説明

エマルジョンベースの微粒子の製造のための方法

本発明の装置および方法は、生物学的薬剤または化学的薬剤を含むエマルジョンベースの微粒子の製造のために有用である。特に、この装置は、容器;このような容器内に配置される充填材料を提供し、そしてこの装置は、上記充填材料の封入のための上記容器の両端への挿入を可能にする材料をさらに提供し得る。特定の実施形態において、この装置は、充填層装置である。この方法は、生物学的薬剤または化学的薬剤を含むエマルジョンベースの微粒子の製造を包含する。本発明の有用性は、本発明の装置および方法が、狭小で再現可能な粒子サイズ分布を提供するエマルジョンベースの微粒子の、低せん断で非乱流の製造であって、再現可能なエマルジョン特性を提供しながら都合よくスケールアップし得る、大体積および小体積での使用を可能にする製造を提供することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国仮特許出願第60/461,860(2003年4月10日出願)からの優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本願装置およびこのような装置を使用する方法は、製造(manufacturing)分野に関する。より詳細には、開示される装置および方法は、エマルジョンベースの微粒子の製造(production)、および生物学的薬剤または化学的薬剤を含むエマルジョンベースの微粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
エマルジョンベースの製造技術による、生物学的薬剤または化学的薬剤を含む微粒子の製造のためのいくつかの技術が報告されている。一般的に、上記方法は、有機溶媒、ポリマー、および第1の溶媒中に溶解もしくは分散される生物学的薬剤または化学的薬剤からなる第1の相を有する。第2の相は、水および安定剤および、必要に応じて、上記第1の溶媒を含む。この第1の相および第2の相は乳化され、そしてエマルジョンが形成された後、この第1の溶媒がこのエマルジョンから除去され、硬化微粒子を生成する。
【0004】
代替の方法は、「ダブルエマルジョン」の形成を包含する。この方法において、第1の相(多くの場合「内相」と呼ばれる)が生成され、そしてこの第1の相は、標準的には、水、生物学的薬剤または化学的薬剤、およびおそらく、安定剤からなる。第2の相は、標準的には、有機溶媒およびポリマーからなる。この第1の相および第2の相は乳化され、油中水「内部エマルジョン」を形成する。第3の相は、通常、水、界面活性剤および、必要に応じて、上記第2の溶媒からなる。次いで、この内部エマルジョンは、第3の相と再び乳化され、水中油「外部エマルジョン」を形成する。外部エマルジョンが形成された後、この有機溶媒はこのエマルジョンから除去され、硬化微粒子を生成する。
【0005】
エマルジョンは、種々の技術によって形成され得る。このような技術の1つは、乱流条件下で(例えば、撹拌器を使用して)上記第1の相および第2の相を混合するためのバッチデバイスの使用である(米国特許第5,407,609号に開示されるような)。他のバッチプロセスは、ホモジナイザーまたはソニケーターを使用し得る。別の技術において、エマルジョンは、乱流条件を使用して(米国特許第5,654,008号に記載されるようなインライン動的ミキサーまたはインライン静的ミキサーの使用における条件)、第1の相と第2の相とをインラインで連続的に混合することによって、形成される。
【0006】
エマルジョンが乱流混合デバイス(例えば、静的ミキサーおよび動的ミキサー)によって作製される場合、乱流領域は、2つの相が混合してエマルジョンが形成される場所に存在する。この混合技術は問題がある。なぜなら、乱流ミキサーは、ミキサー中のいくつかの領域がより大きな乱流を生じ(代表的には、刃および壁により近いところ)、一方他の領域がより小さな乱流を生じる(刃および壁から離れたところ)ので、変動する乱流の領域を作製するからである。このミキサー内の変動する乱流は、広範な微粒子サイズをもたらし、これは、所望され得ない。
【0007】
微粒子を製造するための乱流混合デバイスを使用することについての別の問題は、パラメーター(例えば、流速、粘度、密度、表面張力および温度)の全範囲が、その装置内の乱流レベルを支配することである。流量および他の物理的特性に対する乱流プロセスの感度は、同じ特性を有する最終生成物を一貫して製造することを困難にする。バッチからバッチへの変更は、微粒子生成物の大部分について受容可能でない。
【0008】
微粒子の製造のための乱流混合プロセスについての別の問題は、いくつかの活性剤(例えば、タンパク質)が、固有に乱流混合の一部である高せん断力に対して感応性であることである。従って、これらのプロセスは、いくつかの共通の生物学的薬剤または化学的薬剤を有する微粒子を作製することに利用され得ない。
【0009】
乱流混合プロセスについてのさらなる困難性は、拡張性(scalability)に関する。乱流およびその結果生じる微粒子特性は、製造スケールが変化する場合、正確に予想され得ない。これは、乱流エマルジョン装置に対して変化が起こされる場合はいつでも、新たな実験セットが、所望の微粒子生成物を作製するためのデバイスの操作についての新たな指針を確立するために行われなければならないことを意味する。製造をスケールアップすることが高価で時間のかかるものである場合でも、反復試験が必要である。
【0010】
乱流ベースのエマルジョンデバイスはまた、特に流体力学法則の適用について、物理的制限を有する。乱流混合デバイスを使用する場合、特定のミキサーの動力学が、特定の微粒子サイズおよび微粒子サイズ分布に関与する。
【0011】
スケールアップまたはスケールダウンする場合に同じ微粒子サイズおよび同じ微粒子サイズ分布を達成するために、より大きなミキサー中またはより小さなミキサー中で同じ混合乱流が引き起こされなければならない。スケールアップはミキサーのサイズ変化を伴うので、速度(V)変化が、ミキサーの直径(D)変化を補うために達成されなければならない。従って、非常に遅い流速が所望される場合、所望の乱流を達成することは困難であるので、微粒子形成のための乱流ベースのプロセスの適用は、特に困難となり、最終的には実用的でない。
【0012】
上記の製造プロセスにおいて、得られる粒子サイズは、混合される場合に上記2つの相によって直面されるせん断力の関数である。これらの方法におけるせん断力は、混合される体積の全域で変化し、結果として、比較的広範な粒子サイズ分布を生じる。製造プロセスが乱流に依存する場合、制限された体積での調査試験の間に使用され得るような遅い流速について乱流状態を達成することは困難であり、そしてより大きなデバイスの性能は、小さなバージョンでの結果から予想することは困難である。従って、乱流ベースの製造プロセスについて、研究室において小スケールで達成される結果と後の製造サイズ(manufacture−sized)の製造において達成される結果との間に相関はほとんどない。
【0013】
エマルジョンの製造のための代替の方法は、充填層乳化機を利用する(米国特許第4,183,681号(‘681)に記載されるような)。この‘681特許は、水中油エマルジョンを形成するための充填層乳化機の使用を記載する。残念なことに、開示されるエマルジョンは、微粒子を形成せず、1:1以上の油/水相体積比を有する適用に関する。そして効果的であると見出される充填材料は、治療用化学的薬剤または治療用生物学的薬剤を含む微粒子について必要とされるような清潔かつ無菌の装置についての必要性に適合しない。
