説明

エマルション組成物及び粉末組成物

【課題】カロチノイドの吸収効率が良好なエマルション組成物及び粉末組成物を提供する。
【解決手段】2種以上のカロチノイドを含有し、該2種以上のカロチノイドのうち最大量で含まれるカロチノイドの含有量100質量部に対し、他のカロチノイドの含有量が30質量部以上100質量部以下である油相と、水相と、を含んでなるエマルション組成物。カロチノイドとしては、アスタキサンチン、リコピン、及びルテインから選択される2種以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルション組成物、及び、それを乾燥して得られる粉末組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カロチノイドの高い機能性に着目して、カロチノイドを含有する種々の組成物が提案されている。一般にカロチノイドは難溶性の素材として広く知られていることから、通常、乳化組成物の形態が採用されている。
カロチノイドを含む乳化組成物として具体的には、水相に少なくとも1種の水溶性乳化剤を含有し、油相にトコフェロール及びレシチンを含有するカロチノイド含有エマルジョン組成物(特許文献1参照。)や、食品用カロチノイド系色素とポリグリセリン脂肪酸エステルの組成物が微粒子化され、その可視部の極大吸収波長での吸光度が1のとき、660nmにおける透過率が99%以上である食品用カロチノイド系色素可溶化液製剤(特許文献2参照)、更には、カロチノイド類を油脂に溶解してなる油相をポリグリセリン脂肪酸エステル及びレシチンの存在下に多価アルコールを含む水相に乳化してなり、かつ上記油相の平均粒子径が100nm以下であるカロチノイド含有組成物(特許文献3参照)等が知られている。
【0003】
このようなカロチノイドは、その高い機能を利用すべく、食品や化粧品への応用に関する試みも種々行われているが、前述の如く難溶性の油性成分であるため、消化管や皮膚への吸収効率の向上が望まれており、可溶化剤との併用などが試みられているが、機能性に関与しない添加物を用いることなく吸収効率を高める技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−13751号公報
【特許文献2】特開平10−120933号公報
【特許文献3】特開平9−157159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、含有されるカロチノイドの吸収効率に優れるエマルション組成物及び該エマルション組成物を用いた粉末組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべくなされた本発明の構成は以下の通りである。
<1> 2種以上のカロチノイドを含有し、該2種以上のカロチノイドのうち最大量で含まれるカロチノイドの含有量100質量部に対し、他のカロチノイドの含有量が30質量部以上100質量部以下である油相と、水相と、を含んでなるエマルション組成物。
<2> 前記カロチノイドが、アスタキサンチン、ルテイン、及び、リコピンから選ばれる2種以上である<1>に記載のエマルション組成物。
<3> 前記2種以上のカロチノイドのエマルション組成物全量に対する含有量が、いずれも0.1質量%以上10質量%以下である<1>又は<2>に記載のエマルション組成物。
<4> 前記油相の粒子径が1nm以上200nm以下である<1>〜<3>のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【0007】
<5> 更に酸化防止剤を含有する<1>〜<4>のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
<6> 更にリン脂質を含有する<1>〜<5>のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
<7> <1>〜<6>のいずれか1項に記載のエマルション組成物と賦形剤とを含有するカロチノイド含有組成物を乾燥して得られる粉末組成物。
<8> 前記賦形剤がイヌリンである<7>に記載の粉末組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カロチノイドの吸収効率が改良されたエマルション組成物及び該エマルション組成物を用いた粉末組成物を提供することができる。
本発明のエマルション組成物及び粉末組成物は、カロチノイドの吸収効率が良好であるため、食品及び化粧品に好適に用いうる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<エマルション組成物>
本発明のエマルション組成物は、油相に2種以上のカロチノイドを含有することを特徴とするものであり、油相中に含まれる2種以上のカロチノイドのうち最大量で含まれるカロチノイドの含有量100質量部に対し、他のカロチノイドの含有量が30質量部以上100質量部以下である。
本発明のエマルション組成物は、該2種以上のカロチノイドを特定比率で含有する油相を、好ましくは適切な乳化剤を含有する水相と混合することによって得られる水中油型エマルション組成物である。得られた水中油型エマルション組成物における油相、即ち、前記2種以上のカロチノイドを含む分散粒子、の粒子径は1nm以上が200nm以下であることが好ましい。
本発明の作用は明確ではないが、このように、油相中に特定比率で2種以上のカロチノイドを共存させることにより、それぞれのカロチノイド単独で含む場合に比較して、いずれのカロチノイドも吸収効率が向上することが明らかとなった。
【0010】
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本発明において組成物中の各成分の含有量は、特に断らない限り、本明細書で定義された各成分に該当する成分が当該組成物中に1つ含まれる場合には、その含有量を意味し、2つ以上含まれる場合には、その合計量を意味する。
なお、本発明のエマルション組成物は、カロチノイドを含む分散粒子が油相として水相に分散した水中油型のエマルションである。ここで、油相を構成する油相成分は、完全に溶解した油滴の状態であっても部分的に不溶の固形物の状態であってもよい。このような油滴及び固形物を総称して、本明細書では分散粒子と称する。
以下、本発明のエマルション組成物を構成する各成分について説明する。
【0011】
[2種以上のカロチノイド]
本発明のエマルション組成物は、油相(分散粒子)に、少なくとも2種のカロチノイドを含有する。
カロチノイドとして、具体的には、具体的には、リコピン、α−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン、アクチニオエリスロール、ビキシン、カンタキサンチン、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、キサントフィル類(例えば、アスタキサンチン、フコキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、カプサンチン、β−クリプトキサンチン、ビオラキサンチン等)、及びこれらのヒドロキシル又はカルボキシル誘導体が挙げられる。
【0012】
また、アスタキサンチン(エステル結合型)、カプサンチン(エステル結合型)、β−クリプトキサンチン(エステル結合型)、ルテイン(エステル結合型)、ビオラキサンチン(エステル結合型)、ゼアキサンチン(エステル結合型)、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類を用いてもよい。
【0013】
本発明のエマルション組成物には、前記カロチノイドの中から、2種以上を適宜選択して組み合わせて用いればよい。
ここで、2種以上のカロチノイドとしては、互いに異なる構造のカロチノイドであれば特に制限はないが、例えば、リコピンの異性体同士、或いは、アスタキサンチンの異性体同士、アスタキサンチンとエステル結合型アスタキサンチン、などの組み合わせよりも、アスタキサンチンとリコピン、アスタキサンチンとルテインの如く、異種のカロチノイド同士を組み合わせて用いることが効果の観点から好ましい。
【0014】
なかでも、アスタキサンチン、ルテイン、及び、リコピンから選ばれる2種以上を組み合わせることが好ましく、具体的には、アスタキサンチンとルテイン、アスタキサンチンとリコピン、ルテインとリコピン、アスタキサンチンとルテインとリコピン、などの組み合わせが好適に例示される。
【0015】
2種以上のカロチノイドの含有比率は、油相中に最大量含まれるカロチノイド(以下、適宜、「主たるカロチノイド」と称する)の含有量を100質量部としたとき、他のカロチノイドの含有量は30質量部以上100質量部以下であることを要する。従って、主たるカロチノイドが不純物として異種のカロチノイドを含む場合などは、本発明における「2種のカロチノイドの組み合わせ」には包含されない。
【0016】
以下、本発明に好適に用いられるカロチノイドについて説明する。
(アスタキサンチン)
本発明において用いられる好ましいカロチノイドの1つとして、酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果などを有し、黄色から赤色の範囲の着色料として知られるアスタキサンチン及びアスタキサンキチンのエステル等の誘導体(以下、「アスタキサンチン類」と総称することがある。)から選択された少なくとも1種が挙げられる。
アスタキサンチンは、常温で油状であるため、ハンドリング性に優れる。
【0017】
アスタキサンチンは、476nm(エタノール)、468nm(ヘキサン)に吸収極大を持つ赤色の色素でカロチノイドの一種キサントフィルに属している。アスタキサンチンの化学構造は3,3’−dihydroxy−β,β−carotene−4,4’−dione (C4052、分子量596.82)である。
【0018】
アスタキサンチンは、分子の両端に存在する環構造の3(3’)−位の水酸基の立体配置により、3S,3S’−体、3S,3R’−体(meso−体)、3R,3R’−体の三種の異性体が存在する。また、さらに分子中央の共役二重結合のcis−、trans−の異性体も存在する。例えば全cis−、9−cis体と13−cis体などの如くである。
【0019】
前記3(3’)−位の水酸基は脂肪酸とエステルを形成することができる。オキアミから得られるアスタキサンチンは、脂肪酸二個結合したジエステル、H. pluvialisから得られるものは3S,3S’−体で、脂肪酸一個結合したモノエステル体が多く含まれている。
