説明

エマルション組成物、該エマルション組成物を含む食品及び化粧品

【課題】粒子の粒子径が微細で、かつ、その保存安定性に優れ、透明性の高いエマルション組成物を提供すること。
【解決手段】オイルに含有された状態で検出される融点が100℃以上であるカロチノイドを含む油相と、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び該ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤を含む水相と、から構成され、該ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量(A)と、該ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤の含有量(B)と、の質量比(A)/(B)が2.5〜10の範囲であり、粒子径が200nm以下であるエマルション組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルション組成物、それを含む食品及び化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水性飲料、水性食品ならびに水性化粧品に油性成分を添加することは行われてきた。しかし、油性成分は水に対して不溶性又は難溶性のため、乳化等の手段を用いて、油性成分をいわゆるエマルションとして水性媒体中に分散することが一般的であった。エマルションは、その粒径に依存して光を散乱するため、粒子径が大きい場合は、エマルション及びそれを添加した食品や化粧品に濁りを生じ、外観上好ましくない場合が有り、光散乱が非常に小さくなるまでエマルションの粒子径を微細化することが望まれていた。
【0003】
一方、従来から、カロチノイドを食品、化粧品、医薬品等に添加することが行われてきた。このようなカロチノイドは難溶性の素材として広く知られていることから、通常、乳化されて用いられる。
カロチノイドを含むエマルション組成物として具体的には、水相に少なくとも1種の水溶性乳化剤を含有し、油相にトコフェロール及びレシチンを含有するカロチノイド含有エマルジョン組成物(特許文献1参照。)や、食品用カロチノイド系色素とポリグリセリン脂肪酸エステルの組成物が微粒子化され、その可視部の極大吸収波長での吸光度が1のとき、660nmにおける透過率が99%以上である食品用カロチノイド系色素可溶化液製剤(特許文献2参照)、更には、カロチノイド類を油脂に溶解してなる油相をポリグリセリン脂肪酸エステル及びレシチンの存在下に多価アルコールを含む水相に乳化してなり、かつ上記油相の平均粒子径が100nm以下であるカロチノイド含有組成物(特許文献3参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−13751号公報
【特許文献2】特開平10−120933号公報
【特許文献3】特開平9−157159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
更に、カロチノイドの中でも、オイルとの共存下において検出される融点が100℃以上であるカロチノイド(以下、適宜、「高融点カロチノイド」と称する。)というものがある。
このようなカロチノイドの場合、前述の特許文献1〜3に記載の技術では、エマルション組成物に含まれる粒子の粒子径が微細で、その微細な粒子径が長期間安定に保持され、透明性の高いエマルション組成物を得ることが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、粒子の粒子径が微細で、かつ、その保存安定性に優れ、透明性の高いエマルション組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、粒子の粒子径が微細で、かつ、その保存安定性に優れ、透明性の高いエマルション組成物を含む食品及び化粧品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記実情に鑑み本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は下記の手段により達成されるものである。
【0008】
<1> オイルに含有された状態で検出される融点が100℃以上であるカロチノイドを含む油相と、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び該ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤を含む水相と、から構成され、該ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量(A)と、該ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤の含有量(B)と、の質量比(A)/(B)が2.5〜10の範囲であり、粒子径が200nm以下であるエマルション組成物。
【0009】
<2> 0.1質量%〜5質量%の範囲で前記カロチノイドを含み、かつ、0.1質量%〜20質量%の範囲で前記ポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、かつ、0.01質量%〜8質量%の範囲で前記ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤を含む前記<1>に記載のエマルション組成物。
【0010】
<3> 前記カロチノイドがリコピンである前記<1>又は前記<2>に記載のエマルション組成物。
<4> 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びポリソルベート類からなる群から選択される少なくとも1種である前記<1>〜前記<3>のいずれか1に記載のエマルション組成物。
【0011】
<5> 更に酸化防止剤を含有する前記<1>〜前記<4>のいずれか1に記載のエマルション組成物。
<6> 更に多価アルコールを含有することを特徴とする前記<1>〜前記<5>のいずれか1に記載のエマルション組成物。
<7> 前記粒子径が100nm以下である前記<1>〜前記<6>のいずれか1に記載のエマルション組成物。
【0012】
<8> 前記<1>〜前記<7>のいずれか1に記載のエマルション組成物を含有する食品。
<9> 前記<1>〜前記<7>のいずれか1に記載のエマルション組成物を含有する化粧品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、粒子の粒子径が微細で、かつ、その保存安定性に優れ、透明性の高いエマルション組成物を提供することができる。
また、本発明は、粒子の粒子径が微細で、かつ、その保存安定性に優れ、透明性の高いエマルション組成物を含む食品及び化粧品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<エマルション組成物>
本発明のエマルション組成物は、オイルに含有された状態で検出される融点が100℃以上であるカロチノイドを含む油相と、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び該ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤を含む水相と、から構成され、該ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量(A)と、該ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤の含有量(B)と、の質量比(A)/(B)が2.5〜10の範囲であり、粒子径が200nm以下であることを特徴とする。
