説明

エマルション溶液

【課題】 優れた乳化分散性を示すとともに撥水効果をも発現することから撥水剤としての展開も期待できるエマルション溶液を提供する。
【解決手段】 水性媒体中に固形分が濃度10〜50重量%で乳化分散してなるエマルション溶液であって、該固形分が、脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対し、少なくともパラフィンワックス30〜100重量部を配合してなる組成物である、エマルション溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化分散性に優れるエマルション溶液に関するものであり、特に粘着付与剤として作用する特定の石油樹脂とパラフィンワックスとからなる組成物を水性媒体中に乳化分散することにより、優れた乳化分散性を示すとともに撥水効果をも発現するエマルション溶液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、パラフィンワックス、石油樹脂、アスファルト、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等は、撥水性に優れることから撥水性付与剤として用いられ、その中でもパラフィンワックスは、撥水性と経済性のバランスに優れることから建材等の撥水性付与剤として用いられてきた。
【0003】
また、石油樹脂としては、石油類の分解、精製の際に得られる不飽和炭化水素含有留分を原料として、フリーデルクラフツ型触媒の存在下に重合することにより得られる石油樹脂が良く知られており、その際の不飽和炭化水素含有留分としては、沸点範囲が20〜110℃の留分であるC5留分と沸点範囲が140〜280℃の留分であるC9留分が一般的であり、該C5留分から得られる石油樹脂を脂肪族石油樹脂、C9留分から得られる石油樹脂を芳香族石油樹脂、C5留分とC9留分とを共重合して得られる石油樹脂を脂肪族−芳香族共重合石油樹脂と称している。また、ジシクロペンタジエン類を熱重合することで得られる石油樹脂を脂環族石油樹脂とも称している。
【0004】
そして、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、脂肪族−芳香族共重合石油樹脂は、パラフィンワックスと水性媒体中に分散することは知られている。
【0005】
さらに、石油樹脂及び流動パラフィンを撥水剤として表面に塗布した撥水性紙が提案されている。(例えば特許文献1,2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3743130号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献2】特開2004−183465号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、水性媒体中に、パラフィンワックスと脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、脂肪族−芳香族共重合石油樹脂との乳化分散したエマルション溶液とした場合には、その乳化分散性は安定性に乏しいものであり、エマルション溶液としての使用に満足できるものではなかった。
【0008】
また、特許文献1に提案された撥水剤、特許文献2に提案の撥水剤組成物においては、撥水効果としては改良の余地を残すものであった。
【0009】
そこで、本発明は、従来の脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、脂肪族−芳香族共重合石油樹脂を含むエマルション溶液よりも優れた乳化分散性を有するとともに、優れた撥水効果をも発現するエマルション溶液を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、パラフィンワックスと粘着付与剤として特定の石油樹脂からなる組成物を水性媒体中で乳化分散してなるエマルション溶液が、優れた乳化分散性を有するとともに、優れた撥水性をも発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、水性媒体中に固形分が濃度10〜50重量%で乳化分散してなるエマルション溶液であって、該固形分が、脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対し、少なくともパラフィンワックス30〜100重量部を配合してなる組成物であることを特徴とするエマルション溶液に関するものである。
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明のエマルション溶液は、水性媒体中に、固形分が濃度10〜50重量%で乳化分散してなるエマルション溶液であり、特に取り扱い性にも優れるものとなることから20〜40重量%の固形分濃度であることが好ましい。ここで、固形分濃度が10重量%未満の場合、固形分濃度が低すぎることから被覆を形成した際の撥水性効果の発現しにくいものとなる。一方、固形分濃度が50重量%を越える場合、固形分濃度が高すぎるため乳化分散安定性に劣るものとなる。
【0014】
本発明のエマルション溶液を構成する水性媒体としては、水性媒体として知られている範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えば、蒸留水、イオン交換水、工業用水、上水等を挙げることができ、さらに、本発明の目的を逸脱しない範囲で、メタノール、エタノール等の有機溶媒を含有したものであってよい。
【0015】
本発明のエマルション溶液を構成する固形分は、脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対し、少なくともパラフィンワックス30〜100重量部を配合してなる組成物からなるものであり、該脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂は粘着性付与剤として作用するものであり、パラフィンワックスは撥水剤として作用するものである。ここで、脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂以外の石油樹脂、例えば脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、脂肪族−芳香族共重合石油樹脂を用いた場合、得られるエマルション溶液は、乳化分散性に劣るものとなる。また、パラフィンワックスが脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対し、30重量部未満である場合、被覆を形成した際の撥水性効果の発現しにくいものとなる。一方、パラフィンワックスが100重量部を越える場合、乳化分散安定性に劣るものとなる。