また、Phaffia Rhodozymaより得られるアスタキサンチンは、3R,3R’−体であり、通常天然に見出される3S,3S’−体と反対の構造を持っている。また、これは脂肪酸とエステル形成していないフリー体で存在している。
【0020】
前記アスタキサンチン及びそのエステル(アスタキサンチン類)は、アスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有する天然物から分離・抽出したアスタキサンチン含有オイルとして、本発明のエマルション組成物に用いてもよい。このようなアスタキサンチン含有オイルとして、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌等を培養し、その培養物からの抽出物、南極オキアミ等からの抽出物を挙げることができる。
ヘマトコッカス藻抽出物(ヘマトコッカス藻由来色素)は、オキアミ由来の色素や、合成されたアスタキサンチンとは脂肪酸エステル体(モノエステル、ジエステルなど)の主成分の点で異なることが知られている。
【0021】
本発明において用いることができるアスタキサンチン類は、前記抽出物、また更にこの抽出物を必要に応じて適宜精製したものでもよく、また合成品であってもよい。前記アスタキサンチン類としては、ヘマトコッカス藻から抽出されたもの(ヘマトコッカス藻抽出物ともいう。)が、品質、生産性の点から特に好ましい。
【0022】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物の由来としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。
また、本発明においては、アスタキサンチンとして、広く市販されているヘマトコッカス藻抽出物を用いることができ、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−2.5 O、同−5 O、同−10 O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同 5F等、東洋酵素化学(株)製のBioAstin SCE7等が挙げられる。
【0023】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物中のアスタキサチン類の色素純分としての含有量は、好ましくは0.001〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜25質量%である。
なお、本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物は、特開平2−49091号公報記載の色素同様、色素純分としてはアスタキサンチンもしくはそのエステル体を含むが、エステル体を、一般的には50モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは90%モル以上含むものである。
これらのアスタキサンチン類は、超臨界炭酸ガスを用いて抽出したものが、製剤化したときの臭気の点でより好ましい。
【0024】
(リコピン)
本発明に用いられる好ましいカロチノイドの1つとして、リコピンが挙げられる。リコピンは、酸化防止効果、美白効果等が非常に高いことで知られ、従来、食品、化粧品、医薬品の原材料及びそれらの加工品等への添加が実施されている。
【0025】
リコピンは、化学式C4056(分子量536.87)のカロチノイドであり、カロチン類に属している。474nm(アセトン)に吸収極大を示す赤色色素である。
リコピンには、分子中央の共役二重結合のcis−、trans−の異性体も存在する。例えば、全trans−、9−cis体と13−cis体などの如くである。
【0026】
リコピンは、それを含有する天然物から分離・抽出されたリコピン含有オイルとして、本発明のエマルジョン組成物に含まれていてもよい。
リコピンは、天然においてはトマト、柿、スイカ、ピンクグレープフルーツに含まれており、上記のリコピン含有オイルはこれらの天然物から分離・抽出されたものであってもよい。
また、本発明で用いられるリコピンは、前記抽出物、また、更にこの抽出物を必要に応じて適宜精製したものでもよく、また、合成品であってもよい。
本発明においては、リコピンとしては、トマトから抽出されたものが、品質、生産性の点から特に好ましい。
【0027】
また、本発明では、広く市販されている、トマト抽出物をリコピン含有オイルとして用いることができる。このような市販のリコピン含有オイルとしては、例えば、サンブライト(株)より販売されているLyc−O−Mato 15%、Lyc−O−Mato 6%、協和発酵バイオ(株)より販売されているリコピン18等が挙げられる。
【0028】
(ルテイン)
本発明に用いられる好ましいカロチノイドの1つとして、ルテインが挙げられる。ルテインは、酸化防止効果や加齢性黄班変性症の予防効果で知られ、食品への添加が実施されている。
ルテインは、化学式C4056(分子量568.87)のカロチノイドであり、キサントフィル類に属している。445nm(アセトン)に吸収極大を示す橙色色素である。2つの水酸基にはエステル結合により脂肪酸と結合できる。
ルテイン及びそのエステル(ルテイン類)はホウレンソウやケールなどの緑葉野菜、マリーゴールド、及び卵黄などの天然物から分離・抽出されたものであってよい。本発明においては、ルテイン及びそのエステルとしては、マリーゴールドより抽出されたものが、品質、生産性の点から特に好ましい。
また、本発明では、広く市販されている、マリーゴールド抽出物をルテイン類含有オイルとして用いることができる。このような市販のルテイン類含有オイルとしては、例えば、オリザ油化(株)より販売されているルテイン−P80、協和発酵バイオ(株)より販売されているルテイン20S、ケミンジャパン(株)より販売されているFloraGLOルテイン20%等が挙げられる。
【0029】
本発明においては、カロチノイドを2種含有する場合、主たるカロチノイドの含有量〔含有量(A)〕を100質量部とした場合、他のカロチノイドの含有量〔含有量(B)〕は、30質量部以上100質量部以下であることを要する。即ち、カロチノイドを2種使用する場合、両者の含有比は質量換算で〔含有量(A)〕:〔含有量(B)〕=100:30〜100:100の範囲であり、100:50〜100:100であることが好ましく、100:70〜100:100の範囲であることがより好ましい。
また、3種のカロチノイドを含有する場合には、3種目のカロチノイドの含有量〔含有量(C)〕も、主たるカロチノイドの含有量〔含有量(A)〕100質量部に対して30質量部以上100質量部以下であることを要する。カロチノイドを3種含有する場合、含有比は質量換算で〔含有量(A)〕:〔含有量(B)〕:〔含有量(C)〕=100:30:30〜100:100:100の範囲であり、100:50:50〜100:100:100であることが好ましく、100:70:70〜100:100:100の範囲であることがより好ましい。
主たるカロチノイド100質量部に対し、他のカロチノイドの含有量が30質量部未満では、併用による吸収効率の向上効果が十分に得られない。
【0030】
複数種含まれるカロチノイドのそれぞれの含有量としては、エマルション組成物の全質量に対し0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.2質量%〜7質量%がより好ましく、0.5質量%〜5質量%が更に好ましい。
また、カロチノイドの総含有量としては、エマルション組成物の全質量に対し0.2質量%〜20質量%が好ましく、0.4質量%〜14質量%がより好ましく、1質量%〜10質量%が更に好ましい。
【0031】
[その他の油性成分]
また、本発明において、油相には、前述の2種以上のカロチノイド以外の油性成分を含有していてもよい。その他の油性成分としては、水性媒体に溶解せず、油性媒体に溶解する成分であれば、特に限定はない
以下、その他の油性成分について説明する。
【0032】
本発明において、その他の油性成分としては、リン脂質、不飽和脂肪酸類、ココナッツ油等の油脂類、トコフェロール等の油溶性ビタミンを含む酸化防止剤、ユビキノン類が好ましく用いられる。
【0033】
(不飽和脂肪酸類)
その他の油性成分における不飽和脂肪酸類としては、一価不飽和脂肪酸(ω−9、オレイン酸など)、多価不飽和脂肪酸(ω−3、ω−6)が挙げられる。
多価不飽和脂肪酸のうち、ω−3油脂類としては、リノレン酸(亜麻仁油等も含む)が好ましい。)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、及びこれらを含有する魚油などを挙げることができる。
このうちDHAは、ドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic acid)の略称であり、6つの二重結合を含む22個の炭素鎖をもつカルボン酸(22:6)の総称であるが、通常は、生体にとって重要な4、7、10、13、16、19位に全てシス型の二重結合をもつため、有用である。
【0034】
(油脂類)
その他の油性成分におけるω−3油脂類以外の油脂類としては、常温で、液体の油脂(脂肪油)及び固体の油脂(脂肪)が挙げられる。
液体の油脂としては、前述した高融点カロチノイドの融点を検出する際に用いるオイル以外に、トリグリセリン及び、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルチミン酸グリセリン等の中鎖脂肪酸トリグリセライドなどが挙げられる。例えば、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、月見草油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、サラダ油、サフラワー油(ベニバナ油)、パーム油、ココナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、ウォルナッツ油、グレープシード油等が挙げられる。
また、固体の油脂としては、牛脂、硬化牛脂、牛脚脂、牛骨脂、ミンク油、卵黄油、豚脂、馬脂、羊脂、硬化油、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム硬化油、モクロウ、モクロウ核油、硬化ヒマシ油、ワックス類、高級アルコール類等が挙げられる。
