説明

エミッタに対する部品の近接度を測定するセンサアセンブリ及び方法

【課題】エミッタの散乱パラメータを安定化さすセンサアセンブリを提供する。
【解決手段】センサアセンブリ110は、所定の周波数範囲内で複数の周波数成分を含む少なくとも1つのマイクロ波信号から少なくとも1つの電磁界224を発生させるエミッタ206を備えた少なくとも1つのプローブ202であって、部品が少なくとも1つの電磁界224と相互に作用した場合にエミッタ206に負荷が誘起される、少なくとも1つのプローブ202と、エミッタと結合されたデータコンジット204であって、負荷を表す少なくとも1つの負荷信号がこのデータコンジット204内でエミッタ206から反射されるデータコンジット204と、少なくとも1つの負荷信号の受信と電気的出力の発生とを行うように構成された少なくとも1つの信号処理装置200と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、概して電力システムに関し、特に、広い周波数範囲で動作するエミッタに対する部品の近接度を測定するセンサアセンブリ及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電システム等の、少なくとも幾つかの既知の機械は、時間が経つにつれて損壊したり摩耗したりする部品を1つ以上含む。例えば、既知のタービン等の既知の発電システムは、時間が経つにつれて摩耗するベアリング、ギヤ、及び/又はロータブレード等の部品を含む。部品が摩耗した状態で運転を続けると、他の部品にも損壊が及んだり、部品又はシステムの早期故障に繋がったりする恐れがある。
【0003】
機械内部の部品の損壊を検出するには、少なくとも幾つかの既知の機械の動作を監視システムで監視する。少なくとも幾つかの既知の監視システムは、当該機械の少なくとも幾つかの部品の近接度を測定する少なくとも1つのセンサアセンブリを含む。近接度の測定は、渦電流センサ、磁気ピックアップセンサ、又は容量センサを用いて可能である。しかし、こうしたセンサの測定範囲は限られているため、こうしたセンサを使用できる場所は限定される。更に、こうしたセンサの周波数応答は概して弱いため、こうしたセンサの精度は限定される。
【0004】
こうしたセンサの既知の制限を多少なりとも解決するために、少なくとも幾つかの既知の、単一周波数で動作するマイクロ波エミッタが使用されてきた。しかし、こうした既知のマイクロ波エミッタは、近接度を測定する際に、目標物に近づくにつれて離調する場合がある。具体的には、マイクロ波エミッタの共振周波数がシフトする場合がある。こうしたシフトの結果として、マイクロ波エミッタの散乱パラメータ(Sパラメータ)に予測不能な挙動パターンが現れる場合がある。更に、Sパラメータが不規則であるために、マイクロ波エミッタの精度が制限される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7604413号明細書
【発明の概要】
【0006】
一実施形態では、エミッタに対する部品の近接度を測定する方法を提供する。本方法は、所定の周波数範囲内で複数の周波数成分を有する少なくとも1つのマイクロ波信号をエミッタに送信するステップを含む。エミッタは、少なくとも1つの電磁界をマイクロ波信号から発生させる。その後、部品と電磁界との間の相互作用によってエミッタに負荷が誘起され、この負荷を表す少なくとも1つの負荷信号が、データコンジット内でエミッタから反射される。更に、負荷信号は、少なくとも1つの信号処理装置によって受信される。信号処理装置は、負荷信号に基づいて、エミッタに対する部品の近接度を測定する。
【0007】
別の実施形態では、センサアセンブリを提供する。本センサアセンブリは、エミッタを含む少なくとも1つのプローブを含む。エミッタは、所定の周波数範囲内で複数の周波数成分を含む少なくとも1つのマイクロ波信号から少なくとも1つの電磁界を発生させ、部品がこの電磁界と相互に作用した場合にエミッタに負荷が誘起される。本センサアセンブリは更に、エミッタと結合されたデータコンジットを含み、誘起された負荷を表す少なくとも1つの負荷信号が、データコンジット内でエミッタから反射される。更に、本センサアセンブリは、負荷信号の受信と電気的出力の発生を行うように構成された、少なくとも1つの信号処理装置を含む。
【0008】
