説明

エリシペロスリックスルシオパチア−ハエモフィルスパラスイスワクチンとその使用方法

【課題】本発明は、組成物、エリシペロスリックスルシオパチアに対する改善された一回投与ワクチン、およびエリシペロスリックスルシオパチアとハエモフィルスパラスイスとに対する改善された一回投与ワクチンを提供し、それらは以下の項目を提供する。
【解決手段】1)エリシペロスリックスルシオパチアおよび/またはハエモフィルスパラスイスに対する効果的な免疫を与え、2)エリシペロスリックスルシオパチアおよび/またはハエモフィルスパラスイス感染における臨床的兆候が現れる危険を減少させ、3)エリシペロスリックスルシオパチアおよび/またはハエモフィルスパラスイスに対する免疫反応を誘発し、4)少なくとも4ヶ月間のエリシペロスリックスルシオパチアおよび/またはハエモフィルスパラスイスに対する免疫持続期間を保持する。複合エリシペロスリックスルシオパチア−ハエモフィルスパラスイス組成物またはワクチンそれぞれに加えて、組成物およびエリシペロスリックスルシオパチアワクチンが、不活性化されたエリシペロスリックスルシオパチア菌の菌成分と適切なアジュバントを含む。さらに、複合エリシペロスリックスルシオパチア−ハエモフィルスパラスイス組成物またはワクチンは、ハエモフィルスパラスイス抗原を含む。ワクチンは、動物に対していかなる慣用的方法によって投与されてもよい。筋肉内投与での投与量は好ましくは5ml未満である。エリシペロスリックスルシオパチアおよび/またはハエモフィルスパラスイスの一回の投与量は、ワクチンまたは組成物を接種する動物において免疫反応を誘導するのに十分な量でなければならず、それによって好ましくは効果的な免疫を与え、適切な免疫持続期間、エリシペロスリックスルシオパチアおよび/またはハエモフィルスパラスイスの感染によって生じる臨床的兆候が現れる危険を減少させるだろう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エリシペロスリックスルシオパチアに対するワクチンとハエモフィルスパラスイスに対するワクチンに関する。さらに詳しくは、本発明はエリシペロスリックスルシオパチアとハエモフィルスパラスイスに対する効果的な免疫を与えるワクチンとその作成方法に関する。さらにまた詳しくは、一回投与により、望ましい免疫持続期間を与えるワクチンに関する。さらにいっそう詳しくは、本発明はワクチンを摂取している動物の平均寿命に相当する免疫持続期間を与える一回投与ワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
エリシペロスリックスルシオパチアは、ブタやヒツジ、コヒツジ、ウシ、カモ、シチメンチョウ、およびヒトを含む50種類以上の脊椎動物、無脊椎動物に病原性のあるグラム陽性菌である。ハエモフィルスパラスイスはブタをはじめとする多くの動物に病原性のあるグラム陰性菌である。エリシペロスリックスルシオパチアとハエモフィルスパラスイスに対するワクチンは一般的には分割され、エリシペロスリックスルシオパチアとハエモフィルスパラスイスに対する効果的な免疫を保持させるため、動物の一生涯にわたる複数投与からなる。現在、一回の投与で済むハエモフィルスパラスイスに対するワクチンは存在するが、エリシペロスリックスルシオパチアに対するワクチンを別に与える必要がある。技術上、よく知られているように、一回以上の投与を必要とするワクチンの問題点は、どの動物が一回目、および/または二回目、またはそれ以降に投与されてしまっているかを記録し、初めて投与されたときに記録し、実際に投与するのに必要な時間と費用、一回目とそれ以降に投与する間の動物の成長、動物、および続けて投与する人への傷害の増大する危険、および複数投与を与えるに伴う費用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この技術に必要なことは、ワクチンを受けた動物に効果的な免疫を与える一回投与法であり、そのワクチンが、現在ワクチンによって得られるそれより長期の免疫持続期間を提供することである。さらに必要なものは、一回の投与によって約6ヶ月の免疫持続期間を与えるエリシペロスリックスルシオパチアに対するワクチンである。さらにまた必要なものは、ただ一回だけのワクチン投与後、約6ヶ月の免疫持続期間を与えるエリシペロスリックスルシオパチアおよびハエモフィルスパラスイスに対するワクチンである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要旨
