説明

エマルション組成物およびその製造方法、ならびに化粧品

【課題】本発明は、アスタキサンチン類の皮膚への浸透性に優れたエマルション組成物およびその製造方法、ならびに化粧品を提供する。
【解決手段】油相中にオキアミ由来のアスタキサンチン類とホスファチジルコリンとを含有し、前記ホスファチジルコリンの油相中における含有量が0.1質量%〜10質量%でり、全油性成分量に対して質量比で0.5倍を超え、2倍以下の水溶性乳化剤を含むエマルション組成物である。更に酸化防止剤を含有することが好ましく、乳化粒子は、粒子径が200nm以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルション組成物およびその製造方法、ならびに化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、皮膚老化防止効果等を目的として、化粧品や医薬品にカロチノイド等の油性成分を添加することが行われてきた(例えば、特許文献1、参照)。カロチノイドの中でも、アスタキサンチンは、皮膚老化防止効果、抗酸化効果に優れ、アスタキサンチンに特に注目した化粧品も開示されている(例えば、特許文献2及び特許文献3、参照)。
【0003】
皮膚老化防止効果や抗酸化効果等が発揮されるためには、アスタキサンチン等の薬効成分が皮膚に十分に浸透する必要がある。そのために、アスタキサンチン等の油性成分を乳化粒子にし、乳化物を皮膚等に塗布することが知られている。しかしながら、アスタキサンチンの皮膚浸透性については十分な検討がされておらず、化粧品中のアスタキサンチン含有量が多くても、皮膚への浸透量が十分ではないという問題があった。
【0004】
例えば、前記特許文献2においては、アスタキサンチンを含有する化粧料として、アスタキサンチンのほかに、高度不飽和脂肪酸とリン脂質とを同時に含む化粧料が開示されている。しかしながら、この化粧料において、リン脂質とアスタキサンチンを含有させる目的は、高度不飽和脂肪酸の酸化防止であり、アスタキサンチンの皮膚浸透性については十分な検討がなされていない。また、前記特許文献3においては、オキアミ由来のアスタキサンチンを用いたシャンプー、化粧水、エモリエントクリーム等を開示しているが、これらシャンプー等の匂い安定性、色調安定性を目的としているにすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−518707号公報
【特許文献2】特開平8−245335号公報
【特許文献3】特開平5−155736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アスタキサンチン類の皮膚への浸透性に優れたエマルション組成物およびその製造方法、ならびに化粧品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記実情に鑑み本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は下記の手段により達成されるものである。
【0008】
<1> 油相中にオキアミ由来のアスタキサンチン類とホスファチジルコリンとを含有し、前記ホスファチジルコリンの油相中における含有量が0.1質量%〜10質量%であり、全油性成分量に対して質量比で0.5倍を超え、2倍以下の水溶性乳化剤を含むエマルション組成物である。
【0009】
<2> 水溶性乳化剤の含有量は、エマルション組成物中の全リン脂質量に対して質量比で5倍を超え、50倍以下である<1>に記載のエマルション組成物である。
【0010】
<3> 粒子径が200nm以下である<1>または<2>に記載のエマルション組成物である。
【0011】
<4> 粒子径が48nm〜150nmである<3>に記載のエマルション組成物である。
【0012】
<5> 油相中に、更に酸化防止剤を含有する<1>〜<4>のいずれか1つに記載のエマルション組成物である。
【0013】
<6> <1>〜<5>の何れか1つに記載のエマルション組成物を含有する化粧品である。
【0014】
<7> <1>〜<5>の何れか1つに記載のエマルション組成物の製造方法であって、
a)水性媒体と、全油性成分量に対して質量比で0.5倍を超え、2倍以下の水溶性乳化剤とを混合して、水相を得る水相調製工程と、b)オキアミ由来のアスタキサンチン類と、ホスファチジルコリンとを、ホスファチジルコリンの油相中における含有量が0.1質量%〜10質量%となるように混合して、油相を得る油相調製工程と、c)前記水相と前記油相とを、100MPa〜300MPaで高圧乳化する乳化工程とを含むエマルション組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アスタキサンチンの皮膚への浸透性に優れたエマルション組成物およびその製造方法、ならびに化粧品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<エマルション組成物>
本発明のエマルション組成物は、油相中にオキアミ由来のアスタキサンチン類とホスファチジルコリンとを含有し、前記ホスファチジルコリンの油相中における含有量が0.1質量%〜10質量%であり、全油性成分量に対して質量比で0.5倍を超え、2倍以下の水溶性乳化剤を含む。
オキアミ由来のアスタキサンチン類を含有する油相に対してホスファチジルコリンを特定量含有することで、油相と皮膚の細胞間脂質とのなじみを良くすることができる。この結果、皮膚浸透性の良いオキアミ由来のアスタキサンチンの皮膚浸透性を、更に向上させることができる。
【0017】
[アスタキサンチン類]
本発明のエマルション組成物は、その油相中に、オキアミ由来のアスタキサンチン類を含有する。前記アスタキサンチン類とは、アスタキサンチン及び/又はアスタキサンキチンのエステル等の誘導体をいう。
オキアミ由来のアスタキサンチン類は、他の天然物由来のアスタキサンチン、例えば、ヘマトコッカス藻由来のアスタキサンチン類とは組成が異なるものである。すなわち、アスタキサンチンには、ジエステル体、モノエステル体、フリー体が存在するが、オキアミ由来のアスタキサンチンは、特に皮膚浸透性が高いジエステル体を多く含有する(モノエステル体:34質量%、ジエステル体:46質量%、フリー体:20質量%)。
したがって、ジエステル体を多く含むオキアミ由来のアスタキサンチン類を含有する本発明のエマルション組成物は、アスタキサンチン類による酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果などを効率よく発揮させることができる。
【0018】
前記オキアミには、南極オキアミ(euphasia superba)、コオリオキアミ(Euphausia crystallorophias)、ツノナシオキアミ(euphasia pacifica)などがあり、中でも、安価に大量に捕獲できることから、南極オキアミが好ましい。
