説明

エマルジョンの微小流動化中および/または均質化中における成分の循環

水中油型エマルジョンを製造するための改善された方法は、エマルジョンの成分を、ホモジナイザーを通って、および/または微小流動化デバイスを介して第1の容器と第2の容器との間を循環させることを含む。有用なことに、第1の容器からのエマルジョンの成分の全ては、戻ってくる前に空にされる。一実施形態において、スクアレンを含む、ワクチンアジュバントである水中油型エマルジョンを製造するための方法が提供され、この方法は:(b)第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを微小流動化して、該第1の平均油滴サイズ未満である第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2009年12月3日に出願された米国仮特許出願第61/283,518号(この完全な内容は、全ての目的のために参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、微小流動化(microfluidization)による、ワクチンのための水中油型エマルジョンアジュバントを製造する分野にある。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
「MF59」として公知のワクチンアジュバント[1(特許文献1)、2〜3(非特許文献1〜2)]は、スクアレン、ポリソルベート 80(Tween 80としても公知)、およびソルビタントリオレエート(Span 85としても公知)のサブミクロン水中油型エマルジョンである。これはまた、クエン酸イオン(例えば、10mM クエン酸ナトリウム緩衝液)を含み得る。体積による上記エマルジョンの組成は、約5% スクアレン、約0.5% Tween 80および約0.5% Span 85であり得る。上記アジュバントおよびその生成は、参考文献4の第10章、参考文献5の第12章および参考文献6の第19章により詳細に記載される。
【0004】
参考文献7に記載されるように、MF59は、スクアレン相の中にSpan 85を、および水相の中にTween 80を分散させ、続いて、高速で混合して、粗いエマルジョンを形成することによって、商業スケールで製造される。次いで、この粗いエマルジョンは、反復して、マイクロフルイダイザーを通過させられて、均一な油滴サイズを有するエマルジョンを生成する。参考文献6に記載されるように、次いで、微小流動化エマルジョンは、任意の大きい油滴を除去するために、0.22μm膜を通して濾過され、得られたエマルジョンの平均液滴サイズは、少なくとも3年間にわたって4℃において変化しないままである。最終エマルジョンのスクアレン含有量は、参考文献8(特許文献2)に記載されるように測定され得る。
【0005】
水中油型エマルジョンは、油滴を含む。これらのエマルジョンに含まれるより大きな油滴は、保存中のエマルジョンの分解をもたらす凝集の核形成部位として働き得る。
【0006】
微小流動化した水中油型エマルジョン(例えば、MF59)の生成のためのさらなるかつ改善された方法、特に、商業スケールでの使用に適しておりかつ改善された均質化および微小流動化を提供し、より少ない大型の粒子を含むエマルジョンを提供する方法を提供することが、本発明の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第90/14837号
【特許文献2】欧州特許第2029170号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】PoddaおよびDel Giudice、Expert Rev Vaccines(2003)2:197〜203
【非特許文献2】Podda、Vaccine(2001)19: 2673〜2680
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の開示)
本発明は、スクアレンを含む水中油型エマルジョンの製造のための方法を提供し、ここで上記方法は、(i)ホモジナイザーを使用して第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを形成する工程を包含し、ここで、上記第1のエマルジョンは、複数回、ホモジナイザーを通して上記第1のエマルジョンの成分を循環させることによって形成される。
【0010】
本発明はまた、スクアレンを含む水中油型エマルジョンの製造のための方法を提供し、上記方法は、第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを微小流動化して、上記第1の平均油滴サイズ未満である第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程を包含し、ここで、上記第2のエマルジョンは、上記第2のエマルジョンの成分を、第1のエマルジョン容器から、第1の微小流動化デバイスを通って、第2のエマルジョン容器に移し、そしてその後、第2の微小流動化デバイスを通すことによって上記第2のエマルジョンの成分を循環させることによって形成され、ここで、上記第1の微小流動化デバイスおよび上記第2の微小流動化デバイスは、同じものである。
【0011】
必要に応じて、本発明の方法は、先に(a)第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを形成する工程を包含する。
【0012】
必要に応じて、本発明の方法は、(c)上記第2のエマルジョンを濾過する工程を包含する。
【0013】
以下により詳細に記載されるように、上記第1のエマルジョンは、5000nm以下の平均油滴サイズ(例えば、300nm〜800nmの間の平均サイズ)を有し得る。1.2μmよりも大きいサイズを有する上記第1のエマルジョン中の油滴の数は、以下に記載されるように、5×1011/ml以下であり得る。1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴は、上記油滴が、液滴の凝集および合体に起因して、上記エマルジョンの不安定性を引き起こし得るので不都合である[14]。
【0014】
形成後、上記第1のエマルジョンは、次いで、微小流動化の少なくとも1回の通過に供されて、低下した平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成し得る。以下に記載されるように、上記第2のエマルジョンの平均油滴サイズは、500nm以下である。1.2μmよりも大きいサイズを有する上記第2のエマルジョンの中の油滴の数は、以下に記載されるように、5×1010/ml以下であり得る。これら特徴を達成するために、上記エマルジョンの成分を、上記微小流動化デバイスに複数回(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回)通過させることが必要であり得る。
【0015】
次いで、上記第2のエマルジョンは、親水性ポリエーテルスルホン膜を通して濾過させられて、ワクチンアジュバントとしての使用に適切であり得る水中油型エマルジョンを与え得る。濾過後に生成される上記水中油型エマルジョンの平均油滴サイズは、220nm以下(例えば、135〜175nmの間、145〜165nmの間、もしくは約155nm)であり得る。濾過後に生成される上記水中油型エマルジョンに存在する1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数は、5×10/ml以下(例えば、5×10/ml以下、5×10/ml以下、2×10/ml以下もしくは5×10/ml以下)であり得る。
【0016】
濾過後に形成される最終水中油型エマルジョンは、上記第1のエマルジョンと比較して、多くとも10分の1の、1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴、および理想的には、多くとも10分の1の(例えば、10分の1の)油滴を有し得る。
【0017】
いくつかの実施形態において、工程(i)および工程(ii)の1回より多いサイクルは、工程(iii)の前に使用される。同様に、個々の工程(i)および工程(ii)の複数回の反復が使用され得る。
【0018】
一般に、上記方法は、20〜60℃の間、および理想的には、40±5℃で行われる。上記第1のエマルジョンの成分および第2のエマルジョンの成分は、より高い温度でも比較的安定であり得るが、いくらかの成分の熱分解は、なお起こり得るので、より低い温度が好ましい。
【0019】
(エマルジョンの成分)
上記平均油滴サイズ(すなわち、上記エマルジョンの油滴の数平均直径(number average diameter))は、参考文献13に記載されるように、動的光散乱技術を使用して測定され得る。動的光散乱測定器の例は、Nicomp 380 Submicron Particle Size Analyzer(Particle Sizing Systems製)である。
【0020】
1.2μmよりも大きいサイズを有する粒子の数は、粒子カウンター(例えば、AccusizerTM 770(Particle Sizing Systems製)を使用して測定され得る。
【0021】
本発明の方法は、水中油型エマルジョンの製造のために使用される。これらエマルジョンは、3つのコア成分(油;水性成分;および界面活性剤)を含む。
【0022】
上記エマルジョンが薬学的使用について意図されるので、上記油は、代表的には、生分解性(代謝可能)かつ生体適合性である。
【0023】
上記使用される油は、スクアレン、サメ肝油(これは分枝状の不飽和テルペノイド(C3050;[(CHC[=CHCHCHC(CH)]=CHCH−];2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエン;CAS RN 7683−64−9)である)を含む。スクアレンは、本発明における使用に特に好ましい。
【0024】
本発明の油は、油の混合物(もしくは組み合わせ)を含み得る(例えば、スクアレンおよび少なくとも1種のさらなる油を含む)。
【0025】
スクアレンを使用するのではなく(もしくはスクアレンに加えて)、エマルジョンは、例えば、動物(例えば、魚類)供給源もしくは植物供給源に由来するものを含む油を含み得る。植物油の供給源としては、堅果、種子および穀粒が挙げられる。ラッカセイ油、大豆油、ヤシ油、およびオリーブ油(最も一般に入手可能)は、上記堅果油の例である。ホホバ油が使用され得、これは、例えば、ホホバ豆から得られる。種子油としては、サフラワー油、綿実油、ひまわり種子油、ごま種子油などが挙げられる。穀粒の群においては、コーン油は、最も容易に入手可能であるが、他の穀類の穀粒(例えば、小麦、オーツ麦、ライ麦、コメ、テフ、ライコムギなど)の油はまた、使用され得る。グリセロールおよび1,2−プロパンジオールの6〜10炭素の脂肪酸エステルは、種子油の中に天然に存在しないが、上記堅果油および種子油から出発する適切な材料の加水分解、分離およびエステル化によって調製され得る。哺乳動物の乳汁に由来する脂肪および油は、代謝可能であるので、使用され得る。動物供給源から純粋な油を得るために必要な分離、精製、および鹸化および他の手段についての手順は、当該分野で周知である。
【0026】
大部分の魚類は、容易に回収され得る代謝可能な油を含む。例えば、たら肝油、サメ肝油、および鯨油(例えば、鯨蝋)は、本明細書で使用され得る魚油のうちのいくつかを例示する。多くの分枝鎖の油は、5炭素のイソプレン単位で生化学的に合成され、一般に、テルペノイドといわれる。スクアラン(スクアレンに対する飽和アナログ)もまた、使用され得る。魚油(スクアレンおよびスクアランを含む)は、商業的供給源から容易に入手可能であるか、または当該分野で公知の方法によって得られ得る。
【0027】
他の有用な油は、特に、スクアレンと組み合わせたトコフェロールである。エマルジョンの油相が、トコフェロールを含む場合、αトコフェロール、βトコフェロール、γトコフェロール、δトコフェロール、εトコフェロール、もしくはζトコフェロールのうちのいずれかが使用され得るが、α−トコフェロールが好ましい。D−α−トコフェロールおよびDL−α−トコフェロールは、ともに使用され得る。好ましいα−トコフェロールは、DL−α−トコフェロールである。上記トコフェロールは、いくつかの形態(例えば、異なる塩および/もしくは異性体)をとり得る。塩としては、有機塩(例えば、コハク酸塩、酢酸塩、ニコチン酸塩など)が挙げられる。このトコフェロールの塩が使用されるべきである場合、上記好ましい塩は、コハク酸塩である。スクアレンおよびトコフェロール(例えば、DL−α−トコフェロール)を含む油の組み合わせが、使用され得る。
【0028】
水性成分は、淡水(plain water)(例えば、w.f.i.)であり得るか、またはさらなる成分(例えば、溶質)を含み得る。例えば、上記水性成分は、緩衝液を形成するために塩を含み得る(例えば、ナトリウム塩のようなクエン酸塩もしくはリン酸塩)。代表的な緩衝液としては、以下が挙げられる:リン酸緩衝液;Tris緩衝液;ホウ酸緩衝液;コハク酸緩衝液;ヒスチジン緩衝液;もしくはクエン酸緩衝液。緩衝液は、代表的には、5〜20mMの範囲で含まれる。
【0029】
界面活性剤は、好ましくは、生分解性(代謝可能)かつ生体適合性である。界面活性剤は、それらの「HLB」(親水性/親油性バランス)によって分類され得、ここで1〜10の範囲のHLBは、一般に、上記界面活性剤が、水中よりも油中においてより可溶性であり、10〜20の範囲のHLBは、油中より水中でより可溶性であることを意味する。エマルジョンは、好ましくは、少なくとも10(例えば、少なくとも15、または好ましくは、少なくとも16)のHLBを有する少なくとも1種の界面活性剤を含む。
【0030】
