説明

エマルション型粘着剤組成物

【課題】粘着付与樹脂の使用量を少なくしても、ポリオレフィン等の難接着性の被着体と段ボールのような粗面の被着体の両方に対して高い粘着力を示し、凝集力およびタック等もバランスよく良好な粘着剤を形成し得るエマルション型粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】Tgが−40℃未満である低Tgポリマーエマルション(A)と、Tgが−40℃〜0℃である高Tgポリマーエマルション(B)と、1分子中に2個以上のオキサゾリン基を有する水溶性の架橋剤(C−1)および/または1分子中に2個以上のアジリジニル基を有する架橋剤(C−2)と、粘着付与樹脂(D)を含むと共に、低Tgポリマーエマルション(A)と高Tgポリマーエマルション(B)は、その固形分の質量比が65〜80質量部:20〜35質量部(ただし両者の合計は100質量部である。)となるように含まれているエマルション型粘着剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンやポリプロピレンといった難接着性のポリオレフィン系被着体と、段ボールのような粗面を有する被着体の両方に対して、良好な粘着特性を発揮することのできるエマルション型粘着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エマルション型粘着剤組成物が、粘着テープ、粘着シートおよびラベル等の粘着剤層を有する製品を得るために用いられている。このエマルション型粘着剤組成物は、有機溶剤溶液型樹脂を主成分とする粘着剤組成物に比べ、コスト面や環境面において優れている反面、十分な凝集力および耐水性を発現し得る粘着剤層を得難いため、その使途が極めて限定されてしまう、という問題があった。また、凝集力等を高めるためには、一般に、見かけの分子量を大きくすればよいことが知られており、具体的には、樹脂(ポリマー)内部を架橋すること等が考えられる。しかし、ポリマーを内部架橋して凝集力を向上させると、タックや粘着力が低下するため、種々の検討がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ゲル分率40〜70%となるように内部架橋させたアクリル系共重合体の水性分散体を主成分とする粘着剤組成物が開示されており、この主成分のみではポリオレフィンラップに対する粘・接着性に劣るため、酢酸ビニル−エチレン−アクリル共重合体の水性分散体を添加して、粘着特性の向上を図る提案がなされている。
【0004】
上記特許文献1に記載の粘着剤組成物を用いて本発明者等が検討したところ、凝集力と各種被着体への粘着力のバランスがあまりよくないことが判明した。例えば、凝集力が比較的低い粘着剤は、ポリオレフィン系難接着性被着体や段ボールのような粗面を有する被着体に対して高い粘着力を示すが、保持力測定においては低い数値しか示さず、一方、比較的高い保持力を示す粘着剤は、ポリオレフィン系被着体に対する粘着力はそこそこの数値を示すものの、段ボールに対する粘着剤は低いものとなってしまう。これは、比較的高い凝集力を示すように分子設計した結果、粗面を有する被着体への「濡れ性」が不足したものと考えられる。汎用の粘着剤は、どのような被着体に対しても一定レベル以上の粘着力を示すことが求められる上に、ある程度以上の保持力を有することも求められるため、この点で上記特許文献1に記載の技術には、改善の余地があった。
【0005】
一方で、エマルション型粘着剤組成物には、粘着特性(特に粘着力)を向上させるため、粘着付与樹脂が多用されている。常温で固体の粘着付与樹脂をエマルション化したものが市販されているが、このような製品は価格が高いことから、使用量を削減したいという要望がある。しかし、粘着付与樹脂の使用量を減らすと、粘着力、凝集力、タックという粘着三物性のバランスをうまく採ることができず、ポリオレフィンに対する粘着力か、段ボールに対する粘着力のいずれかが不足するという問題があった。
【特許文献1】特開2000−144085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、粘着付与樹脂の使用量を少なくしても、ポリオレフィンのような難接着性の被着体と段ボールのような粗面の被着体の両方に対して高い粘着力を示し、凝集力およびタック等もバランスよく良好な粘着剤を形成し得るエマルション型粘着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエマルション型粘着剤組成物は、アルキル基の炭素数4〜12のアルキル(メタ)アクリレート(a−1)50〜99.9質量%、カルボキシル基含有モノマー(a−2)0.1〜5質量%およびその他のモノマー(a−3)0〜49.9質量%(ただし、これらのモノマーの合計量は100質量%である)からなる原料モノマー混合物(a)の重合により得られ、ガラス転移温度(Tg)が−40℃未満である低Tgポリマーエマルション(A)と、アルキル基の炭素数1〜12のアルキル(メタ)アクリレート(b−1)50〜99.9質量%、カルボキシル基含有モノマー(b−2)0.1〜5質量%およびその他のモノマー(b−3)0〜49.9質量%(ただし、これらのモノマーの合計量は100質量%である)からなる原料モノマー混合物(b)の重合により得られ、ガラス転移温度(Tg)が−40℃〜0℃である高Tgポリマーエマルション(B)と、1分子中に2個以上のオキサゾリン基を有する水溶性の架橋剤(C−1)および/または1分子中に2個以上のアジリジニル基を有する架橋剤(C−2)と、粘着付与樹脂(D)を含むと共に、低Tgポリマーエマルション(A)と高Tgポリマーエマルション(B)は、その固形分の質量比が65〜80質量部:20〜35質量部(ただし両者の合計は100質量部である。)となるように含まれているところに要旨を有する。
