説明

エマルジョン製造装置、単分散微粒子製造装置並びにエマルジョンの製造方法、単分散微粒子の製造方法

【課題】エマルジョン製造装置を大型化した場合であっても、均一なエマルジョンを効率的に製造可能なエマルジョン製造装置を提供する。
【解決手段】マイクロチャネルプレート36は、内部空間35を第1の流路37と第2の流路38とに区画している。マイクロチャネルプレート36には、第1の流路37と第2の流路38とを連通させる複数の貫通孔40が形成されている。第1の配管14は、マイクロチャネルプレート36の中央部分において第1の流路37に接続されている。第1の配管14は、第1の流路37に分散相となる第1の液体12を供給する。第2の配管17は、マイクロチャネルプレート36の中央部分において第2の流路38に接続されている。第2の配管17は、第2の流路38に連続相となる第2の液体13を供給する。側壁34には、第2の流路38に開口する複数の排出経路39が周方向に沿って複数形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルジョン製造装置、単分散微粒子製造装置並びにエマルジョンの製造方法、単分散微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水相と有機相のように、相互に分離した状態が熱力学的に安定状態となる二相状態を乳化することにより準安定状態にあるエマルジョンを作製する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、図8に示すエマルジョン製造装置100が開示されている。エマルジョン製造装置100は、中間プレート101によって仕切られた第1の流路102と第2の流路103とを備えている。第1の流路102には、分散相となる液体が供給される。第2の流路103には、連続相となる液体が供給される。中間プレート101には、複数の微細な貫通孔101aが形成されている。エマルジョン製造装置100では、第1の流路102を流れる分散相となる液体の圧力は、第2の流路103を流れる連続相となる液体の圧力より高い。このため、第1の流路102を流れる液体は、中間プレート101に形成された貫通孔101aを経由して第2の流路103を流れる液体中に押し出される。ここで、貫通孔101aの横断面形状は、矩形状とされている。このため、第2の流路103を流れる液体中に押し出される液体の界面張力の作用により、第1の流路を流れる液体が自発的に分裂する。その結果、分散相が微細な液滴として連続相中に分散したエマルジョンが得られる。
【特許文献1】特許第3772182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたエマルジョン製造装置100では、第1の流路102と第2の流路103とに、エマルジョン製造装置100の一方の端部から液体が導入され、生成されたエマルジョンは、他方の端部から排出される。このため、中間プレート101が大きな面積を有する場合、中間プレート101に対する第1の流路102側の圧力と、中間プレート101に対する第2の流路103側の圧力との差が、液体の導入部付近の部分と液体の導入部から離れた部分とで大きく異なる。具体的には、中間プレート101に対する第1の流路102側の圧力と、中間プレート101に対する第2の流路103側の圧力との差は、液体の導入部から離れるにつれて小さくなる。従って、液体の導入部付近においては、エマルジョンが効率的に生成されるものの、液体の導入部から離れた部分においては、エマルジョンが効率的に生成されない傾向にある。また、分散相の流量を増やすとエマルジョンの生成が液体の導入部付近に偏る傾向にあるため、エマルジョンの流れが滞り、大きなエマルジョンが生成する場合がある。
【0005】
すなわち、エマルジョン製造装置100が大型であり、中間プレート101が大きな面積を有する場合は、中間プレート101の全体がエマルジョンの生成に十分に寄与しない。その結果、エマルジョンを効率的に生成させることが困難であるばかりか、中間プレート101の場所によって生成されるエマルジョンの大きさにばらつきが生じ、均一な大きさのエマルジョンの生成が困難になるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、エマルジョン製造装置を大型化した場合であっても、均一な大きさのエマルジョンを効率的に製造できるエマルジョン製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエマルジョン製造装置は、対向する第1の基板及び第2の基板と、環状または多角形状の側壁と、中間プレートと、第1の配管と、第2の配管とを備えている。側壁は、第1の基板と第2の基板との間に配置されている。側壁は、第1の基板と第2の基板と共に内部空間を形成している。中間プレートは、内部空間において、第1の基板と第2の基板との間に配置されている。中間プレートは、内部空間を第1の流路と第2の流路とに区画している。第1の流路と第2の流路とのそれぞれは、中央から外周の全周にわたって延びている。第1の配管は、中間プレートの中央部分において第1の流路に接続されている。第1の配管は、第1の流路に分散相となる第1の液体を供給する。第2の配管は、中間プレートの中央部分において第2の流路に接続されている。第2の配管は、第2の流路に連続相となる第2の液体を供給する。中間プレートには、第1の流路と第2の流路とを連通させる複数の貫通孔が形成されている。側壁には、第2の流路に開口する複数の排出経路が周方向に沿って複数形成されている。
