説明

エリア入退場判断装置、エリア入退場判断方法及びエリア入退場判断プログラム

【課題】センサ情報の誤差の影響を受けることなく、適切にエリア退場の判断を行うエリア入退場判断装置を提供することにある。
【解決手段】エリア入退場判断装置は、所定エリアに関するエリア範囲情報を有するエリア情報を保持しており、エリア入場判断用位置情報を取得し、上記エリア入場判断用位置情報と、上記エリア範囲情報とを用いてエリアに入場しているか否かを判断し、車両がエリアに入場した後に、衛星航法によりエリア退場判断用位置情報を取得し、上記エリア退場判断用位置情報とエリア範囲情報とを用いて、車両がエリアから退場したか否かを判断する。このように、エリア入退場判断装置は、衛星航法により取得した位置情報を用いて、エリアの範囲から逸脱したか否かを判断しているので、車両がエリア内で走行した際に生じたセンサ誤差の影響を受けることなく、適切に車両がエリアから退場したか否かを判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の特定エリアへの入退場を判断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、地図情報に安全運転地域のエリア情報を保持し、当該安全運転地域のエリアに入場したことを検出すると、車両の走行トルクを制限する車両用安全運転支援装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−326573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の車両用安全運転支援装置は、各種センサ(例えば、加速度センサ等)による出力値に基づいて特定した現在位置を用いてエリアへの入退場判定を行っている。しかし、車両が周回するエリア(例えば、立体駐車場等)の場合、退場判定時に、センサ誤差を蓄積することが考えられるため、退場判定時に誤判断をする可能性があるという問題点があった。
【0005】
本願発明が解決しようとする課題としては、上記のようなものが例として挙げられる。本発明の目的は、センサ情報の誤差の影響を受けることなく、適切に車両のエリア退場の判断を行うエリア入退場判断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、車両に搭載されているエリア入退場判断装置であって、エリア範囲情報を有するエリア情報を保持するエリア情報保持手段と、エリア入場判断用位置情報を取得するエリア入場判断用位置情報取得手段と、前記エリア入場判断用位置情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリア内に入場したか否かを判断する入場判断手段と、入場判断後に、衛星航法を用いてエリア退場判断用位置情報を取得するエリア退場判断用位置情報取得手段と、前記エリア退場判断用位置情報に基づく情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリアから退場したか否かを判断する退場判断手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項5に記載の発明は、車両に搭載され、エリア範囲情報を有するエリア情報を保持する装置で行うエリア入退場判断方法であって、エリア入場判断用位置情報を取得するエリア入場判断用位置情報取得工程と、前記エリア入場判断用位置情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリア内に入場したか否かを判断する入場判断工程と、入場判断後に、衛星航法を用いてエリア退場判断用位置情報を取得するエリア退場判断用位置情報取得工程と、前記エリア退場判断用位置情報に基づく情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリアから退場したか否かを判断する退場判断工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項6に記載の発明は、車両に搭載され、コンピュータを備え、エリア範囲情報を有するエリア情報を保持する装置で行うエリア入退場判断プログラムであって、エリア入場判断用位置情報を取得するエリア入場判断用位置情報取得手段、前記エリア入場判断用位置情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリア内に入場したか否かを判断する入場判断手段、入場判断後に、衛星航法を用いてエリア退場判断用位置情報を取得するエリア退場判断用位置情報取得手段、前記エリア退場判断用位置情報に基づく情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリアから退場したか否かを判断する退場判断手段、として前記コンピュータを機能させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】サーキット場の図である。