【0016】
本発明に用いられる脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂は、エマルション溶液を撥水剤として用いた際の付帯機能として、防滑性付与が求められており、その付与を行うものとしても用いられるものである。そして、該脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂は、例えば石油類の熱分解により得られる、沸点範囲が20〜110℃のC5留分、沸点範囲が140〜280℃のC9留分及びジシクロペンタジエン類を含む混合物を原料油として用い、例えば三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三フッ化ホウ素、これらのフェノール錯体、これらのブタノール錯体等のフリーデルクラフツ型触媒により重合を行い製造することができる。
【0017】
そして、C5留分を構成する成分に特に限定はなく、例えば2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロペンテン等の炭素数4〜6のモノオレフィン性不飽和炭化水素類;イソプレン、ピペリレン等の炭素数4〜6の直鎖状ジエン類;シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン等のシクロペンタジエン類;シクロペンタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘキサン等の脂肪族系飽和炭化水素が挙げられる。
【0018】
C9留分を構成する成分に特に限定はなく、例えばスチレン、そのアルキル誘導体であるα−メチルスチレンやβ−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン及びそのアルキル誘導体が挙げられる。
【0019】
また、ジシクロペンタジエン類としては、例えばジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン等のジシクロペンタジエン誘導体を挙げることができる。
【0020】
該脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂を得る際のC5留分とC9留分とジシクロペンタジエン類との混合割合は任意であり、その中でも得られるエマルション溶液が乳化分散性に優れることからC5留分50〜90重量%、C9留分45〜5重量%及びジシクロペンタジエン類45〜5重量%が好ましく、C5留分70〜80重量%、C9留分25〜5重量%及びジシクロペンタジエン類25〜5重量%が特に好ましい。
【0021】
また、脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂は、軟化点が50〜120℃であることが好ましく、特に好ましくは60〜100℃であり、色相10以下が好ましく、さらに好ましくは9以下、特に好ましくは7以下である。また、パラフィンワックスとの相溶性に優れ、安定化したエマルション溶液を容易に形成することが可能となることから、重量平均分子量(Mw)が500〜6000であることが好ましい。
【0022】
該脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂は、特に安定性に優れたものとなることからヒンダートアミン化合物を配合してなるものであることが好ましく、特に脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対して、ヒンダードアミン化合物0.05〜2重量部を含有するものであることが好ましく、さらに0.1〜1重量部を含有してなるものであることが好ましい。
【0023】
該ヒンダードアミン化合物としては、ヒンダードアミン化合物と称される範疇に属する化合物であれば制限なく用いることが可能であり、その中でも特に貯蔵安定性の優れるエマルション溶液が得られることから、下記一般式に示す2,2,6,6−テトラアルキル−4−ピペリジル基を有する化合物であることが好ましい。
【0024】
【化1】

ここで、一般式中のR1〜R4は互いに同一であっても相違していても良く炭素数1〜4のアルキル基であり、R5は水素又は置換基を持っていても良い炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基である。R1〜R4における炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、その中でもメチル基が好ましい。R5の置換基を持っていても良い炭素数1〜8のアルキル基としては、例えばメチル基、オクチル基等が挙げられ、置換基を持っていても良い炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、オクトキシ基等が挙げられる。これらの中でもR5としては、水素、メチル基、オクチル基等が好ましく、特に好ましくは水素、メチル基である。
【0025】
そして、具体的な一般式に示す2,2,6,6−テトラアルキル−4−ピペリジル基を有する化合物としては、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ((6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))などが挙げられ、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートが好ましい。
【0026】
一般式に示す2,2,6,6−テトラアルキル−4−ピペリジル基を有する化合物は、分子量400〜4000のものが知られており、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)としてチバ・ジャパン(株)や(株)ADEKAから市販されており、これらの市販品も本発明で用いることができる。
【0027】
