説明

エマルジョン燃料

【課題】エマルジョン状態が長期間安定であり、粘性が抑えられ噴霧ノズルからの噴霧状態が良いため安定した燃焼性を得ることができ、汚染物質の発生も少なくすることができるエマルジョン燃料を提供する。
【解決手段】水がノニオン性界面活性剤によって燃料油中に乳化分散されている油中水型(W/O)のエマルジョン燃料であって、ノニオン性界面活性剤として、IOB値が0.5以上、1.0未満の下記一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤を必須成分として含有することを特徴とする。一般式(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料油に水を分散したエマルジョン燃料に関する。
【背景技術】
【0002】
軽油や重油等の燃料油が燃焼するとPM(煤塵)やNOx等の環境汚染物質が発生し、これらの環境汚染物質排出量に対し、厳しい規制が設けられている。
一方、燃料油と水を混合して製造するエマルジョン燃料は、燃焼時にPMやNOxの発生が非常に少ないため、大気汚染防止に有効な燃料として近年期待されている。エマルジョン燃料には、燃料油中に水が分散している油中水型(W/O)と水中に燃料油が分散している水中油型(O/W)の2種類の型がある。油中水型(W/O)の場合、燃焼室内に噴霧された水粒子を含んだ油滴が、高温雰囲気で加熱されると表面から蒸発して燃焼を始めるとともに、内部の水が加熱され熱水または過熱蒸気の状態で急激に吹き出し、水粒子を取り巻く油を吹き飛ばして油滴を微粒化するミクロ爆発が起こる。このミクロ爆発により微粒化した油は空気との接触面積が増加するため局部的な不完全燃焼が抑制される。同時に水蒸気が触媒的に作用し、火炎中の遊離炭素と水蒸気との水性ガス反応が起き燃焼効率が高まるので、PMの発生量が減少するとともに、水の蒸発潜熱によりボイラーなど内燃機関の温度が下がり火炎温度が均一となることから、NOxの発生も抑制できる。また、燃料油に水を混ぜることにより、同一量の燃料でも水の量だけ燃料油が減ることから、CO削減に直結するとともに、減った燃料油量に含有するN分(窒素含有化合物)、S分(硫黄含有化合物)も少なくなるので、NOx、SOxの発生も削減できる。
エマルジョン燃料は、乳化分散が安定し燃料油と水との比率が一定に保たれていることが必要であり、一定の割合に保たれていないと燃焼効率が低下する。また水の分散安定性が悪いと経時で燃料油と水が分離し使用できなくなる。このため水の分散安定性を高めるために界面活性剤が使用されており、界面活性剤としてソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のノニオン系界面活性剤(特許文献1)、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル等のアニオン系界面活性剤と、高級アルコールや高級脂肪酸のアルキレンオキシド付加体等のノニオン系界面活性剤との混合物(特許文献2)、エチレンオキシド付加モル数が特定の範囲にあるポリオキシエチレン硬化ひまし油誘導体(特許文献3)、脂肪酸メチルエステル化合物、脂肪酸ジエタノールアミド等のノニオン系界面活性剤(特許文献4)等を用いることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭53−104434号公報
【特許文献2】特開2005−306964号公報
【特許文献3】特開2006−241424号公報
【特許文献4】特開2010−265334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1〜4に記載されているような界面活性剤を用いた従来のエマルジョン燃料は、必ずしもエマルジョンの長期安定性が良いとは言い難く、安定性を高めるために界面活性剤の使用量を多くすると経済性が悪く、更にエマルジョン燃料の粘性が高くなるので、燃焼効率や環境負荷物質発生などに影響を及ぼすとともに、内燃機関の清浄や触媒に有害な影響を与えるという問題があった。また、水中油型(O/W)エマルジョン燃料は油滴の外側に水が存在するため着火しにくいという問題点があった。また、燃焼装置の金属部分が直接水と接触するため錆等が発生しやすいという問題もあった。本発明は上記の点に鑑みなされたもので、界面活性剤の使用量が少なくてもエマルジョンが長期間安定している粘性が抑えられた高品質エマルジョン燃料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち本発明は、
(1)水がノニオン性界面活性剤によって燃料油中に乳化分散されている油中水型(W/O)のエマルジョン燃料であって、ノニオン性界面活性剤として、IOB値が0.5以上、1.0未満の下記一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤を必須成分として含有することを特徴とするエマルジョン燃料、
【化1】

但し、一般式(1)において、Rはアルキル基、Rはアルキレン基であって、R+Rの炭素数は13〜19かつRの炭素数は1以上、Rは炭素数2〜20のアルキル基又はアルケニル基、AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシドより誘導されるオキシアルキレン基、n、mは同一又は異なるそれぞれ0〜20の数であって、n+m=1〜20となる数、Xはエステル結合(OCOあるいはCOO)、アミド結合(NHCOあるいはCONH)、エーテル結合(O)を示す。