このように、高融点カロチノイドを含む油相に対し、水相に、ポリグリセリン脂肪酸エステルと、該ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤と、の2種類以上の乳化剤を特定の質量比にて用いることで、粒子の粒子径を微細化することが可能となり、また、この微細化状態が長期間安定に保持され、透明性の高いエマルション組成物が得られる。
以下、本発明のエマルション組成物を構成する各成分について説明する。
なお、本発明のエマルション組成物は水中油型のエマルションを含むものである。
【0015】
〔油相構成成分〕
[高融点カロチノイド]
本発明においては、油相に、オイルに含有された状態で検出される融点が100℃以上であるカロチノイド(高融点カロチノイド)を含有する。
この高融点カロチノイドは、以下の(1)〜(4)の工程を経て測定され、検出される融点が100℃以上となるカロチノイドを指す。
即ち、(1)オイル中にカロチノイドを1質量%以上50質量%以下含む油性試料を調製する。この油性試料の組成は、エマルジョン組成物を調製する際の組成に従うことが望ましく、カロチノイドの濃度が1質量%を超える限りは油性物質で希釈することができる。
(2)調製されたカロチノイド含有油性試料について、メトラーFP900熱分析システム及びFP82ホットステージ(メトラー・トレド製)を用いて加熱処理する。この加熱は、初期温度30℃、昇温速度5℃/minで行う。
(3)試料に含まれるカロチノイドの結晶の加熱処理に伴う融解挙動を、光学顕微鏡ECLIPSE LV100POL(ニコン製)にて観察する。観察は、偏光フィルターを用いて暗視野にて行い、また、倍率は200倍とする。
(4)暗視野にて明るく見える結晶が完全に融解した温度を融点として記録する。
また、上記の測定方法以外でも、市販されている融点測定装置や示差走査熱量測定装置を使用することで、同様に油性試料に含まれるカロチノイドの融点を測定することができるが、本発明においては、上記(1)〜(4)の工程を経て測定する方法を適用した。
なお、上記(1)の工程で用いられるオイルとしては、油脂が望ましいが、後述するエマルジョン組成物に含有できる油性物質を含む組成であればよい。
【0016】
本発明においては、上述の測定にて検出された融点が100℃以上であれば、如何なるカロチノイドをも使用することができる。
高融点カロチノイドとして、具体的には、リコピン、α−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン、非エステル結合型キサントフィル類等が挙げられる。このキサントフィル類としては、アスタキサンチン、フコキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、カプサンチン、β−クリプトキサンチン、ビオラキサンチン等が挙げられる。エステル結合型キサントフィル類は、結合した中鎖或いは長鎖のアシル鎖のために脂溶性が向上しており、結晶の融点が低いことで知らており、そのため、本発明における高融点カロチノイドとしては、非エステル結合型キサントフィル類が用いられる。
中でも、酸化防止効果、美白効果等が非常に高いことで知られ、従来より食品、化粧品、医薬品の原材料及びそれらの加工品等への添加が要望、検討、実施されている点から、リコピンが好ましい。
【0017】
リコピンは、化学式C4056(分子量536.87)のカロチノイドであり、カロチノイドの一種カロテン類に属している。474nm(アセトン)に吸収極大を示す赤色色素である。また、リコピンはドイツ語読みであり、リコペン(lycopene)と標記されることもある。
リコピンには、分子中央の共役二重結合のcis−、trans−の異性体も存在する。例えば、全trans−、9−cis体と13−cis体などの如くである。
【0018】
リコピンはそれを含有する天然物から分離・抽出されたリコピン含有オイルとして、本発明のエマルジョン組成物に含まれていてもよい。
リコピンは、天然においてはトマト、柿、スイカ、ピンクグレープフルーツに含まれており、上記のリコピン含有オイルはこれらの天然物から分離・抽出されたものであってもよい。
また、本発明で用いられるリコピンは、前記抽出物、また、更にこの抽出物を必要に応じて適宜精製したものでもよく、また、合成品であってもよい。
本発明においては、リコピンとしては、トマトから抽出されたものが、品質、生産性の点から特に好ましい。
【0019】
また、本発明では、広く市販されている、トマト抽出物をリコピン含有オイルとして用いることができ、例えば、サンブライト(株)より販売されているLyc−O−Mato 15%、Lyc−O−Mato 6%、協和発酵工業(株)より販売されているリコピン18等が挙げられる。
【0020】
高融点カロチノイドの含有量としては、エマルション組成物に対し0.1質量%〜5質量%が好ましく、0.2質量%〜3質量%がより好ましく、0.3質量%〜2質量%が更に好ましい。
【0021】
[その他の油性成分]
また、本発明において、油相には、前述の高融点カロチノイド以外の油性成分を含有していてもよい。その他の油性成分としては、水性媒体に溶解せず、油性媒体に溶解する成分であれば、特に限定はない
以下、その他の油性成分について説明する。
【0022】
本発明において、その他の油性成分の1つとしては、前述の高融点カロチノイドの融点を検出する際に用いるオイルが挙げられる。高融点カロチノイドがオイル中に含有された状態で市販されているものであれば、この市販品を、本発明の油相構成成分としてそのまま用いることができる。
【0023】
また、その他の油性成分としては、上記の高融点カロチノイドの融点を検出する際に用いるオイル以外に、前述の高融点カロチノイド以外のカロチノイド類、リン脂質、不飽和脂肪酸類、ココナッツ油等の油脂類、トコフェロール等の油溶性ビタミンを含む酸化防止剤、ユビキノン類が好ましく用いられる。
【0024】
(カロチノイド類)
その他の油性成分としては、天然色素を含む高融点カロチノイド以外のカロチノイド類を好ましく用いることができる。
本発明のエマルション組成物におけるカロチノイド類は、黄色から赤のテルペノイド類の色素であり、植物類、藻類、及びバクテリアのものを含む。
また、天然由来のものに限定されず、常法に従って得られるものであればいずれのものも、本発明におけるカロチノイドに含まれる。例えば、後述のカロチノイド類のカロチン類の多くは合成によっても製造されており、市販のβ−カロチンの多くは合成により製造されている。
【0025】
高融点カロチノイド以外のカロチノイド類は、前述方法で測定された融点が100℃未満であるものを指し、炭化水素類(カロチン類)及びそれらの酸化アルコール誘導体類(キサントフィル類)が挙げられる。
カロチノイド類としては、アクチニオエリスロール、アスタキサンチン(エステル結合型)、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン(エステル結合型)、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、β−クリプトキサンチン(エステル結合型)、ルテイン(エステル結合型)、ビオラキサンチン(エステル結合型)、ゼアキサンチン(エステル結合型)、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類が挙げられる。
【0026】
カロチノイド類の多くは、シス及びトランス異性体の形で天然に存在するが、合成物はしばしばシス・トランス混合物である。
カロチノイド類は一般に植物素材から抽出することができる。これらのカロチノイド類は種々の機能を有しており、例えば、マリーゴールドの花弁から抽出するルテインは家禽の餌の原料として広く使用され、家禽の皮フ及び脂肪並びに家禽が産む卵に色を付ける機能がある。
【0027】
