説明

エラストマー粉体の製造法

【課題】優れた粉体流動性を付与可能なエラストマー粉体の製造法の提供。
【解決手段】JIS K6253規定のA硬度が100以下の粒状エラストマー(A)を粉末状化合物(B)の存在下で粉砕し、平均粒径が0.001mm以上、0.5mm未満の微粉体を製造することを特徴とするエラストマー粉体の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー粉体の製造法に関するものである。更に詳しくは、優れた粉体流動性を付与可能なエラストマー粉体の製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車内装部品等の表皮材は、エラストマー組成物を冷凍粉砕する等の機械的粉砕により得られた熱可塑性エラストマー粉体を、粉末成形することにより製造される。
【0003】
しかしながら、従来の熱可塑性エラストマー粉体は、形状が複雑であるために粉体流動性が劣り、複雑な形状の成形体のエッジ部分にピンホールや欠肉が生じるという問題があった。
【0004】
一方、特定の溶融特性及び特定の性状を有する熱可塑性エラストマー粉体を製造する方法として、溶剤処理法、ストランドカット法、ダイフェースカット法(水中カット法)(下記特許文献1〜3を参照)が知られているが、粉体の流動特性が不十分であるために、このような製造法により得られた熱可塑性エラストマー粉体は、必ずしも市場では満足されていない。
【特許文献1】特開平8−225654号公報
【特許文献2】特開平10−81793号公報
【特許文献3】特開2003−71833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような現状に鑑み、上記のような問題点のない、即ち優れた粉体流動性を有するエラストマー粉体の製造法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、粉体流動性に優れたエラストマー粉体の製法を鋭意検討した結果、特定の製造方法により、驚くべきことに、粉体流動性を飛躍的に向上せしめることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、JIS K6253規定のA硬度が100以下の粒状エラストマー(A)を粉末状化合物(B)の存在下で粉砕し、平均粒径が0.001mm以上、0.5mm未満の微粉体を製造することを特徴とするエラストマー粉体の製造法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造法により得られたエラストマー粉体は、粉体流動性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に関して具体的に説明する。
【0009】
本発明のエラストマー粉体の製造法は、特定の粉末状化合物(B)の存在下で粉砕することが重要である。軟質のエラストマーにせん断力等の外力がかかった時に(B)が存在する場合には、粉砕された粒子の凝集が抑制され、さらに粉体表面に「ヒゲ」状物の生成を抑制することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
以下に本発明の各成分について詳細に説明する。
【0011】
本発明における粒状エラストマー(A)はJIS K6253規定のA硬度が100以下の熱可塑性を有するエラストマーであれば特に制限されない。例えば、ポリブタジエン、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴム及び該ジエン系ゴムを水素添加した飽和重合体ゴム(水素添加共重合体ゴム)、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレ共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレンン−ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)等のエチレン・α―オレフィン共重合体等の非架橋、並びに動的に架橋された熱可塑性エラストマー等である。
【0012】
本発明における(A)である熱可塑性エラストマーの中でもスチレン系及び/またはオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましく、特にはオレフィン系ゴム状重合体(A−1)とオレフィン系樹脂(A−2)とからなるオレフィン系熱可塑性エラストマーであることがより好ましい。上記熱可塑性エラストマーは、架橋剤の存在下に動的に架橋された熱可塑性エラストマーであってもよい。
(A−1)成分
本発明における(A−1)は融点が20〜100℃のオレフィン系ゴム状重合体であることが好ましい。例えば、エチレン−プロピレ共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)等のエチレン・α―オレフィン共重合体等である。
【0013】
また(A−1)は、ガラス転移温度(Tg)が−10℃以下であることが好ましい。
【0014】
そして、(A−1)の100℃で測定したムーニー粘度(ML)(ISO 289−1985(E)準拠)は、20〜150が好ましく、更に好ましくは50〜120である。
【0015】