【図2】サーキット場のエリア退場判定の問題点の説明に供する図である。
【図3】ナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】エリア入退場判断装置の機能ブロック図である。
【図5】エリア情報テーブルのデータ構造を示す図である。
【図6】エリア入退場判断処理のフローチャートである。
【図7】誤差円を利用した退場判断方法の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な実施形態では、車両に搭載されているエリア入退場判断装置であって、エリア範囲情報を有するエリア情報を保持するエリア情報保持手段と、エリア入場判断用位置情報を取得するエリア入場判断用位置情報取得手段と、前記エリア入場判断用位置情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリア内に入場したか否かを判断する入場判断手段と、入場判断後に、衛星航法を用いてエリア退場判断用位置情報を取得するエリア退場判断用位置情報取得手段と、前記エリア退場判断用位置情報に基づく情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリアから退場したか否かを判断する退場判断手段と、を備える。
【0011】
上記のエリア入退場判断装置は、具体的には、車載のナビゲーション装置等に提供できる。上記のエリア入退場判断装置は、所定エリアに関するエリア範囲情報を有するエリア情報を保持している。エリア入場判断用位置情報取得手段がエリア入場判断用位置情報を取得する。ここでいうエリア入場判断用位置情報とは、GPS(Global Positioning System)受信機を介して取得したGPS信号や、自立測位装置(加速度センサ等)から検出したデータ等を用いて得た位置情報をいう。入場判断手段は、上記エリア入場判断用位置情報と、上記エリア範囲情報とを用いてエリアに入場しているか否かを判断する。エリア退場判断用位置情報取得手段は、車両がエリアに入場した後に、衛星航法によりエリア退場判断用位置情報を取得する。衛星航法により位置情報を取得する方法として、GPS受信機を介して取得したGPS信号に基づいて位置情報を取得する方法等がある。衛星航法により取得した位置情報は、センサ情報に比して、実際の車両位置との誤差が少ないという特徴がある。退場判断手段は、上記エリア退場判断用位置情報とエリア範囲情報とを用いて、車両がエリアから退場したか否かを判断する。
【0012】
このように、エリア入退場判断装置は、衛星航法により取得した位置情報を用いて、エリアの範囲から逸脱したか否かを判断しているので、車両がエリア内で走行した際に生じたセンサ誤差の影響を受けることなく、適切に車両がエリアから退場したか否かを判断することができる。
【0013】
上記のエリア入退場判断装置の一態様では、前記退場判断手段は、前記エリア退場判断用位置情報の測位誤差範囲と、前記エリア範囲情報とに基づいて、前記車両がエリアから退場したか否かを判断する。この場合、エリア入退場判断装置は、衛星航法時の測位誤差を考慮した範囲に基づいて、エリアから退場したか否かを判断するので、測位誤差による誤判断を防止することができる。
【0014】
本発明の他の観点では、上述のエリア入退場判断装置と、前記車両の速度制限を制御する速度制御手段と、を備える速度制限制御装置であって、前記エリアは、速度制御解除許可地域であり、前記速度制御手段は、前記車両が前記速度制御解除許可地域へ入場した場合に、前記車両の速度制限を解除し、前記車両が前記速度制御解除許可地域から退場した場合に、前記車両の速度制限を設定する。上記速度制限解除許可地域の例として、サーキット場などがある。このように、速度制限制御装置は、バンク路による傾斜走行や、高速走行によるタイヤのスリップにより自立測位センサのセンサ誤差が著しく発生しやすいサーキット場においても、衛星航法による位置情報に基づいてエリア退場の判断を行えば、適切に車両がエリアから退場したか否かを判断することができ、さらに速度制限に関する制御を適切に行うことができる。
【0015】
上記の速度制限制御装置の一態様では、前記退場判断手段は、車両の速度制限解除がなされた後に、前記車両が前記速度制御解除許可地域内から退場したか否かを判断する。この場合、車両が偶然速度制御解除許可地域付近を通過した時に、車両が速度制御解除許可地域に入場していないにも関わらず測位誤差等により車両が入場したと、速度制限制御装置が判断してしまった場合に、誤って退場判断を行ってしまうことを防止することができる。