上記の中でも、エマルション組成物の粒子径、安定性の観点から、中鎖脂肪酸トリグリセライドが好ましく、具体的には、ココナッツ油が、好ましく用いられる。
【0035】
本発明において、油脂類は市販品を用いることができる。
また、本発明において、油脂類は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
(酸化防止剤)
本発明におけるその他の油性成分として、ラジカル捕捉の機能を有する脂溶性の酸化防止剤を含有することが好ましい。
酸化防止剤は油性成分として1種単独で用いても、また、他の油性成分の酸化を防止するために併用して用いることも好ましい態様である。
【0037】
酸化防止剤は、ラジカルの発生を抑えるとともに、生成したラジカルをできる限り速やかに捕捉し、連鎖反応を断つ役割を担う添加剤である(出典:「油化学便覧 第4版」、日本油化学会編 2001)。
【0038】
酸化防止剤としての機能を確認する直接的な方法としては、試薬と混合して、ラジカルを捕捉する様子を分光光度計やESR(電子スピン共鳴装置)によって測定する方法が知られている。これらの方法では、試薬として、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)や、ガルビノキシルラジカルが使用される。
本発明においては、以下の実験条件下で、油脂の自動酸化反応を利用して、油脂の過酸化物価(POV値)を60meq/kgに引き上げるまでに要する時間が、ブランクに対し2倍以上である化合物を「酸化防止剤」と定義する。油脂の過酸化物価(POV値)は常法により測定する。
【0039】
<条件>
油脂:オリーブ油
検体添加量:油脂に対し0.1質量%
試験方法:試料を190℃にて加熱し、時間を追ってPOV値を常法により測定し、60meq/kgとなる時間を算出した。
本発明における酸化防止剤は、エマルションの酸化に対する安定性の観点から、前記POV値60meq/kgになるまでに要する時間がブランクに対し5倍以上である酸化防止剤が好ましい。
【0040】
本発明の酸化防止剤として使用できる化合物は、「抗酸化剤の理論と実際」(梶本著、三書房 1984)や、「酸化防止剤ハンドブック」(猿渡、西野、田端著、大成社 1976)に記載の各種酸化防止剤のうち、酸化防止剤として機能するものであればよく、具体的には、フェノール性OHを有する化合物、フェニレンジアミン等のアミン系化合物、また、アスコルビン酸及びエリソルビン酸の油溶化誘導体等を挙げることができる。
以下に好ましい酸化防止剤を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
フェノール性OHを有する化合物として、ポリフェノール類(例えば、チャ抽出物に含まれるカテキン)、グアヤク脂、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、没食子酸エステル類、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、カルシノン酸類(ローズマリー抽出物など)、フェルラ酸、ビタミンE類及びビスフェノール類等が挙げられる。没食子酸エステル類として、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル及び没食子酸オクチルが挙げられる。
【0042】
アミン系化合物として、フェニレンジアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、又は4−アミノ−p−ジフェニルアミンが挙げられ、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、又は4−アミノ−p−ジフェニルアミンがより好ましい。
【0043】
アスコルビン酸、エリソルビン酸の油溶化誘導体としては、ステアリン酸L−アスコルビルエステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸エリソルビルエステル、テトライソパルミチン酸エリソルビルエステル、などが挙げられる。
【0044】
以上の中でも、安全性、及び、酸化防止の機能に優れる観点から、特に、ビタミンE類が好ましく用いられる。
ビタミンE類としては、特に限定されず、例えば、トコフェロール及びその誘導体からなる化合物群、並びにトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群から選ばれるものを挙げることができる。これらは単独で用いても、複数併用して用いてもよい。またトコフェノール及びその誘導体からなる化合物群とトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群からそれぞれ選択されたものを組み合わせて使用してもよい。
【0045】
トコフェロール及びその誘導体からなる化合物群としては、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等が含まれる。これらの内で、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、及び、これらの混合物(ミックストコフェロール)がより好ましい。また、トコフェロール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。
トコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群としては、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等が含まれる。また、トコトリエノール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。トコトリエノールは麦類、米糠、パーム油等に含まれるトコフェロール類似化合物で、トコフェロールの側鎖部分に二重結合が3個含まれ、優れた酸化防止性能を有する。
【0046】
これらのビタミンE類は、油溶性酸化防止剤として本発明のエマルション組成物の特に油相に含まれていることが、効果的に油性成分の酸化防止機能を発揮することができるため好ましい。上記ビタミンE類の中でも酸化防止効果の観点から、トコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群から選択されたものを少なくとも1種を含有することが更に好ましい。
【0047】
エマルション組成物における酸化防止剤の総含有量は、一般的には、該エマルション組成物に対して0.001質量%〜20.0質量%であり、好ましくは0.01質量%〜10.0質量%、より好ましくは0.1質量%〜5.0質量%である。
【0048】
(ユビキノン類)
本発明におけるその他の油性成分として、ユビキノン類を用いてもよい。ユビキノン類としては、コエンザイムQ10のようなコエンザイムQ類等が挙げられる。コエンザイムQ10は、「ユビデカレノン」として日本薬局方に記載されている補酵素の一種であり、ユビキノン10、補酵素UQ10等と呼ばれることもある。自然界においては、酵母、鯖、鰯、小麦胚芽等の天然物に多く含まれており、熱水、含水アルコール、アセトン等の溶媒によってコエンザイムQ10を抽出することができる。工業的にも製造可能であり一般的には発酵法や合成法が知られている。本発明で使用されるコエンザイムQ10は、天然物から抽出されたものであってもよく、工業的に合成されたものであってもよい。また、コエンザイムQ10として市販品を使用してもよく、日清ファルマ社製のコエンザイムQ10や、日本油脂社製のコエンザイムQ10粉末等を挙げることができる。
【0049】
(リン脂質)
本発明のエマルション組成物はその他の成分としてリン脂質を含有していてもよい。
本発明において用いられるリン脂質とは、複合脂質の内、脂肪酸、アルコール、リン酸からなるエステルで、リン酸エステル及び脂肪酸エステルを有する一群であり、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質をいう。
以下、詳細に説明する。
【0050】
本発明で用いることができるリン脂質であるグリセロリン脂質としては、例えば、ホスファチジン酸、ビスホスアチジン酸、レシチン(ホスファチジルコリン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセリン、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等が挙げられ、これらを含む大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物由来のものや、卵黄、牛等の動物由来のもの及び大腸菌等の微生物等由来の各種レシチンを挙げることができる。
本発明で用いることができるリン脂質であるスフィンゴリン脂質としては、例えば、スフィンゴミエリン等を挙げることができる。
【0051】
また、本発明においては、グリセロリン脂質として、酵素分解したグリセロリン脂質を使用することができる。
例えば、前記レシチンを酵素分解したリゾレシチン(酵素分解レシチン)は、グリセロリン脂質の1位又は2位に結合した脂肪酸(アシル基)のいずれか一方が失われたものである。脂肪酸基を1本にすることにより、レシチンの親水性を改善し、水に対する乳化性、分散性を向上させることができる。
リゾレシチンは、酸、又はアルカリ触媒によるレシチンの加水分解により得られるが、ホスホリパーゼA、又はAを用いたレシチンの加水分解により得ることもできる。
このようなリゾレシチンに代表されるリゾ化合物を化合物名で示すと、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルグリセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルメチルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン(リゾレシチン)、リゾホスファチジルセリン等が挙げられる。
【0052】
また更に、上記のレシチンに代表されるグリセロリン脂質は、水素添加、又はヒドロキシル化されたものも、本発明において用いることができる。