【0014】
他の代替のエマルジョン形成技術は、濾過膜、またはマイクロチャンネルデバイスを通る流体の通過を使用し得る(米国特許第6,281,254号に記載されるような)。これらの方法は精密な製作を必要とし、そして製造体積をスケールアップするのに厄介であり得る。
【0015】
従って、狭小で再現性のある粒子サイズ分布を提供し、大体積および小体積両方での使用が可能であり、そして予測可能なエマルジョン特性を提供しながら便利にスケールアップされ得る、エマルジョンベースの微粒子を形成するための方法が必要とされる。理想的には、この方法は、全ての化学的薬剤または生物学的薬剤を用いてのその使用を可能にするために、非乱流乳化機を利用する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
乱流に依存して微粒子(例えば、静的ミキサーまたは動的ミキサーを使用して作製される微粒子)を製造する公知の方法と対照的に、本発明の装置および方法は、層流条件を利用し、溶媒除去後に生物学的薬剤または化学的薬剤を含有する微粒子をもたらすエマルジョンを製造する。
【0017】
本発明の広範な局面において、溶媒除去後に生物学的薬剤または化学的薬剤を含有する微粒子を生成するエマルジョンを調製するためのプロセスが提供される。
【0018】
1つの実施形態において、溶媒、活性剤およびポリマーを含有する第1の相、および溶媒を含有する第2の相は、溶媒除去の際に微粒子をもたらすエマルジョンを生成する層流条件下で、充填層乳化機を通って通過される。
【0019】
第2の実施形態において、溶媒および活性剤を含有する第1の相、ならびに溶媒およびポリマーを含有する第2の相が組み合わされ、エマルジョンを作製する。特定の実施形態において、上記エマルジョンは、充填層装置、ミキサー、ソニケーター、ボルテクサ−(Vortexer)、ホモジナイザーなどで作製される。次いで、このエマルジョンは、溶媒除去の際に微粒子をもたらすエマルジョンを生成するために、溶媒を含有する第3の相と一緒に層流条件下で、充填層装置を通って通過される。
【0020】
第3の実施形態において、エマルジョンが溶媒除去の際に微粒子を生成し得る充填層装置における層流条件下でのエマルジョン製造を介して、生物学的薬剤または化学的薬剤を含有する微粒子を製造する方法が、提供される。特定の実施形態において、上記エマルジョンは、第1の相と第2の相との混合物から製造される。このような第1の相および第2の相は、互いに不混和性であり得る。
【0021】
上記第1の相の溶媒は、任意の有機溶媒または水であり得る。特定の実施形態において、この有機溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ジエチルカーボネートおよびメチルエチルケトンからなる群より選択される。この第1の相は、エマルジョン安定剤をさらに含み得る。
【0022】
上記第2の相の溶媒は、任意の有機溶媒または水であり得る。この第2の相は、エマルジョン安定剤をさらに含み得る。
【0023】
任意のエマルジョン安定剤は、本発明と一緒に利用され得る。特定の実施形態において、この安定剤は、ポリ(ビニル)アルコール)、ポリソルベート、タンパク質、ポリ(ビニルピロリドン)などからなる群より選択され得る。
【0024】
上記第2の相は、有機溶媒または水からなる群より選択されるさらなる溶媒をさらに含み得る。
【0025】
上記第3の相の溶媒は、任意の有機溶媒または水であり得る。
【0026】
本発明の活性剤は、生物学的薬剤または化学的薬剤であり得る。特定の実施形態において、上記活性剤は、以下からなる群より選択される:抗酸化剤、空隙率賦活剤、溶媒、塩、化粧品、食品添加剤、織物用化学物質、農業用化学物質、可塑剤、安定剤、色素、乳白剤、接着剤、殺虫剤、芳香剤、防汚剤、染料、塩、油、インク、化粧品、触媒、界面活性剤、硬化剤、矯味矯臭剤、食品、燃料、除草剤、金属、塗料、写真用薬剤、殺生剤、色素、可塑剤、推進剤、溶媒、安定剤、ポリマー添加剤、有機分子、無機分子、抗感染剤、細胞毒、降圧剤、抗真菌剤、抗精神病剤、抗体、タンパク質、ペプチド、抗糖尿病剤、免疫促進剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗痙攣剤、抗ヒスタミン剤、心血管作用剤、抗凝固剤、ホルモン、抗マラリア剤、鎮痛剤、麻酔剤、核酸、ステロイド、アプタマー、ホルモン、ステロイド、血液凝固因子、造血因子、サイトカイン、インターロイキン、コロニー刺激因子、増殖因子、増殖因子アナログ、これらのフラグメントなど。
【0027】
本発明のポリマーは、任意のポリマーであり得る。特定の実施形態において、上記ポリマーは、ポリ(d,l−乳酸)、ポリ(l−乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(d,l−ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)を含む上記ポリマーのコポリマー、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(アセタール)、およびポリ(ヒドロキシブチレート)(poly(hydroxybutryate))などからなる群より選択される。
【0028】
本発明の別の広範な局面において、溶媒除去後に生物学的薬剤または化学的薬剤を含む微粒子をもたらすエマルジョンを製造し得る装置が提供される。この装置は、容器および充填材料を備える。
【0029】
本発明の充填材料は、金属、セラミック、プラスチック、ガラスなどからなる群より選択され得る。特定の実施形態において、上記充填材料は、ガラスまたはステンレス鋼である。上記充填材料は、球、ビーズ、ペレット、チップ、繊維、スポンジ、ピロー(pillow)などからなる群より選択される形態であり得る。特定の実施形態において、上記ビーズは球状である。さらなる特定の実施形態において、上記球状ビーズは、20ミクロン〜1000ミクロンの直径の範囲にある。
【0030】
添付の図面は、本明細書の一部を形成し、特定の実施形態をさらに示すために包含される。これらの実施形態は、本明細書中に提示される特定の実施形態の詳細な記載と組み合わせて、これらの図面のうちの1つ以上を参照してより良好に理解され得る。
【0031】
(発明の詳細な説明)
本発明は、エマルジョンベースの技術を介する微粒子製造のための装置、およびこのような装置を使用する方法を提供する。エマルジョンベースの微粒子製造のための以前から公知の方法と対照的に、本発明は、狭小で再現性の粒子サイズ分布を有する微粒子を製造するための非乱流プロセスまたは層流プロセスであって、スケールアップされる容積を有する大体積および小体積の両方を用いて使用し得る一方で、その結果のより大きなバッチにおいて一貫した予測可能な特性を提供するプロセスを提供する。生物学的薬剤または化学的薬剤を含有する微粒子は、本発明の方法によって生成され得る。
【0032】