【0016】
本発明の他の観点では、車両に搭載され、エリア範囲情報を有するエリア情報を保持する装置で行うエリア入退場判断方法であって、エリア入場判断用位置情報を取得するエリア入場判断用位置情報取得工程と、前記エリア入場判断用位置情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリア内に入場したか否かを判断する入場判断工程と、入場判断後に、衛星航法を用いてエリア退場判断用位置情報を取得するエリア退場判断用位置情報取得工程と、前記エリア退場判断用位置情報に基づく情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリアから退場したか否かを判断する退場判断工程と、を備える。
【0017】
このような、エリア入退場判断方法によっても、衛星航法により取得した位置情報を用いて、エリアの範囲から逸脱したか否かを判断しているので、車両がエリア内で走行した際に生じたセンサ誤差の影響を受けることなく、適切に車両がエリアから退場したか否かを判断することができる。
【0018】
本発明の他の観点では、車両に搭載され、コンピュータを備え、エリア範囲情報を有するエリア情報を保持する装置で行うエリア入退場判断プログラムであって、エリア入場判断用位置情報を取得するエリア入場判断用位置情報取得手段、前記エリア入場判断用位置情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリア内に入場したか否かを判断する入場判断手段、入場判断後に、衛星航法を用いてエリア退場判断用位置情報を取得するエリア退場判断用位置情報取得手段、前記エリア退場判断用位置情報に基づく情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリアから退場したか否かを判断する退場判断手段、として前記コンピュータを機能させる。
【0019】
このような、エリア入退場判断プログラムを、各種装置上で実行することにより、本発明のエリア入退場判断装置を実現することができる。なお、上記エリア入退場判断プログラムは、記録媒体に記録した状態で好適に取り扱うことができる。
【実施例】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0021】
[概要]
本願発明における、エリア入退場判断装置は、車両の特定エリア(例えば、サーキット場など)への入退場を判断する装置であり、エリア入退場判断装置が保持しているエリア範囲情報と、上記エリア入退場判断装置を搭載している車両の現在位置とを比較することにより、車両がエリア内へ入場しているか否かを判断する。そして、エリア入退場判断装置は、上記車両がエリアへ入場した後に、衛星航法で位置情報を取得し、当該衛星航法で取得した位置情報とエリア範囲情報とを比較して、車両がエリアから退場したか否かを判断する。
【0022】
図1に示すようなサーキット場400を車両が高速走行した場合、当該車両に搭載されているナビゲーション装置が加速度センサや車速センサ等の出力結果に基づいて車両の位置を判断すると、タイヤのスリップの影響やバンク路の走行により、加速度センサ等の検出結果に誤差が生じるので、ナビゲーション装置が取得した現在位置が実際の走行位置と異なってしまう。
【0023】
この場合、図2(A)に示す経路410Aの通りに車両が走行しているにも関わらず、上述のようなタイヤのスリップの影響やバンク路走行により、ナビゲーション装置は、経路410Bのように走行していると判断することとなってしまう。そして、車両が上記サーキット場400を何周も回ると、センサ誤差が蓄積されてしまう。この結果、ナビゲーション装置は、車両がサーキット場400内を走行しているにも関わらず、車両がサーキット場400のエリア範囲420を逸脱していると判断してしまうことになる。
【0024】
このように、車両の特定エリアへの入退場を判断する場合、ナビゲーション装置は、加速度センサ等の検出結果による自車位置情報とエリア範囲情報とを用いて、車両がそのエリアを退場しているか否かの判断をすると、実際には車両がサーキット場400から退場していないにも関わらず、車両がサーキット場400から退場していると誤判断する可能性がある。
【0025】
そこで、本願発明のエリア入退場判断装置は、サーキット場400への入場後については、GPS信号に基づいた位置情報を取得し、当該位置情報及びエリア範囲情報を用いて、退場したか否かを判断する。
【0026】