本発明は、従来法の欠点を克服し、技術水準における目覚しい発展を提供する。とりわけ、現在の発明は一回の投与でよく、ひとつ、またはそれ以上の以下の項目を与えるワクチンを提供する。1)エリシペロスリックスルシオパチアに対する効果的な免疫を与え、2)エリシペロスリックスルシオパチア感染の臨床的兆候が現れる危険を減少させ、3)エリシペロスリックスルシオパチアに対する免疫反応を誘導し、4)少なくとも4ヶ月、より好ましくは少なくとも約5ヶ月、もっとも好ましくは少なくとも約6ヶ月の免疫持続期間を保持する。本発明は、一つかそれ以上の以下の項目を与える複合ワクチンをも提供する。1)エリシペロスリックスルシオパチアおよび/またはハエモフィルスパラスイスに対する効果的免疫を与え、2)ワクチンの一回投与によりエリシペロスリックスルシオパチアおよび/またはハエモフィルスパラスイスの臨床的兆候が現れる危険を減少させ、3)エリシペロスリックスルシオパチアおよび/またはハエモフィルスパラスイスに対する免疫反応を誘導し、4)エリシペロスリックスルシオパチアおよび/またはハエモフィルスパラスイスに対する免疫持続期間を少なくとも約4ヶ月、より好ましくは少なくとも約132日、より好ましくは少なくとも約5ヶ月、もっとも好ましくは少なくとも約6ヶ月、または少なくとも約162日与える。好ましくは、複合ワクチンもまた、一回投与により与えられてもよい。
【0005】
エリシペロスリックスルシオパチアワクチンは不活性化されたエリシペロスリックスルシオパチア菌の菌成分と相当するアジュバント(抗原性補強剤)とを含む。アジュバントは投与法に基づいて選択され、フロイント(Freund’s)完全、非完全アジュバントのようなミネラルオイル系アジュバント、ISAのようなモンタナイド(Montanide)非完全セピック(Seppic)アジュバント、リビ(Ribi)アジュバントシステムやムラミルジペプチドを含むシンタクスアジュバント製剤のようなオイルインウォーターエマルジョンアジュバント、またはアルミニウム塩アジュバントを含む。アジュバントは、ミネラルオイル系アジュバントが好ましく、より好ましくはISA206(SEPPIC、Paris,France)である。組成物は、医薬的に適切な担体または賦形剤(excipient)のいずれかひとつまたはその組み合わせを含むが、緩衝液、安定剤、希釈剤、保存料、および溶解補助剤に制約はない。ワクチンは、口、鼻空内、筋肉内、リンパ節内、真皮内、腹腔内、皮下、およびそれらの組み合わせを含むいずれかの慣用的方法で、もっとも好ましくは筋肉内注射によって、エリシペロスリックスルシオパチアによる感染に弱い動物、好ましくは哺乳動物、よりさらに好ましくはブタに対して投与される。筋肉内注射による投与量は、好ましくは約5ml以下、さらにまた好ましくは1mlと3mlとの間、もっとも好ましくは約2mlである。
【0006】
エリシペロスリックスルシオパチア−ハエモフィルスパラスイス複合ワクチンは、エリシペロスリックスルシオパチアおよびハエモフィルスパラスイス両方の不活性化された菌成分と相当するアジュバントを含む。好ましくは、アジュバントはミネラル−オイル系、もっとも好ましくはISA206である。ワクチンは、口、鼻空内、筋肉内、リンパ内、真皮内、腹腔内、皮下、およびそれらの組み合わせを含むいずれかの慣用的方法で、もっとも好ましくは筋肉内注射によって、エリシペロスリックスルシオパチアおよび/またはハエモフィルスパラスイスによる感染に弱い動物、好ましくは哺乳動物、よりさらに好ましくはブタに対して投与される。筋肉内注射が選択された投与経路の場合、投与量は好ましくは約5ml以下、よりさらに好ましくは1mlと3mlとの間、もっとも好ましくは約2mlである。エリシペロスリックスルシオパチア抗原の一回の投与量は、ワクチンを投与した動物に対して効果的な免疫を与え、エリシペロスリックスルシオパチア感染から生じる臨床的兆候が発展する危険を減少させるために十分なものではなければならない。好ましくは、エリシペロスリックスルシオパチア抗原の量は約5ml以下、より好ましくは約0.2から3mlで、さらにまた好ましくは0.3から1.5mlまでの間、さらに好ましくは約0.4から0.8mlまでの間、さらにまた好ましくは約0.6mlである。ハエモフィルスパラスイス抗原の一回の投与量は約5ml以下、より好ましくは約0.1から3mlまでの間、さらにより好ましくは約0.15から1.5mlまでの間、さらに好ましくは約0.2から0.6mlまでの間、さらにより好ましくは約0.4mlである。測定法で異なるが、ハエモフィルスパラスイス抗原の一回の投与量に少なくとも1.5x10cfu、より好ましくは約1.5x10から1.5x1010cfuとの間、さらにより好ましくは約1.5x10cfuが含まれる。とりわけ好ましい2mlの投与のうち、約0.6mlはエリシペロスリックスルシオパチア抗原、約1.0mlはアジュバント、約0.4mlはハエモフィルスパラスイス抗原である。好ましくは、菌は慣用的な不活性化方法と特別に慣用的なホルマリン不活性化法で不活性化される。
