説明

エマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液およびそれを用いたエマルジョンマスク

【課題】保護膜を短時間で形成することができ、保護膜を形成したエマルジョンマスクの接着性と表面硬度に優れるエマルジョンマスク用保護液およびそれを用いたエマルジョンマスクを提供する。
【解決手段】エマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液を、(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又は(メタ)アクリル系モノマーと、前記オリゴマー及び/又はモノマーと共重合可能な反応性親水性物質を含むものとする。さらに反応性親水性物質を、(メタ)アクリル変性親水性物質、特に、(メタ)アクリル変性リン酸エステル及び/又は(メタ)アクリル変性4級アンモニウム塩とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液に関し、保護膜を形成するための時間を短縮することができ、特にエマルジョンマスクと保護膜との接着性と、保護膜の表面硬度に優れるエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液およびエマルジョンマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ソーダガラス、石英ガラス、光学ガラス等の基板上に銀塩乳剤(エマルジョン)が遮光膜としてパターン形成されたエマルジョンマスクは、遮光膜が柔らかいために傷つき易く、溶剤等によるウエット洗浄が不可能である。また、ガラスマスクサイズの大型化に伴って自重によるたわみ等で精度の低下がみられるため、マスク精度をあげるためにコンタクト露光をおこなうと遮光膜が磨耗するといった問題が生じてくる。
【0003】
このような事情から、エマルジョンマスク上のフォトレジストに対向する面に、離型性を有する保護膜を設けて、フォトレジストがエマルジョンマスクに付着することを防止することが考えられ、保護膜を有する表面保護フィルムをエマルジョンマスクのフォトレジストに対向する面に貼り合せることが考えられる。
【0004】
しかし、表面保護フィルムを貼り合せることは、表面保護フィルムの厚みによる紫外線(UV)透過率の低下に起因する露光精度の低下や、貼り合せの際に気泡が入ることなどによる露光精度の低下を招くといった問題がある(特許文献1)。
【0005】
そこで、エマルジョンマスク上のフォトレジストに対向する面に、保護膜を直接設けることが考えられる(特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−258603号公報(従来の技術)
【特許文献2】特開2002−278047号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、生産コストを削減するために、このような保護膜を短時間で形成することが求められており、熱硬化による保護膜では、このような要望を満足する保護膜を得ることができなくなってきている。
【0008】
そこで本発明は、保護膜を短時間で形成することができ、エマルジョンマスクと保護膜との接着性と、保護膜の表面硬度に優れるエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液およびそれを用いたエマルジョンマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、保護膜の形成時間は、保護膜に含まれる熱硬化型樹脂の硬化時間に依存し、保護膜を短時間で形成するためには、硬化時間が長い熱硬化型樹脂ではなく、硬化時間が短時間である電離放射線硬化型樹脂にすることで上記課題を解決できることがわかった。しかし、単に熱硬化型樹脂から電離放射線硬化型樹脂に変更したのでは、エマルジョンマスクと保護膜との接着性が不十分で、保護膜の耐久性に劣ることがわかった。そして、保護液に反応性親水性物質を添加することにより、エマルジョンマスクと保護膜との接着性や、保護膜の表面硬度を向上させることができることを見出し、これを解決するに至った。
【0010】
即ち、本発明のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液は、(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又は(メタ)アクリル系モノマーと、前記オリゴマー及び/又はモノマーと共重合可能な反応性親水性物質を含むことを特徴とするものである。
【0011】
また、反応性親水性物質が、(メタ)アクリル変性親水性物質であることを特徴とするものである。
【0012】
また、(メタ)アクリル変性親水性物質が、(メタ)アクリル変性リン酸エステル及び/又は(メタ)アクリル変性4級アンモニウム塩であることを特徴とするものである。
【0013】
また、前記反応性親水性物質は、前記保護液の全固形分の10〜30重量%含まれることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のエマルジョンマスクは、エマルジョンマスク上に、前記エマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液を用いた保護膜が形成されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液は、保護膜を短時間で形成することができ、エマルジョンマスクと保護膜との接着性に優れ、保護膜の表面硬度に優れるエマルジョンマスクを得ることができる。
【0016】