これらの高融点カロチノイド以外のカロチノイド類と、高融点カロチノイドと、を併用する場合、全カロチノイド類中、高融点カロチノイドを10質量%以上含むことが好ましく、30質量%以上含むことがより好ましい。
【0028】
(不飽和脂肪酸類)
その他の油性成分における不飽和脂肪酸類としては、一価不飽和脂肪酸(ω−9、オレイン酸など)、多価不飽和脂肪酸(ω−3、ω−6)が挙げられる。
多価不飽和脂肪酸のうち、ω−3油脂類としては、リノレン酸(亜麻仁油等も含む)が好ましい。)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、及びこれらを含有する魚油などを挙げることができる。
このうちDHAは、ドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic acid)の略称であり、6つの二重結合を含む22個の炭素鎖をもつカルボン酸(22:6)の総称であるが、通常は、生体にとって重要な4、7、10、13、16、19位に全てシス型の二重結合をもつため、有用である。
【0029】
(油脂類)
その他の油性成分におけるω−3油脂類以外の油脂類としては、常温で、液体の油脂(脂肪油)及び固体の油脂(脂肪)が挙げられる。
液体の油脂としては、前述した高融点カロチノイドの融点を検出する際に用いるオイル以外に、例えば、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、月見草油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルチミン酸グリセリン、サラダ油、サフラワー油(ベニバナ油)、パーム油、ココナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、ウォルナッツ油、グレープシード油等が挙げられる。
また、固体の油脂としては、牛脂、硬化牛脂、牛脚脂、牛骨脂、ミンク油、卵黄油、豚脂、馬脂、羊脂、硬化油、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム硬化油、モクロウ、モクロウ核油、硬化ヒマシ油、ワックス類、高級アルコール類等が挙げられる。
上記の中でも、エマルション組成物の粒子径、安定性の観点から、中鎖脂肪酸トリグリセライドが好ましく、具体的には、ココナッツ油が、好ましく用いられる。
【0030】
本発明において、油脂類は市販品を用いることができる。
また、本発明において、油脂類は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
(酸化防止剤)
本発明におけるその他の油性成分として、ラジカル捕捉の機能を有する脂溶性の酸化防止剤を含有することが好ましい。
酸化防止剤は油性成分として1種単独で用いても、また、他の油性成分の酸化を防止するために併用して用いることも好ましい態様である。
【0032】
酸化防止剤は、ラジカルの発生を抑えるとともに、生成したラジカルをできる限り速やかに捕捉し、連鎖反応を断つ役割を担う添加剤である(出典:「油化学便覧 第4版」、日本油化学会編 2001)。
【0033】
酸化防止剤としての機能を確認する直接的な方法としては、試薬と混合して、ラジカルを捕捉する様子を分光光度計やESR(電子スピン共鳴装置)によって測定する方法が知られている。これらの方法では、試薬として、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)や、ガルビノキシルラジカルが使用される。
本発明においては、以下の実験条件下で、油脂の自動酸化反応を利用して、油脂の過酸化物価(POV値)を60meq/kgに引き上げるまでに要する時間が、ブランクに対し2倍以上である化合物を「酸化防止剤」と定義する。油脂の過酸化物価(POV値)は常法により測定する。
【0034】
<条件>
油脂:オリーブ油
検体添加量:油脂に対し0.1質量%
試験方法:試料を190℃にて加熱し、時間を追ってPOV値を常法により測定し、60meq/kgとなる時間を算出した。
【0035】
本発明における酸化防止剤は、エマルションの酸化に対する安定性の観点から、前記POV値60meq/kgになるまでに要する時間がブランクに対し5倍以上である酸化防止剤が好ましい。
【0036】
本発明の酸化防止剤として使用できる化合物は、「抗酸化剤の理論と実際」(梶本著、三書房 1984)や、「酸化防止剤ハンドブック」(猿渡、西野、田端著、大成社 1976)に記載の各種酸化防止剤のうち、酸化防止剤として機能するものであれば良く、具体的には、フェノール性OHを有する化合物、フェニレンジアミン等のアミン系化合物、また、アスコルビン酸及びエリソルビン酸の油溶化誘導体等を挙げることができる。
以下に好ましい酸化防止剤を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
フェノール性OHを有する化合物として、ポリフェノール類(例えば、チャ抽出物に含まれるカテキン)、グアヤク脂、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、没食子酸エステル類、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、カルシノン酸類(ローズマリー抽出物など)、フェルラ酸、ビタミンE類及びビスフェノール類等が挙げられる。没食子酸エステル類として、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル及び没食子酸オクチルが挙げられる。
【0038】
アミン系化合物として、フェニレンジアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、又は4−アミノ−p−ジフェニルアミンが挙げられ、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、又は4−アミノ−p−ジフェニルアミンがより好ましい。
【0039】
アスコルビン酸、エリソルビン酸の油溶化誘導体としては、ステアリン酸L−アスコルビルエステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸エリソルビルエステル、テトライソパルミチン酸エリソルビルエステル、などが挙げられる。
【0040】
以上の中でも、安全性、及び、酸化防止の機能に優れる観点から、特に、ビタミンE類が好ましく用いられる。
ビタミンE類としては、特に限定されず、例えば、トコフェロール及びその誘導体からなる化合物群、並びにトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群から選ばれるものを挙げることができる。これらは単独で用いても、複数併用して用いてもよい。またトコフェノール及びその誘導体からなる化合物群とトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群からそれぞれ選択されたものを組み合わせて使用してもよい。
【0041】
トコフェロール及びその誘導体からなる化合物群としては、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等が含まれる。これらの内で、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、及び、これらの混合物(ミックストコフェロール)がより好ましい。また、トコフェロール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。
トコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群としては、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等が含まれる。また、トコトリエノール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。トコトリエノールは麦類、米糠、パーム油等に含まれるトコフェロール類似化合物で、トコフェロールの側鎖部分に二重結合が3個含まれ、優れた酸化防止性能を有する。
【0042】
これらのビタミンE類は、油溶性酸化防止剤として本発明のエマルション組成物の特に油相に含まれていることが、効果的に油性成分の酸化防止機能を発揮することができるため好ましい。上記ビタミンE類の中でも酸化防止効果の観点から、トコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群から選択されたものを少なくとも1種を含有することが更に好ましい。
【0043】
エマルション組成物における酸化防止剤の含有量は、一般的には、該エマルション組成物に対して0.001質量%〜20.0質量%であり、好ましくは0.01質量%〜10.0質量%、より好ましくは0.1質量%〜5.0質量%である。
【0044】
(ユビキノン類)
本発明におけるその他の油性成分として、ユビキノン類を用いてもよい。ユビキノン類としては、コエンザイムQ10のようなコエンザイムQ類等が挙げられる。コエンザイムQ10は、「ユビデカレノン」として日本薬局方に記載されている補酵素の一種であり、ユビキノン10、補酵素UQ10等と呼ばれることもある。自然界においては、酵母、鯖、鰯、小麦胚芽等の天然物に多く含まれており、熱水、含水アルコール、アセトン等の溶媒によってコエンザイムQ10を抽出することができる。工業的にも製造可能であり一般的には発酵法や合成法が知られている。本発明で使用されるコエンザイムQ10は、天然物から抽出されたものであってもよく、工業的に合成されたものであってもよい。また、コエンザイムQ10として市販品を使用してもよく、日清ファルマ社製のコエンザイムQ10や、日本油脂社製のコエンザイムQ10粉末等を挙げることができる。
【0045】
本発明のエマルション組成物における油性成分の総含有量は、エマルション組成物の応用、及び、粒子の粒子径、その保存安定性の観点から、好ましくは0.1質量%〜50質量%、より好ましくは0.5質量%〜25質量%、更に好ましくは0.2質量%〜10質量%である。
油性成分の含有量を0.1質量%以上とすると、有効成分が少なくなることがなく、エマルション組成物の食品、化粧品への応用が容易となる傾向となり、50質量%以下であると、粒子径の増大、乳化安定性の悪化が生じ難い傾向となる。
【0046】
〔ポリグリセリン脂肪酸エステル〕
本発明のエマルション組成物は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する。
本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が2以上、好ましくは6〜15、より好ましくは8〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸と、のエステルである。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。
これらの中でも、より好ましくは、デカグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル(HLB=13)、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル(HLB=14)、デカグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=16)などである。
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0047】
ここで、HLBは、通常、界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば、川上式等が使用できる。本発明においては、下記の川上式を採用する。
【0048】
HLB=7+11.7log(M/M
ここで、Mは親水基の分子量、Mは疎水基の分子量である。
【0049】
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の化合物を得ることができる。
【0050】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL DGMS,NIKKOL DGMO−CV,NIKKOL DGMO−90V,NIKKOL DGDO,NIKKOL DGMIS,NIKKOL DGTIS,NIKKOL Tetraglyn 1−SV,NIKKOL Tetraglyn 1−O,NIKKOL Tetraglyn 3−S,NIKKOL Tetraglyn 5−S,NIKKOL Tetraglyn 5−O,NIKKOL Hexaglyn 1−L,NIKKOL Hexaglyn 1−M,NIKKOL Hexaglyn 1−SV,NIKKOL Hexaglyn 1−O,NIKKOL Hexaglyn 3−S,NIKKOL Hexaglyn 4−B,NIKKOL Hexaglyn 5−S,NIKKOL Hexaglyn 5−O,NIKKOL Hexaglyn PR−15,NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,NIKKOL Decaglyn 2−SV,NIKKOL Decaglyn 2−ISV,NIKKOL Decaglyn 3−SV,NIKKOL Decaglyn 3−OV,NIKKOL Decaglyn 5−SV,NIKKOL Decaglyn 5−HS,NIKKOL Decaglyn 5−IS,NIKKOL Decaglyn 5−OV,NIKKOL Decaglyn 5−O−R,NIKKOL Decaglyn 7−S,NIKKOL Decaglyn 7−O,NIKKOL Decaglyn 10−SV,NIKKOL Decaglyn 10−IS,NIKKOL Decaglyn 10−OV,NIKKOL Decaglyn 10−MAC,NIKKOL Decaglyn PR−20,三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリグリエステル、L−7D、L−10D、M−10D、P−8D、SWA−10D、SWA−15D、SWA−20D、S−24D、S−28D、O−15D、O−50D、B−70D、B−100D、ER−60D、LOP−120DP、DS13W、DS3、HS11、HS9、TS4、TS2、DL15、DO13、太陽化学(株)社製サンソフトQ−17UL、サンソフトQ−14S、サンソフトA−141C、理研ビタミン(株)社製ポエムDO−100、ポエムJ−0021などが挙げられる。
上記の中でも、好ましくは、NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,リョートーポリグリエステル L−7D、L−10D、M−10D、P−8D、SWA−10D、SWA−15D、SWA−20D、S−24D、S−28D、O−15D、O−50D、B−70D、B−100D、ER−60D、LOP−120DPである。
【0051】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量としては、量が少なすぎると微細な粒子が得られず、また、乳化物の安定性が十分でなく、更に量が多すぎると乳化物の泡立ちが激しくなるなどの問題を生じるため、エマルション組成物に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜18質量%がより好ましく、5質量%〜15質量%が更に好ましい。
