説明

エリスロポエチン受容体に結合する新規ペプチド

【課題】エリスロポエチン受容体(EPO-R)のアゴニストであるペプチド化合物の提供。
【解決手段】エリスロポエチン受容体(EPO-R)のアゴニストであるペプチド化合物は、アミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRKを有するペプチドモノマーのホモダイマー、またはアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)Kを有するペプチドモノマーのホモダイマー、アミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)を有するペプチドモノマーのホモダイマーであり、該化合物にまた、約20,000〜約40,000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)を結合させる。該ペプチド化合物を用いた、不十分なまたは障害のある赤血球細胞産生に伴う疾患を治療することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2003年5月12日に共に出願された米国仮出願第60/469,993号および第60/470,244号に優
先権を主張する。これらの優先権出願の内容はその全体が本開示に参照して取り込まれる

【0002】
技術分野
本発明は、エリスロポエチン受容体(EPO-R)のアゴニストであるペプチド化合物に関
する。本発明はまた、そのようなペプチド化合物を用いた、不十分なまたは障害のある赤
血球細胞産生に伴う疾患を治療するための治療方法に関する。本発明のペプチド化合物を
含有する医薬組成物もまた提供される。
【背景技術】
【0003】
エリスロポエチン(EPO)は、165アミノ酸を有する糖タンパク質ホルモンであり、分子
量約34キロダルトン(kD)、そして24、38、83および126番目のアミノ酸に好ましいグリ
コシル化部位を有する。エリスロポエチンは最初、23アミノ酸のシグナルペプチドをもつ
前駆体タンパク質として産生される。EPOは3つの型:α、βおよびアシアロを生ずる。α
型およびβ型はその糖質成分にわずかに違いがあるが、同一の有効性、生物活性および分
子量を有している。アシアロ型は末端の糖質(シアル酸)が除去されたα型またはβ型で
ある。EPOをコードするDNA配列は報告されている[Linの米国特許第4,703,008号]。
【0004】
EPOは赤血球前駆細胞の体細胞分裂と分化を促進し、その結果赤血球の産生を確実にす
る。EPOは低酸素状態が優勢になると腎臓で産生される。赤血球前駆細胞のEPO誘導性分化
の間に、グロビン合成が誘導され;ヘム複合体の合成が刺激され;フェリチン受容体の数
が増加する。これらの変化により細胞はより鉄を持つようになり、成熟赤血球において酸
素を結合する機能ヘモグロビンを合成する。それゆえ、赤血球とそのヘモグロビンは酸素
を体に供給する点で鍵となる役割を果たしている。これらの変化はEPOが赤血球前駆細胞
の細胞表面上の適当な受容体と相互作用することにより始まる[例えば、GraberとKrantz
(1978)Ann. Rev. Med. 29:51-66参照]。
【0005】
EPOは、存在する多くの赤血球から組織が十分な酸化を受けるような健康状態に体があ
るときは、非常に低い濃度で血漿中に存在する。この通常の低濃度は、通常老化により失
われる赤血球細胞の交換を刺激するのに十分である。
【0006】
血液循環におけるEPOの量は、血液循環の血液細胞による酸素の移送が減少した場合の
低酸素状態の条件下において増加する。低酸素状態は例えば、出血による実質的な失血、
放射線の過剰曝露による赤血球細胞の破壊、高所または長期の無意識、もしくは各種の貧
血による酸素の取り込みの減少により引き起こされる。そのような低酸素ストレスに応答
して、量の上昇したEPOが赤血球前駆細胞の増殖を刺激することにより、赤血球細胞の産
生を増加する。血液循環中の赤血球数が通常の組織酸素要求に必要な量よりも大きくなる
と、血液循環中のEPO量は減少する。
【0007】
EPOは赤血球形成過程において必須であるので、このホルモンは低赤血球細胞産生また
は赤血球細胞産生欠乏により特徴づけされる血液の疾患の診断および治療の両者に対して
、潜在的に有用な用途を有する。最近の研究から、β-サラセミア[Vedovatoら、(1984)
Acta. Haematol. 71: 211-213];嚢胞性線維症[Vichinskyら、(1984) J. Pediatric 10
5: 15-21];妊娠および生理不順[Cotesら、(193)Brit. J. Ostet. Gyneacol. 90: 304-
311];未熟児の初期貧血[Hagaら、(1983)Acta Pediatr. Scand. 72: 827-831];脊髄損
傷[Claus-Walkerら、(1984)Arch. Phys. Med. Rehabil. 65: 370-374];宇宙飛行[Dunn
ら、(1984)Eur. J. Appl. Physiol. 52: 178-182];急性失血[Millerら、(1982)Brit
. J. Haematol. 52: 545-590];老化[Udupaら、(1984)J. Lab. Clin. Med. 103: 574-5
80および581-588、さらにLipschitzら、(1983) Blood 63: 502-509];異常赤血球生成
に伴う腫瘍性疾患状態[Dainiakら、(1983)Cancer 5: 1101-1106およびSchwartzら、(1
983)Otolaryngol. 109: 269-272];および腎不全[Eschbachら、(1987)N. Eng. J. Med
. 316: 73-78]を含む各種の疾患の状態、障害および血液の不規則性の状態に対するEPOの
治療効果について予測するための基礎が提供されている。
【0008】
精製、均一化したEPOの特性が調べられている[Hewickの米国特許第4,677,195号]。EPO
をコードするDNA配列が精製、クローニングされ、天然のEPOと同一の生化学的および免疫
学的性質を有する組換えポリペプチドを生産するために発現された。天然のEPOと同一の
オリゴ糖を有する組換えEPO分子もまた産生されている[Sasakiら、(1987)J. Biol. Che
m. 262: 12059-12076]。
【0009】
EPOの生物学的効果は、部分的に、細胞膜結合受容体との相互作用が介在していると思
われる。マウス脾臓から単離された未成熟赤血球細胞を用いた初期の研究から、EPO結合
細胞表面タンパク質はおよその分子量85,000ダルトンと100,000ダルトンのそれぞれを有
する二つのポリペプチドを含有することが示唆された[Sawyerら、(1987)Proc. Natl. A
cad. Sci. USA 84: 3690-3694]。EPO結合部位の数は、細胞表面当り平均800〜1000と算出