【0007】
本発明のワクチンと組成物は、一般的に、免疫応答−刺激治療、または予防ワクチンとして、動物へ免疫反応を誘導するのに有用である。好ましくは、本発明の組成物またはワクチンの投与は、エリシペロスリックスルシオパチアおよび/またはハエモフィルスパラスイス感染の臨床的兆候の深刻化を減少させたり発症を遅らせたりすることを含むさまざまな方法で、ワクチンを接種した動物を保護する免疫反応をもたらす。さらにまた好ましくは、組成物またはワクチンの投与は、たとえ有毒な形態のエリシペロスリックスルシオパチアおよび/またはハエモフィルスパラスイスにさらされたり攻撃されたりした後でさえ、エリシペロスリックスルシオパチアおよび/またはハエモフィルスパラスイス感染の臨床的兆候が現れる危険の減少をもたらす。とりわけ好ましい方法では、組成物、またはワクチンの投与は、このような臨床的兆候を完全に妨げるという結果をもたらす。
【0008】
さまざまな慣用法が、免疫反応が動物へ導入されたかどうかを決定するために使用できる。たとえば、組成物やワクチンを接種している動物は、エリシペロスリックスルシオパチアおよび/またはハエモフィルスパラスイスの有毒形態に攻撃され、攻撃後、しばらくの間は感染の臨床的兆候の発症が観察される。組成物やワクチンの投与によって免疫反応が導入されたかどうかを決定する代替法は、エリシペロスリックスルシオパチアおよび/またはハエモフィルスパラスイスの一つまたはそれ以上の抗原に対する抗体に対して、動物からの生態標本を分析することであった。このような方法はこの分野では一般的であり、適切な抗体分析を当業者が決定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施様態を示す。これらの実施例は説明のためのものであり、これにより何ら本発明の総体的な範囲を限定するものでないと理解されるべきである。
【実施例1】
【0010】
この実施例は、好ましくは一回投与によるハエモフィルスパラスイス−エリシペロスリックスルシオパチアワクチンがもたらす、有毒なエリシペロスリックスルシオパチアに対する免疫の効能と持続期間に関する資料を提供する。
【0011】
材料および方法
いずれも過去にエリシペロスリックスバクテリンまたはワクチンを接種していない生後3から4週目の全部で37匹のブタがこの実施例を導く研究に使用された。本研究が行われる間、動物は大きさ、年齢、およびその他の物理的特徴にふさわしい食事を与えられた。水は随時与えられた。動物は、その年齢に適した全体、または部分羽根板、機械制御換気装置、および補助ヒーターと光源を備え付けたブタ家畜小屋に居住させた。
【0012】
実験の2日前、全てのブタは健康診断と仮性狂犬病(Pseudorabies)菌のワクチン投与を受けた。研究の1日目、ブタは二つのグループに分けられた。グループ1は、1日目にアジュバントISA206を含むハエモフィルスパラスイス−エリシペロスリックスルシオパチアバクテリン(以下、HPEという)(ベーリンガー インゲルヘイム ヴェトメディカ アイエヌシー, St. Joseph, MO製)を首の左に2ml筋肉内注射により投与した23匹のブタから構成された。エリシペロスリックスルシオパチア抗原は、1回投与当たり0.6mlの率の収穫抗原(harvest antigen)を含んでいた。グループ2のコントロールは、何も処置されていない14匹のブタから構成された。実験21、54、および161日目、すべての動物は、ワクチンによる血清変換の観察のため採血された。
【0013】
実験162日目、すべてのブタ(162日目より以前に付随的事故により死亡した3匹を除く)はエリシペロスリックスルシオパチアEL−6Pの有毒菌株により攻撃された。全てのブタは、7日間一般的健康状態とエリシペロスリックスルシオパチアの臨床的兆候を観察された。攻撃から7日後、すべての動物は安楽死させ、そのうち9CFR 113.67に規定されたエリシペロスリックスルシオパチアに特徴的な2日間連続した執拗な臨床的兆候および/または高い体温を示したものは解剖された。解剖は、実験中死亡した全ての動物に対しても施行された。重大な損傷は評価、記録され、組織は採取され、菌培養のため研究室へ送られた。
【0014】