本発明において(A−1)の中で好ましい。重合体の一つはエチレン・α−オレフィン共重合体であり、エチレンおよび炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体が更に好ましい。α−オレフィンとして、例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1等が挙げられる。中でもヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1が好ましく、特に好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンであり、とりわけプロピレン、ブテン−1、オクテン−1が最も好ましい。
【0016】
また、(A)は必要に応じて、不飽和結合を有する単量体を含有することができ、例えば、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン、1,4−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン誘導体等の環状ジエン化合物、及びアセチレン類が挙げられる。とりわけエチリデンノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCP)が最も好ましい。
【0017】
本発明において(A−1)の好ましい共重合体の一つであるエチレン・α−オレフィン共重合体(以下、(A−1)のエチレン・α−オレフィン共重合体という。)は、公知のメタロセン系触媒を用いて製造することが好ましい。
【0018】
一般にはメタロセン系触媒は、チタン、ジルコニウム等のIV族金属のシクロペンタジエニル誘導体と助触媒からなり、重合触媒として高活性であるだけでなく、チーグラー系触媒と比較して、得られる重合体の分子量分布が狭く、共重合体中のコモノマーである炭素数3〜20のα−オレフィンの分布が均一である。
【0019】
本発明において用いられる(A−1)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、α−オレフィンの共重合比率が1〜60重量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは20〜45重量%である。α−オレフィンの共重合比率は組成物の硬度、引張強度等の観点から60重量%以下が好ましく、一方、柔軟性、機械的強度の観点から1重量%以上が好ましい。
【0020】
(A−1)のエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、0.8〜0.9g/cm3の範囲にあることが好ましい。この範囲の密度を有するエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることにより、柔軟性に優れ、硬度の低い本発明の熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
【0021】
本発明にて用いられる(A−1)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、長鎖分岐を有していることが望ましい。長鎖分岐が存在することで、機械的強度を落とさずに、共重合されているα−オレフィンの比率(重量%)に比して、密度をより小さくすることが可能となり、低密度、低硬度、高強度のエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。長鎖分岐を有するエチレン・α−オレフィン共重合体としては、米国特許明細書第5278272号明細書等に記載されている。
【0022】
また、(A−1)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、室温以上に熱天秤(DSC)の融点ピークを有することが望ましい。融点ピークを有するとき、融点以下の温度範囲では形態が安定しており、取扱い性に優れ、ベタツキも少ない。
【0023】
また、本発明にて用いられる(A−1)のエチレン・α−オレフィン共重合体のメルトインデックスは、0.01〜1000g/10分(230℃、2.16kg荷重(0.212Pa))の範囲のものが好ましく用いられ、更に好ましくは10〜1000g/10分である。上記範囲内では粉体流動性、加工性のバランス特性が優れる。
【0024】
本発明にて用いられる(A−1)は、複数の種類のものを混合して用いても良い。そのような場合には、加工性のさらなる向上を図ることが可能となる。
(A−2)成分
本発明における(A−1)は融点が80〜150℃の結晶性オレフィン系樹脂が好ましい。例えば、エチレン系またはプロピレン系樹脂等の炭素数2〜20であるエチレン及び/またはα−オレフィンの単独もしくは二種以上を含有する共重合樹脂であり、特にプロピレン系樹脂が好ましい。
【0025】
本発明で最も好適に使用されるプロピレン系樹脂を具体的に示すと、ホモのアイソタクチックポリプロピレン、プロピレンとエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1等の他のα−オレフィンとのアイソタクチック共重合樹脂(ブロック、ランダムを含む。)等が挙げられる。
【0026】