(2)水と燃料油との合計重量に対して、ノニオン性界面活性剤0.01〜2重量%を含有する上記(1)のエマルジョン燃料、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のエマルジョン燃料は、界面活性剤の使用量が少なくても水の分散安定性に優れ、長期間安定なエマルジョン状態が維持されるとともに、粘性も低く抑えられるので燃料噴射ノズルからの噴霧状態がよく安定した燃焼性が得られ、結果として燃焼効率が保たれ、PM、NOx等の環境汚染物質の発生を抑え、内燃機関が排出するガスがもたらす環境負荷の低減あるいは排出ガスを浄化する装置への負荷低減にも繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例5で得られたエマルジョン燃料の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のエマルジョン燃料に用いる燃料油としては、鉱物性油、植物性油脂、動物性油脂等の他、これらを含む機械油、潤滑油、切削油を用いることができ、さらにはこれらの廃油等も使用することができる。例えば鉱物性油としては、軽油、灯油、A重油、B重油、C重油、ガソリン、ナフサ等が挙げられる。植物性油脂、動物性油脂としては、ナタネ油、大豆油、米ぬか油、綿実油、トウモロコシ油、パーム油、ヒマワリ油等や、牛脂、豚脂、羊脂、鶏脂、魚油等、あるいはこれらの、硬化油、エステル交換油等が挙げられる。これらのうち、軽油、灯油、A重油が好ましい。
【0009】
本発明のエマルジョン燃料は、燃料油と水との混合割合が、燃料油95〜70重量%、水5〜30重量%であることが好ましい。水が5重量%未満の場合は、PM、NOx等の環境汚染物質の低減ができなくなる虞があり、30重量%を超える場合は、熱損失によりエネルギー効率が十分発現しなくなる虞がある。
【0010】
本発明において、燃料油中に水を乳化分散させるために用いるノニオン性界面活性剤としては、上記一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤が必須成分として使用されるが、一般式(1)におけるXがエステル結合(OCO)である化合物は、例えば炭素数が16〜22の不飽和脂肪酸と、炭素数2〜20の脂肪族アルコールとを反応せしめて得た不飽和脂肪酸アルキルエステルの不飽和結合部分をヒドロキシル化した後、水酸基の一方又は両方にアルキレンオキシドを付加させて得ることができる。または炭素数が16〜22の不飽和脂肪酸をヒドロキシル化した後、炭素数2〜20の脂肪族アルコールと反応して得られたジヒドロキシ脂肪酸アルキルエステルあるいはジヒドロキシ脂肪酸アルケニルエステルの水酸基の一方又は両方にアルキレンオキシドを付加させて得ることができる。Xがエステル結合(COO)である化合物は、例えば炭素数15〜21の不飽和脂肪族アルコールと、炭素数3〜21の飽和脂肪酸とを反応せしめて得た飽和脂肪酸アルケニルエステルの不飽和結合部分をヒドロキシル化した後、水酸基の一方又は両方にアルキレンオキシドを付加させて得ることができる。Xがアミド結合(NHCO)である化合物は、例えば炭素数が16〜22の不飽和脂肪酸と、炭素数2〜20の脂肪族アミンとの反応により得られる不飽和脂肪酸アルキルアミドの不飽和結合部分をヒドロキシル化した後、水酸基の一方又は両方にアルキレンオキシドを付加させて得ることができる。Xがアミド結合(CONH)である化合物は、例えば炭素数15〜21の不飽和脂肪族アミンと、炭素数3〜21の飽和脂肪酸とを反応せしめて得た飽和脂肪酸アルケニルアミドの不飽和結合部分をヒドロキシル化した後、水酸基の一方または両方にアルキレンオキシドを付加させて得ることができる。Xがエーテル結合である化合物は、例えば炭素数15〜21の不飽和脂肪族アルコールに、ナトリウムやカリウムのような反応性の高い金属、または金属水酸化物を作用させて得られるアルコキシドと、炭素数2〜20のハロゲン化アルキルとのWilliamson合成により得られるアルケニルアルキルエーテルの不飽和結合部分をヒドロキシル化した後、水酸基の一方又は両方にアルキレンオキシドを付加させて得ることができる。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)が用いられ、水酸基の少なくとも一方に結合していることが必要であり、各水酸基におけるアルキレンオキシド付加モル数は最大20モルまであり、総付加モル数が1〜20モルとなるように付加されるが、好ましくは1〜15モルである。
【0011】
一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤において、Xがエステル結合(OCO)である化合物を得るために用いる上記炭素数16〜22の不飽和脂肪酸としては、例えば、パルミトレイン酸等のヘキサデセン酸(C’16)、ヘプタデセン酸(C’17)、オレイン酸、エライジン酸、バセニン酸等のオクタデセン酸(C’18)、ノナデセン酸(C’19)、ゴンドイン酸等のエイコセン酸(C’20)、ヘンエイコセン酸(C’21)、エルカ酸、ブラシン酸等のドコセン酸(C’22)等が挙げられるが、疎水性相互作用を強めるためには、パルミトレイン酸等のヘキサデセン酸(C’16)、オレイン酸、エライジン酸等のオクタデセン酸(C’18)、ゴンドイン酸等のエイコセン酸(C’20)、エルカ酸等のドコセン酸(C’22)等が好ましい。さらに好ましくは、工業的な原料供給の面と原料が安価である点からオレイン酸が好ましい。また炭素数2〜20の脂肪族アルコールとしては、例えばエチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、イソオクタデシルアルコール、エイコシルアルコール等の飽和脂肪族アルコール、ブテニルアルコール、ペンテニルアルコール、ヘキセニルアルコール、ヘプテニルアルコール、オクテニルアルコール、ノネニルアルコール、デセニルアルコール、ウンデセニルアルコール、ドデセニルアルコール、ペンタデセニルアルコール、ヘキサデセニルアルコール、ヘプタデセニルアルコール、オクタデセニルアルコール、エイコセニルアルコール等の不飽和脂肪族アルコールが挙げられるが、入手が容易であり、分散安定性が良い界面活性剤を得ることができる、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、オクタデシルアルコール、オクタデセニルアルコール等の炭素数8〜18の脂肪族アルコールが好ましい。