上記実験(プロトコル)のまとめを表1に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
結果と議論
グループ2の13匹全てのブタは攻撃を受け、エリシペロスリックスルシオパチアによる感染の臨床的兆候である華氏106.5度以上の高い体温を示すか、または有毒なエリシペロスリックスルシオパチアによる攻撃後、死亡した。グループ2の13匹中9匹のブタからエリシペロスリックスルシオパチアが回収され、グループ2の13匹中6匹は攻撃後、死亡した。対照的に、グループ1のうち21匹中20匹は健康状態を保ち、ワクチン投与後162日間、エリシペロスリックスルシオパチアによる有毒な攻撃から保護されていた。グループ1のうち、攻撃後、死亡したものは一匹もいなかった。攻撃後、健康状態を保たなかったグループ1のブタからはエリシペロスリックスルシオパチアは回収されなかった。表2は有病率の結果と分析、表3は死亡率の結果を示す。
【0017】
【表2】

【0018】
【表3】

【0019】
【表4】

【0020】
【表5】

【0021】
ワクチン投与後162日目に有毒なエリシペロスリックスルシオパチアの攻撃を受けた、ワクチン投与を受けたもの(vaccinates)は、コントロールに比べてよく保護されていた。ワクチン投与を受けていないコントロールの100%は病気を発症し、46%は攻撃後に死亡した。反対に、HPEの一回投与は攻撃されたブタの95%を保護し、ワクチン投与を受けたブタは攻撃後一匹も死ななかった。本実験の結果は、生後3週間またはそれ以上の飼育ブタにおける豚丹毒の予防と制御のため、一回投与法によるHPEの少なくとも162日間の免疫持続期間を確証するものである。
【実施例2】
【0022】
この実施例は、ワクチン投与後、有毒なハエモフィルスパラスイスの攻撃に対するワクチンの好ましくは一回投与による免疫持続期間を示す。
【0023】
実験器具と実験方法
この実施例に対する本研究は、いずれも過去にハエモフィルスパラスイスバクテリンまたはワクチンを接種していない生後3から4週間の36匹のブタから開始した。本実験の間、動物は大きさ、年齢、またその他の物理的特徴にふさわしい食料を与えられた。水は随時供給された。
【0024】
実験の一日目、ブタは2つのグループに分類された。グループ1は、一日目に、アジュバントISA 206を含むハエモフィルスパラスイスバクテリン(以下、HPEという)(ベーリンガー インゲルヘイム ヴェトメディカ, アイエヌシー, St. Joseph, MO製)を2ml筋肉内注射により投与した、23匹のブタから構成された。ハエモフィルスパラスイス抗原は、一回投与当たり1.5x10cfuを含んでいた。グループ2はコントロールで、何も処置を受けていない13匹のブタから構成された。
【0025】
実験後132日目、グループ2からの11匹とグループ1からの17匹のブタは健康で、ハエモフィルスパラスイスの有毒菌株の攻撃を受けるのに適切であった。攻撃を受けなかった8匹のブタ(グループ1から6匹、グループ2から2匹)は、不健康であるかワクチン接種とは関連のない理由のため死亡していた。全てのブタは、その後7日間、一般的健康状態とハエモフィルスパラスイスの臨床的兆候を観察された。解剖は、実験中死亡した全ての動物に対して施行され、必要と思われる場合、死亡原因である菌の解明のため組織が摘出された。攻撃後7日目、すべての動物は安楽死させられ、そのうちハエモフィルスパラスイスに特有な2日間連続した執拗な臨床的兆候および/または高い体温を示したものは解剖された。重大な損傷は評価、記録され、組織は採取して菌培養のため研究室へ送られた。
【0026】
以上の実験のまとめを表4に示す。
【0027】
【表6】

【0028】
結果と議論
ハエモフィルスパラスイス感染の臨床的兆候は、コントロールグループ11匹のうち8匹のブタに対してあらわれ、解剖により11匹中7匹がハエモフィルスパラスイスに特徴的なひどい死後の損傷をもっていたことがわかった。攻撃後、全部で6匹のコントロールブタが死亡し、その6匹中5匹がハエモフィルスパラスイスに特徴的なひどい損傷(gross lessions)を受けていた。2日かそれ以上の間、末期の臥床状態(terminal recumbency)に至る深刻な臨床的兆候が2匹以上のブタに発症した。これらのブタは、解剖の際ハエモフィルスパラスイスに特徴的な損傷も受けていた。変化の見られた8匹のコントロールブタのうち、6匹は菌培地でハエモフィルスパラスイスに対し陽性であった。残りの3匹は、ハエモフィルスパラスイスに由来するいかなる病気の兆候も示さなかった。
【0029】
