った。各特性値を表4〜6に示した。
【0078】
合成例15
初期と一段目用に表4のNo.15−1を用い、プレエマルションを調製する際の「ハイテノール18E」の20%水溶液を45.6部に変え、脱イオン水量を63.6部に変えた以外は、合成例1と同様にして初期反応を行った。続いて、一段目用のプレエマルションの残りを120分間にわたって滴下した以外は、合成例1と同様にして一段目の重合を行った。二段目用に表5のNo.15−2を用い、プレエマルションを調製する際の「アクアロンKH−10」の25%水溶液量を24部とし、脱イオン水を50部とし、滴下時間を60分とした以外は合成例1と同様にして二段目の重合を行った。各特性値を表4〜6に示した。この例は、水分散性ポリマー(A)の比率が多い例である。
【0079】
合成例16
初期と一段目用に表2のNo.2−2を用い、プレエマルションを調製する際の「ハイテノール18E」の20%水溶液を「アクアロンKH−10」の25%水溶液42部に変え、脱イオン水量を87.5部に変えた以外は、合成例1と同様にして初期反応を行った。続いて、一段目用のプレエマルションの残りを120分間にわたって滴下した以外は、合成例1と同様にして一段目の重合を行った。二段目用に表1のNo.2−1を用い、プレエマルションを調製する際の「アクアロンKH−10」の25%水溶液を「ハイテノール18E」の20%水溶液22.8部に変え、脱イオン水を31.8部とし、滴下時間を60分とした以外は合成例1と同様にして二段目の重合を行った。各特性値を表7に示した。合成例16は、合成例2の一段目と二段目を逆の順序で重合した例であり、水分散性ポリマー(B)を、水分散性ポリマー(A)よりも先に重合した例となる。
【0080】
合成例17
初期と一段目用に表1のNo.8−1の1/3量を用い、プレエマルションを調製する際の「ハイテノール18E」の20%水溶液量を7.6部に変え、脱イオン水量を10.6部に変えた以外は合成例1と同様にして初期反応を行った。続いて、一段目用のプレエマルションの残りを15分かけて滴下し、その後30分間熟成した以外は、合成例1と同様にして一段目の重合を行った。これは水分散性ポリマー(C)に該当し、Mwは71,000であった。
【0081】
二段目用に表1のNo.2−1を用い、「ハイテノール18E」の20%水溶液7.6部と、脱イオン水31.8部を加えてプレエマルションを調製し、これを60分かけて滴下し、その後30分熟成した。これは水分散性ポリマー(A)に該当する。
【0082】
三段目用に表2のNo.14−2を用い、「アクアロンKH−10」の25%水溶液36部と、脱イオン水75部とを加えてプレエマルションを調製し、100分かけて滴下した。これは水分散性ポリマー(B)に該当する。
【0083】
この三段重合においては、(A):(B):(C)は、30:60:10(質量比)である。この三段重合によって、エマルション型樹脂組成物No.17を得た。各特性値を表7に示した。
【0084】
合成例18
合成例1と同様のフラスコに脱イオン水を220部仕込んだ。別途、「ハイテノール18E」の20%水溶液22.8部と、脱イオン水31.8部と、表1にNo.2−1として示したモノマーの全てをよく混合してプレエマルションを調製し、滴下ロートに仕込んだ。次いで、プレエマルションのうちの42.3部をフラスコに一気に添加して、緩やかに窒素ガスを吹き込みながら、撹拌下で75℃に昇温した。ここに、5%の過硫酸カリウム水溶液を9.0部添加し、重合を開始した。このとき、フラスコの内温を80℃まで昇温して、10分間維持した。初期反応終了後、内温を80℃に維持したまま、上記のプレエマルションの残りを60分間に亘って均一滴下した。滴下終了後、脱イオン水10部で滴下ロートを洗浄し、洗浄液をフラスコに添加した。次いで、同温度で30分間保持した後、0.9当量のアンモニア水を添加し、さらに80℃で60分撹拌を続けた後、重合を終了した。水分散性ポリマー(A)のブレンド用エマルション1が得られた。Mwは7500であった。
【0085】
一方、別のフラスコに脱イオン水を213部仕込んだ。別途、、「アクアロンKH−10」の25%水溶液42部と、脱イオン水87.5部と、表2にNo.2−2として示したモノマーの全てをよく混合してプレエマルションを調製し、滴下ロートに仕込んだ。次いで、プレエマルションのうちの42.3部をフラスコに一気に添加して、緩やかに窒素ガスを吹き込みながら、撹拌下で75℃に昇温した。ここに、5%の過硫酸カリウム水溶液を21.0部添加し、重合を開始した。このとき、フラスコの内温を80℃まで昇温して、10分間維持した。初期反応終了後、内温を80℃に維持したまま、上記のプレエマルションの残りを120分間に亘って均一滴下した。滴下終了後、脱イオン水10部で滴下ロートを洗浄し、洗浄液をフラスコに添加した。次いで、同温度で30分間保持した後、0.9当量のアンモニア水を添加し、さらに80℃で60分撹拌を続けた後、重合を終了した。水分散性ポリマー(B)のブレンド用エマルション2が得られた。
