説明

エラストマー積層体

【課題】オイルを含有するスチレン系熱可塑性エラストマー組成物からオイルが染み出すことを防止できる手段を確立する。
【解決手段】スチレン系エラストマーと、オイルとを含有するスチレン系熱可塑性エラストマー組成物からなる基材の表面に、光硬化性樹脂と、(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含有する光硬化性組成物を塗布した後、当該光硬化性組成物にエネルギー線を照射して反応硬化させてなるエラストマー積層体であって、光硬化性樹脂が、光硬化性官能基を含有する水添共役ジエン重合体または水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体、或いは、それらの混合物であることを特徴とするエラストマー積層体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材、ガスケット材、制振材、防水材などに用いることができるエラストマー積層体に関するものであり、特には、オイルを含有するスチレン系熱可塑性エラストマー組成物からなる基材を備えたエラストマー積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、防振部材用や、制振・吸音部材用の低硬度熱可塑性エラストマー組成物として、スチレン系エラストマーにオイルを配合した組成物が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
しかし、このようなスチレン系熱可塑性エラストマー組成物は、軟化剤としてオイルを含んでいるため、低硬度化を達成することはできるものの、荷重がかかった場合にオイルが表面に染み出す、即ちオイルブリードが発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−105311号公報
【特許文献2】特開2006−225581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、荷重がかかった場合に上述のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物からオイルが染み出すことを防止できる手段の確立が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のエラストマー積層体は、スチレン系エラストマーと、オイルとを含有するスチレン系熱可塑性エラストマー組成物からなる基材の表面に、光硬化性樹脂と、(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含有する光硬化性組成物を塗布した後、当該光硬化性組成物にエネルギー線を照射して反応硬化させてなるエラストマー積層体であって、前記光硬化性樹脂が、光硬化性官能基を含有する水添共役ジエン重合体または水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体、或いは、それらの混合物であることを特徴とする。このように、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物からなる基材の表面を光硬化性組成物で被覆し、該光硬化性組成物を反応硬化させてエラストマー積層体とすれば、該エラストマー積層体に荷重がかかった場合であっても、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物からなる基材は硬化した光硬化性組成物で被覆されているので、オイルが染み出すことがない。また、光硬化性樹脂として水添共役ジエン重合体または水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体、或いは、それらの混合物を用いると共に、光硬化性組成物に(メタ)アクリレートモノマーを配合しているので、エネルギー線の照射により硬化した光硬化性組成物と、基材とが良好に接着する。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを指す。
【0007】
ここで、本発明のエラストマー積層体は、前記(メタ)アクリレートモノマーのエステル残基が、炭素数12〜18のアルキル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、シクロヘキシル基またはジシクロペンテニル基であることが好ましい。このようなエステル残基の(メタ)アクリレートモノマーを光硬化性組成物に配合すれば、エネルギー線の照射により硬化した光硬化性組成物と、基材との接着性が向上するからである。なお、(メタ)アクリレートモノマーのエステル残基とは、(メタ)アクリレートモノマーを構成する(メタ)アクリル酸と水酸基含有化合物のうち、水酸基含有化合物の水酸基を1つ除いた残基をいう。
【0008】
また、本発明のエラストマー積層体は、前記光硬化性組成物が、前記(メタ)アクリレートモノマーを、全ての光硬化性樹脂を100質量部とした場合に1〜150質量部の割合で含むことが好ましく、20〜70質量部の割合で含むことがより好ましく、30〜60質量部の割合で含むことが更に好ましい。(メタ)アクリレートモノマーの配合量が少なすぎると、エネルギー線の照射により硬化した光硬化性組成物と、基材との接着性が低下してしまい、(メタ)アクリレートモノマーの配合量が多すぎると、エラストマー積層体の硬度が高くなってしまうからである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエラストマー積層体によれば、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物からなる基材が、硬化した光硬化性組成物により被覆されているので、エラストマー積層体に荷重がかかった場合に基材(スチレン系熱可塑性エラストマー組成物)からオイルが染み出すことを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のエラストマー積層体を詳細に説明する。本発明のエラストマー積層体は、スチレン系エラストマーと、オイルとを含有するスチレン系熱可塑性エラストマー組成物からなる基材の表面を、光硬化性樹脂と、(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含有する光硬化性組成物で被覆した後に、該光硬化性組成物を反応硬化させたものである。