【0008】
本発明のある特定の局面では、貫通孔の横断面形状は矩形である。
【0009】
本発明の他の特定の局面では、貫通孔は、第1の流路に接続された第1の孔部と、第2の流路と第1の孔部とに接続された第2の孔部とを有し、第1の孔部の流路面積は、第2の孔部の流路面積よりも小さい。
【0010】
本発明の別の特定の局面では、エマルジョン製造装置は、第1の流路と第1の配管との接続部と、第2の流路と第2の配管との接続部とのうちの少なくとも一方には、第1の液体または第2の液体の流れを整流化する整流部が配置されている。整流部としては、例えば、液体の流れの均一性を確保するための既知の手段を用いることができる。整流部の具体例としては、流れに対して抵抗を付与するオリフィスや多孔性のフィルタなどが挙げられる。
【0011】
本発明のさらに他の特定の局面では、第1の基板、又は、第2の基板は透明である。
【0012】
本発明に係る単分散微粒子製造装置は、上記本発明に係るエマルジョン製造装置と、エマルジョン製造装置において製造されたエマルジョンが供給され、エマルジョンを硬化することにより微粒子を生成させる硬化機構とを備えている。
【0013】
本発明に係るエマルジョンの製造方法は、上記本発明に係るエマルジョン製造装置を用いたエマルジョンの製造方法であって、第2の流路に第2の液体を供給しつつ、第1の流路における第1の液体の圧力が第2の流路における第2の液体の圧力よりも高くなるように第1の流路に第1の液体を供給することにより、第1の液体を分散相とし、第2の液体を連続相とするエマルジョンを生成させる。
【0014】
本発明に係る単分散微粒子の製造方法は、上記本発明に係る単分散微粒子製造装置を用いた単分散微粒子の製造方法であって、第2の流路に第2の液体を供給しつつ、第1の流路における第1の液体の圧力が第2の流路における第2の液体の圧力よりも高くなるように第1の流路に第1の液体を供給することにより、第1の液体を分散相とし、第2の液体を連続相とするエマルジョンを生成させる工程と、硬化機構によりエマルジョンを硬化させる工程とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エマルジョン製造装置を大型化した場合であっても、均一な大きさのエマルジョンを効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について、図1に示すエマルジョン製造装置1を例に挙げて説明する。但し、図1に示すエマルジョン製造装置1は、単なる例示である。本発明は、エマルジョン製造装置1に限定されない。
【0017】
図1に示すように、エマルジョン製造装置1は、分散相調整槽10と、連続相調整槽11と、マイクロチャネルモジュール30とを備えている。分散相調整槽10には、分散相となる第1の液体12が溜められている。連続相調整槽11には、連続相となる第2の液体13が溜められている。
【0018】
なお、本実施形態において、第1の液体12と第2の液体13とは特に限定されない。分散相となる第1の液体12が油であるときは、O/W(水中油滴型)エマルジョンが生成される。分散相となる第1の液体12が水であるときは、W/O(油中水滴型)エマルジョンが生成される。
【0019】
O/W(水中油滴型)エマルジョンを作製する場合の第1の液体12の具体例としては、例えば、植物性油脂、鉱物性油脂、炭化水素系溶剤、フッ素系溶剤、およびそれらを溶媒とした溶液、重合性のモノマー等が挙げられる。O/W(水中油滴型)エマルジョンを作製する場合の第2の液体13の具体例としては、例えば、水や、界面活性剤などを含有する水溶液等が挙げられる。
【0020】
W/O(油中水滴型)エマルジョンを作製する場合の第1の液体12の具体例としては、例えば、水、水溶性の樹脂、重合性モノマーの水溶液等が挙げられる。W/O(油中水滴型)エマルジョンを作製する場合の第2の液体13の具体例としては、例えば、植物性油脂、鉱物性油脂、炭化水素系溶剤、フッ素系溶剤、およびそれらを溶媒とした溶液等が挙げられる。
【0021】