【0086】
ブレンド用エマルション1と2を、固形分比(質量比)で30:70となるように混合し、エマルション型樹脂組成物No.18を得た。各特性値を表7に示した。
【0087】
合成例19
合成例1と同様にして、一段目の乳化重合を行った。一段目と二段目の全てのモノマーのカルボキシル基1当量に対して0.9当量に相当する量の10%アンモニア水を用意し、そのうちの20%のアンモニア水を一段目の乳化重合終了後にフラスコに一気に添加して、15分撹拌した。残りのアンモニア水を、二段目のモノマーのプレエマルションに添加混合して、滴下ロートから滴下した以外は、合成例1と同様にして二段目の乳化重合を行い、本発明のエマルション型樹脂組成物No.19を得た。各特性値を表7に示した。
また、このエマルション型樹脂組成物No.19と、合成例1で作製したエマルション型樹脂組成物No.1とを、50℃の環境下で1ヶ月保存したときの粘度とpHの変化率を測定したところ、No.1の粘度・pH変化率は50%程度であり、実用上問題のないレベルであったが、No.19では粘度・pH変化率が20%以下であり、非常に優れた経時安定性を示した。
【0088】
特性評価方法
[Mwの測定方法]
エマルションを、ポリマーが固形分で0.2%となるようにテトラヒドロフランに溶解させた溶液を試料とし、GPC(東ソー社製「HLL−8120GPC」)を用いて測定した。カラムは、東ソー社製の「TSKgel G5000HXL」と「TSKgel GMHXL」との連結カラムである。検量線はポリスチレン標準サンプルを用いて作製した。
【0089】
[最低造膜温度(MFT)の測定方法]
MFTテスター(テスター産業社製「TP−801 LT型」)を用い、ステンレス鋼製の溝なし平板上に250μm(ウエット)の皮膜をアプリケーターで作製して、測定温度範囲−5℃〜+30℃で、最低造膜温度(℃)を測定した。皮膜の亀裂の有無は、JIS K6828−2(2003)に準じて目視で判断した。
【0090】
[ケーニッヒ硬度計によるエマルション皮膜および塗料の塗膜の硬度評価方法]
ガラス板上にアプリケーターでエマルション型樹脂組成物の250μm(ウエット;固形分濃度40〜60%)の皮膜を作製し、23℃で24時間放置した後、この塗装板を上記振り子式硬度計にセットし、測定開始角度を6°とし、測定終了角度が3°を下回るまでの振り子(タングステンカーバイド鋼球)の往復回数をケーニッヒ硬度(回)とした。塗膜にタックがあれば、振り子が止まってしまうため、この回数が多いほど、硬度が硬く、性能がよいことを示す。なお、評価基準は、次の通りとした。◎:11回以上、○:5〜10回、△:3〜4回、×:0〜2回。
【0091】
[吸水率の測定方法]
本発明のエマルション型樹脂組成物を、乾燥膜厚250μmになるように離型紙上に塗工して、23℃で24時間乾燥させる。得られた皮膜を適宜(5cm×5cm程度)切り出し、精秤後、23℃の水道水に24時間浸漬し、取り出して水滴を除去し、精秤する。100×(浸漬後の試料の質量−浸漬前の試料の質量)/浸漬前の試料の質量により、吸水率(質量%)を求めた。なお、n=3とし、その平均値を吸水率とした。また、評価基準は次の通りである。◎:15%未満、○:15%以上〜20%未満、△:20%以上〜25%未満、×:25%以上。
【0092】
[塗料の調製]
まず、脱イオン水18.1部に、顔料分散剤として「デモール(登録商標)EP」(花王社製;特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤)4.0部、「エマルゲン(登録商標)LS106」(花王社製;ノニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキレンエーテル)3.4部、消泡剤として「ノプコ8034L」(サンノプコ社製)0.7部、白色顔料(二酸化チタン)として「タイペーク(登録商標)CR−95」(石原産業社製)67.2部を混合し、塗料用ペーストを調製した。
【0093】
次に、各合成例で合成したエマルション型樹脂組成物を200部(ウエット)採り、上記ペースト94.1部と、前出の「ノプコ8034L」1.0部とを加えて、よく撹拌し、白色塗料を調製した。前記方法で、各塗料のMFT(℃)、塗膜硬度を評価した。
【0094】
[塗膜の耐水性]
「ノザワフレキシブルシート」(ノザワ社製のスレート板:JIS K5410)に、「DAN透明シーラー」(日本ペイント社製;塩化ゴム系)を乾燥後の付着量が100g/m2となるように刷毛塗装し、23℃で24時間乾燥した後、23℃の水に浸漬し、7日後の塗膜状態を目視観察した。塗膜に異常のないものを◎、フクレや剥がれの面積率が5%未満のものを○、フクレや剥がれの面積率が20%未満のものを△、全面にフクレや剥がれが認められるものを×とした。
【0095】
なお、表においては、各モノマー名を次のように略記した。右の数字は、ポリマーハンドブックに掲載されているホモポリマーのTg(K)の値である。