【0011】
(スチレン系熱可塑性エラストマー組成物)
本発明のエラストマー積層体の基材に用いるスチレン系熱可塑性エラストマー組成物としては、スチレン系エラストマーと、オイルとを含有する既知のエラストマー組成物を用いることができる。
【0012】
ここで、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物としては、例えば特開2000−169666号公報や、特開2002−225303号公報に記載されているエラストマー組成物を用いることができる。
【0013】
具体的には、何ら限定されることなく、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つとからなるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体(スチレン系エラストマー)と、非芳香族系ゴム用軟化剤(オイル)とを含むエラストマー組成物を用いることができる。なお、このエラストマー組成物はポリオレフィン系炭化水素樹脂を更に含んでいても良い。
【0014】
ここで、水添ブロック共重合体としては、例えば、ポリブタジエンとポリスチレンとのブロック共重合体、およびポリイソプレンとポリスチレンとのブロック共重合体、或いは、ポリブタジエンまたはエチレン−ブタジエンランダム共重合体とポリスチレンとのブロック共重合体を水添して得られる、結晶性ポリエチレンとポリスチレンとのジブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンのトリブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンのトリブロック共重合(SEPS)などの他に、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも二つと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つとを有するブロック共重合体(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等)を水添して得られる水添ブロック共重合体を挙げることができる。
【0015】
非芳香族系ゴム用軟化剤は、熱可塑性エラストマーを低硬度化させるためのものであり、このような軟化剤としては、通常、室温で液体または液状のものが好適に用いられる。そして、非芳香族系ゴム用軟化剤としては、ナフテン系プロセス油、パラフィン系プロセス油などの鉱物油系軟化剤、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、梛子油、落花生油、木ろう、パインオイル、オリーブ油などの植物油系軟化剤、ポリイソブチレン系オイルなどの合成系軟化剤が挙げられる。なお、これらの軟化剤は一種を単独で用いてもよく、互いの相溶性が良好であれば二種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
ここで、通常、これらの軟化剤の配合量は、水添ブロック共重合体100質量部に対し、1〜3000質量部、好ましくは50〜1000質量部、特に好ましくは100〜300質量部である。
【0017】
また、上述したスチレン系熱可塑性エラストマー組成物には、該組成物の加工性、耐熱特性の向上を図るため、ポリプロピレンを主成分とするポリオレフィン系炭化水素樹脂を加えることができる。そして、該樹脂としては、アイソタクティックポリプロピレン、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとの共重合体(例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体)などを挙げることができる。ここで、ポリオレフィン系炭化水素樹脂の配合量は、水添ブロック共重合体100質量部に対し、0〜50質量部、好ましくは0〜30質量部、特に好ましくは5〜20質量部である。
【0018】
なお、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物には、加工性および耐熱性の向上を図るために、ポリオレフィン系炭化水素樹脂に加えてポリスチレン樹脂を配合しても良い。また、既知の添加剤を配合しても良い。
【0019】
そして、上述したスチレン系熱可塑性エラストマー組成物は、上述した水添ブロック共重合体等を、既知の混練手段、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ニーダー、高剪断型ミキサーなどを用いて混練して製造することができる。
【0020】
(光硬化性組成物)
本発明のエラストマー積層体に用いる光硬化性組成物としては、光硬化性樹脂と、(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含有する既知の光硬化性組成物を用いることができる。
【0021】
ここで、光硬化性組成物としては、例えば特開2007−145949号公報に記載されているような光硬化性組成物を用いることができる。
【0022】
具体的には、何ら限定されることなく、下記の方法で製造した光硬化性樹脂と、(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含有する光硬化性組成物を用いることができる。
【0023】
<光硬化性樹脂>
光硬化性組成物に用いる光硬化性樹脂は、光硬化性官能基を含有する水添共役ジエン重合体(例えば水添ブタジエン重合体)または水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体(例えば水添スチレンブタジエン共重合体)、或いは、水添共役ジエン重合体と水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体との混合物であり、例えば以下のようにして製造することができる。