前記水素添加は、例えば、レシチンを触媒の存在下に水素と反応させることにより行われ、脂肪酸部分の不飽和結合が水素添加される。水素添加により、レシチンの酸化安定性が向上する。
また、前記ヒドロキシル化は、レシチンを高濃度の過酸化水素と酢酸、酒石酸、酪酸などの有機酸と共に加熱することにより、脂肪酸部分の不飽和結合が、ヒドロキシル化される。ヒドロキシル化により、レシチンの親水性が改良される。
これらの水素添加、ヒドロキシル化されたレシチンは、化粧品用途への応用が特に好ましい。
【0053】
上記の中でも、乳化安定性の点で、グリセロリン脂質であるレシチン、リゾレシチン、が好ましく、更に、レシチンが好ましい。
前記レシチンは、分子内に親水基と疎水基を有していることから、従来、食品、医薬品、化粧品分野で、広く乳化剤として使用されている。
【0054】
前記レシチンの純度60質量%以上のものが産業的にはレシチンとして利用されているが、本発明においては、一般に「高純度レシチン」と称されるレシチン純度80質量%以上のものが好ましく、より好ましくは90質量%以上のものである。
このレシチン純度(質量%)は、レシチンがトルエンに溶解しやすくアセトンに溶解しない性質を利用して、トルエン不溶物とアセトン可溶物の質量を差し引くことにより求められる。
高純度レシチンは、リゾレシチンに比べて親油性が高く、そのためレシチンと油性成分との相溶性が高くなり、乳化安定性を向上させていると考えられる。
なお、親水性の高いレシチンを用いる場合には、水相成分として配合してもよい。
【0055】
本発明で用いるリン脂質は、単独で用いることもでき、又は、複数種の混合物の形態で用いることができる。本発明のエマルション組成物がリン脂質を含有する場合、リン脂質の総含有量は、エマルション組成物の透明性及び分散安定性の観点から、前記油相に含まれる油性成分の全質量に対して1質量%以上50質量%以下で含むことが好ましい。
【0056】
本発明のエマルション組成物における油性成分の総含有量は、エマルション組成物の応用、及び、粒子の粒子径、その保存安定性の観点から、好ましくは 1質量%〜50質量%、より好ましくは 2質量%〜30質量%、更に好ましくは5質量%〜20質量%である。
油性成分の総含有量を1質量%よりも高くすると、有効成分を十分に含有させることになり、エマルション組成物の食品、化粧品への応用が好適であり、50質量%以下であると、粒子径の増大、乳化安定性の悪化が生じ難い傾向となる。
【0057】
〔乳化剤〕
水相には、形成されたエマルションの乳化安定性を確保する観点から、適切な乳化剤を含有することが好ましい。
本発明のエマルション組成物に用いうる乳化剤としては、従来公知のノニオン性乳化剤であれば、特に限定されないが、食品、化粧品、医薬品へ添加できる点から、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びポリソルベート類が挙げられる。
【0058】
本発明のエマルション組成物に好適な乳化剤の一つとして、ポリグリセリン脂肪酸エステが挙げられる。
乳化剤に用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が2以上、好ましくは6〜15、より好ましくは8〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸と、のエステルである。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。
これらの中でも、より好ましくは、デカグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル(HLB=13)、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル(HLB=14)、デカグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=16)などである。
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0059】
ここで、HLBは、通常、界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば、川上式等が使用できる。本発明においては、下記の川上式を採用する。
【0060】
HLB=7+11.7log(M/M
ここで、Mは親水基の分子量、Mは疎水基の分子量である。
【0061】
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の化合物を得ることができる。
【0062】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL DGMS,NIKKOL DGMO−CV,NIKKOL DGMO−90V,NIKKOL DGDO,NIKKOL DGMIS,NIKKOL DGTIS,NIKKOL Tetraglyn 1−SV,NIKKOL Tetraglyn 1−O,NIKKOL Tetraglyn 3−S,NIKKOL Tetraglyn 5−S,NIKKOL Tetraglyn 5−O,NIKKOL Hexaglyn 1−L,NIKKOL Hexaglyn 1−M,NIKKOL Hexaglyn 1−SV,NIKKOL Hexaglyn 1−O,NIKKOL Hexaglyn 3−S,NIKKOL Hexaglyn 4−B,NIKKOL Hexaglyn 5−S,NIKKOL Hexaglyn 5−O,NIKKOL Hexaglyn PR−15,NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,NIKKOL Decaglyn 2−SV,NIKKOL Decaglyn 2−ISV,NIKKOL Decaglyn 3−SV,NIKKOL Decaglyn 3−OV,NIKKOL Decaglyn 5−SV,NIKKOL Decaglyn 5−HS,NIKKOL Decaglyn 5−IS,NIKKOL Decaglyn 5−OV,NIKKOL Decaglyn 5−O−R,NIKKOL Decaglyn 7−S,NIKKOL Decaglyn 7−O,NIKKOL Decaglyn 10−SV,NIKKOL Decaglyn 10−IS,NIKKOL Decaglyn 10−OV,NIKKOL Decaglyn 10−MAC,NIKKOL Decaglyn PR−20,三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリグリエステル、L−7D、L−10D、M−10D、P−8D、SWA−10D、SWA−15D、SWA−20D、S−24D、S−28D、O−15D、O−50D、B−70D、B−100D、ER−60D、LOP−120DP、DS13W、DS3、HS11、HS9、TS4、TS2、DL15、DO13、太陽化学(株)社製サンソフトQ−17UL、サンソフトQ−14S、サンソフトA−141C、理研ビタミン(株)社製ポエムDO−100、ポエムJ−0021などが挙げられる。
上記の中でも、好ましくは、NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,リョートーポリグリエステル L−7D、L−10D、M−10D、P−8D、SWA−10D、SWA−15D、SWA−20D、S−24D、S−28D、O−15D、O−50D、B−70D、B−100D、ER−60D、LOP−120DPである。
【0063】
ノニオン性乳化剤としては、親水性乳化剤であることが好ましい。ここで親水性乳化剤は、前述のHLBが10以上であることで規定される。親水性のノニオン性乳化剤の例としては、ショ糖脂肪酸エステル、及びポリソルベート類が挙げられる。
【0064】
本発明に用いられる、ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられ、これらの中でも、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステルがより好ましい。
本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0065】
ショ糖脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステル S−070、S−170、S−270、S−370、S−370F、S−570、S−770、S−970、S−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−070、P−170、P−1570、P−1670、M−1695、O−170、O−1570、OWA−1570、L−195、L−595、L−1695、LWA−1570、B−370、B−370F、ER−190、ER−290、POS−135、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルSS、F160、F140、F110、F90、F70、F50、F−A50、F−20W、F−10、F−A10E、コスメライクB−30、S−10、S−50、S−70、S−110、S−160、S−190、SA−10、SA−50、P−10、P−160、M−160、L−10、L−50、L−160、L−150A、L−160A、R−10、R−20、O−10、O−150等が挙げられる。
上記の中で、好ましくは、リョートーシュガーエステルS−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−1570、P−1670、M−1695、O−1570、L−1695、DKエステルSS、F160、F140、F110、コスメライクS−110、S−160、S−190、P−160、M−160、L−160、L−150A、L−160A、O−150である。
【0066】
本発明に用いられる、ポリソルベート類の好ましい例としてはポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、ポリソルベート65(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、ポリソルベート85(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート)等が挙げられる。
本発明においては、これらのポリソルベート類を、単独又は混合して用いることができる。