GPS信号に基づいて現在位置を特定すると、適宜衛星から最新の位置情報を取得するため、車速センサや加速度センサ等に基づいて自車位置を求める場合のように誤差を溜め込むことがない。よって、本願発明のエリア入退場判断装置は、GPS信号に基づいて車両の走行経路を特定すると、図2(B)に示す経路410Cのようになり、実際に走行していた経路410Aとそれほど異ならない。
【0027】
このように、本願発明のエリア入退場判断装置は、車両がエリアから退場したか否かの判断について、実際の位置とそれほど差がない、GPS信号に基づいた位置情報を用いて行うので、車両がエリアから退場したか否かを適切に判断することができる。なお、当該エリア入退場判断装置は、ナビゲーション装置に適用することができる。ここで、以下に、ナビゲーション装置の構成について、説明する。
【0028】
[ナビゲーション装置]
図3に、本発明の実施例に係るナビゲーション装置200の構成を示す。図3に示すように、ナビゲーション装置200は、自立測位装置10、GPS受信機18、システムコントローラ20、ディスクドライブ31、データ記憶ユニット36、通信用インタフェース37、通信装置38、表示ユニット40、音声出力ユニット50、入力装置60及び車両用通信装置70を備える。
【0029】
自立測位装置10は、加速度センサ11、角速度センサ12及び距離センサ13を備える。加速度センサ11は、例えば圧電素子からなり、車両の加速度を検出し、加速度データを出力する。角速度センサ12は、例えば振動ジャイロからなり、車両の方向変換時における車両の角速度を検出し、角速度データ及び相対方位データを出力する。距離センサ13は、車両の車輪の回転に伴って発生されているパルス信号からなる車速パルスを計測する。
【0030】
GPS受信機18は、複数のGPS衛星から、測位用データを含む下り回線データを搬送する電波19を受信する。測位用データは、緯度及び経度情報等から車両の絶対的な位置を検出するために用いられる。
【0031】
システムコントローラ20は、インタフェース21、CPU(Central Processing Unit)22、ROM(Read Only Memory)23及びRAM(Random Access Memory)24を含んでおり、ナビゲーション装置200全体の制御を行う。
【0032】
インタフェース21は、加速度センサ11、角速度センサ12及び距離センサ13並びにGPS受信機18とのインタフェース動作を行う。そして、これらから、車速パルス、加速度データ、相対方位データ、角速度データ、GPS測位データ、絶対方位データ等をシステムコントローラ20に入力する。CPU22は、システムコントローラ20全体を制御する。ROM23は、システムコントローラ20を制御する制御プログラム等が格納された図示しない不揮発性メモリ等を有する。RAM24は、入力装置60を介して利用者により予め設定された経路データ等の各種データを読み出し可能に格納したり、CPU22に対してワーキングエリアを提供したりする。
【0033】
システムコントローラ20、CD−ROMドライブ又はDVD−ROMドライブなどのディスクドライブ31、データ記憶ユニット36、通信用インタフェース37、表示ユニット40、音声出力ユニット50及び入力装置60は、バスライン30を介して相互に接続されている。
【0034】
ディスクドライブ31は、システムコントローラ20の制御の下、CD又はDVDといったディスク33から、音楽データ、映像データなどのコンテンツデータを読み出し、出力する。なお、ディスクドライブ31は、CD−ROMドライブ又はDVD−ROMドライブのうち、いずれか一方としても良いし、CD及びDVDコンパチブルのドライブとしても良く、また、テレビチューナを内蔵したハードディスクレコーダでも良い。
【0035】
データ記憶ユニット36は、例えば、HDDなどにより構成され、地図データや施設データなどのナビゲーション処理に用いられる各種データを記憶する。
【0036】
通信装置38は、例えば、FMチューナやビーコンレシーバ、携帯電話や専用の通信カードなどにより構成され、通信用インタフェース37を介して、VICS(Vehicle Information Communication System)センタから配信される渋滞や交通情報などの道路交通情報を受信したり、所定のサーバからの種々の情報(例えば、天気情報等)を受信したりする。
【0037】
表示ユニット40は、システムコントローラ20の制御の下、各種表示データをディスプレイなどの表示装置に表示する。具体的には、システムコントローラ20は、データ記憶ユニット36から地図データを読み出す。表示ユニット40は、システムコントローラ20によってデータ記憶ユニット36から読み出された地図データを、ディスプレイなどの表示画面上に表示する。表示ユニット40は、バスライン30を介してCPU22から送られる制御データに基づいて表示ユニット40全体の制御を行うグラフィックコントローラ41と、VRAM(Video RAM)等のメモリからなり即時表示可能な画像情報を一時的に記憶するバッファメモリ42と、グラフィックコントローラ41から出力される画像データに基づいて、液晶、CRT(Cathode Ray Tube)等のディスプレイ44を表示制御する表示制御部43と、ディスプレイ44とを備える。ディスプレイ44は、例えば対角5〜10インチ程度の液晶表示装置等からなり、車内のフロントパネル付近に装着される。
