説明

エリスリナ・ムルング(Erythrinamulungu)の含水アルコール抽出物、薬剤組成物及びこれらの物質の生成方法

本発明は、コリン作動系及び/又はセロトニン作動系のモデルのための分子の使用を提供し、11−OH−エリスラビン、エリスラビン、エリスラルチン、その製薬上許容される同配体、塩、副産物及び/又は溶媒和物を含み、他のエリスリナ副産物を任意選択で含む、不安障害を治療するための薬剤組成物を明らかにする。前記薬剤組成物を得る方法も明らかにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コリン作動系及び/又はセロトニン作動系に作用する分子に関する。より詳細には、本発明は、抗不安薬の調製に有用なエリスリナ副産物に関する。前記分子を含む薬剤組成物及び前記薬剤組成物の調製方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
エリスリナ・ムルング(Erythrina mulungu)(マメ科コチョウア科(Papilionaceae−Leguminoseae))とは、赤い花を咲かせ、パラナ川流域の半落葉性の広い葉をもつ樹木の林並びに低木地地帯、主にサンパウロ州西部及びミナストライアングル(Minas Triangle)に生育している樹木植物である(高さ10〜14メートル)(LORENZI、1992)。この植物の樹皮は、地元住民によって鎮静剤及び鎮痛剤として用いられている。これは一般に、ムルング、デイコ(coral tree)、サンゴムルング(coral mulungu)、サンゴ低木(coral shrub)として知られている(民族名には、とりわけ、capa−homem、suina−suina、tiriceiroが含まれる)(LORENZI、1992)。ブラジルにはエリスリナの8つの品種が見つかる:イー・ムルング、イー・ベルチナ(E.velutina)、イー・クリタガリ(E.crita−galli)、イー・ポッピジアーナ(E.poeppigiana)、イー・フスカ(E.fusca)、イー・ファルカタ(E.falcata)、イー・スペシオサ(E.speciosa)及びイー・ベルナ(E.verna)(LORENZI、1992)。イー・ムルング種の研究は希少であるにもかかわらず、鎮痛剤、鎮静剤並びに緩下剤、抗炎症剤及び抗利尿剤としての一般的な使用も知られている、この品種の他の種の植物化学(fitochemical)及び薬理学特性を確認するために多大な研究が行われている(GARIN−AGUILAR他、2000)。
【0003】
植物化学(Fitochemistry)
エリスリナ種の研究に対する関心は、1877年に、Dominguez及びAltamiranoがイー・アメリカーナ(E.americana)の種子抽出物の薬理学的作用がd−ツボクラリン(クラーレノキ(Chondodendron tomentosum)から抽出した物質)の効果に類似していることを発見した際に始まった(HARGREAVES他、1974;HIDER他、1986;GARIN−AGUILAR他、2000)。その時点以降、エリスリナの様々な種の抽出物の植物化学及び薬理学特性に関する調査が実施された。数年後、エリスリナの様々な種の抽出物で示される薬理学的作用が確認されたのち、この種の植物中のアルカロイドの単離及び同定に対する研究が活発化した(SARRAGIOTO他、1981)。それまでは、薬理学的試験は粗抽出物で行っていた。1937年に、Folkers及びMajor(1937)はイー・アメリカーナ・ミル(E.americana Mill.)の種子について化学的調査を行い、d−ツボクラリンと類似したコリン作動性活性を提示した結晶アルカロイドのエリトロイジを単離した。その後の分析(BOEKELHEIDE及びGRUNDON、1953;BOEKELHEIDE他、1953)により、エリトロイジンはα−エリトロイジン及びβ−エリトロイジンと命名された2つの異性体アルカロイドの混合物であることが示され、後者はコリン作動性活性を司っている(HARGREAVES他、1974;HIDER他、1986;GARIN−AGUILAR他、2000)。