【0008】
上記架橋剤(C−1)と上記架橋剤(C−2)は、低Tgポリマーと高Tgポリマーとがそれぞれ有するカルボキシル基の合計当量を1としたときに、架橋剤(C−1)のオキサゾリン基と架橋剤(C−2)のアジリジニル基の合計当量が0.002〜0.3当量となるように添加されている態様、粘着付与樹脂(D)が、低Tgポリマーエマルション(A)と高Tgポリマーエマルション(B)の固形分の合計100質量部に対し、1〜10質量部添加されている態様は、いずれも本発明の好ましい実施態様である。
【0009】
本発明には、上記エマルション型粘着剤組成物から得られた粘着剤層が支持基材の少なくとも片面に形成されている粘着製品も含まれる。この粘着製品は、厚み20μmの粘着剤層が、90g/mのグロス紙基材の片面に形成された粘着製品を用い、それぞれ圧着から24時間経過した後に300mm/分の引き剥がし速度で測定したときの180゜粘着力が、ステンレス板に対しては16N/25mm以上、ポリエチレン板に対しては13N/25mm以上、段ボールに対しては10N/25mm以上であることが好ましい。なお、粘着製品試料(粘着シート)の作製方法および粘着力の測定方法は、後述する実施例において記載した作製方法・測定方法に基づくものとする。
【発明の効果】
【0010】
粘着付与樹脂の使用量を少なくしても、ポリオレフィンのような難接着性の被着体と段ボールのような粗面の被着体の両方に対して高い粘着力を示し、凝集力およびタック等もバランスよく良好な粘着剤を形成し得るエマルション型粘着剤組成物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明にかかるエマルション型粘着剤組成物について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。本発明のエマルション型粘着剤組成物は、乾燥させる(水分を除去する)ことによって粘着剤となるものである。また、本発明における「ポリマー」には、ホモポリマーはもとより、コポリマーや三元以上の共重合体も含まれるものとする。本発明の「モノマー」は、いずれも付加重合型モノマーである。
【0012】
まず、本発明のエマルション型粘着剤組成物における第1の必須成分は、ガラス転移温度(Tg)が−40℃未満である低Tgポリマーエマルション(A)である。この低Tgポリマーは、粗面に対する濡れ性を確保し、高い粘着力を示すための必須成分である。この低Tgポリマーエマルション(A)は、アルキル基の炭素数4〜12のアルキル(メタ)アクリレート(a−1)50〜99.9質量%、カルボキシル基含有モノマー(a−2)0.1〜5質量%およびその他のモノマー(a−3)0〜49.9質量%(ただし、これらのモノマーの合計量は100質量%である)からなる原料モノマー混合物(a)をラジカル重合することによって得られる。
【0013】
アルキル基の炭素数4〜12のアルキル(メタ)アクリレート(a−1)は、粘着特性の観点から、アルキル基の炭素数が4〜12であることが重要である。この炭素数は、好ましくは4〜10、より好ましくは4〜8である。上記炭素数が4未満(3以下)であるか、または、12を超える(13以上)と、粘着力およびタックが低下するおそれがある。具体的には、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、なかでもブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレートおよびイソオクチルアクリレートがより好ましい。これらは、1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよく、限定はされない。
【0014】
このアルキル(メタ)アクリレート(a−1)は、粘着力発現のための必須モノマーであり、原料モノマー混合物(a)100質量%中、50〜99.9質量%の範囲で用いられる。より好ましくは60〜99.7質量%、さらにより好ましくは70〜99.5質量%である。アルキル(メタ)アクリレート(a−1)の使用量が上記範囲内であれば、得られる粘着剤は、充分な粘着力およびタックを示すものとなるが、50質量%より少ないと、粘着力・タック・粗面被着体への濡れ性が不足するおそれがあり、99.9質量%を超えると架橋点となるカルボキシル基含有モノマー(a−2)の量が少なくなりすぎて、粘着剤の凝集力および耐水性が低下するおそれがある。
【0015】