Xがエステル結合(COO)である化合物を得るために用いる上記炭素数15〜21の不飽和脂肪族アルコールとしては、例えば、ペンタデセニルアルコール(C’15)、ヘキサデセニルアルコール(C’16)、ヘプタデセニルアルコール(C’17)、オクタデセニルアルコール(C’18)、エイコセニルアルコール(C’20)等が挙げられる。不飽和脂肪族アルコールは幾何異性体であるシス体及びトランス体の両方とも用いることができる。入手し易さ、価格の面でcis−9−オクタデセニルアルコール(オレイルアルコール)が好ましい。炭素数3〜21の飽和脂肪酸としては、例えば、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、イソオクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸等が挙げられる。なかでも入手が容易であり、分散安定性が良い界面活性剤を得ることができる、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、オクタデカン酸が好ましい。
【0012】
一般式(1)におけるXがアミド結合(NHCO)である化合物を得るために用いる炭素数16〜22の不飽和脂肪酸としては、上記Xがエステル結合である化合物を得るために用いたと同様の不飽和脂肪酸が用いられる。一方、炭素数2〜20の脂肪族アミンとしては、例えばエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘプチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、エイコシルアミン等の脂肪族第1アミンが挙げられるが、原料が比較的安価で、分散安定性が良い界面活性剤を得ることができる、炭素数8〜20の脂肪族アミンが好ましく、なかでもオクチルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミンが好ましい。Xがアミド結合(CONH)である化合物を得るために用いる炭素数15〜21の不飽和脂肪族アミンとしては、ヘキサデセニルアミン(C’16)、オクタデセニルアミン(C’18)、エイコセニルアミン(C’20)等が挙げられるが、入手が容易であり、分散安定性が良い界面活性剤を得ることができる、cis−9−オクタデセニルアミン(オレイルアミン)が好ましい。一方、炭素数3〜21の飽和脂肪酸としては、上記Xがエステル結合(COO)である化合物を得るために用いたと同様の飽和脂肪酸が用いられる。
【0013】
一般式(1)におけるXがエーテル結合(O)である化合物を得るために用いる、炭素数15〜21の不飽和脂肪族アルコールとしては、上記Xがエステル結合(COO)である化合物を得るために用いたと同様の不飽和脂肪族アルコールが用いられる。炭素数2〜20のハロゲン化アルキルとしては、フッ化アルキル、塩化アルキル、ヨウ化アルキル、臭化アルキル等を用いることができるが、反応性および原材料の調達のし易さから、臭化アルキルが好ましい。ハロゲン化アルキルのアルキル鎖としては、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル等であるものが用いられるが、オクチル、エチルヘキシル、デシル、ドデシル、オクタデシル等の炭素数8〜18のアルキル基が安定した分散性を得る上で好ましい。
【0014】
一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤は、一般式(1)中のRは炭素数が1以上のアルキル基、Rはアルキレン基で、RとRの炭素数の合計が13〜19、Rは素数2〜20のアルキル基又はアルケニル基である2鎖疎水基の化合物であるが、Rの炭素数が6〜8で、RとRの炭素数の合計が15〜19、Rの炭素数が10〜18の2鎖疎水基の場合、分散機能がより発揮され好ましく、その理由は2鎖疎水基の構造バランスに起因するものと考えられる。
【0015】
一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤としては、IOB値が0.5以上、1.0未満のものを用いる。IOB値が0.5未満の場合は極性が低く、つまり親油性が高くなり、1.0以上の場合は極性が高く、つまり親水性が高くなり、エマルジョン燃料の長期安定性を維持するのが困難になる虞がある。
IOB値(Inorganic Organic Balance)とは、藤田穆の有機概念図に基づき、有機化合物の構成元素や官能基に応じて設定された無機性値(IV)、有機性値(OV)から下記数1により求められる数値で、有機化合物の極性の指標となる。
【0016】
(数1)
IOB値=無機性値(IV)/有機性値(OV)
【0017】
IOB値が0.5以上、1.0未満である一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤は、構成原料である脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、ハロゲン化アルキルからXの結合生成に必要な各炭素数の原料を選択し、Xの結合生成反応、さらにヒドロキシル化した後の化合物の無機性値(IV)、有機性値(OV)と設定IOB値から、上記数1を用いてアルキレンオキシドを付加させる際の付加モル数を換算し、反応することで得ることができる。
【0018】