イー・アメリカーナのα及びβ−エリトロイジンを単離したのち、エリスリナの他の種の研究を行った結果、新規エリスリナ骨格アルカロイドの単離がもたらされた(FOLKERS及びKONIUSZY、1940;FOLKERS他、1944;BOEKELHEIDE及びGRUNDON、1953;BOEKELHEIDE他、1953;TANDON他、1969;ITO他、1970;BARTON他、1970;GHOSAL、1970;GHOSAL他、1971;ITO他、1971;MIANA他、1972;GHOSAL他、1972a、b;BARTON他、1973;ITO他、1973、a、b、c、d;GHOSAL及びSRIVASTAVA、1974;MILLINGTON他、1974;GAMES他、1974;ITO他、1976;BARAKAT他、1977;EL−OLEMY他、1978;AHMAD他、1979;TIWARI及びMASSOD、1979a、b;SARRAGIOTO他、1981)。
【0004】
エリスリナアルカロイドの基本構造の明確化は、分解及び合成(GRUNDON及びBOEKELHEIDE、1953;GRUNDON他、1953;WEINSTOCK及びBOEKELHEIDE、1953;BOEKELHEIDE他、1953)によって達成した。これらのアルカロイドの構造中にスピロアミン骨格の存在が確証され、これは以下の一般式を表す(ジエン型のエリスリナアルカロイドを表す)。
【化1】

【0005】
この構造の明確化により、その後の新規化合物の同定が容易になった。現在では、3種のエリスリナアルカロイドが知られている。ジエノイド(dienoid)は環A及びB中でジエン系を表す。アルカロイドは環A中に二重結合Δ1,6を有する。エリスリナアルカロイドの第3の群には、エリソジエノン(erysodienone)、3−デスメトキシエリトラチジノン(erythratidinone)、α−エリトロイジン及びβ−エリトロイジンが含まれる。オリエンタリン(orientaline)、N−ノオリエンタリン(Noorientaline)、プロトシノメニン(protosinomenine)、N−ノルプロトシノメニン(Norprotosinomenine)、イソボルジン、エリビジン(erybidine)、スカウレリン(scoureline)、コレキシミン、ハイパフォリン(hypaforin)、コリン(coline)を含めた、エリスリナ骨格を表さない特定のエリスリナ種の一部のアルカロイドも単離した。
【0006】
乾燥花で調製したエタノール抽出物を用いたイー・ムルングの植物化学的研究により、5つのアルカロイド(エリソトリナ(erysothrina)、N−エリソトリナオキシド、エリスラルチン(erythrartine)、N−エリスラルチンオキシド及びハイパフォリン)並びにテルペノイドのフィトール(fithol)が単離された(SARRAGIOTO他、1981;SARRAGIOTO、1981)。最近の植物化学的研究により、エリスリナ種はフラバノン、イソフラバノン、イソフラボン及びプテロカルパンなどの他のクラスの物質にも富んでいることが実証されている(DA−CUNHA他、1998;TANAKA他、1996、1997a、b;1998;2001;OH他、1999;YENESEW他、2000;NKENGFACK他、2001)。
【0007】
薬理活性
エリスリナから得られた物質の主要な薬理学的作用にはコリン作動系に対するその末梢活性があり、これはd−ツボクラリンの効果と比較されている(HARGREAVES他、1974;HIDER他、1986;GARIN−AGUILAR他、2000)。この効果は、イー・アメリカーナ(BOEKELHEIDE及びGRUNDON、1953;BOEKELHEIDE他、1953)並びにイー・ソロニアーナ(E.tholloniana)(CHAWLA他、1985)から単離された、ニコチン様の拮抗剤受容体アルカロイドジヒドロ−β−エリトロイジン(DHBE)(HIDER他、1986)に起因していた。より最近では、in vitro試験において、DHBEはセロトニン作動性3拮抗剤受容体(5−HT)として特徴づけられた(ELSELE他、1993)。エリスリナ品種の一部の種も、抗痙攣効果、催眠効果、麻酔効果、鎮痛効果及び抗不安効果など、中枢神経系に対して他の活性を提示する(GHOSAL他、1972;HARGREAVES他、1974;RATNASOORIYA及びDHARMASIRI、1999;ONUSIC他、2002)。しかし、これらの活性におけるエリスリナアルカロイドの役割を分析した研究は報告されていない。