本発明は、非乱流または層流、ミキサー以外の充填層系の使用によって、これまでの微粒子製造方法の不利益を克服する。静的ミキサーおよび動的ミキサーの両方は、大いに変動しやすい微粒子サイズ分布に関連する乱流条件を生じる。エマルジョンを作製するための充填層系の使用は、一様な液滴およびその結果生じる微粒子サイズ分布、ならびに多くの化学的薬剤または生物学的薬剤に適する条件を提供する。さらに、本発明の装置および方法は、拡大縮小が可能な結果を容易に生じ得る。小スケールで研究室において製造される微粒子の所望のバッチは、単により大きな直径を有する容器において同じ充填材料を利用することによって、より大きな製造スケールで容易に再現され得る。これは、一旦所望の微粒子が研究室において小スケールで製造されると、安価かつ効果的な製造プロセスの拡大を可能にする。
【0033】
特定の実施形態において、本発明の方法は、広範囲の流速および体積において微粒子製造のためのエマルジョンを作製するための連続的プロセスを提供する。いくつかの実施形態において、上記方法は、所定のサイズ分布を有する微粒子を作製するためのプロセスを包含する。代替の実施形態において、上記方法は、非常に遅い流速において微粒子を作製するための連続的プロセスを提供する。
【0034】
本発明の微粒子は、当該分野で公知の任意のエマルジョン技術によって作製され得る。1つの実施形態において、微粒子製造のためのエマルジョンを生成する方法は、(1)代表的に、有機溶媒、ポリマー、ならびに1つ以上の生物学的活性剤および/または化学物質を含有する第1の相を調製する工程;(2)代表的に、第2の溶媒としての水、エマルジョン安定剤および必要に応じて溶媒を含有する第2の相を調製する工程;(3)この第1の相および第2の相を充填層装置に通して通過させ、「水中油」型のエマルジョンを形成する工程、を包含する。
【0035】
別の実施形態において、エマルジョン製造のための方法は、(1)代表的に、有機溶媒およびエマルジョン安定剤を含有する第1の相を調製する工程;(2)代表的に、第2の溶媒としての水、1つ以上の生物学的活性剤および/または化学物質、ならびに水溶性ポリマーを含有する第2の相を調製する工程;(3)この第1の相および第2の相を充填層装置に通して通過させ、「油中水」型エマルジョンを形成する工程、を包含する。
【0036】
第3の実施形態において、本発明は、(1)有機溶媒および、必要に応じて、エマルジョン安定剤を含有する第1の相を調製する工程;(2)第2の有機溶媒、1つ以上の生物学的活性剤および/または化学物質、ならびにポリマーを含有する第2の相を調製する工程;(3)この第1の相および第2の相を充填層装置に通して通過させ、有機エマルジョンを形成する工程、によってエマルジョンを製造するための方法を提供する。
【0037】
さらに別の実施形態において、本発明は、(1)代表的に、水、1つ以上の生物学的活性剤および/または化学物質、ならびにエマルジョン安定剤を含有する第1の相を調製する工程;(2)代表的に、有機溶媒およびポリマーを含有する第2の相を調製する工程;(3)代表的に水を含有し、そして必要に応じて安定剤を含有する第3の相を調製する工程;(4)この第1の相および第2の相を充填層装置に通して通過させ、「油中水」型エマルジョンを形成する工程;(5)この第1のエマルジョンおよび第3の相を第2の充填層装置に通して通過させ、「水中油」型エマルジョンを形成する工程、によってエマルジョンを製造するための方法を提供する。
【0038】
微粒子を製造するための装置およびこのような装置を使用する方法は、乱流に依存しない。本発明の微粒子を作製する方法は、以前の微粒子作製方法と対照的に、層流速度において機能する。本発明において、狭小かつ繰り返して正確な粒子サイズ分布を有する微粒子が製造され得る。さらに、この微粒子は、小スケールで製造され得、そして単に容器の直径を変化させることによって製造サイズ(manufacturing size)に容易にスケールアップされ得る。これは、以前の乱流方法論では可能でない。驚くべきことに、層流レジメン内でエマルジョンを作製することは、上記のような乱流エマルジョン形成プロセスに関連する問題の多くを解決する。
【0039】
(充填層装置)
本発明の装置は、エマルジョンベースの技術を介する微粒子製造のための充填層装置である。このような装置は、液体が充填材料を通って流れることを可能にする充填材料で満たされ得る任意の形態の容器であり得る(図1を参照のこと)。本発明の装置は、このような装置中の材料の封入のために両端への挿入が可能な材料をさらに提供し得る。図1は、本発明の1つの実施形態に従う例示的な装置を例示する。この実施形態において、チューブ(1)は、充填材料(2)としてのビーズで満たされる。
【0040】
本発明の装置は、この装置を通過するための充填材料間における間隙を通って液体を流動させる材料で充填される。デバイス内の充填材料間における間隙は、流体が上記層を通って流動する場合、何度も互いの通路(path)を横断する多くの経路(channel)としてみなされ得る。
【0041】
本発明において、上記エマルジョンは、2つの流体、または相(代表的には油および水)として作製され、充填内の間隙を通って流動している。この2つの相が固体の層を通って流動しているので、この2つの相は、互いの通路を何度も横断し、そして連続相(通常は水)が不連続相(通常は油)を液滴に分裂しており、従って、エマルジョンを作製する。この不連続相の液滴サイズは、最終液滴サイズが達成されるまで、繰り返して縮小される。一旦不連続な液滴が特定のサイズに達すると、この不連続な液滴は、これらが充填を通って流動し続ける場合でさえも、これ以上縮小されない。このエマルジョン作製機構は、層流条件下で正確なサイズのエマルジョンの形成を可能にする。
【0042】
充填層の非常に独特な動力学は、混合デバイスでは不可能な、連続的に非常に遅い流速において微粒子の製造を可能にする。これは、一貫した粒子サイズ分布を維持する0.1グラム程の小さなバッチにおいて高品質の微粒子の一貫した製造を可能にする。さらに、これらの非常に独特な流動の動力学はまた、研究室サイズバッチから製造サイズバッチへの拡張性(scalability)を提供する。
【0043】
上記装置およびこのような装置を使用する方法は、層流領域内の流速に反応しない微粒子を作製するためのエマルジョンベースのプロセスを提供する。乱流混合ベースのプロセスと異なり、本発明の方法は、層流領域内で操作される場合、流速の変化に反応しない。本発明において使用される流速は、任意の層流速度であり得る。特定の実施形態において、この流速は、0.0001リットル/分〜100リットル/分である。
【0044】
上記装置およびこのような装置を使用する方法は、研究室サイズバッチから製造サイズバッチに容易に拡大可能である微粒子を作製するためのエマルジョンベースのプロセスを提供する。代表的なバッチは、10,000倍の拡張性を示し得る。特定のバッチにおいて、このバッチのサイズは、0.1g、1g、10g、50g、100g、250g、0.5kg、1kg、2kg、5kg、10kg、15kg、20kg、25kg、30kgなどからなる群より選択され得るが、が、これらに限定されない。微粒子のバッチのスケールを増大させる1つの方法は、上記容器の直径を増大させることである。このような増大は、上記容器を通過するエマルジョンの体積を増大させるように機能し、従って、製造されるバッチのサイズを直接的に増大させる。