上記オキアミは、オキアミ油、オキアミ抽出物等として市販されているイタノ食研株式会社製Astax−ST等により入手可能である。
【0019】
本発明のエマルション組成物において用いられるオキアミ由来のアスタキサンチンは、前記市販のオキアミ油、オキアミ抽出物等から常法にて抽出することにより得ることができる。
本発明のエマルション組成物の製造の際には、オキアミ油、オキアミ抽出物等からアスタキサンチン類を抽出して用いてもよいし、オキアミ油、オキアミ抽出物等のまま用いてもよい。
【0020】
オキアミ由来のアスタキサンチン類は、酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果などの観点および乳化安定性の観点から、本発明のエマルション組成物中に、0.1質量%〜5質量%含まれていることが好ましく、0.2質量%〜2質量%含まれていることがより好ましい。
【0021】
本発明のエマルション組成物は、前記オキアミ由来のアスタキサンチン類のほかに、他の天然物由来のアスタキサンチン類や合成によるアスタキサンチン類を含有してもよい。
【0022】
[他の油性成分]
本発明のエマルション組成物はさらに前記アスタキサンチン類のほかに、他の油性成分を含有していてもよい。
本発明で使用することのできる前記他の油性成分としては、水性媒体に溶解せず、油性媒体に溶解する成分であれば、特に限定は無いが、前記アスタキサンチン類以外の他のカロチノイド類、トコフェロール等の油溶性ビタミンを含む酸化防止剤(ラジカル捕捉剤)や、不飽和脂肪酸類、油脂類、ユビキノン類等が好ましく用いられる。
【0023】
(他のカロチノイド類)
前記アスタキサンチン類以外の他のカロチノイド類としては、下記のものを挙げることができる。
例えば、天然色素を含むカロチノイド類は、黄色から赤のテルペノイド類の色素であり、植物類、藻類、及びバクテリアのものを含む。
また、天然由来のものに限定されず、常法に従って得られるものであればいずれのものも、本発明における他のカロチノイドに含まれる。例えば、後述のカロチノイド類のカロチン類の多くは合成によっても製造されており、市販のβ−カロチンの多くは合成により製造されている。
【0024】
前記他のカロチノイド類としては、炭化水素類(カロチン類)及びそれらの酸化アルコール誘導体類(キサントフィル類)が挙げられ、例えば、アクチニオエリスロール、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロチン、β−カロチン、”カロチン”(α−及びβ−カロチン類の混合物)、γ−カロチン、β−クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ビオラキサンチン、ゼアキサンチン、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類が挙げられる。
【0025】
カロチノイド類の多くは、シス及びトランス異性体の形で天然に存在するが、合成物はしばしばラセミ混合物である。
カロチノイド類は一般に植物素材から抽出することができる。これらのカロチノイド類は種々の機能を有しており、例えば、マリーゴールドの花弁から抽出するルテインは家禽の餌の原料として広く使用され、家禽の皮フ及び脂肪並びに家禽が産む卵に色を付ける機能がある。
【0026】
(不飽和脂肪酸類)
前記他の油性成分における不飽和脂肪酸類としては、一価不飽和脂肪酸(ω−9、オレイン酸など)、多価不飽和脂肪酸(ω−3、ω−6)が挙げられDHA,EPA、アルファリノレン酸(亜麻仁油)が好ましい。
飽和脂肪酸類の好ましい態様である多価脂肪酸のうち、ω−3油脂類としては、リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)並びにこれらを含有する魚油などを挙げることができる。
このうちDHAは、ドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic acid)の略称であり、6つの二重結合を含む22個の炭素鎖をもつカルボン酸(22:6)の総称であるが、通常は生体にとって重要な4、7、10、13、16、19位に全てシス型の二重結合をもつ。
【0027】
(油脂類)
ω−3油脂類以外の油脂としては、常温で、液体の油脂(脂肪油)及び固体の油脂(脂肪)が挙げられる。
前記液体の油脂としては、例えばオリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、月見草油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルチミン酸グリセリン、サラダ油、サフラワー油(ベニバナ油)、パーム油、ココナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、ウォルナッツ油、グレープシード油、スクワレン、スクワラン等が挙げられる。
また、前記固体の油脂としては、牛脂、硬化牛脂、牛脚脂、牛骨脂、ミンク油、卵黄油、豚脂、馬脂、羊脂、硬化油、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム硬化油、モクロウ、モクロウ核油、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
上記の中でも、エマルション組成物の粒子径、安定性の観点から、中鎖脂肪酸トリグリセライドであるココナッツ油が好ましく用いられる。
【0028】
本発明において、前記油脂は市販品を用いることができる。また、本発明において、前記油脂は1種単独で用いても混合して用いてもよい。
【0029】
(酸化防止剤)
本発明のエマルション組成物は、更に、ラジカル捕捉の機能を有する脂溶性の酸化防止剤(ラジカル捕捉剤)を含有することが好ましい。
酸化防止剤は、1種単独で用いても、また、他の油性成分の酸化を防止するために併用して用いることも好ましい態様である。
【0030】
前記酸化防止剤は、ラジカルの発生を抑えるとともに、生成したラジカルをできる限り速やかに捕捉し、連鎖反応を断つ役割を担う添加剤である(出典:「油化学便覧 第4版」、日本油化学会編 2001)。
【0031】
前記酸化防止剤としての機能を確認する直接的な方法としては、試薬と混合して、ラジカルを捕捉する様子を分光光度計やESR(電子スピン共鳴装置)によって測定する方法が知られている。これらの方法では、試薬として、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)や、ガルビノキシルラジカルが使用される。
本発明においては、以下の実験条件下で、油脂の自動酸化反応を利用して、油脂の過酸化物価(POV値)を60meq/kgに引き上げるまでに要する時間が、ブランクに対し2倍以上である化合物を「酸化防止剤」と定義する。油脂の過酸化物価(POV値)は常法により測定する。