対照的に、グループ1からの17匹中16匹のブタは、ワクチン投与後132日間、ハエモフィルスパラスイスの有毒な攻撃から保護されていた。グループ1からの1匹は、攻撃後死亡した。攻撃後死亡した一匹のグループ1のブタからはハエモフィルスパラスイスは回収されなかったが、病気の発症に伴った死後の傷害が見られた。表5に有病率の結果を、表6に死亡率の結果を示した。
【0030】
【表7】

【0031】
【表8】

【0032】
【表9】

【0033】
【表10】

【0034】
ワクチン投与後132日目に有毒なハエモフィルスパラスイスの攻撃を受けた、ワクチン投与を受けたものは、コントロールに比べてよく保護されていた。ワクチンを受けていないコントロールのうち73%が病気を発症し、55%が攻撃後死亡した。比較すると、HPBの一回投与は攻撃された94%のブタを保護した。統計的にみて、ワクチンを受けたものは、コントロールに比べてハエモフィルスパラスイスに由来する死亡率が極めて低かった。本実施例の結果は、生後3週間かそれ以上の養殖ブタにおいて、一回投与法により、少なくとも132日間のHPBに対する免疫の持続期間を確認した。
【実施例3】
【0035】
この実施例は、本発明のワクチン調整の好ましい方法を記述するものである。
【0036】
試料および方法
エリシペロスリックスルシオパチア−ハエモフィルスパラスイスバクテリン組成物は、エリシペロスリックスルシオパチアおよびハエモフィルスパラスイスの菌株SE−9とZ−1517をそれぞれ含む。これらの菌株はATCCに寄託され、それぞれ寄託番号PTA−6261とPTS−6262が与えられた。それぞれのシード原料は、特徴的な成長パターンとグラム染色反応、および生化学的検査によって識別される。シード原料の毒性はマウスへの殺傷力および/または感染しやすいブタにおける臨床的兆候の発症力によって決定される。
【0037】
エリシペロスリックスルシオパチアに対する成長培地(growth media)の構成成分を表7に示す。ハエモフィルスパラスイスに対する成長培地の構成成分を表8に示す。
【0038】
【表11】

【0039】
【表12】

【0040】
エリシペロスリックスルシオパチアとハエモフィルスパラスイスシード培養菌の両方の菌株は500から20,000mlの容器(vessel)中で育てなければならない。それらの生産培養菌は20−1000Lの容器で育てる。両菌株のマスターシード(親種)とワーキングシードは−60°C以下で保存しなければならない。
【0041】
シーディングまたは接種(inoculation)のためのエリシペロスリックスルシオパチアの懸濁培養菌を調整するため、マスターシードは液体層に戻され、1−2mlがワーキングシード培地へ接種される。その後、培養菌は統計的に34−38°C、6−24時間培養される。培養菌は、その後、5%ヒツジ血液寒天培地中のみかけのコロニー、細胞形態、およびグラム染色によって純度を測定される。保存のため同量の安定剤が加えられ、寒冷管(cryotube)へ分配される。
【0042】
シーディングまたは接種のためのハエモフィルスパラスイスの懸濁培養菌を調整するため、マスターシードは液体層に戻され、ワーキングシード培地へ接種される。培養菌は、その後34−38°C、12−18時間攪拌される。それから培養菌は、5%ヒツジ血液寒天培地中のみかけのコロニー、細胞形態、およびグラム染色によって純度を測定される。保存のため同量の安定剤が加えられ、寒冷管へ分配される。
【0043】
エリシペロスリックスルシオパチアの接種のため、ワーキングシード1−12mlは500−18,000mlの培地を含むガラス容器へ接種され、生産シードが調整される。生産培養菌を調整するため、5%(v/v)までの生産シードは、20−1000L管を用い、培地15−750L中へ接種される。生産培養菌は、5%ヒツジ血液寒天培地中に画線され、34−38°C,24−48時間培養され、コロニー形態を観察することによって純度を測定される。
【0044】
ハエモフィルスパラスイスの接種のため、1−10mlのワーキングシードが500−18,000mlの培地を含むガラス管へ接種され、生産シードが作成される。7%(v/v)までの生産シードは、20−1000L管を用い、培地14−750L中へ接種し、生産培養菌が作成される。生産培養菌は、NAD画線を追加した5%ヒツジ血液寒天培地中に画線され、34−38°C、18−24時間培養、コロニー形態を観察することによって純度を測定される。
【0045】