本発明において、(A−2)成分の中でも、(A−2−1)エチレンとプロピレンとのランダム共重合樹脂等のプロピレン系ランダム共重合樹脂が好ましい。
【0027】
(A−2−1)の中で最も好ましいプロピレンを主体としたα−オレフィンとのランダム共重合樹脂は、高圧法、スラリー法、気相法、塊状法、溶液法等で製造することができ、重合触媒としてZiegler-Natta触媒、シングルサイト、メタロセン触媒が好ましい。特に狭い組成分布、分子量分布が要求される場合には、メタロセン触媒を用いたランダム共重合法が好ましい。
【0028】
ランダム共重合樹脂の具体的製造法は、欧州特許0969043A1または米国特許5198401に開示されており、液状プロピレンを攪拌機付き反応器に導入した後に、触媒をノズルから気相または液相に添加する。次いで、エチレンガスまたはα−オレフィンを反応器の気相または液相に導入し、反応温度、反応圧力をプロピレンが還流する条件に制御する。重合速度は触媒濃度、反応温度で制御し、共重合組成はエチレンまたはα−オレフィンの添加量により制御する。
【0029】
また、本発明にて好適に用いられるオレフィン系樹脂のメルトインデックスは、0.1〜1000g/10分(230℃、2.16kg荷重(0.212Pa))の範囲のものが好ましく用いられる。上記範囲内では熱可塑性エラストマーの耐熱性、機械的強度、粉体流動性、成形加工性のバランス特性に優れる。
【0030】
本発明において、(A−1)と(A−2)からなる組成物100重量部中の各成分は、(A−1)は1〜99重量%が好ましく、更に好ましくは10〜80重量%、最も好ましくは20〜70重量%であり、(A−2)は1〜99重量%が好ましく、更に好ましくは90〜20重量%、最も好ましくは80〜30重量%である。上記範囲内では、粉体流動性と機械的強度のバランスが向上する。
【0031】
本発明において、(A−1)と(A−2)からなる熱可塑性エラストマーは、別個の(A−1)と(A−2)を押出機で溶融混合したものであっても良いし,また(A−1)と(A−2)を重合時に製造した重合型オレフィン系熱可塑性エラストマーであっても良い。このような重合型オレフィン系熱可塑性エラストマーは、オレフィン系ゴムの分散相とオレフィン系樹脂の連続相からなる重合法によって製造された熱可塑性エラストマーである。通常は多段重合法により製造される。
【0032】
本発明において、多段重合法とは、重合が1回で終了するのではなく、2段階以上の多段重合を行うことにより、複数の種類のポリマーを連続して製造することができる重合法を意味し、機械的な手法を用いて異種類のポリマーからなる混合樹脂を得るところの通常のポリマーブレンド法とは異なる手法である。
【0033】
多段重合法によって得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、反応器中で(1)ハードセグメントと、(2)ソフトセグメントとが二段階以上で多段重合されてなる共重合体である。(1)ハードセグメントとしては、プロピレン単独重合体ブロックや、あるいはプロピレンとα−オレフィンとの共重合体ブロックが代表的であり、例えばプロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/エチレン/1−ブテン等の二元または三元共重合体ブロックが挙げられる。また(2)ソフトセグメントとしては、エチレン単独重合体ブロックおよびエチレンとα−オレフィンとの共重合体ブロックが代表的であり、例えばエチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/プロピレン/1−ブテン等の二元または三元共重合体ブロックが挙げられる。
【0034】
本発明において、必要に応じて(A)に、非晶性オレフィン系重合体(A−3)を添加することができる。(A−3))はエチレン系またはプロピレン系重合体等の炭素数2〜20であるエチレン及び/またはα−オレフィンの単独もしくは二種以上を含有する共重合重合体であり、特にプロピレン系重合体が好ましい。
【0035】
上記(A−3)は、示差走査熱量計(DSC)で測定した場合の1J/g以上の結晶融解ピーク及び結晶化ピークのいずれも有しない点が特徴である。(B)と(C)は結晶融解ピーク及び結晶化ピークの有無で判断される。
【0036】
本発明における上記(A−2)の中で最も好適に使用されるプロピレン系重合体を具体的に示すと、ホモのポリプロピレン、プロピレンとエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1等の他のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
【0037】
また(A−3)は、分子量分布不均一指数Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)が5以下好ましく、更に好ましくは3.5以下である。このような条件を満足させるためには通常、メタロセン触媒を用いて重合することが好ましく、例えば特開平9−309982号公報に触媒構造や重合方法が開示されている。
【0038】
そして、(A−3)のメルトフローレートは、0.1〜1000g/10分(230℃、2.16kg荷重(0.212Pa))の範囲のものが好ましく用いられる。上記範囲内では粉体流動性、成形加工性のバランス特性に優れている。