カルボキシル基含有モノマー(a−2)は、分子中に少なくとも1個のカルボキシル基と少なくとも1個の重合性不飽和基を有するものであればよく、(メタ)アクリル酸、ケイ皮酸およびクロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびシトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸;これら不飽和ジカルボン酸のモノエステル等が挙げられ、これらのうちの1種以上を用いることができる。中でも、(メタ)アクリル酸およびイタコン酸が好ましい。このカルボキシル基含有モノマー(a−2)は、架橋剤(C−1および/またはC−2)との架橋反応点となるカルボキシル基を低Tgポリマーに導入するために用いられる。よってその使用量は、原料モノマー混合物(a)100質量%中、0.1〜5質量%とする。カルボキシル基が少ないと、架橋反応の速度が遅くなったり、粘着剤が凝集力不足となるが、5質量%を超えて使用すると、粘着剤の粘着力・タック・粗面被着体への濡れ性が低下傾向となるため好ましくない。
【0016】
その他のモノマー(a−3)とは、上記アルキル(メタ)アクリレート(a−1)およびカルボキシル基含有モノマー(a−2)と共重合することができ、かつ、これら以外のモノマーである。例えば、前記アルキル(メタ)アクリレート(a−1)以外のアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、フタル酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類;アミノ基、アミド基、エポキシ基およびエーテル基等のいずれかを有する(メタ)アクリレート類;エチレンおよびブタジエン等の脂肪族不飽和炭化水素類ならびに塩化ビニル等の脂肪族不飽和炭化水素類のハロゲン置換体;スチレンおよびα−メチルスチレン等の芳香族不飽和炭化水素類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルエーテル類;アリルアルコールと各種有機酸とのエステル類;アリルアルコールと各種アルコールとのエーテル類;アクリロニトリル等の不飽和シアン化化合物;等が挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよく、限定はされない。中でも、水酸基含有モノマーを用いると、カルボキシル基との間で水素結合を形成し、低Tgポリマーの内部で擬似架橋のように働いて、凝集力を高めることができる。この水酸基含有モノマーは、0.1〜10質量%(より好ましくは0.3〜8質量%、さらに好ましくは0.5〜6質量%)の範囲で使用することが好ましい。
【0017】
上記その他のモノマー(a−3)は、原料モノマー混合物(a)100質量%中、0〜49.9質量%が好ましい。49.9質量%を超えると、結果的に、アルキル(メタ)アクリレート(a−1)かカルボキシル基含有モノマー(a−2)の量が少なくなるため、所望の粘着特性が得られない。より好ましい上限は40質量%、さらに好ましい上限は30質量%である。
【0018】
低Tgポリマーエマルション(A)合成の際は、低Tgポリマーのガラス転移温度(Tg)が−40℃未満になるように、上記各種モノマーを選択する。ただし、Tgが−80℃より低くなると、凝集力が低下して、糊残りが起こりやすくなる傾向にあるため好ましくない。Tg(K)は、例えば、「POLYMER HANDBOOK 第3版」(John Wiley & Sons, Inc.発行)に記載された各ホモポリマーのTg(K)を元にして、下記式で計算により簡単に求められる他、DSC(示差走査熱量測定装置)やDTA(示差熱分析装置)によって求めることができる。
【0019】
【数1】

【0020】
ここで Wn ;各単量体の質量分率
Tgn;各単量体のホモポリマーのTg(K)
なお、主要ホモポリマーのTg(℃)を示せば、ポリアクリル酸は106℃、ポリメタクリル酸は228℃、ポリメチルアクリレートは8℃、ポリエチルアクリレートは22℃、ポリブチルアクリレートは−54℃、ポリ2−エチルヘキシルアクリレートは−70℃、ポリ2−ヒドロキシエチルアクリレートは−15℃、ポリ2−ヒドロキシエチルメタクリレートは55℃、ポリメチルメタクリレートは105℃、ポリ酢酸ビニルは32℃、ポリスチレンは100℃である。
【0021】
低Tgポリマーの重量平均分子量(Mw)は、15万〜100万程度が好ましい。ただし、乳化重合されたポリマーは、若干自己架橋するため、GPCでの分子量測定が不可能になることがある。
【0022】
本発明の粘着剤組成物の第2の必須成分は、高Tgポリマーエマルション(B)である。本発明のエマルション型粘着剤組成物を皮膜化して粘着剤層を形成すると、たとえ同じアクリル系であっても低Tgポリマーと高Tgポリマーは非相溶であり、高Tgポリマーが低Tgポリマー中に島状に分散したいわゆる海島構造を採ると考えられる。そして、被着体に貼着した後、剥離する際には、高Tgポリマーが粘着剤層の変形に対する抵抗点となって、充填剤的な働きを示すため、結果として大きな粘着力数値を示す。ただし、高Tgポリマー量が多すぎると、剥離する際の抵抗は大きくなるものの、粘着剤層を被着体に貼り付ける際、粘着剤層が被着体へ濡れようとする現象に対しても抵抗を示すため、濡れ性が不足して粗面に対する粘着力が低下してしまう。よって、低Tgポリマー(固形分)65〜80質量部に対し、高Tgポリマー(固形分)は20〜35質量部とする必要がある。そして、高TgポリマーのTgは−40〜0℃とする。高Tgポリマー量を上記範囲より多くしたり、Tgが0℃を超えるポリマーを用いると、段ボールのような粗面に対する粘着力が低下するため好ましくない。高Tgポリマーが少な過ぎると、添加効果が発揮されず、例えばポリオレフィン系被着体に対する粘着力が不足する。