別の実施形態では、電力システムを提供する。本電力システムは、少なくとも1つの部品と、その部品に近接して配置された少なくとも1つのセンサアセンブリと、センサアセンブリと結合された診断システムと、を含む機械を含む。センサアセンブリは、エミッタを含む少なくとも1つのプローブを含む。エミッタは、所定の周波数範囲内で複数の周波数成分を含む少なくとも1つのマイクロ波信号から少なくとも1つの電磁界を発生させ、部品がこの電磁界と相互に作用した場合にエミッタに負荷が誘起される。センサアセンブリは更に、エミッタと結合されたデータコンジットを含み、誘起された負荷を表す少なくとも1つの負荷信号が、データコンジット内でエミッタから反射される。更に、センサアセンブリは、負荷信号の受信と電気的出力の発生とを行うように構成された、少なくとも1つの信号処理装置を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】電力システムの一例のブロック図である。
【図2】図1に示した電力システムに使用可能なセンサアセンブリの一例のブロック図である。
【図3】図2に示したセンサアセンブリに使用可能なエミッタの一例の斜視図である。
【図4】図2に示したセンサアセンブリに使用可能なエミッタの一例の斜視図である。
【図5】図1に示した電力システムに使用可能な、エミッタに対する部品の近接度を測定する方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載の方法、装置、及びシステムの例は、エミッタに対する機械部品の近接度の測定に用いる既知のセンサアセンブリ又はシステムに関連する、少なくとも幾つかの既知の不利点を克服するものである。本明細書に記載の実施形態が提供するセンサアセンブリは、広帯域エミッタ等の、広い範囲の周波数で動作するエミッタを含む。具体的には、本実施例では、エミッタは、ほぼフラットな定在波比を有しており、これによって、エミッタは、エミッタのSパラメータにおける挙動パターンを安定させることが可能である。結果として、エミッタの共振周波数がシフトした場合でも、エミッタのSパラメータは、適切な距離での相互関連付けに使用可能な一定パターンを維持する。したがって、本明細書に記載のセンサアセンブリは、ほぼ正確な測定が可能である。
【0011】
図1に示すシステム100は、これに限定されないが電力システム100の一例であって、これらに限定されないが風力タービン、水力発電タービン、ガスタービン、及び/又は圧縮機等の機械102を含む。本実施例では、機械102は、発電機等の負荷106と結合された駆動軸104を回転させる。なお、本明細書で用いる「結合する」という用語は、部品間の直接の機械的及び/又は電気的接続に限定されず、複数の部品間の間接的な機械的及び/又は電気的接続も包含する。
【0012】
本実施例では、駆動軸104は、機械102及び/又は負荷106に収容されている(図示されていない)1つ以上のベアリングで少なくとも部分的に支持されている。その代わりに、或いはこれに加えて、これらのベアリングは、独立した支持構造108(ギヤボックス等)又は他の任意の、電力システム100が本明細書に記載のように機能することを可能にする構造に収容されていてもよい。
【0013】
本実施例では、電力システム100は、少なくとも1つのセンサアセンブリ110を含んでおり、これらのセンサアセンブリ110は、機械102、駆動軸104、負荷106、及び/又は他の任意の、電力システム100が本明細書に記載のように機能することを可能にする部品の少なくとも1つの動作状態を測定及び/又は監視する。具体的には、本実施例では、センサアセンブリ110は、駆動軸104に近接して配置された近接度センサアセンブリ110であって、駆動軸104とセンサアセンブリ110との間の(図1には示されていない)距離の測定及び/又は監視に用いられる。更に、本実施例では、センサアセンブリ110は、複数の周波数成分を有する1つ以上のマイクロ波信号を用いて、電力システム100の部品の、センサアセンブリ110に対する近接度を測定する。本明細書で用いる「マイクロ波」という用語は、約300メガヘルツ(MHz)から約300ギガヘルツ(GHz)の範囲の周波数を有する信号、又はこの信号を受信及び/又は送信する部品を意味する。或いは、センサアセンブリ110は、電力システム100の他の任意の部品の測定及び/又は監視にも使用可能であり、且つ/又は、他の任意の、電力システム100が本明細書に記載のように機能することを可能にするセンサ又はトランスデューサのアセンブリであってもよい。
