説明

エラストマーを得るための室温加硫可能なオルガノポリシロキサン組成物および新規なオルガノポリシロキサン重縮合触媒

【課題】重縮合によって架橋され、かつ毒性の問題を呈するアルキルスズベースの触媒を含有しない、エラストマーへ室温で加硫され得るオルガノポリシロキサン組成物を提供すること。
【解決手段】重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができるシリコーンベースBと、触媒として有効量の少なくとも1種の重縮合触媒とを含み、前記触媒が式 [Zn(L1)(L2)](ここで、記号L1およびL2は、β−ジカルボニラトアニオン、または式R1COCHR2COR3のβ−ジカルボニラル−含有化合物のエノラートアニオンまたはβ−ケトエステル由来のアセチルアセテートアニオンであるリガンドを表す)の金属錯体A(亜鉛ジアセチルアセトネート、Zn(acac)2化合物を除く)またはその塩であることを特徴とする、オルガノポリシロキサン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重縮合によって架橋され、かつ毒性の問題を呈するアルキルスズベースの触媒を含有しない、エラストマーへ室温で加硫され得るオルガノポリシロキサン組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、シリコーン化学における新規な重縮合触媒に、およびオルガノポリシロキサンの重縮合反応のための触媒としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
重縮合を介して架橋するエラストマー処方物は一般にはシリコーン油、一般には、アルコキシ末端を有するようにシランによって場合により事前官能化された、ヒドロキシル末端基を有するポリジメチルシロキサン、架橋剤、重縮合触媒、慣習的にスズ塩またはアルキルチタン酸塩、補強材および他の任意の添加物、例えば、増量剤、接着促進剤、着色剤、殺生剤などを含む。
【0004】
これらの室温加硫オルガノポリシロキサン組成物は、周知であって、2つの異なる群:単一成分型(単一構成型とも言う)組成物(RTV−1)および二成分型(二構成型とも言う)組成物(RTV−2)に分類される。
【0005】
架橋の間、水(RTV−1組成物の場合には大気中の湿度によって与えられるか、またはRTV−2組成物の場合には組成物の一部に導入される)によって重縮合反応が可能になり、これでエラストマーの網目状構造の形成が生じる。
【0006】
一般には、単一成分型(RTV−1)組成物は、それらが空気の湿度に晒された場合架橋し、言い換えると、閉じた媒体中では架橋できない。例えば、シーラントまたは低温硬化接着剤として用いられる単一成分型のシリコーン組成物は、アセトキシシラン、ケチミノキシシラン、アルコキシシランなどのタイプの反応性官能基の加水分解の機構に、続いて、形成されたシラノール基と他の残留の反応性官能基との間の重縮合反応に従う。この加水分解は一般には、大気に晒された表面からその物質に拡散する水蒸気のおかげで生じる。一般には、この重縮合反応の反応速度は、極めて遅く;従ってこれらの反応は、適切な触媒によって触媒される。用いられる触媒としては、スズ、チタニウム、アミンに基づく触媒、またはこれらの触媒の組成物が利用される場合が最も多い。スズ(参照、特に仏国特許出願公開第2557582号)およびチタニウム(参照、詳細には仏国特許出願公開第2786497)に基づく触媒が極めて効果的な触媒である。
【0007】
二成分型組成物に関しては、それらは2つの成分の形態で販売および貯蔵されており、第一の成分はベースのポリマー物質を含有しており、第二の成分は触媒を含有する。2つの成分は使用の時点で混合されて、その混合物は比較的硬いエラストマーの形態で架橋する。これらの二成分型組成物は、周知であってかつ特に、Walter Nollの書物「Chemistry and Technology of Silicones」1968,第2版,第395〜398頁で記載されている。これらの組成物は本質的には以下の4つの異なる成分を含む:
−反応性のα,ω−ジヒドロキシジオルガノポリシロキサンポリマー、
−架橋剤、一般にはケイ酸塩またはポリケイ酸塩、
−スズ触媒、および
−水。
【0008】
通常、縮合触媒は、有機のスズ化合物に基づく。実際、多くのスズベースの触媒が既に、これらのRTV−2組成物の架橋触媒として提唱されている。最も広範に用いられる化合物は、アルキルスズカルボキシレート類、例えば、トリブチルスズモノオレエートまたはジアルキルスズジカルボキシレート類、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテートまたはジメチルスズジラウレート(Nollの書物「Chemistry and Technology of silicones」第337頁,Academic Press,1968−第2版または欧州特許第147323号または欧州特許第235049号を参照のこと)。
【0009】
しかし、アルキルスズベースの触媒類は、極めて効果的ではあるが、通常無色で、液体でシリコーン油の中に可溶性であり、毒性であるという欠点を有する(生殖に対してCMR2毒性)。
【0010】
チタニウムベースの触媒類はまた、RTV−1組成物中で広範に用いられるが、大きな欠点を有する。それらは、スズベースの触媒類よりも反応速度が遅い。さらに、これらの触媒はゲル化の問題のせいでRTV−2組成物では用いることができない。
【0011】
亜鉛、ジルコニウムまたはアルミニウムに基づく触媒など他の触媒類が言及される場合があるが、それらは有効性が並であるせいでわずかな工業開発しかなされていない。
【0012】
従って、持続可能な発展のために、オルガノポリシロキサン類の重縮合反応のための非毒性の触媒を開発する必要が出現する。
【0013】
オルガノポリシロキサン類の重縮合反応の触媒のための別の重要な局面はポットライフであり、言い換えれば、組成物が混合後硬化なしに用いられ得る時間である。この時間は、使用できるように十分長くなければならないが、製造された後長くとも2〜3分または2〜3時間取り扱い可能な成形品ができるように十分短くなければならない。従ってこの触媒は、触媒された混合物のポットライフとその成形品が取り扱い可能な終わりの時間との間の良好な妥協が成立することを可能にしなければならない(これらの時間は、例えば、成形またはシールの製造などの目的の適用に依存する)。さらに、この触媒は触媒された混合物に対して、貯蔵時間の関数として変化しない広がり時間を与えなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2557582号
【特許文献2】仏国特許出願公開第2786497号
【特許文献3】欧州特許第147323号
【特許文献4】欧州特許第235049号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Walter Noll,「Chemistry and Technology of Silicones」、1968年、第2版、395〜398頁
【非特許文献2】Noll,「Chemistry and Technology of silicones」、337頁、Academic Press、1968年、第2版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の主要な目的は、空気由来の湿度中で、できるだけ完全な表面架橋およびコア架橋の両方を可能にする新規な触媒を見出すことである。
【0017】
本発明の別の主要な目的は、単一成分型および二成分型のエラストマー組成物の架橋の両方で用いられ得る触媒を提唱することである。
【0018】
本発明の別の主要な目的は、2つのタイプの単一成分型および二成分型のエラストマー組成物の貯蔵の、処理の、および架橋の制限を同時に満たし続ける触媒系を提唱することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの目的のうちでとりわけ本発明によって達成される目的は、第一にオルガノポリシロキサン組成物であって、一方では、シリコーンエラストマーへ重縮合反応を介して硬化し得るシリコーンベースBを、他方では、下の式(1)の金属錯体Aまたはその塩である少なくとも1つの重縮合触媒の触媒有効量を含むことを特徴とし:
[Zn(L1)(L2)](1)
式中:
−記号L1およびL2は同一であるかまたは異なり、β−ジカルボニラトアニオン、または式(2)のβ−ジカルボニラル−含有化合物のエノラートアニオン、または下の式(2)のβ−ケトエステル由来のアセチルアセテートアニオンであるリガンドを表し;
1COCHR2COR3(2)
式中:
−R1は置換もしくは非置換の、直鎖もしくは分岐したC1−C30炭化水素ベースのラジカルを表し;
−R2は水素または置換もしくは非置換の、直鎖もしくは分岐したC1−C30炭化水素ベースのラジカル、好ましくは水素原子または多くとも4個の炭素原子を有するアルキルラジカルであり;
−R3は置換もしくは非置換の、直鎖、環状もしくは分岐したC1−C30炭化水素ベースのラジカル、置換もしくは非置換の芳香族の、または−OR4ラジカルを表し、ここでR4は置換もしくは非置換の、直鎖、環状もしくは分岐したC1−C30炭化水素ベースのラジカルを表し、ここで
−R1およびR2は一緒に結合されて環を形成してもよく;
−R2およびR3は一緒に結合されて環を形成してもよく;かつ
−ここで補足条件は、式(1)の金属錯体Aまたはその塩が亜鉛ジアセチルアセトネートでもZn(acac)2化合物でもない、オルガノポリシロキサン組成物に関する。
【0020】
「金属錯体Aまたはその塩」の定義は、この金属錯体Aまたはその塩の任意のオリゴマー型またはアナログを含むことが理解される。
【0021】
全く驚くべきことにかつ予想されないことに、オルガノポリシロキサン類の重縮合反応の優れた触媒を得るために、その少なくとも1つのリガンドがβジカルボニラトアニオンであるえり抜きの特定の金属の金属錯体の使用が得策であるということを本発明者らが見出したことは本発明者らの功績である。
【0022】
例えば、亜鉛などの金属の特定の錯体がオルガノポリシロキサンの重縮合反応で並の活性しか有さないということを今まで運命付けていた技術的先入観を克服したことも本発明者らの成果である。
【0023】
リガンドの定義は「Chimie Organometallique」[Organometallic Chemistry]Didier Astruc,2000年発行,EDP Sciencesの著書からとっており、特に参照、第1章「Les complexes monometalliques」[Single metal complexes]、第31頁以下を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による触媒は固体状態であっても液体状態であってもよい。これはまた単独で組み込まれてもよいし、または適切な溶媒の中であってもよい。これが溶媒中である場合、シリコーン油が添加されてもよく、次にこの溶媒が蒸発されてシリコーン媒体中へ触媒を輸送する。得られた混合物は触媒ベースとして作用する。
【0025】
本発明を行うためには、下の錯体(3)〜(6):
(3):Zn(DPM)2または[Zn(t−Bu−acac)2]であって、式中DPM=(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトアニオンまたは2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンのエノラートアニオンであり;
(4):[Zn(EAA)2]であって、式中EAA=エチルアセトアセテートアニオンまたはエチルアセトアセテートのエノラートアニオンである;
(5):[Zn(iPr−AA)2]であって、式中iPr−AA=イソプロピルアセトアセテートアニオンまたはイソプロピルアセトアセテートのエノラートアニオンである;ならびに
【化1】