【0023】
高Tgポリマーエマルション(B)は、アルキル基の炭素数1〜12のアルキル(メタ)アクリレート(b−1)50〜99.9質量%、カルボキシル基含有モノマー(b−2)0.1〜5質量%およびその他のモノマー(b−3)0〜49.9質量%(ただし、これらのモノマーの合計量は100質量%である)からなる原料モノマー混合物(b)をラジカル重合することにより得られるものである。原料モノマーの種類と量を適宜調整して、高TgポリマーのTgを−40〜0℃に設定する。
【0024】
アルキル基の炭素数1〜12のアルキル(メタ)アクリレート(b−1)は、前記アルキル(メタ)アクリレート(a−1)に、メチル(メタ)アクリレートとエチル(メタ)アクリレートを加えたものが挙げられ、1種または2種以上使用可能である。これらは、50〜99.9質量%の範囲で使用する。
【0025】
カルボキシル基含有モノマー(b−2)は、前記カルボキシル基含有モノマー(a−2)と同じものが例示でき、これらは、高Tgポリマーを架橋するために用いられる。よって、低Tgポリマーの場合と同様に0.1〜5質量%の範囲で使用される。
【0026】
その他のモノマー(b−3)は、前記その他のモノマー(a−3)と同じものが例示でき、これらも低Tgポリマーの場合と同様に0〜49.9質量%の範囲で使用される。
【0027】
低Tgポリマーエマルション(A)と高Tgポリマーエマルション(B)はそれぞれの原料モノマー混合物(a)および(b)を別々にラジカル重合することにより得ることができる。好ましい重合方法は、乳化剤の存在下または不存在下における乳化重合法である。また、懸濁重合法のほか、塊状重合法や溶液重合法で得られたポリマーを、後分散する方法によってエマルション化しても構わない。
【0028】
上記乳化重合を行う際に用い得る乳化剤としては、限定はされないが、従来公知の乳化剤、例えば、各種アニオン性乳化剤、各種カチオン性乳化剤および各種ノニオン性乳化剤等が挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよく、限定はされない。乳化剤を用いる場合、その使用量は、例えば、原料モノマー混合物(a)または(b)の合計量に対し、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。なお、必要に応じ保護コロイド類を単独または乳化剤と共に使用することもできる。また、重合可能な乳化剤、いわゆる反応性乳化剤を用いることも可能である。
【0029】
上記乳化重合を行う際に用い得る重合触媒(重合開始剤)としては、限定はされないが、例えば、過硫酸アンモニウムや過酸化水素等の無機の過酸化物;t−ブチルハイドロパーオキシド等の有機の過酸化物;その他のラジカル生成性重合開始剤等が挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよく、限定はされない。重合触媒の使用量は、原料モノマー混合物(a)または(b)100質量部に対し、0.01〜3質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜2質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部である。重合触媒として過酸化物を使用する場合に、重合速度を増大させたり反応温度を低下させたりする必要があれば、可溶性亜硫酸塩やアスコルビン酸等の還元剤あるいは硫酸第1鉄等の水中で重金属イオンを発生する金属化合物を、上記過酸化物と組合せてレドックス系の開始剤とすることができる。また、例えば、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類に代表される公知の分子量調節剤を用いてもよい。
【0030】
乳化重合の反応温度は適宜設定できるが、一般に、0〜100℃であることが好ましく、より好ましくは50〜95℃、さらに好ましくは60〜90℃である。また、水系溶媒(水や、アルコール等の親水性溶媒と水との混合溶媒等)の使用量は、一般に、原料モノマー混合物(a)または(b)100質量部に対し、300〜40質量部であることが好ましく、より好ましくは200〜40質量部、さらに好ましくは150〜40質量部である。なお、具体的な重合方法としては、例えば、モノマー滴下重合法、プレエマルシヨン滴下重合法、シード重合法および多段重合法等を挙げることができる。
【0031】
本発明の粘着剤組成物には、1分子中に2個以上のオキサゾリン基を有する水溶性架橋剤(C−1)および/または1分子中に2個以上のアジリジニル基を有する架橋剤(C−2)が含まれる。これらの架橋剤(C−1および/またはC−2)を用いることで、架橋速度や架橋効率が高まり、粘着力の経時変化等の不都合を抑制することができる。