【0052】
〔ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤〕
本発明のエマルション組成物は、ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤を含有する。
本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤としては、従来公知のノニオン性乳化剤であれば、特に限定されないが、食品、化粧品、医薬品へ添加できる点から、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びポリソルベート類が好ましい。
【0053】
特に、上記のポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤のうち、親水性乳化剤であることがより好ましい。ここで親水性乳化剤は、前述のHLBが10以上であることで規定される。親水性のノニオン性乳化剤の例としては、ショ糖脂肪酸エステル、及びポリソルベート類が挙げられる。
【0054】
本発明に用いられる、ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられ、これらの中でも、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステルがより好ましい。
本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0055】
ショ糖脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステル S−070、S−170、S−270、S−370、S−370F、S−570、S−770、S−970、S−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−070、P−170、P−1570、P−1670、M−1695、O−170、O−1570、OWA−1570、L−195、L−595、L−1695、LWA−1570、B−370、B−370F、ER−190、ER−290、POS−135、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルSS、F160、F140、F110、F90、F70、F50、F−A50、F−20W、F−10、F−A10E、コスメライクB−30、S−10、S−50、S−70、S−110、S−160、S−190、SA−10、SA−50、P−10、P−160、M−160、L−10、L−50、L−160、L−150A、L−160A、R−10、R−20、O−10、O−150等が挙げられる。
上記の中で、好ましくは、リョートーシュガーエステルS−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−1570、P−1670、M−1695、O−1570、L−1695、DKエステルSS、F160、F140、F110、コスメライクS−110、S−160、S−190、P−160、M−160、L−160、L−150A、L−160A、O−150である。
【0056】
本発明に用いられる、ポリソルベート類の好ましい例としてはポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、ポリソルベート65(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、ポリソルベート85(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート)等が挙げられる。
本発明においては、これらのポリソルベート類を、単独又は混合して用いることができる。
【0057】
ポリソルベート類の市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOLTL-10、NIKKOL TP−10V、NIKKOL TS−10V、NIKKOL TS−10MV、NIKKOL TS−106V、NIKKOL TS−30V、NIKKOL TI−10V、NIKKOL TO−10V、NIKKOL TO−10MV、NIKKOL TO−106V、NIKKOL TO−30Vなどが挙げられる。
【0058】
上述したようなポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤の総含有量としては、量が少なすぎると微細な粒子が得られず、また乳化物の安定性が十分でなく、更に量が多すぎると乳化物の泡立ちが激しくなるなどの問題を生じるため、エマルション組成物に対し0.01質量%〜8質量%が好ましく、0.1質量%〜5質量%がより好ましく、0.5質量%〜3質量%が更に好ましい。
【0060】
また、本発明のエマルション組成物において、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量(A)と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤の含有量(B)と、の質量比(A)/(B)は、ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤の量がポリグリセリン脂肪酸エステルと比較して少なすぎる場合には、エマルジョン組成物の調製に際して油分の析出することなどの問題を生じ、逆に多すぎる場合には、乳化物の安定性が低くなるなどの問題を生じるため、2.5〜10の範囲であることを要し、3〜9の範囲であることが好ましく、4〜8の範囲であることがより好ましい。
【0061】
〔その他の成分〕
(多価アルコール)
本発明のエマルション組成物は、粒子径、安定性、及び防腐性の観点から多価アルコールを含有することが好ましい。
多価アルコールは、保湿機能や粘度調整機能等を有している。また、多価アルコールは、水と油脂成分との界面張力を低下させ、界面を広がりやすくし、微細で、かつ、安定な微粒子を形成しやすくする機能も有している。
以上より、エマルション組成物が多価アルコールを含有することは、エマルション粒子径をより微細化でき、かつ該粒子径が微細な粒子径の状態のまま長期に亘り安定して保持できるとの観点から好ましい。
また、多価アルコールの添加により、エマルション組成物の水分活性を下げることができ、微生物の繁殖を抑えることができる。
【0062】
本発明に使用できる前記多価アルコールとしては、二価以上のアルコールであれば特に限定されず用いることができる。
前記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、マルチトール、還元水あめ、果糖、ブドウ糖、蔗糖、ラクチトール、パラチニット、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、キシロース、グルコース、ラクトース、マンノース、マルトース、ガラクトース、フルクトース、イノシトール、ペンタエリスリトール、マルトトリオース、ソルビトール、ソルビタン、トレハロース、澱粉分解糖、澱粉分解糖還元アルコール等が挙げられ、これらを、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
【0063】
また、多価アルコールとしては、その1分子中における水酸基の数が、3個以上であるものを用いるのが好ましい。これにより、水系溶媒と油脂成分との界面張力をより効果的に低下させることができ、より微細で、かつ、安定な微粒子を形成させることができる。その結果、食品用途の場合は腸管吸収性を、化粧品用途の場合は経皮吸収性をより高いものとすることができる。
【0064】