によって構成される群から選択される金属錯体Aまたはその塩を、本発明による重縮合触媒として利用することが好ましい。
【0026】
本発明の発明の性質の少なくとも一部は、重縮合触媒として用いられる金属化合物Aの規定の会合の賢明かつ有利な選択に起因することに注意しなければならない。
【0027】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明による重縮合触媒Aは、下の式(6):
【化2】

の亜鉛ビス(2,2,7−トリメチル−3,5−オクタンジオネート)である。
【0028】
この触媒は、室温(25℃)で液体であり、かつ有機溶媒に、アルカン、およびシリコーン油にさえ溶解性であるという利点を有する。
【0029】
1つの好ましい実施形態によれば、上記β−ジカルボニラトリガンドL1およびL2は以下のβ−ジケトン類:2,4−ヘキサンジオン;2,4−ヘプタンジオン;3,5−ヘプタンジオン;3−エチル−2,4−ペンタンジオン;5−メチル−2,4−ヘキサンジオン;2,4−オクタンジオン;3,5−オクタンジオン;5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン;6−メチル−2,4−ヘプタンジオン;2,2−ジメチル−3,5−ノナンジオン;2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン;2−アセチルシクロヘキサノン(Cy−acac);2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン(t−Bu−acac);1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン(F−acac);ベンゾイルアセトン;ジベンゾイルメタン;3−メチル−2,4−ペンタジオン;3−アセチル−2−ペンタノン;3−アセチル−2−ヘキサノン;3−アセチル−2−ヘプタノン;3−アセチル−5−メチル−2−ヘキサノン;ステアロイルベンゾイルメタン;オクタノイルベンゾイルメタン;4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン;4,4’−ジメトキシジベンゾイルメタンおよび4,4’−ジ−tert−ブチルジベンゾイルメタンによって構成される群から選択されるβ−ジケトン由来のβ−ジケトナートアニオン類である。
【0030】
別の好ましい実施形態によれば、上記β−ジカルボニラトリガンドL1およびL2は以下の化合物類:アセチル酢酸のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、n−ノニル、n−デシルまたはn−ドデシルエステル類に由来するアニオン類によって構成される群から選択されるβ−ケトエステラトアニオン類である。
【0031】
本発明はまた、下の式(5)および(6)の新規な化合物に関する:
(5):[Zn(iPr−AA)2]であって、式中iPr−AA=イソプロピルアセトアセテートアニオンまたはイソプロピルアセトアセテートのエノラートアニオンであり;および
(6):式
【化3】