【0045】
上記装置およびこのような装置を使用する方法は、粒子サイズ分布の厳密な制御を提供する微粒子を作製するためのエマルジョンベースのプロセスを提供する。微粒子サイズ分布は、上記充填材料のサイズ、形態および種類を変更することによって;入口の封入物または出口の封入物を再配置することによって;第1の相、第2の相、または第3の相の物理的特性の変化によって;容器の長さまたは幅を変更することなどによって、操作され得る。例えば、最終微粒子サイズは、充填材料のサイズ(例えば、ガラスビーズの直径)によって決定され得る。さらに、上記容器の長さは、粒子サイズ分布に直接的に影響を与え得る。
【0046】
本発明の容器は、上記充填材料を含み得る任意の形態であり得る。特定の実施形態において、上記装置は、チューブの形態である。この横断面は、任意の適合性形態(長方形、正方形および丸形を含む)であり得る。特定の実施形態において、この横断面は、およそ環状である。上記容器は、任意の長さであり得る。特定の実施形態において、上記容器の長さは、1cm〜100mの範囲であり得る。別の特定の実施形態において、このような容器は、10cm〜50cmである。
【0047】
本発明において使用される充填材料は、デバイス内に含まれ得る任意のものであり得る。特定の実施形態において、このような充填材料は、任意の形態(shape)または形態(form)の、球、ビーズ、ペレット、チップ、繊維、スポンジ、ピロー(pillow)などが挙げられ得るが、これらに限定されない。特定の実施形態において、上記充填は、およそ球状である。充填のための材料は、金属、セラミック、プラスチック、ガラスなどであり得る。1つの実施形態において、上記充填材料は、ガラスまたは非反応性金属である。特定の実施形態において、上記充填材料は、ホウケイ酸ガラスビーズまたはステンレス鋼ビーズである。このビーズの直径は、20ミクロン〜2000ミクロンの範囲であり得る。特定の実施形態において、このビーズは、50ミクロン〜1000ミクロンの範囲であり得る。
【0048】
微粒子サイズは、個々の充填材料粒子のサイズおよび形態によって部分的に決定され得る。大きな充填材料および適合しない充填材料は、通常、より小さな充填材料粒子よりも接近せずに一緒に充填し、そして流体が通って流動するためのより大きな間隙を生じる。上記充填材料におけるより大きな間隙は、より大きな微粒子を生成し、充填材料におけるより小さな間隙は、より小さな微粒子を生成する。流速は、特定の装置から製造される微粒子のサイズに影響を与えない。微粒子は、サブミクロン〜ミリメーター直径の範囲でサイズ変化し得る。1つの実施形態において、微粒子は、標準規格注射針を介する患者への投与を容易にするために、1ミクロン〜200ミクロンである。特定の実施形態において、この微粒子は、10ミクロン〜100ミクロンの間である。
【0049】
上記相は、任意の方法によって充填層乳化剤中に導入され得る。1つの実施形態において、上記相は、パイプまたはチューブを通って導入され、そして上記相は、ポンピングされ得るか、気体もしくは別の種類の圧力源によって力を受け得るか、重力によって供給される得るか、または上記充填層乳化剤の排出側での減圧によって引かれ得る。この液相は、使用される溶媒および温度に適合するステンレス鋼、ガラスまたはプラスチックを含むパイプによって輸送され得る。この液相は、周囲温度、または、特定の流体についてほぼ凝固することとほぼ沸騰することとの間で必要とされる任意の温度にあり得る。本発明の装置および方法は、利用される装置(equipment)に適合する任意の圧力において利用され得る。この圧力は、圧力が上記充填層の抵抗を上回ることが必要な場合はいつでも調整され得、そして層流領域における流速を提供し得る。
【0050】
生物学的薬剤または化学的薬剤を含有する微粒子は、溶媒抽出を介する上記充填層装置のエマルジョン生成物から収集される。このような技術は、当該分野で公知である。
【0051】
本発明の第1の相および第2の相は、互いに不混和性である任意の2つの流体である。第3の相が微粒子の製造に利用される場合、上記第1の相および第2の相からの生じた生成物は、この第3の相と組み合わされる。この場合、第1の相と第2の相と第3の相との組み合わせからの生成物は、互いに不混和性である任意の2つの流体である。
【0052】
上記第1の相についての溶媒は、任意の有機溶媒または水性溶媒であり得る。溶媒の例としては、水、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ジエチルカーボネート、メチルエチルケトン、および上記溶媒の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、この溶媒は、酢酸エチルまたは塩化メチレンである。
【0053】
上記第1の相は、生分解性ポリマーの溶液、および溶液または懸濁液としての生物学的薬剤もしくは化学的薬剤を含み得る。あるいは、上記生物学的薬剤もしくは化学的薬剤は、第2の相中へ溶解されるか、または懸濁される。
【0054】
上記第2の相についての溶媒は、上記第1の相と不混和性である任意の有機流体または水性流体であり得る。例としては、水、水ベースの溶液、有機溶媒などが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、上記第2の相は、水、エマルジョン安定剤および、必要に応じて、溶媒を含む。別の特定の実施形態において、上記第2の相は、水、1つ以上の生物学的薬剤または化学的薬剤および、必要に応じて、水溶性ポリマーを含む。別の特定の実施形態において、上記第2の相は、第2の有機溶媒、1つ以上の生物学的薬剤または化学的薬剤、およびポリマーを含む。
【0055】
貯蔵タンクまたは供給容器が、上記第1の相または第2の相を保持するために本発明において利用され得る(図2を参照のこと)。この貯蔵タンクまたは供給容器は、内容物の温度制御を提供するために被覆され得るか、または他の方法で備え付けられ得る。チューブは、各貯蔵タンクからポンプを通って延び得、そして後に、他の貯蔵タンク〜入口〜上記充填層装置までのチューブと合流し得る。この合流はまた、充填層装置の入口で、または充填層自体の内部で起こり得る。さらに、上記充填層装置は、この充填層装置内に上記相を移動させ、そしてこの充填層装置を通ってこの相を移動させるポンプまたは他の手段を備え得る。この相は、ポンプを使用せずに、単純重力によってか、圧力によってか、または上記充填層装置のもう一端からの減圧などによって、貯蔵タンクまたは供給容器から上記充填層装置に流動し得る。上記チューブは、流量計、フィードバック制御、プログラム化論理制御を介する流速プログラミングなどの追加をさらに備え得る。
【0056】
本発明において使用されるエマルジョン安定剤としては、ポリ(ビニルアルコール)、ポリソルベート、タンパク質(例えば、アルブミン)、ポリ(ビニルピロリドン)が挙げられ得るが、これらに限定されない。特定の実施形態において、ポリ(ビニルアルコール)が使用される。乳化剤の濃度は、0%〜20%の範囲にあり得、好ましくは0.5%〜5%の範囲であり得る。
【0057】