上記重合性モノマーとしては、例えば、既知の重合性モノマーを用いることができる。重合性モノマーの具体例としては、例えば、モノビニル芳香族化合物、ハロ置換スチレン、ポリビニル芳香族化合物、塩化ビニル等のハロオレフィンやハロゲン化ビニル、α−β−エチレン性不飽和カルボン酸のエステル、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、酸化ビニルなどが挙げられる。モノビニル芳香族化合物としては、スチレン、ビニルナフタレン、アルキル置換スチレン等が挙げられる。ハロ置換スチレンとしては、ブロモ−スチレン、クロロ−スチレン等が挙げられる。ポリビニル芳香族化合物としては、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、トリビニルベンゼン、ジビニルジフェニルエーテルおよびジビニルジフェニルスルホン等が挙げられる。α−β−エチレン性不飽和カルボン酸のエステルとしては、アクリル酸のエステルや、メタアクリル酸のエステル等が挙げられる。上記重合性モノマーは、単独で用いられてもよいし、2種以上が混合されて用いられてもよい。
【0022】
また、エマルジョンが油中水滴型の場合には、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸のアミノアルキルエステル、不飽和カルボン酸の酸無水物、エチレン性不飽和カルボン酸等の水溶性の重合性モノマーを用いてもよい。エチレン性不飽和カルボン酸アミドとしては、アクリルアミド、メタアクリルアミド、フマルアミド、エタクリルアミド等が挙げられる。エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタアクリル酸等が挙げられる。
【0023】
分散相となる第1の液体12には、重合開始剤が添加されていてもよい。重合開始剤としては、例えば、既知の重合開始剤が用いられる。重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスパレロニトリル等が挙げられる。
【0024】
エマルジョンが油中水滴型の場合には、分散相となる第1の液体12には、水溶性の重合開始剤が添加されていてもよい。水溶性の重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩、過硫化水素、またはハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0025】
また、エマルジョンを硬化させるために、光重合反応が利用される場合は、第1の液体12には、光重合開始剤や連鎖移動剤などの重合助剤等が添加されていてもよい。さらに、第1の液体12には、重合に影響を与えない範囲において、その他の増感剤、粘度調整剤、溶媒、表面張力調整のための界面活性剤などが添加されていてもよい。
【0026】
エマルジョンが水中油滴型の場合、連続相となる第2の液体13には、形成された液滴の分裂や、液滴同士の合着を防止するために分散安定剤を添加することが好ましい。分散安定剤の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース、でんぷん、ゼラチン等の水溶性高分子、リン酸三カルシウム等の無機塩等が挙げられる。また、第2の液体13には、表面張力調整のため界面活性剤や、比重調整剤などを添加してもよい。
【0027】
エマルジョンが油中水滴型の場合、連続相となる第2の液体13としては、脂肪族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒等が使用される。脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−オクタン等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、例えば、四塩化炭素等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0028】
連続相となる第2の液体13には、界面活性剤が添加されていてもよい。界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0029】
分散相調整槽10とマイクロチャネルモジュール30とは、第1の配管14によって接続されている。分散相調整槽10内の第1の液体12は、この第1の配管14を経由してマイクロチャネルモジュール30に供給される。第1の配管14には、フィルタ15と、バルブ16とが配置されている。第1の液体12内の不純物は、フィルタ15によって濾過される。第1の配管14の流路面積は、バルブ16の開閉によって調節される。
【0030】
一方、連続相調整槽11とマイクロチャネルモジュール30とは、第2の配管17によって接続されている。連続相調整槽11内の第2の液体13は、この第2の配管17を経由してマイクロチャネルモジュール30に供給される。第2の配管17には、フィルタ18とバルブ19とが配置されている。第2の液体13内の不純物は、フィルタ18によって濾過される。第2の配管17の流路面積は、バルブ19の開閉によって調節される。
【0031】
バルブ16とバルブ19とは、制御部20によって制御される。制御部20によってバルブ16,19の開度が調整されることにより、第1の液体12と第2の液体13とのそれぞれの流量が調節される。