【0032】
架橋剤(C−1)としては、例えば、2−オキサゾリン基、3−オキサゾリン基および4−オキサゾリン基のうちの少なくとも1種を分子内に有する水溶性化合物が挙げられ、なかでも、分子内に2−オキサゾリン基を有する水溶性化合物が好ましい。市販品としては、日本触媒社製の「エポクロスWS−500」や「エポクロスWS−700」(エポクロスは日本触媒社の登録商標である。)がある。また、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有モノマーを、他のモノマーと共重合して水溶性ポリマー型架橋剤とすることも可能である。
【0033】
また、1分子中に2個以上のアジリジニル基を有する架橋剤(C−2)としては、水溶性に限定されず、油溶性(水分散体を形成し得る)であってもよい。具体例としては、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン(例えば、日本触媒社製の「ケミタイトDZ−22E」等;「ケミタイト」は登録商標)、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス〔3−(1−アジリジニル)プロピオネート〕(例えば、日本触媒社製の「ケミタイトPZ−33」等)等が挙げられる。また、明成化学社製の「SU−125F」等も使用可能である。
【0034】
これらの架橋剤(C−1および/またはC−2)は、低Tgポリマーと高Tgポリマーとがそれぞれ有するカルボキシル基の合計当量を1としたときに、架橋剤(C−1)のオキサゾリン基と架橋剤(C−2)のアジリジニル基の合計当量が0.002〜0.3当量となるように添加することが好ましい。架橋剤(C−1および/またはC−2)量が少なすぎると、架橋反応速度が遅くなったり、得られる粘着剤の凝集力が不足するが、多すぎると粘着力が不足したり、粗面に対する濡れ性が低下する。カルボキシル基1当量に対する架橋剤の官能基(オキサゾリン基+アジリジニル基)の合計当量は0.003〜0.25当量とすることがより好ましく、0.004〜0.2当量がさらに好ましい。なお、架橋剤(C−1)と架橋剤(C−2)は、いずれか一方のみを用いてもよいし、併用してもよい。
【0035】
本発明のエマルション型粘着剤組成物には、さらに、粘着付与樹脂(D)が含まれるが、その量は、低Tgポリマーと高Tgポリマーの合計100質量部に対し、1〜10質量部(固形分)である。本発明では、低Tgポリマーと高Tgポリマーの各Tgと使用量を最適範囲に設定したことで、粘着力・凝集力・タックがいずれも良好である粘着剤層を形成し得る粘着剤組成物を提供することができたため、粘着付与樹脂(D)の使用量を低減することが可能となった。より好ましい上限は8質量部、さらに好ましい上限は6質量部である。コスト的に問題がなければ、10質量部以上添加しても構わない。
【0036】
粘着付与樹脂(D)としては、軟化点が60℃程度以上の樹脂が好ましく、(重合)ロジン系、(重合)ロジンエステル系、テルペン系、テルペンフェノール系、クマロン系、クマロンインデン系、スチレン樹脂系、キシレン樹脂系、フェノール樹脂系、石油樹脂系等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用できる。粘着付与樹脂(D)は、前記した乳化剤を用いてエマルション化するか、エマルションタイプの市販品、例えば、荒川化学工業社製の「スーパーエステルE」シリーズ等を用いることができる。
【0037】
本発明のエマルション型粘着剤組成物の製造方法については、限定はされず、低Tgポリマーエマルション(A)と高Tgポリマーエマルション(B)との混合物中に、架橋剤(C−1)および/または架橋剤(C−2)と、粘着付与樹脂(D)とが含まれてなる組成物が得られる方法であれば、いかなる製造方法も採用できるが、例えば、各エマルションを合成した後混合し、必要に応じて固形分を水系溶媒の増減等により調整した後、これに架橋剤(C−1)および/または架橋剤(C−2)と粘着付与樹脂(D)を加えることにより得る方法や、乳化重合等により得られた低Tgポリマーや高Tgポリマーを一旦ろ過等により単離し、水系溶媒に分散(再分散)させるとともに、これに架橋剤(C−1)および/または架橋剤(C−2)と粘着付与樹脂(D)を加えることにより得る方法等が挙げられる。
【0038】
本発明のエマルション型粘着剤組成物は、そのままでも十分使用可能なものであるが、保存安定性(一液での保存安定性)をより高めることができる点で、例えばアンモニア等の塩基性物質(pH調整剤)を添加し、pHを7〜10に調整しておくことが好ましい。このようにpHを調整しておくことで、架橋剤(C−1)が有するオキサゾリン基および/または架橋剤(C−2)が有するアジリジニル基と、低Tgポリマーや高Tgポリマーが有するカルボキシル基との反応による架橋構造の形成が、本発明の組成物を(塗布等した後)乾燥するときまで効果的に抑制できるので、その結果、本発明の組成物の長期にわたる保存安定性(一液での保存安定性)をより一層高めることができる。塩基性物質の添加のタイミングは特に限定されないが、架橋剤(C−1および/またはC−2)をエマルションに添加する前に、添加しておくのが好ましい。