された。これらの結合部位のうち、およそ300はEPOに約90 pM(ピコモーラー)のKdで結
合し、残りはEPOに約570 pMの親和性の減少した状態で結合した[Sawyerら、(1987)J. B
iol. Chem. 262: 5554-5562]。別の研究から、フレンド(Friend)白血病ウイルスの貧血株
(FVA)を接種したマウスから調製したEPO応答性脾臓赤芽球は、合計約400の、それぞれ
のKd値がおよそ100 pMと800 pMの高親和性および低親和性のEPO結合部位を有することが
示唆された[Landschulzら、(1989)Blood 73: 1476-1486]。
【0010】
続く研究から、二つの型のEPO受容体(EPO-R)は、単一の遺伝子によりコードされてい
ることが示された。この遺伝子がクローニングされた[例えば、Jonesら、(1990)Blood
76, 31-35;Noguchiら、(1991)Blood 78: 2548-2556;Maoucheら、(1991)Blood 78:
2557-2563]。例えば、マウスおよびヒトのEPO-Rタンパク質のDNA配列およびコードされる
ペプチド配列は、D'AndreaらのPCT公開番号 WO 90/08822に記載されている。現在のモデ
ルは、EPOがEPO-Rに結合した結果、二つのEPO-R分子のダイマー化と活性化を生じ、続い
てシグナル伝達の過程を生じることを示唆する[例えば、Watowichら、(1992)Proc. Nat
l. Acad. Sci. USA 89: 2140-2144]。
【0011】
EPO-Rのクローニングした遺伝子が入手できることから、この重要な受容体のアゴニス
トおよびアンタゴニストの探索が容易となる。組換え受容体タンパク質を利用することに
より、各種のランダムおよび半ランダムなペプチド多様性産生システムにおける受容体-
リガンド相互作用の研究がなされる。これらのシステムには、「プラスミド上のペプチド
」システム[上記米国特許第6,270,170に記載];「ファージ上のペプチド」システム[米国
特許第5,432,018号およびCwirlaら、(1990)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 6378-638
2];「暗号化合成ライブラリー」(ESL)システム[1992年9月16日出願の米国特許出願第9
46,239号];および「大規模固定化ポリマー合成」システム[米国特許第5,143,854号;PCT
公開番号第90/15070号;Fodorら、(1991)Science 251: 767-773;DowerとFodor(1991
)Ann. Rep. Med. Chem. 26: 271-180;および米国特許第5,424,186号]が含まれる。
【0012】
最低限ある程度EPO-Rに相互作用するペプチドが同定され、例えば、Wrightonらの米国
特許第5,773,569号;第5,830,851号;および第5,986,047号;WrightonらのPCT公開 WO 96
/40749;JohnsonとZivinの米国特許第5,767,078号およびPCT公開 96/40772;BaluのPCT公
開 WO01/38342;およびSmith-Swintoskyらの WO01/91780に記載されている。特に、EPO-R
に結合し、EPO依存性の細胞増殖を刺激する、ペプチドモチーフを含むペプチドのグルー
プが同定された。さらに、モチーフを含む、これまでに同定されたペプチドはインビトロ
で、EPO依存性細胞増殖を、約20ナノモーラー(nM)から約250 nMのEC50値で刺激する。
それゆえ、20 nM〜250 nMのペプチド濃度が、EPOにより刺激される最大細胞増殖の50%を
刺激するために必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
EPO-Rアゴニストの非常に大きな可能性を考えると、この受容体により仲介される重要
な生物学的活性の研究、および疾患の治療について、より一層の効力および活性をもつペ
プチドEPO-Rアゴニストの同定をする必要性が残されている。本発明はそのような化合物
を提供する。
【0014】
この項および明細書全体における引用文献の引用および/または議論は単に、本発明の
記載を明らかにするために提供されるものであって、そのような文献が本発明の「従来技
術」であることを承認したものではない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の要約
本発明は新規ペプチド化合物を提供し、これは劇的に効力と活性を増強させるEPO-Rア
ゴニストである。これらのペプチド化合物はアミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQ
PLRK(配列番号:1)を有するペプチドモノマーのホモダイマー、またはアミノ酸配列
(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号:2)を有するペプチドモノマーのホ
モダイマー、アミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)(配列番号:3)を有
するペプチドモノマーのホモダイマーであり;ここでそれぞれのアミノ酸は標準的な一文
字略記で示されており、「(AcG)」はN-アセチルグリシン、「(1-nal)」は1-ナフチルアラ
ニン、および「(MeG)」はサルコシンとしても知られているN-メチルグリシンである。ペ
プチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーはモノマーのシステイン残基の間に分子内
ジスルフィド結合を含む。
【0016】
ペプチドモノマーは分枝した3級アミドのリンカーに共有結合することによりダイマー
化することができる。3級アミドリンカーは:
-C1O-CH2-X-CH2-C2O-
として示すことができ、ここで、XはNCO-(CH2)2-N1H-;リンカーのC1は第一のペプチドモ
ノマーのC-末端リジン残基のε-アミノ基とアミド結合を形成し;リンカーのC2は第二の
ペプチドモノマーのC-末端リジン残基のε-アミノ基とアミド結合を形成し;XのN1はカル
バメート結合またはアミド結合を介して、活性化されたポリエチレングリコール(PEG)
部分へ結合し、該PEGは約20,000〜約40,000ダルトンの分子量を有する(用語「約」はPEG
の調製品において、ある分子は記載の分子量よりも大きく、ある分子は記載の分子量より
も小さいことを示す)。
【0017】
ホモダイマーのそれぞれのモノマーがアミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK
(配列番号:1)を有し、リンカーのN1がカルバメート結合で活性化されたポリエチレン
グリコール(PEG)部分に結合している場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のよう
に表される:
【化13】