本発明において使用される生分解性ポリマーとしては、ポリ(d,l−乳酸)、ポリ(l−乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(d,l−ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)を含む上記ポリマーのコポリマー、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(アセタール)、およびポリ(ヒドロキシブトリエート)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、生分解性ポリマーはPLGAである。PLGAは、約40:60〜100:0の範囲にあるか、または約45:55〜100:0の範囲にあるラクチド:グリコリドのモノマー比を有し得る。
【0058】
特定の実施形態において、上記生分解性ポリマーの固有粘度は、0.1dL/g〜2.0dL/gの範囲であり得る。好ましくは、この範囲は、約0.1dL/g〜約1.0dL/gである。この生分解性ポリマーは、1%w/w〜40%w/wの範囲にある濃度において、好ましくは5%w/w〜20%w/wの範囲にある濃度において含まれる。
【0059】
本発明において使用される生物学的薬剤は、動物またはヒトに投与される場合に効果を有し得る任意の薬剤であり得る。特定の実施形態において、この生物学的薬剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:有機分子、無機分子、抗感染剤、細胞毒、降圧剤、抗真菌剤、抗精神病剤、抗体、タンパク質、ペプチド、抗糖尿病剤、免疫促進剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗痙攣剤、抗ヒスタミン剤、心血管作用剤、抗凝固剤、ホルモン、抗マラリア剤、鎮痛剤、麻酔剤、核酸、ステロイド、アプタマー、ホルモン、ステロイド、血液凝固因子、造血因子、サイトカイン、インターロイキン、コロニー刺激因子、増殖因子、増殖因子アナログ、これらのフラグメントなど。
【0060】
本発明において使用される化学的薬剤は、任意の合成薬剤または天然薬剤であり得る。特定の実施形態において、この化学的薬剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:抗酸化剤、空隙率賦活剤、溶媒、塩、化粧品、食品添加物、織物用化学物質、農業用化学物質、可塑剤、安定剤、色素、乳白剤、接着剤、殺虫剤、芳香剤、防汚剤、染料、塩、油、インク、化粧品、触媒、界面活性剤、硬化剤、矯味矯臭剤、食品、燃料、除草剤、金属、塗料、写真用薬剤、殺生剤、色素、可塑剤、推進剤、溶媒、安定剤、ポリマー添加剤など。
【0061】
本発明の方法は、上記装置(equipment)、溶媒および活性剤の操作範囲内の任意の温度において機能的である。特定のプロセスのための適切な温度を決定する因子としては、上記2つの相が上記充填層装置にポンプで通されるための最適温度が挙げられる。第3の相が利用される場合、上記第1の充填層装置についての温度は、第2の充填層装置の温度と同じであり得るか、または第2の充填層装置の温度と異なり得る。この温度は、2つの相が所望の粘度であるような温度であることが必要とされる。さらに、上記ポリマーおよび活性分子の溶解性は、完全な溶液を生成するために温度上昇を必要とし得る。この温度は、上記生物学的薬剤または化学的薬剤の安定限界によってさらに影響を受け得る。代表的な操作温度は、18℃〜22℃、15℃〜30℃、10℃〜70℃、0℃〜96℃などの範囲であり得る。一般的には、温度は、−273℃〜150℃の範囲であり得る。
【0062】
本発明の微粒子は、任意の目的のために使用され得る。特定の実施形態において、この微粒子は、患者に投与される。この微粒子は、単一用量または複数用量で患者に投与され得る。この微粒子はまた、長期に亘って上記生物学的薬剤または化学的薬剤をさらに放出するように機能し、複数投与の必要性を排除する単一投与形態で投与され得る。
【0063】
本発明の微粒子は、乾燥材料として保存され得る。患者への投与の場合、このような使用の前に、この乾燥微粒子は、受容可能な薬学的液体ビヒクル中(例えば、水中カルボキシメチルセルロースの2.5重量%溶液)に懸濁され得る。懸濁の際、この微粒子は、次いで、患者に注入され得るか、または他の方法で利用され得る。
【0064】
(定義)
本発明の目的のために、以下の用語は以下の意味を有する:
さらに、本発明の目的のために、用語「a」または「an」の実体は、その実体のうちの1つ以上を言い;例えば、「タンパク質(a protein)」または「エストラジオール代謝産物分子(an estradiol metabolite molecule)」は、これらの化合物のうちの1つ以上、または少なくとも1つの化合物を言う。このように、用語「a」または「an」、「1つ以上」および「少なくとも1つ」は、本明細書中で交換可能に使用され得る。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」は、交換可能に使用され得ることもまた、注意されるべきである。なおさらに、「〜からなる群より選択される」化合物は、それに続く列挙における化合物のうちの1つ以上を言い、この化合物のうちの2つ以上の混合物(すなわち、組み合わせ)を含む。
【0065】
本発明の目的のために、用語「生分解性」とは、特定の治療状況において受容可能である時間内にインビボで溶解または分解するポリマーを言う。この時間は、生理学的pHおよび生理学的温度(例えば、6〜9の範囲のpH、および25℃〜38℃の範囲の温度)への曝露後、代表的には5年未満、通常1年未満である。
【0066】
本発明の目的のために、用語「充填層装置」とは、2つの不混和性流体との接触の際にエマルジョンを生じ得る充填材料を含む任意の容器を言う。
【0067】
本発明の目的のために、用語「活性剤」とは、任意の生物学的薬剤または化学的薬剤を言う。
【0068】
本発明は一般的に記載されてきたが、さらなる理解が、例示のみの目的のために本明細書中で提供され、かつ、他で特に特定されない限り限定することを意図されない、特定の実施例を参照することにより得られ得る。
【実施例】
【0069】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を示すために挙げられる。以下に続く実施例中に開示される技術は、本発明の実施において良好に機能すると本発明者が見出した技術を表し、従って、その実施のための好ましい様式を構成すると考えられ得ることが、当業者によって理解されるべきである。しかし、当業者は、本願開示に照らして、多くの変更が、開示される特定の実施形態において行われ得、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、同様または類似の結果をさらに獲得し得ると理解すべきである。
【0070】
(実施例1:生分解性ポリマー微粒子の調製)
10%PLGAを含む第1の相を、90gの酢酸エチル中に10gの85:15 PLGA(Medisorb 8515DLC01,Alkermes,Inc.,6960 Cornell Rd.,Cincinnati,OH 45242)を溶解することによって調製した。第2の相を、198gの水中に2gのポリ(ビニル−アルコール)(PVA)および16gの酢酸エチルを溶解することによって調製した。両溶液を、別々の温度制御供給容器内に20℃で配置した(図2)。