【0067】
ポリソルベート類の市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOLTL-10、NIKKOL TP−10V、NIKKOL TS−10V、NIKKOL TS−10MV、NIKKOL TS−106V、NIKKOL TS−30V、NIKKOL TI−10V、NIKKOL TO−10V、NIKKOL TO−10MV、NIKKOL TO−106V、NIKKOL TO−30Vなどが挙げられる。
【0068】
本発明においてはノニオン性乳化剤として、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるノニオン性乳化剤を用いる場合の総含有量としては、量が少なすぎると微細な粒子が得られず、また乳化物の安定性が十分でなく、更に量が多すぎると乳化物の泡立ちが激しくなるなどの問題を生じるため、エマルション組成物に対し0.01質量%〜8質量%が好ましく、0.1質量%〜5質量%がより好ましく、0.5質量%〜3質量%が更に好ましい。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルの総含有量としては、量が少なすぎると微細な粒子が得られず、また、乳化物の安定性が十分でなく、更に量が多すぎると乳化物の泡立ちが激しくなるなどの問題を生じるため、エマルション組成物に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜18質量%がより好ましく、5質量%〜15質量%が更に好ましい。
【0070】
本発明のエマルション組成物における乳化剤の総含有量は、粒子の粒子径の微細さ、この微細な粒子の保存安定性とエマルション組成物の透明性の観点から、0.1質量%〜30質量%の範囲であることが好ましく、1質量%〜20質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0071】
〔その他の成分〕
本発明のエマルション組成物には、その他の成分として以下の成分を含むことができる。各成分は、それぞれの物性に応じて水相又は油相に含まれていればよい。
(多価アルコール)
本発明のエマルション組成物は、粒子径、安定性、及び防腐性の観点から多価アルコールを含有することが好ましい。
多価アルコールは、保湿機能や粘度調整機能等を有している。また、多価アルコールは、水と油脂成分との界面張力を低下させ、界面を広がりやすくし、微細で、かつ、安定な微粒子を形成しやすくする機能も有している。
以上より、エマルション組成物が多価アルコールを含有することは、エマルション粒子径をより微細化でき、かつ該粒子径が微細な粒子径の状態のまま長期に亘り安定して保持できるとの観点から好ましい。
また、多価アルコールの添加により、エマルション組成物の水分活性を下げることができ、微生物の繁殖を抑えることができる。
【0072】
本発明に使用できる前記多価アルコールとしては、二価以上のアルコールであれば特に限定されず用いることができる。
前記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、マルチトール、還元水あめ、蔗糖、ラクチトール、パラチニット、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、キシロース、グルコース、ラクトース、マンノース、マルトース、ガラクトース、フルクトース、イノシトール、ペンタエリスリトール、マルトトリオース、ソルビトール、ソルビタン、トレハロース、澱粉分解糖、澱粉分解糖還元アルコール等が挙げられ、これらを、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
【0073】
また、多価アルコールとしては、その1分子中における水酸基の数が、3個以上であるものを用いるのが好ましい。これにより、水系溶媒と油脂成分との界面張力をより効果的に低下させることができ、より微細で、かつ、安定な微粒子を形成させることができる。その結果、食品用途の場合は腸管吸収性を、化粧品用途の場合は経皮吸収性をより高いものとすることができる。
【0074】
上述したような条件を満足する多価アルコールの中でも、特に、グリセリンを用いた場合、エマルションの粒子径がより小さくなり、かつ該粒子径が小さいまま長期に亘り安定して保持されるため、好ましい。
【0075】
前記多価アルコールの総含有量は、前述の粒子径、安定性、防腐性に加えて、エマルション組成物の粘度の観点から、エマルション組成物に対して10質量%〜60質量%が好ましく、より好ましくは20質量%〜55質量%、更に好ましくは30質量%〜50質量%である。
多価アルコールの総含有量が10質量%以上であると、油脂成分の種類や含有量等によっても、十分な保存安定性が得られ易い点で好ましい。一方、多価アルコールの含有量が60質量%以下であると、最大限の効果が得られ、エマルション組成物の粘度が高くなるのを抑え易い点で好ましい。
【0076】
<ラジカル捕捉剤>
本発明のエマルション組成物には、上述した酸化防止剤の他に他の酸化防止剤(ラジカル捕捉剤)を含んでもよい。ラジカル捕捉剤は、ラジカルの発生を抑えるとともに、生成したラジカルをできる限り速やかに捕捉し、連鎖反応を断つ役割を担う添加剤である(出典:「油化学便覧 第4版」、日本油化学会編 2001)。
前記ラジカル捕捉剤としての機能を確認する直接的な方法としては、試薬と混合して、ラジカルを捕捉する様子を分光光度計やESR(電子スピン共鳴装置)によって測定する方法が知られている。これらの方法では、試薬として、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)や、ガルビノキシルラジカルが使用される。
本発明においては、「ラジカル捕捉剤」の定義は、既述の「酸化防止剤」と同様である。
【0077】
好ましいラジカル捕捉剤としては、例えば、(I)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはその塩、あるいはアスコルビン酸誘導体またはエリソルビン酸誘導体またはその塩からなる化合物群、及び、(II)ポリフェノール類からなる化合物群、より選ばれる少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
本発明の粉末組成物におけるラジカル捕捉剤(酸化防止剤)の含有量は一般的には0.001〜5.0質量%であり、好ましくは0.01〜3.0質量%、より好ましくは0.1〜2.5質量%である。
【0078】
(I)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはその塩
アスコルビン酸またはアスコルビン酸誘導体またはその塩として、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸K、L−アスコルビン酸Ca、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド、前述の油溶化誘導体、L−アスコルビル酸パルミチン酸エステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビル等が挙げられる。これらのうち、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビル酸パルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルが特に好ましい。
【0079】
エリソルビン酸またはエリソルビン酸誘導体またはその塩として、エリソルビン酸、エリソルビン酸Na、エリソルビン酸K、エリソルビン酸Ca、エリソルビン酸リン酸エステル、エリソルビン酸硫酸エステル、前述の油溶化誘導体等が挙げられる。これらのうち、エリソルビン酸、エリソルビン酸Naが特に好ましい。
【0080】
本発明に用いる化合物群(I)に属するラジカル捕捉剤は、一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、L−アスコルビン酸(武田薬品工業、扶桑化学、BASFジャパン、第一製薬ほか)、L−アスコルビン酸Na(武田薬品工業、扶桑化学、BASFジャパン、第一製薬ほか)、アスコルビン酸2−グルコシド(商品名 AA−2G:林原生物化学研究所)、L−アスコルビン酸燐酸Mg(商品名 アスコルビン酸PM「SDK」(昭和電工)、商品名 NIKKOL VC−PMG(日光ケミカルズ)、商品名 シーメート(武田薬品工業))、パルミチン酸アスコルビル(DSM ニュートリション ジャパン、金剛薬品、メルク、ほか)等が挙げられる。
【0081】
(II)ポリフェノール類からなる化合物群
ポリフェノール類からなる化合物群として、フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルチン)、フェノール酸類(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル)、リグナン類、クルクミン類、クマリン類などを挙げることができる。また、これらの化合物は、以下のような天然物由来の抽出物中に多く含まれるため、抽出物という状態で利用することができる。
【0082】
例えば、カンゾウ抽出物、キュウリ抽出物、ケイケットウ抽出物、ゲンチアナ(リンドウ)抽出物、ゲンノショウコ抽出物、コレステロール及びその誘導体、サンザシ抽出物、シャクヤク抽出物、イチョウ抽出物、コガネバナ(オウゴン)抽出物、ニンジン抽出物、マイカイカ(マイカイ、ハマナス)抽出物、サンペンズ(カワラケツメイ)抽出物、トルメンチラ抽出物、パセリ抽出物、ボタン(ボタンピ)抽出物、モッカ(ボケ)抽出物、メリッサ抽出物、ヤシャジツ(ヤシャ)抽出物、ユキノシタ抽出物、ローズマリー(マンネンロウ)抽出物、レタス抽出物、茶抽出物(烏龍茶、紅茶、緑茶等)、微生物醗酵代謝産物、羅漢果抽出物等が挙げられる(かっこ内は、植物の別名、生薬名等を記載した。)。これらのポリフェノール類のうち、特に好ましいものとしては、カテキン、ローズマリー抽出物、グルコシルルチン、エラグ酸、没食子酸を挙げることができる。
【0083】