【0038】
音声出力ユニット50は、システムコントローラ20の制御の下、ディスクドライブ31、又はRAM24等からバスライン30を介して送られる音声デジタルデータのD/A(Digital to Analog)変換を行うD/Aコンバータ51と、D/Aコンバータ51から出力される音声アナログ信号を増幅する増幅器(AMP)52と、増幅された音声アナログ信号を音声に変換して車内に出力するスピーカ53とを備えて構成されている。
【0039】
入力装置60は、各種コマンドやデータを入力するための、キー、スイッチ、ボタン、リモコン、音声入力装置等から構成されている。入力装置60は、車内に搭載された当該車載用電子システムの本体のフロントパネルやディスプレイ44の周囲に配置される。また、ディスプレイ44がタッチパネル方式である場合には、ディスプレイ44の表示画面上に設けられたタッチパネルも入力装置60として機能する。
【0040】
車両用通信装置70は、車載ネットワークを介して車両から種々の情報を送受信するための装置である。具体例として、CAN(Controller Area Network)等がある。
【0041】
[エリア入退場判断装置]
図4に、エリア入退場判断装置300の機能構成を示す。エリア入退場判断装置300は、実体的には、ナビゲーション装置200の構成要素により構成される。エリア入退場判断装置300は、図示のように、自立測位装置10と、GPS受信機18と、システムコントローラ20と、データ記憶ユニット36と、通信装置38と、表示ユニット40と、入力装置60と、車両用通信装置70とを備える。データ記憶ユニット36は、地図情報DB120等、各種情報を記憶する。なお、地図情報DB120では、種々の地図情報を管理する。ここでいう地図情報には、後述するエリア情報テーブルを含む。システムコントローラ20は、入場判断用位置情報取得部101と、入場判断部102と、退場判断用位置情報取得部103と、退場判断部104と、速度制御部105とを備える。即ち、システムコントローラ20が所定のプログラムを実行することにより、入場判断用位置情報取得部101と、入場判断部102と、退場判断用位置情報取得部103と、退場判断部104と、速度制御部105とを実現する。
【0042】
入場判断用位置情報取得部101は、自立測位装置10やGPS受信機18から位置情報(例えば、緯度経度情報)を取得する。これにより、エリア入退場判断装置300は、車両の現在位置を特定することができる。
【0043】
入場判断部102は、地図情報DB120に格納されているエリア情報テーブルで管理されているエリア情報のエリア範囲情報と、入場判断用位置情報取得部101が取得した位置情報とを比較して、車両がエリアに入場したか否かを判断する。具体的には、入場判断部102は、上記エリア範囲情報に基づくエリアに位置情報が含まれる場合、車両がエリアに入場したと判断する。なお、入場判断部102は、車両がエリアに入場したと判断した際に、入場したエリアに関するエリア情報を所定の領域(例えば、RAM24等)に保持しておく。
【0044】
ここで、地図情報DB120に格納されているエリア情報テーブルのデータ構造を図5に示す。図5に示すように、エリア情報テーブルは、エリアID351、エリア名称352、及びエリア範囲情報353を有するエリア情報を管理する。
【0045】
エリアID351は、エリア情報を一意に識別する識別子である。エリア名称352は、エリアの名称である。エリア範囲情報353は、エリアの入退場についての判断に用いるエリアの範囲情報である。具体的に、エリアの範囲が、矩形で表現されている場合は、矩形を構成する各座標点の座標がエリアの範囲情報となる。また、エリアの範囲が、円で表現されている場合は、中心点の座標情報と、半径の長さとがエリアの範囲情報となる。
【0046】
退場判断用位置情報取得部103は、GPS受信機18が取得したGPS信号に基づいて位置情報を取得する。
【0047】
退場判断部104は、車両が入場したと入場判断部102が判断したエリアに対応するエリア情報のエリア範囲情報353と、退場判断用位置情報取得部103が取得した位置情報とを比較して、車両がエリアから退場したか否かを判断する。具体的には、上記のエリア範囲情報353に基づくエリア範囲から、退場判断用位置情報取得部103が取得した位置情報が逸脱した場合に、退場判断部104は、車両がエリアから退場したと判断する。