本発明は、界面活性剤とともに使用され得、上記界面活性剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般には、Tweenといわれる)(特に、ポリソルベート20およびポリソルベート80);エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、および/もしくはブチレンオキシド(BO)のコポリマー(DOWFAXTM商品名の下で販売される(例えば、直鎖状EO/POブロックコポリマー));オクトキシノール(これは、反復するエトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の数が変動し得る)(オクトキシノール−9(Triton X−100、もしくはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が特に興味深い);(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);リン脂質(例えば、ホスファチジルコリン(レシチン));ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびオレイルアルコールから得られるポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤として公知)(例えば、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30));ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル;およびソルビタンエステル(一般に、SPANとして公知)(例えば、ソルビタントリオレエート(Span 85)およびソルビタンモノラウレート)。上記エマルジョン中に含めるための好ましい界面活性剤は、ポリソルベート80(Tween 80;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Span 85(ソルビタントリオレエート)、レシチンおよびTriton X−100である。
【0031】
界面活性剤の混合物は、上記エマルジョン中に含まれ得る(例えば、Tween 80/Span 85混合物、もしくはTween 80/Triton−X100混合物)。ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween 80))およびオクトキシノール(例えば、t−オクチルフェノキシ−ポリエトキシエタノール(Triton X−100))の組み合わせもまた、適している。別の有用な組み合わせは、ラウレス 9と、ポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/もしくはオクトキシノールを含む。有用な混合物は、10〜20の範囲のHLB値を有する界面活性剤(例えば、HLB15.0を有するTween 80)および1〜10の範囲のHLB値を有する界面活性剤(例えば、HLB1.8を有するSpan 85)を含み得る。
【0032】
(上記第1のエマルジョンの形成)
微小流動化工程の前に、エマルジョンの成分は、第1のエマルジョンを形成するために混合され得る。
【0033】
上記第1のエマルジョン中の油滴は、平均サイズ5000nm以下(例えば、4000nm以下、3000nm以下、2000nm以下、1200nm以下、1000nm以下(例えば、800〜1200nmの間、もしくは300nm〜800nmの間の平均サイズ))を有し得る。
【0034】
上記第1のエマルジョンにおいて、1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数は、5×1011/ml以下(例えば、5×1010/ml以下もしくは5×10/ml以下)であり得る。
【0035】
次いで、上記第1のエマルジョンは、上記第1のエマルジョンよりも小さな平均油滴サイズを有する、かつ/または1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴がより少ない第2のエマルジョンを形成するために微小流動化され得る。
【0036】
上記第1のエマルジョンの平均油滴サイズは、上記第1のエマルジョンの成分をホモジナイザー中で混合することによって達成され得る。例えば、図1に示されるように、それらは、混合容器(12)中で合わされ得、次いで、上記合わされた成分は、機械的ホモジナイザー(例えば、ローターステイターホモジナイザー(rotor−stator homogenizer)(1)の中に導入され得る(13)。
【0037】
ホモジナイザーは、垂直式および/もしくは水平式で操作され得る。商業上の設定における便宜のために、インラインホモジナイザーが好ましい。
【0038】
上記成分は、ローターステイターホモジナイザーの中に導入され、スロットもしくは穴を含む迅速に回転するローターと接する。上記成分は、ポンプ様の様式で外側に遠心力を利用して噴出され、上記スロット/穴を通過する。いくつかの実施形態において、上記ホモジナイザーは、ローターおよびステイターの複数の組み合わせ(例えば、図1においておよび図2によって特徴(3)と(4);(5)と(6)および(7)と(8)に示されるように、櫛−歯リング(comb−teeth ring)の同軸の構成(arrangement))を含む。有用な大規模ホモジナイザーにおける上記ローターは、静止ライナー(static liner)における対になっている歯に対して近い公差で整列され、水平方向に配向されたマルチブレードのインペラー(例えば、図1における特徴(9))の縁部に櫛−歯リングを有し得る。上記第1のエマルジョンは、ローターとステイターとの間の間隙内に存在する乱流、キャビテーションおよび機械的剪断の組み合わせを介して形成する。上記成分は、上記ローターの軸に対して平行な方向で、有用に導入される。
【0039】
ローター−ステイターホモジナイザーにおける重要な性能パラメータは、上記ローターの先端速度(周速度)である。このパラメータは、回転速度およびローター直径両方の関数である。少なくとも10ms−1の先端速度は有用であり、理想的には、より速い(例えば、≧20ms−1、≧30ms−1、≧40ms−1など)。40ms−1の先端速度は、小さなホモジナイザーを用いて10,000rpmにおいて、もしくはより大きなホモジナイザーを用いてより低い回転速度で(例えば、2,000rpm)容易に達成され得る。適切な高剪断ホモジナイザーは、市販されている。
【0040】
商業スケールでの製造のために、上記ホモジナイザーは、理想的には、流速少なくとも300L/時間(例えば、≧400L/時間、≧500L/時間、≧600L/時間、≧700L/時間、≧800L/時間、≧900L/時間、≧1000L/時間、≧2000L/時間、≧5000L/時間、もしくはさらに≧10000L/hr)を有すべきである。適切な高容量ホモジナイザーが市販されている。
【0041】
好ましいホモジナイザーは、3×10〜1×10−1の間(例えば、3×10〜7×10−1の間、4×10〜6×10−1の間(例えば、約5×10−1))の剪断速度を提供する。
【0042】
ローター−ステイターホモジナイザーは、作動中に比較的小さな熱を発するが、上記ホモジナイザーは、使用中に冷却され得る。理想的には、上記第1のエマルジョンの温度は、均質化の間、60℃未満(例えば、45℃未満)に維持される。
【0043】
いくつかの実施形態において、上記第1のエマルジョンの成分は、複数回(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、20回、30回、40回、50回以上)均質化され得る。長く一続きになった容器およびホモジナイザーを必要とすることを回避するために、上記エマルジョンの成分は、(例えば、図1における特徴(11)によって示されるように)代わりに循環させられ得る。特に、上記第1のエマルジョンは、上記第1のエマルジョンの成分を、ホモジナイザーを通って複数回(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、20回、30回、40回、50回、100回など)循環させることによって形成され得る。しかし、あまりにも多くのサイクルは望ましくない可能性がある。なぜなら、このことは、参考文献14に記載されるように、再合体を生じ得るからである。従って、ホモジナイザー循環が使用され得る場合に、所望の液滴サイズに達したか、そして/または再合体が起こっていないかをチェックするために、油滴のサイズがモニターされ得る。
【0044】
上記ホモジナイザーを通る循環は、有利である。なぜなら、このことは、上記第1のエマルジョン中の油滴の平均サイズを低下させ得るからである。循環は、上記第1のエマルジョンにおいて1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数を低下させ得るので、循環はまた有利である。。上記第1のエマルジョンにおける平均液滴サイズおよび1.2μmよりも大きな液滴の数におけるこれら低下は、下流のプロセスにおいて利点を提供し得る。特に、上記ホモジナイザーを通る上記第1のエマルジョンの成分の循環は、改善された微小流動化プロセスをもたらし得、このことは、次いで、上記第2のエマルジョン(すなわち、微小流動化後)において1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数の低下を生じ得る。上記第2のエマルジョンのパラメータにおけるこの改善は、改善された濾過性能を提供し得る。改善された濾過性能は、濾過の間に内容物のより少ない損失(例えば、水中油型エマルジョンがMF59である場合には、スクアレン、Tween 80およびSpan 85の損失)をもたらし得る。
【0045】
2つの特定の循環型が、本明細書で「I型」および「II型」として言及される。I型循環は、図5に図示されるのに対して、II型循環は、図6に図示される。
【0046】
上記第1のエマルジョンの成分の循環は、上記第1のエマルジョンの成分を、第1の予備混合容器とホモジナイザーとの間に移動させるI型循環を含み得る。上記第1の予備混合容器は、サイズが50Lから500Lまで(例えば、100L〜400L、100L〜300L、200L〜300L、250Lもしくは280L)であり得る。上記第1の予備混合容器は、ステンレス鋼から製造され得る。上記I型循環は、10〜60分間(例えば、10〜40分間もしくは20分間)にわたって継続され得る。
【0047】
上記第1のエマルジョンの成分の循環は、上記第1のエマルジョンの成分を第1の予備混合容器から、第1のホモジナイザーを通って第2の予備混合容器(必要に応じて、上記第1の予備混合容器と同じ特性を有する)へ移し、次いで、第2のホモジナイザーを通過させるII型循環を含み得る。上記第2のホモジナイザーは、通常は、上記第1のホモジナイザーと同じであるが、いくつかの構成においては、上記第1のホモジナイザーと第2のホモジナイザーとは異なる。上記第1のエマルジョンの成分が、上記第2のホモジナイザーを通過した後に、上記第1のエマルジョンの成分は、例えば、上記II型循環プロセスが反復されるべき場合に、上記第1の予備混合容器へ戻され得る。従って、上記エマルジョンの成分は、単一のホモジナイザーを介する、上記第1の予備混合容器と上記第2の予備混合容器との間の8の字の経路で移動し得る(図6を参照のこと)。II型循環は、1回もしくは複数回(例えば、2回、3回、4回、5回など)行われ得る。
【0048】
II型循環は、I型循環と比較して有利である。なぜなら、II型循環は、上記第1のエマルジョンの成分のすべてが、上記ホモジナイザーを通過することを確実にするように補助し得るからである。上記第1の予備混合容器が空になることは、完全なエマルジョンの内容物が上記ホモジナイザーを通って、上記第2の予備混合容器へと通過したことを意味する。同様に、上記第2の予備混合容器の内容物は空になり得、再び、それらがすべて、上記ホモジナイザーを通過することを確実にする。従って、上記II型構成は、都合のよいことには、上記エマルジョンの成分のすべてが、少なくとも2回均質化されることを確実にし得、このことは、上記第1のエマルジョンにおける油滴の平均サイズおよび1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数の両方を低下させ得る。従って、理想的なII型循環は、上記第1の予備混合容器を空にし、その内容物の実質的にすべてを、上記ホモジナイザーを通って上記第2の予備混合容器へと通過させ、続いて、上記第2の予備混合容器を空にし、その内容物の実質的にすべてを、上記ホモジナイザーを再通過させ、(空の)上記第1の予備混合容器へ戻すことを包含する。従って、すべての粒子は、上記ホモジナイザーを通って少なくとも2回通過するが、これは、I型循環では達成することが難しい。
【0049】
いくつかの実施形態において、I型およびII型の循環の組み合わせが使用され、この組み合わせは、良好な特徴を有する第1のエマルジョンを提供し得る。特に、この組み合わせは、上記第1のエマルジョンにおいて1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数を大いに低下させ得る。この組み合わせは、I型およびII型の循環の任意の順序(例えば、I型に続いてII型、II型に続いてI型、I型に続いてII型、再び続いてI型など)を含み得る。一実施形態において、上記組み合わせは、20分間のI型循環、続いて、1回のII型循環(すなわち、上記循環された第1のエマルジョンの成分を、第1の予備混合容器から、第1のホモジナイザーを通って第2の予備混合容器へ移し、次いで、一度第2のホモジナイザーを通過させる)を含む。
【0050】
上記第1のおよび第2の予備混合容器は、不活性ガス(例えば、窒素)の下で、例えば、最大0.5バールにおいて保持され得る。これは、上記エマルジョンの成分が酸化しないようにし得、このことは、上記エマルジョンの成分のうちの1つがスクアレンである場合に特に有利である。これは、上記エマルジョンの安定性の増大を提供し得る。
【0051】
上述のように、上記ホモジナイザーの最初の入力物(input)は、上記第1のエマルジョンの成分の均質化されていない混合物であり得る。この混合物は、上記個々の第1のエマルジョンの成分を個々に混合することによって調製され得るが、いくつかの実施形態において、複数の成分は、この混合の前に合わせられ得る。例えば、上記エマルジョンが、10未満のHLBを有する界面活性剤を含む場合、この界面活性剤は、混合する前に油と合わせられ得る。同様に、上記エマルジョンが、10を超えるHLBを有する界面活性剤を含む場合、この界面活性剤は、混合する前に、水性成分と合わせられ得る。緩衝剤の塩は、混合する前に水性成分と合わせられてもよいし、別個に添加されてもよい。