(1)まず、飽和炭化水素系溶媒中で、ジリチウム開始剤によりブタジエン単量体(例えば、1,3−ブタジエン)、或いは、ブタジエン単量体およびスチレン単量体を重合して、ブタジエン重合体またはスチレンブタジエン共重合体(以下、単に「(共)重合体」ということがある)を製造する。ここで、本重合はリビングアニオン重合であるため、分子量および分子量分布を制御して重合できる。ジリチウム開始剤と上記単量体の量により所定の分子量の重合体を重合することが可能であり、特に重量平均分子量が5000以上では、分子量分布が2以下の狭い重合体を得易い。また、所望により、ランダマイザーの存在下にアニオン重合をさせてもよい。なお、(共)重合体とは、「重合体または共重合体」を指す。
(2)次に、上記(1)で製造した(共)重合体のリビングアニオンである重合体末端と、アルキレンオキシドとを当量反応させることにより、両末端に水酸基を有するブタジエン重合体ポリオールまたはスチレンブタジエン共重合体ポリオール(以下、単に「(共)重合体ポリオール」ということがある)を得ることができる。
(3)更に、上記(2)で製造した、主鎖に二重結合を有する(共)重合体ポリオールに水素添加反応(以下、「水添反応」という)を行うことにより、主鎖に不飽和二重結合を持たない水添ブタジエン重合体ポリオールまたは水添スチレンブタジエン共重合体ポリオール(以下、単に「水添(共)重合体ポリオール」ということがある)を得ることができる。
(4)そして、最後に、上記のようにして得た水添(共)重合体ポリオールに、光硬化性官能基含有化合物としての光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物を反応させることにより、光硬化性官能基(光硬化性不飽和炭化水素基)を導入した、液状の光硬化性樹脂が得られる。
【0024】
ジリチウム開始剤としては、特に限定されず公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、第3級アミンの存在下で、モノリチウム化合物を二置換ビニルまたはアルケニル基含有芳香族炭化水素と反応させて製造したジリチウム開始剤を用いることができる。
【0025】
ここで、ジリチウム開始剤を製造するときに用いられるモノリチウム化合物としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム等が挙げられるが、これらの中でも、sec−ブチルリチウムが特に好ましい。
【0026】
ジリチウム開始剤を製造するときに用いられる第3級アミンとしては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン等の低級脂肪族アミンや、N,N−ジフェニルメチルアミン等が挙げられるが、特にトリエチルアミンが好ましい。また、上記二置換ビニルまたはアルケニル基含有芳香族炭化水素としては、例えば、1,3−(ジイソプロペニル)ベンゼン、1,4−(ジイソプロペニル)ベンゼン、1,3−ビス(1−エチルエテニル)ベンゼン、1,4−ビス(1−エチルエテニル)ベンゼン等が挙げられる。
【0027】
上記ジリチウム開始剤の調製および(共)重合体の製造において用いられる溶媒は、反応に不活性な有機溶剤であればよく、溶媒としては、脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶媒を用いることができる。具体的には、例えば、n−ブタン、l−ブタン、n−ペンタン、l−ペンタン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン、l−ブテン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、l−オクタン、メチルシクロペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ペンテン、2−ペンテン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等から1種あるいは2種選んで使用される。これらのうち、n−ヘキサン、シクロヘキサンが通常用いられる。
【0028】
また、上記の(共)重合体のリビングアニオンである末端と反応して、両末端に水酸基を生成するポリオール化反応に用いるアルキレンオキシドとしては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシド等を用いることができる。このポリオール化反応は、重合反応直後に行うのが好ましい。
【0029】
なお、上述した光硬化性樹脂は、上記ポリオール化反応により得られた(共)重合体ポリオールの重量平均分子量が5000以上の場合、架橋点間分子量を大きくすることができ、光硬化反応後の光硬化性樹脂の弾性率を低くできると共に伸びを大きくできる。一方、分子量が40000以下の場合、ジリチウム触媒で重合を行う際に、重合粘度が高くなりすぎず、重合プロセスとして固形分濃度を下げる必要がないので、低コストで製造することができる。
【0030】
また、分子量分布が3.0以下であると、低分子量成分や高分子量成分によるさまざまな影響を抑制することができる。特に、粘度は分子量の影響を大きく受けるため、分子量のわずかなブレは粘度のバラツキを生じる。上記(1)〜(4)に従い製造すれば、狭い分子量分布の(共)重合体を合成できるので、再現性良く同じ分子量の(共)重合体を得ることができる。従って、粘度を安定化させることができる。通常、上述した光硬化性樹脂のような液状の材料は、ディスペンサー塗布を行う場合が多く、この場合、材料粘度のバラツキは塗布後の寸法にバラツキを生じるので、粘度の安定化は重要である。従って、光硬化性樹脂は、分子量分布が3.0以下であることが好ましい。
【0031】