【0048】
速度制御部105は、車両が所定のエリア(例えば、サーキット場400)に入場した場合に、車両の速度制限を解除し、当該エリアから退場した場合に車両に対して速度制限を設定する。
【0049】
本実施例では、エリア情報テーブルが格納されている地図情報DB120がエリア情報保持手段として機能する。また、本実施例におけるエリア入退場判断装置300は、速度制限制御装置としても機能する。
【0050】
[エリア入退場判断方法]
次に、本実施例によるエリア入退場判断方法について説明する。本実施例におけるエリア入退場判断方法とは、車両の現在位置と、エリア入退場判断装置300で保持しているエリア情報におけるエリア範囲情報353とを用いて、車両がエリアへ入場したか否かを判断し、車両がエリアへ入場した後に、GPS信号に基づいて車両の現在位置を特定し、当該現在位置と、エリア範囲情報353とを用いてエリアから退場したか否かを判断すると共に、エリアの入退場の状態に応じて車両の速度制御を行う方法をいう。
【0051】
最初に、入場判断用位置情報取得部101は、自立測位装置10やGPS受信機18等を用いて位置情報を取得する。なお、入場判断用位置情報取得部101は、定期的に、位置情報を取得しているものとする。そして、入場判断部102は、上記位置情報と、エリア情報のエリア範囲情報353とを用いて、車両がエリアに入場したか否かを判断する。車両がエリアに入場している場合、エリア入退場判断装置300は、エリアに入場した旨を車両側へ車両用通信装置70を介して通知する。速度制御部105は、車両用通信装置70を介して車両から速度制限解除通知を受信した後に、車両の速度制限を解除する。エリア入退場判断装置300は、この段階で退場判断を行う。
【0052】
そして、退場判断用位置情報取得部103は、GPS信号に基づいて、エリア入場後の位置情報を取得する。そして、退場判断部104は、エリア入場後の位置情報と、エリア範囲情報353とを用いて、車両がエリアから退場したか否かを判断する。車両がエリアから退場している場合、速度制御部105は、車両の速度制限を設定する。
【0053】
このように、エリア入退場判断装置300は、位置情報と、エリア入退場判断装置300で保持しているエリア情報におけるエリア範囲情報353とを用いて、車両が特定のエリア(例えば、サーキット場400)に入場しているか否かを判断し、エリア入退場判断装置300を搭載している車両が、エリアに入場した後に、GPS信号に基づいた位置情報と、エリア範囲情報353とを用いて、車両がエリアから退場したか否かを判断し、エリアの入退場の状態によって車両の速度制御の状態を変更している。
【0054】
エリア入退場判断装置300は、車両が入場した後、GPS信号に基づいた位置情報を取得し、当該位置情報を用いてエリアから退場したか否かを判断している。GPS信号に基づいた位置情報は、加速度センサ等に基づいた位置情報に比して実際の位置との誤差が少ないので、エリア入退場判断装置300は、適切に、車両がエリアから退場したか否かを判断することができる。つまり、エリア入退場判断装置300は、実際には車両がエリアから退場していないにも関わらず、センサ誤差の影響により、誤って速度制限を設定してしまうことを回避することができる。
【0055】
入退場の判断となるエリアがサーキット場400のようにバンク路がある場所であり、かつ、車両がそのエリア内を高速走行する場合、バンク路の傾斜の影響を受けたり、頻繁に生じ得るスリップ走行の影響を受けたりすることにより、当該車両に搭載されたナビゲーション装置が加速度センサ等のセンサ情報を用いて車両の位置を特定すると、センサ誤差の影響により、実際の車両位置と異なることになる。
【0056】
また、車両が上記サーキット場400内を周回すると、より多くのセンサ誤差が蓄積される。エリア入退場判断装置300は、実際の位置とそれほど誤差のないGPS信号に基づいて車両の位置を特定し、当該車両位置に基づいて、エリアから退場したか否かを判断する。
【0057】
よって、エリア入退場判断装置300は、実際には、エリア内に車両が位置しているにも関わらず、上記センサ誤差の影響により、車両がエリアから退場していると誤って判断してしまうことを回避することができる。従って、エリア入退場判断装置300は、車両のエリアに対する入退場に応じた速度制限の制御を適切に行うことができる。
【0058】
また、エリア入退場判断装置300は、速度制限が解除されてから退場判断を行っている。この場合、車両が偶然サーキット場400付近を通過した時に、車両が正式にサーキット場400に入場していないにも関わらず測位誤差等により車両が入場したと、エリア入退場判断装置300が判断してしまった場合に、誤って退場判断を行ってしまうことを防止することができる。