【0071】
上記第2の相を、本発明の充填層装置(6mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チュービング、150mm長、500μガラスビーズで満たされている)に1ml/分の速度でポンプで通した。上記第1の相を、同時に、同じ充填層装置に1ml/分の流速でポンプで通した。このエマルジョンを、過剰容量の水中に収集し、溶媒を除去し、そして硬化微粒子を分離した。
【0072】
この微粒子を、以下の結果を有するサイズ分布についてレーザー光散乱によって分析した:
平均直径=46μm(体積統計)
D10=35μm
D50=46μm
D90=58μm。
【0073】
(実施例2:2−メトキシエスタジオール(2ME)微粒子の調製)
第1の相を、7mlの酢酸エチル中に200mgの2MEおよび400mgの50:50PLGAを溶解することによって調製した。2gのポリ(ビニル−アルコール)(PVA)を198gの水中に溶解し、第2の相を調製した。次いで、両相を、温度制御された水浴内に65℃で配置した。
【0074】
上記第2の相を、本発明の充填層装置(6mmのPTFEチュービング、150mm長、500μガラスビーズで満たされている)に1.5ml/分の速度でポンプで通した。上記第1の相を、同時に、同じ充填層装置に1ml/分の流速でポンプで通した。このエマルジョンをガラスビーカー内に収集し、ここで、溶媒をエマルジョン液滴から除去した。
【0075】
この硬化微粒子を遠心分離し、そしてこの微粒子を水で3回洗浄した。この微粒子を、以下の結果を有する粒子サイズ分布について分析した:
平均直径=40μm(体積統計)
D10=27μm
D50=40μm
D90=53μm。
【0076】
(実施例3:PEG化インスリン微粒子の調製)
第1の相を、10mlの塩化メチレン中に213mgのPEG化インスリン(「Method for Preparation of Site−Specific Protein Conjugates」と表題を付けられた米国仮特許出願第60/462,364号)および748mgの45:55 PLGAを溶解することによって調製した。次に、2gのポリ(ビニル−アルコール)(PVA)を198gの水中に溶解し、第2の相を調製した。
【0077】
上記第1の相を、本発明の充填層装置(6mmのPTFEチュービング、150mm長、500μガラスビーズで満たされている)に1.7ml/分の速度でポンプで通した。上記第2の相を、同時に、同じ充填層装置に0.7ml/分の流速でポンプで通した。このエマルジョンをガラスビーカー内に収集し、ここで、溶媒を蒸発によって除去した。
【0078】
この完成した微粒子を濾過し、水で洗浄し、次いで、一晩空気に曝露し乾燥させた。この乾燥微粒子を、以下の結果を有する粒子サイズ分布について分析した:
平均直径=61μm(体積統計)
D10=42μm
D50=60μm
D90=79μm。
【0079】
(実施例4:ダブルエマルジョン微粒子の調製)
第1の相を、40.5g酢酸エチル中に4.5gの65:35PLGAを溶解することによって調製した。次に、第2の相を、7.5gの水中に225mgのオボアルブミンを溶解させることによって調製した。次に、2gのポリ(ビニル−アルコール)(PVA)および5gの酢酸エチルを192gの水中に溶解し、第3の相を調製した。
【0080】
上記第1の相を、同じ充填層装置に5.0ml/分の流速でポンプで通した。上記第2の相を、同時に、1.0ml/分の速度で、本発明の充填層装置(1インチのステンレス鋼チューブ、200mm長、50μガラスビーズで満たされている)にポンプで通した。次いで、この第1の相と第2の相との混合物の結果として第1の充填層装置から出てくる内部エマルジョンを、本発明の第2の充填層装置(1/2インチのステンレス鋼チューブ、200mm長、50μガラスビーズで満たされている)に導いた。この第3の相を、同時に、第2の充填層装置に13ml/分の速度でポンプで通した。この第2の充填層装置から出てくる生じたエマルジョン生成物を、ガラスビーカー内に収集し、ここで、溶媒を除去した。
【0081】
この完成した微粒子を濾過し、水で洗浄し、次いで、一晩凍結乾燥させた。この乾燥微粒子を、以下の結果を有する粒子サイズ分布について分析した:
平均=35μm(体積統計)
メジアン=35μm(体積統計)
標準偏差=13.5μm。
【0082】
(実施例5:充填層装置の調製およびスケールアップ)
25〜60ミクロンの範囲にある粒子サイズ分布を有する、エストラジオールベンゾエートを含む微粒子の製造のための装置は、ステンレス鋼チュービング(1インチ直径、および200mm長)からなった。このチュービングを、375ミクロンの平均直径を有するガラスビーズで充填した。
【0083】
15%PLGA第1相溶液を、850gの酢酸エチル中に150gの85:15 PLGA(Medisorb 8515DLC01,Alkermes,Inc.,6960 Cornell Rd.,Cincinnati,OH 45242)を溶解することによって調製した。75gのエストラジオールベンゾエートをこの溶液に添加し、そして完全に溶解するまで60℃で撹拌した。次に、20gのポリ(ビニル−アルコール)(PVA)および100gの酢酸エチルを1880gの水中に溶解し、第2の相を調製した。両溶液を、別々の温度制御供給容器に65℃で配置した(図2)。
【0084】
上記第2の相を、上記充填層装置に30ml/分の速度でポンプで通した。上記第1の相を、同時に、同じ充填層装置に30ml/分の流速でポンプで通した。このエマルジョンをタンク内に収集し、ここで溶媒を除去した。
【0085】
この完成した微粒子を濾過し、水で洗浄し、次いで、減圧下で乾燥させた。この乾燥微粒子を、以下の結果を有する粒子サイズ分布について分析した:
平均=38μm(体積統計)
メジアン=38μm(体積統計)
標準偏差=8.4μm。
【0086】
(実施例6:エストラジオールベンゾエート微粒子を作製するためのバッチサイズのスケールアップ)
充填層装置およびプロセスの拡張性を示すために、エストラジオールバンゾエートを含む微粒子の1kgのバッチを、35〜100ミクロンの計画された微粒子分布範囲を使用して製造した。充填層装置は、1インチステンレス鋼チュービング(200mm長、500ミクロンの平均直径を有するガラスビーズで充填されている)で造られた。
【0087】
16.7%PLGA第1相の溶液を、3990gの酢酸エチル中に800gの85:15 PLGA(Medisorb 8515DLC01,Alkermes,Inc.,6960 Cornell Rd.,Cincinnati,OH 45242)を溶解することによって調製した。200gのエストラジオールベンゾエートを添加し、そして完全に溶解するまで60℃で撹拌した。次に、100gのポリ(ビニル−アルコール)(PVA)および500gの酢酸エチルを9400gの水中に溶解し、第2の相を調製した。両溶液を、別々の温度制御貯蔵タンク内に60℃で配置した(図2)。
【0088】
上記第2の相を、上記充填層装置に50ml/分の速度でポンプで通した。上記第1の相を、同時に、同じ充填層装置に50ml/分の流速でポンプで通した。このエマルジョンをタンク内に収集し、ここで溶媒を除去した。
【0089】