水添反応は、有機溶媒中で、水素加圧下、且つ、水添触媒の存在下で上記(共)重合体ポリオールに水素添加して行われる。水添触媒としては、パラジウム−カーボン、還元ニッケル、ロジウム系等の不均一系触媒、或いは、ナフテン酸ニッケル、オクタン酸ニッケル等の有機ニッケル化合物またはナフテン酸コバルト、オクタン酸コバルト等の有機コバルト化合物と、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物もしくはn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムのような有機リチウム化合物とを組み合わせた均一触媒が使用できる。共触媒として、テトラハイドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物を用いてもよい。また、他の水添反応方法としては、例えば上記水添前の(共)重合体を、ジシクロペンタジエニルチタンハライド、有機カルボン酸ニッケル、有機カルボン酸ニッケルと周期律表第I〜III族の有機金属化合物とからなる水素化触媒、カーボン、シリカ、ケイソウ土等に担持されたニッケル、白金、バラジウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム金属触媒やコバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム錯体等を触媒として、1〜100気圧に加圧された水素下、或いはリチウムアルミニウムハイドライド、p−トルエンスルホニルヒドラジドの存在下、もしくはZr−Ti−Fe−V−Cr合金、Zr−Ti−Nb−Fe−V−Cr合金、LaNi5合金等の水素貯蔵合金の存在下、或いは1〜100気圧に加圧された水素下で水素化する方法や、ジ−p−トリル−ビス(1−シクロペンタジエニル)チタニウム/シクロヘキサン溶液とn−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液とを水素下で混合して得られる水素化触媒を用いて1〜100気圧に加圧された水素下で水素添加する方法等を挙げることができる。
【0032】
なお、上述した各種水添触媒の中では、遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物との組み合わせからなるチーグラー系水添触媒またはパラジウム−カーボン系水添触媒が好ましい。ここで、遷移金属化合物としては、トリス(アセチルアセトナート)コバルト、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル、トリス(アセチルアセトナート)鉄、トリス(アセチルアセトナート)クロム、トリス(アセチルアセトナート)マンガン、ビス(アセチルアセトナート)マンガン、トリス(アセチルアセトナート)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナート)コバルト、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタン、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、ビス(トリフェニルホスフィン)コバルトジクロライド、ビス(2−ヘキサノエート)ニッケル、ビス(2−ヘキサノエート)コバルト、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラエトキシド等が挙げられる。これらの中でも、高い水添活性という観点からは、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル、トリス(アセチルアセトナート)コバルトが好ましい。また、チーグラー系水添触媒に用いられるアルキルアルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキクロリドが挙げられる。これらの中でも、水添活性の観点からは、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドが好ましく、トリイソブチルアルミニウムが最も好ましい。
【0033】
なお、チーグラー系水添触媒の使用形態に特に制限はないが、予め遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物とを反応させた触媒溶液を調製し、それを重合溶液に添加する方法を挙げることが出来る。この際に用いるアルキルアルミニウム化合物の量は、遷移金属化合物1molに対して0.2〜5molが好ましい。上記の触媒調製の反応は、−40〜100℃、好ましくは0〜80℃の温度範囲で行われ、反応時間は1分から3時間の範囲である。
【0034】
また、水添反応は通常50〜180℃、好ましくは70〜150℃の温度で、且つ、5〜100気圧(5066.25〜101325hPa)、好ましくは10〜50気圧(10132.5〜50662.5hPa)の水素圧で行われる。水添温度が50℃より低い、または、水素圧が5気圧よりも低いと触媒活性が低くなるため好ましくなく、水添温度が180℃を越えると触媒の失活、副反応等が起こりやすいため好ましくない。また通常、チーグラー系水添触媒は水添活性の極めて高い触媒であり、水素圧100気圧(101325hPa)以上とするのは必要性に乏しく装置上の負担が大きくなるので好ましくない。
【0035】
上記の水添(共)重合体ポリオールに、光硬化性官能基含有化合物としての光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物を反応させて、該水添(共)重合体ポリオールの末端に光硬化性官能基(光硬化性不飽和炭化水素基)を導入するためには、光硬化性不飽和炭化水素基がアクリロイル基またはメタクリロイル基であることが好ましい。ここで、光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物としては、アクリロイルオキシアルキルイソシアネートや、メタクリロイルオキシアルキルイソシアネートが好ましく、これらとの反応により、上記の水添(共)重合体ポリオールは(メタ)アクリレート化される。ここで、アクリロイルオキシイソシアネートとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートが挙げられ、メタクリロイルオキシイソシアネートとしては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが挙げられる。