【0052】
本発明の方法は、大スケールで使用され得る。従って、ある方法は、体積が1リットルより大きい(例えば、≧5リットル、≧10リットル、≧20リットル、≧50リットル、≧100リットル、≧250リットルなど)第1のエマルジョンを調製することを含み得る。
【0053】
第1のエマルジョンを形成した後、この第1のエマルジョンは、微小流動化されてもよいし、微小流動化を待つために貯蔵されてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態において、特に、工程(i)および工程(ii)の複数のサイクルが使用される実施形態において、ホモジナイザーへの入力物は、マイクロフルイダイザーの出力物(output)であり得る。その結果、上記第1のエマルジョンは、微小流動化され、次いで、再び、均質化に供される。
【0055】
(微小流動化)
第1のエマルジョンを形成した後、この第1のエマルジョンは、その平均油滴サイズを低下させ、そして/または1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数を低下させるために、微小流動化される。
【0056】
微小流動化機器は、入力成分のストリームを、形状が固定されたチャネルを通って高圧かつ高速で推進することによって、平均油滴サイズを低下させる。相互作用チャンバへの入り口での圧力(「第1の圧力」ともいわれる)は、成分がマイクロフルイダイザーの中へ供給される間の時間のうちの少なくとも85%(例えば、上記エマルジョンが上記マイクロフルイダイザーに供給される間の時間のうちの少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%もしくは100%)にわたって、実質的に一定であり得る(すなわち、±15%;例えば、±10%、±5%、±2%)。
【0057】
一実施形態において、上記第1の圧力は、上記エマルジョンが上記マイクロフルイダイザーに供給される間の時間のうちの85%にわたって、1300バール±15%(18kPSI±15%)、すなわち、1100バール〜1500バールの間(15kPSI〜21kPSIの間)である。2つの適切な圧力プロフィールが図3に示される。図3Aにおいて、上記圧力は、その時間のうちの少なくとも85%にわたって実質的に一定であるのに対して、図3Bにおいて、上記圧力は、連続して実質的に一定のままである。
【0058】
微小流動化装置は、代表的には、少なくとも1個の増圧ポンプ(intensifier pump)(好ましくは、同期性であり得る2個のポンプ)、および相互作用チャンバを含む。上記増圧ポンプは、理想的には、電気油圧駆動式であり、高圧(すなわち、上記第1の圧力)を提供して、エマルジョンを上記相互作用チャンバに押し込み、そして相互作用チャンバを通過させる。上記増圧ポンプの同期性は、上記で考察されるエマルジョンの実質的に一定の圧力を提供するために使用され得、これらは、すべてのエマルジョン液滴が、微小流動化の間に実質的に同じレベルの剪断力にさらされることを意味する。
【0059】
実質的に一定の圧力を使用することの1つの利点は、それが、微小流動化デバイスにおける疲労破損を低下させ得ることであり、このことは、上記デバイスのより長い寿命をもたらし得る。実質的に一定の圧力を使用することのさらなる利点は、上記第2のエマルジョンのパラメータが改善され得ることである。特に、上記第2のエマルジョンに存在する1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数は、低下し得る。さらに、上記第2のエマルジョンの平均油滴サイズは、実質的に一定の圧力が使用される場合に低下し得る。上記第2のエマルジョンにおける平均油滴サイズおよび1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数の低下は、改善された濾過性能を提供し得る。改善された濾過性能は、濾過の間に内容物のより少ない損失(例えば、上記エマルジョンがMF59である場合には、スクアレン、Tween 80およびSpan 85の損失)をもたらし得る。
【0060】
上記相互作用チャンバは、複数の(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個など)の固定された形状のチャネル(この中に上記エマルジョンが通過する)を含み得る。上記エマルジョンは、上記相互作用チャンバに、入力ラインを通って入り、入力ラインは、200〜250μmの間の直径を有し得る。上記エマルジョンは、これが上記相互作用チャンバに入るときにストリームに分離し、高圧下で、高速に加速する。上記エマルジョンが上記チャネルを通過するにつれて、上記高圧により生じた力が、上記エマルジョンの油滴サイズを低下させかつ1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数を低下させるように作用し得る。これら力としては、以下が挙げられ得る:チャネル壁との接触から生じるエマルジョンストリームの変形による剪断力;高速エマルジョンストリームが互いに衝突するときに生じる衝突による衝撃力;および上記ストリーム内の空洞の形成および崩壊によるキャビテーション力。上記相互作用チャンバは、通常、可動パーツを含まない。上記相互作用チャンバは、セラミック(例えば、アルミナ)もしくはダイアモンド(例えば、多結晶ダイアモンド)のチャネル表面を含み得る。他の表面は、ステンレス鋼から作製され得る。
【0061】
上記相互作用チャンバにおける上記複数のチャネルの固定された形状は、「Y」型の形状もしくは「Z」型の形状であり得る。
【0062】
Y型の形状の相互作用チャンバにおいて、単一の入力エマルジョンストリームは、第1のエマルジョンストリームおよび第2のエマルジョンストリームに分割され、次いで、これらストリームは、単一の出力エマルジョンストリームに再結合される。再結合の前に、上記第1のエマルジョンストリームおよび第2のエマルジョンストリームの各々は、独立して、第1のおよび第2の複数の(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個など)のサブストリームに分割され得る。上記エマルジョンストリームが再結合される場合、上記第1のエマルジョンストリームおよび第2のエマルジョンストリーム(もしくはそれらのサブストリーム)は、理想的には、実質的に反対の方向に流れている(例えば、上記第1のエマルジョンストリームおよび第2のエマルジョンストリーム、もしくはそれらのサブストリームは、実質的に同一平面(±20°)で流れており、上記第1のエマルジョンストリームの流れる方向は、上記第2のエマルジョンストリームの流れる方向から180±20°異なっている)。上記エマルジョンストリームが再結合される場合に生成される力は、上記エマルジョンの油滴サイズを低下させかつ1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数を低下させるように作用し得る。
【0063】
Z型の形状の相互作用チャンバにおいて、上記エマルジョンストリームは、複数(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個など)の実質的に直角の曲がり角(すなわち、90±20°)を回って通過する。図4は、Z型の形状を有し、流れる方向に2つの直角の曲がり角を有する相互作用チャンバを図示する。上記曲がり角を回って通過する間に、入力エマルジョンストリームは、複数(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個など)のサブストリームに分割され得、次いで、単一の出力エマルジョンストリームへと再結合される(例えば、4個のサブストリーム(32)とともに図4に示されるように)。上記分割およびその後の再結合(31)は、入力と出力との間の任意の点で起こり得る。上記エマルジョンが上記曲がり角を回って通過するにつれて上記チャネル壁と接触するときに生成される力は、上記エマルジョンの油滴サイズを低下させかつ1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数を低下させるように作用し得る。Z型相互作用チャンバの例は、Microfluidics製のE230Z相互作用チャンバである。
【0064】
一実施形態において、上記エマルジョンストリームは、2個の実質的に直角の曲がり角を回って通過する。上記入力エマルジョンストリームが上記第1の実質的に直角の曲がり角を回って通過する時点において、上記入力エマルジョンストリームは、5個のサブストリームに分割される。上記サブストリームが上記第2の実質的に直角の曲がり角を回って通過する時点において、上記サブストリームは、単一の出力エマルジョンストリームへと再結合される。
【0065】
先行技術において、本発明のもののように、水中油型エマルジョンのためにY型相互作用チャンバを使用することが通常であった。しかし、本発明者らは、水中油型エマルジョンのためにZ型チャネル形状の相互作用チャンバを使用することが有利であることを発見した。なぜなら、これは、Y型形状の相互作用チャンバと比較して、上記第2のエマルジョンに存在する1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数のより大幅な低下をもたらし得るからである。上記第2のエマルジョンにおける1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数の低下は、改善された濾過性能を提供し得る。改善された濾過性能は、濾過の間に内容物のより少ない損失(例えば、上記エマルジョンがMF59である場合には、スクアレン、Tween 80およびSpan 85の損失)をもたらし得る。
【0066】
好ましい微小流動化装置は、170バール〜2750バールの間の圧力において(約2500psi〜40000psi、例えば、約345バール、約690バール、約1380バール、約2070バールなどにおいて)作動する。
【0067】
好ましい微小流動化装置は、20L/分まで(例えば、14L/分まで、7L/分まで、3.5L/分までなど)の流速で作動する。
【0068】
好ましい微小流動化装置は、1×10−1を超過する(例えば、≧2.5×10−1、≧5×10−1、≧10−1など)剪断速度を提供する相互作用チャンバを有する。
【0069】
微小流動化装置は、並列で使用される複数の相互作用チャンバ(例えば、2個、3個、4個、5個以上)を含み得るが、単一の相互作用チャンバを含むことはより有用である。
【0070】
上記微小流動化デバイスは、少なくとも1個のチャネルを含む補助処理モジュール(APM)を含み得る。上記APMは、上記微小流動化デバイスを通過している上記エマルジョンにおける上記油滴の平均サイズの低下に寄与するが、上記低下の大部分は、上記相互作用チャンバにおいて起こる。上記のように、上記エマルジョンの成分は、第1の圧力下で、上記増圧ポンプによって上記相互作用チャンバに導入される。上記エマルジョンの成分は、一般に、上記第1の圧力より低い第2の圧力(例えば、大気圧)において上記APMを出る。一般に、上記第1の圧力と上記第2の圧力との間の圧力差のうちの80〜95%が、上記相互作用チャンバを横切って(例えば、図4においてPからPまで)低下し、上記第1の圧力と上記第2の圧力との間の圧力差のうちの5〜20%が、上記補助処理モジュールを横切って低下させられる。例えば、上記相互作用チャンバは、上記圧力低下のうちの約90%を提供し得る一方で、上記APMは、上記圧力低下のうちの約10%を提供し得る。上記相互作用チャンバを横切って低下した上記圧力および上記補助処理モジュールにわたって低下した圧力が、上記第1の圧力と上記第2の圧力との間の圧力差の全体の原因とはならない場合、これは、上記相互作用チャンバと上記補助処理モジュールとの間のコネクタを横断する有限の圧力低下に起因し得る。
【0071】
上記APMは、通常、可動部品を含む。上記APMは、セラミック(例えば、アルミナ)もしくはダイアモンド(例えば、多結晶性ダイアモンド)のチャネル表面を含み得る。他の表面は、ステンレス鋼から作製され得る。
【0072】
上記APMは、一般に、上記相互作用チャンバの下流に位置づけられ、同様に、上記相互作用チャンバに続いて位置づけられ得る。先行技術において、APMは、一般に、Y型チャネルを含む相互作用チャンバの下流に位置づけられて、キャビテーションを抑制し、それによって、Y型チャンバにおける流速を最大30%増大させる。さらに、先行技術において、APMは、一般に、Z型チャネルを含む相互作用チャンバの上流に位置づけられて、大きな凝集物のサイズを低下させる。後者の場合、上記APMは、上記Z型チャンバにおける流速を最大3%しか低下させない。しかし、複数のZ型チャネルを含む相互作用チャンバの下流に上記APMを位置づけることは、本発明において有利であることを見いだした。なぜなら、このことは、平均油滴サイズをより低下させることおよび上記第2のエマルジョンに存在する1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数をより低下させることをもたらし得るからである。上記で考察されるように、上記第2のエマルジョンにおいて1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数を低下させることは、改善された濾過性能を提供し得る。改善された濾過性能は、濾過の間に内容物のより少ない損失(例えば、水中油型エマルジョンがMF59である場合には、スクアレン、Tween 80およびSpan 85の損失)をもたらし得る。Z型相互作用チャンバおよび下流のAPMのこの位置づけのさらなる利点は、このことが、上記相互作用チャンバの後のよりゆっくりとした圧力低下をもたらし得ることである。上記よりゆっくりとした圧力低下は、生成物の安定性の増大をもたらし得る。なぜなら、上記エマルジョンの中に閉じ込められたガスを少なくするからである。
【0073】