【0039】
本発明のエマルション型粘着剤組成物の固形分は、特に限定はされないが、例えば、25〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは33〜70質量%、さらに好ましくは40〜70質量%である。上記含有割合が、25質量%未満であると、塗布した後等の乾燥が長時間となり、生産性が低下するおそれがある。また、70質量%を超えると、組成物全体の粘度が高くなり、ハンドリング性および塗布性に欠け、実用性に乏しくなるおそれがある。
【0040】
本発明のエマルション型粘着剤組成物には、公知の架橋剤、粘着付与剤、湿潤剤、粘性調節剤、増粘剤、消泡剤、改質剤、顔料、着色剤、充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤等の添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲で加えてもよい。
【0041】
本発明のエマルション型粘着剤組成物は、粘着製品の製造に用いられる。例えば、プラスチックフィルム、紙、不織布、発泡体等の基材あるいは離型紙の上に粘着剤組成物を塗布し、その乾燥皮膜を形成することによって、基材の片面に粘着剤層が形成されている粘着製品(粘着テープまたはシート)、基材の両面に粘着剤層が形成されている粘着製品、基材を有しない粘着剤層のみの粘着製品を得ることができる。紙基材の粘着製品を製造する場合は、離型紙の上に粘着剤組成物を塗布し、粘着剤層を形成した後、紙基材に転写する方法も、採用できる。粘着剤層の形成にあたっては、水が飛散する条件(例えば100〜120℃で60〜180秒程度)での加熱乾燥を行うことが望ましい。
【0042】
本発明のエマルション型粘着剤組成物から得られる粘着製品は、被着体の種類にとらわれず、高い粘着力を示す。すなわち、25mm幅の粘着シートを用いて測定された粘着力が、ステンレス板に対しては16N/25mm以上、ポリエチレン板に対しては13N/25mm以上、段ボールに対しては10N/25mm以上である。なお、粘着シートの作製方法および粘着力の測定方法は、後述する実施例において記載した作製方法・測定方法に基づくものとする。なお、上記単位「N/25mm」において、「/25mm」の部分は、被着体に圧着させた粘着シートの幅を意味し、粘着力の測定に用いられた粘着シートの幅が明らかである場合は記載しなくても構わない。
【実施例】
【0043】
以下実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお以下特にことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示すものとする。
【0044】
合成例1(低TgポリマーエマルションA−1の重合)
ビーカーに、2−エチルヘキシルアクリレート45部、ブチルアクリレート53.4部、メチルメタクリレート1部、アクリル酸0.6部と、乳化剤として「エマルゲン1150S−70」(花王社製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル)1.4部および「ハイテノールLA−16」(第一工業製薬社製;「ハイテノール」は登録商標;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム)1部と、脱イオン水28部を入れ、よく撹拌してプレエマルションを作製した。次いで、滴下ロート、撹拌機、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却器を備えたフラスコに、脱イオン水を23部仕込み、窒素置換して70℃に昇温した。ここに、過硫酸アンモニウムの10%水溶液0.18部と、重亜硫酸水素ナトリウムの10%水溶液0.18部を添加した後、前記プレエマルションを約3時間かけて連続滴下すると共に、並行して、過硫酸アンモニウムの10%水溶液5部と重亜硫酸水素ナトリウムの10%水溶液5部を滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、70℃で3時間熟成した後、室温まで冷却した。低TgポリマーエマルションA−1が得られた。このエマルションA−1の固形分は62.9%、Tgは、−61℃である。なお、このTg(℃)は、後述する各モノマーのホモポリマーのTg(K)を用いて前述の数式によって計算した値である。
【0045】
合成例2(高TgポリマーエマルションB−1の合成)
ビーカーに、表1に示した組成のモノマー混合物100部と、乳化剤として「ハイテノールNF−17」(第一工業製薬社製;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム)1部と前記「ハイテノールLA−16」0.5部、および脱イオン水26部を入れ、よく撹拌してプレエマルションを得た。次いで、滴下ロート、撹拌機、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却器を備えたフラスコに、脱イオン水を26部仕込み、窒素置換して70℃に昇温した。ここに、過硫酸アンモニウムの10%水溶液0.18部と、重亜硫酸水素ナトリウムの10%水溶液0.18部を添加した後、前記プレエマルションを約3時間かけて連続滴下すると共に、並行して、過硫酸アンモニウムの10%水溶液5部と重亜硫酸水素ナトリウムの10%水溶液5部を滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、70℃で3時間熟成した後、室温まで冷却した。固形分62.6%、Tgが−5℃の高TgポリマーエマルションB−1が得られた。