エリシペロスリックスルシオパチアの接種のため、シード培養菌は34−38°C、6−24時間、好気的条件下で培養される。生産培養菌は34−38°C、6−12時間、随時攪拌しながら好気的条件下で培養される。ハエモフィルスパラスイスの培養のため、シード、生産培養菌は、攪拌し随時圧縮空気を散布しながら、34−38°C、6−12時間培養される。
【0046】
エリシペロスリックスルシオパチアの成長期間、pHは2Mトリスによって調整され、培養期間中、異常な成長やコンタミネーションの兆候の形跡を見るために培養菌は肉眼で観察される。培地は接種前に懸濁している。成長にともなって、沈殿が観察されるだろう。%透過度を測るためにサンプルが採取される。純度は5%ヒツジ血液寒天培地中のコロニー形態および/またはグラム染色によって決定される。十分な懸濁の肉眼による観察は培養菌が採取期を迎えていることを示している。これは、生産培養菌の接種後6−12時間の間に起こるだろう。
【0047】
ハエモフィルスパラスイスに対して、異常な成長やコンタミネーションの兆候の形跡を見るために培養期間中、培養菌は肉眼で観察される。直接数えるために、サンプルが採取される。純度はNAD画線を追加した5%ヒツジ血液寒天培地中のコロニー形態および/またはグラム染色によって決定される。十分な懸濁の肉眼による観察とpHの低下(<7.0)は、培養菌が採取期を迎えていることを示している。これは、生産培養菌の接種後6−12時間の間に起こるだろう。
【0048】
どちらの種に対しても、それぞれの生産培養菌は純度と%透過率の試験のためサンプリングされ、それぞれの生産培養菌容器が不活性化のため作成された。エリシペロスリックスルシオパチアに対しては、生産培養菌は記載されたとおりの特徴的成長を示し、%透過率は620nmにおいて40%以下、コンタミネーションの兆候なしとしなければならない。ハエモフィルスパラスイスに対しては、生産培養菌は顕微鏡観察において5x10organisms/ml以上、コンタミネーションの兆候なしとなるだろう。
【0049】
両菌株は、0.5%(v/v)以下のホルマリンを生産培養菌へ添加することによって不活性化される。不活性化は20−38°C、12−72時間、随時攪拌しながら行われる。不活性化された菌株は、その後2−7°Cに保存される。不活性化は標準技術によって確認される。
【0050】
アジュバントISA206は30−65%(w/v)添加される。不活性化された培養菌はISA206との均質化によって乳化される。35%重亜硫酸ナトリウムがフリーのホルムアルデヒドを中和するために分画、または生成物に添加されてもよい。ホルムアルデヒド溶液は、最終生成物において0.2%を超えない濃度で分画、または生成物の集合(assembly)に添加されてもよい。
【0051】
その結果得られる生成物は、その後、無菌密閉ループシステム中、分子量100,000カットオフの中空繊維ろ過装置、または無菌デカンテーション固定培養によって濃縮され、2x1010organism/ml以下の濃度とされる。
【0052】
エリシペロスリックスルシオパチアは%透過率と濃度によって標準化される。ハエモフィルスパラスイスは菌体を直接数えることによって標準化される。
【実施例4】
【0053】
この実施例は、本発明の好ましいワクチンの異なるワクチン成分の組み合わせを示す。
【0054】
試料と方法
本発明に基づいたワクチンは、エリシペロスリックスルシオパチア培養菌90,000ml(透過率40%のエリシペロスリックスルシオパチア培養菌90,000mlを示す)、ハエモフィルスパラスイス培養菌56,250ml(4x10organism/mlのハエモフィルスパラスイス培養菌56,250mlを示す)、滅菌RO水2,250ml、ISA206 150,000ml、および35%重硫酸ナトリウム水溶液1,500mlの組み合わせにより構成されてもよい。滅菌35%重硫酸ナトリウム水溶液もまた、必要に応じホルムアルデヒド濃度を0.2%ホルムアルデヒド溶液まで中和するために用いられる。得られる混合物のpHは、必要に応じ10N水酸化ナトリウムまたは5N塩酸の添加によって6.2−7.2に調整される。
【0055】
この混合物は、2ml中、採取培養菌(Harvest Culture)で透過率40%、0.3−0.9mlに相当する濃度のエリシペロスリックスルシオパチア、および少なくとも1.5x10organismのハエモフィルスパラスイスを提供しなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリシペロスリックスルシオパチア(Erysipelothrix Rhusiopathiae)由来の抗原、ハエモフィルスパラスイス(Haemophilus parasuis)由来の抗原、およびアジュバントを含有する組成物。