【0008】
イー・ベルチナの研究により、含水アルコール抽出物を用いた急性期治療では、オープンフィールド試験(250及び500mg/kgの用量、経口摂取)においてマウスの活動が低下し、また、ペントバルビタールで誘導した睡眠の期間及びピロカルピンで誘導した痙攣の開始の期間が増加すること(500及び1000mg/kgの用量、経口摂取)が実証され、中枢神経系に対する抑制効果が示された(CABRAL他、2000)。別の研究(GARIN−AGULIAR他、2000)では、イー・アメリカーナのヘキサン画分(3mg/kg、腹腔内)を用いた急性期治療により、ジアゼパムと同様に雄マウスの攻撃的挙動が軽減されたことが明らかとなった。最近では、イー・ムルングの含水アルコール抽出物の研究(ONUSIC他、2002)により、200mg/kgの用量(経口摂取)を用いた急性期治療が、高架式T迷路試験における抑制回避課題中のマウスに対してベンゾジアゼピン系抗不安剤(BDZ)のジアゼパムに匹敵する抗不安効果を表すことが観察された。ONUSIC及び共同研究者ら(2002)はまた、明/暗遷移モデルで、2つのモデル区画の遷移の回数及び明区画に留まる長さのどちらにおいても同じ用量を用いてイー・ムルングの抗不安効果も観察した。別の研究により、イー・ムルングの抽出物を用いた慢性治療的経口摂取(9日間)により、抑制回避課題並びに高架式T迷路の開いたアームからの脱出のどちらにおいても、50、100及び200mg/kgの用量で抗不安効果が示されたことが明らかとなった(ONUSIC他、2003)。明/暗遷移モデルでは、イー・ムルングの抽出物も、50mg/kgの用量で、14日間の慢性治療ののちに抗不安効果を表した(ONUSIC他、2003)。
【0009】
これらの数々の手法にもかかわらず、現在までに、エリスリナの単離した活性成分又はその化学合成品から作製した抗不安薬の開発も、そのような医薬品の調製方法も、報告された例が知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の主題は、コリン作動系及び/又はセロトニン作動系に作用する能力を有する分子、並びにそれを含む薬剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、本発明の分子は動物モデルにおいて活性のある抗不安剤であることが判明した。したがって、本発明の主題は、不安関連障害又は抗不安剤の使用を要する他の臨床徴候の治療に有用な分子を提供することである。
【0012】
別の態様では、本発明の分子の薬理活性の単離、構造の特徴づけ及び評価により、不安障害の治療を意図した標準化した薬剤組成物の開発が可能となる。したがって、本発明の別の主題は、抗不安性分子を含む薬剤組成物を提供することである。
【0013】
さらに別の態様では、本発明の分子の単離及び/又は合成により、前記分子を含む薬剤組成物を生成するための容易な方法が提供される。したがって、本発明のさらなる主題は、薬剤組成物の生成方法を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の目的のために、「薬剤組成物」とは、活性成分を含み、予防的、姑息的及び/又は治癒的目的を有し、恒常性を維持及び/又は修復するように作用する、すべて且つ任意の組成物を意味するものとし、局所投与、非経口投与、腸内投与及び/又はくも膜下腔内投与し得る。
【0015】
本発明中で言及する薬剤組成物はエリスリナ副産物のクラスに属し、エリスリナ・ムルングのエリスラルチン及び/若しくはエリスラビン単離体又は化学合成品を任意選択で含む、11−OH−エリスラビン、その製薬上許容される同配体(isosters)、塩、副産物及び/或いは溶媒和物が含まれる。
【0016】
本発明の化合物の治療適用性を様々な段階で実施した。行った実験及びそれぞれの結果は、以下に単なる例として示し、添付の特許請求の範囲を限定しない。
【実施例1】
【0017】
抽出物の調製及び植物材料を用いた分画