【0032】
図2は、マイクロチャネルモジュール30の断面図である。図2に示すように、マイクロチャネルモジュール30は、相互に略平行に配置された第1の基板32と第2の基板33とを備えている。第1の基板32と第2の基板33とは、相互に対向している。第1の基板32と第2の基板33とのそれぞれの平面視形状は、略円形である。本実施形態では、第1の基板32と第2の基板33とのそれぞれは透明である。但し、第1の基板32と第2の基板33とのそれぞれは非透明であってもよい。第1の基板32及び第2の基板33は、例えば、ガラスやプラスチックなどによって形成することができる。
【0033】
第1の基板32と第2の基板33との間には、側壁34が配置されている。側壁34は、環状に形成されている。この側壁34と、第1の基板32と、第2の基板33とにより、円柱状の内部空間35が形成されている。なお、側壁34は、多角形状に形成されていてもよい。
【0034】
図2、図3及び図4に示すように、側壁34の第2の基板33側の端面には、複数の溝34aが周方向に沿って等間隔に形成されている。この複数の溝34aと第2の基板33とによって、複数の排出経路39が形成されている。複数の排出経路39は、周方向に沿って等間隔に配列されている。図2に示すように、排出経路39は、後述する第2の流路38に開口している。
【0035】
内部空間35内において、第1の基板32と第2の基板33との間には、図4に示す平面視形状が円形である中間プレートとしてのマイクロチャネルプレート36が配置されている。図2に示すように、マイクロチャネルプレート36は、第1の基板32と第2の基板33とに略平行に配置されている。マイクロチャネルプレート36の径方向の外側端は、全周にわたって側壁34の内周面に接している。このマイクロチャネルプレート36によって、内部空間35が第1の流路37と、第2の流路38とに区画されている。第1の流路37と第2の流路38とのそれぞれは、マイクロチャネルプレート36の中央部から外周の全周にわたって延びている。
【0036】
図5及び図6に示すように、マイクロチャネルプレート36には、複数の微細な貫通孔40が形成されている。複数の貫通孔40は、マイクロチャネルプレート36の厚さ方向に貫通している。複数の貫通孔40によって第1の流路37と第2の流路38とが連通している。貫通孔40は、第1の孔部41と第2の孔部42とを有している。第1の孔部41の一方の端部は、第1の流路37に接続されている。第2の孔部42は、第1の孔部41の他方の端部と、第2の流路38に接続されている。第1の孔部41と第2の孔部42とのそれぞれの横断面形状は矩形である。第1の孔部41の流路面積は、第2の孔部42の流路面積よりも小さく設定されている。
【0037】
第1の孔部41と第2の孔部42の寸法は特に限定されない。得ようとするエマルジョンの大きさや第1の液体12の特性などに基づいて適宜設定することができる。第1の孔部41は、例えば、縦:0.1〜1000μm、横:0.1〜1000μm、深さ:0.2〜30000μmに設定することができる。第2の孔部42は、例えば、縦:0.1〜1000μm、横:0.3〜5000μm、深さ:0.3〜5000μmに設定することができる。第1の孔部41の縦寸法と、第2の孔部42の縦寸法とは、ほぼ同じであることが好ましい。第2の孔部42の縦寸法に対する横寸法の比は3〜7であることが好ましい。
【0038】
但し、貫通孔40の形状は、上記形状に特に限定されない。貫通孔40の形状は、横断面形状が非円形であることが好ましい。但し、貫通孔40の横断面形状が非対称であるほど均一なエマルジョンが生成される傾向にある。従って、貫通孔40の横断面形状は、例えば四辺形であることが好ましく、矩形であることがより好ましい。
【0039】
なお、本明細書において「矩形」には、正方形が含まれる。
【0040】
貫通孔40の形成方法は、特に限定されない。貫通孔40は、例えば、プラズマエッチング法、電子線照射法、化学気相蒸着法(CVD)、放電加工法、機械加工法などを用いて形成される。
【0041】
図2に示すように、第1の基板32の略中央部には、開口32aが形成されている。この開口32aに第1の配管14が挿入されている。第1の配管14は、マイクロチャネルプレート36の中央部において第1の流路37に接続されている。図1に示す第1の液体12は、この第1の配管14を経由して第1の流路37に供給される。
【0042】
第2の基板33の略中央部には、開口33aが形成されている。この開口33aに第2の配管17が挿入されている。第2の配管17は、マイクロチャネルプレート36の中央部において第2の流路38に接続されている。図1に示す第2の液体13は、この第2の配管17を経由して第2の流路38に供給される。
【0043】
なお、第1の基板32と第1の配管14との間、及び第2の基板33と第2の配管17との間は、シール43によってシールされている。
【0044】