MMA :メチルメタクリレート 378K
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート 203K
St :スチレン 373K
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート 356K
IBMA:イソボルニルメタクリレート 453K
NVP :N−ビニルピロリドン 448K
AA :アクリル酸 368K
MAA :メタクリル酸 403K
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート 328K
HALS:「アデカスタブ(登録商標)LA−87」(旭電化工業社製:4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン) 403K
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
【表5】

【0101】
【表6】

【0102】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によれば、揮発性有機化合物(VOC)を配合することなく、最低造膜温度(MFT)が0℃以下である塗料用のエマルション型樹脂組成物を提供することができた。このエマルション型樹脂組成物は、得られる塗膜が良好な硬度と吸水率を有するため、例えば、建築外装用塗料、内装用塗料等に適用するのに好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最低造膜温度が0℃以下であり、実質的に揮発性有機化合物を含まないエマルション型樹脂組成物であって、このエマルション型樹脂組成物を23℃で24時間乾燥することにより得られる皮膜のケーニッヒ硬度が5回以上で、吸水率が20質量%未満であることを特徴とするエマルション型樹脂組成物。
【請求項2】
ガラス転移温度が50〜150℃であり、重量平均分子量が5,000〜50,000である水分散性ポリマー(A)を含有することを特徴とするエマルション型樹脂組成物。
【請求項3】
上記水分散性ポリマー(A)の酸価が20〜70である請求項2に記載のエマルション型樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、ガラス転移温度が−40〜0℃の水分散性ポリマー(B)を含有する請求項2または3に記載のエマルション型樹脂組成物。
【請求項5】
水分散性ポリマー(A)と水分散性ポリマー(B)の合計を100質量%としたとき、水分散性ポリマー(A)が10〜50質量%、水分散性ポリマー(B)が90〜50質量%である請求項4に記載のエマルション型樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、重量平均分子量が50,000より大きい水分散性ポリマー(C)を含み、水分散性ポリマー(A)、水分散性ポリマー(B)および水分散性ポリマー(C)の合計を100質量%としたときに、水分散性ポリマー(A)が10〜50質量%、水分散性ポリマー(B)が85〜20質量%、水分散性ポリマー(C)が5〜30質量%である請求項4に記載のエマルション型樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のエマルション型樹脂組成物を含むことを特徴とする塗料。
【請求項8】
請求項7に記載の塗料から得られたものであることを特徴とする塗膜。
【請求項9】
ガラス転移温度が50〜150℃、重量平均分子量が5,000〜50,000であり、酸価が20〜70である水分散性ポリマー(A)と、ガラス転移温度が−40〜0℃の水分散性ポリマー(B)と、中和剤とを含有するエマルション型樹脂組成物を多段乳化重合により製造する方法であって、
反応容器内で、1段目に水分散性ポリマー(A)の原料モノマーを重合し、次いで、同一反応器内で、2段目に水分散性ポリマー(B)の原料モノマーを重合すると共に、
水分散性ポリマー(A)と水分散性ポリマー(B)とが有するカルボキシル基量1当量に対し、0.5〜1.5当量の中和剤100質量%のうちの0〜50質量%を1段目の重合後に反応容器に一括添加し、残りの中和剤の50〜100質量%を、2段目の原料モノマーの重合中に反応容器に滴下することを特徴とするエマルション型樹脂組成物の製造方法。


【公表番号】特表2009−507082(P2009−507082A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502170(P2008−502170)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/JP2006/317689
【国際公開番号】WO2007/026949
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】