の亜鉛ビス(2,2,7−トリメチル−3,5−オクタンジオネート)。
【0032】
本発明の別の目的は、本発明に従うおよび上記されている金属錯体Aまたはその塩のオルガノポリシロキサン類の重縮合反応のための触媒としての使用からなる。
【0033】
本発明による重縮合触媒(金属錯体Aまたはその塩)の量は、それが単一成分型の調製物であろうと、または二成分型の調製物であろうと、総重量の0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。
【0034】
シリコーンベースBの説明:
重縮合反応を介して架橋および硬化する本発明で用いられるシリコーンベースは周知である。これらのベースは多くの特許において特に詳細に記載されており、かつそれらは市販されている。
【0035】
これらのシリコーンベースは単一成分型のベースであってもよく、これは言い換えれば、ベーズは単一のパッケージ中に包装され、湿度が無ければ、貯蔵の間安定であり、湿度、特に、大気から、またはその使用の間そのベース内で生成される水によってもたらされる湿度の存在下で硬化し得る。
【0036】
単一成分型のベースとは別に、二成分型ベースを利用してもよく、これは、言い換えれば、ベースは2つのパッケージ中に包装され、本発明による重縮合触媒が組み込まれればすぐに硬化する。それらは触媒の組み込み後に2つの別々の画分中にパッケージされ、画分の一方は、可能性としては、例えば、本発明による触媒だけ、または架橋剤との混合物を含有する。
【0037】
本発明による組成物を作製するために用いられるシリコーンベースBは以下を含んでもよい:
−エラストマーへ重縮合を介して架橋し得る少なくとも1つのポリオルガノシロキサンオイルC;
−場合により少なくとも1つの架橋剤D;
−場合により少なくとも1つの接着促進剤E;および
−場合により少なくとも1つのケイ質有機および/または非ケイ質無機充填剤F。
【0038】
このポリオルガノシロキサンオイルCは好ましくは、α,ω−ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンポリマーであり、粘度は25℃で50〜5000000mPa.sであり、架橋剤Dは好ましくは、1分子あたりケイ素原子に結合された2個超の加水分解性の基を有する有機ケイ素化合物である。ポリオルガノシロキサンオイルCはまた、ヒドロキシル官能基を有する前駆体と加水分解性ラジカル類を有する架橋性シランとの縮合によって得られる加水分解性ラジカルによってその末端で官能化されてもよい。
【0039】
架橋剤(D)としては、以下が言及され得る:
−以下の一般式のシラン:
1kSi(OR2(4-k)
式中、記号R2は同一であるか、または異なり、1〜8個の炭素原子を有するアルキルラジカル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたは2−エチルヘキシルラジカル、C3−C6オキシアルキレンラジカルを表し、記号R1は直鎖または分枝の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素ベースの基、飽和または不飽和のおよび/または芳香族の、単環式または多環式の炭素環基を表し、kは0、1または2に等しい;ならびに
−このシランの部分的加水分解産物。
【0040】
3−C6アルコキシアルキレンラジカル類の例としては、以下のラジカル類が言及され得る:
CH3OCH2CH2
CH3OCH2CH(CH3)−
CH3OCH(CH3)CH2
25OCH2CH2CH2
記号R1は以下を包含するC1−C10炭化水素ベースのラジカルを表わす:
−C1−C10アルキルラジカル類、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−エチルヘキシル、オクチルまたはデシルラジカル類;
−ビニルおよびアリルラジカル類;ならびに
−C5−C8シクロアルキルラジカル類、例えば、フェニル、トリルおよびキシリルラジカル類。
【0041】
架橋剤Dは、シリコーン類の市場で入手可能な製品であり;さらに、室温硬化組成物でのそれらの使用は公知である;これは、特に、仏国特許仏国特許出願公開第1126411号、同第1179969号、同第1189216号、同第1198749号、同第1248826号、同第1314649号、同第1423477号、同第1432799号および同第2067636号にある。
【0042】
架橋剤Dのなかでも、アルキルトリアルコキシシラン類、アルキルケイ酸塩類およびアルキルポリシリケート類が特に優先され、ここでは有機のラジカル類は1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカル類である。
【0043】
用いられ得る架橋剤Dの他の例としては、さらに特に以下のシラン類が言及され得る:
−プロピルトリメトキシシラン;
−メチルトリメトキシシラン;
−エチルトリメトキシシラン;
−ビニルトリエトキシシラン;
−メチルトリエトキシシラン;
−ビニルトリエトキシシラン;
−プロピルトリエトキシシラン;
−テトラエトキシシラン;
−テトラプロポキシシラン;
−1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン;
−1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン;および
−テトライソプロポキシシラン、
あるいは:CH3Si(OCH33;C25Si(OC253;C25Si(OCH33CH2=CHSi(OCH33;CH2=CHSi(OCH2CH2OCH33
65Si(OCH33;[CH3][OCH(CH3)CH2OCH3]Si[OCH32
Si(OCH34;Si(OC254;Si(OCH2CH2CH34;Si(OCH2CH2CH2CH34
Si(OC24OCH34;CH3Si(OC24OCH33;ClCH2Si(OC253
【0044】
架橋剤Dの他の例としては、エチルポリシリケートまたはn−プロピルポリシリケートが言及され得る。
【0045】
一般に、エラストマーに対して重縮合を介して架橋し得るポリオルガノシロキサンCの100重量部あたり0.1〜60重量部の架橋剤Dが利用される。
【0046】
従って、本発明による組成物は、少なくとも1つの接着促進剤E、例えば、有機ケイ素化合物類を含んでもよく、この化合物は以下の両方を有する:
(1)ケイ素原子に結合される1個以上の加水分解性基、および
(2)窒素原子を含むラジカルで置換されている1個以上の有機基、または(メタ)アクリレート、エポキシおよびアルケニルラジカル類の群から、およびなおさらに好ましくは単独でまたは混合物としてとられる以下の化合物類によって構成される群から選択される基:
ビニルトリメトキシシラン(VTMO);
3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO);
メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO);
[H2N(CH23]Si(OCH2CH2CH33
[H2N(CH23]Si(OCH33
[H2N(CH23]Si(OC253
[H2N(CH24]Si(OCH33
[H2NCH2CH(CH3)CH2CH2]SiCH3(OCH32
[H2NCH2]Si(OCH33
[n−C49−HN−CH2]Si(OCH33
[H2N(CH22NH(CH23]Si(OCH33
[H2N(CH22NH(CH23]Si(OCH2CH2OCH33
[CH3NH(CH22NH(CH23]Si(OCH33
[H(NHCH2CH22NH(CH23]Si(OCH33
【化4】