本発明のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液を用いて保護膜を形成したエマルジョンマスクは、保護膜を短時間で形成することができるため、生産コストを削減することができ、エマルジョンマスクと保護膜との接着性に優れ、保護膜の表面硬度に優れるエマルジョンマスクとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液の実施の形態について説明する。本発明のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液は、(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又は(メタ)アクリル系モノマーと、前記オリゴマー及び/又はモノマーと共重合可能な反応性親水性物質を含むものである。
【0018】
(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリル系モノマーは、保護膜とした際に、保護膜に表面硬度を付与するための樹脂成分として用いられる。このような(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリル系モノマーは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、電離放射線(紫外線または電子線)の照射による架橋硬化により、3次元網目構造となる。同じく3次元網目構造となる熱硬化型樹脂を用いた場合には、製膜に30〜80分程度必要であるが、電離放射線(紫外線または電子線)の照射により架橋硬化する(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリル系モノマーを用いることによって、1〜3分程度で製膜させることができる。
【0019】
(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、エステル(メタ)アクリレート、エーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、アミノ樹脂(メタ)アクリレート、アクリル樹脂(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリフルオロアルキル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等を用いることができる。また、これらの(メタ)アクリレートオリゴマーは単独でも使用可能であるが、架橋硬化性の向上や、硬化収縮の調整等、種々の性能を付与するために、2種類以上を混合して用いることが好ましい。
【0020】
(メタ)アクリル系モノマーとしては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリルモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリルモノマー等の1種若しくは2種以上が使用される。
【0021】
(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリル系モノマーは、保護液の全固形分の50〜89重量%含まれることが好ましい。50重量%以上とすることにより、保護膜の表面硬度を低下を防止することができ、89重量%以下とすることにより、エマルジョンマスクと保護膜との接着性や離型性などの保護膜に必要とされる性能を充分に発揮することができる。
【0022】
また、本発明の保護液を紫外線照射によって硬化させて使用する場合には、(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリル系モノマーの他、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を用いることが好ましい。
【0023】
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等があげられる。
【0024】
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合障害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどがあげられる。
【0025】
次に、反応性親水性物質は、(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又は(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なものである。(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又は(メタ)アクリル系モノマーと共重合することによって、保護膜からブリードアウトすることがなく、エマルジョンマスクと保護膜の接着性が、経時的に変化することを防止することができ、エマルジョンマスクの耐久性を向上させることができる。さらに、(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又は(メタ)アクリル系モノマーと共重合が可能なことで、保護膜中の架橋密度を充分あげることができ、反応性親水性物質を添加することによる保護膜の硬度の低下を防止することができる。
【0026】