【0032】
<条件>
油脂:オリーブ油
検体添加量:油脂に対し0.1質量%
試験方法:試料を190℃にて加熱し、時間を追ってPOV値を常法により測定し、60meq/kgとなる時間を算出した。
【0033】
本発明における酸化防止剤は、エマルションの酸化に対する安定性の観点から、前記POV値60meq/kgになるまでに要する時間がブランクに対し5倍以上である酸化防止剤が好ましい。
【0034】
本発明の酸化防止剤として使用できる化合物は、「抗酸化剤の理論と実際」(梶本著、三書房 1984)や、「酸化防止剤ハンドブック」(猿渡、西野、田端著、大成社 1976)に記載の各種酸化防止剤のうち、ラジカル捕捉剤として機能するものであればよく、具体的には、フェノール性OHを有する化合物、フェニレンジアミン等のアミン系化合物、また、アスコルビン酸及びエリソルビン酸の油溶化誘導体等を挙げることができる。
【0035】
エマルション組成物における酸化防止剤の含有量は一般的には0.001質量%〜20.0質量%であり、好ましくは0.01質量%〜10.0質量%、より好ましくは0.1質量%〜5.0質量%である。
以下に好ましい酸化防止剤を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
前記フェノール性OHを有する化合物として、ポリフェノール類(例えば、カテキン)、グアヤク脂、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、没食子酸エステル類、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、ビタミンE類およびビスフェノール類等が挙げられる。没食子酸エステル類として、没食子酸プロピル、没食子酸ブチルおよび没食子酸オクチルが挙げられる。
【0037】
アミン系化合物としてフェニレンジアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミンまたは4−アミノ−p−ジフェニルアミンが挙げられ、ジフェニル−p−フェニレンジアミンまたは4−アミノ−p−ジフェニルアミンがより好ましい。
【0038】
アスコルビン酸、エリソルビン酸の油溶化誘導体としては、ステアリン酸L−アスコルビルエステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸エリソルビルエステル、テトライソパルミチン酸エリソルビルエステル、などが挙げられる。
【0039】
以上の中でも、安全性、及び、酸化防止の機能に優れる観点から、特にビタミンE類が好ましく用いられる。
ビタミンE類としては、特に限定されず、例えばトコフェロール及びその誘導体からなる化合物群、並びにトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群から選ばれるものを挙げることができる。これらは単独で用いても、複数併用して用いてもよい。またトコフェノール及びその誘導体からなる化合物群とトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群からそれぞれ選択されたものを組み合わせて使用してもよい。
【0040】
トコフェロール及びその誘導体からなる化合物群としては、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等が含まれる。これらの内で、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、及び、これらの混合物(ミックストコフェロール)がより好ましい。また、トコフェロール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。
トコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群としては、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等が含まれる。また、トコトリエノール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。トコトリエノールは麦類、米糠、パーム油等に含まれるトコフェロール類似化合物で、トコフェロールの側鎖部分に二重結合が3個含まれ、優れた酸化防止性能を有する。
【0041】
これらのビタミンE類は、油溶性酸化防止剤として本エマルション組成物の特に油相に含まれていることが、効果的に油性成分の酸化防止機能を発揮することができるため好ましい。上記ビタミンE類の中でも酸化防止効果の観点から、トコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群から選択されたものを少なくとも1種を含有することが更に好ましい。
【0042】
(ユビキノン類)
ユビキノン類としては、コエンザイムQ10のようなコエンザイムQ類等が挙げられる。コエンザイムQ10は、「ユビデカレノン」として日本薬局方に記載されている補酵素の一種であり、ユビキノン10、補酵素UQ10等と呼ばれることもある。自然界においては、酵母、鯖、鰯、小麦胚芽等の天然物に多く含まれており、熱水、含水アルコール、アセトン等の溶媒によってコエンザイムQ10を抽出することができる。工業的にも製造可能であり一般的には発酵法や合成法が知られている。本発明で使用されるコエンザイムQ10は、天然物から抽出されたものであってもよく、工業的に合成されたものであってもよい。また、コエンザイムQ10として市販品を使用してもよく、日清ファルマ社製のコエンザイムQ10や、日本油脂社製のコエンザイムQ10粉末等を挙げることができる。
【0043】
本発明のエマルション組成物における全油性成分の含有量は、エマルション組成物の応用、及び、乳化粒子径・乳化安定性の観点から、好ましくは0.1質量%〜50質量%、より好ましくは0.5質量%〜25質量%、更に好ましくは0.2質量%〜10質量%である。
全油性成分の含有量を、0.1質量%以上とすると、有効成分の機能を発現し易くなるため、エマルション組成物を化粧品へ応用し易くなり、50質量%以下であると、乳化粒子径の増大、乳化安定性の悪化が生じ難くなる。
【0044】
[ホスファチジルコリン]
本発明のエマルション組成物は、油相の全質量に対して0.1質量%〜10質量%のホスファチジルコリンを含有する。
これにより、エマルション組成物の油相と皮膚の細胞間脂質とのなじみを改良し、オキアミ由来のアスタキサンチンの皮膚浸透性を更に向上させることができる。
また、ホスファチジルコリンの油相中における含有量を10質量%以下とすることによって、ホスファチジルコリンがエマルション組成物中に析出することを抑制することができ、上述したオキアミ由来のアスタキサンチンの皮膚浸透性を損なうことがない。