【0018】
ホモダイマーのそれぞれのモノマーがアミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK
(配列番号:1)を有し、リンカーのN1がアミド結合で活性化ポリエチレングリコール(
PEG)部分に結合している場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように表される:
【化14】

【0019】
ホモダイマーのそれぞれのモノマーがアミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(
MeG)K(配列番号:2)を有し、リンカーのN1がカルバメート結合で活性化ポリエチレン
グリコール(PEG)部分に結合している場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のよう
に表される:
【化15】

【0020】
ホモダイマーのそれぞれのモノマーがアミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(
MeG)K(配列番号:2)を有し、リンカーのN1がアミド結合で活性化ポリエチレングリコ
ール(PEG)部分に結合している場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように表さ
れる:
【化16】

【0021】
ペプチドモノマーはまた、分枝した3級アミドリンカーに共有結合することによりダイ
マー化することができる。3級アミドリンカーは次のように表すことができ:
【化17】

ここで、XはNCO-(CH2)2-NH-C3O-;リンカーのC1は第一のペプチドモノマーのC-末端リジ
ン残基のε-アミノ基とアミド結合を形成し;リンカーのC2は第二のペプチドモノマーのC
-末端リジン残基のε-アミノ基とアミド結合を形成する。本発明のペプチドダイマーはさ
らに、次の構造のスペーサー部分を含有する:
【化18】

ここで、スペーサーのC4はXのC3に共有結合しており;スペーサーのN1はカルバメート結
合またはアミド結合を介して、活性化されたポリエチレングリコール(PEG)部分に共有
結合しており、スペーサーのN2はカルバメート結合またはアミド結合を介して、活性化PE
G部分に共有結合しており、ここでPEGは約10,000〜約50,000ダルトンの分子量を有する(
用語「約」はPEGの調製品において、ある分子は記載の分子量よりも大きく、ある分子は
記載の分子量よりも小さいことを示す)。それぞれのPEG部分は個別に、10,000ダルトン
(10kD)、20kD、30kD、40kDまたは50kDである。
【0022】
ホモダイマーのそれぞれのモノマーがアミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK
(配列番号:1)を有し、スペーサーのN1およびN2が共にカルバメート結合を介して活性
化PEG部分に共有結合している場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように表され
る:
【化19】

好ましい態様では、二つのペプチドモノマーのC-末端リジンはL-リジンである。また、当
業者は上記の化学構造から二つの直鎖状PEG部分はリジンにより連結しており(例えば、m
PEG2-Lys-NHSまたはmPEG2-リシノール-NPCとして)、これもまた好ましくはL-リジンであ
り、次の立体配置を生じることを十分理解するであろう。
【化20】

【0023】
あるいは、一つまたはそれ以上のリジン残基はD-リジンであり得、当業者に容易に理解
される、別の立体配置を生じる。
【0024】
ホモダイマーのそれぞれのモノマーがアミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK
(配列番号:1)を有し、スペーサーのN1およびN2が共にアミド結合を介して活性化PEG
部分に共有結合している場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように表される:
【化21】

また、この化合物のリジン分子は好ましくは全てL-リジンであり、次の立体配置を生じる

【化22】

あるいは、一つまたはそれ以上のリジン残基はD-リジンであり得、当業者に容易に理解さ
れる、別の立体配置を生じる。
【0025】
ホモダイマーのそれぞれのモノマーがアミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(
MeG)K(配列番号:2)を有し、スペーサーのN1およびN2が共にカルバメート結合を介し
て活性化PEG部分に共有結合している場合(ここでYはカルバメート基である)、本発明の
新規ペプチド化合物は以下のように表される:
【化23】