第1の流路37と第1の配管14との接続部には、整流部としての整流フィルタ44が配置されている。同様に、第2の流路38と第2の配管17との接続部にも、整流フィルタ45が配置されている。整流フィルタ44,45によって、第1の流路37を流れる第1の液体12と、第2の流路38を流れる第2の液体13とが整流化される。
【0045】
図2に示すように、第2の基板33の上方には、カメラ50が配置されている。このカメラ50によって、透明な第2の基板33を介して第2の流路38の様子が撮影される。具体的には、形成されたエマルジョンの状態が撮影される。撮影された画像や動画は、図1に示すモニタ51に映し出される。なお、カメラ50は、対物レンズを介して、エマルジョンの状態を撮影することが好ましい。
【0046】
次に、エマルジョン製造装置1を用いたエマルジョンの製造工程について説明する。まず、図1に示す分散相調整槽10から第1の配管14を介して、第1の流路37に第1の液体12の供給を開始する。同時に、連続相調整槽11から第2の配管17を介して、第2の流路38に第2の液体13の供給を開始する。第1の流路37に供給される第1の液体12と第2の流路38に供給される第2の液体13とは、整流フィルタ44,45によって整流化される。このため、第1の流路37を流れる第1の液体12と、第2の流路38を流れる第2の液体13とのそれぞれは、実質的に整流となる。
【0047】
制御部20は、第1の流路37における第1の液体12の圧力が第2の流路38における第2の液体13の圧力よりも高くなるようにバルブ16,19の開度を調節する。このため、第1の流路37を流れる第1の液体12の一部は、マイクロチャネルプレート36に形成された貫通孔40を経由して、第2の流路38を流れる第2の液体13中に押し出される。ここで、貫通孔40の横断面形状は、上述のように非円形に形成されている。よって、第2の液体13中に押し出される第1の液体12の界面張力の作用により、第1の液体12は自発的に分裂し、第1の液体12は微細な液滴として第2の液体13に分散される。その結果、第1の液体を分散相とし、第2の液体を連続相とするエマルジョンが生成される。生成されたエマルジョンは、排出経路39から排出される。排出されたエマルジョンは、側壁34の外周面を伝って流れ落ち、エマルジョン回収流路47を経由して、図1に示す重合槽46に溜められる。
【0048】
例えば、図8に示すエマルジョン製造装置100のように、一方の端部から液体を導入して、他方の端部からエマルジョンを排出させる場合、分散相となる液体と連続相となる液体との圧力差が中間プレート101の各所において大きく異なることとなる。このため、中間プレート101において、分散相となる液体と連続相となる液体との圧力差が大きい部分では、エマルジョンの生成が効率的に行われるものの、分散相となる液体と連続相となる液体との圧力差が小さい部分では、エマルジョンの生成が効率的に行われない。このため、エマルジョンの生産効率を高めることが困難である。中間プレート101が大きい面積を有する場合は、エマルジョンの生産効率を高めることが特に困難となる。
【0049】
本実施形態では、第1の流路37と第2の流路38との平面形状は円形である。そして、第1の液体12と第2の液体13とは、第1の流路37と第2の流路38との略中央部から導入され、エマルジョンは径方向の外側に設けられた排出経路39から排出される。よって、エマルジョン製造装置100と較べて、分散相となる第1の液体12と連続相となる第2の液体13との圧力差の面内分布が均一化されている。従って、マイクロチャネルプレート36の面積が大きくても、エマルジョンが効率的に生成される。
【0050】
また、分散相となる第1の液体12と連続相となる第2の液体13との圧力差の面内分布が均一化されているため、マイクロチャネルプレート36の場所に依存することなく、生成されるエマルジョンの大きさばらつきを抑制することができる。
【0051】
以上より、本実施形態によれば、均一な大きさのエマルジョンを効率的に製造することができる。また、エマルジョン製造装置1を大型化して、大量のエマルジョンを生成することができる。
【0052】
本実施形態では、貫通孔40は、流路面積の異なる第1の孔部41と第2の孔部42とにより構成されている。このため、第1の液体12が流動しにくくなるため、第1の液体12の粘度が低くても、エマルジョンの生成速度やエマルジョンの大きさの制御が容易となる。
【0053】
また、本実施形態では、第2の基板33が透明である。このため、第2の流路38において生成されたエマルジョンを観察することができる。従って、エマルジョンの製造工程の管理が容易となる。
【0054】
図7は、図1に示すエマルジョン製造装置1を用いた単分散微粒子製造装置2の構成を表す概略図である。図7に示すように、単分散微粒子製造装置2では、生成されたエマルジョンは重合槽46に溜められず、硬化機構3に供給される。この硬化機構3において、連続相中のエマルジョンの硬化が行われる。その結果、単分散微粒子が生成される。
【0055】