そして、ヒンダードアミン化合物を含む脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂の製造方法は、脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂の重合反応終了後に共存する溶媒や低分子化合物を留去した直後の溶融状態にある脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂に、溶融させたヒンダードアミン化合物を配合することにより得ることができる。さらに、溶融状態の脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂の酸化、特に酸素による酸化を防止できることから、係る配合時の配合器内の酸素濃度が、好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。
【0028】
また、該脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂は、安定なエマルション溶液を形成しやすい酸無水物変性脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂塩となることから、酸無水物変性脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂であることが好ましく、特に無水マレイン酸変性脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂であることが好ましい。そして、該酸無水物変性脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂は、例えば脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂と無水マレイン酸に代表される酸無水物とを加熱下で反応することにより得ることができる。
【0029】
本発明に用いられるパラフィンワックスは、エマルション溶液に撥水性を付与するものであり、該パラフィンワックスとしては、例えばn−パラフィンワックス、イソパラフィンワックス、シクロパラフィンワックス、酸化パラフィンワックス等が挙げられる。そして、(商品名)パラフィンワックス125(日本精蝋社製)、(商品名)パラフィンワックス135(日本精蝋社製)、(商品名)、パラフィンワックス145(日本精蝋社製)等を市販品として入手することもできる。
【0030】
本発明のエマルション溶液の製造方法としては、エマルション溶液の製造が可能であれば如何なる方法を用いることも可能であり、例えば脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂及びパラフィンワックスを(加熱・溶融・溶液)混合後、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加した後に、水性媒体を添加し転相乳化を行うことによりエマルション溶液を製造することができる。
【0031】
また、本発明のエマルション溶液は、乳化安定性をより高めたものとするために、乳化剤(界面活性剤)等を用いることが可能であり、その際の乳化剤としては、公知のアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等を用いることができる。
【0032】
アニオン系界面活性剤として、例えばカルボン酸塩系(石鹸など)、硫酸エステル塩系(高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン等)、スルホン酸塩系(アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、エアロゾルOTなど)、リン酸エステル塩系(高級アルコールリン酸エステル塩等)等が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤として、例えば、アルキルエーテル系、ポリエチレングリコール系(高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物等)、多価アルコール系(グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル等)等が挙げられる。そして、(商品名)ニューコール1807(日本乳化剤社製)、(商品名)ニューコール1820(日本乳化剤社製)、(商品名)ニューコール1860(日本乳化剤社製)等を市販品として入手することもできる。
【0033】
そして、該乳化剤は、脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対して、0.5〜20重量部で用いることが好ましく、その添加時期としては、例えば脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂及びパラフィンワックスを混合し、組成物とする際であっても、該組成物をエマルション化した後、等の如何なるタイミングで添加してもよい。
【0034】
本発明のエマルション溶液は、優れた乳化分散性を示すとともに撥水効果をも発現するものであり、例えば撥水剤等として使用することが可能であり、紙、フィルム等に代表される基材上に塗布することにより撥水性を付与することが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、粘着付与剤として作用する石油樹脂とパラフィンワックスとからなる組成物を水性媒体中に乳化分散することにより、優れた乳化分散性を示すとともに撥水効果をも発現するエマルション溶液を提供することができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限を受けるものではない。
【0037】
実施例で用いた脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂の分析方法を下記に示す。
【0038】
〜数平均分子量、重量平均分子量の測定〜
ポリスチレンを標準物質とし、JIS K−0124(1994年)に準拠してゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した。
【0039】
〜軟化点の測定〜
JIS K−2531(1960)(環球法)に準拠した方法で測定した。
【0040】
〜色相の測定〜
50重量%トルエン溶液として、ASTM D−1544−63Tに従って測定した。
【0041】
合成例1(脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂の合成)