好ましくは、この分子において、ペプチドモノマーと直鎖状PEG部分を連結するリジン残
基は全てL-リジンであり、次の立体配置を生じる:
【化24】

【0026】
あるいは、一つまたはそれ以上のリジン残基はD-リジンであり得、当業者に容易に理解
される、別の立体配置を生じる。
【0027】
ホモダイマーのそれぞれのモノマーがアミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(
MeG)K(配列番号:2)を有し、スペーサーのN1およびN2が共にアミド結合を介して活性
化PEG部分に共有結合している場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように表され
る:
【化25】

好ましくは、この分子のペプチドモノマーと直鎖状PEG部分とを連結するリジン残基は全
てL-リジンであり、次の立体配置を生じる:
【化26】

他の態様では、一つまたはそれ以上のリジン残基はD-リジンであり得、当業者に容易に理
解される、別の立体配置を生じる。
【0028】
ペプチドモノマーはまた、リジンリンカーに付くことによりダイマー化し、それにより
、一つのペプチドモノマーはリジンのε-アミノ基にC-末端で結合し、第二のペプチドモ
ノマーはC-末端でリジンのα-アミノ基に結合する。
【0029】
本発明のペプチドダイマーはさらに、次の構造のスペーサー部分を含有する:
【化27】

一つの末端で、スペーサーのN1はアミド結合を介してリジンリンカーのカルボニル炭素に
結合する。反対の末端で、スペーサーのN2はカルバメート結合またはアミド結合を介して
活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分へ結合する。ここで、PEGは約20,000〜約40,0
00ダルトンの分子量を有する(用語「約」はPEGの調製品において、ある分子は記載の分
子量よりも大きく、ある分子は記載の分子量よりも小さいことを示す)。
【0030】
スペーサーがカルバメート結合を介して活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に
結合している場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように表される:
【化28】

【0031】
スペーサーがアミド結合を介して活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合し
ている場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように表される:
【化29】

【0032】
本発明はさらに、そのようなペプチド化合物を含有する医薬組成物および、そのような
ペプチド化合物を用いた各種の病状の治療方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
発明の詳細な説明
定義
ペプチド類のアミノ酸残基は以下のように略記する:フェニルアラニンはPheまたはF;
ロイシンはLeuまたはL;イソロイシンはIleまたはI;メチオニンはMetまたはM;バリンは
ValまたはV;セリンはSerまたはS;プロリンはProまたはP;スレオニンはThrまたはT;ア
ラニンはAlaまたはA;チロシンはTyrまたはY;ヒスチジンはHisまたはH;グルタミンはGl
nまたはQ;アスパラギンはAsnまたはN;リジンはLysまたはK;アスパラギン酸はAspまた
はD;グルタミン酸はGluまたはE;システインはCysまたはC;トリプトファンはTrpまたは
W;アルギニンはArgまたはR;およびグリシンはGlyまたはG。ペプチド類の非通常アミノ
酸は以下のように略記する:1-ナフチルアラニンは1-nalまたはNp;N-メチルグリシン(
サルコシンとしても知られる)はMeGまたはSc;およびアセチル化グリシン(N-アセチル
グリシン)はAcG。
【0034】
ここで用いられるように、用語「ポリペプチド」または「タンパク質」は、アミド結合
によりαアミノ酸が互いに連結しているアミノ酸モノマーのポリマーをいう。ポリペプチ
ドはそれゆえ、長さにして少なくとも二つのアミノ酸残基、および通常はそれより長いも
のである。一般に、用語「ペプチド」は長さにして、ほんの数個のアミノ酸残基であるポ
リペプチドをいう。本発明の新規EPO-Rアゴニストのペプチド類は、好ましくは長さ約50
アミノ酸以下である。それらは、より好ましくは、長さ約17〜約40アミノ酸残基である。
ペプチドと対照的に、ポリペプチドはいくつでもアミノ酸残基を含有することができる。
それゆえ、用語ポリペプチドにはペプチドならびにより長いアミノ酸配列が含まれる。
【0035】
ここで用いられるように、語句「薬学的に許容される」は、ヒトに投与した際に「一般
に安全とされている」、例えば、生理学的に許容され、アレルギー反応または類似の有害
反応、例えば胃の異常、めまい等を生じない分子全体および組成物をいう。好ましくは、
ここで用いられているように、用語「薬学的に許容される」は、動物、特にヒトへの使用
のために連邦政府または州政府の監督官庁により認可され、あるいは米国薬局方または他
の一般的に認識される薬局方に掲載されることを意味する。用語「キャリア」は化合物と
共に投与される希釈剤、助剤、賦形剤またはビヒクルをさす。そのような薬学的キャリア
は、水、およびピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等の石油、動物、植物または合成
由来の油を含む油類などの滅菌した液体である。水または水溶液、食塩溶液およびブドウ
糖溶液およびグリセロール溶液がキャリアとして好ましく、特に注射溶液として用いられ
る。適当な薬学的キャリアは、E.W. Martinの「レミントンの薬剤科学(Remington's Pha
rmaceutical Sciences)」に記載されている。
【0036】
ここで用いられているように、用語「アゴニスト」は、その相補的な生物学的活性のあ
る受容体に結合し、その受容体を活性化し、生物学的応答を引き起こす、または受容体の
元から有する生物学的活性を促進するような生物学的活性リガンドをいう。
【0037】
EPO−Rである新規ペプチド
本発明は、劇的に効力及び活性を増強させるEPO-Rアゴニストである新規ペプチド化合
物を提供する。これらのペプチド化合物は、アミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQ
PLRK(配列番号:1)を有するペプチドモノマーのホモダイマー、またはアミノ酸配列
(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号:2)を有するペプチドモノマーのホ
モダイマーであり;ここでそれぞれのアミノ酸は標準的な一文字略記で示されており、「
(AcG)」はN-アセチルグリシン、「(1-nal)」は1-ナフチルアラニン、および「(MeG)」
はサルコシンとしても知られているN-メチルグリシンである。ペプチドダイマーのそれぞ
れのそれぞれのペプチドモノマーは、モノマーのシステイン残基の間に分子内ジスルフィ
ド結合を含む。そのようなモノマーは模式的に以下のように表される:
【化30】