【0036】
<(メタ)アクリレートモノマー>
光硬化性組成物に用いる(メタ)アクリレートモノマーは、硬化前の光硬化性組成物の粘度を低減すると共に、硬化後の諸物性を改良するものである。即ち、(メタ)アクリレートモノマーを配合することにより、光硬化性組成物の接着強度の向上、硬度の低下、Eb(伸び)およびTb(破断強度)の向上等を図ることができる。この(メタ)アクリレートモノマーとしては、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
ここで、(メタ)アクリレートモノマーの配合量は、光硬化性樹脂100質量部に対して1〜150質量部であることが好ましく、20〜70質量部であることがより好ましく、30〜60質量部であることが更に好ましい。(メタ)アクリレートモノマーの配合量が少なすぎると、エネルギー線の照射により硬化した光硬化性組成物と、基材との接着性が低下してしまい、(メタ)アクリレートモノマーの配合量が多すぎると、エラストマー積層体の硬度が高くなってしまうからである。
【0038】
<光重合開始剤>
光硬化性組成物に用いる光重合開始剤としては、分子内開裂型として、アミノアセトフェノン類、ベンゾイン誘導体類、ベンジルケタール類、ヒドロキシアセトフェノン類、アミノアセトフェノン類とチオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン)との混合物、アシルホスフィンオキサイド類が挙げられ、水素引き抜き型として、ベンゾフェノン類とアミンとの混合物、チオキサントンとアミンとの混合物等が挙げられる。なお、光重合開始剤としては、上述した分子内開裂型と水素引き抜き型とを併用しても良い。
【0039】
ここで、光重合開始剤としては、アミノアセトフェノン類が特に好ましい。アミノアセトフェノン類は、光重合開始剤として反応活性が高く、窒素原子の存在により光硬化性組成物の表面の酸素阻害を受け難くするため、光硬化性組成物全体の硬化性を高めると共に、硬化後の光硬化性組成物の粘着性(タッキネス)および圧縮永久歪を小さくすることができるからである。そして、アミノアセトフェノン類としては、2−メチル−1−[(4−メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907]、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア369]、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア379]等が挙げられる。なお、アミノアセトフェノン類は単独で使用しても良いし、他の光重合開始剤と併用しても良い。
【0040】
また、上述したベンゾイン誘導体類としては、例えばベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル(アルキルの炭素数1〜6)、具体的にはベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどを挙げることができる。更に、ベンジルケタール類としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア651]などが挙げられ、ヒドロキシアセトフェノン類としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:ダロキュア1173]、1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニルケトン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア184]、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア127]などが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド類としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア819]などが挙げられる。
【0041】
なお、光重合開始剤としては、上述したもの以外に、オリゴマー化したα−ヒドロキシアセトフェノン、例えばオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン][Lamberti S.p.A製、商品名:ESACURE KIP150等]や、アクリレート化したベンゾフェノン類、例えばアクリル化ベンゾフェノン[例えは、ダイセル・ユー・シー・ビー(株)製、商品名:Ebecryl P136等]を用いることができる。また、ベンゾイルメチルエーテル、ベンゾイルエチルエーテル、ベンゾイルブチルエーテル、ベンゾイルイソプロピルエーテル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマーと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンとの混合物、イソプロピルチオキサントン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタンおよびイミドアクリレートなども用いることができる。
【0042】
ここで、光重合開始剤の配合量は、光硬化性樹脂および(メタ)アクリレートモノマーの合計100質量部に対し、0.1〜6質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましく、1〜4質量部であることが更に好ましい。
【0043】
(その他の添加剤)
また、本発明に用いる光硬化性組成物には、任意に、揺変剤、安定化剤などの通常用いられる添加剤を配合しても良い。