または20%を超える含量でこのような有機基を含有するポリオルガノシロキサンオリゴマー類。
【0047】
単一成分型および二成分型のベースについては、平均粒子径が0.1μm未満である、極めて微細に分割された製品の鉱物充填剤Fとして利用される。これらの充填剤は、ヒュームドシリカおよび沈降シリカを含み;それらのBET比表面積は一般には40m2/gより大きい。これらの充填剤はまた、0.1μmより大きい平均粒子径を有する、それより粗く分割された製品の形態であってもよい。このような充填剤の例としては、粉末石英、珪藻土、炭酸カルシウム、焼粘土、ルチル型酸化チタン、鉄、亜鉛、クロム、ジルコニウム、または酸化マグネシウム、種々の形態のアルミナ(水和または未水和)、窒化ホウ素、リトポン、メタホウ酸バリウム、硫酸バリウムおよびガラスマイクロビーズを挙げることが可能であり;それらの比表面積は一般には30m2/g未満である。
【0048】
これらの充填剤は、種々の有機ケイ素化合物類での処理によって表面変性されていてもよい。これらの有機ケイ素化合物類は、この目的のために慣習的に使用されているものであり、オルガノクロロシラン類、ジオルガノシクロポリシロキサン類、ヘキサオルガノジシロキサン類、ヘキサオルガノジシラザン類またはジオルガノシクロポリシラザン類(仏国特許出願公開第1126884号、同第1136885号および同第1236505号、ならびに英国特許出願公開第1024234号)であってもよい。この処理された充填剤はほとんどの場合、有機ケイ素化合物類の重量の3〜30%を含有する。この充填剤は、異なる粒子サイズのいくつかのタイプの充填剤の混合物から構成されてもよい;従って、例えば、それらは、40m2/gより多いBET比表面積を有する微細に分割されたシリカの30〜70%、および30m2/g未満の比表面積を有するそれよりは粗く分割されたシリカの70〜30%から構成されてもよい。
【0049】
充填剤を導入する目的は、本発明による組成物の硬化から生じる、エラストマーに対する良好な機械的および流体力学的特性を得ることである。
【0050】
これらの充填剤と組み合わせて、鉱物および/または有機の顔料が利用されてもよく、またエラストマーの耐熱性(酸化セリウムおよび水酸化物などの希土類元素の塩および酸化物)および/または耐火性を改善する剤も利用されてもよい。例えば、国際公開第98/29488号に記載される酸化物のカクテルを使用することが可能である。これらの剤のなかでも、耐火性を改善するためには、ハロゲン化有機誘導体類、有機リン誘導体類、白金誘導体類、例えば、塩化白金酸(アルカノールまたはエーテルとのその反応産物)または塩化第1白金−オレフィン錯体を挙げることができる。これらの顔料および剤は充填剤の重量の多くとも20%で一緒に存在する。
【0051】
他の慣用的な補助剤および添加物が本発明に従う組成物に組み込まれてもよく、これらは上記組成物が用いられる適用の関数として選択される。
【0052】
本発明による組成物を生成するために用いられるシリコーンベースは以下を含み得る:
−エラストマーへ重縮合を介して架橋し得る100部のポリオルガノシロキサンオイルC
−0〜20部の架橋剤D;
−0〜20部の接着促進剤E;および
−0〜50部の充填剤F。
【0053】
主要な構成要素に加えて、非反応性の直鎖ポリオルガノシロキサン重合体類(G)が、本発明に従う組成物の物理的特徴に、および/またはこれらの組成物の硬化から生じるエラストマーの機械的特性に作用する意図で導入されてもよい。
【0054】
これらの非反応性直鎖ポリオルガノシロキサン重合体類(G)は周知であり;それらはさらに特に以下を含む:本質的にジオルガノシロキシ単位および少なくとも1%のモノオルガノシロキシおよび/またはシロキシ単位から形成される25℃の少なくとも10mPa.sの粘度を有するα,ω−ビス(トリオルガノシロキシ)ジオルガノポリシロキサン重合体類、メチル、ビニルおよびフェニルラジカルから選択されるケイ素原子に結合された有機ラジカルであって、これらの有機ラジカルの少なくとも60%がメチルラジカルであって多くとも60%がビニルラジカルである有機ラジカル。これらの重合体類の粘度は、25℃で数千万mPa.sに到達し得;従って、それらは、オイルと液体とを含み、粘性の外観および軟性から硬性のゴムである。それらは、仏国特許出願公開第978058号、同第1025150号、同第1108764号および同第1370884号にさらに詳細に記載される通常の技術に従って調製される。25℃で10mPa.s〜1000mPa.sにおよぶ粘度を有するα,ω−ビス(トリメチルシロキシ)ジメチルポリシロキサンオイルを利用することが好ましい。可塑剤として作用するこれらの重合体類は、重縮合を介して架橋し得るポリオルガノシロキサンオイルCの100部あたり多くとも70部、好ましくは5〜20部の割合で導入され得る。
【0055】
本発明による組成物は、少なくとも1つのシリコーン樹脂(H)をさらに含むことが有利である場合がある。これらのシリコーン樹脂は周知であって、かつ市販されている分岐オルガノポリシロキサンポリマーである。それらは1分子あたり、式R'''3SiO1/2(M単位)、R'''2SiO2/2(D単位)、R'''SiO3/2(T単位)およびSiO4/2(Q単位)という単位から選択される少なくとも2つの異なる単位を有する。R'''ラジカル類は、同一であるかまたは異なり、直鎖もしくは分岐したアルキルラジカル類またはビニル、フェニルまたは3,3,3−トリフルオロプロピルラジカル類から選択される。好ましくは、このアルキルラジカル類は、1〜6個の炭素原子(包括的)を有する。さらに詳細には、アルキルRラジカル類として、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチルおよびn−ヘキシルラジカル類が言及され得る。これらの樹脂類は好ましくは、ヒドロキシル化されて、この場合には、ヒドロキシル基の重量含量は5〜500meq/100gである。
【0056】
樹脂類の例としては、MQ樹脂類、MDQ樹脂類、TD樹脂類およびMDT樹脂類が挙げられ得る。
【0057】
本発明による組成物の製造のためには、単一成分型組成物の場合には、熱の供給の有無において、湿度なしの環境で種々の基礎的構成要素を緊密に混合することを可能にする装置を用いることが必要であり、場合によりこの構成要素に上述のアジュバントおよび添加物が追加される。これらの成分の全ては任意の導入順序でこの装置にロードされてもよい。従って、オルガノポリシロキサンオイルCおよび充填剤Fを最初に混合し、次いでこの得られたペーストに本発明による架橋剤D、化合物Eおよび触媒を添加することが可能である。オイルC、架橋剤D、化合物Eおよび充填剤Fを混合すること、ならびに引き続いて本発明による触媒を添加することも可能である。これらの操作の間、この混合物を大気圧で、または減圧下で50〜180℃の範囲内のある温度で加熱して、揮発性物質の除去を促進してもよい。
【0058】
本発明による単一成分型組成物はそのままで、すなわち希釈せずに、または希釈剤中の分散型で用いられるが、水の非存在下で貯蔵の間安定であって、かつ水の存在下において低温で(分散剤の場合は溶媒の除去後)硬化してエラストマーを形成する。
【0059】
湿った大気中での固体物質上への組成物のそのままの沈着後、エラストマーへの硬化のプロセスが生じることが観察され、これはこの沈着した固まりの外側から内側へ生じる。表層(スキン)がまずこの表面で形成され、ついで架橋が深部に持続する。この表層の完全な形成は、この表面の不粘着感を生じて、2〜3分間の期間を要し;この期間は、この組成物の周囲の外気の相対湿度の程度に、および後の架橋能力に依存する。
【0060】
さらに、沈着した層の深部硬化は、形成されるエラストマーの離型および取り扱いを可能にするのに十分でなければならず、長期間を要する。実際、この期間は、不粘着感の形成について上述された要因に依存するだけでなく、厚みが一般には0.5mm〜数センチメートルある沈着された層の厚みにも依存する。単一成分型組成物は多数の適用、例えば、建設業での接着、ほとんどの多様な物質の組み立て(金属、プラスチック、天然ゴムおよび合成ゴム、木、ボード(板)、陶器、れんが、セラミック、ガラス、石、コンクリート、石造施設)、導電体の絶縁、電気回路のポッティング、または合成樹脂または泡状物からなる製品に用いられる鋳型の作製に用いてもよい。
【0061】
本発明に従う二成分型組成物の製造はまた、適切な装置中で種々の構成要素を混合することによって行われる。同質の組成物を得るために、重合体Aと充填剤Cとを最初に混合することが好ましく;その混合物全体を80℃より高い温度で少なくとも30分間加熱して、オイルによってこの充填剤の湿潤化を完了してもよい。得られた混合物に、好ましくは80℃より低い温度にして、例えば周囲の室温の温度にして、他の構成要素、すなわち、架橋剤、触媒、および場合により種々の添加物およびアジュバントおよびさらに水さえ添加してもよい。
【0062】
本発明に従う組成物は、複数の適用、例えば、建設業または運送業(例えば、自動車、航空宇宙、鉄道、海運および航空産業)での接着および/または結合、ほとんどの多様な物質の組み立て(金属、プラスチック、天然ゴムおよび合成ゴム、木、ボード(板)、ポリカーボネート、陶器、れんが、セラミック、ガラス、石、コンクリート、および石造施設)、導電体の絶縁、電気回路のポッティング、および合成樹脂または泡状物からなる製品のために用いられる鋳型の作製に使用してもよい。
【0063】
従って、本発明の別の目的は、本発明に従いかつ上記されているオルガノポリシロキサン組成物の前駆体であり、重縮合反応を介してシリコーンエラストマーへ加硫され得、上記組成物を形成するために混合することを意図する2つの別々の部分P1およびP2にあるという点で、ならびにこれらの部分の一方がオルガノポリシロキサンの重縮合反応のための触媒としての本発明に従いかつ上記されている金属錯体Aまたはその塩と架橋剤Dとを含むがもう一方の部分は上述の種を含まずかつ:
−エラストマーへ重縮合を介して架橋し得るポリオルガノシロキサンオイルCの100重量部あたり;
−0.001〜10重量部あたりの水を含むことを特徴とする、二成分系からなる。
【0064】
本発明の別の目的はまた、湿度の非存在下で貯蔵の間安定であって、かつ水の存在下においてエラストマーへ架橋する単一成分型のポリオルガノシロキサン組成物であって:
−アルコキシ、オキシム、アシルおよび/またはエノキシ型、好ましくはアルコキシ型の官能化末端を有する少なくとも1つの架橋可能な直鎖ポリオルガノポリシロキサン;
−充填剤;および
−本発明に従いかつ上記されている金属錯体Aである重縮合反応の触媒
を含むことを特徴とする単一成分型のポリオルガノシロキサン組成物からなる。
【0065】
単一成分型のベースは、詳細には、例えば、引用文献として引用される、欧州特許第141685号、同第147323号、同第102268号、同第21859号、仏国特許第2121289号および同第2121631号に記載されている。
【0066】
これらの単一成分型のベースに対して、一方ではアミノ、ウレイド、イソシアネート、エポキシ、アルケニル、イソシアヌレート、ヒダントイル、グアニジドおよびメルカプトエステルラジカル類の群から選択されるラジカルによって置換される有機基を、他方では、加水分解性基、一般にはケイ素原子に結合されたアルコキシ基を同時に有している有機ケイ素化合物類から、例えば、選択される接着促進剤Eを加えることが可能である。このような接着剤の例は、米国特許第3517001号、同第4115356号、同第4180642号、同第4273698号、同第4356116号に、および欧州特許第31996号および同第74001号に記載されている。
【0067】
二成分型のベースは詳細には、例えば、引用文献として引用される、欧州特許第118325号、同第117772号、同第10478号、同第50358号、同第184966号、米国特許第3801572号、および同第388815号に記載されている。
【0068】
本発明の別の目的は、オルガノポリシロキサン類の重縮合反応のための触媒としての本発明に従いかつ上記されている金属錯体Aまたはその塩の使用からなる。
【0069】
本発明の最終的な目的は、本発明に従いかつ上記されている二成分系の架橋および硬化によって得られるエラストマー、または本発明に従いかつ上記されている組成物からなる。
【0070】
本発明の他の利点および特徴は、例示によって示しており、かつ決して限定はされない以下の実施例を読めば明らかになるであろう。
【実施例】
【0071】
例1
【0072】
本発明による触媒類(5)および(6)の合成
【0073】
a)触媒(5)の合成:
【0074】
[Zn(イソプロピルアセトアセテート)2]または[Zn(iPr−AA)2]式中iPr−AA=イソプロピルアセトアセテートアニオンまたはイソプロピルアセトアセテートのエノラートアニオンである。
【0075】
100mlのイソプロパノール中の97%(6.12g)の濃度のナトリウムメトキシドの100mmolの溶液を20%の蒸留によって濃縮し、次いで95%(15.93g)の濃度の100mmolのイソプロピルアセトアセテートを添加して、この溶液を80℃で1時間加熱して、均一なオレンジ色の溶液を得た。次に、50mlのイソプロパノールに含有される塩化亜鉛(50mmol,7g)の溶液を70℃で1時間にわたって添加した。この加熱は80〜90℃で3時間30分維持し、次いで形成された塩化ナトリウムを冷却後に濾過した。そのアルコール溶液を乾燥するまで蒸発して、25.3gのペーストを得て、これを200mlのエタノールに再溶解した。高温の濾過および乾燥するまで蒸発した後17.2gの白色固体(98%の収率)を得た。
【0076】
理論上のZn含量:18.59%、実測上のZn含量(ICP):18.57%
IR分析(nm):2989、1617、1514、1246、1170。
【0077】
b)式(6)の亜鉛ビス(2,2,7−トリメチル−3,5−オクタンジオナート)触媒の合成:
【化5】