APMは、少なくとも1個の固定された形状のチャネルを含み、その中に、上記エマルジョンが通過する。上記APMは、複数(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個など)の固定された形状のチャネルを含み得、その中に上記エマルジョンが通過する。上記APMのチャネルまたは複数のチャネルは、直線状であってもよいし非直線状であってもよい。適切な非直線状チャネルは、「Z」型形状もしくは「Y」型形状のものであり、これらは、上記相互作用チャンバについて記載されるものと同じである。一実施形態において、上記APMのチャネルまたは複数のチャネルは、Z型形状のものである。複数のZ型チャネルは、上記エマルジョンが上記APMに入るときに、これをストリームへと分離する。
【0074】
上記製造業者の推奨とは対照的に、複数の固定された形状のチャネルを含むAPMの使用は、単一の固定された形状のチャネルAPMと比較すると有利である。なぜなら、それは、上記第2のエマルジョンに存在する1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数をより低下させ得るからである。上記で考察されるように、上記第2のエマルジョンにおいて1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数が低下することは、改善された濾過性能を提供し得る。改善された濾過性能は、濾過の間に内容物のより少ない損失(例えば、上記水中油型エマルジョンがMF59である場合には、スクアレン、Tween 80およびSpan 85の損失)をもたらし得る。
【0075】
微小流動化装置は、作動の間に熱を発する。この熱は、上記第1のエマルジョンと比較して、エマルジョンの温度を15℃〜20℃上昇させ得る。有利には、従って微小流動化エマルジョンは、可能な限り素早く冷却される。上記第2のエマルジョンの温度は、60℃未満(例えば、45℃未満)に維持され得る。従って、相互作用チャンバの出力および/もしくはAPMの出力は、冷却機構(例えば、熱交換体もしくは冷却コイル)へと供給され得る。上記出力と上記冷却機構との間の距離は、可能な限り短く維持されて、冷却の遅れを減らすことによって全体の時間を短くすべきである。一実施形態において、上記マイクロフルイダイザーの出力と上記冷却機構との間の距離は、20〜30cmの間である。冷却機構は、エマルジョンが、上記エマルジョンの過熱を防ぐために複数の微小流動化工程に供される場合に特に有用である。
【0076】
上記微小流動化の結果は、水中油型エマルジョン、すなわち油滴の平均サイズが、500nm以下である第2のエマルジョンである。この平均サイズは、上記エマルジョンの濾過滅菌を促進するので特に有用である。油滴の数で少なくとも80%が平均サイズ500nm以下(例えば、400nm以下、300nm以下、200nm以下もしくは165nm以下)を有するエマルジョンは、特に有用である。さらに、1.2μmよりも大きいサイズを有する上記第2のエマルジョン中の油滴の数は、5×1010/ml以下(例えば、5×10/ml以下、5×10/ml以下もしくは2×10/ml以下)である。
【0077】
上記微小流動化のための最初の入力は、上記第1のエマルジョンであり得る。しかし、いくつかの実施形態において、微小流動化エマルジョンは、再び微小流動化に供され、その結果、複数回の微小流動化が起こる。特に、上記第2のエマルジョンは、上記第2のエマルジョンの成分を、微小流動化デバイスを複数回(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回など)通って循環させることによって形成され得る。上記第2のエマルジョンは、上記第2のエマルジョンの成分を、微小流動化デバイスを4〜7回通して循環させることによって形成され得る。
【0078】
上記第2のエマルジョンの成分の循環は、上記第2のエマルジョンの成分を、第1のエマルジョン容器(必要に応じて、上記第1の予備混合容器と同じ特性を有する)と上記微小流動化デバイスとの間に移動させるI型循環を含み得る。
【0079】
上記第2のエマルジョンの成分の循環は、上記第2のエマルジョンの成分を第1のエマルジョン容器から、第1の微小流動化デバイスを通って、第2のエマルジョン容器(必要に応じて、上記第1の予備混合容器と同じ特性を有する)へ移し、次いで、第2の微小流動化デバイスを通過させるII型循環を含み得る。
【0080】
上記第2の微小流動化デバイスは、上記第1の微小流動化デバイスと同じであり得る。あるいは、上記第2の微小流動化デバイスは、上記第1の微小流動化デバイスとは異なり得る。
【0081】
上記第1のエマルジョン容器は、上記第1の予備混合容器と同じであり得る。あるいは、上記第1のエマルジョン容器は、上記第2の予備混合容器と同じであり得る。
【0082】
上記第2のエマルジョン容器は、上記第1の予備混合容器と同じであり得る。あるいは、上記第2のエマルジョン容器は、上記第2の予備混合容器と同じであり得る。
【0083】
上記第1のエマルジョン容器は、上記第1の予備混合容器と同じであり得、上記第2のエマルジョン容器は、上記第2の予備混合容器と同じであり得る。あるいは、上記第1のエマルジョン容器は、上記第2の予備混合容器と同じであり得、上記第2のエマルジョン容器は、上記第1の予備混合容器と同じであり得る。
【0084】
代替として、上記第1のエマルジョンおよび第2のエマルジョン容器は、上記第1の予備混合容器および第2の予備混合容器とは異なり得る。
【0085】
上記第2のエマルジョンの成分が上記第2の微小流動化デバイスを通過した後に、上記第2のエマルジョンの成分は、例えば、上記II型循環プロセスが反復されるべき場合、上記第1のエマルジョン容器に戻され得る。II型循環は、1回もしくは複数回(例えば、2回、3回、4回、5回など)行われ得る。
【0086】
II型循環は、すべての上記第2のエマルジョンの成分が上記微小流動化デバイスを少なくとも2回通過したことを確実にするので有利である。このことは、上記第2のエマルジョンにおける油滴の平均サイズおよび1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数を低下させる。
【0087】
I型循環およびII型循環の組み合わせは、微小流動化の間に使用され得る。この組み合わせは、I型循環およびII型循環の任意の順序(例えば、I型に続いてII型、II型に続いてI型、I型に続いてII型、その後I型を再びなど)を含み得る。
【0088】
上記第1のエマルジョン容器および第2のエマルジョン容器は、不活性ガス(例えば、最大0.5バールの窒素)の下で保持され得る。このことは、上記エマルジョンの成分が酸化しないようにし、このことは、上記エマルジョンの成分のうちの1つがスクアレンである場合に特に有利である。これは、上記エマルジョンの安定性の増大をもたらす。
【0089】
本発明の方法は、大スケールで使用され得る。従って、ある方法は、1リットルより大きい体積(例えば、≧5リットル、≧10リットル、≧20リットル、≧50リットル、≧100リットル、≧250リットルなど)を微小流動化する工程を含み得る。
【0090】
(濾過)
微小流動化の後、上記第2のエマルジョンは濾過される。この濾過は、上記均質化手順および微小流動化手順から残った任意の大きな油滴を除去する。数の観点からすると少ないが、これら油滴は、体積の観点からすると大きい可能性があり、それらは、凝集の核形成部位として作用し得、貯蔵の間のエマルジョン分解をもたらし得る。さらに、この濾過工程は、濾過滅菌を達成し得る。
【0091】
濾過滅菌に適した特定の濾過膜は、上記第2のエマルジョンの流体特性および必要とされる濾過の程度に依存する。フィルタの特性は、微小流動化エマルジョンの濾過に対する適切性に影響を及ぼし得る。例えば、その孔サイズおよび表面特性は、特に、スクアレンベースのエマルジョンを濾過する場合に、重要であり得る。
【0092】
本発明とともに使用される膜の孔サイズは、所望の液滴の通過を許容すると同時に、望ましくない液滴を保持すべきである。例えば、それは、1μm以上のサイズを有する液滴を保持すると同時に、200nmより小さな液滴の通過を許容すべきである。0.2μmもしくは0.22μmのフィルタが理想的であり、これはまた濾過滅菌も達成し得る。
【0093】
上記エマルジョンは、例えば、0.45μmフィルタを通って、予備濾過(prefilter)され得る。上記予備濾過および濾過は、より大きな孔を有する第1の膜層およびより小さな孔を有する第2の膜層を含む公知の二重層フィルタの使用によって、一工程で達成され得る。二重層フィルタは、本発明で特に有用である。上記第1の層は、理想的には、0.3μmより大きな孔サイズ(例えば、0.3〜2μmの間もしくは0.3〜1μmの間、もしくは0.4〜0.8μmの間、もしくは0.5〜0.7μmの間)を有する。上記第1の層における0.75μm以下の孔サイズが好ましい。従って、上記第1の層は、例えば、0.6μmもしくは0.45μmの孔サイズを有し得る。上記第2の層は、理想的には、上記第1の層の孔サイズの75%未満(および理想的には、その半分未満(例えば、上記第1の層の孔サイズの25〜70%の間もしくは25〜49%の間、例えば、上記第1の層の孔サイズの30〜45%の間(例えば、1/3もしくは4/9)))である孔サイズを有する。従って、上記第2の層は、0.3μmより小さな孔サイズ(例えば、0.15〜0.28μmの間もしくは0.18〜0.24μmの間)を有し得る(例えば、0.2μmもしくは0.22μmの孔サイズの第2の層)。一例において、上記より大さな孔を有する第1の膜層は、0.45μmフィルタを提供する一方で、上記より小さな孔を有する第2の膜層は、0.22μmフィルタを提供する。
【0094】
上記濾過膜および/もしくは上記予備濾過膜は、非対称であり得る。非対称膜は、上記孔サイズが上記膜の一方の側面から他方の側面まで変動する(例えば、ここで上記孔サイズは、出口面より入口面でより大きい)ものである。上記非対称膜の一方の側面は、「粗孔性表面(coarse pored surface)」といわれ得る一方で、上記非対称膜の他方の側面は、「微細孔性表面」といわれ得る。二重層フィルタにおいて、一方もしくは(理想的には)両方の層が、非対称であり得る。
【0095】
上記濾過膜は、多孔性もしくは均質であり得る。均質な膜は、通常は、10〜200μmの範囲の密なフィルムである。多孔性の膜は、多孔性構造を有する。一実施形態において、上記濾過膜は、多孔性である。二重層フィルタにおいて、両方の層は、多孔性であり得、両方の層は、均質であり得るか、または一つの多孔性層および一つの均質な層が存在し得る。好ましい二重層フィルタは、両方の層が多孔性であるものである。
【0096】
一実施形態において、上記第2のエマルジョンは、非対称で親水性の多孔性膜を通して予備濾過され、次いで、予備濾過膜より小さな孔を有する別の非対称で親水性の多孔性膜を通って濾過される。これは、二重層フィルタを使用し得る。
【0097】
上記フィルタ膜は、無菌であることを確実にするために使用する前に、オートクレーブにかけられ得る。
【0098】
濾過膜は、代表的には、ポリマー支持材料(例えば、PTFE(ポリ−テトラ−フルオロ−エチレン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PVP(ポリビニルピロリドン)、PVDF(ポリビニリデンフルオリド)、ナイロン(ポリアミド)、PP(ポリプロピレン)、セルロース(セルロースエステルを含む)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ニトロセルロースなど)から作製される。これらは、種々の特性を有し、ある支持体は、本質的に疎水性(例えば、PTFE)であり、またほかの支持体は、本質的に親水性(例えば、酢酸セルロース)である。しかし、これら本質的な特性は、上記膜表面を処理することによって改変され得る。例えば、上記膜表面を他の材料(例えば、他のポリマー、グラファイト、シリコーンなど)で処理して、上記膜表面をコーティングすることによって、親水性化(hydrophilized)膜もしくは疎水性化(hydrophobized)膜を調製することは公知である(例えば、参考文献15の第2.1節を参照のこと)。二重層フィルタにおいて、上記2つの膜は、異なる材料から作られてもよいし、(理想的には)同じ材料から作られてもよい。
【0099】
本発明とともに使用するための理想的フィルタは、疎水性(ポリスルホン)フィルタが使用されるべきであるという参考文献9〜12の教示とは対照的に、親水性表面を有する。親水性表面を有するフィルタは、親水性材料から形成され得るか、または疎水性材料の親水性化(hydrophilization)によって形成され、本発明での使用に好ましいフィルタは、親水性ポリエーテルスルホン膜である。いくつかの異なる方法は、疎水性PES膜を親水性PES膜へと変えることは公知である。しばしば、それは、親水性ポリマーで上記膜をコーティングすることによって達成される。上記親水性ポリマーの恒久的なPESへの結合を提供するために、親水性コーティング層は、通常、架橋反応もしくはグラフト化(grafting)のいずれかに供される。参考文献15は、官能化可能な鎖の末端を有する疎水性ポリマーの表面特性を改変するためのプロセスを開示し、上記プロセスは、上記ポリマーとリンカー部分の溶液とを接触させて、共有結合を形成する工程、次いで、上記反応した疎水性ポリマーと改変剤(modifying agent)の溶液とを接触させる工程を包含する。参考文献16は、直接膜コーティングによってPES膜を親水性化する方法を開示し、上記方法は、アルコールであらかじめぬらす工程、次いで、親水性モノマー、多官能性モノマー(架橋剤)および重合開始剤を含む水溶液中に浸漬させる工程を包含する。上記モノマーおよび架橋剤を、次いで、熱重合もしくはUV開始重合を使用して重合し、上記膜表面上に架橋された親水性ポリマーのコーティングを形成する。同様に、参考文献17および18は、PES膜を、親水性ポリマー(ポリアルキレンオキシド)および少なくとも1種の多官能性モノマー(架橋剤)の水溶液中に浸漬し、次いで、モノマーを重合して、抽出不能な親水性コーティングを提供することによって、上記PES膜をコーティングすることを開示する。参考文献19は、PES膜が低温ヘリウムプラズマ処理、続いて、親水性モノマーであるN−ビニル−2−ピロリドン(NVP)の、上記膜表面へのグラフト化に供されるグラフト化反応によって、PES膜の親水性化を記載する。さらに、このようなプロセスは、参考文献20〜26に開示される。