【0044】
ここで、揺変剤は、光硬化性組成物に揺変性(チクソトロピー)を持たせ、光硬化性組成物の加工性を向上するものであり、光硬化性組成物に配合する揺変剤としては、有機系揺変剤と無機系揺変剤とがある。
【0045】
具体的には、有機系揺変剤としては、水素添加ひまし油系、アマイド系、酸化ポリエチレン系、植物油重合油系、界面活性剤系の揺変剤、或いは、これらを2種以上併用した揺変剤が挙げられる。ここで、水素添加ひまし油系揺変剤は、ひまし油(主成分がリシノール酸の不乾性油)に水素を添加して硬化させ、ワックス状にしたもの[例えば、ズードケミー触媒(株)製、商品名:ADVITROL100、楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン305等]であり、アマイド系揺変剤は、植物油脂肪酸とアミンとを合成したアミド結合を有する化合物であるアマイドワックス[例えば、楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン6500等]である。
【0046】
また、無機系揺変剤としては、シリカ、ベントナイト、有機カップリング剤処理シリカ、有機カップリング剤処理ベントナイト、極微細表面処理炭酸カルシウム、或いは、これらの混合物が挙げられる。具体的には、無機系揺変剤としては、乾式法により微粉化したシリカ微粉末[例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル300等]、このシリカ微粉末をトリメチルジシラザンで変性した微粉末[例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルRX300等]および上記シリカ微粉末をポリジメチルシロキサンで変性した微粉末[例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルRY300等]等が挙げられる。ここで、上述した無機系揺変剤の平均粒径は、揺変性(チクソトロピー)付与の観点から、5〜50μmが好ましく、5〜12μmがより好ましい。
【0047】
なお、揺変剤の配合量は、光硬化性樹脂および(メタ)アクリレートモノマーの合計100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜8質量部であることがより好ましく、1〜5質量部であることが更に好ましい。
【0048】
また、上述した光硬化性組成物に添加する安定化剤としては、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート][チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:IRGANOX245、旭電化工業(株)製、商品名:アデカスタブAO−70等]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン[旭電化工業(株)製、商品名:アデカスタブAO−80等]などのフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0049】
ここで、安定化剤の配合量は、光硬化性樹脂および(メタ)アクリレートモノマーの合計100質量部に対し、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.5〜3質量部であることがより好ましく、0.5〜2質量部であることが更に好ましい。
【0050】
更に、上述の光硬化性組成物には、密着性を向上させるための、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系炭化水素、ロジン誘導体等の各種粘着付与剤や、チタンブラック等の着色剤等も添加することができる。
【0051】
また、光硬化性組成物には、上記(メタ)アクリレートモノマーに加えて、末端(メタ)アクリレートオリゴマーを配合することができる。この末端(メタ)アクリレートオリゴマーを配合することにより、光硬化性組成物の粘度を調節することができ、また、物理的には、硬度の低下、並びに、Eb(伸び)およびTb(破断強度)の向上等を図ることができる。なお、末端(メタ)アクリレートオリゴマーとは、片末端または両末端にアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するオリゴマーを指す。
【0052】
ここで、末端(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えばポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリオール(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。そして、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂や、ノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応させてエステル化することにより得ることができる。ポリオール(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0053】
<光硬化性組成物の製造>
上述した光硬化性組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、上述した成分を、温度調節可能な混練機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、プラネリーミキサー、二軸ミキサー、高剪断型ミキサー等を用いて混練することにより、製造することができる。
【0054】
(エラストマー積層体)
本発明のエラストマー積層体は、上記スチレン系熱可塑性エラストマー組成物からなる基材の表面に、上述のようにして得られた光硬化性組成物を塗布して塗布層を形成し、エネルギー線を照射して該塗布層を反応・硬化させることにより製造することができる。
【0055】