【0078】
0.86gの水酸化ナトリウム(21mmol)を10mlの無水エタノール中に溶解し、次いで4gの2,2,7−トリメチル−3,5−オクタンジオン(21mmol)をこの得られた溶液に添加した。1.55gの塩化亜鉛(11mmol)が含有される10mlの無水エタノールの溶液を、ナトリウムエノラートの淡黄色の溶液に5分にわたって添加した。その混合物を20℃で3時間撹拌し、次いで10mlのトルエンを添加した。塩化ナトリウムの懸濁液を撹拌しながら10℃に冷却し、次いで濾過した。その濾液を真空下で蒸発して、4gの濃い透明の油状物を得た(90%の収率)。
【0079】
ジメチルスルホキシド(DMSO)でのプロトンNMR分析によって、このように形成された錯体の構造が単一の異性体の形態であったことが明らかになった:化学的シフト:0.87(12H,二重項),1.05(18H,一重項),1.95(6H,未解明のピーク),5.33(2H,一重項)。
【0080】
理論上のZn含量:15.1%、実測上のZn含量:(ICP)14.9%。
【0081】
例2
【0082】
初期試験
【0083】
−触媒(3):Zn(DPM)2または[Zn(t−Bu−acac)2]ここで(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトアニオンまたは2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンのエノラートアニオン;
−触媒(4):[Zn(EAA)2]ここでEAA=エチルアセトアセテートアニオンまたはエチルアセトアセテートのエノラートアニオン;
−触媒(5):[Zn(iPr−AA)2]ここでiPr−AA=イソプロピルアセトアセテートアニオンまたはイソプロピルアセトアセテートのエノラートアニオン;ならびに
−式(6):
【化6】