【0100】
コーティングに依拠しない方法において、PESは、溶媒中に溶解され得、可溶性の親水性添加剤とともにブレンドされ得、次いで、上記ブレンドされた溶液は、例えば、沈殿によるかもしくは共重合化を開始するかによって、親水性膜を注型するために使用される。このような方法は、参考文献27〜33において開示される。例えば、参考文献33は、低い膜抽出性を有し、超純水耐性の迅速な回復を可能にする、親水性の電荷が改変された膜を調製するための方法を開示し、上記膜は、PES、PVP、ポリエチレンイミン、および脂肪族ジグリシジルエーテルのブレンドのポリマー溶液を作製し、上記溶液の薄いフィルムを形成し、膜としてこのフィルムを沈殿させて形成される、架橋された、相互貫入(inter−penetrating)ポリマーネットワーク構造を有する。類似のプロセスは、参考文献34に開示される。
【0101】
ハイブリッドアプローチが、使用され得る。ここで親水性添加剤が、膜形成の間に存在し、また、コーティングとして後に添加される(例えば、参考文献35を参照のこと)。
【0102】
PES膜の親水性化はまた、低温プラズマでの処理によって達成され得る。参考文献36は、低温COプラズマでの処理によるPES膜の親水性改変を記載する。
【0103】
PES膜の親水性化はまた、参考文献37に記載されるように、酸化によって達成され得る。この方法は、疎水性PES膜を、低表面張力を有する液体中であらかじめぬらす工程、上記ぬらしたPES膜を酸化剤の水溶液に曝露する工程、次いで、加熱する工程を包含する。
【0104】
転相(phase inversion)もまた、参考文献38に記載されるように、使用され得る。
【0105】
理想的な親水性PES膜は、PES(疎水性)をPVP(親水性)で処理することによって得られ得る。PVPの代わりに、PEG(親水性)での処理は、容易に詰まり(fouled)(特に、スクアレン含有エマルジョンを使用する場合に)、また、不利なことには、オートクレーブの間にホルムアルデヒドを放出する、親水性化したPES膜を与えることが見いだされた。
【0106】
好ましい二重層フィルタは、第1の親水性PES膜および第2の親水性PES膜を有する。
【0107】
公知の親水性膜としては、Bioassure(Cuno製);EverLUXTM ポリエーテルスルホン;STyLUXTM ポリエーテルスルホン(ともにMeissner製);Millex GV、Millex HP、Millipak 60、Millipak 200およびDurapore CVGL01TP3膜(Millipore製);FluorodyneTM EX EDF膜、SuporTM EAV;SuporTM EBV、SuporTM EKV(すべてPall製);SartoporeTM(Sartorius製);Sterlitechの親水性PES膜;およびWolftechnikのWFPES PES膜が挙げられる。
【0108】
濾過の間に、上記エマルジョンは、成功裏の滅菌濾過を容易にするために、40℃以下(例えば、30℃以下)の温度で維持され得る。いくつかのエマルジョンは、これらが40℃より高い温度にある場合に、滅菌フィルタを通過しない可能性がある。
【0109】
上記第2のエマルジョンを生成する24時間以内に(例えば、18時間以内、12時間以内、6時間以内、2時間以内、30分以内に)濾過工程を行うことは有利である。なぜなら、この時間の後に、参考文献39で考察されるように、上記フィルタを詰まらせずに上記第2のエマルジョンを上記滅菌フィルタに通過させることはできない可能性があるからである。
【0110】
本発明の方法は、大スケールで使用され得る。従って、ある方法は、1リットルより大きい体積(例えば、≧5リットル、≧10リットル、≧20リットル、≧50リットル、≧100リットル、≧250リットルなど)を濾過する工程を包含し得る。
【0111】
(最終エマルジョン)
微小流動化および濾過の結果は、油滴の平均サイズが220nm未満(例えば、155±20nm、155±10nmもしくは155±5nm)であり得、1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数が5×10/ml以下(例えば、5×10/ml以下、5×10/ml以下、2×10/ml以下もしくは5×10/ml以下)であり得る水中油型エマルジョンである。
【0112】
本明細書に記載されるエマルジョンの平均油滴サイズ(上記第1のエマルジョンおよび第2のエマルジョンを含む)は、一般に、50nm未満ではない。
【0113】
本発明の方法は、大スケールで使用され得る。従って、ある方法は、1リットルより大きな体積(例えば、≧5リットル、≧10リットル、≧20リットル、≧50リットル、≧100リットル、≧250リットルなど)で最終エマルジョンを調製する工程を包含し得る。
【0114】
いったん上記水中油型エマルジョンが形成されたら、これは、滅菌ガラスボトルに移され得る。上記ガラスボトルは、5L、8L、もしくは10Lのサイズであり得る。あるいは、上記水中油型は、滅菌可撓性バッグ(フレックスバッグ(flex bag)の中に移され得る。上記フレックスバッグは、50L、100Lもしくは250Lのサイズであり得る、さらに、上記フレックスバッグは、1個以上の滅菌コネクタと適合させられて、上記フレックスバッグを上記システムに接続し得る。滅菌コネクタ付きフレックスバッグの使用は、ガラスボトルと比較して有利である。なぜなら、上記フレックスバッグは、ガラスボトルより大きく、このことは、単一のバッチで製造されたすべての上記エマルジョンを貯蔵するために上記フレックスバッグを交換する必要がないかもしれないことを意味するからである。これは、上記最終エマルジョンに不純物が存在する可能性を低下させ得る、上記エマルジョンの製造のための滅菌閉鎖系を提供し得る。これは、上記最終エマルジョンが、薬学的目的のために使用される場合(例えば、上記最終エマルジョンが、上記MF59アジュバントである場合)に特に重要であり得る。
【0115】
上記最終エマルジョン中の油(体積%)の好ましい量は、2〜20%の間(例えば、約10%)である。約5%もしくは約10%のスクアレン含有量は、特に有用である。30〜50mg/mlの間のスクアレン含有量(w/v)は、有用である(例えば、35〜45mg/mlの間、36〜42mg/mlの間、38〜40mg/mlの間など)。
【0116】
上記最終エマルジョン中の界面活性剤(重量%)の好ましい量は、以下である:ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、Tween 80) 0.02〜2%(特に、約0.5%もしくは約1%);ソルビタンエステル(例えば、Span 85) 0.02〜2%(特に、約0.5%もしくは約1%);オクチル−もしくはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、Triton X−100) 0.001〜0.1%(特に、0.005〜0.02%);ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ラウレス 9) 0.1〜20%(好ましくは、0.1〜10%および特に、0.1〜1%もしくは約0.5%)。4〜6mg/mlの間のポリソルベート 80含有量(w/v)は、有用である(例えば、4.1〜5.3mg/mlの間)。4〜6mg/mlの間のソルビタントリオレエート含有量(w/v)は、有用である(例えば、4.1〜5.3mg/mlの間)。
【0117】
上記プロセスは、以下の水中油型エマルジョンのうちのいずれかを調製するために、特に有用である:
・スクアレン、ポリソルベート 80(Tween 80)、およびソルビタントリオレエート(Span 85)を含むエマルジョン。上記エマルジョンの体積組成は、約5% スクアレン、約0.5% ポリソルベート 80および約0.5% ソルビタントリオレエートであり得る。重量の観点では、これら量は、4.3% スクアレン、0.5% ポリソルベート 80および0.48% ソルビタントリオレエートになる。このアジュバントは、「MF59」として公知である。上記MF59エマルジョンは、有利には、クエン酸イオン(例えば、10mM クエン酸ナトリウム緩衝液)を含む。
【0118】
・スクアレン、α−トコフェロール(理想的には、DL−α−トコフェロール)、およびポリソルベート 80を含むエマルジョン。これらエマルジョンは、(重量で)2〜10% スクアレン、2〜10% α−トコフェロールおよび0.3〜3% ポリソルベート 80(例えば、4.3% スクアレン、4.7% α−トコフェロール、1.9% ポリソルベート 80)を有し得る。スクアレン:トコフェロールの重量比は、好ましくは、≦1(例えば、0.90)である。なぜならこれは、より安定なエマルジョンを提供するからである。スクアレンおよびポリソルベート 80は、体積比約5:2、もしくは重量比約11:5で存在し得る。1つのこのようなエマルジョンは、ポリソルベート 80をPBS中に溶解して、2%溶液を与え、次いで、90mlのこの溶液と、(5gのDL−α−トコフェロールおよび5mlスクアレン)の混合物とを混合し、次いで、上記混合物を微小流動化することによって作製され得る。得られたエマルジョンは、サブミクロンの油滴(例えば、100〜250nmの間のサイズ、好ましくは、約180nm)を有し得る。
【0119】
・スクアレン、トコフェロール、およびTriton洗剤(例えば、Triton X−100)のエマルジョン。上記エマルジョンはまた、3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA(「3d−MPL」)を含み得る。上記エマルジョンは、リン酸緩衝液を含み得る。
【0120】
・スクアレン、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート 80)、Triton洗剤(例えば、Triton X−100)およびトコフェロール(例えば、α−トコフェロールスクシネート)を含むエマルジョン。上記エマルジョンは、これら3種の成分を約75:11:10の質量比(例えば、750μg/ml ポリソルベート 80、110μg/ml Triton X−100および100μg/ml α−トコフェロールスクシネート)で含み得、これら濃度は、抗原に由来するこれら成分の任意の寄与を含み得る。上記エマルジョンはまた、3d−MPLを含み得る。上記エマルジョンはまた、サポニン(例えば、QS21)を含み得る。上記水相は、リン酸緩衝液を含み得る。
【0121】
・スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、親水性の非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル)および疎水性の非イオン性界面活性剤(例えば、ソルビタンエステルもしくはマンニドエステル(mannide ester)、例えば、ソルビタンモノオレエートもしくは「Span 80」)を含むエマルジョン。上記エマルジョンは、好ましくは、熱可逆的であり、そして/または少なくとも(体積で)90%の油滴が200nm未満のサイズを有する[40]。上記エマルジョンはまた、以下のうちの1種以上を含み得る:アルジトール;凍結防止剤(cryoprotective agent)(例えば、ドデシルマルトシドおよび/またはスクロースのような糖);および/またはアルキルポリグリコシド。上記エマルジョンはまた、TLR4アゴニスト(例えば、その化学構造が糖の環を含まないもの)を含み得る[41]。そのようなエマルジョンは、凍結乾燥され得る。
【0122】
これらエマルジョンの組成(パーセンテージの観点で上記に表される)は、(例えば、整数(例えば、2もしくは3)での、または分数(例えば、2/3もしくは3/4)での)希釈もしくは濃縮によって修飾され得る。ここでそれらの比は、同じままである。例えば、2倍濃縮したMF59は、約10% スクアレン、約1% ポリソルベート 80および約1% ソルビタントリオレエートを有する。濃縮した形態は、(例えば、抗原溶液で)希釈されて、所望の最終濃度のエマルジョンを与え得る。
【0123】
本発明のエマルジョンは、理想的には、2℃〜8℃の間で貯蔵される。それらは、凍結されるべきでない。それらは、理想的には、直射光から避けられるべきである。特に、本発明のスクアレン含有エマルジョンおよびワクチンは、スクアレンの光化学分解を回避するために保護されるべきである。本発明のエマルジョンが貯蔵される場合、これは、好ましくは、不活性雰囲気(例えば、Nもしくはアルゴン)中にある。
【0124】
(ワクチン)
水中油型エマルジョンアジュバントをそれ自体患者に投与することは可能であるが(例えば、上記患者に別個に投与された抗原にアジュバント効果を提供するために)、投与する前に上記アジュバントと抗原とを混合して、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)を形成することが、より一般的である。エマルジョンと抗原の混合は、即座に、使用時に行われてもよいし、充填前に、ワクチン製造の間に行われてもよい。本発明の方法は、両方の状況において適用され得る。
【0125】
従って、本発明の方法は、上記エマルジョンと抗原成分とを混合するさらなるプロセス工程を含み得る。代替として、本発明の方法は、キット成分として、キットの中に上記アジュバントを、抗原成分と一緒にパッケージするさらなる工程を含み得る。
【0126】