【0046】
合成例3〜8
原料モノマー混合物の組成を表1に示したように変更した以外は合成例2と同様にして、高TgポリマーエマルションB−2〜B−5と、比較用のエマルションB’−1とB’−2を重合した。エマルションの固形分とポリマーのTg(℃)を表1に示した。
【0047】
【表1】

【0048】
なお、表1においては、各モノマー名を次のように略記した。左の数字は、ポリマーハンドブックに掲載されているホモポリマーのTg(K)の値である。
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート 203K
BA :n−ブチルアクリレート 219K
MMA :メチルメタクリレート 378K
AA :アクリル酸 379K
【0049】
実施例1
低TgポリマーエマルションA−1を固形分が80部となるように容器に入れ、高TgポリマーエマルションB−1を固形分が20部となるように加え、よく撹拌し、25%水溶液のアンモニア水で中和した。続いて、オキサゾリン基を含有する架橋剤(C−1)「エポクロスWS−700」(日本触媒社製;「エポクロス」は登録商標;固形分25%;オキサゾリン基当量220g・solid/eq.)を固形分が0.40部となるように、また、粘着付与樹脂「スーパーエステルE−788」(荒川化学工業社製;「スーパーエステル」は登録商標;固形分50%)を固形分で4.0部となるように加え、さらに増粘剤「プライマールASE−60」(ローム&ハース社製)で粘度を調整して、固形分61.0%、pH8.0、粘度15,700mPa・s(25℃、B型粘度計での測定値)のエマルション型粘着剤組成物を得た。
【0050】
このエマルション型粘着剤組成物を用いて、乾燥後の厚さが20μmとなるように、離型紙(「K−80HS」;サンエー化研社製)に塗布し、105℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。この粘着剤層の表面(乾燥後の塗布面)に、基材となる市販のグロス紙(90g/m)を貼り合わせ、23℃、65%RH雰囲気下で7日間養生し、粘着シート(離型紙付き)を作製した。その後、粘着特性を測定した。
【0051】
実施例2〜9および比較例1〜5
低Tgポリマーエマルションの使用量、高Tgポリマーエマルションの種類と使用量、架橋剤の種類と量を、表2または3に示したように変更した以外は、上記実施例1と同様にして粘着シート(離型紙付き)を作製した。なお、実施例9で用いた架橋剤は、アジリジニル基含有架橋剤(C−2)であり、エマルジョンタイプの「ケミタイトDZ−22E」(4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン;日本触媒社製;「ケミタイト」は登録商標;固形分30%;アジリジニル基当量170g・solid/eq.)である。
【0052】
[粘着特性の評価方法]
以上の実施例1〜9および比較例1〜5で得られた粘着シートを用いて下記方法で粘着特性の評価を行い、表2および表3にその結果を示した。
【0053】
1.ボールタック
JIS Z−0237に規定されているJ.Dow法により、23℃で測定を行い、停止したボールの最大No.を示した。
【0054】
2.粘着力
粘着シートを25mm幅にカットし、23℃、65%RHの雰囲気下で、被着体上に載せて、上から2kgのローラーで1往復して圧着する。圧着してから24時間経過した後、粘着シートを180°方向に300mm/分の速度で引き剥す時の抵抗力(N/25mm)を測定した。この測定は、引張試験機(「QC引張試験機」;テスター産業社製)により行った。被着体としては、次のように調製した3種類のものを用いた。
【0055】
ステンレス板:厚さ1.5〜2mm、幅30mm、長さ120mmのSUS304鋼板を280番の耐水研磨紙で研磨し、研磨面の表面をキシレンを含ませたガーゼで拭く。乾いてから、新しいガーゼにキシレンを含ませて拭き取り、研磨面が目視で清浄になったと認められるまで、この洗浄工程を数回繰り返す。その後、研磨面をアセトンでかけ洗いし、オーブンで乾燥させる。なお、試験前には、23℃、65%RHの雰囲気下で24時間以上放置する。
【0056】
ポリエチレン板:厚さ3mm、幅30mm、長さ120mmのポリエチレン板(エンジニアリングテストサービス社製)の表面を、ヘキサンを含ませたガーゼで拭き取る。その後、拭き取り面をアセトンでかけ洗いし、オーブンで乾燥させる。なお、試験前には、23℃、65%RHの雰囲気下で24時間以上放置する。
【0057】
段ボール板:段ボールケース(シングルカートン;クローバー産業社製)から、幅30mm、長さ120mmの試験片を切り出し、23℃、65%RHの雰囲気下で24時間以上放置する。