の亜鉛ビス(2,2,7−トチメチル−3,5−オクタンジオナート)触媒。
【0084】
新規な種の触媒活性を示すために、2つの簡易な試験を開発した。
【0085】
2つの試験では、下の手順に従った。
【0086】
−官能化または非官能化オイル、次いで触媒、次いでRTV2組成物の場合には架橋剤、次いで場合により水を、磁気撹拌棒を装備した小型の開放筒状容器に連続して入れて、撹拌は300rpmに設定した。以下を測定した:約1000cP(またはmPa)の粘度に相当する、撹拌停止時間、次いで、オイルがもう流れない時間、不粘着表層形成時間、およびコア架橋時間。新規な触媒の活性を、最速のジアルキルスズ型触媒の1つであるテトラブチルジスタノキサンジラウレートもしくはTegokat 225の活性と比較した(Sn当量で1.24mmol)。
【0087】
RTV1の試験
【0088】
前に用いた同じオイルはビニルトリメトキシシラン(VTMO)で事前に官能化した;試験すべき種は、前と同じ条件下でこのオイルと接触させ、次に2当量の水を添加した(2当量/最初のOH)。
【0089】
言及しない限り、下の実施例で用いた量は以下であった:
−4.77gのVTMO−官能化48V100オイル;
−試験されるべき1.24mmolの種(1/2当量/OH);
−90μlの水(撹拌=t0の1分後に添加した)。
【0090】
RTV2の試験
【0091】
試験すべき種は、短鎖α,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサンオイル(OH含量に対して1/2当量、100mPa.sという粘度、48V100オイル)次いで架橋剤と接触させ、ケイ酸エチルを添加するか(1当量/OH)、または同じ容積の「高度の(advenced)」ケイ酸エチル、すなわち、エトキシポリシロキサン類の混合物を添加した(この場合、1当量/OHを超える)。
【0092】
言及しない限り、下の試験で用いた量は以下であった:
−0.553mmolOH/gを有する4.48gの48V100オイル(粘度:100cPまたはmPa)
−試験されるべき1.24mmolの種(1/2当量/OH);
−0.52gのケイ酸エチル(1当量/OH)、またはケイ酸エチルと同じ容積の「高度の(advenced)」ケイ酸塩(=0.82g)。
【0093】
RTV1試験の結果を下の表Iに示す:
【表1】