【0039】
本発明において、(A)の中で(A−3)は、1〜99重量%が好ましく、更に好ましくは10〜90重量%部、最も好ましくは20〜80重量%である。
【0040】
本発明において、(A)はその他の熱可塑性樹脂及び/または熱可塑性エラストマーを配合することができる。
【0041】
本発明の(A)の製造には、通常の樹脂組成物、ゴム組成物の製造に用いられるバンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、2軸押出機、等の一般的な方法を採用することが可能である。とりわけ二軸押出機が好ましく用いられる。二軸押出機は、(A−1)と(A−2)とを均一かつ微細に分散させ、さらに他の成分を添加させて、本発明における熱可塑性エラストマーを連続的に製造するのに、より適している。
【0042】
また本発明において用いられる製造装置の一つの二軸押出機は、二軸同方向回転押出機でも、二軸異方向回転押出機でもよい。また、スクリュ−の噛み合わせについては、非噛み合わせ型、部分噛み合わせ型、完全噛み合わせ型があり、いずれの型でもよい。低いせん断力をかけて低温で均一な樹脂を得る場合には、異方向回転・部分噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。やや大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。さらに大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。
【0043】
本発明のエラストマー粉体の製造法は粒状エラストマー(A)を粉末化合物(B)の存在下で粉砕する。
【0044】
(B)成分
本発明における(B)としての粉末化合物は、例えば、金属石鹸等の有機酸金属塩類、シリカ等の金属酸化物類、炭酸カルシウム等の無機塩類、ワックス類、タルク、珪藻土等の鉱物類、鉄、アルミナ等の金属類、綿、パルプ等の繊維類、粉末状熱可塑性樹脂、安定剤等であり、これらの一種または二種以上を用いることができる。中でも粉末状熱可塑性樹脂、金属酸化物、無機塩類が好ましい。また粉末化合物の平均粒子径は0.01〜300μmが好ましく、さらに好ましくは0.1〜100μm、もっとも好ましくは0.1〜20μmである。
【0045】
前記(B)の一つの粉末化合物としての有機酸金属塩は、例えば酪酸、カプロン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸等の直鎖飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等の直鎖不飽和脂肪酸;イソステアリン酸等の分岐脂肪酸;リシノール酸、12ーヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシル基含有脂肪酸;安息香酸;ナフテン酸;アビエチン酸;デキストロピマル酸等のロジン酸を代表とする有機カルボン酸類のリチウム塩、銅塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、亜鉛塩、カドミウム塩、アルミニウム塩、セリウム塩、チタン塩、ジルコニウム塩、鉛塩、クロム塩、マンガン塩、コバルト塩、ニッケル塩等を挙げることができる。
前記(B)の一つの粉末化合物としての金属酸化物類は、例えば酸化亜鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、ケイ酸アルミニウム、シリカ(酸化ケイ素)、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化バリウム、二酸化マンガン、酸化マグネシウム等を挙げることができ、特にアルミナ、鉱物類としても挙げられているシリカが好ましい。
前記(B)の一つの粉末化合物として無機塩類は、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等を挙げることができる。
【0046】
前記(B)の一つの粉末化合物としてのワックス類は、オルガノシロキサン系ワックス、ポリオレフィンワックス、ポリカプロラクトン等を挙げることができる。
【0047】
前記(B)の一つの粉末化合物としての熱可塑性樹脂は、後述の(C)を粉砕して得られた粉末状熱可塑性樹脂である。
【0048】
前記(B)の一つの粉末化合物としての安定剤は、紫外線吸収剤、ヒンダ−ドアミン系光安定剤、酸化防止剤、活性種捕捉剤、金属不活性剤、または消光剤から選ばれる一種または二種以上の安定剤を挙げることができる
本発明において、もっとも好ましい(B)は、オレフィン系ワックスであり、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを含有し、とりわけメタロセン触媒を用いて製造されることが好ましく、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により算出される重量平均分子量(Mw)が3000〜20000であり、好ましくは3000〜15000であり、更に好ましくは5000〜10000であり、数平均分子量(Mn)が500〜10000であり、好ましくは500〜8000であり、更に好ましくは1000〜5000である。
【0049】