ここで、基材の形状は、シート状、円柱状、角柱状、ブロック状など、エラストマー積層体の用途に応じて任意の形状とすることができる。
【0056】
また、光硬化性組成物の基材(被着体)への塗布は、該組成物を必要に応じて温度調節し、一定粘度に調整した塗液としてから、任意の方法で行うことができ、例えばグラビアコート、ロールコート、スピンコート、リバースコート、バーコート、スクリーンコート、ブレードコート、エアーナイフコート、ディッピング、ディスペンシング、インクジェット等の方法を用いて塗布することができる。
【0057】
ここで、光硬化性組成物を反応・硬化させるために用いられるエネルギー線とは、紫外線および電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を指すが、本発明においては紫外線を用いることが好ましい。紫外線源としては、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、マイクロ波方式エキシマランプ等を挙げることができる。紫外線を照射する雰囲気としては、窒素ガス、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気あるいは酸素濃度を低下させた雰囲気が好ましいが、通常の空気雰囲気でも十分に硬化させることができる。照射雰囲気温度は、通常10〜200℃とすることができる。
【0058】
なお、光硬化性樹脂は、硬化後に再度エネルギー線を照射し、或いは、熱を加えて、性状を安定化させることもできる。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0060】
(スチレン系熱可塑性エラストマー組成物の製造)
スチレン系エラストマー(クラレ製、セプトン)と、ポリオレフィン樹脂(PP)と、オイル(出光興産製、パラフィン系オイル:ダイアナプロセスPW380)とを計量し、ブラベンダーまたは二軸押出機により混練して、ペレットを調製した。その後、調製したペレットを温度180〜220℃で射出成型機を用いて1〜2mmのシート状とした。
【0061】
(光硬化性樹脂の製造)
[水添SBRの製造]
まず、充分に脱水精製したシクロヘキサン溶媒中に、1,3−(ジイソプロペニル)ベンゼン1モルを添加した後、トリエチルアミン2モル、sec−ブチルリチウム2モルを順次添加し、50℃で2時間撹拌して、ジリチウム重合開始剤を調製した。
次に、アルゴン置換した7リットルの重合リアクターに、脱水精製したシクロヘキサンを1.90kg、22.9質量%の1,3−ブタジエンモノマーのヘキサン溶液を2.00kg、20.0質量%のスチレンモノマーのシクロヘキサン溶液を0.765kg、1.6モル/リットルの2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンのヘキサン溶液を130.4ml添加した後、0.5モル/リットルのジリチウム重合開始剤を108.0ml添加して重合を開始させた。
そして、重合リアクターを50℃に昇温しながら、1.5時間重合を行った後、1モル/リットルのエチレンオキシドのシクロヘキサン溶液を108.0ml添加し、さらに2時間撹拌した後、50mlのイソプロピルアルコールを添加した。共重合体のヘキサン溶液をイソプロピルアルコール中に沈殿させ、充分に乾燥させて共重合体ポリオールを得た。この共重合体ポリオールは、両末端がOH基のスチレン−ブタジエン共重合体であり、スチレン分は25質量%、重量平均分子量は14500、分子量分布は1.20であった。なお、重量平均分子量および分子量分布は、GPC法を用いてポリスチレン換算で求めた。
【0062】
次に、上記の共重合体ポリオール120gを、充分に脱水精製したヘキサン1リットルに溶解した後、予め別容器で調製した、ナフテン酸ニッケル、トリエチルアルミニウム、ブタジエンが1:3:3(モル比)の触媒液を、共重合体溶液中のブタジエン部1000モルに対してニッケルが1モルとなるように仕込んだ。密閉反応容器に水素を27580hPa(400psi)に加圧添加して、110℃にて4時間水添反応を行った。その後、3規定濃度の塩酸で触媒残渣を抽出分離し、更に遠心分離をして触媒残渣を沈降分離した。その後、水添共重合体ポリオールをイソプロピルアルコール中に沈殿させ、更に充分に乾燥を行った。
そして、充分に乾燥した水添共重合体ポリオール100gを、シクロヘキサンに溶解させ、40℃に保ち充分に撹拌しながら、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製:カレンズAOI)をゆっくり滴下した後、さらに4時間撹拌を行い、イソプロピルアルコールに沈殿させ乾燥させた。2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートの添加量は、2.49gであった。以上のようにして、水添重合体ポリオールから液状の光硬化性樹脂であるアクリロイル基含有水添スチレン−ブタジエン共重合体(水添SBR)を得た。
【0063】
[水添BRの製造]
充分に脱水精製したシクロヘキサン溶媒中に、1,3−(ジイソプロペニル)ベンゼン1モルを添加した後、トリエチルアミン2モル、sec−ブチルリチウム2モルを順次添加し、50℃で2時間撹拌して、ジリチウム重合開始剤を調製した。
次に、アルゴン置換した7リットルの重合リアクターに、脱水精製したシクロヘキサン1.35kg、22.9質量%の1,3−ブタジエンモノマーのヘキサン溶液2.67kg、1.6モル/リットルのOOPS(2,2−ビス(テトラヒドロフリル)プロパン)のヘキサン溶液209.4mlを添加した後、0.5モル/リットルのジリチウム重合開始剤を223.5ml添加して重合を開始させた。そして、重合リアクターを50℃に昇温しながら、1.5時間重合を行った後、1モル/リットルのエチレンオキシドのシクロヘキサン溶液を220.4ml添加し、更に2時間撹拌した後、50mlのイソプロピルアルコールを添加した。重合体のヘキサン溶液をイソプロピルアルコール中に沈殿させ、充分に乾燥させて重合体ポリオールを得た。この重合体ポリオールは両末端OH基ポリブタジエンであり、重量平均分子量は7500、分子量分布は1.25であった。