【0014】
本実施例では、各センサアセンブリ110は、電力システム100内の任意の相対的な位置に配置される。更に、本実施例では、電力システム100は、1つ以上のセンサアセンブリ110と結合された診断システム112を含む。診断システム112は、センサアセンブリ110が発生させた1つ以上の信号を処理及び/又は解析する。本明細書で用いる「処理する」という用語は、信号の少なくとも1つの特性を調節、フィルタリング、バッファリング、及び/又は変更することに関する操作を実行することを意味する。具体的には、本実施例では、センサアセンブリ110は、データコンジット113又はデータコンジット115を介して診断システム112と結合されている。或いは、センサアセンブリ110は、診断システム112と無線で結合されていてもよい。
【0015】
本実施例では、運転中に、例えば、摩耗、損壊、又は振動により、電力システム100の1つ以上の部品(駆動軸104等)の、1つ以上のセンサアセンブリ110に対する位置が変化する可能性がある。例えば、電力システム100内の動作温度が変化すると、部品に振動が誘起されたり、部品が膨張又は収縮したりする場合がある。本実施例では、センサアセンブリ110は、近接度(静止時及び/又は振動時の近接度等)、及び/又はセンサアセンブリ110に対する部品の相対位置を測定及び/又は監視し、部品の測定された近接度及び/又は相対位置を表す信号(以下、「近接度測定信号」と称する)を、処理及び/又は解析のために診断システム112に送信する。
【0016】
図2は、(図1に示した)電力システム100に使用可能なセンサアセンブリ110の概略図である。本実施例では、センサアセンブリ110は、信号処理装置200と、データコンジット204を介して信号処理装置200と結合されたプローブ202とを含む。或いは、プローブ202は、信号処理装置200と無線で結合されていてもよい。
【0017】
更に、本実施例では、プローブ202は、エミッタ206を含んでおり、エミッタ206は、プローブハウジング208と結合されるか、且つ/又はプローブハウジング208内に配置されており、電磁界224を発生させる。エミッタ206は、データコンジット204を介して信号処理装置200と結合されている。或いは、エミッタ206は、信号処理装置200と無線で結合されていてもよい。更に、本実施例では、プローブ202は、広帯域エミッタ206を内蔵するマイクロ波プローブ202である。具体的には、本実施例では、エミッタ206は、所定の周波数範囲内で複数の周波数成分を有する少なくとも1つのマイクロ波信号から少なくとも1つの電磁界224を発生させるように構成されている。
【0018】
更に、本実施例では、信号処理装置200は、送信電力検出器212、受信電力検出器214、及び信号調整装置216と結合された方向性結合装置210を含む。更に、本実施例では、信号調整装置216は、信号発生器218、減算器220、及びリニアライザ222を含む。
【0019】
本実施例では、運転中に、信号発生器218が、複数のマイクロ波周波数成分を有する少なくとも1つの電気信号(以下、「マイクロ波信号」と称する)を発生させる。このマイクロ波信号は、共振動作の範囲内にある。この範囲は、エミッタ206の寸法によって決まる。信号発生器218は、マイクロ波信号を方向性結合装置210に送信する。方向性結合装置210は、マイクロ波信号を、送信電力検出器212及びエミッタ206に送信する。マイクロ波信号がエミッタ206を通して送信されると、エミッタ206からプローブハウジング208の外に電磁界224が放射される。物体、例えば、(図1に示した)駆動軸104又は(図1に示した)機械102の別の部品及び/又は電力システム100が、電磁界224に入った場合、且つ/又は、電磁界224内において、その相対位置が変化した場合、その物体と電磁界224との間に電磁結合が発生する可能性がある。具体的には、物体が電磁界224内に存在するため、且つ/又は、こうした物体が動いたために、物体内での誘導作用及び/又は容量作用によって電磁界224に乱れが生じ、これによって、電磁界224の少なくとも一部分が電流及び/又は電荷として物体と誘導結合及び/又は容量結合する可能性がある。こうした場合、エミッタ206は離調して(即ち、エミッタ206の共振応答がシフト及び/又は変化する等して)、エミッタ206に負荷が誘起される。エミッタ206に誘起されたこの負荷によって、マイクロ波信号の反射(以下、「離調負荷信号」と称する)が引き起こされ、データコンジット204を通って方向性結合装置210に送信される。本実施例では、離調負荷信号は、電力振幅がマイクロ波信号の電力振幅より小さく、且つ/又は、位相がマイクロ波信号の位相と異なる。更に、本実施例では、離調負荷信号の電力振幅は、エミッタ206に対する物体の近接度に依存する。方向性結合装置210は、離調負荷信号を受信電力検出器214に送信する。