この完成した微粒子を濾過し、水で洗浄し、次いで、減圧下で乾燥させた。この乾燥微粒子を、以下の結果を有する粒子サイズ分布について分析した:
平均=66μm(体積統計)
メジアン=66μm(体積統計)
標準偏差=21μm。
【0090】
(実施例7:充填層装置および流速のスケールアップ)
この実施例は、より早い流速で微粒子を作製するための充填層装置の適用を示す。新たな充填層装置は、ステンレス鋼チュービング(2インチ直径、200mm長)で造られ、そしてこの充填装置を、465ミクロンの平均直径を有するガラスビーズで充填した。
【0091】
10%PLGA第1の相の溶液を、1170gの酢酸エチル中に130gの85:15 PLGA(Medisorb 8515DLC01,Alkermes,Inc.,6960 Cornell Rd.,Cincinnati,OH 45242)を溶解することによって調製した。次に、30gのポリ(ビニル−アルコール)(PVA)および210gの酢酸エチルを2760gの水中に溶解し、第2の相を形成した。両溶液を、別々の温度制御供給容器内に50℃で配置した(図2)。
【0092】
上記第2の相を、上記充填層装置に300ml/分の速度でポンプで通した。上記第1の相を、同時に、同じ充填層装置に300ml/分の流速でポンプで通した。このエマルジョンをタンク内に収集し、ここで溶媒を除去した。
【0093】
この完成した微粒子を、以下の結果を有する粒子サイズ分布について分析した:
平均=28μm(体積統計)
メジアン=30μm(体積統計)
標準偏差=9.8μm。
【0094】
本明細書中で開示され、特許請求される方法および装置の全ては、本発明の開示に照らして、過度の実験なしに作製および実施され得る。この方法は、特定の実施形態に関して記載されているが、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、変更が、上記方法および装置に適用され得、かつ、本明細書中で開示される方法の工程または工程の順序において適用され得ることが当業者に明らかである。より詳細には、化学的におよび/または生理学的の両方に関連する特定の薬剤は、本明細書中で記載される薬剤を置換し得るが、同じ結果または類似の結果が達成されることが明らかである。当業者に明らかであるこのような類似の置換および類似の改変の全ては、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神、範囲および概念内であるとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、本発明の実施形態に従う種々の構成要素を有する例示的な充填層装置を例示する。
【図2】図2は、本発明の実施形態に従う充填層装置を備える、生物学的薬剤または化学的薬剤を含有する微粒子を製造するための例示的なエマルジョンシステムを例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子を調製する方法であって、該方法は、以下:
(a)第1の相を調製する工程であって、該第1の相は、溶媒、活性剤およびポリマーを含む、工程;
(b)溶媒を含む第2の相を調製する工程;
(c)該第1の相および該第2の相を、層流条件下で充填層装置に通して通過させる工程であって、ここで該方法は、微粒子の形成をもたらす、工程;ならびに
(d)該活性剤を含む該微粒子を収集する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記充填層装置が、金属、セラミック、プラスチックおよびガラスからなる群より選択される充填材料を含む、方法。
【請求項3】
前記充填材料が、ガラスおよびステンレス鋼からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記充填材料が、球、ビーズ、ペレット、チップ、繊維、スポンジおよびピローの形態である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒を含む第1の相が、有機溶媒および水からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶媒が、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ジエチルカーボネートおよびメチルエチルケトンからなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒を含む第2の相が、有機溶媒および水からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒が水である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の相が、エマルジョン安定剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記エマルジョン安定剤が、ポリ(ビニルアルコール)、ポリソルベート、タンパク質、およびポリ(ビニルピロリドン)からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記タンパク質が、アルブミンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の相が、第2の溶媒をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒が、有機溶媒および水からなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記活性剤が、抗酸化剤、空隙率賦活剤、溶媒、塩、化粧品、食品添加剤、織物用化学物質、農業用化学物質、可塑剤、安定剤、色素、乳白剤、接着剤、殺虫剤、芳香剤、防汚剤、染料、塩、油、インク、化粧品、触媒、界面活性剤、硬化剤、矯味矯臭剤、食品、燃料、除草剤、金属、塗料、写真用薬剤、殺生剤、色素、可塑剤、推進剤、溶媒、安定剤、ポリマー添加剤、有機分子、無機分子、抗感染剤、細胞毒、降圧剤、抗真菌剤、抗精神病剤、抗体、タンパク質、ペプチド、抗糖尿病剤、免疫促進剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗痙攣剤、抗ヒスタミン剤、心血管作用剤、抗凝固剤、ホルモン、抗マラリア剤、鎮痛剤、麻酔剤、核酸、ステロイド、アプタマー、ホルモン、ステロイド、血液凝固因子、造血因子、サイトカイン、インターロイキン、コロニー刺激因子、増殖因子、増殖因子アナログおよびそのフラグメントからなる群より選択される、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、前記ポリマーが、ポリ(d,l−乳酸)、ポリ(l−乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(d,l−ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)を含む前記ポリマーのコポリマー、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(アセタール)、およびポリ(ヒドロキシブチレート)からなる群より選択される、方法。
【請求項16】