ホスファチジルコリンの含有量は、油相の全質量に対して0.5質量%〜5質量%であることが好ましく、1質量%〜3質量%であることが更に好ましい。
【0045】
本発明のエマルション組成物では、アスタキサンチンとして皮膚浸透性の高いオキアミ由来のアスタキサンチンを用い、さらに上記の特定範囲で油相中にホスファチジルコリンを含むこととなる。したがって、アスタキサンチンの皮膚浸透性に優れ、本発明のエマルション組成物を化粧料等に少量用いるだけでも、アスタキサンチンを十分に吸収可能となる。
【0046】
ホスファチジルコリンは、天然成分から抽出することによっても、合成することによっても得ることができる。前記天然成分としては、大豆レシチン、卵黄レシチン等が挙げられるが、中でも、生産性の観点から、大豆レシチンが好ましい。
前記ホスファチジルコリンは、大豆レシチン等のリン脂質に含まれた状態で用いてもよいし、ホスファチジルコリン以外の他のリン脂質を併せて用いてもよい。
【0047】
[リン脂質]
上述したホスファチジルコリンを含むリン脂質および前記他のリン脂質について説明する。
リン脂質とは、複合脂質の内、脂肪酸、アルコール、燐酸、窒素化合物からなるエステルで、リン酸エステルおよび脂肪酸エステルを有する一群であり、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質をいう。以下、詳細に説明する。
【0048】
前記グリセロリン脂質としては、例えば、ホスファチジン酸、ビスホスアチジン酸、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセリン、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等が挙げられ、これらを含む大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物由来のものや、卵黄、牛等の動物由来のもの及び大腸菌等の微生物等由来の各種レシチンを挙げることができる。
前記スフィンゴリン脂質としては、例えば、スフィンゴミエリン等を挙げることができる。
【0049】
また、本発明においては、グリセロリン脂質として、酵素分解したグリセロリン脂質を使用することができる。
例えば、前記レシチンを酵素分解したリゾレシチン(酵素分解レシチン)は、グリセロリン脂質の1位または2位に結合した脂肪酸(アシル基)のいずれか一方が失われたものである。脂肪酸基を1本にすることにより、レシチンの親水性を改善し、水に対する乳化性、分散性を向上させることができる。
リゾレシチンは、酸、又はアルカリ触媒によるレシチンの加水分解により得られるが、ホスホリパーゼA1、又はA2を用いたレシチンの加水分解により得ることもできる。
このようなリゾレシチンに代表されるリゾ化合物を化合物名で示すと、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルグリセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルメチルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン(リゾレシチン)、リゾホスファチジルセリン等が挙げられる。
【0050】
また更に、上記のレシチンに代表されるグリセロリン脂質は、水素添加、又はヒドロキシル化されたものも、本発明において用いることができる。
前記水素添加は、例えば、レシチンを触媒の存在下に水素と反応させることにより行われ、脂肪酸部分の不飽和結合が水素添加される。水素添加により、レシチンの酸化安定性が向上する。
また、前記ヒドロキシル化は、レシチンを高濃度の過酸化水素と酢酸、酒石酸、酪酸などの有機酸と共に加熱することにより、脂肪酸部分の不飽和結合が、ヒドロキシル化される。ヒドロキシル化により、レシチンの親水性が改良される。
これらの水素添加、ヒドロキシル化されたレシチンは、化粧品用途への応用が特に好ましい。
【0051】
上記の中でも、乳化安定性の点で、グリセロリン脂質であるレシチン、リゾレシチン、が好ましく、更に、レシチンが好ましい。
前記レシチンは、分子内に親水基と疎水基を有していることから、従来より、医薬品、化粧品分野で、広く乳化剤として使用されている。
【0052】
前記レシチンの純度60質量%以上のものが産業的にはレシチンとして利用されているが、本発明においては、一般に「高純度レシチン」と称されるレシチン純度80質量%以上のものが好ましく、より好ましくは90質量%以上のものである。
このレシチン純度(質量%)は、レシチンがトルエンに溶解しやすくアセトンに溶解しない性質を利用して、トルエン不溶物とアセトン可溶物の重量を差し引くことにより求められる。
高純度レシチンは、リゾレシチンに比べて親油性が高く、そのためレシチンと油性成分との相溶性が高くなり、乳化安定性を向上させていると考えられる。
【0053】
本発明で用いるリン脂質は、前記ホスファチジルコリンを含め、単独又は複数種の混合物の形態で用いることが出来る。
【0054】
また、アスタキサンチンの皮膚浸透性の観点から、オキアミ由来のアスタキサンチンとホスファチジルコリンとの割合(質量比;オキアミ由来のアスタキサンチン/ホスファチジルコリン)は、50/1〜0.5/1であることが好ましく、10/1〜5/1であることがより好ましく、3/1〜1/1であることが更に好ましい。
【0055】
[界面活性剤(水溶性乳化剤)]
次に、本発明のエマルション組成物に使用される界面活性剤について説明する。
本発明における界面活性剤としては、水性媒体に溶解する水溶性乳化剤(親水性の界面活性剤)がエマルション組成物中の油相/水相の界面張力を大きく下げることができ、その結果、粒子径を細かくすることができる点で好ましい。
本発明における界面活性剤としては、乳化安定性の観点から、HLB8以上のものが好ましく、10以上のものがより好ましく、12以上のものが特に好ましい。またHLB値の上限値は、特に限定されないが、一般的には、20以下であり、18以下が好ましい。
【0056】
ここで、HLBは、通常界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば川上式等が使用できる。本発明においては、下記の川上式を採用する。
【0057】
HLB=7+11.7log(M/M
ここで、Mは親水基の分子量、Mは疎水基の分子量である。
【0058】
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の界面活性剤を得ることが出来る。
【0059】
本発明で使用することのできる界面活性剤には、カチオン性、アニオン性、両性、非イオン性の各界面活性剤を挙げることができ、非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。より好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである。また、上記の界面活性剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。