【0020】
本実施例では、受信電力検出器214は、ひずみ信号に含まれる電力の量を測定し、測定された離調負荷信号電力を表す信号を信号調整装置216に送信する。更に、送信電力検出器212は、マイクロ波信号に含まれる電力の量を測定し、測定されたマイクロ波信号電力を表す信号を信号調整装置216に送信する。本実施例では、減算器220は、測定されたマイクロ波信号電力及び測定された離調負荷信号電力を受信し、マイクロ波信号電力と離調負荷信号電力との差を計算する。減算器220は、計算された差を表す信号(以下、「電力差信号」と称する)をリニアライザ222に送信する。本実施例では、電力差信号の振幅は、電磁界224内にある物体(軸104等)とエミッタ206との間で画定される距離230(即ち、物体近接度)にほぼ比例する(例えば、反比例又は指数関数的に比例する)。
【0021】
しかし、エミッタ206の形状又は別の特性によっては、電力差信号の振幅が、物体近接度に対して非線形な関係を少なくとも部分的に示す場合がある。更に、本実施例では、エミッタ206は、ほぼフラットな定在波比を有する。したがって、エミッタ206が離調した結果として共振周波数がシフトしても、離調負荷信号は、広範囲の周波数にわたって距離230にほぼ比例(又は指数関数的に比例)したままである。
【0022】
本実施例では、リニアライザ222は、電力差信号を、物体近接度と近接度測定信号の振幅との間のほぼ線形な関係を示す、電圧出力信号等の電気的出力(即ち、「近接度測定信号」)に変換する。更に、本実施例では、リニアライザ222は、近接度測定信号を、(図1に示した)診断システム112内での処理及び/又は診断に対応した尺度係数とともに、診断システム112に送信する。リニアライザ222は、アナログ信号処理又はデジタル信号処理のいずれかの手法を用いて、並びに、これらを混成させた手法を用いて、エミッタ206を利用及び駆動させることが可能である。例えば、本実施例では、近接度測定信号は、ボルト毎ミリメートルの尺度係数を有する。或いは、近接度測定信号は、診断システム112及び/又は電力システム100が本明細書に記載のように機能することを可能にする他の任意の尺度係数を有してもよい。
【0023】
図3は、(図1及び2とともに示した)センサアセンブリ110に使用可能なエミッタ300の斜視図である。具体的には、エミッタ300は、(図2に示した)広帯域エミッタ206として使用可能な特定タイプの広帯域エミッタである。本実施例では、エミッタ300は、エミッタ300の形状及び/又は寸法により定まる広い周波数範囲を有する対数螺旋エミッタ300である。具体的には、本実施例では、エミッタ300は、約2GHzから約800MHzの間の周波数を有する信号を受信及び/又は送信することが可能である。
【0024】
本実施例では、エミッタ300は、プリント回路基板301で作製され、実質的に2次元の平面形状で形成されている。具体的には、エミッタ300は、第1の面302及び第2の面304によって画定されるほぼ円形の断面形状で形成されている。第1の面は、コンジット306を含んでおり、本実施例では、コンジット306は、ほぼ螺旋形状であり金属ワイヤで形成されている。マイクロ波信号等の信号を、コンジット306を通して送信することが可能であり、具体的には、所望の螺旋長さ307を通して送信することが可能である。或いは、コンジット306は、コンジット306を収容するように寸法決めされ、エミッタ300が本明細書に記載のように機能することを可能にする、他の任意の物質又は化合物から作製されてもよい。
【0025】