このような反応性親水性物質としては、例えばヒドロキシル基、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、(メタ)アクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基等を有する親水性物質を用いることができる。特に、(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリル変性親水性物質は、前記(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリル系モノマーと容易に共重合することができると共に、前記(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリル系モノマーと相溶性がよいため好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル変性親水性物質としては、エマルジョンマスクとの接着性が良好なため、(メタ)アクリル変性リン酸エステル、(メタ)アクリル変性4級アンモニウム塩などを用いることができ、特に、保護液の保存安定性が良好なため、(メタ)アクリル変性4級アンモニウム塩を用いることがより好ましい。
【0028】
(メタ)アクリル変性リン酸エステルとしては、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェートなどを用いることができ、(メタ)アクリル変性4級アンモニウム塩としては、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩、ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩などを用いることができる。
【0029】
反応性親水性物質は、保護液の全固形分の10〜30重量%含まれることが好ましく、特に好ましくは、10〜20重量%である。10重量%以上とするのは、エマルジョンマスクと保護膜との接着性を得るためであり、30重量%以下とするのは、保護膜の表面硬度を低下させないためである。
【0030】
本発明のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液には、保護膜にフォトレジストが付着することを防止するために、離型剤を含有することもできる。このような離型剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイルなどのシリコーンオイルやシリコーンオイルに有機基を導入した変性シリコーンオイルを用いることができる。
【0031】
変性シリコーンオイルとしては、アルキル変性、ポリエーテル変性、フッ素変性、メルカプト変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、高級脂肪酸エステル変性、(メタ)アクリル変性、カルビノール変性などの変性シリコーンオイルを用いることができる。
【0032】
特に、(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリル系モノマーや、反応性親水性物質と反応する基を有する反応性シリコーンオイルを用いることが、離型性や防汚性を持続させるために好ましい。このようにすることにより、保護膜表面のフォトレジスト等の付着物を容易に除去することができる。
【0033】
このような反応性シリコーンオイルとしては、例えばヒドロキシル基、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、(メタ)アクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基等を有するものを用いることができる。特に、(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリル系モノマーや、反応性親水性物質と容易に共重合することができると共に、前記(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリル系モノマーと相溶性がよい(メタ)アクリル基を有するものが好ましい。
【0034】
シリコーンオイルは、保護液の全固形分の0.5〜20重量%が好ましい。0.5重量%以上とするのは、十分な離型性、防汚性を得るためであり、20重量%以下とするのは、表面硬度を低下させないためである。
【0035】
本発明のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液は、以上説明した(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリル系モノマー、反応性親水性物質、シリコーンオイルや必要に応じて他の成分を配合して、適当な溶媒に溶解させて調整することができる。なお、各成分がそれぞれ相溶することが、保護膜の白化などを防止することができるため好ましい。
【0036】
本発明のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液により得られる保護膜は、硬化後の保護膜表面が、1kgの荷重においてスチールウール#0000で表面を10往復擦った後、保護膜表面の傷がないものであることが好ましい。
【0037】
次に、本発明のエマルジョンマスクの実施の形態について説明する。本発明のエマルジョンマスクは、エマルジョンマスク上に、上述のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液を用いた保護膜が形成されてなるものである。
【0038】
本発明に用いられるエマルジョンマスクは、例えばプリント配線板や樹脂凸版に微細なパターンを形成するための、パターンが形成されているガラス基板であり、ガラス基板上にゼラチンとハロゲン化銀等を混合した銀塩乳剤(エマルジョン)を塗布してなるものである。
【0039】