IOB値が0.5以上、1.0未満である一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、Xがエステル結合(OCO)である化合物では、9,10−ジヒドロキシヘキサデカン酸エチルエステルのEO1モル付加体(IOB値:0.82)、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸ヘキシルエステルのEO2モル付加体(IOB値:0.70)、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸−2-エチルヘキシルエステルのEO4モル付加体(IOB値:0.78)、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸ドデシルエステルのEO1モル付加体(IOB値:0.51)、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸デシルエステルのEO9モル付加体(IOB値:0.96)、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルエステルのEO8モル付加体(IOB値:0.77)、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルエステルのEO10モル付加体(IOB値:0.84)、13,14−ジヒドロキシドコサン酸オクタデシルエステルのEO15モル付加体(IOB値:0.93)、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデセニルエステルのEO10モル付加体(IOB値:0.85)、Xがエステル結合(COO)である化合物では、オクタデカン酸−9,10−ヘキサデシルエステルのEO5モル付加体(IOB値:0.67)、オクタデカン酸−9,10−ジヒドロキシオクタデシルエステルのEO8モル付加体(IOB値:0.77)、Xがアミド結合(NHCO)である化合物では、9,10−ジヒドロキシヘキサデカン酸ドデシルアミドのEO2モル付加体(IOB値:0.84)、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルアミドのEO5モル付加体(IOB値:0.80)、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸ドデシルアミドのEO3モル付加体(IOB値:0.84)、Xがアミド結合(CONH)である化合物では、オクタン酸−9,10−ジヒドロキシオクタデシルアミドのEO3モル付加体(IOB値0.95)、オクタデカン酸−9,10−ジヒドロキシオクタデシルアミドのEO5モル付加体(IOB値:0.80)、Xがエーテル結合(O)である化合物では、9,10−ジヒドロキシオクタデシルオクチルエーテルのEO5モル付加体(IOB値:0.78)、9,10−ジヒドロキシオクタデシルオクチルエーテルのEO9モル付加体(IOB値:0.96)、9,10−ジヒドロキシオクタデシルデシルエーテルのEO8モル付加体(IOB値:0.88)、9,10−ジヒドロキシオクタデシルドデシルエーテルのEO2モル付加体(IOB値:0.52)、9,10−ジヒドロキシオクタデシルドデシルエーテルのEO9モル付加体(IOB値:0.87)、9,10−ジヒドロキシオクタデシルオクタデシルエーテルのEO5モル付加体(IOB値:0.60)、9,10−ジヒドロキシオクタデシルオクタデシルエーテルのEO10モル付加体(IOB値:0.80)等を挙げることができる。
【0019】
本発明のエマルジョン燃料において、一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤の配合量は、燃料油の種類や水との混合割合に影響し、例えば水の比率が増加するとノニオン性界面活性剤も多く配合するが、通常は水と燃料油との合計重量に対して、0.01〜2重量%配合することが好ましい。
【0020】
本発明のエマルジョン燃料において、上記一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤は、1種のみを選択して使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用しても良いが、一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤を1種のみ使用するよりも、2種以上を組み合わせて用いるか、あるいは一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤と他のノニオン性界面活性剤とを併用することで、より安定なエマルジョンが得られる場合がある。これは2種以上の界面活性剤が燃料油含有成分に対して分散状態を安定的に維持するよう有効に作用したり、ファンデルワールス力、双極子相互作用、水素結合でお互いに引き合い、界面に液体凝縮膜を形成してエマルジョンが安定するためと考えられる。ノニオン性界面活性剤の組み合せ割合としては、例えば一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤の2種組み合わせ、あるいは他のノニオン性界面活性剤1種併用の場合、配合比(重量%)を90:10〜10:90にすることで相乗効果を発揮し、良質なエマルジョン燃料を得ることができる。
【0021】
本発明のエマルジョン燃料における燃料油が、例えば植物性油、動物性油の場合には、上記一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤として、Xがエステル結合であるものを用いると、動物性油、植物性油と同様にエステル結合を有することから親和性が高く、好適である。また燃料油が軽油やA重油等の粘度の低い鉱物性油の場合、これらの鉱物油にはパラフィン系炭化水素とアスファルテン等重質成分以外の極性物質成分が含まれるが、A重油は極性物質成分の含有率が軽油より高いため、上記一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤として、Xがアミド結合である化合物を、Xがエステル結合及び/又はエーテル結合である化合物と組み合わせ、Xがアミド結合である化合物が界面活性剤中の10〜90重量%、好ましくは10〜50重量%となるように配合することで、極性物質成分に対しても分散状態を安定的に維持するよう有効に作用し好適である。