エミッタ300の第2の面304は、データコンジット204を介して(図2に示した)信号処理装置200と結合されている。具体的には、データコンジット204は、第1の端部308及び第2の端部310を有する。第1の端部308は、エミッタの第2の面304と結合されており、本実施例では、第2の端部310は、信号処理装置200と結合されている。本実施例では、エミッタの第2の面304は、第2の面304から第1の面302に延びる接続装置312を含む。データコンジット204は、接続装置312を介して、第2の面304と結合されている。
【0026】
運転中、(図2に示した)信号発生器218は、複数の周波数成分を有するマイクロ波信号を発生させ、このマイクロ波信号を(図2に示した)方向性結合装置210に送信する。(図2に示した)方向性結合装置210は、そのマイクロ波信号を(図2に示した)送信電力検出器212及びエミッタ300に送信する。マイクロ波信号がエミッタ300を通して送信されると、エミッタ300から(図2に示した)プローブハウジング208の外に(図2に示した)電磁界224が放射される。具体的には、マイクロ波信号は、コンジット306を通して送信される。物体、例えば、(図1に示した)駆動軸104又は(図1に示した)機械102の別の部品及び/又は(図1に示した)電力システム100が、電磁界224に入った場合、且つ/又は、電磁界224内においてその相対位置が変化した場合、その物体と電磁界224との間に電磁結合が発生する可能性がある。具体的には、物体が電磁界224内に存在するために、且つ/又は、こうした物体が動いたために、物体内での誘導作用及び/又は容量作用によって電磁界224に乱れが生じ、これによって、電磁界224の少なくとも一部分が電流及び/又は電荷として物体と誘導結合及び/又は容量結合する可能性がある。こうした場合、エミッタ300は離調して(即ち、エミッタ300の共振周波数が低下及び/又は変化する等して)、エミッタ300に負荷が誘起される。エミッタ300に誘起されたこの負荷によって、離調負荷信号が(図2に示した)データコンジット204を通って方向性結合装置210に送信される。本実施例では、離調負荷信号は、電力振幅がマイクロ波信号の電力振幅より小さく、且つ/又は、位相がマイクロ波信号の位相と異なる。更に、本実施例では、離調負荷信号の電力振幅は、エミッタ300に対する(軸104等の)物体の近接度に依存する。方向性結合装置210は、離調負荷信号を(図2に示した)受信電力検出器214に送信する。
【0027】
更に、受信電力検出器214は、ひずみ信号に含まれる電力の量を測定し、測定された離調負荷信号電力を表す信号を(図2に示した)信号調整装置216に送信する。更に、送信電力検出器212は、マイクロ波信号に含まれる電力の量を検出し、測定されたマイクロ波信号電力を表す信号を信号調整装置216に送信する。本実施例では、(図2に示した)減算器220は、測定されたマイクロ波信号電力及び測定された離調負荷信号電力を受信し、マイクロ波信号電力と離調負荷信号電力との差を計算する。減算器220は、計算された差を表す信号(以下、「電力差信号」と称する)を(図2に示した)リニアライザ222に送信する。本実施例では、電力差信号の振幅は、電磁界224内にある物体(軸104等)とエミッタ300との間で定まる距離230(即ち、物体近接度)にほぼ比例する(例えば、反比例又は指数関数的に比例する)。
【0028】
本実施例では、エミッタ300は、フラットな定在波比を有する。したがって、エミッタ300が離調した結果として共振周波数がシフトしても、離調負荷信号は、広範囲の周波数にわたって(図2に示した)距離230にほぼ比例(又は指数関数的に比例)したままである。
【0029】
図4は、(図1及び2とともに示した)センサアセンブリ110に使用可能なエミッタ400の斜視図である。具体的には、エミッタ400は、(図2に示した)広帯域エミッタ206として使用可能な特定タイプの広帯域エミッタである。本実施例では、エミッタ400は、エミッタ400の形状及び/又は寸法により定まる広い周波数範囲を有する対数周期エミッタ400である。具体的には、本実施例では、エミッタ400は、約300MHzから約1600MHzの間の周波数を有する信号を受信及び/又は送信することが可能である。
【0030】
本実施例では、エミッタ400は、プリント回路基板401から作製され、実質的に2次元の平面形状で形成されている。具体的には、エミッタ400は、第1の面402及び第2の面404によって画定されるほぼ円形の断面形状で形成されている。第1の面402は、コンジット406を含んでおり、コンジット406は、本実施例では、第1の端部405及び第2の端部407を有するほぼ非線形の形状である。マイクロ波信号等の信号を、コンジット406を通して送信することが可能であり、具体的には、第1の端部405又は第2の端部407に送信することが可能である。