【0060】
本発明に用いられる、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が2以上、好ましくは6〜15、より好ましくは8〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸とのエステルである。ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。
これらの中でも、より好ましくは、デカグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル(HLB=13)、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル(HLB=14)、デカグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=16)などである。
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL DGMS,NIKKOL DGMO−CV,NIKKOL DGMO−90V,NIKKOL DGDO,NIKKOL DGMIS,NIKKOL DGTIS,NIKKOL Tetraglyn 1−SV,NIKKOL Tetraglyn 1−O,NIKKOL Tetraglyn 3−S,NIKKOL Tetraglyn 5−S,NIKKOL Tetraglyn 5−O,NIKKOL Hexaglyn 1−L,NIKKOL Hexaglyn 1−M,NIKKOL Hexaglyn 1−SV,NIKKOL Hexaglyn 1−O,NIKKOL Hexaglyn 3−S,NIKKOL Hexaglyn 4−B,NIKKOL Hexaglyn 5−S,NIKKOL Hexaglyn 5−O,NIKKOL Hexaglyn PR−15,NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,NIKKOL Decaglyn 2−SV,NIKKOL Decaglyn 2−ISV,NIKKOL Decaglyn 3−SV,NIKKOL Decaglyn 3−OV,NIKKOL Decaglyn 5−SV,NIKKOL Decaglyn 5−HS,NIKKOL Decaglyn 5−IS,NIKKOL Decaglyn 5−OV,NIKKOL Decaglyn 5−O−R,NIKKOL Decaglyn 7−S,NIKKOL Decaglyn 7−O,NIKKOL Decaglyn 10−SV,NIKKOL Decaglyn 10−IS,NIKKOL Decaglyn 10−OV,NIKKOL Decaglyn 10−MAC,NIKKOL Decaglyn PR−20,三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリグリエステル、L−7D、L−10D、M−10D、P−8D、SWA−10D、SWA−15D、SWA−20D、S−24D、S−28D、O−15D、O−50D、B−70D、B−100D、ER−60D、LOP−120DP、DS13W、DS3、HS11、HS9、TS4、TS2、DL15、DO13、太陽化学(株)社製サンソフトQ−17UL、サンソフトQ−14S、サンソフトA−141C、理研ビタミン(株)社製ポエムDO−100、ポエムJ−0021などが挙げられる。
上記の中でも、好ましくは、NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,リョートーポリグリエステル L−7D、L−10D、M−10D、P−8D、SWA−10D、SWA−15D、SWA−20D、S−24D、S−28D、O−15D、O−50D、B−70D、B−100D、ER−60D、LOP−120DPである。
【0061】
本発明に用いられる、ソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
これらのソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL SL−10,SP−10V,SS−10V,SS−10MV,SS−15V,SS−30V,SI−10RV,SI−15RV,SO−10V,SO−15MV,SO−15V,SO−30V,SO−10R,SO−15R,SO−30R,SO−15EX,第一工業製薬(株)社製の、ソルゲン30V、40V、50V、90、110、花王(株)社製の、レオドールAS−10V、AO−10V、AO−15V、SP−L10、SP−P10、SP−S10V、SP−S30V、SP−O10V、SP−O30Vなどが挙げられる。
【0062】
本発明に用いられる、ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられ、これらの中でも、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステルがより好ましい。
本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステル S−070、S−170、S−270、S−370、S−370F、S−570、S−770、S−970、S−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−070、P−170、P−1570、P−1670、M−1695、O−170、O−1570、OWA−1570、L−195、L−595、L−1695、LWA−1570、B−370、B−370F、ER−190、ER−290、POS−135、サーフホープSE COSME C−22203、C−1800、C−1801、C−1802、C−1803、C−1805、C−1807、C−1809、C−1811、C−1815、C−1816、C−1601、C−1615、C−1616、C−1416、C−1201、C−1205、C−1216、C−1215L、C−2101、C−2102、C−1701、C−1715、C−1715L、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルSS、F160、F140、F110、F90、F70、F50、F−A50、F−20W、F−10、F−A10E、コスメライクB−30、S−10、S−50、S−70、S−110、S−160、S−190、SA−10、SA−50、P−10、P−160、M−160、L−10、L−50、L−160、L−150A、L−160A、R−10、R−20、O−10、O−150等が挙げられる。