本発明のエマルジョンマスクは、微細なパターンが形成されたエマルジョンマスク上に、上述の(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリル系モノマー、反応性親水性物質、シリコーンオイルを含むエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液を塗布、電離放射線を照射することにより、保護液の樹脂成分を架橋硬化させて、ハードコート性と離型性を有する保護膜を形成したものである。
【0040】
保護液に、(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又は(メタ)アクリル系モノマーと反応性親水性物質とを含むことによって、保護膜を短時間で形成することができるため、生産コストを削減することができ、エマルジョンマスクと保護膜との接着性に優れ、保護膜の表面硬度に優れるエマルジョンマスクとすることができる。
【0041】
エマルジョンマスク上に保護膜を形成する方法としては、スピンコートやダイコート、キャップコート、バーコートなどの公知の方法を用いることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0043】
[実施例1]
下記組成の実施例1のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液を、パターン形成されたエマルジョンマスク上に、スピンコートにより塗布し、80℃、2分で乾燥した後、紫外線を10秒間(1000mJ/cm2)照射して厚み約3μmの保護膜を形成し、実施例1のエマルジョンマスクを作製した。
【0044】
<エマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液>
・ウレタンアクリレートオリゴマー 3部
(アートレジン UN904:根上工業社)
・ウレタンアクリレートオリゴマー 1部
(NKエステル A-TMMT:新中村工業社)
・アクリル変性4級アンモニウム塩 1部
(DMAEA−Q:興人社、固形分79%)
・離型剤 0.35部
(末端基に不飽和結合を持つポリシロキサン変性ポリマー、固形分70%)
・光カチオン重合開始剤 0.35部
(イルガキュア184:チバ・ジャパン社)
・希釈溶媒 15部
【0045】
[実施例2]
下記組成の実施例2のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液を、パターン形成されたエマルジョンマスク上に、スピンコートにより塗布し、80℃、2分で乾燥した後、紫外線を10秒間(1000mJ/cm2)照射して厚み約3μmの保護膜を形成し、実施例2のエマルジョンマスクを作製した。
【0046】
<エマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液>
・ウレタンアクリレートオリゴマー 3部
(アートレジン UN904:根上工業社)
・ウレタンアクリレートオリゴマー 1.2部
(NKエステル A-TMMT:新中村工業社)
・アクリル変性4級アンモニウム塩 0.8部
(DMAEA−Q:興人社、固形分79%)
・離型剤 0.35部
(末端基に不飽和結合を持つポリシロキサン変性ポリマー、固形分70%)
・光カチオン重合開始剤 0.35部
(イルガキュア184:チバ・ジャパン社)
・希釈溶媒 15部
【0047】
[実施例3]
下記組成の実施例3のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液を、パターン形成されたエマルジョンマスク上に、スピンコートにより塗布し、80℃、2分で乾燥した後、紫外線を10秒間(1000mJ/cm2)照射して厚み約3μmの保護膜を形成し、実施例3のエマルジョンマスクを作製した。
【0048】
<エマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液>
・ウレタンアクリレートオリゴマー 2部
(アートレジン UN904:根上工業社)
・ウレタンアクリレートオリゴマー 1.2部
(NKエステル A-TMMT:新中村工業社)
・アクリル変性4級アンモニウム塩 2部
(DMAEA−Q:興人社、固形分79%)
・離型剤 0.35部
(末端基に不飽和結合を持つポリシロキサン変性ポリマー、固形分70%)
・光カチオン重合開始剤 0.35部
(イルガキュア184:チバ・ジャパン社)
・希釈溶媒 15部
【0049】
[実施例4]
下記組成の実施例4のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液を、パターン形成されたエマルジョンマスク上に、スピンコートにより塗布し、80℃、2分で乾燥した後、紫外線を10秒間(1000mJ/cm2)照射して厚み約3μmの保護膜を形成し、実施例4のエマルジョンマスクを作製した。
【0050】
<エマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液>
・ウレタンアクリレートオリゴマー 3部
(アートレジン UN904:根上工業社)
・ウレタンアクリレートオリゴマー 1.3部
(NKエステル A-TMMT:新中村工業社)
・アクリル変性4級アンモニウム塩 0.6部
(DMAEA−Q:興人社、固形分79%)
・離型剤 0.35部
(末端基に不飽和結合を持つポリシロキサン変性ポリマー、固形分70%)
・光カチオン重合開始剤 0.35部
(イルガキュア184:チバ・ジャパン社)
・希釈溶媒 15部
【0051】
[実施例5]
下記組成の実施例5のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液を、パターン形成されたエマルジョンマスク上に、スピンコートにより塗布し、80℃、2分で乾燥した後、紫外線を10秒間(1000mJ/cm2)照射して厚み約3μmの保護膜を形成し、実施例5のエマルジョンマスクを作製した。