本発明に用いる化合物群(II)に属するラジカル捕捉剤は、一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、エラグ酸(和光純薬ほか)、ローズマリー抽出物(商品名 RM−21A、RM−21E:三菱化学フーズほか)、カテキン(商品名 サンカトールW−5、No.1:太陽化学、ほか)、没食子酸Na(商品名 サンカトール:太陽化学、ほか)、ルチン・グルコシルルチン・酵素分解ルチン(商品名 ルチンK−2、P−10:キリヤ化学、商品名 αGルチン:林原生物化学研究所、ほか)等が挙げられる。
【0084】
〔粒子径〕
本発明のエマルション組成物に含まれる分散粒子の粒子径は、体積平均粒子径にて1nm以上200nm以下であることを要し、より好ましくは120nm以下、最も好ましくは100nm以下である。
分散粒子の粒子径(体積平均粒子径)を200nm以下とすることにより、本発明のエマルション組成物(乳化物)を用いて製造した食品、化粧品等の透明性が良好となり、また、体内(消化管)吸収性、経皮吸収性が良好となる点で好ましい。
【0085】
本発明のエマルション組成物中に含まれる分散粒子の粒子径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。エマルションの粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
【0086】
本発明においては、粒径範囲及び測定の容易さから、粒子の粒子径測定には動的光散乱法が用いられることが好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
本発明における粒子径は、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))を用いて測定した値とし、具体的には、以下のよう計測した値を採用する。
粒子径の測定方法は、油性成分の濃度が1質量%になるように純水で希釈を行い、ガラスセルを用いて測定を行う。粒子径は、分散媒屈折率として1.313(純水)、分散媒の粘度を0.8854(純水)と設定した時のメジアン径として求めることができる。
【0087】
エマルション組成物に含まれる粒子の粒子径は、前述したエマルション組成物の成分以外に、後述するエマルション組成物の製造方法における油相及び水相の溶解温度や、攪拌条件(せん断力・温度・圧力)、油相と水相比率、などの要因によって微細化することができる。
【0088】
<エマルション組成物の製造方法>
本発明のエマルション組成物の製造方法は、特に限定されないが、たとえば、a)水性媒体(水等)に、ノニオン性乳化剤を溶解させて、水相を得て、また、b)2種以上のカロチノイドを含む油性成分を混合・溶解して、油相を得て、c)攪拌下でこの水相と油相とを混合して、乳化分散を行い、エマルション組成物を得る、といったステップからなる製造方法が好ましい。
特に、本発明においては2種以上のカロチノイドを含有しているため、融点以上の温度で加熱処理することで油相に含まれるカロチノイドを十分に溶解せしめた上で水相と混合し、乳化処理を行うことが必要である。
この製造方法における油相、水相に含有される成分は、前述の本発明のエマルション組成物の構成成分と同様であり、好ましい例及び好ましい量も同様であり、好ましい組合せがより好ましい。
【0089】
上記の乳化分散における油相と水相との比率(質量)は、特に限定されるものではないが、油相/水相比率(質量%)として0.1/99.9〜50/50が好ましく、0.5/99.5〜30/70がより好ましく、1/99〜20/80が更に好ましい。
油相/水相比率を0.1/99.9以上とすることにより、有効成分が低くならないためエマルション組成物の実用上の問題が生じない傾向となり好ましい。また、油相/水相比率を50/50以下とすることにより、界面活性剤濃度が薄くなることがなく、エマルション組成物の乳化安定性が悪化しない傾向となり好ましい。
【0090】
前記乳化分散は、1ステップの乳化操作を行うことでもよいが、2ステップ以上の乳化操作を行うことが均一で微細な粒子を得る点から好ましい。
具体的には、剪断作用を利用する通常の乳化装置(例えば、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサー、連続流通式剪断装置等)を用いて乳化するという1ステップの乳化操作に加えて、高圧ホモジナイザー、超音波分散機等を通して乳化する等の方法で2種以上の乳化装置を併用するのが特に好ましい。高圧ホモジナイザーを使用することで、乳化物を更に均一な微粒子の液滴に揃えることができる。また、更に均一な粒子径の液滴とする目的で複数回行っても良い。
【0091】
エマルションを微細化するための有用な方法として、PIT乳化法、ゲル乳化法等の界面化学的乳化法が知られている。この方法は消費するエネルギーが小さいという利点があり、熱で劣化しやすい素材を微細に乳化する場合に適している。
【0092】
また、汎用的に用いられる乳化法として、機械力を用いた方法、すなわち外部から強い剪断力を与えることで油滴を分裂させる方法が適用されている。機械力として最も一般的なものは、高速、高剪断攪拌機である。このような攪拌機としては、ホモミキサー、ディスパーミキサーおよびウルトラミキサーと呼ばれるものが市販されている。
【0093】
また、微細化に有用な別な機械的な乳化装置として高圧ホモジナイザーがあり、種々の装置が市販されている。高圧ホモジナイザーは、攪拌方式と比べて大きな剪断力を与えることが出来るために、乳化剤の量を比較的少なくても微細化が可能である。
高圧ホモジナイザーには大きく分けて、固定した絞り部を有するチャンバー型高圧ホモジナイザーと、絞りの開度を制御するタイプの均質バルブ型高圧ホモジナイザーがある。
チャンバー型高圧ホモジナイザーの例としては、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、アルティマイザー((株)スギノマシン製)等が挙げられる。
均質バルブ型高圧ホモジナイザーとしては、ゴーリンタイプホモジナイザー(APV社製)、ラニエタイプホモジナイザー(ラニエ社製)、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)、ホモゲナイザー(三和機械(株)製)、高圧ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ(株)製)、超高圧ホモジナイザー(イカ社製)等が挙げられる。
【0094】
比較的エネルギー効率の良い分散装置で、簡単な構造を有する乳化装置として超音波ホモジナイザーがある。製造も可能な高出力超音波ホモジナイザーの例としては、超音波ホモジナイザーUS−600、同US−1200T,同RUS−1200T、同MUS−1200T(以上、(株)日本精機製作所製)、超音波プロセッサーUIP2000,同UIP−4000、同UIP−8000,同UIP−16000(以上、ヒールッシャー社製)等が挙げられる。これらの高出力超音波照射装置は25kHz以下、好ましくは15〜20kHzの周波数で使用される。
【0095】
また、他の公知の乳化手段として、外部からの攪拌部を持たず、低エネルギーしか必要としない、スタチックミキサー、マイクロチャネル、マイクロミキサー、膜乳化装置等を使う方法も有用な方法である。
【0096】
本発明における乳化分散する際の温度条件は、特に限定されるものでないが、機能性油性成分の安定性の観点から10〜100℃であることが好ましく、取り扱う機能性油性成分の融点などにより、適宜好ましい範囲を選択することができる。
また、本発明において高圧ホモジナイザーを用いる場合には、その圧力は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは50〜280MPa、更に好ましくは100〜280MPaで処理することが好ましい。
また、乳化分散された組成物である乳化液はチャンバー通過直後30秒以内、好ましくは3秒以内に何らかの冷却器を通して冷却することが、分散粒子の粒子径保持の観点から好ましい。
【0097】
本発明のエマルション組成物は、食品、又は、化粧品などに広く使用することができる。ここで、食品としては、飲料、冷菓など、化粧品としてはスキン化粧料(化粧水、美容液、乳液、クリームなど)、口紅、日焼け止め化粧料、メークアップ化粧料などを挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
また、本発明のエマルション組成物を含有する食品又は化粧品には、必要に応じて、食品又は化粧品に添加可能な成分を適宜添加することができる。
【0098】
食品、化粧品などに対して用いられる本発明のエマルション組成物の添加量は、製品の種類や目的などによって異なり一概には規定できないが、製品に対して、0.01質量%〜10質量%、好ましくは、0.05質量%〜5質量%の範囲で用いることができる。
添加量が少なすぎる場合は目的の効果を出すことができない場合があり、多すぎる場合は、過剰に添加されたエマルション組成物は効果の発揮に寄与することができない場合がある。
本発明のエマルション組成物を、特に飲料(食品の場合)や化粧水、美容液、乳液、クリームパック・マスク、パック、洗髪用化粧品、フレグランス化粧品、液体ボディ洗浄料、UVケア化粧品、防臭化粧品、オーラルケア化粧品等(化粧品の場合)などの水性製品に使用した場合には、透明感のある製品が得られ、且つ、長期保存又は滅菌処理などの苛酷条件下での不溶物の析出、沈殿又はネックリングなどの不都合な現象の発生を抑制することができる。
【0099】
本発明の食品又は化粧品は、例えば、本発明のエマルション組成物及び必要に応じて添加可能な成分を常法により混合等して得ることができる。
【0100】
<粉末組成物>
本発明のエマルション組成物の好ましい応用態様として粉末組成物が挙げられる。本発明の粉末組成物は、前記本発明のエマルション組成物と賦型剤とを含有するカロチノイド含有組成物を乾燥して得ることができる。
【0101】
〔賦形剤〕
本発明の粉末組成物は、打錠適性や顆粒化適性等を持たせるため賦形剤を含む。賦形剤としては1種単独で又は2種以上を組み合わせ含んでもよい。