上記の中で、好ましくは、サーフホープSE COSME C−22203、C−1800、C−1801、C−1802、C−1803、C−1805、C−1807、C−1809、C−1811、C−1815、C−1816、C−1601、C−1615、C−1616、C−1416、C−1201、C−1205、C−1216、C−1215L、C−2101、C−2102、C−1701、C−1715、C−1715L、コスメライクB−30、S−10、S−50、S−70、S−110、S−160、S−190、SA−10、SA−50、P−10、P−160、M−160、L−10、L−50、L−160、L−150A、L−160A、R−10、R−20、O−10、O−150である。
【0063】
本発明に用いられるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。またポリオキシエチレンのエチレンオキサイドの長さ(付加モル数)としては、2〜100が好ましく、4〜50がより好ましい。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ポリオキシエチレンモノカプリル酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキテアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL TL−10、NIKKOL TP−10V、NIKKOL TS−10V、NIKKOL TS−10MV、NIKKOL TS−106V、NIKKOL TS−30V、NIKKOL TI−10V、NIKKOL TO−10V、NIKKOL TO−10MV、NIKKOL TO−106V、NIKKOL TO−30V、花王(株)社製の、レオドールTW−L106、TW−L120、TW−P120、TW−S106V、TW−S120V、TW−S320V、TW−O106V、TW−O120V、TW−O320V、TW−IS399C、レオドールスーパーSP−L10、TW−L120、第一工業製薬(株)社製の、ソルゲンTW−20、TW−60V、TW−80V等が挙げられる。
【0064】
本発明のエマルション組成物における前記界面活性剤の量は、全油性成分量に対して質量比で0.5倍量を超え、且つ、全リン脂質量に対して質量比で5倍量を超える量が好ましい。前記界面活性剤量を、全油性成分量に対して質量比で0.5倍量超とすることにより微細な粒子径の乳化物を得ることができ、また全リン脂質量に対して質量比で5倍量以上とすることにより乳化安定性の低下を抑制することができる。このような界面活性剤の量は、特に、アスコルビン酸、クエン酸、又はそれらの塩等が本組成物中に同時に存在する場合に、乳化安定性を顕著に良好なものとすることができる。
全油性成分量に対して前記界面活性剤量は、微細な粒子径を得るために、質量比で0.5倍量を超え、質量比で2倍量以下であるが、質量比で1.5倍量以下が好ましく、質量比で1倍量以下が特に好ましい。前記界面活性剤量が質量比で2倍量以下とすることにより、泡立ちがひどくなる等の問題がなくなる傾向となる点で好ましい。
また、全リン脂質量に対して界面活性剤量は、乳化安定性を良好とするために、質量比で5倍量を超えることが好ましいが、質量比で50倍量以下がより好ましく、質量比で30倍量以下がさらに好ましく、質量比で15倍量以下が特に好ましい。前記界面活性剤量が質量比で50倍量以下とすることにより、粒子径の微細化、乳化安定性に適切な量とすることができ、また、組成物の泡立ち等の問題発生の防止を抑制する傾向となり好ましい。
【0065】
前記界面活性剤の添加量は、エマルション組成物に対して、0.5質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜20質量%がより好ましく、2質量%〜15質量%が更に好ましい。
前記界面活性剤量を0.5質量%以上とすることにより、油相/水相間の界面張力を下げ易く、また、30質量%以下とすることにより、過剰量とすることがなくエマルション組成物の泡立ちがひどくなる等の問題を生じ難い点で好ましい。
【0066】
[多価アルコール]
本発明のエマルション組成物は、粒子径、安定性、及び防腐性の観点から多価アルコールを含有することが好ましい。
多価アルコールは、保湿機能や粘度調整機能等を有している。また、多価アルコールは、水と油脂成分との界面張力を低下させ、界面を広がりやすくし、微細で、かつ、安定な微粒子を形成しやすくする機能も有している。
以上より、エマルション組成物が多価アルコールを含有することは、エマルション粒子径をより微細化でき、かつ該粒子径が微細な粒子径の状態のまま長期に亘り安定して保持できるとの観点から好ましい。
また、多価アルコールの添加により、エマルション組成物の水分活性を下げることができ、微生物の繁殖を抑えることができる。
【0067】
本発明に使用できる前記多価アルコールとしては、二価以上のアルコールであれば特に限定されず用いることができる。
前記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、マルチトール、還元水あめ、蔗糖、ラクチトール、パラチニット、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、キシロース、グルコース、ラクトース、マンノース、マルトース、ガラクトース、フルクトース、イノシトール、ペンタエリスリトール、マルトトリオース、ソルビタン、トレハロース、澱粉分解糖、澱粉分解糖還元アルコール等が挙げられ、これらを、単独又は複数種の混合物の形態で用いることが出来る。
【0068】
また、多価アルコールとしては、その1分子中における水酸基の数が、3個以上であるものを用いるのが好ましい。これにより、水系溶媒と油脂成分との界面張力をより効果的に低下させることができ、より微細で、かつ、安定な微粒子を形成させることができる。その結果、化粧品用途の場合は皮膚浸透性をより高いものとすることができる。
【0069】
上述したような条件を満足する多価アルコールの中でも、特に、グリセリンを用いた場合、エマルションの粒子径がより小さくなり、かつ該粒子径が小さいまま長期に亘り安定して保持されるため、好ましい。
【0070】
前記多価アルコールの含有量は、前述の粒子径、安定性、防腐性に加えて、エマルション組成物の粘度の観点から、エマルション組成物に対して10質量%〜60質量%が好ましく、より好ましくは20質量%〜55質量%、さらに好ましくは30質量%〜50質量%である。
多価アルコールの含有量が10質量%以上であると、油脂成分の種類や含有量等によっても、十分な保存安定性が得られ易い点で好ましい。一方、多価アルコールの含有量が60質量%以下であると、最大限の効果が得られ、エマルション組成物の粘度が高くなるのを抑え易い点で好ましい。
【0071】