【0052】
<エマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液>
・ウレタンアクリレートオリゴマー 2部
(アートレジン UN904:根上工業社)
・ウレタンアクリレートオリゴマー 1部
(NKエステル A-TMMT:新中村工業社)
・アクリル変性4級アンモニウム塩 2.2部
(DMAEA−Q:興人社、固形分79%)
・離型剤 0.35部
(末端基に不飽和結合を持つポリシロキサン変性ポリマー、固形分70%)
・光カチオン重合開始剤 0.35部
(イルガキュア184:チバ・ジャパン社)
・希釈溶媒 15部
【0053】
[実施例6]
下記組成の実施例6のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液を、パターン形成されたエマルジョンマスク上に、スピンコートにより塗布し、80℃、2分で乾燥した後、紫外線を10秒間(1000mJ/cm2)照射して厚み約3μmの保護膜を形成し、実施例6のエマルジョンマスクを作製した。
【0054】
<エマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液>
・ウレタンアクリレートオリゴマー 3部
(アートレジン UN904:根上工業社)
・ウレタンアクリレートオリゴマー 1.5部
(NKエステル A-TMMT:新中村工業社)
・アクリル変性4級アンモニウム塩 0.4部
(DMAEA−Q:興人社、固形分79%)
・離型剤 0.35部
(末端基に不飽和結合を持つポリシロキサン変性ポリマー、固形分70%)
・光カチオン重合開始剤 0.35部
(イルガキュア184:チバ・ジャパン社)
・希釈溶媒 15部
【0055】
[実施例7]
下記組成の実施例7のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液を、パターン形成されたエマルジョンマスク上に、スピンコートにより塗布し、80℃、2分で乾燥した後、紫外線を10秒間(1000mJ/cm2)照射して厚み約3μmの保護膜を形成し、実施例7のエマルジョンマスクを作製した。
【0056】
<エマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液>
・ウレタンアクリレートオリゴマー 1部
(アートレジン UN904:根上工業社)
・ウレタンアクリレートオリゴマー 1.6部
(NKエステル A-TMMT:新中村工業社)
・アクリル変性4級アンモニウム塩 2.8部
(DMAEA−Q:興人社、固形分79%)
・離型剤 0.35部
(末端基に不飽和結合を持つポリシロキサン変性ポリマー、固形分70%)
・光カチオン重合開始剤 0.35部
(イルガキュア184:チバ・ジャパン社)
・希釈溶媒 15部
【0057】
[実施例8]
下記組成の実施例8のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液を、パターン形成されたエマルジョンマスク上に、スピンコートにより塗布し、80℃、2分で乾燥した後、紫外線を10秒間(1000mJ/cm2)照射して厚み約3μmの保護膜を形成し、実施例8のエマルジョンマスクを作製した。
【0058】
<エマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液>
・ウレタンアクリレートオリゴマー 3部
(アートレジン UN904:根上工業社)
・ウレタンアクリレートオリゴマー 1部
(NKエステル A-TMMT:新中村工業社)
・アクリル変性リン酸エステル 1部
(ライトアクリレート P-1A:共栄社化学社、固形分100%)
・離型剤 0.35部
(末端基に不飽和結合を持つポリシロキサン変性ポリマー、固形分70%)
・光カチオン重合開始剤 0.25部
(イルガキュア184:チバ・ジャパン社)
・希釈溶媒 20.75部
【0059】
[比較例1]
下記組成の比較例1のエマルジョンマスク用熱硬化型保護液を、パターン形成されたエマルジョンマスク上に、スピンコートにより塗布し、120℃、3分で乾燥した後、150℃、30分間加熱して硬化反応を促進させて、厚み約3μmの保護膜を形成し、比較例1のエマルジョンマスクを作製した。
【0060】
<エマルジョンマスク用熱硬化型保護液>
・アクリルポリオール 5部
・離型剤 0.35部
(末端基に不飽和結合を持つポリシロキサン変性ポリマー、固形分70%)
・硬化剤 1部
(タケネート D110N:三井化学ポリウレタン社、固形分60%)
・希釈溶媒 15部
【0061】
[比較例2]
下記組成の比較例2のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液を、パターン形成されたエマルジョンマスク上に、スピンコートにより塗布し、80℃、2分で乾燥した後、紫外線を10秒間(1000mJ/cm2)照射して厚み約3μmの保護膜を形成し、比較例2のエマルジョンマスクを作製した。
【0062】
<エマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液>
・ウレタンアクリレートオリゴマー 4部
(アートレジン UN904:根上工業社)
・ウレタンアクリレートオリゴマー 1部
(NKエステル A-TMMT:新中村工業社)
・離型剤 0.35部
(末端基に不飽和結合を持つポリシロキサン変性ポリマー、固形分70%)
・光カチオン重合開始剤 0.35部
(イルガキュア184:チバ・ジャパン社)
・希釈溶媒 15部
【0063】
得られた実施例1〜8、及び比較例1、2のエマルジョンマスクについて、下記項目の評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