内容積2リットルのガラス製オートクレーブに、原料油としてナフサの分解により得たC5留分(沸点範囲が20〜110℃の留分)350g、C9留分(沸点範囲が140〜280℃の留分)100g及びジシクロペンタジエン(DCPD)留分50gとを仕込んだ。次に、窒素雰囲気下、35℃で、フリーデルクラフツ型触媒として三弗化ホウ素フェノール錯体(ステラケミファ(株)製、三弗化ホウ素フェノール)を原料油100重量部に対して、3.0重量部加えて2時間重合した。その後、苛性ソーダ水溶液で触媒を除去し、油相の未反応油を蒸留し、酸素濃度が2ppmの窒素気流下で該脂肪族−芳香族−脂環族共重合共重合石油樹脂100重量部に対し、ヒンダードアミン化合物((株)ADEKA製、(商品名)アデカスタブ光安定剤 LA−77)0.2重量部を100℃、攪拌回転数300rpmの条件下で配合し、脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂を得た。
【0042】
得られた脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂は重量平均分子量3000、軟化点60℃、色相(ガードナー)7であった。
【0043】
合成例2(脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂の合成)
内容積2リットルのガラス製オートクレーブに、原料油としてナフサの分解により得たC5留分(沸点範囲が20〜110℃の留分)350g、C9留分(沸点範囲が140〜280℃の留分)70g及びジシクロペンタジエン(DCPD)留分100gとを仕込んだ。次に、窒素雰囲気下、35℃で、フリーデルクラフツ型触媒として三弗化ホウ素フェノール錯体(ステラケミファ(株)製、三弗化ホウ素フェノール)を原料油100重量部に対して、3.0重量部加えて2時間重合した。その後、苛性ソーダ水溶液で触媒を除去し、油相の未反応油を蒸留し、酸素濃度が2ppmの窒素気流下で該脂肪族−芳香族−脂環族共重合共重合石油樹脂100重量部に対し、ヒンダードアミン化合物((株)ADEKA製、(商品名)アデカスタブ光安定剤 LA−77)0.3重量部を100℃、攪拌回転数300rpmの条件下で配合し、脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂を得た。
【0044】
得られた脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂は重量平均分子量3500、軟化点66℃、色相(ガードナー)6であった。
【0045】
実施例1
合成例1で得られた脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対して無水マレイン酸を3重量部添加し、200℃、4時間混合撹拌し、無水マレイン酸変性脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂を得た。
【0046】
そして、無水マレイン酸変性脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対し、パラフィンワックス(日本精蝋社製、(商品名)パラフィンワックス125)80重量部と乳化剤(日本乳化剤社製、(商品名)ニューコール1807)5重量部を混合して100℃に加温し、溶解させた。次に30重量%水酸化カリウム水溶液を100重量部を添加した。
【0047】
そして、次に固形分が20重量%になるように、水640重量部を徐々に加え転相乳化を行い、エマルション溶液を得た。得られたエマルション溶液は目視で分散状態を評価した。得られたエマルション溶液は良好な分散状態を示し、2ヶ月放置後も安定した乳化分散性を示していた。
【0048】
また、得られたエマルション溶液をクラフト紙上に塗布し、乾燥後、水をかけたところ良好な撥水性を示した。
【0049】
実施例2
合成例1で得られた脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対して無水マレイン酸を3重量部添加し、200℃、4時間混合撹拌し、無水マレイン酸変性脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂を得た。
【0050】
そして、無水マレイン酸変性脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対し、パラフィンワックス(日本精蝋社製、(商品名)パラフィンワックス135)50重量部と乳化剤(日本乳化剤社製、(商品名)ニューコール1820)7重量部を混合して100℃に加温し、溶解させた。次に30重量%水酸化カリウム水溶液を100重量部を添加した。
【0051】
そして、次に固形分が30重量%になるように、水266重量部を徐々に加え転相乳化を行い、エマルション溶液を得た。
【0052】
得られたエマルション溶液は良好な分散状態を示し、2ヶ月放置後も安定した乳化分散性を示していた。また、得られたエマルション溶液をクラフト紙上に塗布し、乾燥後、水をかけたところ良好な撥水性を示した。
【0053】
実施例3
合成例1で得られた脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対して無水マレイン酸を5重量部添加し、200℃、4時間混合撹拌し、無水マレイン酸変性脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂を得た。
【0054】
そして、無水マレイン酸変性脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対し、パラフィンワックス(日本精蝋社製、(商品名)パラフィンワックス145)70重量部と乳化剤(日本乳化剤社製、(商品名)ニューコール1860)3重量部を混合して100℃に加温し、溶解させた。次に30重量%水酸化ナトリウム水溶液を100重量部を添加した。
【0055】
そして、次に固形分が40重量%になるように、水160重量部を徐々に加え転相乳化を行い、エマルション溶液を得た。
【0056】
得られたエマルション溶液は良好な分散状態を示し、2ヶ月放置後も安定した乳化分散性を示していた。また、得られたエマルション溶液をクラフト紙上に塗布し、乾燥後、水をかけたところ良好な撥水性を示した。
【0057】
実施例4
合成例1で得られた脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂の代わりに、合成例2で得られた脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりエマルション溶液を得た。
【0058】
得られたエマルション溶液は良好な分散状態を示し、2ヶ月放置後も安定した乳化分散性を示していた。また、得られたエマルション溶液を印刷用紙上に塗布し、乾燥後、水をかけたところ良好な撥水性を示した。