冬季にRifaina郡(スペイン)で成体樹木から花を採取した。新鮮な植物材料(6kg)を、7日間のエタノール/水(EtOH/HO)(7:3)を用いた冷浸工程による抽出に供した。次に、ロータリーエバポレーターの補助の下で抽出物を濾過及び濃縮した結果、292gの乾燥含水アルコール抽出物が得られた。その後、化学成分のバイオモニター分画及び単離を実施した。その後、エリスリナアルカロイドの分離を最適化することを目的として、酸−塩基抽出を行った。これを達成するために、乾燥含水アルコール抽出物(120g)を酢酸水溶液(10%)に溶解し、クロロホルム抽出(CHCl)を用いた液体/液体に供した。クロロホルム相を水相から分離し、溶媒を蒸発させた結果、画分1が得られた(7.83g)。次に、pHが9〜10に達するために十分な体積の水酸化アンモニウム(NHOH)を用いて水相をアルカリ化し、再度CHClを用いた抽出に供した。クロロホルム相を分離し、溶媒を蒸発させた結果、画分2(F2)が得られた(670mg)。
【実施例2】
【0018】
クロマトグラフィー、装置及び分光測定
「分析用」の溶媒等級を用いた。シリカの分析用薄層クロマトグラフィー(CCD)には、溶媒系としてCHCl/メタノール(MeOH)(9:1)を用いた。F2中のアルカロイドについてドラーゲンドルフ試験は陽性であり、これをオープンカラムクロマトグラフィー(CCA)に供した(直径5cm及び高さ15cm)。CCA(0.035〜0.070mm、φ6nm)、シリカを固定相として、CHCl/MeOH(10:0〜8:2)を移動相として用いた。分離には670mgのF2を用いて、101個の約20mlの画分が採取された。CHCl/MeOH(7:1)の移動相中で分析用CCDに供し、ドラーゲンドルフアッセイによって明らかにしたのち、101個の画分を画分A(FA−136.2mg)(1〜27)、画分B(FB−93.4mg)(28〜50)、画分C(FC−148.3mg)(51〜69)、画分D(FD−284.5mg)(70〜101)に分類した。アルカロイドを単離及び精製するために、シリカ固定相(Merck)にフルオレセイン、移動相にトルエン、アセトン、エタノール及びNHOH(45:45:7:3)を採用して、調製用薄層クロマトグラフィー(CCDP)を用いた。CCDPから単離した物質の分光測定分析には、核磁気共鳴(NMR)分光計 Varian Unitを用い、500MHzで操作した。重水素化クロロホルム(CDCl)を溶媒として用いた。単離したアルカロイドの化学構造を決定するために、H及び13CのNMR分光分析並びにHMQC、HMBC及びCOSY二次元分光測定を用いた。結果を、エリスリナアルカロイドについて文献で現在利用可能な情報と比較した。アルカロイド1は、FBを用いて実施したCCDPによって単離した。アルカロイド2は、FC及びFDの両方から単離した。FDを用いて、アルカロイド3を単離することもできた。物質1、2及び3のCHCl中のH及び13CのNMRスペクトル(表1)により、エリスリナアルカロイドの骨格に特徴的なシグナルの存在が示された。
【0019】
表1−エリスラルチン、エリスラビン、11−OH−エリスラビンのH及び13CのNMR(500MHz、CDCl中)の化学シフト測定値(δ)及びカップリング(J)。
【表1】

【0020】
表1に示すように、水素H−14及びH−17に関連する芳香族プロトンの2本の一重線並びに炭素C−15及びC−16の位置のメトキシル水素に起因する2本の一重線のシグナルを同定することが可能である。オレフィンプロトンの3つのシグナル(ブロード一重線(sl)、H−7;ブロード二重線(di)、H−1;2本の二重線(dd)、H−2)の存在は、エリスリナ骨格のジエン系水素に起因している可能性がある。以前の研究(SARRAGIOTO他、1982)で、それぞれδ125.3及びδ131.2におけるC−1及びC−2の共鳴が報告されているが、本発明の開発においては、HMQC二次元スペクトルの化学シフト間の相関によりこれらの共鳴がそれぞれδ131.5及びδ125.5で起こることが実証された。
【0021】
11−ヒドロキシ−エリスラビン(11−OH−エリスラビン)
11−OH−エリスラビンの1HのNMRスペクトルでは(表2)、エリスラビンと同様に、位置C−3ではメトキシル水素のシグナルがなく、エリスラルチンでは、酸素化された置換体に関するδ4.5の多重線のみが位置C−3に起因していた。エリスラルチンで観察されたものと同様に、H及び13CのNMRスペクトルにより、C−11のヒドロキシルの存在に起因するそれぞれδ4.74(t)及びδ63.69の化学シフトが明らかとなった。これらの結果は今回初めて報告されるものであり、したがって、物質3は新規エリスリナアルカロイドであると認識され、11−ヒドロキシ−エリスラビン(11−OH−エリスラビン)と命名した。イー・ムルングの花の粗抽出物から単離したアルカロイド11−OH−エリスラビンの化学構造を以下に表す。