【0059】
[エリア入退場判断処理]
以下に、エリア入退場判断処理の手順について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。この処理は、エリア入退場判断装置300のシステムコントローラ20が、予め用意されたプログラムを実行することにより実現される。
【0060】
ここで、エリア入退場判断処理とは、車両の位置情報と、エリア範囲情報353とを用いて、車両がエリアに入場したか否かを判断し、エリア入場後については、GPS信号に基づいた位置情報とエリア範囲情報353とを用いて、車両がエリアから退場したか否かを判断し、エリアの入退場の状態によって速度制限の制御状態を決定する処理をいう。
【0061】
まず、入場判断用位置情報取得部101は、車両の位置情報を取得する(ステップS1)。そして、入場判断部102は、位置情報と、エリア情報のエリア範囲情報353とを用いて、車両がエリアに入場しているか否かを判断する(ステップS2)。車両がエリアに入場していない場合は(ステップS3;No)、ステップS1へ移行する。
【0062】
車両がエリアに入場している場合(ステップS3;Yes)、車両から速度制限解除通知を受信した後に、速度制御部105は、速度制限を解除する(ステップS4)。
【0063】
そして、退場判断用位置情報取得部103は、GPS信号に基づいた位置情報を取得し(ステップS5)、退場判断部104は、退場判断用位置情報取得部103が取得した位置情報と、エリア情報のエリア範囲情報353とを用いて、車両がエリアから退場しているか否かを判断する(ステップS6)。車両がエリアから退場していない場合は(ステップS7;No)、ステップS5へ移行する。
【0064】
車両がエリアから退場した場合は(ステップS7;Yes)、速度制御部105は、速度制限を設定し(ステップS8)、処理を終了する。
【0065】
以上述べたように、エリア入退場判断装置300は、車両に搭載されているエリア入退場判断装置であって、エリア範囲情報を有するエリア情報を保持するエリア情報保持手段と、エリア入場判断用位置情報を取得するエリア入場判断用位置情報取得手段と、エリア入場判断用位置情報及びエリア範囲情報を用いて、車両がエリア内に入場したか否かを判断する入場判断手段と、入場判断後に、衛星航法を用いてエリア退場判断用位置情報を取得するエリア退場判断用位置情報取得手段と、エリア退場判断用位置情報に基づく情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリアから退場したか否かを判断する退場判断手段と、を備える。
【0066】
エリア入退場判断装置300は、衛星航法により取得した位置情報を用いて、エリアの範囲から逸脱したか否かを判断しているので、車両がエリア内で走行した際に生じたセンサ誤差の影響を受けることなく、適切に車両がエリアから退場したか否かを判断することができる。
【0067】
[他の実施例]
上述の実施例では、サーキット場400を入退場判断対象のエリアとする場合について述べたが、本発明は、これに限られない。例えば、立体駐車場等、車両が領域内を周回する必要がある場所を入退場判断対象のエリアとしても良い。
【0068】
上述の実施例では、退場判断用位置情報取得部103は、GPS信号に基づいて車両の位置を特定する場合について述べたが、本発明は、これに限られず、他の衛星航法により車両の位置情報を取得するようにしても良い。例えば、ガリレオなど、種々の衛星測位システムから取得した測位信号に基づいて車両の位置を取得するようにしても良い。
【0069】
上述の実施例では、退場判断部104は、退場判断用位置情報取得部103が特定した位置情報が、エリア範囲情報353から逸脱しているか否かにより退場したか否かを判断する場合について述べたが、本発明は、これに限られない。例えば、特許公開公報(特開平6−148307号公報)に記載されているような、受信衛星の位置関係等による測位誤差に基づく範囲(以下、誤差円とも呼ぶ)が、上記エリア範囲情報353から逸脱しているか否かにより、車両が退場したか否かを判断するようにしても良い。
【0070】
図7(A)に、退場判断用位置情報取得部103が特定した車両位置430と、当該車両位置430の誤差円440との例を示す。
【0071】
退場判断部104は、退場判断用位置情報取得部103が取得した位置情報に基づく誤差円440が、エリア範囲情報353から逸脱しているか否かにより、車両がエリアから退場したか否かを判断すれば、図7(B)に示すように、退場判断用位置情報取得部103が取得した位置情報に基づく車両位置430が測位誤差によりエリア範囲420から逸脱していても、エリア入退場判断装置300は、車両がエリアから退場していると誤判断してしまうことを防止することができる。