また燃焼させた際に発生するNOx発生量にも留意して界面活性剤を配合する必要がある。NOx発生は燃料油中のN分(窒素含有化合物)が燃焼過程で酸化されるフュエルNOxと、燃焼空気中のNが高温高圧下で酸素と結合してできるサーマルNOxとに大別される。NOx発生量は燃焼効率、空気供給量、燃焼炉内温度などに影響を受け、サーマルNOx発生量はその影響が顕著である。フュエルNOx発生量は窒素含有化合物がエマルジョン燃料中に多量に含有されていると増加するが、少量の場合には与える影響も小さい。したがって窒素含有化合物であるアミド結合を有するノニオン性界面活性剤を配合する場合には、アミド結合を有する界面活性剤のエマルジョン燃料中の割合が、燃料油と水の合計量に対して1重量%以下となるようにすることが好ましい。
またエマルジョン燃料の動粘度にも留意してノニオン性界面活性剤を配合する必要がある。燃料油:水=95:5の時、エマルジョン燃料の動粘度が、軽油の場合は2〜3mm/s(30℃)、A重油の場合は1.5〜4mm/s(50℃)、燃料油:水=85:15の時、エマルジョン燃料の動粘度が、軽油の場合は2〜7mm/s(30℃)、A重油の場合は1.5〜5mm/s(50℃)、燃料油:水=70:30の時、エマルジョン燃料の動粘度が、軽油の場合2〜12mm/s(30℃)、A重油の場合は、1.5〜7mm/s(50℃)となることが好ましく、このような動粘度となるような量のノニオン性界面活性剤を配合することが好ましい。ノニオン性界面活性剤合計の配合量は、好適には2重量%以下である。エマルジョン燃料の粘度が高いと、燃料をノズルから噴霧する時の燃料微粒子化が悪化し燃焼性が低下したり、拡散性が悪化し燃料噴射ノズル付近で燃料の多くが燃焼するため局所的に高温となりNOxが発生しやすくなる虞がある。従来のノニオン性界面活性剤によりエマルジョン燃料の安定性を維持するためには、界面活性剤配合量を増やす必要があり、その結果、エマルジョン燃料の動粘度が高くなってしまう虞があるが、上記一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤を用いることで、より少ない界面活性剤配合量でエマルジョン燃料の安定性を維持することができ、しかも燃料効率が保たれるとともに、PM、NOx等の環境汚染物質の発生を抑え、内燃機関が排出するガスがもたらす環境負荷の低減、あるいは排出ガスを浄化する装置への負荷が低減された低粘性の良質なエマルジョン燃料を得ることができる。勿論、上記粘度を越える粘性の高いエマルジョン燃料でも、燃料噴射ノズルの構造、燃焼に伴いノズルが温められてエマルジョン燃料が加温されるような内燃機関、燃料供給制御装置などの設備面からの改善を行うことにより、安定なエマルジョン燃料の噴霧状態を達成し得るが、より軽微な設備で達成するためには粘性を抑えることがより有用である。
このように燃料油の成分、NOx発生量、水の混合割合や動粘度を考慮して、一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤、配合量を適宣選択することにより有効に分散し、効率よく燃焼させることが可能となる。
【0022】
上記一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤と併用することができる他のノニオン性界面活性剤としては、従来からエマルジョン燃料の水の分散安定性を高めるために用いられているノニオン性界面活性剤が使用でき、例えばアミド結合を有する脂肪酸アルカノールアミド、エステル結合を有する多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油脂肪酸エステル、エーテル結合を有するポリオキシアルキレングルコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、フェノール類のアルキレンオキシド付加物、フェノール類のホルマリン縮合物のアルキレンオキシド付加物、エステル結合及びエーテル結合を有する高級脂肪酸のアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。脂肪酸アルカノールアミドとしては、ヤシ油脂肪酸(モノ、ジ)エタノールアミド、パーム油脂肪酸(モノ、ジ)エタノールアミド、ラウリン酸(モノ、ジ)イソプロパノールアミド、オレイン酸(モノ、ジ)エタノールアミド、ステアリン酸(モノ、ジ)エタノールアミド、ラウリン酸(モノ、ジ)エタノールアミド等が挙げられる。多価アルコール脂肪酸エステルとしては、ソルビタン(モノ、ジ、トリ)オレエート、ソルビタン(モノ、ジ、トリ)ラウレート、ソルビタン(モノ、ジ、トリ)ステアレート、ソルビタン(モノ、ジ、トリ)パルミテート、(ポリ)グリセリンモノオレエート、(ポリ)グリセリンモノステアレート等が挙げられる。ポリオキシアルキレン硬化ひまし油脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレン硬化ひまし油(モノ、ジ、トリ)イソステアレート、ポリオキシエチレン硬化ひまし油(モノ、ジ、トリ)オレエート等が挙げられる。ポリオキシアルキレングルコールとしては、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオレイルエーテル等が挙げられる。フェノール類のアルキレンオキシド付加物としては、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、ドデシルフェノール、ナフトール、ベンジル化フェノール、パラクミルフェノール、スチレン化フェノール、ビスフェノールAなどのフェノール性水酸基を有する化合物のアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。フェノール類のホルマリン縮合物のアルキレンオキシド付加物としては、フェノール、アルキルフェノール、ベンジル化フェノール、スチレン化フェノールなどのフェノール性水酸基を有する化合物のホルマリン縮合物(重合度1.5〜6)のアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。エステル結合及びエーテル結合を有する高級脂肪酸のアルキレンオキシド付加物としては、ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリン酸エステル等が挙げられる。他のノニオン性界面活性剤の割合は、ノニオン性界面活性剤合計量中、90重量%以下、特に70重量%以下となるように用いることが好ましい。