賦形剤は一般的に用いられている水溶性物質であればよく、グルコース、果糖、乳糖、麦芽糖、ショ糖、デキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、マルトース、トレハロースや、アラビアガム、グアーガム、ペクチン、プルランなどの増粘多糖類などの単糖及び多糖類;ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクトース、マルトトリイトール、キシリトールなどの糖アルコール;塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体;デンプンにエステル化、エーテル化処理、末端還元処理を施したデンプン誘導体;その他に加工澱粉、ゼラチン分解物、寒天、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。この中でも、溶解性の面から単糖、多糖類、糖アルコール、無機塩が好ましい。
【0102】
賦形剤の中でも特に多糖類であることが好ましく、上記の多糖類の中でも果糖単位を含む糖単位からなる果糖ポリマー及びオリゴマーから選ばれた少なくとも1種である多糖類(以下、単に「果糖ポリマー又はオリゴマー」と称する)がより好ましい。
このような果糖ポリマー又はオリゴマーは、粉末組成物の乾燥時の粉末化過程や粉末保存時に油滴を保護することができ、この結果、油滴粒径を微細な状態に保つと共に油滴中の油性成分の劣化を小さくすることができると共に、粉末組成物を水に再溶解したときには油性成分の水分散性を良好なものにし、再溶解後の透明性も良好なものにすることができる。
【0103】
本発明における果糖ポリマー又はオリゴマーは、果糖(フルクトース)を繰り返し単位として含むと共に、複数の糖単位が脱水縮合で結合した糖単位からなるポリマー又はオリゴマーを指す。本発明では、果糖単位を含む糖の繰り返し単位が20個未満のものを果糖オリゴマー、20個以上のものを果糖ポリマーと称する。
この糖単位の繰り返し個数は、乾燥適性と再溶解性時の油滴微細化の観点から好ましくは2〜60個であり、より好ましくは4〜20個である。繰り返し個数(果糖の重合度)が2個以上であれば吸湿性が強すぎることがなく、乾燥過程で乾燥容器に付着して回収率が低下するといったことを効果的に防止することができ、一方、60個以下であれば水再溶解時における油滴粒径の粗大化を効果的に防止することができる。
【0104】
果糖ポリマー又はオリゴマーには、果糖以外に、分子の末端または鎖中に他の単糖類を含んでもよい。ここで含むことのできる他の単糖単位としては、グルコース(ブドウ糖)、ガラクトース、マンノース、イドース、アルトロース、グロース、タロース、アロース、キシロース、アラビノース、リキソース、リボース、トレオース、エリトロース、エリトルロース、キシルロース、リブロース、プシコース、ソルボース、タガトース等があるが、これに限定されることはない。これらの単糖のうちグルコースが入手の容易性の観点から好ましい。また、結合位置は果糖鎖の末端に存在することが再溶解時の油滴微細化の観点から好ましい。
果糖以外の糖類を含む場合、その含有比率は乾燥適性と再溶解性時の油滴微細化の観点から果糖単位数に対して重合度で50%以下であり、好ましくは30%以下である。
【0105】
色素の保存安定性及び入手の容易性等の観点から本発明に好ましく用いられる水可溶性包括剤としては、イヌリンが挙げられる。本発明におけるイヌリンは、末端にブドウ糖を1個有する果糖ポリマーまたは果糖オリゴマーをいう。イヌリンは広く自然界に存在することが知られており、チコリ、キクイモ、ダリア、ニンニク、ニラ、タマネギなどに多く含まれる。イヌリンの詳細に関してはHandbook of Hydrocolloids, G.O.Phillips,P.A.Williams Ed.,397-403,(2000) CRC Pressに記載されている。一般に、ブドウ糖単位をG、果糖単位をFとして鎖長を表現する。本発明のイヌリンには、GFで表記されるスクロースは含まれない。
通常天然から抽出されるイヌリンは、GF2(ケストース)、GF3(ニストース)、GF4(フラクトシルニストース)からGF60程度までのポリマーかオリゴマー、またはそれらの混合物である。
【0106】
本発明では、イヌリンはチコリ、キクイモ、ダリアなどの根から分離熱水抽出され、この水溶液を濃縮、スプレードライにより粉末化販売されているものを含むことができる。この例としては、チコリ根から抽出されたFrutafit(SENSUS社製)、同じくチコリ根から抽出されたベネオ(オラフティ社)、ダリア根由来試薬((株)和光純薬、シグマ社)、チコリ根抽出試薬(シグマ社)等を挙げることができる。
また、本発明における果糖オリゴマー及びポリマーには、β−フルクトフラノシダーゼのフラクタン転移活性を利用して、ショ糖(スクロース)から調製するものも含むことができる。この例としては、フジFF(フジ日本精糖(株)製)、GF2(明治製菓(株))を挙げることができる。
【0107】
本発明に用いられるイヌリンは、再溶解時の油滴の微細化の観点から、果糖の繰り返し数(重合度)で2〜60であることが好ましく、より好ましくは、噴霧乾燥時の装置への付着性と水への溶解性の観点から、果糖の重合度は4〜20である。
本発明の果糖ポリマー又はオリゴマーは、乳化時に添加されていることが好ましいが、その一部または全部を乳化後に添加することもできる。
【0108】
また果糖ポリマー又はオリゴマーと併用して、他の水溶性ポリマーやオリゴマーを用いてもよい。他の水溶性ポリマー、オリゴマーの例としては、アガロース、澱粉、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ジェランガム、ガラクトマンナン、カゼイン、トラガンドガム、キシログルカン、βーグルカン、カードラン、水溶性大豆繊維、キトサン、アルギン酸、アルギン酸アトリウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
本発明の粉末組成物における賦形剤の含有量は、形状維持と溶解性の観点から本発明の粉末組成物における油性成分の全質量に対して1倍量以上50倍量以下であることが好ましく、より好ましくは1.5倍量以上10倍量以下、最も好ましくは2倍量以上5倍以下である。
また、上記果糖ポリマー又はオリゴマーを他の水溶性ポリマー及びオリゴマーと併用する場合には、果糖ポリマー又はオリゴマーの配合量は、再溶解時の油滴の微細化の観点から、賦形剤の全量の50質量%〜100質量%とすることができ、70質量%〜100質量%であることが更に好ましい。
【0110】
本発明の粉末組成物には、上記成分に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、食品用、医薬品用などの用途に通常使用可能な他の成分を、目的に応じて併用してもよい。
【0111】
<粉末組成物の製造方法>
本発明の粉末組成物は、まず、上述した本発明のエマルション組成物と賦型剤とを含むカロチノイド含有組成物を製造し、これを乾燥することによって得ることができる。
即ち、粉末組成物の製造方法は、既述のエマルション組成物の調製において、賦形剤を含むエマルション組成物(カロチノイド含有組成物)を得る工程(乳化工程)、得られたエマルション組成物を乾燥する工程(乾燥工程)を含む。
乳化工程における賦形剤は、乳化工程の前に予め水相に添加されていてもよいし、乳化後に添加されてもよいが、油滴を包括する観点から乳化前に水相に添加されることが好ましい。乳化工程の詳細は、エマルション組成物の製造方法において既述した通りである。
【0112】
乳化により得られた水中油滴型エマルション組成物は、次いで乾燥工程において、乾燥して粉末化される。
本水中油滴型エマルション組成物では、機能性油性成分が水可溶性包括剤に包括されているので、エマルションを乾燥することにより水易分散性乾燥粉末を得ることができる。この結果、機能性油性成分の微細油滴状態が保持された機能性粉末とすることができる。
【0113】
また、本発明の機能性粉末の製造方法により得られた粉末組成物は、エマルションにおける水分の大半を除かれるので、油滴の合一による粗大化を防止し、機能性油性成分の加水分解等による変質を防止し、保存中の腐敗や黴防止を図ることが可能となる。また、エマルションにおける水分を除いて機能性粉末を得ることで軽量化できるため、輸送コストを大幅に低減することが可能となるものである。
【0114】
乾燥手段としては、公知の乾燥手段を用いることができ、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、高周波乾燥、超音波乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等が挙げられる。これらの手段は単独で用いてもよいが、2種以上の手段を組み合わせて用いることもできる。
本発明では熱に比較的弱い機能性素材を含むことが多いため、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥が好ましい。また、真空乾燥の一つであるが、0℃以下氷結温度以上の温度を保ちながら真空(減圧)乾燥する方法も好ましい。
真空乾燥又は減圧乾燥する場合、突沸によるエマルションの飛散を回避するため、徐々に減圧度を上げながら濃縮を繰り返しつつ、乾燥させることが好ましい。
【0115】
本発明のエマルション組成物(カロチノイド含有組成物)の乾燥手段としては、凍結状態にある材料から氷を昇華させて水分を除去する凍結乾燥が好ましい。この凍結乾燥方法では、通常、乾燥過程が0℃以下、通常は−20℃〜−50℃程度で進行するため、素材の熱変性が起こらず、復水過程で味、色、栄養価、形状、テクスチャーなどが乾燥以前の状態に復元し易い事が大きなメリットとして挙げられる。
市販の凍結乾燥機の例としては、凍結乾燥機VD−800F(タイテック(株))、フレキシドライMP(FTSシステムズ社)、デュラトップ・デュラストップ(FTSシステムズ社)、宝真空凍結乾燥機A型((株)宝エーテーエム)、卓上凍結乾燥機FD−1000(東京理化器械(株))、真空凍結乾燥機FD−550(東京理化器械(株))、真空凍結乾燥機((株)宝製作所)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0116】
また、本発明では、乾燥手段として、生産効率と品質を両立する観点から噴霧乾燥法が特に好ましい。噴霧乾燥は対流熱風乾燥の一種である。液状のエマルションが熱風中に数100μm以下の微小な粒子として噴霧され、乾燥されながら塔内を落下して行くことで固体粉末として回収される。素材は一時的に熱風に曝されるが、曝されている時間が非常に短いことと水の蒸発潜熱のため余り温度が上がらないことから、凍結乾燥同様に素材の熱変性が起きにくく、復水による変化も小さいものである。非常に熱に弱い素材の場合、熱風の代わりに冷風を供給することも可能である。その場合、乾燥能力は落ちるが、よりマイルドな乾燥を実現できる点で好ましい。