上述したような条件を満足する多価アルコールの中でも、特に、グリセリンを用いた場合、エマルションの粒子径がより小さくなり、かつ該粒子径が小さいまま長期に亘り安定して保持されるため、好ましい。
【0065】
前記多価アルコールの含有量は、前述の粒子径、安定性、防腐性に加えて、エマルション組成物の粘度の観点から、エマルション組成物に対して10質量%〜60質量%が好ましく、より好ましくは20〜55質量%、更に好ましくは30質量%〜50質量%である。
多価アルコールの含有量が10質量%以上であると、油脂成分の種類や含有量等によっても、十分な保存安定性が得られ易い点で好ましい。一方、多価アルコールの含有量が60質量%以下であると、最大限の効果が得られ、エマルション組成物の粘度が高くなるのを抑え易い点で好ましい。
【0066】
(リン脂質)
本発明のエマルション組成物はその他の成分としてリン脂質を含有していてもよい。
本発明において用いられるリン脂質とは、複合脂質の内、脂肪酸、アルコール、燐酸、窒素化合物からなるエステルで、リン酸エステル及び脂肪酸エステルを有する一群であり、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質をいう。
以下、詳細に説明する。
【0067】
本発明で用いることができるリン脂質であるグリセロリン脂質としては、例えば、ホスファチジン酸、ビスホスアチジン酸、レシチン(ホスファチジルコリン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセリン、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等が挙げられ、これらを含む大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物由来のものや、卵黄、牛等の動物由来のもの及び大腸菌等の微生物等由来の各種レシチンを挙げることができる。
本発明で用いることができるリン脂質であるスフィンゴリン脂質としては、例えば、スフィンゴミエリン等を挙げることができる。
【0068】
また、本発明においては、グリセロリン脂質として、酵素分解したグリセロリン脂質を使用することができる。
例えば、前記レシチンを酵素分解したリゾレシチン(酵素分解レシチン)は、グリセロリン脂質の1位又は2位に結合した脂肪酸(アシル基)のいずれか一方が失われたものである。脂肪酸基を1本にすることにより、レシチンの親水性を改善し、水に対する乳化性、分散性を向上させることができる。
リゾレシチンは、酸、又はアルカリ触媒によるレシチンの加水分解により得られるが、ホスホリパーゼA、又はAを用いたレシチンの加水分解により得ることもできる。
このようなリゾレシチンに代表されるリゾ化合物を化合物名で示すと、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルグリセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルメチルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン(リゾレシチン)、リゾホスファチジルセリン等が挙げられる。
【0069】
また更に、上記のレシチンに代表されるグリセロリン脂質は、水素添加、又はヒドロキシル化されたものも、本発明において用いることができる。
前記水素添加は、例えば、レシチンを触媒の存在下に水素と反応させることにより行われ、脂肪酸部分の不飽和結合が水素添加される。水素添加により、レシチンの酸化安定性が向上する。
また、前記ヒドロキシル化は、レシチンを高濃度の過酸化水素と酢酸、酒石酸、酪酸などの有機酸と共に加熱することにより、脂肪酸部分の不飽和結合が、ヒドロキシル化される。ヒドロキシル化により、レシチンの親水性が改良される。
これらの水素添加、ヒドロキシル化されたレシチンは、化粧品用途への応用が特に好ましい。
【0070】
上記の中でも、乳化安定性の点で、グリセロリン脂質であるレシチン、リゾレシチン、が好ましく、更に、レシチンが好ましい。
【0071】
前記レシチンは、分子内に親水基と疎水基を有していることから、従来より、食品、医薬品、化粧品分野で、広く乳化剤として使用されている。
【0072】
前記レシチンの純度60質量%以上のものが産業的にはレシチンとして利用されているが、本発明においては、一般に「高純度レシチン」と称されるレシチン純度80質量%以上のものが好ましく、より好ましくは90質量%以上のものである。
このレシチン純度(質量%)は、レシチンがトルエンに溶解しやすくアセトンに溶解しない性質を利用して、トルエン不溶物とアセトン可溶物の質量を差し引くことにより求められる。
高純度レシチンは、リゾレシチンに比べて親油性が高く、そのためレシチンと油性成分との相溶性が高くなり、乳化安定性を向上させていると考えられる。
【0073】
本発明で用いるリン脂質は、単独で用いることもでき、又は、複数種の混合物の形態で用いることができる。
【0074】
〔粒子径〕
本発明のエマルション組成物に含まれる粒子の粒子径は、体積平均粒子径にて200nm以下であることを要し、より好ましくは120nm以下、最も好ましくは100nm以下である。
粒子の粒子径(体積平均粒子径)を200nm以下とすることにより、本発明のエマルション組成物(乳化物)を用いて製造した食品、化粧品等の透明性が悪化し難く、また、体内、経皮吸収性が低下し難い点で好ましい。
【0075】
本発明のエマルション組成物中に含まれる粒子の粒子径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。エマルションの粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
【0076】
本発明においては、粒径範囲及び測定の容易さから、粒子の粒子径測定には動的光散乱法が用いられることが好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
本発明における粒子径は、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))を用いて測定した値とし、具体的には、以下のよう計測した値を採用する。
粒子径の測定方法は、油性成分の濃度が1質量%になるように純水で希釈を行い、ガラスセルを用いて測定を行う。粒子径は、分散媒屈折率として1.313(純水)、分散媒の粘度を0.8854(純水)と設定した時のメジアン径として求めることができる。
【0077】
エマルション組成物に含まれる粒子の粒子径は、前述したエマルション組成物の成分以外に、後述するエマルション組成物の製造方法における油相及び水相の溶解温度や、攪拌条件(せん断力・温度・圧力)、油相と水相比率、などの要因によって微細化することができる。
【0078】
<エマルション組成物の製造方法>
本発明のエマルション組成物の製造方法は、特に限定されないが、たとえば、a)水性媒体(水等)に、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤を溶解させて、水相を得て、また、b)油性成分(高融点カロチノイド等)を混合・溶解して、油相を得て、c)攪拌下でこの水相と油相とを混合して、乳化分散を行い、エマルション組成物を得る、といったステップからなる製造方法が好ましい。
特に、本発明においては高融点カロチノイドを含有しているため、融点以上の温度で加熱処理することで油相に含まれるカロチノイドを十分に溶解せしめた上で水相と混合し、乳化処理を行うことが必要である。
この製造方法における油相、水相に含有される成分は、前述の本発明のエマルション組成物の構成成分と同様であり、好ましい例及び好ましい量も同様であり、好ましい組合せがより好ましい。
【0079】