【0023】
一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤と他のノニオン性界面活性剤とを併用する場合、本発明のエマルジョン燃料における燃料油が、例えば植物性油、動物性油の場合には、他のノニオン性界面活性剤としてはエステル結合を有する多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油脂肪酸エステルを併用すると、動物性油、植物性油と同様にエステル結合を有することから親和性が高く、好適である。また燃料油が鉱物性油、特にパラフィン系炭化水素とアスファルテン等重質成分以外の極性物質成分が多く含まれるA重油等の場合には、アミド結合を有する化合物と、エステル結合及び/又はエーテル結合を有する化合物との組み合わせとなるように、一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤と、他のノニオン性界面活性剤を適宣組み合わせることで、極性物質成分に対しても分散状態を安定的に維持するよう有効に作用し好適である。他のノニオン性界面活性剤としては、例えば多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミドなどが好適である。
このように燃料油の成分、一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤の結合種(X)や、上述のNOx発生量、水の混合割合や動粘度を考慮して、他のノニオン性界面活性剤、配合量を適宣選択することにより有効に分散し、効率よく燃焼させることが可能となる。ノニオン性界面活性剤合計の配合量は、好適には2重量%以下である。
【0024】
本発明のエマルジョン燃料中には、必要に応じてその他の添加剤、例えばアミン系などの防錆剤、アルケニルコハク酸系やそのアルキルエステルなどの腐食防止剤、アルコール系などの燃焼温度降下剤、スルホネート、フェネート、サリシレート等の過塩基性金属系及び長鎖アルケニル、アルキル基を有するコハク酸イミド、コハク酸エステル等のコハク酸系化合物、ポリブテンアミン、ポリエーテルアミン、アルキルフェノールアミン等のアミン系化合物、ピリジン類、ピロール類、ピリミジン類、ピラゾール類、ピリダジン類、イミダゾール類、およびピラジン類等の複素環化合物、グアニジン系化合物、アミジン系化合物等の清浄分散剤などを添加することもできる。
【0025】
本発明のエマルジョン燃料の調製方法としては、燃料油、水、界面活性剤を乳化できる方法であれば特に限定されない。例えば、燃料油にノニオン性界面活性剤を混合してから、水を徐々に添加する方法、水にノニオン性界面活性剤を混合してから、燃料油に添加する方法、水、燃料油、ノニオン性界面活性剤を一括混合する方法のいずれの方法でもよい。乳化混合機としては、特に限定されないが、プロペラ羽根、タービン羽根、パドル翼などの羽根を装着した撹拌混合機および高速回転剪断型攪拌機、高圧噴射式乳化分散機、超音波乳化分散機などが例示され、エマルジョンの粒子径を0.1〜100μmの範囲内にすることが好ましく、特に20μm以下にすることが好適である。この粒子径が大きすぎるとエマルジョン粒子の合一が起こりやすくなり、エマルジョンの安定性が低くなり、燃焼効率が向上しなくなる虞がある。上記のようなエマルジョン燃料の調整方法により一般的には高品質エマルジョン燃料と言われる、粘性が低く、油水分離せず、二層化しない長期貯蔵が可能で燃焼状態が良い良質なエマルジョン燃料が得られる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例、比較例において用いた界面活性剤は以下に示す。
【0027】
1)界面活性剤1:9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルエステルのEO8モル付加体(IOB値:0.77)
2)界面活性剤2:オクタデカン酸−9,10−ジヒドロキシオクタデシルエステルのEO8モル付加体(IOB値:0.77)
3)界面活性剤3:9,10−ジヒドロキシオクタデシルデシルエーテルのEO8モル付加体(IOB値:0.88)
4)界面活性剤4:9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルエステルのEO8モル付加体(IOB値:0.77)80重量%、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルエステルのEO10モル付加体(IOB値:0.84)20重量%
5)界面活性剤5:9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルエステルのEO8モル付加体(IOB値:0.77)80重量%、9,10−ジヒドロキシオクタデシルデシルエーテルのEO8モル付加体(IOB値:0.88)20重量%の混合物
6)界面活性剤6:オクタデカン酸−9,10−ジヒドロキシオクタデシルエステルのEO8モル付加体(IOB値:0.77)80重量%、9,10−ジヒドロキシオクタデシルデシルエーテルのEO8モル付加体(IOB値:0.88)20重量%の混合物