【請求項2】
前記組成物に含まれる前記エリシペロスリックスルシオパチア由来の抗原が、エリシペロスリックスルシオパチアに感染しやすい動物へ投与したとき、エリシペロスリックスルシオパチア感染の臨床的兆候が現れる危険を減少させるのに効果的な量である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記効果的な量のエリシペロスリックスルシオパチア抗原が、約5ml以下である請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ハエモフィルスパラスイス由来の抗原が、ハエモフィルスパラスイスに感染しやすい動物へ投与したとき、エリシペロスリックスルシオパチア感染の臨床的兆候が現れる危険を減少させるのに効果的な量である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記効果的な量のハエモフィルスパラスイス抗原が、約5ml以下である請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記効果的な量のハエモフィルスパラスイス抗原が、一回投与当たり少なくとも1.5x10cfuを含む請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記アジュバントがミネラルオイルを主成分として含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、ハエモフィルスパラスイス、エリシペロスリックスルシオパチア、およびそれらの複合物からなるグループから選択された病原体による感染に対する免疫反応を誘導するのに効果的である請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
エリシペロスリックスルシオパチア抗原とアジュバントとを含む、一回投与後、エリシペロスリックスルシオパチア感染の臨床的兆候が現れる危険を減少させるためのワクチン。
【請求項10】
さらに、ハエモフィルスパラスイス抗原を含む、請求項9に記載のワクチン。
【請求項11】
前記エリシペロスリックスルシオパチア抗原が、約5ml以下である請求項9に記載のワクチン。
【請求項12】
前記ハエモフィルスパラスイス由来の抗原が、ハエモフィルスパラスイス感染の臨床的兆候が現れる危険を減少させるのに効果的な量である請求項10に記載のワクチン。
【請求項13】
前記ハエモフィルスパラスイス抗原が、約5ml以下である請求項10に記載のワクチン。
【請求項14】
前記効果的な量のハエモフィルスパラスイス抗原が、一回投与当たり少なくとも1.5x10cfuを含む請求項10に記載のワクチン。
【請求項15】
前記アジュバントが、ミネラルオイルを主成分として含有する請求項9に記載のワクチン。
【請求項16】
前記ワクチンが、少なくとも投与後4ヶ月間、エリシペロスリックスルシオパチア感染の臨床的兆候が現れる危険を減少させる請求項9に記載のワクチン。
【請求項17】
前記ワクチンが、少なくとも投与後4ヶ月間、ハエモフィルスパラスイス感染の臨床的兆候が現れる危険を減少させる請求項10に記載のワクチン。
【請求項18】
前記ワクチンが、ハエモフィルスパラスイス、エリシペロスリックスルシオパチア、およびそれらの複合物からなるグループから選択された病原体による感染に対する免疫反応を誘導するのに効果的である請求項10に記載のワクチン。
【請求項19】
ハエモフィルスパラスイスまたはエリシペロスリックスルシオパチアへ感染しやすい動物への組成物の投与段階を含み、前記組成物は、エリシペロスリックスルシオパチア由来の抗原、ハエモフィルスパラスイス由来の抗原、およびアジュバントを含む、ハエモフィルスパラスイス、エリシペロスリックスルシオパチア、およびそれらの複合物を含むグループから選択された病原体による感染からの臨床的兆候が動物に発症する危険を減少させる方法。
【請求項20】
前記投与段階が、筋肉内注射である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記エリシペロスリックスルシオパチア抗原が、約5ml以下である請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ハエモフィルスパラスイス抗原が、約5ml以下である請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記ハエモフィルスパラスイス抗原が、一回投与当たり少なくとも1.5x10cfuを含む請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記アジュバントが、ミネラルオイルを主成分として含有する請求項19に記載の方法。