【符号の説明】
【0072】
18 GPS受信機
20 システムコントローラ
36 データ記憶ユニット
38 通信装置
44 ディスプレイ
60 入力装置
70 車両用通信装置
101 入場判断用位置情報取得部
102 入場判断部
103 退場判断用位置情報取得部
104 退場判断部
105 速度制御部
120 地図情報DB
200 ナビゲーション装置
300 エリア入退場判断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されているエリア入退場判断装置であって、
エリア範囲情報を有するエリア情報を保持するエリア情報保持手段と、
エリア入場判断用位置情報を取得するエリア入場判断用位置情報取得手段と、
前記エリア入場判断用位置情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリア内に入場したか否かを判断する入場判断手段と、
入場判断後に、衛星航法を用いてエリア退場判断用位置情報を取得するエリア退場判断用位置情報取得手段と、
前記エリア退場判断用位置情報に基づく情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリアから退場したか否かを判断する退場判断手段と、
を備えることを特徴とするエリア入退場判断装置。
【請求項2】
前記退場判断手段は、前記エリア退場判断用位置情報の測位誤差範囲と、前記エリア範囲情報とに基づいて、前記車両がエリアから退場したか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載のエリア入退場判断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエリア入退場判断装置と、前記車両の速度制限を制御する速度制御手段と、を備える速度制限制御装置であって、
前記エリアは、速度制御解除許可地域であり、
前記速度制御手段は、前記車両が前記速度制御解除許可地域へ入場した場合に、前記車両の速度制限を解除し、前記車両が前記速度制御解除許可地域から退場した場合に、前記車両の速度制限を設定することを特徴とする速度制限制御装置。
【請求項4】
前記退場判断手段は、車両の速度制限解除がなされた後に、前記車両が前記速度制御解除許可地域内から退場したか否かを判断することを特徴とする請求項3に記載の速度制限制御装置。
【請求項5】
車両に搭載され、エリア範囲情報を有するエリア情報を保持する装置で行うエリア入退場判断方法であって、
エリア入場判断用位置情報を取得するエリア入場判断用位置情報取得工程と、
前記エリア入場判断用位置情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリア内に入場したか否かを判断する入場判断工程と、
入場判断後に、衛星航法を用いてエリア退場判断用位置情報を取得するエリア退場判断用位置情報取得工程と、
前記エリア退場判断用位置情報に基づく情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリアから退場したか否かを判断する退場判断工程と、
を備えることを特徴とするエリア入退場判断方法。
【請求項6】
車両に搭載され、コンピュータを備え、エリア範囲情報を有するエリア情報を保持する装置で行うエリア入退場判断プログラムであって、
エリア入場判断用位置情報を取得するエリア入場判断用位置情報取得手段、
前記エリア入場判断用位置情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリア内に入場したか否かを判断する入場判断手段、
入場判断後に、衛星航法を用いてエリア退場判断用位置情報を取得するエリア退場判断用位置情報取得手段、
前記エリア退場判断用位置情報に基づく情報及び前記エリア範囲情報を用いて、前記車両がエリアから退場したか否かを判断する退場判断手段、として前記コンピュータを機能させることを特徴とするエリア入退場判断プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のエリア入退場判断プログラムを記録したことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−169428(P2010−169428A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9997(P2009−9997)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】