説明

エマルジョン

【課題】
本発明の目的は経時安定性が高い皮膚外用剤用のエマルジョンを得ることである。さらには優れた美白や整肌効果を安定的に有することも求められていた。
【解決手段】
アスコルビン酸、ヒドロキシ酸、アミノ酸等をはじめとする塩または/および酸と、モノ脂肪酸グリセリルと、モノ脂肪酸ポリエチレングリコールと、レシチンを配合したエマルジョンが本課題を解決することがわかった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時安定性が高いエマルジョンに関する。さらには美白や整肌効果の高いエマルジョンに関する。
【背景技術】
【0002】
エマルジョンは塩や酸を配合すると安定性が悪くなり、分離やクリーミングを起こし、商品価値が低下する。このためいろいろな組合せで安定性を増す努力がなされている。(特許文献1〜3)
さらには、美白製剤は我が国では化粧品の1つのカテゴリーとしてこの十数年大きく膨らみ、種々の美白剤も開発されてきた。その中で、アルコルビン酸もいろいろな形で利用されていて美白剤の中で重要な役割をもっている。
製剤の中で安定的に配合することは以下の特許文献にその一部を示したが、数多くの試みがなされている。(特許文献4〜11)
しかしながら充分に満足する製剤を得られていなかった。
【0003】
【特許文献1】特開平09−019632号公報
【特許文献2】特開2005−298474号公報
【特許文献3】特開2010−006739号公報
【特許文献4】特開平10−147512号公報
【特許文献5】特開平11−199426号公報
【特許文献6】特開2001−199865号公報
【特許文献7】特開2000−256173号公報
【特許文献8】特開2002−265344号公報
【特許文献9】特開2005−120056号公報
【特許文献10】特開2006−008709号公報
【特許文献11】特開2006−016327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は安定性の高い、さらには美白や整肌効果が強い皮膚外用剤用のエマルジョンを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、モノ脂肪酸グリセリルと、モノ脂肪酸ポリエチレングリコールと、レシチンを配合すると、塩や酸を配合したエマルジョンが経時的に安定なことがわかった。
皮膚外用剤に配合する塩や酸には以下の物質が例示できる。
グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、ピロリドンカルボン酸、アミノ酪酸、グリチルリチン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、コウジ酸、アスコルビン酸、それらの誘導体、それらの塩が挙げられる。
【0006】
これらの中で、アスコルビン酸、およびその塩、アスコルビン酸誘導体およびその塩から選択される物質を配合する場合は、本発明のエマルジョンはとくに有効である。
本発明にかかるアスコルビン酸およびその塩、アスコルビン酸誘導体およびその塩には、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸マグネシウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸モノステアレート、アスコルビン酸モノパルミテート、アスコルビン酸モノオレエート、アスコルビン酸ジステアレート、アスコルビン酸ジパルミテート、アスコルビン酸トリステアレート、アスコルビン酸トリパルミテート、アスコルビン酸トリオレエート、エチルアスコルビン酸、メチルアスコルビン酸、ブチルアスコルビン酸、アスコルビル硫酸、アスコルビル硫酸ナトリウム、アスコルビル硫酸カリウム、アスコルビル硫酸カルシウム、アスコルビルリン酸、アスコルビルリン酸ナトリウム、アスコルビルリン酸カリウム、アスコルビルリン酸マグネシウム、アスコルビルリン酸カルシウム、アスコルビン酸グリコシド等が例示される。
この中から1種以上を選択して用いる。
とくに、アスコルビン酸グリコシド、エチルアスコルビン酸がよく、両者を配合することも充分な結果を得る方法の1つである。
また、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸等のヒドロキシ酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸も本発明の効果に大きく浴する有効成分の1つである。
配合量は製剤の用途や酸や塩の種類、他の配合物によって大きく変化するが、製剤の0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜20重量%配合する。
【0007】
モノ脂肪酸グリセリルは脂肪酸が炭素数が12〜22で、直鎖、分岐、飽和、不飽和を問わず利用できるが、本発明には平均炭素数が16〜22で飽和の脂肪酸が結合したモノ脂肪酸グリセリルが利用できる。
モノ脂肪酸ポリエチレングリコールの脂肪酸もモノ脂肪酸グリセリルと同じで、脂肪酸が炭素数が12〜22で、直鎖、分岐、飽和、不飽和を問わず利用できるが、本発明には平均炭素数が16〜22で飽和の脂肪酸が結合したモノ脂肪酸ポリエチレングリコールが利用できる。ポリエチレングリコールの付加モル数は30〜200が本発明のエマルジョンを作成するのに適当である。
レシチンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチンなどのレシチン類、これらのレシチン類を酵素処理によりモノアシル体としたリゾレシチンおよびまたは水素添加リゾレシチン、ヒドロキシル化したヒドロキシレシチンなどを挙げることができる。また、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリンなどのレシチン中のリン脂質分画物もそれぞれ単品およびまたは混合して使用できる。
発明者らの検討の結果、水素添加とリゾレシチンの両方を用いた方が本発明の主旨をより実現することがわかった。
これらの配合量は他の配合物の種類や量、油分の種類や量等々によって大きく異なるが、合計で製剤の0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%配合する。
比率は、モノ脂肪酸グリセリルを1としたとき、モノ脂肪酸ポリエチレングリコールが0.01〜0.5、レシチンが0.01〜0.5、モノ脂肪酸ポリエチレングリコールとレシチンの合計量が0.05〜0.8の範囲に入るように配合することが好ましい。
【0008】
さらに他の美白剤を配合して、美白効果を高めることも用途によっては必要であり、ハイドロキノンまたはその誘導体、リノール酸またはその誘導体、レゾルシノールまたはその誘導体、コウジ酸またはその誘導体、ソウハクヒ抽出物等が例示される。
【0009】
さらに抗炎症剤を配合すると、抗炎症効果の向上のみならず、美白や整肌効果が高まる場合があるので、例えば、アラントイン、塩化リゾチーム、グアイアズレン、γオリザノール、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルリチン酸及びその塩、トラネキサム酸及びその誘導体、イプシロンアミノカプロン酸、ビザボロール等を必要に応じて配合する。
また、抗炎症作用を有する植物抽出物、例えば、カミツレ、シャクヤク、タイソウ、チャ、トウキ、モモ、アマチャ、アスナロ、アルニカ、イチョウ、インチンコウ、ウコン、オウレン、オトギリソウ、オランダカラシ、クマザサ、ゲンチアナ、コジソウ、コンフリー、サルビア、サンザシ、サンショウ、シソ、ジュウヤク、セイヨウノコギリソウ、セイヨウハッカ、ソウハクヒ、タイム、チョウジ、トウキンセンカ、パセリ、ハマメリス、ビワ、ブッチャーブルーム、ボダイジュ、マンネンロウ、ボタンピ、ヤグルマギク、ラベンダー、ローマカミツレ、ドクダミ等の抽出物を用いることもできる。これらの植物抽出物は、常法により各植物から抽出した抽出液又は市販品の1種以上を用いることができる。
これらを、抗炎症剤の種類、製剤の目的等で変化するが、皮膚外用剤の0.01〜30重量%、好ましくは0.05〜10重量%配合する。
【0010】
これらの成分に加えて、製剤化するために、或いは他の有効性を付与するために上記以外の原料を加えてエマルジョンにする。
エマルジョンにする方法は特に限定はなく公知の方法に従って、加温、撹拌を必要に応じて加えて作成すればよい。
【実施例】
【0011】
以下に実施例を記すがこれに限定されるものではない。数値は重量部を表す。
作成方法は油相、水相をそれぞれ計量し、加温溶解し、撹拌しつつ、油相と水相を混合した。
【0012】
【表1】