本発明のエマルション組成物は、必要に応じて、その他の添加物を添加することができる。
【0072】
本発明のエマルション組成物の粒子径は、特に限定されないが、200nm以下であることが好ましく、より好ましくは150nm以下、最も好ましくは90nm以下である。
エマルション組成物の粒子径が200nm以下とすることにより、その乳化物を用いて製造した化粧品の透明性が悪化しにくく、又、皮膚浸透性が低下し難い点で好ましい。
【0073】
本発明のエマルション組成物の粒子径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。エマルションの粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
本発明における粒径範囲および測定の容易さから、本発明のエマルション粒径測定では動的光散乱法が好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
本発明における粒子径は、前記動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)を用いて測定した値とし、具体的には、以下のよう計測した値を採用する。
前記粒子径の測定方法は、油性成分の濃度が1質量%になるように純水で希釈を行い、石英セルを用いて測定を行う。粒子径は、試料屈折率として1.600、分散媒屈折率として1.333(純水)、分散媒の粘度として純水の粘度を設定した時のメジアン径として求めることができる。
【0074】
前記エマルション組成物の粒子径は、前述したエマルション組成物の成分以外に、後述するエマルション組成物の製造方法における攪拌条件(剪断力・温度・圧力)や、油相と水相比率、などの要因によって微細化することが出来る。
【0075】
<エマルション組成物の製造方法>
本発明のエマルション組成物の製造方法は、a)水性媒体と、全油性成分量に対して質量比で0.5倍を超え、2倍以下の水溶性乳化剤とを混合して、水相を得る水相調製工程と、b)オキアミ由来のアスタキサンチン類と、ホスファチジルコリンとを、ホスファチジルコリンの油相中における含有量が0.1質量%〜10質量%となるように混合して、油相を得る油相調製工程と、c)前記水相と前記油相とを、100MPa〜300MPaで高圧乳化する乳化工程とを含む。
前記製造方法における油相、水相に含有される成分は、前述の本発明のエマルション組成物の構成成分と同様であり、好ましい例及び好ましい量も同様であり、好ましい組合せがより好ましい。
【0076】
前記乳化分散における油相と水相との比率(質量)は、特に限定されるものではないが、油相/水相比率(質量%)として0.1/99.9〜50/50が好ましく、0.5/99.5〜30/70がより好ましく、1/99〜20/80が更に好ましい。
油相/水相比率を0.1/99.9以上とすることにより、有効成分が低くならないためエマルション組成物の実用上の問題が生じない傾向となり好ましい。また、油相/水相比率を50/50以下とすることにより、界面活性剤濃度が薄くなることがなく、エマルション組成物の乳化安定性が悪化しない傾向となり好ましい。
【0077】
c)乳化工程は、100MPa〜300MPaの高圧乳化によることが必須であり、この乳化工程により、均一で微細な乳化粒子を得ることができる。高圧乳化の前後に他の条件、即ち100MPa未満での乳化や、攪拌による乳化を行なってもよい。
例えば、攪拌下で前記水相と前記油相とを混合することで1ステップ目の乳化(予備乳化)を行い、次いで、100MPa〜300MPaで乳化する2ステップ目の乳化(高圧乳化)を行うことが好ましい。このように2ステップ以上の乳化を行うことで、エマルション組成物の乳化安定性をより安定にするとともに、均一で微細な乳化粒子を得ることができる。
【0078】
前記1ステップ目の予備乳化は、具体的には、剪断作用を利用する通常の乳化装置(例えば、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサー、連続流通式剪断装置等)、超音波分散機等を用いて行なうことができる。
前記2ステップ目の高圧乳化は、高圧ホモジナイザーを用いて行なうことができる。このように、高圧ホモジナイザーを使用することで、乳化物を更に均一な微粒子の液滴に揃えることができる。
【0079】
高圧乳化の圧力は、100MPa〜300MPaであり、100MPa以上であれば、乳化粒子の微細化を充分に行なうことができ、300MPa以下であれば、エマルションを安定に製造することが出来る。エマルションの乳化粒子の粒子径および安定な製造の観点から、150MPa〜250MPaであることが好ましい。
【0080】
前記c)の乳化工程における温度条件は、特に限定されるものでないが、機能性油性成分の安定性の観点から10〜100℃であることが好ましく、取り扱う機能性油性成分の融点などにより、適宜好ましい範囲を選択することができる。
【0081】
本発明のエマルション組成物は、化粧品に広く使用することができる。ここで、化粧品としてはスキン化粧料(化粧水、美容液、乳液、クリームなど)、口紅、日焼け止め化粧料、メークアップ化粧料などを挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
また、前記本発明の化粧品には、前記本発明のエマルション組成物を含有するが、必要に応じて、化粧品に添加可能な成分を適宜添加することができる。
【0082】
化粧品などに対して用いられる本発明のエマルション組成物の添加量は、製品の種類や目的などによって異なり一概には規定できないが、製品に対して、0.01質量%〜10質量%、好ましくは、0.05質量%〜5質量%の範囲で用いることができる。
添加量が少なすぎる場合は目的の効果を出すことが出来ない場合があり、多すぎる場合は、過剰に添加されたエマルション組成物は効果の発揮に寄与することが出来ない場合がある。
本発明のエマルション組成物を、特に化粧水、美容液、乳液、クリームパック・マスク、パック、洗髪用化粧品、フレグランス化粧品、液体ボディ洗浄料、UVケア化粧品、防臭化粧品、オーラルケア化粧品等などの水性製品に使用した場合には、透明感のある製品が得られ、且つ、長期保存または滅菌処理などの苛酷条件下での不溶物の析出、沈殿またはネックリングなどの不都合な現象の発生を抑制することができる。
【0083】
<化粧品>
本発明の化粧品は、例えば、前記本発明のエマルション組成物及び必要に応じて添加可能な成分を常法により混合等して得ることができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
下記の成分を、70℃で加熱しながら1時間溶解して、水相組成物を得た。
・ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16) 33g
・モノオレイン酸デカグリセリル(HLB=12) 67g