【0064】
上記重合体ポリオール120gを、充分に脱水精製したヘキサン1リットルに溶解した後、予め別容器で調製したナフテン酸ニッケル、トリエチルアルミニウム、ブタジエンが1:3:3(モル比)の触媒液を共重合体溶液中のブタジエン部1000モルに対してニッケル1モルになるように仕込んだ。密閉反応容器に水素を27580hPa(400psi)に加圧添加して、110℃にて4時間水添反応を行った。その後、3規定濃度の塩酸で触媒残渣を抽出分離し、さらに遠心分離をして触媒残渣を沈降分離した。その後、水添重合体ポリオールをイソプロピルアルコール中に沈殿させ、更に充分に乾燥を行った。次に、充分に乾燥した水添重合体ポリオール100gをシクロヘキサンに溶解させ、40℃に保ち充分に撹拌しながら2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製:カレンズAOI)をゆっくり滴下した後、更に4時間撹拌を行い、イソプロピルアルコールに沈殿させ乾燥させた。2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートの添加量は、3.75gであった。以上のようにして、液状の光硬化性樹脂であるアクリロイル基含有水添ブタジエン重合体(水添BR)を得た。
【0065】
(ウレタン系UV硬化樹脂の製造)
2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールと無水フタル酸とから得られたポリエステルジオール化合物(数平均分子量 2000)400gとノルボルナンジイソシアナート82.4gと、酸化防止剤のジ−t−ブチル−ヒドロキシ−フェノール0.10gとを、攪拌機、冷却管、温度計を備えた1リットル四ッ口フラスコに加え、80℃で2時間反応させた。次いで2−ヒドロキシエチルアクリレート46.2g、重合禁止剤のp−メトキシフェノール0.10g、チタンテトラ(2−エチル−1−ヘキサノラート)0.06gを加え、85℃で6時間反応させてウレタンオリゴマーを得た。そしてウレタンオリゴマー100gに対し、光重合開始剤である4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン1.5gを加えてウレタン系UV硬化樹脂を得た。
【0066】
(光硬化性組成物の製造)
上述したアクリロイル基含有水添スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロイル基含有水添ブタジエン重合体、ウレタン系UV硬化樹脂を用いて、プラネタリーミキサーで表1に示す配合処方の光硬化性組成物を得た。
【0067】
(実施例1〜4、比較例1〜5)
上述したスチレン系熱可塑性エラストマー組成物からなる基材の表面に、上記光硬化性組成物を塗布し、これにエネルギー線を照射してエラストマー積層体を得た。なお、エネルギー線の光源にはメタルハライドランプを使用し、エネルギー線の照射は、空気雰囲気下、照度160mW/cm2(波長320〜390nm)、積算光量9000mJ/cm2の条件で行った。
そして、得られたエラストマー積層体について、下記の方法で接着性、オイルの染み出しの有無、硬度を評価した。結果を表1に示す。
【0068】
(従来例1)
上述したスチレン系熱可塑性エラストマー組成物からなる基材に関し、下記の方法でオイルの染み出しの有無を評価した。その結果、オイルの染み出しが認められた。
【0069】
(接着性)
スチレン系熱可塑性エラストマーと光硬化性組成物との界面を手で引き裂いて簡単に剥離できるか否かを評価した。材破したものを「○」、剥離したものを「×」とした。
(オイルの染み出しの有無)
光硬化性組成物でコーティングした面を下にしてエラストマー積層体を油取り紙の上に設置した。そして、温度60℃において2kgの重りをエラストマー積層体の上に24時間置いた。目視にてオイルの染み出しの有無を確認し、染み出しの無いものを「○」、染み出しのあるものを「×」とした。
(硬度)
厚さ1mmのエラストマー積層体を重ねて厚さ6mmとし、JIS−A硬度を測定した。
【0070】
【表1】

【0071】
*1 イソボルニルアクリレート、大阪有機化学工業製

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系エラストマーと、オイルとを含有するスチレン系熱可塑性エラストマー組成物からなる基材の表面に、光硬化性樹脂と、(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含有する光硬化性組成物を塗布した後、当該光硬化性組成物にエネルギー線を照射して反応硬化させてなるエラストマー積層体であって、
前記光硬化性樹脂が、光硬化性官能基を含有する水添共役ジエン重合体または水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体、或いは、それらの混合物であることを特徴とする、エラストマー積層体。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレートモノマーのエステル残基が、炭素数12〜18のアルキル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、シクロヘキシル基またはジシクロペンテニル基であることを特徴とする、請求項1に記載のエラストマー積層体。
【請求項3】
前記光硬化性組成物が、前記(メタ)アクリレートモノマーを、前記光硬化性樹脂100質量部に対して1〜150質量部の割合で含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のエラストマー積層体。

【公開番号】特開2010−274586(P2010−274586A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130838(P2009−130838)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】