および
【化31】

【0038】
これらのモノマーペプチドはダイマー化し、増強したEPO-Rアゴニスト活性をもつペプ
チドダイマーを提供する。リンカー(Lk)部分は分枝のある3級アミドで、それぞれのモ
ノマーのC-末端リジン残基に同時に付くことにより二つのペプチドのC-末端を架橋する。
3級アミドリンカーは次のように表され:
【化32】

ここで、XはNCO-(CH2)2-N1H-;リンカーのC1は第一のペプチドモノマーのC-末端リジン残
基のε-アミノ基とアミド結合を形成し;リンカーのC2は第二のペプチドモノマーのC-末
端リジン残基のε-アミノ基とアミド結合を形成し;XのN1はカルバメート結合またはアミ
ド結合を介して活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合し、該PEGは約20,000〜
約40,000ダルトンの分子量を有する(用語「約」はPEGの調製品において、ある分子は記
載の分子量よりも大きく、ある分子は記載の分子量よりも小さいことを示す)。
【0039】
3級アミドリンカーはまた、次のように表され:
【化33】

ここでXはNCO-(CH2)2-NH-C3O-;リンカーのC1は第一のペプチドモノマーのC-末端リジン
残基のε-アミノ基とアミド結合を形成し;およびリンカーのC2は第二のペプチドモノマ
ーのC-末端リジン残基のε-アミノ基とアミド結合を形成する。本発明のペプチドダイマ
ーはさらに、次の構造のスペーサー部分を含有する:
【化34】