【0094】
ケイ酸エチル架橋剤RTV2試験の結果を下の表IIに示す:
【表2】

【0095】
比較の試験2および3(亜鉛ジアセチルアセトナートまたは[Zn(acac)2,H2O]およびZn(2−エチルヘキサノアート)2]では、先行技術による触媒がこのタイプの適用のためには許容できない架橋時間であることが示される。
【0096】
「高度の」ケイ酸塩架橋剤RTV2試験の結果を下の表IIIに示す。
【表3】

例3
【0097】
RTV1およびRTV2の組成物のペースト試験
第二に、特定の触媒をまた、「ペースト」として公知のより類似した系でも試験した。
【0098】
RTV1組成物では、用いたペーストは、以下のとおり調製した:0.066%のOHを含有する20000センチポアズの粘度を有する3464gのα,ω−ジヒドロキシル化オイルと120gのビニルトリメトキシシランとの混合物に、撹拌しながら、16gの2重量%溶液の水酸化リチウムが含有されるメタノールを添加し、次いで5分後、400gのAE55ヒュームドシリカを添加した。その混合物を真空下で揮発分除去し、次いで湿度なしの環境で保管した。
【0099】
各々の試験について、試験した触媒はこのペーストの50gと混合し、次いで触媒の能力を3つの方法で評価した(下の結果の表を参照のこと):
−表層形成時間(SFT)、2mmのフィルム上でその終わりに表面架橋が観察される時間;
−粘着感覚の48時間の持続
−制御条件(23℃および50%の相対湿度)下および漸増時間(2、3、4、7および14日)での6mm厚の帯状物(cordon)の硬度(ShoreA硬度)。高温安定性はまた、室温で7日続いて100℃で7日の後にこの帯状物で行った硬度測定によっても評価した。
【0100】
NB:Shore硬度は、6mmの帯状物で測定した。結果の表では、「>」という記号は、この帯状物の上部で測定した硬度値に相当し、「<」という記号は、上部よりも環境の空気に曝されていないこの帯状物の下部で測定した硬度値に相当する。
【0101】
本発明による種々の触媒を試験した。
比較のために、上記のように、以下も試験した:
−スズベースの触媒:ジブチルスズジラウラート(DBTDL);
【0102】
その結果を下の表IVに示す。
【表4】

【0103】
RTV2組成物では、試験は粘性のα,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサンオイル(14000mPa.sの粘度を有する)と、高度のケイ酸塩架橋剤(22.5gのオイルあたり1g)との混合物で直接行い、この混合物に触媒を添加して、それと混合した。最初に、ポットライフ(その終わりの時点で混合物の粘度によって用いることが妨げられる)を測定し、次いで、別の混合物から開始して、6mmの厚みを有するスラッグを経時的な硬度の測定のために鋳造した(前と同様に上部と下部で行う)。
比較のために、上記のように、以下も試験した:
−スズベースの触媒:ジメチルスズジネオデカノエート(UL28)。
【0104】
その結果を下の表Vに示す。
【表5】

【0105】
上記の表では、「>」という記号は、このスラグの上部で測定した硬度値に相当し、「<」という記号は、上部よりも環境の空気に曝されていないこのスラグの下部で測定した硬度値に相当する。
例4
【0106】
RTV2ペースト試験:触媒(6)
この試験は、14000m.Pa.sの粘度を有する25gのα,ω−ジヒドロキシル化オイル、1.06gの事前重合化エチルケイ酸塩架橋剤、および粘性であって、かつシリコーンに可溶性である液体型であるという利点を有する本発明による触媒(6)のxmmolを混合することによって行った。この結果を、ジメチルスズジネオデカノエート触媒で得た結果と比較した。
【0107】
ポットライフ、すなわちもはや容易に流動できないゲルを形成するのに必要な時間、および6mmの厚みの離型されたスラグのShore A硬度(頂部および底部)を測定した。
【0108】
【表6】