【化2】

【実施例3】
【0022】
薬理学的評価
サンパウロ州立大学(UNESP/Araraquara)の中央動物研究室(central animal laboratory)からの体重25〜35gのスイスマウスを用いた。動物は、床に木屑を敷き、飼料及び水が自由に利用可能なポリプロピレン製ケージ内で、10〜12匹の動物の群で飼育した]。動物研究室は22±1℃の一定温度の下に維持し、照明は午前7:00から午後7:00の12時間サイクルで制御し、湿度は50〜60%に保った。抽出物、標準薬物及びビヒクルで薬理学的評価を行った。したがって、F2(3、6、10、17及び30mg/kg)並びにアルカロイドエリスラルチン、エリスラビン及び11−OH−エリスラビン(3及び10mg/kg)に加えて、凍結乾燥した含水アルコール抽出物(50、100、200及び400mg/kg)を用い、胃管栄養法による経口摂取で投与した。用いた標準薬物は2mg/kgの用量のジアゼパム(DZP)であった(腹腔内による)。すべての溶液は実験当日に0.9%塩素酸ナトリウムで調製して15分間超音波処理し、ジアゼパムは0.9%塩素酸ナトリウム及びTween−80中の溶液とした。午前11:00及び午後5:00の間に実施し、実験の装置及び手順は後に記載する。高架式T迷路は透明なガラス製の壁及び木製の床で作製され、2つの開いたアーム(30×5×0.25cm)に垂直に連結された1つの閉じたアーム(30×5×15cm)からなり、木製の支柱によって床から38.5cmの高さに持ち上げられている。この試験では、抑制回避の測定を5回連続して行い(基礎待ち時間、回避1、2、3及び4)、開いたアームからの脱出を1回行い、それぞれの試行の間に30秒間の間隔を設けた。回避の測定では、動物を閉じたアームの遠位部分に配置し、開いたアームに向かう4本の足すべてのこのアームの退出待ち時間を計測した。脱出の測定では、動物を右側の開いたアームの末端に配置し、このアームからの出発時刻を測定した。これらの測定中に動物が迷路のアーム内に滞在する最長時間は300秒間であった。各動物を試験した後に装置を20%エタノールで清掃した。偽陽性又は陰性を避けるために、高架式T迷路で試験した直後に動物をアリーナにおける運動活動試験に供した。この装置は、長方形底辺(40×48cm)を有し、30cmの高い壁に囲まれた白色のポリプロピレン製の箱からなる。床は30個の正方形(8×8cm)に分割されている。この試験では、動物を箱の中心に配置し、その活動を5分間ビデオ録画し、次いで象限領域を横断した回数及びストレッチ−注意姿勢の回数を分析した(WALSH及びCUMMINS、1976)。
【0023】
動物モデルのすべての結果は、最初にレヴィーン均質性試験に供した。不均一な結果を対数スケールに変換し、のちに統計的に分析した。高架式T迷路から得られた結果を二元配置分散分析(ANOVA)に供し、ここで、治療は独立因子であり、試行が従属因子である。治療の効果が有意であると判明した場合は、一元配置ANOVA、次いでダンカン事後試験を用いてデータを分析した。アリーナを用いて得られた結果を一元配置ANOVA、次いでダンカン事後試験に供した。p≦0.05の量が有意な結果であるとみなされた。
【0024】
高架式T迷路試験
表2で見られるように、11−OH−エリスラビンは高架式T迷路モデルにおける抑制回避課題において動物の成績を損なわせた。二元配置ANOVAにより、治療(F(3.33)=8.30;p<0.001)、試行(F(4.132)=14.75;p<0.0001)及び治療と試行との間の相互作用(F(12.132)=2.42;p<0.01)において有意な差が明らかとなった。一元配置ANOVAにより、治療群間でE1(F(3.33)=4.47;p<0.01)、E2(F(3.33)=5.29;p<0.01)、E3(F(3.33)=5.29;p<0.01)及びE4(F(3.33)=10.29;p<0.0001)に有意な差が示されたが、基礎待ち時間(F(3.33)=0.51;p<0.67)には示されなかった。表2は、ダンカン事後試験による、対象群と比較した各群間の差異を示す。