【0058】
3.加湿保持力
粘着力の場合と同様に、25mm幅の粘着シートを貼付長さ25mmでSUS板に圧着した後、40℃、65%RHの雰囲気下で20分間放置した後、1kgの荷重を粘着シートに吊り下げて、40℃、65%RHの雰囲気下で放置した。表中、「>1000」とあるのは、1000分経過しても荷重が落下しなかったことを示す。また、ずれ量は、1000分経過時の値である。
【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
本発明の実施例1〜9では、ステンレス板、ポリエチレン板および段ボール板に対する粘着力がいずれも目標値を(それぞれ、16N/25mm以上、13N/25mm以上、10N/25mm以上)上回っており、被着体にかかわらず、良好な粘着力を示すことが確認された。また、ボールタックや保持力も良好であり、タック、凝集力、粘着力の三物性がいずれも優れていることがわかる。
【0062】
比較例1は、剥離する際に変形抵抗を示す高Tgポリマーエマルション(B)を含んでいないため、ポリエチレン粘着力および段ボール粘着力が低い。比較例2は、高TgポリマーのTgが高すぎるため、剥離抵抗が大きく、ポリエチレン粘着力は大きいが、濡れ性が低下する結果、ボールタック値が小さく、段ボール粘着力も低い。比較例3は、高Tgポリマー量を比較例2よりも減量したために濡れ性が増加して段ボール粘着力は向上したが、添加量が少ないためポリエチレン粘着力が低下している。比較例4は、高Tgポリマーではなく、低Tgポリマーエマルションをブレンドしたため、剥離抵抗が小さくなり低いポリエチレン粘着力となった。比較例5は高Tgポリマーを多く入れすぎたため、上回る添加量用いているため、濡れ性が低下する結果、ボールタック値が小さく、ポリエチレン粘着力および段ボール粘着力が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の粘着剤組成物は、例えば、粘着テープ、粘着シートおよびラベル等の粘着剤層が適用され得るすべての用途に好適であり、被着体を選ぶことなく良好な粘着特性を示すため、汎用の粘着製品を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基の炭素数4〜12のアルキル(メタ)アクリレート(a−1)50〜99.9質量%、カルボキシル基含有モノマー(a−2)0.1〜5質量%およびその他のモノマー(a−3)0〜49.9質量%(ただし、これらのモノマーの合計量は100質量%である)からなる原料モノマー混合物(a)の重合により得られ、ガラス転移温度(Tg)が−40℃未満である低Tgポリマーエマルション(A)と、
アルキル基の炭素数1〜12のアルキル(メタ)アクリレート(b−1)50〜99.9質量%、カルボキシル基含有モノマー(b−2)0.1〜5質量%およびその他のモノマー(b−3)0〜49.9質量%(ただし、これらのモノマーの合計量は100質量%である)からなる原料モノマー混合物(b)の重合により得られ、ガラス転移温度(Tg)が−40℃〜0℃である高Tgポリマーエマルション(B)と、
1分子中に2個以上のオキサゾリン基を有する水溶性の架橋剤(C−1)および/または1分子中に2個以上のアジリジニル基を有する架橋剤(C−2)と、
粘着付与樹脂(D)を含むと共に、
低Tgポリマーエマルション(A)と高Tgポリマーエマルション(B)は、その固形分の質量比が65〜80質量部:20〜35質量部(ただし両者の合計は100質量部である。)となるように含まれていることを特徴とするエマルション型粘着剤組成物。
【請求項2】
上記架橋剤(C−1)と上記架橋剤(C−2)は、低Tgポリマーと高Tgポリマーとがそれぞれ有するカルボキシル基の合計当量を1としたときに、架橋剤(C−1)のオキサゾリン基と架橋剤(C−2)のアジリジニル基の合計当量が0.002〜0.3当量となるように添加されている請求項1に記載のエマルション型粘着剤組成物。
【請求項3】
上記粘着付与樹脂(D)は、低Tgポリマーエマルション(A)と高Tgポリマーエマルション(B)の固形分の合計100質量部に対し、1〜10質量部添加されている請求項1または2に記載のエマルション型粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のエマルション型粘着剤組成物から得られた粘着剤層が支持基材の少なくとも片面に形成されていることを特徴とする粘着製品。
【請求項5】
厚み20μmの粘着剤層が、90g/mのグロス紙基材の片面に形成された粘着製品を用い、それぞれ圧着から24時間経過した後に300mm/分の引き剥がし速度で測定したときの180゜粘着力が、ステンレス板に対しては16N/25mm以上、ポリエチレン板に対しては13N/25mm以上、段ボールに対しては10N/25mm以上である請求項4に記載の粘着製品。

【公開番号】特開2006−124691(P2006−124691A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285333(P2005−285333)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】