従って、全体的に、本発明は、混合されたワクチンを調製する場合に、もしくは混合する準備ができている抗原およびアジュバントを含むキットを調製する場合に、使用され得る。混合が製造の間に行われる場合、混合されるバルク抗原およびエマルジョンの体積は、代表的には、1リットルより大きい(例えば、≧5リットル、≧10リットル、≧20リットル、≧50リットル、≧100リットル、≧250リットルなど)。混合が使用時に行われる場合、混合される上記体積は、代表的には、1ミリリットルより小さい(例えば、≦0.6ml、≦0.5ml、≦0.4ml、≦0.3ml、≦0.2mlなど)。両方の場合において、エマルジョンおよび抗原溶液の実質的に等しい体積が混合される(すなわち、実質的に、1:1(例えば、1.1:1〜1:1.1の間、好ましくは、1.05:1〜1:1.05の間、より好ましくは、1.025:1〜1:1.025の間)ことは通常である。しかし、いくつかの実施形態において、過剰のエマルジョンもしくは過剰の抗原が使用され得る[42]。過剰体積の1つの成分が使用される場合、上記過剰は、一般に、少なくとも1.5:1(例えば、≧2:1、≧2.5:1、≧3:1、≧4:1、≧5:1など)である。
【0127】
抗原およびアジュバントが、別個の成分としてキット内で提示される場合、それらは、上記キット内で互いに物理的に分離しており、この分離は、種々の方法で達成され得る。例えば、上記成分は、別個の容器(例えば、バイアル)の中にあり得る。次いで、2本のバイアルの内容物は、必要なときに、例えば、一方のバイアルの上記内容物を取り出し、そして他方のバイアルへとそれを添加することによって、または両方のバイアルの内容物を別個に取り出し、そして第3の容器の中で混合することによって、混合され得る。
【0128】
別の構成において、上記キット成分のうちの一方は、シリンジの中にあり、他方は、容器(例えば、バイアル)の中にある。上記シリンジは、(例えば、針で)その内容物を上記バイアルの中に入れて、混合するために使用され得、上記混合物は、次いで、上記シリンジの中に引き抜かれ得る。上記シリンジの混合された内容物は、次いで、患者に、代表的には、新しい滅菌針によって投与され得る。シリンジの中に1つの成分をパッキングすることは、患者に投与するために別個のシリンジを使用する必要性を排除する。
【0129】
別の好ましい構成において、上記2つのキット成分は、一緒に保持されるが、例えば、参考文献43〜50などに開示されるもののような同じシリンジ(例えば、デュアルチャンバシリンジ)の中で別個に保持される。上記シリンジが作動させられる(例えば、患者への投与の間に)場合、上記2つのチャンバの内容物が混合される。この構成は、使用時に別個の混合工程を必要とすることを回避する。
【0130】
上記種々のキット成分の内容物は、一般に、すべて液体形態にある。いくつかの構成において、成分(代表的には、上記エマルジョンの成分ではなく上記抗原成分)は、乾燥形態(例えば、凍結乾燥形態)にあり、他方の成分は、液体形態にある。上記2つの成分は、上記乾燥成分を再活性化させ、患者への投与のための液体組成物を与えるために、混合され得る。凍結乾燥した成分は、代表的には、シリンジ内ではなくバイアル内に配置される。乾燥した成分は、安定化剤(例えば、ラクトース、スクロースもしくはマンニトール)、およびこれらの混合物(例えば、ラクトース/スクロース混合物、スクロース/マンニトール混合物など)を含み得る。1つの考えられる構成は、予め充填したシリンジの中の液体エマルジョン成分およびバイアルの中の凍結乾燥した抗原成分を使用する。
【0131】
ワクチンが、エマルジョンおよび抗原に加えて、成分を含む場合、これらさらなる成分は、1つの中にこれら2つのキット成分が含まれてもよいし、第3のキット成分の一部であってもよい。
【0132】
本発明の混合されたワクチン、もしくは個々のキット成分に適した容器としては、バイアルおよび使い捨てシリンジが挙げられる。これら容器は、無菌であるべきである。
【0133】
組成物/成分がバイアル中に配置される場合、上記バイアルは、好ましくは、ガラス材料もしくはプラスチック材料から作製される。上記バイアルは、好ましくは、上記組成物がそこへ添加される前に滅菌される。ラテックス感受性の患者に伴う問題を回避するために、バイアルは、好ましくは、ラテックス非含有ストッパーでシールされ、すべてのパッケージ材料にラテックスがないことは、好ましい。一実施形態において、バイアルは、ブチルゴムストッパーを有する。上記バイアルは、ワクチン/成分の単一用量を含んでいてもよいし、1つより多くの用量を含んでいてもよい(「複数用量」バイアル(例えば、10用量))。一実施形態において、バイアルは、10×0.25ml用量のエマルジョンを含む、好ましいバイアルは、無色のガラスから作製される。
【0134】
バイアルは、予め充填したシリンジがキャップの中に挿入され得、上記シリンジの内容物が上記バイアルの中に(例えば、そこで凍結乾燥された材料を再構成するために)排出され得、上記バイアルの内容物が、上記シリンジの中に戻され得るように適合された、キャップ(例えば、ルアーロック)を有し得る。上記バイアルから上記シリンジを外した後、次いで、針が取り付けられ得、上記組成物が患者へと投与され得る。上記キャップは、上記キャップにアクセスし得る前に、シールもしくはカバーが外されなければならないように、好ましくは、シールもしくはカバーの中に配置される。
【0135】
組成物/成分が、シリンジの中にパッケージされる場合、上記シリンジは、通常は、これに取り付けられる針を有しないが、別個の針が、組み立ておよび使用のために、上記シリンジとともに供給され得る。安全針が好ましい。1インチ 23ゲージ、1インチ 25ゲージ、および5/8インチ 25ゲージの針が、代表的である。シリンジは、ピールオフラベル(その上に、ロット番号、インフルエンザ流行期、および内容物の有効期限が印刷され得る)とともに提供されて、記録の保持を容易にし得る。上記シリンジにおけるプランジャーは、好ましくは、上記プランジャーが吸引の間に偶発的に外れないようにストッパーを有する。上記シリンジは、ラテックス・ゴムキャップおよび/もしくはプランジャーを有し得る。使い捨てシリンジは、単一用量のワクチンを含む。上記シリンジは、一般に、先端部キャップを有して、針を取り付ける前に先端部をシールし、上記先端キャップは、好ましくは、ブチルゴムから作製される。上記シリンジおよび針が別個にパッケージされる場合、上記針には、好ましくは、ブチルゴム保護物が取り付けられる。
【0136】
上記エマルジョンは、バイアルもしくはシリンジの中にパッケージされる前に、緩衝液で希釈され得る。代表的な緩衝液としては、以下が挙げられる:リン酸緩衝液;Tris緩衝液;ホウ酸緩衝液;コハク酸緩衝液;ヒスチジン緩衝液;もしくはクエン酸緩衝液。希釈は、それらの相対的な割合を保持しながら(例えば、「半分の強度」のアジュバントを提供するために)上記アジュバントの成分の濃度を減少させ得る。
【0137】
容器は、例えば、小児への送達を容易にするために、半用量体積を示すように印が付けられ得る。例えば、0.5ml用量を含むシリンジは、0.25mlの体積を示す印を有し得る。
【0138】
ガラス容器(例えば、シリンジもしくはバイアル)が使用される場合、ソーダ石灰ガラスではなくホウケイ酸ガラスから作製された容器を使用することが好ましい。
【0139】
種々の抗原は、水中油型エマルジョンとともに使用され得る。それらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ウイルス抗原(例えば、ウイルス表面タンパク質);細菌抗原(例えば、タンパク質および/もしくはサッカリド抗原);真菌抗原;寄生生物抗原;および腫瘍抗原。本発明は、インフルエンザウイルス、HIV、鉤虫、B型肝炎ウイルス、単純ヘルペス・ウイルス、狂犬病、RSウイルス、サイトメガロウイルス、Staphylococcus aureus、クラミジア、SARSコロナウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、Streptococcus pneumoniae、Neisseria meningitidis、Mycobacterium tuberculosis、Bacillus anthracis、エプスタイン・バー・ウイルス、ヒトパピローマウイルスなどに対するワクチンに特に有用である。例えば:
・インフルエンザウイルス抗原。これらは、生ウイルスもしくは不活性化ウイルスの形態をとり得る。不活性化ウイルスが使用される場合、上記ワクチンは、完全ビリオン、スプリットビリオン、もしくは精製表面抗原(ヘマグルチニンを含み、通常は、ノイラミニダーゼも含む)を含み得る。インフルエンザ抗原はまた、ビロソームの形態で提示され得る。上記抗原は、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15および/もしくはH16から選択される任意のヘマグルチニンサブタイプを有し得る。ワクチンは、1つ以上の(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ以上の)インフルエンザウイルス株(インフルエンザAウイルスおよび/もしくはインフルエンザBウイルスを含む)に由来する抗原を含み得る(例えば、一価A/H5N1もしくはA/H1N1ワクチン、もしくは三価A/H1N1 + A/H3N2 + Bワクチン)。上記インフルエンザウイルスは、リアソータント株であり得、逆遺伝学技術によって得られてきた可能性がある[例えば、51〜55]。従って、上記ウイルスは、A/PR/8/34ウイルスに由来する1個以上のRNAセグメント(代表的には、A/PR/8/34に由来する6個のセグメントであり、上記HAおよびNセグメントは、ワクチン株に由来する(すなわち、6:2リアソータント))を含み得る。上記抗原の供給源として使用されるウイルスは、卵(例えば、胚含有鶏卵)もしくは細胞培養物のいずれかで増殖させられ得る。細胞培養物が使用される場合、その細胞基質は、代表的には、哺乳動物細胞株(例えば、MDCK;CHO;293T;BHK;Vero;MRC−5;PER.C6;WI−38など)である。インフルエンザウイルスを増殖させるのに好ましい哺乳動物細胞株としては、以下が挙げられる:Madin Darbyイヌ腎臓に由来するMDCK細胞[56〜59];アフリカミドリザル腎臓に由来するVero細胞[60〜62];もしくはヒト胚性網膜芽細胞に由来するPER.C6細胞[63]。ウイルスが哺乳動物細胞株上で増殖させられた場合、上記組成物は、有利なことには、卵タンパク質(例えば、オボアルブミンおよびオボムコイド)を含まず、かつニワトリDNAを含まず、それによって、アレルゲン性が低下する。ワクチンの単位用量は、代表的には、ヘマグルチニン(HA)含有量を参照することによって標準化され、代表的には、SRIDによって測定される。既存のワクチンは、代表的には、約15μgのHA/株を含むが、特にアジュバントを使用する場合、より低い用量が使用され得る。分割量(例えば、1/2(すなわち、7.5μg HA/株)、1/4および1/8)[64,65]が使用されており、より高い用量(例えば、3×もしくは9×用量)も同様に使用されてきた[66,67]。従って、ワクチンは、0.1〜150μgの間のHA/インフルエンザ株(好ましくは、0.1〜50μgの間、例えば、0.1〜20μg、0.1〜15μg、0.1〜10μg、0.1〜7.5μg、0.5〜5μgなど)を含み得る。特定の用量は、1株あたり、例えば、約15、約10、約7.5、約5、約3.8、約3.75、約1.9、約1.5などを含む。
【0140】
・ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1およびHIV−2を含む)。上記抗原は、代表的には、エンベロープ抗原である。
【0141】
・B型肝炎ウイルス表面抗原。この抗原は、好ましくは、組換えDNA法によって(例えば、Saccharomyces cerevisiae酵母での発現後に)得られる。天然ウイルスHBsAgとは異なり、酵母で発現された組換え抗原はグリコシル化されていない。上記抗原は、リン脂質を含む脂質マトリクスを含む実質的に球状の粒子(平均直径約20nm)の形態であり得る。天然のHBsAg粒子とは異なり、酵母で発現された粒子は、ホスファチジルイノシトールを含み得る。上記HBsAgは、サブタイプayw1、ayw2、ayw3、ayw4、ayr、adw2、adw4、adrq−およびadrq+のうちのいずれかに由来し得る。
【0142】
・特にイヌで認められるような鉤虫(Ancylostoma caninum)。この抗原は、組換えAc−MTP−1(アスタシン様メタロプロテアーゼ)および/もしくはアスパラギン酸ヘモグロビナーゼ(aspartic hemoglobinase)(Ac−APR−1)であり得る。これらは、分泌タンパク質としてバキュロウイルス/昆虫細胞系で発現され得る[68、69]。
【0143】
・単純ヘルペス・ウイルス抗原(HSV)。本発明での使用に好ましいHSV抗原は、膜糖タンパク質gDである。HSV−2株由来のgD(「gD2」抗原)を使用することが好ましい。上記組成物は、gDの形態を使用し得る。ここで、そのC末端膜アンカー領域が、欠失されている[70]。例えば、アスパラギンおよびグルタミンがC末端に付加された、天然タンパク質のアミノ酸1〜306を含む短縮型gD。上記タンパク質のこの形態は、成熟283アミノ酸タンパク質を生じるために切断されるシグナルペプチドを含む。上記アンカーの欠失は、上記タンパク質が可溶性形態で調製されることを可能にする。
【0144】
・ヒトパピローマウイルス抗原(HPV)。本発明での使用に好ましいHPV抗原は、L1キャプシドタンパク質であり、これは、ウイルス様粒子(VLP)として公知の構造を形成するために集まり得る。上記VLPは、酵母細胞における(例えば、S.cerevisiaeにおける)もしくは昆虫細胞における(例えば、Spodoptera細胞(例えば、S.frugiperda)もしくはDrosophila細胞における)L1の組換え発現によって生成され得る。酵母細胞については、プラスミドベクターが、上記L1遺伝子を有し得る;昆虫細胞については、バキュロウイルスベクターが、上記L1遺伝子を有し得る。より好ましくは、上記組成物は、HPV−16株およびHPV−18株の両方に由来するL1 VLPを含む。この二価組み合わせは、非常に有効であることが示されてきた[71]。HPV−16株およびHPV−18株に加えて、HPV−6株およびHPV−11株に由来するL1 VLPを含めることもまた可能である。腫瘍形成性HPV株の使用もまた、可能である。ワクチンは、HPV株あたり20〜60μg/mlの間(例えば、約40μg/ml)のL1を含み得る。
【0145】