硬化機構3は、特に限定されない。硬化機構3は、分散相の種類によって適宜選択すればよい。例えば、分散相が光により硬化する場合は、硬化機構3は、エマルジョンに光を照射させる機構であってもよい。また、例えば、分散相が熱により硬化する場合は、硬化機構3は、エマルジョンに熱を付与する機構であってもよい。
【0056】
上述のように、エマルジョン製造装置1によれば、均一な大きさのエマルジョンを効率的に製造することができる。従って、エマルジョン製造装置1を用いた単分散微粒子製造装置2によれば、均一な粒径の単分散微粒子を高効率に製造することができる。
【0057】
(第1の変形例)
上記実施形態では、図2に示すように、マイクロチャネルモジュール30の第1の流路37に、分散相となる第1の液体12が供給され、マイクロチャネルモジュール30の第2の流路38に、連続相となる第2の液体13が供給される場合について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図9に示すように、第1の液体12と第2の液体13との両方をマイクロチャネルモジュール30の上下方向における一方側から供給してもよい。
【0058】
図9に示すように、本変形例では、第1の配管14と第2の配管17とが二重管構造となっている。具体的には、第1の配管14の内部に第2の配管17が配置されている。第1の配管14と第2の配管17とは、マイクロチャネルモジュール30の上方に配置されている。
【0059】
また、上記実施形態では、第1の液体12が供給される第1の流路37が下方に位置し、第2の液体13が供給される第2の流路38が上方に位置する例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図9に示すように、第1の液体12が供給される第1の流路37をマイクロチャネルプレート36の上方に配置し、第2の液体13が供給される第2の流路38をマイクロチャネルプレート36の下方に配置してもよい。なお、第1の変形例において、カメラ50は、形成されたエマルジョンの状態を撮影しやすいことから、第1の基板32側に配置されていることが好ましい。
【0060】
(第2の変形例)
上記実施形態では、マイクロチャネルプレート36の実質的に全面が、貫通孔40が形成されたチャネルエリアである例について説明した。但し、本発明において、貫通孔40が形成されたチャネルエリアは、マイクロチャネルプレート36の一部にのみ形成されていてもよい。
【0061】
例えば、図10に示すように、貫通孔40が形成された略台形状の複数のチャネルエリア52をマイクロチャネルプレート36に相互に間隔をおいて放射状に形成してもよい。この場合、チャネルエリア52の外側の部分のみに1または複数の排出経路39が形成されていることが好ましい。その結果、チャネルエリア52の全体がエマルジョンの生成に使用されやすくなる。また、チャネルエリア52が形成された領域における第1の液体12の流量を多くすることができる。従って、エマルジョンの生産性が向上し、エマルジョンの大量生産が容易となる。
【0062】
(第3及び第4の変形例)
図11及び図12に示すように、第2の基板33に、基板本体33cからエマルジョン回収流路47側に延びるガイド部33bを形成してもよい。ガイド部33bを設けることにより、排出経路39から排出されるエマルジョンが第2の基板33の背面を伝って中央側に流れることを抑制することができ、エマルジョンをエマルジョン回収流路47に効率的に集めることができる。
【0063】
なお、ガイド部33bは、エマルジョン回収流路47側に向かって延びていれば、特に限定されない。例えば、図11に示すように、ガイド部33bは、略鉛直に延びていてもよい。すなわち、ガイド部33bは、基板本体33cに対して垂直に延びていてもよい。図12に示すように、ガイド部33bは、鉛直方向に対して傾斜して延びていてもよい。すなわち、ガイド部33bは、基板本体33cに対して傾斜して延びていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施形態に係るエマルジョン製造装置の構成を表す概略図である。
【図2】マイクロチャネルモジュールの断面図である。
【図3】図2におけるIII−III矢視図である。
【図4】マイクロチャネルプレートと側壁との平面図である。
【図5】マイクロチャネルプレートの一部を表す拡大平面図である。
【図6】図5におけるVI−VI矢視図である。
【図7】図1に示すエマルジョン製造装置を用いた単分散微粒子製造装置の構成を表す概略図である。
【図8】特許文献1に開示されたエマルジョン製造装置の断面図である。
【図9】第1の変形例におけるマイクロチャネルモジュールの断面図である。
【図10】第2の変形例におけるマイクロチャネルプレートと側壁との平面図である。
【図11】第3の変形例におけるマイクロチャネルモジュールの断面図である。
【図12】第4の変形例におけるマイクロチャネルモジュールの断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 …エマルジョン製造装置