【0109】
上記の表では、「>」という記号は、このスラグの上部で測定した硬度値に相当し、「<」という記号は、上部よりも環境の空気に曝されていないこのスラグの下部で測定した硬度値に相当する。
【0110】
観察:本発明による新規な触媒(6)でのポットライフは、RTV2型の適用のための使用の良好な可塑性を可能にするスズ触媒の場合よりもわずかに長い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができるシリコーンベースBと、触媒として有効量の少なくとも1種の重縮合触媒とを含み、前記触媒が下の式(1)の金属錯体Aまたはその塩であることを特徴とする、オルガノポリシロキサン組成物。
[Zn(L1)(L2)](1)
[式中:
記号L1およびL2は同一であるかまたは異なり、β−ジカルボニラトアニオン、または式(2)のβ−ジカルボニラル−含有化合物のエノラートアニオン、または下の式(2)のβ−ケトエステル由来のアセチルアセテートアニオンであるリガンドを表し;
1COCHR2COR3 (2)
式中:
1は置換もしくは非置換の、直鎖もしくは分岐したC1−C30炭化水素ベースの基を表し;
2は水素または置換もしくは非置換の、直鎖もしくは分岐したC1−C30炭化水素ベースの基、好ましくは水素原子または多くとも4個の炭素原子を有するアルキル基であり;
3は置換もしくは非置換の、直鎖、環状もしくは分岐したC1−C30炭化水素ベースの基、置換もしくは非置換の芳香族基、または−OR4基を表し、ここでR4は置換もしくは非置換の、直鎖、環状もしくは分岐したC1−C30炭化水素ベースの基を表し、
1およびR2は一緒に結合されて環を形成してもよく;
2およびR3は一緒に結合されて環を形成してもよく;
ただし、式(1)の金属錯体Aまたはその塩は、亜鉛ジアセチルアセトネートでもZn(acac)2化合物でもないものとする。]
【請求項2】
重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができるシリコーンベースBと、触媒として有効量の少なくとも1種の重縮合触媒とを含み、前記触媒が下の錯体(3)〜(6)によって構成される群から選択される金属錯体Aまたはその塩であることを特徴とする、請求項1に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
(3):Zn(DPM)2または[Zn(t−Bu−acac)2](ここで、DPM=(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトアニオンまたは2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンのエノラートアニオンである);
(4):[Zn(EAA)2](ここで、EAA=エチルアセトアセテートアニオンまたはエチルアセトアセテートのエノラートアニオンである);
(5):[Zn(iPr−AA)2](ここで、iPr−AA=イソプロピルアセトアセテートアニオンまたはイソプロピルアセトアセテートのエノラートアニオンである);ならびに
【化1】

【請求項3】
前記β−ジカルボニラトリガンドL1およびL2が以下のβ−ジケトン類:2,4−ヘキサンジオン;2,4−ヘプタンジオン;3,5−ヘプタンジオン;3−エチル−2,4−ペンタンジオン;5−メチル−2,4−ヘキサンジオン;2,4−オクタンジオン;3,5−オクタンジオン;5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン;6−メチル−2,4−ヘプタンジオン;2,2−ジメチル−3,5−ノナンジオン;2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン;2−アセチルシクロヘキサノン(Cy−acac);2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン(t−Bu−acac);1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン(F−acac);ベンゾイルアセトン;ジベンゾイルメタン;3−メチル−2,4−ペンタジオン;3−アセチル−2−ペンタノン;3−アセチル−2−ヘキサノン;3−アセチル−2−ヘプタノン;3−アセチル−5−メチル−2−ヘキサノン;ステアロイルベンゾイルメタン;オクタノイルベンゾイルメタン;4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン;4,4’−ジメトキシジベンゾイルメタンおよび4,4’−ジ−tert−ブチルジベンゾイルメタンによって構成される群から選択されるβ−ジケトン由来のβ−ジケトナートアニオン類であることを特徴とする、請求項1に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
前記β−ジカルボニラトリガンドL1およびL2が以下の化合物類:アセチル酢酸のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、n−ノニル、n−デシルまたはn−ドデシルエステル類に由来するアニオンによって構成される群から選択されるβ−ケトエステラトアニオン類であることを特徴とする、請求項1に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
触媒として有効量の請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属錯体Aまたはその塩である少なくとも1種の重縮合触媒と、次のもの:
−エラストマーへ重縮合を介して架橋し得る少なくとも1種のポリオルガノシロキサンオイルC;
−随意として場合により少なくとも1種の架橋剤D;
−随意として少なくとも1種の接着促進剤E;および
−随意として少なくとも1種のケイ質有機および/または非ケイ質無機充填剤F
を含むシリコーンベースBとを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができる請求項5に記載のオルガノポリシロキサン組成物の前駆体である二成分系であって、
前記組成物を形成するために混合することを意図される2つの別々の部分P1およびP2にあることを特徴とし、かつこれらの部分の一方がオルガノポリシロキサンの重縮合反応のための触媒としての請求項1〜4のいずれか一項に記載される前記金属錯体Aまたはその塩と架橋剤Dとを含むが、一方でもう一方の部分は上述の種を含まず、かつ以下のもの:
エラストマーへ重縮合を介して架橋し得るポリオルガノシロキサンオイルCを100重量部あたり;
0.001〜10重量部の水
を含むことを特徴とする、前記二成分系。
【請求項7】
湿度なしで貯蔵の間安定であり、かつ水の存在下でエラストマーへ架橋する単一成分型ポリオルガノシロキサン組成物であって:
・アルコキシ、オキシム、アシルおよび/またはエノキシ型、好ましくはアルコキシ型の官能化末端を有する少なくとも1種の架橋可能な直鎖ポリオルガノポリシロキサン;
・少なくとも1種の充填剤;および
・請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属錯体Aまたはその塩である重縮合反応の触媒
を含むことを特徴とする、ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の二成分系の、または請求項1〜5もしくは7のいずれか一項に記載の組成物の架橋および硬化によって得られるエラストマー。
【請求項9】
オルガノポリシロキサンの重縮合反応のための触媒としての請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属錯体Aの使用。
【請求項10】
以下の式:
(5):[Zn(iPr−AA)2](ここで、iPr−AA=イソプロピルアセトアセテートアニオンもしくはイソプロピルアセトアセテートのエノラートアニオンである);または
(6):
【化2】

の化合物。

【公開番号】特開2013−64147(P2013−64147A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−266478(P2012−266478)
【出願日】平成24年12月5日(2012.12.5)
【分割の表示】特願2010−538835(P2010−538835)の分割
【原出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(507421304)ブルースター・シリコーンズ・フランス (62)
【Fターム(参考)】