7)界面活性剤7:9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルエステルのEO8モル付加体(IOB値:0.77) 80重量%、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルアミドのEO5モル付加体(IOB値:0.80)20重量%の混合物
8)界面活性剤8:9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルエステルのEO8モル付加体(IOB値:0.77) 50重量%、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルアミドのEO5モル付加体(IOB値:0.80)50重量%の混合物
9)界面活性剤9:13,14−ジヒドロキシドコサン酸オクタデシルエステルのEO15モル付加体(IOB値:0.93) 80重量%、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルアミドのEO5モル付加体(IOB値:0.80)20重量%の混合物
10)界面活性剤10:9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸ドデシルエステルのEO1モル付加体(IOB値:0.51)80重量%、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルアミドのEO5モル付加体(IOB値:0.80)20重量%の混合物
11)界面活性剤11:9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデセニルエステルのEO10モル付加体(IOB値:0.85)80重量%、オクタデカン酸−9,10−ジヒドロキシオクタデシルアミドのEO5モル付加体(IOB値:0.80)20重量%の混合物
12)界面活性剤12:9,10−ジヒドロキシオクタデシルデシルエーテルのEO8モル付加体(IOB値:0.88)80重量%、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルアミドのEO5モル付加体(IOB値:0.80)20重量%の混合物
13)界面活性剤13:9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルエステルのEO8モル付加体(IOB値:0.77)10重量%、ソルビタンモノオレエート90重量%の混合物
14)界面活性剤14:9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルエステルのEO8モル付加体(IOB値:0.77)30重量%、ソルビタンモノオレエート70重量%の混合物
15)界面活性剤15:9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルエステルのEO8モル付加体(IOB値:0.77)70重量%、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド30重量%の混合物
16)界面活性剤16:9,10−ジヒドロキシオクタデシルデシルエーテルのEO8モル付加体(IOB値:0.88)30重量%、ソルビタンモノオレエート70重量%の混合物
17)界面活性剤17:9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクタデシルアミドのEO5モル付加体(IOB値:0.80)30重量%、ソルビタンモノオレエート70重量%の混合物
18)界面活性剤18:9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸デシルエステルのEO20モル付加体(IOB値:1.22)
19)界面活性剤19:9,10−ジヒドロキシオクタデシルオクタデシルエーテルのEO2モル付加体(IOB値:0.44)
20)界面活性剤20:ソルビタンモノオレエート
21)界面活性剤21:ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド
22)界面活性剤22:ソルビタンモノオレエート70重量%、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド30重量%の混合物
【0028】
実施例1〜38、比較例1〜18
表1、2に示す割合の燃料油、界面活性剤、水をビーカーに入れ、ホモジナイザー(アズワン株式会社製AHG−160D)を用い25℃、10000rpmの回転数で5分間撹拌してエマルジョン燃料を得た。得られたエマルジョン燃料の分離水量、安定性評価、粘度測定を行い、NOx減少率を求めた。結果を表1、2にあわせて示す。尚、実施例1〜38で得られたエマルジョン燃料を顕微鏡観察したところ、いずれも分散しているエマルジョン粒子は、観察画像内のスケールで粒子径が10μm以下であることを確認した。図1は実施例5で得られたエマルジョン燃料の顕微鏡写真(倍率400倍)である。
【0029】
<分離水量、安定性>
得られたエマルジョン燃料を100mL目盛り付きの栓付きメスシリンダーに100mL移して25℃の恒温器内で静置し、30日後の分離した水分量を計測した。分離水量が1mL未満を安定性が○、1mL以上を安定性が×として評価した。
【0030】
<粘度測定>
キャノンフェンスケ型粘度計(柴田科学株式会社製)を用いて30℃(軽油の場合)、もしくは50℃(A重油の場合)における動粘度を測定した。
【0031】
<NOx減少率>
市販のディーゼルエンジン「デンヨー小型ディーゼルエンジン発電機:DA−3100SS−IV 水冷4サイクル渦流室式」を用い燃焼試験を行い、排ガス中のNOx濃度を測定した。実施例および比較例のエマルジョン燃料を燃焼したときのNOx発生を、軽油のみ、またはA重油のみ燃焼したときを100%とした場合の減少率で示した。尚、一般的にNOx発生量は水の比率が増加すると低減される傾向にある。