・炭疽抗原。炭疽は、Bacillus anthracisによって引き起こされる。適切なB.anthracis抗原は、A成分(致死因子(LF)および浮腫因子(EF))を含み、その両方が、防御抗原(PA)として公知の一般的なB成分を共有し得る。上記抗原は、必要に応じて、無毒化され得る。さらなる詳細は、参考文献[72〜74]に見いだされ得る。
【0146】
・S.aureus抗原。種々のS.aureus抗原は、公知である。適切な抗原は、莢膜サッカリド(例えば、5型株および/もしくは8型株に由来)およびタンパク質(例えば、IsdB、Hlaなど)を含む。莢膜サッカリド抗原は、理想的には、キャリアタンパク質に結合体化される。
【0147】
・S.pneumoniae抗原。種々のS.pneumoniae抗原が公知である。適切な抗原としては、莢膜サッカリド(例えば、血清型1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、および/もしくは23Fのうちの1つ以上に由来)およびタンパク質(例えば、ニューモリシン、無毒化ニューモリシン、ポリヒスチジン三つ組みタンパク質D(polyhistidine triad protein D)(PhtD)など)が挙げられる。莢膜サッカリド抗原は、理想的には、キャリアタンパク質に結合体化される。
【0148】
・癌抗原。種々の腫瘍特異的抗原が公知である。本発明は、肺癌、メラノーマ、乳癌、前立腺癌などに対する免疫治療応答を誘発する抗原とともに使用され得る。
【0149】
抗原の溶液は、通常は、上記エマルジョンと、例えば、1:1体積比において混合される。この混合は、充填前にワクチン製造者によって行われ得るか、または使用時に、ヘルスケアワーカーによって行われ得るかのいずれかである。
【0150】
(薬学的組成物)
本発明の方法を使用して作製される組成物は、薬学的に受容可能である。それらは、上記エマルジョンおよび上記任意の抗原のほかに、成分を含み得る。
【0151】
上記組成物は、保存剤(例えば、チメロサールもしくは2−フェノキシエタノール)を含み得る。しかし、上記ワクチンが、実質的に水銀物質を含むべきではない(すなわち、5μg/ml未満)(例えば、チメロサールを含まない)ことが好ましい[75,76]。水銀を含まないワクチンおよび成分は、より好ましい。
【0152】
組成物のpHは、一般に、5.0〜8.1の間、より代表的には、6.0〜8.0の間(例えば、6.5〜7.5の間)である。従って、本発明のプロセスは、パッケージする前に、上記ワクチンのpHを調節する工程を包含し得る。
【0153】
上記組成物は、好ましくは、無菌である。上記組成物は、好ましくは、非発熱性である(例えば、1用量あたり<1 EU(エンドトキシンユニット(標準尺度である))、好ましくは、1用量あたり<0.1 EUを含む)。上記組成物は、好ましくは、グルテンを含まない。
【0154】
上記組成物は、1回の免疫化のための材料を含んでいてもよいし、複数回の免疫化のための材料を含んでいてもよい(すなわち、「複数用量」キット)。保存剤を含めることは、複数用量の構成において好ましい。
【0155】
ワクチンは、代表的には、約0.5mlの投与体積において投与されるが、半用量(すなわち、約0.25ml)は、小児に投与され得る。
【0156】
(処置方法およびワクチンの投与)
本発明は、本発明の方法を使用して調製されたキットおよび組成物を提供する。本発明の方法に従って調製された組成物は、ヒト患者への投与に適しており、本発明は、このような組成物を患者に投与する工程を包含する、患者において免疫応答を惹起するための方法を提供する。
【0157】
本発明はまた、医薬としての使用するためのこれらキットおよび組成物を提供する。
【0158】
本発明はまた、患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造における、(i)抗原の水溶性調製物;および(ii)本発明に従って調製される水中油型エマルジョンの使用を提供する。
【0159】
これら方法および使用によって惹起される免疫応答は、一般に、抗体応答(好ましくは、防御抗体応答)を含む。
【0160】
上記組成物は、種々の方法で投与され得る。最も好ましい免疫化経路は、筋肉内注射(例えば、腕もしくは脚への)であるが、他の利用可能な経路としては、皮下注射、鼻内[77〜79]、経口[80]、皮内[81,82]、経皮(transcutaneous)、経皮(transdermal)[83]などが挙げられる。
【0161】
本発明に従って調製されるワクチンは、小児および成人の両方を処置するために使用され得る。上記患者は、1歳未満、1〜5歳、5〜15歳、15〜55歳、もしくは少なくとも55歳であり得る。上記患者は、高齢者(例えば、≧50歳、好ましくは、≧65歳)、若年者(例えば、≦5歳)、入院患者、ヘルスケアワーカー、軍人および軍職員、妊婦、慢性疾患患者、免疫不全患者、および海外へ旅行する人々であり得る。しかし、上記ワクチンは、これらグループにのみ適しているわけではなく、より一般には、集団で使用され得る。
【0162】
本発明のワクチンは、他のワクチンと実質的に同時に(例えば、同一の医療相談もしくはヘルスケア専門職への訪問の間に)患者に投与され得る。
【0163】
(中間プロセス)
本発明はまた、水中油型エマルジョンを製造するための方法を提供し、上記方法は、第1のエマルジョンを微小流動化して、第2のエマルジョンを形成する工程、次いで、上記第2のエマルジョンを濾過する工程を包含する。上記第1のエマルジョンは、上記に記載される特性を有する。
【0164】
本発明はまた、水中油型エマルジョンを製造するための方法を提供し、上記方法は、第2のエマルジョン(すなわち、微小流動化エマルジョン)を濾過する工程を包含する。上記微小流動化エマルジョンは、上記の特性を有する。
【0165】
本発明はまた、ワクチンの製造のための方法を提供し、上記方法は、エマルジョンと抗原とを合わせる工程を包含し、ここで上記エマルジョンは、上記の特性を有する。
【0166】
(具体的実施形態)
本発明の具体的実施形態としては、以下が挙げられる:
・スクアレンを含む水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、上記方法は、(i)第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを形成する工程;(ii)上記第1のエマルジョンを微小流動化して、上記第1の平均油滴サイズ未満である第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程;および(iii)上記第2のエマルジョンを、親水性膜を使用して濾過する工程、を包含する。
【0167】
・水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、上記方法は、(i)5000nm以下の第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを形成する工程;(ii)上記第1のエマルジョンを微小流動化して、上記第1の平均油滴サイズ未満である第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程;および(iii)上記第2のエマルジョンを、親水性膜を使用して濾過する工程、を包含する。
【0168】
・水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、上記方法は、(i)第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを形成する工程;(ii)上記第1のエマルジョンを微小流動化して、上記第1の平均油滴サイズ未満である第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程;および(iii)上記第2のエマルジョンを、親水性ポリエーテルスルホン膜を使用して濾過する工程、を包含する。
【0169】
・スクアレンを含む水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、上記方法は、(i)第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを、ホモジナイザーを使用して形成する工程を包含し、ここで上記第1のエマルジョンは、ホモジナイザーに上記第1のエマルジョンの成分を複数回循環させることによって形成される。
【0170】
・スクアレンを含む水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、上記方法は、(b)第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを微小流動化して、上記第1の平均油滴サイズ未満である第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程を包含し、ここで上記第2のエマルジョンは、上記第2のエマルジョンの成分を、第1のエマルジョン容器から、第1の微小流動化デバイスを通って、第2のエマルジョン容器へ移し、次いで、第2の微小流動化デバイスを通過させることによって、上記第2のエマルジョンの成分を循環させることによって形成され、ここで上記第1の微小流動化デバイスおよび第2の微小流動化デバイスは同じである。
【0171】
・水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、上記方法は、第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを、微小流動化デバイスに通過させて、上記第1の平均油滴サイズ未満である第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程を包含し;ここで上記微小流動化デバイスは、相互作用チャンバを含み、上記相互作用チャンバは、複数のZ型チャネル、および少なくとも1個のチャネルを含む補助処理モジュールを含み;ここで上記補助処理モジュールは、上記相互作用チャンバの下流に位置づけられる。
【0172】
・水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、上記方法は、第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを微小流動化デバイスに通過させて、上記第1の平均油滴サイズ未満である第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程を包含し;ここで上記微小流動化デバイスは、相互作用チャンバ、および複数のチャネルを含む補助処理モジュールを含む。
【0173】
・水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、上記方法は、第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを微小流動化デバイスに通過させて、上記第1の平均油滴サイズ未満である第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程を包含し、ここで上記微小流動化デバイスは、相互作用チャンバを含み、上記相互作用チャンバへの入り口での上記エマルジョンの成分の圧力は、上記エマルジョンが上記マイクロフルイダイザーへ供給される間の時間のうちの少なくとも85%にわたって実質的に一定である。
【0174】
・水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、上記方法は、第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを形成する工程を包含し、ここで上記第1のエマルジョンの形成は、不活性ガス(例えば、窒素)下で、例えば、最大0.5バールまでの圧力において行われる。
【0175】
・水中油型エマルジョンの製造のための方法であって、上記方法は、第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを微小流動化デバイスに通過させて、上記第1の平均油滴サイズ未満である第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程を包含し、ここで上記第2のエマルジョンの形成は、不活性ガス(例えば、窒素)下で、例えば、最大0.5バールまでの圧力において行われる。
【0176】
・水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、上記方法は、(i)第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを形成する工程;(ii)上記第1のエマルジョンを微小流動化して、上記第1の平均油滴サイズ未満である第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程;(iii)上記第2のエマルジョンを濾過する工程;(iv)上記水中油型エマルジョンを滅菌フレックスバッグに移す工程、を包含する。
【0177】
(一般)
用語「含む、包含する(comprising)」は、「含む、包含する(including)」および「から構成される(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、もっぱらXから構成されてもよいし、何かさらなるものを含んでいてもよい(例えば、X+Y)。
【0178】
語「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、完全にYを含まない可能性がある。必要な場合、語「実質的に」は、本発明の定義から省略され得る。
【0179】
数値xに関連して、用語「約」とは、任意選択的であり、例えば、x±10%を意味する。
【0180】
別段具体的に示されなければ、2種以上の成分を混合する工程を包含するプロセスは、混合のいかなる具体的順序をも必要としない。従って、成分は、任意の順序で混合され得る。3つの成分がある場合、2つの成分は、互いに合わされ得、次いで、上記組み合わせは、上記第3の成分と合わされ得る、など。