【0013】
【表2】

【0014】
【表3】

【0015】
以上のいずれの実施例も40℃、6ヶ月間安定であり、美白や整肌効果も高かった。しかしながら、実施例1より、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール(100E.O.)を配合しなかった比較例、水素添加大豆レシチンを配合しなかった比較例、両者を配合しなかった比較例を作成し比較したところ、安定性が悪く、分離した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩または/および酸と、モノ脂肪酸グリセリルと、モノ脂肪酸ポリエチレングリコールと、レシチンを配合したエマルジョン
【請求項2】
塩か酸のいずれかが、アスコルビン酸およびその塩、アスコルビン酸誘導体およびその塩から選択される1種以上である請求項1のエマルジョン
【請求項3】
アスコルビン酸誘導体がアスコルビン酸グリコシド、エチルアスコルビン酸より選択される1種以上である請求項2のエマルジョン
【請求項4】
塩か酸のいずれかが、ヒドロキシ酸およびその塩、アミノ酸およびその塩から選択される1種以上である請求項1のエマルジョン
【請求項5】
レシチンが水素添加レシチン、リゾレシチン、より選択される1種以上である請求項1乃至請求項4のエマルジョン
【請求項6】
さらに抗炎症剤を配合した請求項1乃至請求項5のエマルジョン

【公開番号】特開2012−158570(P2012−158570A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21088(P2011−21088)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000166959)御木本製薬株式会社 (66)
【Fターム(参考)】