上記の乳化分散における油相と水相との比率(質量)は、特に限定されるものではないが、油相/水相比率(質量%)として0.1/99.9〜50/50が好ましく、0.5/99.5〜30/70がより好ましく、1/99〜20/80が更に好ましい。
油相/水相比率を0.1/99.9以上とすることにより、有効成分が低くならないためエマルション組成物の実用上の問題が生じない傾向となり好ましい。また、油相/水相比率を50/50以下とすることにより、界面活性剤濃度が薄くなることがなく、エマルション組成物の乳化安定性が悪化しない傾向となり好ましい。
【0080】
前記乳化分散は、1ステップの乳化操作を行うことでもよいが、2ステップ以上の乳化操作を行うことが均一で微細な粒子を得る点から好ましい。
具体的には、剪断作用を利用する通常の乳化装置(例えば、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサー、連続流通式剪断装置等)を用いて乳化するという1ステップの乳化操作に加えて、高圧ホモジナイザー、超音波分散機等を通して乳化する等の方法で2種以上の乳化装置を併用するのが特に好ましい。高圧ホモジナイザーを使用することで、乳化物を更に均一な微粒子の液滴に揃えることができる。また、更に均一な粒子径の液滴とする目的で複数回行っても良い。
【0081】
本発明のエマルション組成物は、食品、又は、化粧品などに広く使用することができる。ここで、食品としては、飲料、冷菓など、化粧品としてはスキン化粧料(化粧水、美容液、乳液、クリームなど)、口紅、日焼け止め化粧料、メークアップ化粧料などを挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
また、本発明の食品又は化粧品には、本発明のエマルション組成物を含有するが、必要に応じて、食品又は化粧品に添加可能な成分を適宜添加することができる。
【0082】
食品、化粧品などに対して用いられる本発明のエマルション組成物の添加量は、製品の種類や目的などによって異なり一概には規定できないが、製品に対して、0.01質量%〜10質量%、好ましくは、0.05質量%〜5質量%の範囲で用いることができる。
添加量が少なすぎる場合は目的の効果を出すことができない場合があり、多すぎる場合は、過剰に添加されたエマルション組成物は効果の発揮に寄与することができない場合がある。
本発明のエマルション組成物を、特に飲料(食品の場合)や化粧水、美容液、乳液、クリームパック・マスク、パック、洗髪用化粧品、フレグランス化粧品、液体ボディ洗浄料、UVケア化粧品、防臭化粧品、オーラルケア化粧品等(化粧品の場合)などの水性製品に使用した場合には、透明感のある製品が得られ、且つ、長期保存又は滅菌処理などの苛酷条件下での不溶物の析出、沈殿又はネックリングなどの不都合な現象の発生を抑制することができる。
【0083】
本発明の食品又は化粧品は、例えば、本発明のエマルション組成物及び必要に応じて添加可能な成分を常法により混合等して得ることができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0085】
(実施例1−1、1−2、比較例1−1、1−2)
高融点カロチノイド含有ナノエマルション組成物1−A〜1−Dを、下記の組成を用い、下記の製法によって調製した。
なお、カロチノイドの融点は以下のようにして確認した。
即ち、下記1液に該当する成分を、下記の組成にしたがって容器に秤量し、攪拌して均一に混合してから、この混合物の一部を試料として用い、前述した(1)〜(4)の工程を経て測定する方法により、1液中に含まれるリコピンの融点を測定した。その結果、融点は130℃であることが分かった。
【0086】
〔1液〕
・トマトオレオレジン 3.3質量%
(協和発酵製、リコピン18、リコピン18質量%含有)
・レシチン(理研ビタミン製、レシオンP) 1.0質量%
・中鎖脂肪酸グリセライド(花王製、ココナードMT) 10.7質量%
【0087】
〔2液〕
・オレイン酸デカグリセリル−10 X質量%
(日光ケミカルズ製、Decaglyn 1−O)
・ショ糖ステアリン酸エステル Y質量%
(三菱化学フーズ製、リョートーシュガーエステルS−1670)
・グリセリン 45質量%
・精製水 30質量%
【0088】
【表1】

【0089】
上記2液に該当する成分を、上記の組成(表1に記載の組成を含む)に従って容器に秤量し、70℃の恒温槽にて攪拌しながら加熱混合し、よく混合されたことを確認し、70℃で保持した。
また、上記1液に該当する成分を、上記の組成にしたがって容器に秤量し、150℃のホットプレート上にて攪拌しながら5分間加熱混合し、よく混合されたことを確認した。
上記のようにして得られた2液を1液に加えて攪拌混合し、超音波ホモジナイザーを用いて分散させた。
その後、得られた粗分散物を更に超高圧乳化装置(アルティマイザー、(株)スギノマシン社製)を用い、200MPaの高圧乳化を行った。
【0090】
(実施例2−1〜2−3、比較例2−1〜2−3)
高融点カロチノイド含有ナノエマルション組成物2−A〜2−Fを、下記の組成を用い、実施例1−1と同様の製法によって調製した。
なお、カロチノイドの融点は以下のようにして確認した。
即ち、下記1液に該当する成分を、下記の組成にしたがって容器に秤量し、攪拌して均一に混合してから、この混合物の一部を試料として用い、前述した(1)〜(4)の工程を経て測定する方法により、1液中に含まれるリコピンの融点を測定した。その結果、融点は130℃であることが分かった。
【0091】
〔1液〕
・トマトオレオレジン 3.3質量%
(サンブライト製、Lyc−O−Mato 15% リコピン15質量%含有)
・レシチン(理研ビタミン製、レシオンP) 1.0質量%
・中鎖脂肪酸グリセライド(花王製、ココナードMT) 10.7質量%
【0092】
〔2液〕
・オレイン酸デカグリセリル−10 X質量%
(日光ケミカルズ製、Decaglyn 1−O)
・ショ糖ステアリン酸エステル Y質量%
(三菱化学フーズ製、リョートーシュガーエステルS−1670)
・グリセリン 45質量%
・精製水 30質量%
【0093】
【表2】

【0094】
(比較例3−1〜3−5)
カロチノイド含有ナノエマルション組成物3−A〜3−Eを、下記の組成を用い、実施例1−1と同様の製法によって調製した。
【0095】
〔1液〕
・トマトオレオレジン 3.3質量%
(サンブライト製、Lyc−O−Mato 15% リコピン15質量%含有)
・レシチン(理研ビタミン製、レシオンP) 1.0質量%
・中鎖脂肪酸グリセライド(花王製、ココナードMT) 10.7質量%
【0096】
〔2液〕
・ショ糖ステアリン酸エステル 10質量%
(三菱化学フーズ製、下記表3に示すリョートーシュガーエステル)
・グリセリン 45質量%
・精製水 30質量%
【0097】
【表3】

【0098】
(実施例4−1〜4−3)
高融点カロチノイド含有ナノエマルション組成物4−A〜4−Cを、下記の組成を用い、実施例1−1と同様の製法によって調製した。
実施例4−Bで用いるカロチノイドの融点は以下のようにして確認した。
即ち、下記1液に該当する成分を、下記の組成にしたがって容器に秤量し、攪拌して均一に混合してから、この混合物の一部を試料として用い、前述した(1)〜(4)の工程を経て測定する方法により、1液中に含まれるβ−カロチンの融点を測定した。その結果、融点は140℃であることが分かった。
実施例4−Cで用いるカロチノイドの融点は以下のようにして確認した。
即ち、下記1液に該当する成分を、下記の組成にしたがって容器に秤量し、攪拌して均一に混合してから、この混合物の一部を試料として用い、前述した(1)〜(4)の工程を経て測定する方法により、1液中に含まれるカロチノイドの融点を測定した。その結果、融点は100℃であることが分かった。
【0099】
<4−A>
〔1液〕
・トマトオレオレジン 3.4質量%