従来のオレフィン系ワックスは、オリゴマー領域の低分子量成分を含んでいるためにベタツキが多く、悪臭を放つ場合が多いが、チタン、ジルコニウム等のIV族金属のシクロペンタジエニル誘導体と助触媒からなるメタロセン触媒により製造されたオレフィン系ワックスは、分子量分布が狭いだけでなく、共重合体の場合には、コモノマーである炭素数3〜20のα−オレフィンの分布が均一であるためにベタツキや悪臭が少ない。
【0050】
(B)の添加量は、(A)100重量部に対して、好ましくは0.05〜50重量部、更に好ましくは、0.1〜20重量部、最も好ましくは、0.2〜5重量部である。
【0051】
本発明のエラストマー粉体の製造法は、本発明の要件を満足しておれば特に制限されない。平均粒系は、0.001mm以上、0.5mm未満であり、好ましくは0.01mm以上、0.5mm未満であり、更に好ましくは0.1mm以上、0.5mm未満である。製法については、たとえば、熱可塑性エラストマーを室温またはそのガラス転移温度以下でミルを用いて粉砕する機械粉砕法、該エラストマーをそのガラス転移温度以下の温度で粉砕し、次いで溶剤処理して球状化する溶剤処理法、押出機等を用いて溶融した該エラストマーを複数の孔を有するダイスから押出してストランドとし、次いでこれを引き取り、あるいは引き伸ばしながら引き取り、冷却後に切断するストランドカット法、上記と同様に複数の孔を有するダイスを通して水中に押出した後、ダイス面に沿って回転するカッターにより切断する水中カット法等が知られている。
【0052】
本発明の製法は上記の製法を組み合わせても良いし、単独の製法を用いても良い。微粉体の平均粒子径の調整法については、使用する機械、装置によりその具体的な条件を一義的に決めることはできないが、例えば、機械粉砕法の場合は粉砕機の刃またはピンのクリアランスや回転数、粉砕時間を制御することにより可能であり、所望の平均粒子径の微粉体を製造することができる。例えば、粉体の平均粒子径を小さくする場合は粉砕機の回転速度を高め、大きくする場合には回転速度を低くする。
【0053】
また水中カット法を用いる場合は、粉体の形状は、ダイスの孔径と孔数及びダイス面に沿って回転するカッターの回転数により制御することができる。平均直径を小さくする場合は、孔数を増やし、かつ孔径を小さくことにより達成することができる。
【0054】
こうして得られたエラストマー粉体は任意の成形方法で各種成型品の製造が
可能である。特に粉体成形等が好ましく用いられる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、これら実施例および比較例において、各種物性の評価に用いた試験法は以下の通りである。
(1)エラストマー粉体の平均直径
電子顕微鏡により粉体の数平均粒子直径を算出する。すなわち、各粉体の断面を円と仮定し、長径と短径の算術平均を各粉体の平均直径とし、100個の粉体の平均直径の算術平均により数平均粒子直径を求める。
(2)粉体流動性
10gの粉体を容器に入れ、10cmの高さから落下させて、粉体の広がりを観察する。落下した粉体の広がりを円と仮定して、長径と短径の算術平均を平均広がり直径とし、粉体流動性の指標とする。
【0056】
粉体流動性は以下の基準で評価を行なう。
【0057】
◎ 広がりの範囲は広く、極めて均一である。
【0058】
○ 均一に広がっている。
【0059】
△ 全体として均一であるが、不均一な部分も存在している。
【0060】
× 広がりはなく、不均一である。
【0061】
実施例、比較例で用いる各成分は以下のものを用いる。
(イ)ゴム状重合体
(オレフィン系ゴム状重合体)
1)エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン(ENB)共重合体(TPE−1)
特開平3ー163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/プロピレン/ENBの組成比は、72/24/4(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。(TPE−1と称する)
2)エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン(ENB)共重合体(TPE−2)通常のチーグラー触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/プロピレン/ENBの組成比は、72/24/4(重量比)であり、ムーニー粘度は105である。(TPE−2と称する)
3)エチレンとオクテン−1との共重合体(TPE−3)
特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造した。共重合体のエチレン/オクテン−1の組成比は、72/28(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。(TPE−3と称する)
4)水素添加ブタジエン重合体
WO01/48079号公報に記載の方法に基づき、ブタジエン重合体を水素添加することにより製造する。ムーニー粘度は100である。(H−BRと称する)
(スチレン系重合体)
1)水素添加スチレン・ブタジエンランダム共重合体