微粒子を調製する方法であって、該方法は、以下:
(a)第1の相を調製する工程であって、該第1の相は、溶媒および活性剤を含む、工程;
(b)溶媒およびポリマーを含む第2の相を調製する工程;
(c)溶媒を含む第3の相を調製する工程;
(d)該第1の相と該第2の相とを組み合わせてエマルジョンを作製する工程;
(e)該エマルジョンを、該第3の相と一緒に層流条件下で充填層装置に通して通過させる工程であって、ここで該方法は、微粒子の形成をもたらす、工程;ならびに
(f)該活性剤を含む該微粒子を収集する工程、
を包含する、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記充填層装置が、金属、セラミック、プラスチックおよびガラスからなる群より選択される充填材料を含む、方法。
【請求項18】
前記充填材料が、球、ビーズ、ペレット、チップ、繊維、スポンジおよびピローの形態である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記充填材料が、ガラスおよびステンレス鋼からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記溶媒を含む第1の相が、有機溶媒および水からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の相が、水ベースの溶液を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記溶媒を含む第2の相が、有機溶媒および水からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記溶媒が、有機溶媒である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の相が、エマルジョン安定剤をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記エマルジョン安定剤が、ポリ(ビニルアルコール)、ポリソルベート、タンパク質、およびポリ(ビニルピロリドン)からなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記タンパク質が、アルブミンである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の相が、第2の溶媒をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記溶媒が、有機溶媒および水からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項16に記載の方法であって、前記活性剤が、抗酸化剤、空隙率賦活剤、溶媒、塩、化粧品、食品添加剤、織物用化学物質、農業用化学物質、可塑剤、安定剤、色素、乳白剤、接着剤、殺虫剤、芳香剤、防汚剤、染料、塩、油、インク、化粧品、触媒、界面活性剤、硬化剤、矯味矯臭剤、食品、燃料、除草剤、金属、塗料、写真用薬剤、殺生剤、色素、可塑剤、推進剤、溶媒、安定剤、ポリマー添加剤、有機分子、無機分子、抗感染剤、細胞毒、降圧剤、抗真菌剤、抗精神病剤、抗体、タンパク質、ペプチド、抗糖尿病剤、免疫促進剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗痙攣剤、抗ヒスタミン剤、心血管作用剤、抗凝固剤、ホルモン、抗マラリア剤、鎮痛剤、麻酔剤、核酸、ステロイド、アプタマー、ホルモン、ステロイド、血液凝固因子、造血因子、サイトカイン、インターロイキン、コロニー刺激因子、増殖因子、増殖因子アナログおよびそのフラグメントからなる群より選択される、方法。
【請求項30】
請求項16に記載の方法であって、前記ポリマーが、ポリ(d,l−乳酸)、ポリ(l−乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(d,l−ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)を含む前記ポリマーのコポリマー、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(アセタール)、およびポリ(ヒドロキシブチレート)からなる群より選択される、方法。
【請求項31】
請求項16に記載の方法であって、前記第1の相および前記第2の相が、充填層装置、ミキサー、ソニケーター、ボルテクサー、およびホモジナイザーからなる群より選択される装置においてエマルジョンを作製する、方法。
【請求項32】
生物学的薬剤または化学的薬剤を含む微粒子を製造する方法であって、該方法は、以下:
(a)層流条件下で充填層装置においてエマルジョンを調製する工程であって、該方法は、微粒子の形成をもたらす、工程;および
(b)該微粒子を収集する工程、
を包含する、方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記エマルジョンが、第1の相および第2の相の混合物から製造され、ここで該第1の相および該第2の相が、互いに不混和性である、方法。
【請求項34】
前記第1の相が、有機溶媒および水性溶媒からなる群より選択される溶媒を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第2の相が、有機溶媒および水性溶媒からなる群より選択される溶媒を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
生物学的薬剤または化学的薬剤を含むエマルジョンベースの微粒子の調製のための装置であって、該装置は、(1)容器;および(2)該容器中に配置される充填材料を備える、装置。
【請求項37】
前記充填材料が、金属、セラミック、プラスチックおよびガラスからなる群より選択される、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記充填材料が、ガラスまたはステンレス鋼である、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
請求項36に記載の装置であって、該装置が、前記容器内に前記充填材料を封入し得る材料をさらに備える、装置。
【請求項40】
前記充填材料が、球状ビーズである、請求項38に記載の装置。
【請求項41】
前記球状ビーズが、直径20ミクロン〜1000ミクロンのサイズ範囲にある、請求項40に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−515392(P2007−515392A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532408(P2006−532408)
【出願日】平成16年4月12日(2004.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/011485
【国際公開番号】WO2005/003180
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(505318813)ピーアール ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】