【0181】
動物(および特に、ウシ)材料は、細胞培養において使用される場合、それらは、伝染性海綿状脳症(TSE)、特に、牛海綿状脳症(BSE)を含まない供給源から得られるべきである。全体的に、動物由来の材料の完全な非存在下で細胞を培養することは好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】図1は、第1のエマルジョンを形成するために使用され得るホモジナイザーの具体例を示す。
【図2】図2は、このようなホモジナイザーにおいて使用され得るローターおよびステイターの詳細を示す。
【図3】図3は、同期性の増圧ポンプモードの2つの圧力プロフィールを示す。
【図4】図4は、Z型チャネルの相互作用チャンバを示す。
【図5】図5は、I型循環を示す。対して図6は、II型循環を示す。容器は、「C」として表示されるのに対して、ホモジナイザーは、「H」と表示される。流体運動の方向および順序が示される。図6において、上記ホモジナイザーは、2個の入力矢印および2個の出力矢印を有するが、実際は、上記ホモジナイザーは、単一の入力チャネルおよび単一の出力チャネルを有する。
【図6】図5は、I型循環を示す。対して図6は、II型循環を示す。容器は、「C」として表示されるのに対して、ホモジナイザーは、「H」と表示される。流体の運動の方向および順序が示される。図6において、上記ホモジナイザーは、2個の入力矢印および2個の出力矢印を有するが、実際は、上記ホモジナイザーは、単一の入力チャネルおよび単一の出力チャネルを有する。
【発明を実施するための形態】
【0183】
実施例1:
エマルジョンの成分である、スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレエートおよびクエン酸ナトリウム緩衝液を、インラインの高速ローター/ステーターホモジナイザー(IKA Super Dispax Reactor DRS 2000/5)に導入した。280Lおよび250Lのエマルジョン開始体積を使用し、ホモジナイザーの速度を、5000±1000rpmに設定した。均質化中のエマルジョンの温度を、60℃未満に維持した。
【0184】
3つの試行(test run)を行った。最初の試行において、280Lのエマルジョンの成分を、20分間、ホモジナイザーと第1の予備混合容器との間のI型循環に供し、続いて、第1のエマルジョンの成分を、第1の予備混合ステンレス鋼容器から、ホモジナイザーを通って第2の予備混合ステンレス鋼容器に移し、その後、ホモジナイザーを通って戻す、単回のII型循環に供した。第2の試行において、280Lのエマルジョンの成分を、5分間、ホモジナイザーと第1の予備混合ステンレス鋼容器との間のI型循環に供し、続いて、第1のエマルジョンの成分を、第1の予備混合ステンレス鋼容器から、ホモジナイザーを通って第2の予備混合ステンレス鋼容器に移し、その後、ホモジナイザーを通って第1の予備混合ステンレス鋼容器に戻す、5回のII型循環に供した。第3の試行において、250Lのエマルジョンの成分を、20分間、ホモジナイザーと第1の予備混合ステンレス鋼容器との間のI型循環に供し、続いて、第1のエマルジョンの成分を、第1の予備混合ステンレス鋼容器から、ホモジナイザーを通って第2の予備混合ステンレス鋼容器に移し、その後、ホモジナイザーを通って第1の予備混合ステンレス鋼容器に戻す、単回のII型循環に供した。
【0185】
第1のエマルジョンが、1200nm以下の平均油滴サイズを有し、かつ1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数が5×10/ml以下になるまで、第1のエマルジョンを均質化した。
【0186】
次に、第1のエマルジョンを微小流動化に供して、第2のエマルジョンを形成させる。このエマルジョンを、微小流動化デバイスに5回通過させる。微小流動化デバイスを、約600バール〜約800バール(すなわち、約9000psiおよび約12000psiの間)で操作し、冷却機構を使用することによって微小流動化中、このエマルジョンを40±5℃の温度で維持した。
【0187】
その後、この第2のエマルジョンを濾過滅菌した。
【0188】
各試行における濾過したエマルジョン中の油滴の平均サイズは、MF59アジュバントについての明細事項と合致した。
【0189】
最初の試行、第2の試行および第3の試行の間のエマルジョンの他のパラメータは表1に見出され得る。
【0190】
【表1】

3つの試行の結果はすべて優れている。しかしながら、表1の結果は、試行1が、第2のエマルジョンに存在する1.2μmよりも大きいサイズを有する粒子の数と比較すると、濾過後のエマルジョン中の1.2μmよりも大きいサイズを有する粒子の数において最大の低減%(99.5%)をもたらしたことを示す。したがって、最良の均質化循環パターンは、約20分間のI型循環、その後のII型循環である。
【0191】
実施例2:
さらなる実験において、第1のエマルジョンを、I型循環(図5)またはII型循環(図6)によって形成した。5回の別個の試行に関して、1mlあたりの大型の粒子の平均個数は、以下の通りであった:
【0192】
【表2】

したがって、II型循環は、大型の液滴がより少ないこと、およびより小さいバッチ間変動をもたらす。
【0193】
本発明は、例としてのみ記載されてきたこと、そして本発明の範囲および精神内に留まりながら改変がなされ得ることが理解される。
【0194】
【化1】

【0195】
【化2】

【0196】
【化3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクアレンを含む、ワクチンアジュバントである水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、該方法は:
(b)第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを微小流動化して、該第1の平均油滴サイズ未満である第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程を包含し、ここで、該第2のエマルジョンは、該第2のエマルジョンの成分を、第1のエマルジョン容器から、第1の微小流動化デバイスを通って、第2のエマルジョン容器に移し、その後、再度同じ微小流動化デバイスを通過させることによって、該第2のエマルジョンの成分を循環させることによって形成される、方法。
【請求項2】
工程(b)の前に、(a)第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを形成する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)の後に、(c)前記第2のエマルジョンを濾過する工程を包含する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の容器からの前記エマルジョンの成分の実質的に全てが、前記微小流動化デバイスを通過して前記第2の容器に入り、そして次に該第2の容器からの該エマルジョンの成分の実質的に全てが、該微小流動化デバイスを通過して該第1の容器に戻る、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
スクアレン含有水中油型エマルジョンワクチンアジュバントを製造するための方法であって、該方法は:
(i)ホモジナイザーを使用して第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを形成する工程を包含し、ここで、該第1のエマルジョンは、該第1のエマルジョンの成分を、第1の容器からホモジナイザーを通って第2の容器に移し、そしてその後、該第1のエマルジョンの成分を、該第2の容器から同じホモジナイザーを通って該第1の容器に戻すことによって形成される、方法。
【請求項6】
前記第1の容器からの前記エマルジョンの成分の実質的に全てが、前記ホモジナイザーを通過して前記第2の容器に入り、そして次に該第2の容器からの該エマルジョンの成分の実質的に全てが、該ホモジナイザーを通過して該第1の容器に戻る、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(ii)前記第1のエマルジョンを微小流動化して、前記第1の平均油滴サイズ未満である第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程を包含する、請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ホモジナイザーが、1×10−1までの剪断速度を提供し、ここで、前記微小流動化が、2.5×10−1よりも大きい剪断速度を提供する相互作用チャンバで生じる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(iii)前記第2のエマルジョンを濾過する工程を包含する、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
工程(i)が、前記第1の容器から前記第1のエマルジョンの成分を前記第2の容器に移し、そして再度該第1の容器から該第2の容器へ戻すことを2回以上のサイクルで行うことを包含する、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
工程(ii)の間に、前記第2のエマルジョンが、微小流動化デバイスを介して該第2のエマルジョンの成分を複数回循環させることによって形成される、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のエマルジョンの成分を循環させることが、該第2のエマルジョンの成分を、第1のエマルジョン容器と微小流動化デバイスとの間に移動させることを包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のエマルジョンの成分を循環させることが、該第2のエマルジョンの成分を、第1のエマルジョン容器から第1の微小流動化デバイスを通って第2のエマルジョン容器に移し、そして次に第2の微小流動化デバイスを通過させることを包含し、ここで、該第1の微小流動化デバイスと該第2の微小流動化デバイスとが同じものである、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の微小流動化デバイスを通過させた後に、前記第2のエマルジョンの成分を、前記第1のエマルジョン容器に戻し、そして請求項10または請求項11に記載の循環させることを、1回以上繰り返す、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の平均油滴サイズが5000nm以下である、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のエマルジョン中の1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数が、5×1011/ml以下である、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の平均油滴サイズが500nm以下である、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のエマルジョン中の1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数が、5×1010/ml以下である、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項にしたがって、エマルジョンを調製する工程、および該エマルジョンと抗原とを合わせる工程を包含する、ワクチン組成物を調製するための方法。
【請求項20】
ワクチンキットを調製するための方法であって、該方法は:請求項1〜18のいずれか一項にしたがって、エマルジョンを調製する工程、および抗原成分と一緒に、キット成分として該エマルジョンをキットにパッケージする工程を包含する、方法。
【請求項21】
前記キット成分が別個のバイアル中に存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記バイアルがホウケイ酸ガラスから作製される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
アジュバントが、バルクアジュバントであり、前記方法が、キット成分としてパッケージするために、該バルクアジュバントから単位用量を抽出する工程を包含する、請求項20〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗原がインフルエンザウイルス抗原である、請求項19〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記エマルジョンと前記抗原とを合わせることによって、ワクチン組成物が形成され、ここで、該ワクチン組成物が、インフルエンザウイルス1株あたり約15μg、約10μg、約7.5μg、約5μg、約3.8μg、約1.9μg、約1.5μgのヘマグルチニンを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記エマルジョンと前記抗原とを合わせることによって、ワクチン組成物が形成され、ここで、該ワクチン組成物が、チメロサール保存剤または2−フェノキシエタノール保存剤を含む、請求項24または請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−512892(P2013−512892A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541596(P2012−541596)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【国際出願番号】PCT/IB2010/003394
【国際公開番号】WO2011/067673
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】