【0031】
本実施例では、コンジット406は、金属ワイヤから形成されている。或いは、コンジット406は、コンジット406を収容するように寸法決め及び成形された、エミッタ400が本明細書に記載のように機能することを可能にする、任意の物質又は化合物から形成されてもよい。
【0032】
エミッタの第2の面404は、データコンジット204を介して(図2に示した)信号処理装置200と結合されている。具体的には、データコンジット204は、第1の端部308及び第2の端部310を有する。第1の端部308は、エミッタの第2の面404と結合されている。より具体的には、エミッタの第2の面404は、第2の面404から第1の面402に延びる接続装置412を含む。データコンジット204は、接続装置412を介して、第2の面404と結合されている。
【0033】
運転中、(図2に示した)信号発生器218は、複数の周波数成分を有するマイクロ波信号を発生させ、このマイクロ波信号を(図2に示した)方向性結合装置210に送信する。(図2に示した)方向性結合装置210は、そのマイクロ波信号を送信電力検出器212及びエミッタ300に送信する。マイクロ波信号がエミッタ400を通して送信されると、エミッタ400から(図2に示した)プローブハウジング208の外に(図2に示した)電磁界224が放射される。具体的には、マイクロ波信号は、コンジット406を通して送信される。物体、例えば、(図1に示した)駆動軸104又は(図1に示した)機械102の別の部品及び/又は(図1に示した)電力システム100が、電磁界224に入った場合、且つ/又は、電磁界224内においてその相対位置が変化した場合、その物体と電磁界224との間に電磁結合が発生する可能性がある。具体的には、物体が電磁界224内に存在するために、且つ/又は、こうした物体が動いたために、物体内での誘導作用及び/又は容量作用によって電磁界224に乱れが生じ、これによって、電磁界224の少なくとも一部分が電流及び/又は電荷として物体と誘導結合及び/又は容量結合する可能性がある。こうした場合、エミッタ400は離調して(即ち、エミッタ400の共振周波数が低下及び/又は変化する等して)、エミッタ400に負荷が誘起される。この、エミッタ400に誘起された負荷によって、離調負荷信号が(図2に示した)データコンジット204を通って方向性結合装置210に送信される。本実施例では、離調負荷信号は、電力振幅がマイクロ波信号の電力振幅より小さく、且つ/又は、位相がマイクロ波信号の位相と異なる。更に、本実施例では、離調負荷信号の電力振幅は、エミッタ400に対する物体の近接度に依存する。方向性結合装置210は、離調負荷信号を(図2に示した)受信電力検出器214に送信する。
【0034】
更に、受信電力検出器214は、ひずみ信号に含まれる電力の量を測定し、測定された離調負荷信号電力を表す信号を(図2に示した)信号調整装置216に送信する。更に、送信電力検出器212は、マイクロ波信号に含まれる電力の量を検出し、測定されたマイクロ波信号電力を表す信号を信号調整装置216に送信する。本実施例では、(図2に示した)減算器220は、測定されたマイクロ波信号電力及び測定された離調負荷信号電力を受信し、マイクロ波信号電力と離調負荷信号電力との差を計算する。減算器220は、計算された差を表す信号(以下、「電力差信号」と称する)を(図2に示した)リニアライザ222に送信する。本実施例では、電力差信号の振幅は、電磁界224内にある物体(軸104等)とエミッタ400との間で定まる距離230(即ち、物体近接度)にほぼ比例する(例えば、反比例又は指数関数的に比例する)。
【0035】
本実施例では、エミッタ400は、フラットな定在波比を有する。したがって、エミッタ400が離調した結果として共振周波数がシフトしても、離調負荷信号は、広範囲の周波数にわたって(図2に示した)距離230にほぼ比例(又は指数関数的に比例)したままである。
【0036】