[エマルジョンマスクへの接着性]
実施例1〜8、及び比較例1、2で得られたエマルジョンマスクと保護膜との接着性を、碁盤目テープ法(JIS K5600−5−6:1999)により評価した。碁盤目テープ法による剥離試験の結果、碁盤目部分が全て剥離してしまったものを「×」、碁盤目部分がいくつか剥離してしまったものを「△」、碁盤目部分が全く剥離しなかったものを「○」とした。結果を表1に示す。
【0065】
[表面硬度]
実施例1〜8、及び比較例1、2で得られたエマルジョンマスクの保護膜を、1Kgの荷重においてスチールウール#0000で表面を10往復擦った後、保護膜表面の傷の有無を目視観察した。全面に傷がみられるものを「×」、全面ではないが多少傷がみられるものを「△」、ほとんど傷がみられないものを「○」とした。評価結果を表1に示す。
【0066】
[外観評価]
実施例1〜8、及び比較例1、2の保護膜を観察した。保護膜に白化がみられないものを「○」、保護膜に白化がみられるものを「×」とした。結果を表1に示す。
【0067】
【表3】

【0068】
実施例1〜8のエマルジョンマスクは、電離放射線硬化型保護液を用いて保護膜を形成したため、塗布から保護膜の製膜までを短時間とすることができるものであった。
【0069】
実施例1〜3のエマルジョンマスクは、保護液にウレタンアクリレートオリゴマーとアクリル変性4級アンモニウム塩とを含むものであり、保護液中のアクリル変性4級アンモニウム塩の割合が、10〜30重量%の範囲内であるため、保護膜とエマルジョンマスクとの接着性、保護膜の表面硬度が優れるものであり、保護膜に白化等の支障がみられないものであった。また、反応性親水性物質として、アクリル変性4級アンモニウム塩を用いたため、保護液の保存安定性に優れるものであった。
【0070】
実施例4、6のエマルジョンマスクは、保護液にウレタンアクリレートオリゴマーとアクリル変性4級アンモニウム塩とを含むものであるため、保護膜の表面硬度が優れ、保護膜に白化等の支障がみられないものであった。また、反応性親水性物質として、アクリル変性4級アンモニウム塩を用いたため、保護液の保存安定性に優れるものであった。しかし、保護液中のアクリル変性4級アンモニウム塩の割合が、10重量%より少ないため、エマルジョンマスクとの接着性が、実施例1〜3の保護液を用いた場合より劣るものとなった。
【0071】
実施例5、7のエマルジョンマスクは、保護液にウレタンアクリレートオリゴマーとアクリル変性4級アンモニウム塩とを含むものであるため、保護膜とエマルジョンマスクとの接着性に優れるものであり、保護膜に白化等の支障がみられないものであった。また、反応性親水性物質として、アクリル変性4級アンモニウム塩を用いたため、保護液の保存安定性に優れるものであった。しかし、保護液中のアクリル変性4級アンモニウム塩の割合が、30重量%より多いため、保護膜の表面硬度が、実施例1〜3の保護液を用いた場合より劣るものとなった。
【0072】
実施例8のエマルジョンマスクは、保護液にウレタンアクリレートオリゴマーとアクリル変性リン酸エステルとを含むものであり、保護液中のアクリル変性リン酸エステルの割合が、10〜30重量%の範囲内であるため、保護膜とエマルジョンマスクとの接着性、保護膜の表面硬度が優れるものであり、保護膜に白化等の支障がみられないものであった。しかし、反応性親水性物質として、アクリル変性リン酸エステルを用いたため、保護液の保存安定性が他の実施例の保護液より劣るものであった。
【0073】
比較例1のエマルジョンマスクは、熱硬化性アクリル樹脂を用いた保護液により保護膜を形成したため、保護膜の硬化に時間がかかるものであった。また、保護膜の表面硬度が得られないものであった。
【0074】
比較例2のエマルジョンマスクは、保護液に反応性親水性物質を含まないものである。保護液に反応性親水性物質を含まないため、保護膜とエマルジョンマスクとの接着性が得られないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又は(メタ)アクリル系モノマーと、前記オリゴマー及び/又はモノマーと共重合可能な反応性親水性物質を含むことを特徴とするエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液。
【請求項2】
前記反応性親水性物質が、(メタ)アクリル変性親水性物質であることを特徴とする請求項1記載のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル変性親水性物質が、(メタ)アクリル変性リン酸エステル及び/又は(メタ)アクリル変性4級アンモニウム塩であることを特徴とする請求項2記載のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液。
【請求項4】
前記反応性親水性物質は、前記保護液の全固形分の10〜30重量%含まれることを特徴とする請求項1〜3何れか1項に記載のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液。
【請求項5】
エマルジョンマスク上に、請求項1〜4何れか1項に記載のエマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液を用いた保護膜が形成されてなることを特徴とするエマルジョンマスク。

【公開番号】特開2010−85597(P2010−85597A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253094(P2008−253094)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】