【0117】
市販の噴霧乾燥機の例としては、噴霧乾燥機スプレードライヤSD−1000(東京理化器械(株))、スプレードライヤL−8i(大川原化工機(株))、クローズドスプレードライヤCL−12(大川原化工機(株))、スプレードライヤADL310(ヤマト科学(株))、ミニスプレードライヤB−290(ビュッヒ社)、PJ−MiniMax(パウダリングジャパン(株))、PHARMASD(ニロ社)等が挙げられるがこれに限定されることはない。
また、例えば流動層造粒乾燥機MP−01((株)パウレック)、流動層内蔵型スプレードライヤFSD(ニロ社)等のように。乾燥と造粒とを同時に行える装置で、乾燥と同時に取り扱い性の優れた顆粒状にすることも好ましい。
【0118】
本発明の粉末組成物は、復水性、すなわち再び水の中に再溶解(再分散)させたとき、乾燥前のエマルションの状態を復元する性質を有する。
【0119】
本発明の水中油滴型エマルションの粒径は、エマルション組成物において説明したのと同様に、市販の粒度分布計等で計測することができる。
【0120】
本発明の粉末組成物では、前記乾燥装置を用いて乾燥を施した後、1質量%の水溶液としたとき(再溶解時)の油滴粒径が、透明性の観点及び吸収性の観点から30nm以上200nm以下であることが好ましく、透明性の観点から、より好ましくは30nm以上130nm以下、最も好ましくは30nm以上90nm以下である。
【0121】
本発明の粉末組成物は、カロチノイドの吸収性が良好なものであるエマルション組成物を提供するものである。このため、食品組成物、化粧品組成物、医薬品組成物に好ましく適用しうる。
【0122】
本発明の粉末組成物は、粉末として長期保存が可能であり、特に再溶解して水溶性製品、例えば飲料(食品の場合)や化粧水、美容液、乳液、クリームパック・マスク、パック、洗髪用化粧品、フレグランス化粧品、液体ボディ洗浄料、UVケア化粧品、防臭化粧品、オーラルケア化粧品等(化粧品の場合)などに使用した場合には、透明感のある製品が得られる。
特に食品に用いた場合には、粉末状の食品として長期保存が可能であり、水性媒体に溶解したときには、微細な分散粒子を有する透明性に優れた分散組成物となり、カロチノイドの良好な吸収性も示し得る。
【0123】
ここで、本発明の機能性食品の形態としては、栄養ドリンク、滋養強壮剤、嗜好性飲料、冷菓などの一般的な食品類のみならず、錠剤状・顆粒状・カプセル状の栄養補助食品なども好適に挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
本発明の機能性食品は、本発明の粉末組成物と、所望の目的を達成するための添加可能な任意の成分とを、常法により混合等して、得ることができる。
【0124】
機能性食品として用いられる場合には、本発明の粉末組成物の添加量は、製品の種類や目的などによって異なり一概には規定できないが、製品に対して、0.01〜10質量%、好ましくは、0.05〜5質量%の範囲となるように添加して用いることができる。
添加量が0.01質量%以上であれば目的の効果の発揮が期待でき、10質量%以下であれば、適切な効果を効率よく発揮できることが多い。
【実施例】
【0125】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0126】
<実施例1>
エマルション組成物EM−1(アスタキサンチン0.5%、ルテイン0.5%含有)を下記に示す組成及び下記製法で調製した。
組成1
(1)ヘマトコッカス藻色素(アスタキサンチン類含有率 20質量%) 2.5質量%
(ASTOTS−S:武田紙器(株)製)
(2)マリーゴールド色素(ルテイン類含有率 40質量%) 1.2質量%
(ルテイン−P80:オリザ油化(株)製)
(3)ミックストコフェロール 1.0質量%
(理研Eオイル800:理研ビタミン(株)製)
(4)レシチン(レシオンP:理研ビタミン(株)製) 1.0質量%
(5)ココナツオイル(ココナードMT:花王(株)製) 9.3質量%
(6)ショ糖ステアリン酸エステル 3.3質量%
(リョートーシュガーエステルS−1670:三菱化学フーズ(株)製)
(7)オレイン酸ポリグリセリル−10 6.7質量%
(NIKKOL Decaglyn 1−O:日光ケミカルズ(株)製)
(8)グリセリン 45.0質量%
(9)精製水 30.0質量%
【0127】
(製法)
(A) 上記成分(1)〜(5)を、容器に秤量し、70℃の恒温槽にて攪拌しながら加熱混合し、よく混合したことを確認し、70℃に保ち、混合物Aを得た。
(B) 上記成分(6)〜(9)を、容器に秤量し、70℃の恒温槽にて攪拌しながら加熱混合し、よく混合したことを確認し、70℃に保ち、混合物Bを得た。
(C) 混合物Bに混合物Aを加えて混合し、均一に乳化した。乳化装置は、ホモジナイザー(SMT社製)を使用し、10000回転にて5分間攪拌し、混合物Cを得た。
(D) 混合物Cを高圧ホモジナイザー(アルティマイザーHJP−25003:(株)スギノマシン製)を使用し、圧力245MPa、液温60℃にて乳化操作を行い、エマルション組成物EM−1を得た。
【0128】
<実施例2>
実施例1に記載した組成のうち、(2)マリーゴールド色素をトマト色素(Lyc−O−Mato 15%:ライコレッド(株)製)に変え、且つ、色素の添加量と(5)ココナツオイルの添加量を下記表1に記載の量に変えた以外は、エマルション組成物EM−1と同様にして、エマルション組成物EM−2(アスタキサンチン0.5%、リコピン0.5%含有)を得た。
【0129】
<実施例3>
実施例1に記載した組成のうち、(1)のヘマトコッカス藻色素を実施例2で用いたトマト色素に変え、且つ、その色素の質量%と(5)ココナツオイルの添加量を下記表1のように変えた以外は、エマルション組成物EM−1と同様にして、エマルション組成物EM−3(ルテイン0.5%、リコピン0.5%含有)を得た。
【0130】
<比較例1>
実施例1に記載した組成のうち、(2)のマリーゴールド色素を添加せず、且つ、(5)ココナツオイルの添加量を下記表1のように変えた以外は、エマルション組成物EM−1と同様にして、エマルション組成物EM−4(アスタキサンチン0.5%、単独)を得た。
<比較例2>
実施例1に記載した組成のうち、(1)のヘマトコッカス藻色素を添加せず、且つ、(5)ココナツオイルの添加量を下記表1のように変えた以外は、エマルション組成物EM−1と同様にして、エマルション組成物EM−5(ルテイン0.5%、単独)を得た。
【0131】
<比較例3>
実施例2に記載した組成のうち、(1)のヘマトコッカス藻色素を添加せず、且つ、(5)ココナツオイルの添加量を下記表1のように変えた以外は、エマルション組成物EM−2と同様にして、エマルション組成物EM−6(リコピン0.5%、単独)を得た。
【0132】
【表1】

【0133】
<評価>
(粒子の粒子径)
上記で得られたエマルション組成物(EM−1〜EM−6)0.1gを、水9.9gに溶解した試料について、累積50%粒子径を、粒度分布計(FPAR−1000:大塚電子製)で測定した。結果を前記表1に併記した。表1中における粒子径の数値の単位はnmである。
【0134】
(ラット経口投与−血中濃度評価試験)
作製したエマルション組成物(EM−1〜EM−6)を用いて、ラット経口投与−血中濃度評価試験を行った。
オス8週令のCrl:CD(SD)ラット(日本チャールズ・リバー社)に各組成物を、各カロチノイド投与量が10mg/kgとなるように経口投与(各群n=4)し、投与後1〜24時間後に各0.4mlの血液を採取した。採取した血液を遠心分離し上澄みの血漿を0.1ml取り出し、血漿中のカロチノイドを有機溶剤により抽出し、HPLCで定量した。この結果から、投与から採血までの時間と血漿中のカロチノイド濃度との関係をグラフ化し、それぞれの投与組成物についてAUC(血中濃度−時間曲線下面積、0〜8時間)を求めた。
このようにして得られたそれぞれのカロチノイドのAUCについて、比較例におけるAUC値を100と規定した場合の、実施例ごとの相対値を算出した。結果を下記表2に示す。この数値が大きいほど、血中の有効成分濃度が高いと評価する。
【0135】
【表2】

【0136】
以上の結果より、実施例1〜3の本発明のエマルション組成物はいずれも、それぞれのカロチノイドを単独で含むエマルション組成物である比較例1〜3に比べて、それぞれのカロチノイドの血中濃度が共に向上していることから、少なくとも2種以上のカロチノイドを含むエマルション組成物とすることにより、カロチノイド1種のみ含むエマルション組成物よりも、カロチノイドの吸収効率を向上させるという優れた特性を有することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上のカロチノイドを含有し、該2種以上のカロチノイドのうち最大量で含まれるカロチノイドの含有量100質量部に対し、他のカロチノイドの含有量が30質量部以上100質量部以下である油相と、水相と、を含んでなるエマルション組成物。
【請求項2】
前記カロチノイドが、アスタキサンチン、ルテイン、及び、リコピンから選ばれる2種以上である請求項1に記載のエマルション組成物。
【請求項3】
前記2種以上のカロチノイドのエマルション組成物全量に対する含有量が、いずれも0.1質量%以上10質量%以下である請求項1又は請求項2に記載のエマルション組成物。
【請求項4】
前記油相の粒子径が1nm以上200nm以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【請求項5】
更に酸化防止剤を含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【請求項6】
更にリン脂質を含有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のエマルション組成物と賦形剤とを含有するカロチノイド含有組成物を乾燥して得られる粉末組成物。
【請求項8】
前記賦形剤がイヌリンである請求項7に記載の粉末組成物。

【公開番号】特開2011−241176(P2011−241176A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114792(P2010−114792)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】