図5は、(図1に示した)システム100等の電力システムに使用されるエミッタに対する部品の近接度の測定に使用可能な方法500の一例を示すフローチャートである。本実施例では、所定の周波数範囲内で複数の周波数成分を有する少なくとも1つのマイクロ波信号を(図2に示した)エミッタ206に送信する(502)。エミッタ206は、このマイクロ波信号から、(図2に示した)少なくとも1つの電磁界224を発生させる(504)。(図1に示した)駆動軸104等の機械部品と電磁界224との間の相互作用によって、エミッタ206に負荷が誘起される(506)。この負荷を表す少なくとも1つの離調負荷信号が、(図2に示した)データコンジット204内で、エミッタ206から反射される。(図2に示した)少なくとも1つの信号処理装置200が、この負荷信号を受信する(508)。
【0037】
更に、本実施例では、信号処理装置200が、離調負荷信号に基づいて、エミッタ206に対する軸104の近接度を測定する(509)。次に、信号処理装置200は、電気的出力を発生させる(510)。この電気的出力は、(図1に示した)診断システム112に送信される(512)。
【0038】
上述の実施形態は、エミッタに対する部品の近接度の測定に使用可能な、効率的且つほぼ正確なセンサアセンブリを提供する。具体的には、本明細書に記載の実施形態は、広範囲の周波数で動作するエミッタを用いて近接度を測定するセンサアセンブリを提供する。より具体的には、こうしたセンサは、ほぼフラットな定在波比を有しており、これによって、エミッタは、エミッタのSパラメータにおける挙動パターンを安定させることが可能である。結果として、エミッタの共振周波数がシフトした場合でも、エミッタのSパラメータは、適切な距離での相互関連付けに使用可能な一定パターンを維持する。したがって、本明細書に記載のセンサアセンブリは、ほぼ正確な測定が可能である。
【0039】
以上、エミッタに対する機械部品の近接度を測定するセンサアセンブリ及び方法の実施例を詳説した。本方法及び本センサアセンブリが、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されることはなく、むしろ、本センサアセンブリの部品及び/又は本方法のステップを、本明細書に記載のその他の部品及び/又はステップとは別個独立に利用することもできる。例えば、本センサアセンブリを、その他の計測システム及び方法と組み合わせてもよく、また、本センサアセンブリが、本明細書に記載の電力システムを用いた実施のみに限定されることはない。むしろ、本実施例をその他の測定及び/又は監視用途に組み合わせて実施及び利用することもできる。
【0040】
図面によっては、本発明の様々な実施形態の特定の特徴が示されていることも示されていないこともあるが、これはあくまでも便宜上の理由による。本発明の原理に従って、或る図面の或る特徴を、その他のあらゆる図面のあらゆる特徴と組み合わせて参照及び/又はクレームすることができる。
【0041】
本明細書では、最適な態様を含めた例を用いて本発明を開示しているが、これによって当業者は、任意の装置又はシステムの作製及び使用、並びにこれに付随する任意の方法の実施を含め、本発明を実施することができる。本発明の特許請求の範囲は請求項に記載されているが、当業者に想到可能なその他の例も包含し得る。こうしたその他の例は、請求項の文言と相違ない構成要素を有する場合、又は請求項の文言と実質的に相違ない等価の構成要素を含む場合、本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0042】
100 電力システム
102 機械
104 駆動軸又は部品
106 負荷又は部品
108 支持構造
110 センサアセンブリ
112 診断システム
113 データコンジット
115 データコンジット
200 信号処理装置
202 プローブ
204 データコンジット
206 エミッタ
208 プローブハウジング
210 方向性結合装置
212 送信電力検出器
214 受信電力検出器
216 信号調整装置
218 信号発生器
220 減算器
222 リニアライザ
224 電磁界
230 距離
300 エミッタ
301 プリント回路基板
302 第1の面
304 第2の面
306 コンジット
307 所望の螺旋長さ
308 第1の端部
310 第2の端部
312 接続装置
400 エミッタ
401 プリント回路基板
402 第1の面
404 エミッタの第2の面
405 第1の端部
406 コンジット
407 第2の端部
412 接続装置
500 電力システムに使用されるエミッタに対する部品の近接度の測定プロセス