ここで、スペーサーのC4はXのC3に共有結合し;スペーサーのN1はカルバメート結合また
はアミド結合を介して活性化PEG部分に共有結合し;およびスペーサーのN2はカルバメー
ト結合またはアミド結合を介して活性化PEG部分に共有結合する。ここで、PEGは約10,000
〜約60,000ダルトンの分子量を有する(用語「約」はPEGの調製品において、ある分子は
記載の分子量よりも大きく、ある分子は記載の分子量よりも小さいことを示す)。
【0040】
それゆえ、本発明の新規ペプチドはまた、カルバメート結合またはアミド結合を介して
ペプチドダイマーの3級アミドリンカーへ共有結合するPEG部分を含むことができる。PEG
は薬学的に許容される水溶性ポリマーである。本発明に使用するためのPEGは、約20キロ
ダルトン(20K)〜約60Kの分子量を有し(用語「約」はPEGの調製品において、ある分子
は記載の分子量よりも大きく、ある分子は記載の分子量よりも小さいことを示す)、直鎖
状の、分枝のないPEGである。最も好ましくは、PEGは約30K〜約40Kの分子量を有する。当
業者は、望みの用量;循環時間;タンパク質分解に対する耐性;もしあれば、生物学的活
性に対する効果;取り扱いの容易さ;抗原性の程度または欠損;および治療ペプチドに対
する他の既知のPEGの効果等を考慮して、希望するポリマーサイズを選択することができ
る。
【0041】
本発明のペプチド、ダイマーおよび他のペプチド系分子は、各種化学構造のいずれかを
用いて、水溶性ポリマー(例えば、PEG)に結合し、水溶性ポリマーを分子の受容体結合
部分(例えば、ペプチド+スペーサー)に連結することができる。代表的な態様は、受容
体結合部分への水溶性ポリマーの共有結合のために単一の結合連結部を用いているが、別
の態様では、複数結合連結部を用いることができ、これらはスペーサーおよび/または一
方または両方のペプチド鎖との共有結合連結部を含み得る、異なる結合連結部で、異なる
種類の水溶性ポリマーが受容体結合部分に結合しているようなさらなる改変を含む。いく
つかの態様では、ダイマーまたは高次マルチマーは異なる種類のペプチド鎖(すなわち、
ヘテロダイマーまたはその他のヘテロマルチマー)を含有する。一例であって、これに限
られないが、ダイマーは、PEG結合接合部を有する第一のペプチド鎖、およびPEG結合接合
部を欠くか、第一のペプチド鎖とは異なる結合化学物質を用いる第二のペプチド鎖を含有
し、いくつかの変法では、スペーサーはPEG結合接合部を含むか、またはこれを欠き、前
記スペーサーは、PEG化されていれば、第一および/または第二のペプチド鎖のものとは異
なる結合化学物質を利用することができる。さらなる態様は、受容体結合部のスペーサー
部分に結合するPEG、および分子のペプチド部分のアミノ酸の一つの側鎖に結合する異な
る水溶性ポリマー(例えば、炭水化物)を利用する。
【0042】
多種のポリエチレングリコール(PEG)類が、受容体結合部(ペプチド+スペーサー)
のPEG化に用いることができる。実質的に、適切な反応性PEG試薬を用いることができる。
好ましい態様では、反応性PEG試薬は、受容体結合部への接合によりカルバメート結合ま
たはアミド結合を形成する。適切な反応性PEG類には、NOF社(〒150-6019 東京都渋谷区
恵比寿4丁目20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー)の薬物送達システムカタログ(2003
)およびネクター・セラピューティクス(35806 アラバマ州ハンツビル ディスカバリ
ードライブ490)の分子工学技術カタログ(2003)で市販されているものが含まれるが、
これらに限定されない。例えば、限定されないが、次のPEG試薬が各種態様で、しばしば
好ましく用いられる:mPEG2-NHS、mPEG2-ALD、マルチアームPEG、mPEG(MAL)2、mPEG2(MAL
)、mPEG-NH2、mPEG-SPA、mPEG-SBA、mPEG-チオエステル、mPEG-ダブルエステル、mPEG-BT
C、mPEG-ButyrALD、mPEG-ACET、ヘテロ官能基PEG類(NH2-PEG-COOH、Boc-PEG-NHS、Fmoc-
PEG-NHS、NHS-PEG-VS、NHS-PEG-MAL)、PEGアクリレート類(ACRL-PEG-NHS)、PEG-リン
脂質(例えば、mPEG-DSPE)、当業者により選択された化学物質により活性化されるグリ
セリン系PEGのGLシリーズを含むサンブライト(SUNBRITE)シリーズのマルチアームPEG、
任意のサンブライト活性化PEG(限定はされないが、カルボキシル-PEG、p-NP-PEG、トレ
シル-PEG、アルデヒドPEG、アセタール-PEG、アミノ-PEG、チオール-PEG、マレイミド-PE
G、ヒドロキシル-PEG-アミン、アミノ-PEG-COOH、ヒドロキシル-PEG-アルデヒド、カルボ
ン酸無水物型PEG、機能化PEG-リン脂質および他の類似および/または特定の応用と使用に
ついて当業者により選択された適切な反応性PEG-リン脂質。
【0043】
本発明の新規ペプチドはまた、カルバメート結合またはアミド結合を介してスペーサー
部分に共有結合し、ここで該スペーサー部分がペプチドダイマーの3級アミドリンカーに
共有結合しているような二つのPEG部分を含む。本発明のそのような態様で用いられてい
る二つのPEG部分のそれぞれは直鎖状であり、単一点で結合している。それぞれのPEG部分
は好ましくは、約10キロダルトン(10K)〜約60Kの分子量を有する(用語「約」は、任意
のPEG標品において、ある分子は規定された分子量よりも重く、またあるものは軽いこと
を表す)。直鎖状PEG部分が特に好ましい。より好ましくは、二つのPEG部分のそれぞれは
、約20Kから約40Kの分子量、さらにより好ましくは約20Kと約40Kとの間の分子量を有して
いる。さらにより好ましくは、二つのPEG部分のそれぞれは、約20Kの分子量を有している
。当業者は、所望の用量、循環時間;タンパク質分解に対する耐性;あるとすれば生物学
的活性に対する効果;扱いの容易さ;抗原性の程度または欠失度;および治療ペプチドに
対するPEGの他の既知の効果などの考慮に基づいて、目的のポリマーを選択できる。
【0044】
本発明はまた、アミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)(配列番号:3)
を有するペプチドモノマーのホモダイマーであるペプチドアゴニストを含有する。ここで
、それぞれのアミノ酸は標準的な一文字略記で示されており、「(AcG)」はN-アセチルグ
リシン、「(1-nal)」は1-ナフチルアラニン、および「(MeG)」はサルコシンとしても知ら
れているN-メチルグリシンである。ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーは、
モノマーのシステイン残基の間に分子内ジスルフィド結合を含む。そのようなモノマーは
模式的に以下のように表される:
【化35】

【0045】
これらのモノマーペプチドはダイマー化し、増強したEPO-Rアゴニスト活性をもつペプ
チドダイマーを提供する。リンカー(Lk)部分はリジン残基であり、それぞれのモノマー
のC-末端アミノ酸に同時に結合することにより、二つのペプチドモノマーのC-末端を架橋
する。一方のペプチドモノマーは、リジンのε-アミノ基にそのC-末端で結合し、第二の
ペプチドモノマーはそのC-末端でリジンのα-アミノ基と結合する。例えば、ダイマーは
構造的に式I(Formula I)に示したように表され、式II(Formula Ii)に示されるように
要約される:
【化36】

式Iおよび式IIにおいて、N2はリジンのε-アミノ基の窒素原子を表し、N1はリジンのα-
アミノ基の窒素原子を表す。
【0046】
本発明のペプチドダイマーはさらに、次の構造のスペーサー部分を含有する:
【化37】