・グリセリン 384g
・純水 300g
【0085】
また、下記成分を、70℃で加熱しながら1時間溶解して、油相組成物を得た。
・オキアミ抽出物(アスタキサンチン含有量5質量%) 150g
・ミックストコフェロール 46g
・レシチン(ホスファチジルコリン含有量17質量%) 20g
【0086】
上記水相組成物を70℃に保ったままホモジナイザー(機種名HP93、(株)エスエムテー社製)で攪拌し(10,000rpm)、前記水相組成物へ上記油相組成物を添加して撹拌を1分間継続して予備乳化を行った。
続いて、得られた予備乳化物を、アルティマイザーHJP−25005((株)スギノマシン社製)を用いて、200MPaの圧力で高圧乳化を行った。
その後、平均孔径1μmのミクロフィルターでろ過して、アスタキサンチン類含有エマルション組成物EM−01を調製した。
組成を下記表1に従った以外は全て同様にして、アスタキサンチン類含有エマルション組成物EM−02〜EM−09を得た。
【0087】
【表1】

【0088】
表1中、ショ糖ステアリン酸エステルは、三菱化学フーズ株式会社製サーフホープSE COSME C−1816(HLB=16)、モノオレイン酸デカグリセリルは、日光ケミカルズ株式会社製NIKKOL Decaglyn 1−O(HLB=12)を使用した。
オキアミ抽出物は、イタノ食研株式会社製Astax−ST、ヘマトコッカス藻抽出物は、武田紙器株式会社製ASTOTS−5O、アスタキサンチンフリー体は、和光純薬工業株式会社製の試薬を使用した。
ミックストコフェロールは、理研ビタミン株式会社製の理研Eオイル800を使用した。
レシチン(ホスファチジルコリン含有量17質量%)は、辻製油株式会社製のSLP-ペーストを、レシチン(ホスファチジルコリン含有量70質量%)は、日清オイリオグループのベイシスLS−60を使用した。
ココナッツ油は、花王株式会社製のココナードMTを使用した。
【0089】
(粒子径測定)
上記で得られたアスタキサンチン類含有エマルション組成物(EM−01〜09)1.0gを99.0gの純水に添加して、マグネッチックスターラーを用いて、10分間攪拌を行った。得られたエマルション組成物の水希釈液の粒子径を、動的光散乱粒径測定装置FPAR-1000(大塚電子株式会社製)を使用して測定した。結果は、下記表2に示す。
具体的な測定法は、前述の通りである。
【0090】
(アスタキサンチン類の皮膚浸透性評価)
ラットの皮膚を用いてアスタキサンチン類の皮膚浸透性を調べた。
詳細には、上記で得られたアスタキサンチン類含有エマルション組成物(EM−01〜09)1.0gを99.0gの純水に添加して、マグネッチックスターラーを用いて、10分間攪拌を行い、これを試験液とした。ラットの皮膚は、へアレスラットの腹部の皮膚を採取して使用した。また、レセプター液としては、30質量%のPEG400水溶液を使用した。
これらを、HANSON RESEARCH CORPORATION(U.S.A.)社製の自動経皮吸収試験機Microette Plusのフランツセルにセットし、25℃で8時間、皮膚浸透実験を行った。
【0091】
−試料の調製−
試験後のレセプター液を、クロロホルム/メタノール混合液(2/1体積比)を用いて抽出を行い、無水硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒除去後に、アセトンに溶解させた。ここに、トリス緩衝液(pH=7.0)及びコレステロールエステラーゼを加えて、37℃で120分間保持して、アステキサンチンをフリー体に変換した。更に、クロロホルム/メタノール混合液(2/1体積比)で抽出後、溶媒を除去し、下記高速液体クロマトグラフィーの移動相に溶解させた。
【0092】
−高速液体クロマトグラフィー 測定方法と測定条件−
上記で得られた試料液中のアスタキサンチン(フリー体)の定量を、高速液体クロマトグラフィーLC−20AT(株式会社島津製作所社製)を用いて行った。測定条件は、次の通りである。
検出方法 :紫外可視吸収(波長470nm)
カラム :Luna3μSilica
カラム温度:30℃
移動相 :ヘキサン/アセトン(8/2体積比)
結果は、レセプター液中のアスタキサンチン(フリー体)濃度を、下記表2に浸透性として示した。
【0093】
【表2】

【0094】
上記表2から明らかなように、本発明のアスタキサンチン類含有エマルション組成物は、乳化物の粒子径を小さくすることができ、また、アスタキサンチン類の皮膚への浸透性にも優れることが分かった。また、10質量%を超えるホスファチジルコリンを含有するE−07では、ホスファチジルコリンの析出も認められた。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相中にオキアミ由来のアスタキサンチン類とホスファチジルコリンとを含有し、前記ホスファチジルコリンの油相中における含有量が0.1質量%〜10質量%であり、全油性成分量に対して質量比で0.5倍を超え、2倍以下の水溶性乳化剤を含むエマルション組成物。
【請求項2】
前記水溶性乳化剤の含有量は、前記エマルション組成物中の全リン脂質量に対して質量比で5倍を超え、50倍以下である請求項1に記載のエマルション組成物。
【請求項3】
粒子径が200nm以下である請求項1または請求項2に記載のエマルション組成物。
【請求項4】
前記粒子径が48nm〜150nmである請求項3に記載のエマルション組成物。
【請求項5】
油相中に、更に酸化防止剤を含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のエマルション組成物を含有する化粧品。
【請求項7】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のエマルション組成物の製造方法であって、
a)水性媒体と、全油性成分量に対して質量比で0.5倍を超え、2倍以下の水溶性乳化剤とを混合して、水相を得る水相調製工程と、
b)オキアミ由来のアスタキサンチン類と、ホスファチジルコリンとを、ホスファチジルコリンの油相中における含有量が0.1質量%〜10質量%となるように混合して、油相を得る油相調製工程と、
c)前記水相と前記油相とを、100MPa〜300MPaで高圧乳化する乳化工程と
を含むエマルション組成物の製造方法。




【公開番号】特開2013−6882(P2013−6882A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227100(P2012−227100)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【分割の表示】特願2008−13579(P2008−13579)の分割
【原出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】