WO01/48079号公報に記載の方法に基づき、スチレン・ブタジエンランダム共重合体を水素添加することにより製造する。前駆体の共重合体のスチレン/ブタジエンの組成比は、70/30(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。(H−SBRと称する)
2)水素添加スチレン・ブタジエンブロック共重合体
市販のSEBS(スチレン/エチレン・ブチレン=70/30重量比)(SEBS−1と称する)
市販のSEBS(スチレン/エチレン・ブチレン=30/70重量比)(SEBS−2と称する)
市販のSEPS(スチレン/エチレン・プロピレン=30/70重量比)(SEPSと称する)
(ロ)オレフィン系樹脂
(1)ポリプロピレン
市販のランダムポリプロピレン(r−PPと称する) 融点135℃
MFR 30g/10分
(2)重合型ポリプロピレン
市販のプロピレンとエチレン・プロピレンゴムからなる重合型(R−TPOと称する)
融点100℃ MFR 30g/10分
(ハ)粉末状化合物:オレフィン系ワックス
公知のメタロセン触媒またはチーグラー触媒を用いた方法によりポリプロピレンワックスを製造する。
【0062】
メタロセン触媒で製造されたMw:6000、Mn:4000ポリプロピレンワックスを、M−PPと称し、チーグラー触媒で製造されたMw:6000、Mn:4000ポリプロピレンワックスを、Z−PPと称する。
【0063】
[実施例1〜12および比較例1]
押出機として、2条スクリューを有した2軸押出機を用い、表1に記載の組成(重量部)の混合物を180℃で溶融押出を行ないペレットを得る。
【0064】
このようにして得られたペレットをピンが立てられたディスクミル[ターボ工業[株]製、TURBO DISK MILL TD−300]で周速度70m/分の条件で−30℃で10分間粉砕し粉体を得る。
その結果を表1に示した。
【0065】
【表1】



【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の製法により得られたエラストマー粉体は、自動車用部品、自動車用内装材、エアバッグカバー、機械部品、電気部品、ケーブル、ホース、ベルト、玩具、雑貨、日用品、建材、シート、フィルム等を始めとする用途に幅広く使用可能であり、産業界に果たす役割は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS K6253規定のA硬度が100以下の粒状エラストマー(A)を粉末状化合物(B)の存在下で粉砕し、平均粒径が0.001mm以上、0.5mm未満の微粉体を製造することを特徴とするエラストマー粉体の製造法。
【請求項2】
(B)が有機酸金属塩類、金属酸化物類、無機塩類、金属、有機ワックス、粉末状熱可塑性樹脂から選ばれる一種以上の粉末化合物である請求項1に記載のエラストマー粉体の製造法。
【請求項3】
(B)の有機ワックスが、オレフィン系ワックスであり、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを含有する、メタロセン触媒を用いて製造され、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により算出される重量平均分子量(Mw)が3000〜20000であり、数平均分子量(Mn)が500〜10000である請求項1または2に記載のエラストマー粉体の製造法。
【請求項4】
粗粉体に更に(B)を添加して粉砕する請求項3に記載のエラストマー粉体の製造法。
【請求項5】
該エラストマー(A)がJIS K7210規定の、230℃、2.16kgf荷重のメルトフローレート(MFR)が10〜1000g/10分である請求項1〜4のいずれかに記載のエラストマー粉体の製造法。
【請求項6】
エラストマー(A)がオレフィン系熱可塑性エラストマーである請求項1〜5のいずれかに記載のエラストマー粉体の製造法。
【請求項7】
(A)がオレフィン系ゴム状重合体(A−1)とオレフィン系樹脂(A−2)とからなるオレフィン系熱可塑性エラストマーである請求項1〜6のいずれかに記載のエラストマー粉体の製造法。
【請求項8】
(A−1)の融点が20〜100℃のオレフィン系ゴム状重合体及び/または(A−2)の融点が80〜150℃の結晶性オレフィン系樹脂である請求項7に記載のエラストマー粉体の製造法。
【請求項9】
(A−1)がエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを含有する、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体である請求項7又は8のいずれかに記載のエラストマー粉体の製造法。
【請求項10】
(A−2)がプロピレン系樹脂である請求項7〜9のいずれかに記載のエラストマー粉体の製造法。
【請求項11】
(A)が架橋されている請求項1〜10のいずれかに記載のエラストマー粉体の製造法。
【請求項12】
溶融押出機で溶融後、水中カット法及び/または機械粉砕法で製造する、請求項1〜11のいずれかに記載のエラストマー粉体の製造法。

【公開番号】特開2008−214519(P2008−214519A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55037(P2007−55037)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】