【0059】
比較例1
固形分が30重量%になるように水266重量部を加えた代わりに、固形分が60重量%になるように水24重量部を加えた以外は、実施例1と同様の方法によりエマルション溶液の製造を試みた。
【0060】
転送乳化が起こらないことから、乳化分散が不良であり、エマルション溶液とはならなかった。
【0061】
比較例2
固形分が30重量%になるように水266重量部を加えた代わりに、固形分が5重量%になるように水3415重量部を加えた以外は、実施例1と同様の方法によりエマルション溶液の製造を試みた。
【0062】
得られたエマルション溶液はなんとか乳化分散を示しているように見られたが、2ヶ月放置後は乳化分散性を示していなかった。また、得られたエマルション溶液をクラフト紙上に塗布し、乾燥後、水をかけたところほとんど撥水しなかった。
【0063】
比較例3
無水マレイン酸変性脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対し、パラフィンワックス(日本精蝋社製、(商品名)パラフィンワックス125)80重量部の代わりに、無水マレイン酸変性脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対し、パラフィンワックス(日本精蝋社製、(商品名)パラフィンワックス125)120重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりエマルション溶液の製造を試みたが、乳化分散が不良であり、エマルション溶液とはならなかった。
【0064】
比較例4
無水マレイン酸変性脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対し、パラフィンワックス(日本精蝋社製、(商品名)パラフィンワックス125)80重量部の代わりに、無水マレイン酸変性脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対し、パラフィンワックス(日本精蝋社製、(商品名)パラフィンワックス125)20重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりエマルション溶液の製造を試みた。
【0065】
得られたエマルション溶液はなんとか乳化分散を示しているように見られたが、2ヶ月放置後は乳化分散性を示していなかった。また、得られたエマルション溶液をクラフト紙上に塗布し、乾燥後、水をかけたところほとんど撥水しなかった。
【0066】
比較例5
脂肪族−芳香族共重合石油樹脂(東ソー株式会社製、(商品名)ペトロタック60)100重量部に対して無水マレイン酸を3重量部添加し、200℃、4時間混合撹拌し、無水マレイン酸変性脂肪族−芳香族共重合石油樹脂を得た。
【0067】
そして、無水マレイン酸変性脂肪族−芳香族共重合石油樹脂100重量部に対し、パラフィンワックス(日本精蝋社製、(商品名)パラフィンワックス125)80重量部と乳化剤(日本乳化剤社製、(商品名)ニューコール1807)5重量部を混合して100℃に加温し、溶解させた。次に30重量%水酸化カリウム水溶液を100重量部を添加した。
【0068】
そして、次に固形分が30重量%になるように、水266重量部を徐々に加え転相乳化を行い、エマルション溶液を試みた。
【0069】
得られたエマルション溶液はなんとか乳化分散を示しているように見られたが、5日目には乳化分散性を示していなかった。
【0070】
比較例6
芳香族石油樹脂(東ソー株式会社製、(商品名)ペトコール120)100重量部に対して無水マレイン酸を3重量部添加し、200℃、4時間混合撹拌し、無水マレイン酸変性芳香族石油樹脂を得た。
【0071】
そして、無水マレイン酸変性芳香族石油樹脂100重量部に対し、パラフィンワックス(日本精蝋社製、(商品名)パラフィンワックス135)80重量部と乳化剤(日本乳化剤社製、(商品名)ニューコール1820)5重量部を混合して100℃に加温し、溶解させた。次に30重量%水酸化カリウム水溶液を100重量部を添加した。
【0072】
そして、次に固形分が30重量%になるように、水266重量部を徐々に加え転相乳化を行い、エマルション溶液を試みた。
【0073】
得られたエマルション溶液はなんとか乳化分散を示しているように見られたが、4日目には乳化分散性を示していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のエマルション溶液は、優れた乳化分散性を示すとともに撥水効果をも発現するものであり、特に撥水剤としての展開が期待できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中に固形分が濃度10〜50重量%で乳化分散してなるエマルション溶液であって、該固形分が、脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対し、少なくともパラフィンワックス30〜100重量部を配合してなる組成物であることを特徴とするエマルション溶液。
【請求項2】
固形分が、脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対し、さらに乳化剤0.5〜20重量部を配合してなる組成物であることを特徴とする請求項1に記載のエマルション溶液。
【請求項3】
固形分が、脂肪族−芳香族―脂環族共重合石油樹脂100重量部に対し、さらにヒンダードアミン化合物0.05〜2重量部を配合してなる組成物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエマルション溶液。
【請求項4】
脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂が、無水マレイン酸変性脂肪族−芳香族−脂環族共重合石油樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエマルション溶液。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のエマルション溶液よりなることを特徴とする撥水剤。

【公開番号】特開2013−107953(P2013−107953A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252488(P2011−252488)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】