【請求項25】
ハエモフィルスパラスイスまたはエリシペロスリックスルシオパチア感染の臨床的兆候が動物に現れる危険の減少が、少なくとも132日間持続する請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記投与段階が、ハエモフィルスパラスイスとエリシペロスリックスルシオパチア感染の臨床的兆候が動物に現れる危険を減少させる請求項19に記載の方法。
【請求項27】
さらに、ハエモフィルスパラスイスまたはエリシペロスリックスルシオパチアの有毒菌株で動物を攻撃することにより動物の危険を減少させることを確認し、前記臨床的兆候の現れた前記動物を観察する段階を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
組成物がエリシペロスリックスルシオパチア由来抗原、ハエモフィルスパラスイス抗原、およびアジュバントを含み、ハエモフィルスパラスイスまたはエリシペロスリックスルシオパチアに感染しやすい動物への組成物の投与段階を含む、ハエモフィルスパラスイスまたはエリシペロスリックスルシオパチア感染に対する免疫反応を誘導する方法。
【請求項29】
前記投与段階が、筋肉内注射である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記エリシペロスリックスルシオパチア抗原が、約5ml以下である請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記ハエモフィルスパラスイス抗原が約5ml以下である請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記ハエモフィルスパラスイス抗原が、一回投与当たり少なくとも1.5x10cfuを含む請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記アジュバントが、ミネラルオイルを主成分として含有する請求項28に記載の方法。
【請求項34】
ハエモフィルスパラスイスまたはエリシペロスリックスルシオパチア感染に対する前記動物の免疫反応が、少なくとも4ヶ月間持続する請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記投与段階が、ハエモフィルスパラスイスとエリシペロスリックスルシオパチア感染に対する免疫反応を誘導する請求項28に記載の方法。
【請求項36】
さらに、ハエモフィルスパラスイスまたはエリシペロスリックスルシオパチアの有毒菌株で動物を攻撃し、前記免疫反応を試験することによって動物の免疫反応を確認する段階を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
ハエモフィルスパラスイス由来の抗原、エリシペロスリックスルシオパチア由来の抗原、およびアジュバントを組み合わせて混合物を作成し、前記混合物を乳化する段階を含む組成物の調整方法。
【請求項38】
さらに、前記方法が、ハエモフィルスパラスイスとエリシペロスリックスルシオパチア由来の前記抗原のもと(source)を不活性化する段階を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ハエモフィルスパラスイス抗原が、Z−1517菌株由来である請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記エリシペロスリックスルシオパチア抗原が、SE−9菌株由来である請求項37に記載の方法。
【請求項41】
さらに、既知の効果的な量のハエモフィルスパラスイスとエリシペロスリックスルシオパチア抗原を提供するために前記組成物を標準化する段階を含む、請求項37に記載の方法。

【公表番号】特表2007−509986(P2007−509986A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538414(P2006−538414)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/036336
【国際公開番号】WO2005/041890
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(501458933)
【Fターム(参考)】