502 所定の周波数範囲内で複数の周波数成分を有する少なくとも1つのマイクロ波信号をエミッタに送信する
504 エミッタでマイクロ波信号から少なくとも1つの電磁界を発生させる
506 機械部品と電磁界との間の相互作用によってエミッタに負荷を誘起する
508 少なくとも1つの信号処理装置で負荷信号を受信する
509 信号処理装置で、離調負荷信号に基づいてエミッタに対する軸の近接度を測定する
510 信号処理装置で電気的出力を発生させる
512 電気的出力を診断システムに送信する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数範囲内で複数の周波数成分を含む少なくとも1つのマイクロ波信号から少なくとも1つの電磁界(224)を発生させるエミッタ(206)を備えた、少なくとも1つのプローブ(202)であって、部品(104)が前記少なくとも1つの電磁界と相互に作用した場合に前記エミッタに負荷が誘起される、少なくとも1つのプローブ(202)と、
前記エミッタと結合されたデータコンジット(204)であって、前記負荷を表す少なくとも1つの負荷信号が該データコンジット内で前記エミッタから反射される、データコンジット(204)と、
前記少なくとも1つの負荷信号の受信と電気的出力の発生とを行うように構成された、少なくとも1つの信号処理装置(200)と、
を備えるセンサアセンブリ(110)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの信号処理装置(200)は更に、前記少なくとも1つの負荷信号に基づいて、前記エミッタ(206)に対する前記部品(104)の近接度を計算するように構成されている、請求項1に記載のセンサアセンブリ(110)。
【請求項3】
前記電気的出力は、前記部品(104)の近接度測定値にほぼ比例する、請求項1に記載のセンサアセンブリ(110)。
【請求項4】
前記エミッタ(206)は、実質的に2次元の平面形状を有する、請求項1に記載のセンサアセンブリ(110)。
【請求項5】
前記エミッタ(206)は、広帯域エミッタである、請求項1に記載のセンサアセンブリ(110)。
【請求項6】
前記広帯域エミッタは、対数螺旋エミッタである、請求項5に記載のセンサアセンブリ(110)。
【請求項7】
前記広帯域エミッタは、対数周期エミッタである、請求項5に記載のセンサアセンブリ(110)。
【請求項8】
少なくとも1つの部品(104)と前記少なくとも1つの部品に近接して配置された少なくとも1つのセンサアセンブリ(110)とを備えた機械(102)を備える電力システム(100)であって、
前記少なくとも1つのセンサアセンブリは、
所定の周波数範囲内で複数の周波数成分を含む少なくとも1つのマイクロ波信号から少なくとも1つの電磁界(224)を発生させるエミッタ(206)を備えた、少なくとも1つのプローブ(202)であって、前記少なくとも1つの部品が前記少なくとも1つの電磁界と相互に作用した場合に前記エミッタに負荷が誘起される、少なくとも1つのプローブ(202)と、
前記エミッタと結合されたデータコンジット(204)であって、前記負荷を表す少なくとも1つの負荷信号が該データコンジット内で前記エミッタから反射される、データコンジット(204)と、
前記少なくとも1つの負荷信号の受信と電気的出力の発生とを行うように構成された、少なくとも1つの信号処理装置(200)と、
前記少なくとも1つのセンサアセンブリと結合された診断システム(112)と、を備える、
電力システム(100)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの信号処理装置(200)は更に、前記少なくとも1つの負荷信号に基づいて、前記エミッタに対する前記少なくとも1つの部品(104)の近接度を計算するように構成されている、請求項8に記載の電力システム。
【請求項10】
前記エミッタ(206)は、実質的に2次元の平面形状を有する、請求項8に記載の電力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−112941(P2012−112941A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−250297(P2011−250297)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】