【0032】
<エマルジョン粒子観察>
システム生物顕微鏡(OLYMPUS社製 BX53)を用いて得られたエマルジョン燃料を観察(倍率400倍)した。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
表1、2に示す結果より、一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤を含むエマルジョン燃料(実施例1〜38)は、ノニオン性界面活性剤配合量が2.0重量%以下であっても、いずれも30日後の分離水量が1mL未満で長期安定した粘性が抑えられた高品質なものであったが、IOB値が0.5以上、1.0未満の範囲から外れる2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤を用いたエマルジョン燃料(比較例1、2、10、11)では、分離水量が1mL以上で安定性が低くなる。また界面活性剤としてソルビタンモノオレエートを用いたエマルジョン燃料(比較例3、4、12、13)では、界面活性剤配合量が4.0重量%では分離水量が1mL以上で安定性が悪く、7重量%配合すると安定性は良好となるものの、動粘度が増加して噴霧状態が悪くなるため、NOxの減少率が低下する。ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドは1重量%配合では、油と水を混合した直後から分離が生じてエマルジョン燃料が得られず、10重量%配合(比較例7、比較例16)しても短時間で油水分離が生じた。
燃料油がA重油の場合、一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤を組み合わせて使用すると(実施例5〜14)、1種のみを使用した場合(実施例1〜4)の配合量以下でも分離水量が少なく安定なエマルジョン燃料が得られ、さらにXがアミド結合である化合物を併用すると分離水量はより少なく、より安定となる傾向が認められた。Xがアミド結合の化合物を多く配合したエマルジョン燃料(実施例10、実施例29)は、少ないもの(実施例9、28)に比べてNOx減少率は低くなるが、Xがアミド結合の化合物の配合量が、燃料油と水の合計に対して1重量%以下であれば、NOx減少率は問題ないレベルであるとともに安定性、動粘度、ともに問題が無い。
一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤を、他のノニオン性界面活性剤と併用すると、例えば、実施例1と、16、17との対比、実施例4と18との対比、実施例23と37との対比より明らかなように、他のノニオン性界面活性剤の配合量が少なくても、一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤1種のみを使用するよりも、分離水量がより少なく安定で、組み合わせ使用による優れた乳化性能が発揮されるが、一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤とは異なる他のノニオン性界面活性剤を2種組み合わせた場合は、界面活性剤配合量が1重量%配合(比較例8、17)でも分離水量が1mL以上で安定せず、ソルビタンモノオレエート1種のみ7重量%配合(比較例3、12)と比べ、より少ない5重量%配合(比較例9、18)で安定はするが、依然として配合量が多いため動粘度は高く、窒素含有化合物であるヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドを1.5重量%併用しているため、さらにNOx減少率が低くなる。
即ち、本発明のエマルジョン燃料は、一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤を配合することにより、界面活性剤の使用量が少なくても水の分散安定性に優れ、さらに界面活性剤を組み合わせて使用でき、A重油を使用する場合には特にXがアミド結合の化合物を併用することが有効であり、長期間安定なエマルジョン状態が維持されるとともに、粘性も低く抑えられるので、燃焼時の噴霧状態が良好なためNOxの減少率が高く、有用であることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水がノニオン性界面活性剤によって燃料油中に乳化分散されている油中水型(W/O)のエマルジョン燃料であって、ノニオン性界面活性剤として、IOB値が0.5以上、1.0未満の下記一般式(1)で示される2鎖2親水基含有ノニオン性界面活性剤を必須成分として含有することを特徴とするエマルジョン燃料。
【化1】

但し、一般式(1)において、Rはアルキル基、Rはアルキレン基であって、R+Rの炭素数の合計が13〜19で、かつRの炭素数は1以上、Rは炭素数2〜20のアルキル基又はアルケニル基、AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシドより誘導されるオキシアルキレン基、n、mは同一又は異なるそれぞれ0〜20の数であって、n+m=1〜20となる数、Xはエステル結合(OCOあるいはCOO)、アミド結合(NHCOあるいはCONH)、エーテル結合(O)を示す。
【請求項2】
水と燃料油との合計重量に対して、ノニオン性界面活性剤0.01〜2重量%を含有する請求項1記載のエマルジョン燃料。


【図1】
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【公開番号】特開2013−57013(P2013−57013A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196365(P2011−196365)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000114318)ミヨシ油脂株式会社 (120)
【Fターム(参考)】