(サンブライト製、Lyc−O−Mato 15% リコピン15質量%含有)
・ミックストコフェロール(理研ビタミン製、理研Eオイル800) 0.6質量%
・中鎖脂肪酸グリセライド(花王製、ココナードMT) 11質量%
【0100】
〔2液〕
・オレイン酸デカグリセリル−10 8質量%
(日光ケミカルズ製、Decaglyn 1−O)
・ショ糖ステアリン酸エステル 2質量%
(三菱化学フーズ製、リョートーシュガーエステルS−1670)
・グリセリン 45質量%
・精製水 30質量%
【0101】
<4−B>
〔1液〕
・デュナリエラ抽出物 1.7質量%
(協和発酵製、バイオカロチン30MCT、β−カロチン30質量%含有)
・ミックストコフェロール(理研ビタミン製、理研Eオイル800) 0.6質量%
・中鎖脂肪酸グリセライド(花王製、ココナードMT) 12.7質量%
【0102】
〔2液〕
・オレイン酸デカグリセリル−10 8質量%
(日光ケミカルズ製、Decaglyn 1−O)
・ショ糖ステアリン酸エステル 2質量%
(三菱化学フーズ製、リョートーシュガーエステルS−1670)
・グリセリン 45質量%
・精製水 30質量%
【0103】
<4−C>
〔1液〕
・マルチカロチノイド懸濁液 1.7質量%
(協和発酵製、ナチュラルマルチカロチノイド20、総カロチノイド20質量%含有)
・ミックストコフェロール(理研ビタミン製、理研Eオイル800) 1.0質量%
・中鎖脂肪酸グリセライド(花王製、ココナードMT) 12.3質量%
【0104】
〔2液〕
・オレイン酸デカグリセリル−10 8質量%
(日光ケミカルズ製、Decaglyn 1−O)
・ショ糖ステアリン酸エステル 2質量%
(三菱化学フーズ製、リョートーシュガーエステルS−1670)
・グリセリン 45質量%
・精製水 30質量%
【0105】
(比較例5)
カロチノイド含有ナノエマルション組成物5−Aを以下の方法にて調製した。
即ち、実施例1−1と同じ組成で、1液について150℃のホットプレート上にて攪拌しながら5分間加熱混合する操作の替わりに、1液について100℃のホットプレート上にて攪拌しながら5分間加熱混合し、他の操作は全く同じようにしてエマルジョン組成物を調製した。
【0106】
<評価>
(粒子の粒子径、及び保存安定性)
上記で得られたエマルション組成物(1−A〜1−D、2−A〜2−F、3−A〜3−E、4−A〜4−C、5−A)をそれぞれ3つに分け、それぞれ5mlガラスバイアルに充填し、そのうち1つを4℃にて2週間、1つを4℃にて1ヶ月間保存した。保存前、2週間保存後、1ヶ月間保存後のそれぞれの試料に精製水を加えて1%希釈液を調製し、希釈液中の粒子の体積基準での平均粒子径(メジアン粒子径)を動的光散乱計にて測定した。その測定結果を下記表4にまとめた。
また、得られた測定結果を用い、下記の基準に従ってそれぞれのエマルジョン組成物に評点をつけ、その結果を下記表4に併記した。
【0107】
<評価基準>
1:2週間保存後の粒子径が200nmより大きい。
2:保存前及び2週間保存後の粒子径が200nm以内であり、1ヶ月保存後の粒子径が200nmより大きい。
3:保存前及び2週間保存後の粒子径が200nm以内であり、1ヶ月保存後の粒子径が200nm以内である。
4:保存前の粒子径が100nm以内であり、2週間保存後の粒子径が100nm以内であり、1ヶ月保存後の粒子径が100nmより大きく200nm以内である。
5:保存前の粒子径が100nm以内であり、2週間保存後の粒子径が100nm以内であり、1ヶ月保存後の粒子径が100nm以内である。
【0108】
【表4】

【0109】
(透明性評価)
上記の保存安定性評価において調製した、それぞれのエマルション組成物の、1ヶ月間保存後の1%希釈液を、高さ5cm以上の容器に、容器の底部から液面までが4cmになるようにとり、液面から垂直・上方の位置から容器底部に向かって試料液越しに目視した。このようにして、容器底部を目視できるかどうかを透明性の評価として、下記の基準に従ってそれぞれ評価し、その結果を下記表5に記した。
【0110】
<評価基準>
×:底部が見えない。
△:底部がぼんやりと見える。
○:底部がはっきり見える。
【0111】
【表5】

【0112】
以上のように、高融点カロチノイドを油相に含有し、更に、ポリグリセリン脂肪酸エステルと、ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル)と、を特定の含有比((A)/(B)=2.5〜10)で水相に含有する実施例のエマルション組成物は、いずれも、保存前の粒子径が小さく(100μm以下)、また、2週間、1ヶ月の保存後においても、粒子径の増大が抑制され、粒子径を小さく保持できることが分かる。
また、表5に示されるように、実施例の各エマルジョン組成物は、精製水を加えて1%希釈液を調製した場合に、非常に高い透明性を目視により確認できることが分かる。透明性はエマルジョン組成物中の粒子の粒子径と相関があり、粒子が好ましくは120nm以下、最も好ましくは100nm以下において高い透明性を確認することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルに含有された状態で検出される融点が100℃以上であるカロチノイドを含む油相と、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び該ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤を含む水相と、から構成され、該ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量(A)と、該ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤の含有量(B)と、の質量比(A)/(B)が2.5〜10の範囲であり、粒子径が200nm以下であるエマルション組成物。
【請求項2】
0.1質量%〜5質量%の範囲で前記カロチノイドを含み、かつ、0.1質量%〜20質量%の範囲で前記ポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、かつ、0.01質量%〜8質量%の範囲で前記ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤を含む請求項1に記載のエマルション組成物。
【請求項3】
前記カロチノイドがリコピンである請求項1又は請求項2に記載のエマルション組成物。
【請求項4】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びポリソルベート類からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【請求項5】
更に酸化防止剤を含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【請求項6】
更に多価アルコールを含有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【請求項7】
前記粒子径が100nm以下である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のエマルション組成物を含有する食品。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のエマルション組成物を含有する化粧品。

【公開番号】特開2010−168285(P2010−168285A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9688(P2009−9688)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】