2 …単分散微粒子製造装置
3 …硬化機構
10 …分散相調整槽
11 …連続相調整槽
12 …第1の液体
13 …第2の液体
14 …第1の配管
15 …フィルタ
16 …バルブ
17 …第2の配管
18 …フィルタ
19 …バルブ
20 …制御部
30 …マイクロチャネルモジュール
32 …第1の基板
32a…開口
33 …第2の基板
33a…開口
33b…ガイド部
33c…基板本体
34 …側壁
34a…溝
35 …内部空間
36 …マイクロチャネルプレート
37 …第1の流路
38 …第2の流路
39 …排出経路
40 …貫通孔
41 …第1の孔部
42 …第2の孔部
43 …シール
44 …整流フィルタ
45 …整流フィルタ
46 …重合槽
47 …エマルジョン回収流路
50 …カメラ
51 …モニタ
52 …チャネルエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1の基板及び第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置され、前記第1の基板と前記第2の基板と共に内部空間を形成する環状または多角形状の側壁と、
前記内部空間において、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置され、前記内部空間を、それぞれ中央から外周の全周にわたって延びる第1の流路と第2の流路とに区画する中間プレートと、
前記中間プレートの中央部分において前記第1の流路に接続され、前記第1の流路に分散相となる第1の液体を供給する第1の配管と、
前記中間プレートの中央部分において前記第2の流路に接続され、前記第2の流路に連続相となる第2の液体を供給する第2の配管と、
を備え、
前記中間プレートには、前記第1の流路と前記第2の流路とを連通させる複数の貫通孔が形成されており、
前記側壁には、前記第2の流路に開口する複数の排出経路が周方向に沿って複数形成されているエマルジョン製造装置。
【請求項2】
前記貫通孔の横断面形状が矩形である、請求項1に記載のエマルジョン製造装置。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記第1の流路に接続された第1の孔部と、前記第2の流路と前記第1の孔部とに接続された第2の孔部とを有し、前記第1の孔部の流路面積は、前記第2の孔部の流路面積よりも小さい、請求項1または2に記載のエマルジョン製造装置。
【請求項4】
前記第1の流路と前記第1の配管との接続部と、前記第2の流路と前記第2の配管との接続部とのうちの少なくとも一方には、第1の液体または第2の液体の流れを整流化する整流部が配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエマルジョン製造装置。
【請求項5】
前記第1の基板、又は、前記第2の基板は透明である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のエマルジョン製造装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のエマルジョン製造装置と、前記エマルジョン製造装置において製造されたエマルジョンが供給され、前記エマルジョンを硬化することにより微粒子を生成させる硬化機構とを備える単分散微粒子製造装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載されたエマルジョン製造装置を用いたエマルジョンの製造方法であって、
前記第2の流路に前記第2の液体を供給しつつ、前記第1の流路における第1の液体の圧力が前記第2の流路における前記第2の液体の圧力よりも高くなるように前記第1の流路に前記第1の液体を供給することにより、前記第1の液体を分散相とし、前記第2の液体を連続相とするエマルジョンを生成させるエマルジョンの製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載された単分散微粒子製造装置を用いた単分散微粒子の製造方法であって、
前記第2の流路に前記第2の液体を供給しつつ、前記第1の流路における第1の液体の圧力が前記第2の流路における前記第2の液体の圧力よりも高くなるように前記第1の流路に前記第1の液体を供給することにより、前記第1の液体を分散相とし、前記第2の液体を連続相とするエマルジョンを生成させる工程と、
前記硬化機構により前記エマルジョンを硬化させる工程と、
を備える単分散微粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−17641(P2010−17641A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179742(P2008−179742)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】