一方の端で、スペーサーのN1はアミド結合を介してリジンリンカーのカルボニル炭素と結
合する。反対側の端で、スペーサーのN2はカルバメート結合またはアミド結合を介して活
性化ポリエチレングリコール(PEG)部分と結合する。ここで、PEGは約10,000〜約60,000
ダルトンの分子量を有する(用語「約」は、任意のPEG標品において、ある分子は規定さ
れた分子量よりも重く、またあるものは軽いことを表す)。より好ましくは、PEGは約20,
000〜約40,000ダルトンの分子量を有する。
【0047】
それゆえ、本発明の新規ペプチドはまた、PEG部分を含み、PEG部分はペプチドダイマー
に共有結合している。PEGは薬学的に許容される水溶性ポリマーである。本発明に使用す
るためのPEGは、分子量約20キロダルトン(20K)〜約60Kを有する直鎖状の分枝のないPEG
であり得る(用語「約」は、任意のPEG標品において、ある分子は規定された分子量より
も重く、またあるものは軽いことを表す)。より好ましくは、PEGは約20K〜約40Kの分子
量、さらにより好ましくは、約30K〜約40Kの分子量を有する。当業者は、所望の用量、循
環時間;タンパク質分解に対する耐性;あるとすれば生物学的活性に対する効果;扱いの
容易さ;抗原性の程度または欠失度;および治療ペプチドに対するPEGの他の既知の効果
などの考慮に基づいて、目的のポリマーを選択できる。
【0048】
ホモダイマーのそれぞれのモノマーがアミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK
(配列番号:1)を有し、リンカーのN1がカルバメート結合を介して活性化ポリエチレン
グリコール(PEG)部分に結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように表
される:
【化38】

【0049】
ホモダイマーのそれぞれのモノマーがアミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK
(配列番号:1)を有し、リンカーのN1がアミド結合を介して活性化ポリエチレングリコ
ール(PEG)部分に結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように表される

【化39】

【0050】
ホモダイマーのそれぞれのモノマーがアミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(
MeG)K(配列番号:2)を有し、リンカーのN1がカルバメート結合を介して活性化ポリエ
チレングリコール(PEG)部分に結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のよ
うに表される:
【化40】

【0051】
ホモダイマーのそれぞれのモノマーがアミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(
MeG)K(配列番号:2)を有し、リンカーのN1がアミド結合を介して活性化ポリエチレン
グリコール(PEG)部分に結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように表
される:
【化41】

【0052】
本発明の好ましいペプチドダイマーには次のものがあげられるが、これに限定されない:
【表1】




【0053】
ホモダイマーのそれぞれのモノマーがアミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK
(配列番号:1)を有し、スペーサーのN1およびN2の両者がカルバメート結合を介して活
性化PEG部分に共有結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように表される

【化42】

【0054】
ホモダイマーのそれぞれのモノマーがアミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK
(配列番号:1)を有し、スペーサーのN1およびN2の両者がアミド結合を介して活性化PE
G部分に共有結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように表される:
【化43】

【0055】
ホモダイマーのそれぞれのモノマーがアミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(
MeG)K(配列番号:2)を有し、スペーサーのN1およびN2の両者がカルバメート結合を介
して活性化PEG部分に共有結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように表
される:
【化44】

【0056】
ホモダイマーのそれぞれのモノマーがアミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(
MeG)K(配列番号:2)を有し、スペーサーのN1およびN2の両者がアミド結合を介して活
性化PEG部分に共有結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように表される

【化45】

【0057】
本発明の好ましいペプチドダイマーには次のものが含まれるが、これらに限定されない

【表2】







【0058】
スペーサーがカルバメート結合を介して活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に
結合している場合、本発明の新規化合物は以下のように表される:
【化46】

【0059】
スペーサーがアミド結合を介して活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合し
ている場合、本発明の新規化合物は以下のように表される:
【化47】

【0060】
このダイマー構造は、[Ac-ペプチド、ジスルフィド]2Lys-スペーサー-PEG20-40Kと記載
することができ、それぞれのペプチドは分子内ジスルフィドループ、およびC-末端のリジ
ンとPEG部分との間に共有結合を形成するスペーサー分子を含み、PEGが約20,000〜約40,0
00ダルトンの分子量を有する、リジンのαおよびε-アミノ基の両者に結合するN-末端が
アセチル化されたペプチドを示す。
【0061】
本発明の好ましいペプチドダイマーとしては、次のものがあげられるが、これらに限定
されない:
【表3】