【0025】
開いたアームからの脱出の測定に関して、一元配置ANOVAにより、対象群と比較して治療群間で差異は存在しなかったことが示された(F(3.33)=0.71;p<0.54)。
【0026】
表2−高架式T迷路試験に供したマウスにおける11−OH−エリスラビンを用いた急性期治療の効果(平均+EPM)
【表2】

【0027】
運動活動−アリーナ
一元配置ANOVAにより、アリーナの象限を横断した回数(F(3.33)=0.76;p<0.51)及びストレッチ−注意姿勢の回数(F(3.33)=1.20;p<0.32)のどちらに関しても、用いた11−OH−エリスラビンの用量はいずれも運動活動を変更しなかったことが示された。表3は、運動活動試験で得られた結果を示す。
【0028】
表3−アリーナ内のマウスの運動活動に対する11−OH−エリスラビンの急性期治療の効果(平均+EPM)。
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】イー・ムルングの含水アルコール粗抽出物を抽出及び分画する段階、並びにイー・ムルングの含水アルコール粗抽出物を用いてアルカロイドエリスラルチン、エリスラビン及び11−OH−エリスラビンを単離する段階の一般的な例示的なスキームを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式を有する物質:
【化1】


又はその製薬上許容される同配体、塩、及び/若しくは溶媒和物を含み、前記物質がコリン作動系及び/又はセロトニン作動系の機能不全に関連することを特徴とする、エリスリナ・ムルング(Erythrina mulungu)の含水アルコール抽出物。
【請求項2】
コリン作動系及び/又はセロトニン作動系の機能不全に関連する障害が不安であることを特徴とする、請求項1記載の含水アルコール抽出物。
【請求項3】
製薬上許容されるビヒクル並びに少なくとも1つの以下の一般式の活性物質:
【化2】


又はその製薬上許容される同配体、塩、及び/若しくは溶媒和物を含みコリン作動系及び/又はセロトニン作動系の機能不全に関連する障害を治療することを特徴とする、エリスリナ・ムルング(Erythrina mulungu)の含水アルコール抽出物を含む薬剤組成物。
【請求項4】
コリン作動系及び/又はセロトニン作動系の機能不全に関連する障害が不安であることを特徴とする、請求項3記載の薬剤組成物。
【請求項5】
エリスラルチン及び/又はエリスラビンも含むことを特徴とする、請求項3又は4に記載の薬剤組成物。
【請求項6】
製薬上許容されるビヒクルを調製する段階と;
少なくとも1つの以下の一般式の活性物質:
【化3】


又はその製薬上許容される同配体、塩、及び/若しくは溶媒和物を前記ビヒクル内に取り込ませる段階と
を含むことを特徴とする、コリン作動系及び/又はセロトニン作動系の機能不全に関連する障害を治療するための医薬品の製造方法。
【請求項7】
活性物質のエリスラルチン及び/又はエリスラビンを前記ビヒクルに任意選択で加えることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記活性物質がエリスリナ属の植物の含水アルコール抽出物から得られることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記活性物質がエリスリナ・ムルング(Erythrina mulungu)植物種の含水アルコール抽出物から得られることを特徴とする請求項8記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−516992(P2008−516992A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537077(P2007−537077)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【国際出願番号】PCT/BR2005/000217
【国際公開番号】WO2006/042389
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(507130602)ユニベルシダデ エスタドゥアル パウリスタ ジュリオ デ メスクイタ フィルオ − ウネスプ (2)
【Fターム(参考)】