【0062】
20個の通常のアミノ酸の立体異性体(例えば、D-アミノ酸)、a,a-2基置換アミノ酸な
どの非天然アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸および他の非通常アミノ酸もまた、本発
明の化合物の適当な成分である。非通常アミノ酸の例としては、限定はされないが、β-
アラニン、3-ピリジルアラニン、4-ヒドロキシプロリン、O-ホスホセリン、N-メチルグリ
シン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリ
ジン、ノルロイシンおよび他の類似アミノ酸、ならびにイミノ酸が含まれる。アミノ末端
の修飾、カルボキシ末端の修飾、一つまたはそれ以上の天然に存在する遺伝コードされた
アミノ酸を非通常アミノ酸と置換すること、一つまたはそれ以上のアミノ酸残基の側鎖の
修飾、ペプチドのリン酸化等を含む他の修飾もまた可能である。
【0063】
本発明のペプチドの配列はそれだけで、またはペプチド鎖のN-末端および/またはC-末
端の拡張部分と連結して存在することができる。そのような拡張部分は天然に存在しない
配列を任意に持つ、またはもたずに天然にコードされるペプチド配列であってもよく;拡
張部分には全ての付加、欠失、点突然変異、または他の配列修飾、あるいは当業者が望む
ような組み合わせが含まれる。例えば、限定はされないが、天然に存在する配列は全長ま
たは部分長であり、側鎖の結合を介して炭水化物、PEG、他のポリマー等の結合部位を提
供するためのアミノ酸の置換を含む。変法では、アミノ酸置換はヒト免疫系に適合できる
配列のヒト化をもたらす。非-免疫グロブリンスペーサー配列をもつ、またはもたない、
本発明のEPO-R活性化配列に隣接する、または近接する免疫グロブリン配列を含む、全て
の型の融合タンパク質が提供される。態様の一つの型は、重鎖および/または軽鎖の可変
(V)領域にEPO-R活性化配列を有する免疫グロブリン鎖である。
【0064】
本発明のペプチド化合物の調製
ペプチド合成
本発明のペプチドは、当業者に既知の古典的な方法により調製することができる。これ
らの標準的な方法としては、排他的固相合成、部分的固相合成法、断片縮合、古典的な溶
液法、および組換えDNA技術をあげることができる[例えば、Merrifield J. Am. Chem. So
c. 1963 85: 2149参照]。
【0065】
一態様において、ペプチドダイマーのペプチドモノマーは、個々に合成され、合成に続
いてダイマー化される。
【0066】
別の態様では、ダイマーのペプチドモノマーは、ペプチド合成の開始部位として機能で
きる二つの官能基および、(例えば、固体支持体の表面に存在するような)他の分子部分
に結合できる第三の官能基(例えば、カルボキシル基またはアミノ基)を有する分枝の3
級アミドリンカーLk部分にそのC-末端を介して結合している。この場合、二つのペプチド
モノマーは、固相合成法の変法で、リンカーLk部分の反応性窒素基上に直接合成すること
ができる。そのような合成は連続であっても、同時であっても良い。
【0067】
別の態様では、二つのペプチドモノマーは、固相合成法の変法で、リンカーLk部分の二
つの反応性窒素原子上に直接合成することができる。そのような合成は連続的であっても
、同時であっても良い。この態様においては、ペプチド合成の開始部位として機能できる
二つのアミノ基および別の分子部分に結合できる(例えば、固体支持体の表面に存在する
ような)、第三の官能基(例えば、リジンのカルボキシル基;またはカルボキシル基がア
ミド部分-CONH2に置換されているリジン残基であるリジンアミドのアミノ基)を有するリ
ジンリンカー(Lk)部分が用いられる。
【0068】
リンカー上へのダイマーのペプチド鎖の連続合成が行われる場合、リンカー分子上の二
つのアミン官能基は、二つの異なる直角に除去できるアミン保護基で保護される。保護リ
ンカーはリンカーの第三の官能基を介して固体支持体に連結される。第一のアミン保護基
は除去され、ダイマーの第一ペプチドが第一の脱保護されたアミン部分上に合成される。
その後、第二のアミン保護基が除去され、ダイマーの第二ペプチドが第二の脱保護された
アミン部分に合成される。例えば、リンカーの第一のアミノ部分はAllocで保護し、第二
のものはFmocで保護することができる。この場合、Fmoc基(Alloc基ではなく)は、穏和
な塩基 [例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)中、20% ピペリジン]で処理することによ
り除去され、第一ペプチド鎖が合成される。その後、Alloc基が適当な試薬[例えば、Pd (
PPh3)/4-メチルモルホリンとクロロホルム]を用いて除去され、第二のペプチド鎖が合成
される。システインの異なるチオール保護基を(以下に述べるように)対照のジスルフィ
ド結合形成に用いる場合、この方法は、ダイマーのペプチド鎖の最終的なアミノ酸配列が
同一である場合でさえ用いられなければならないことに注意すべきである。
【0069】
リンカー上へのダイマーのペプチド鎖の同時合成が実施される場合、リンカー分子の二
つのアミン官能基が同一の除去可能なアミン保護基を用いて保護される。保護されたリン
カーは、リンカーの第三の官能基を介して固体支持体に連結される。この場合、リンカー
分子の二つの保護された官能基は同時に脱保護され、二つのペプチド鎖が同時に脱保護さ
れたアミン上に合成される。この方法を用いて、ダイマーのペプチド鎖の配列が同一にな
り、システイン残基のチオール保護基が全て同一であることに注意すべきである。
【0070】
ペプチド合成の好ましい方法は固相合成である。固相ペプチド合成法は当業者には周知
である[例えば、スチュワート(Stewart)の「固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide
Syntheses)」(フリーマン・アンド・カンパニー:サンフランシスコ)1969;ノバビオ
ケム社(米国サンディエゴ)の2002/2003 一般カタログ;グッドマンの「ペプチドおよび
ペプチド擬似体の合成(Synthesis of Peptides and Peptidomimetics)」(Houben-Weyl
, Stuttgart)2002を参照]。固相合成において、合成は、典型的にはα-アミノ保護樹脂
を用いて、ペプチドのC-末端の端から開始される。適当な開始材料を、例えば必要なα-
アミノ酸をクロロメチル化樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ポリスチレン樹脂、ベンズヒド
リルアミン樹脂等に結合することにより調製できる。そのような一つのクロロメチル化樹
脂は、商品名BIO-BEADS SX-1としてバイオラド・ラボラトリーズ(カリフォルニア州リッ
チモンド)から販売されている。ヒドロキシメチル樹脂の調製については、記載されてい
る[Bodonszlcyら、(1966)Chem. Ind.(ロンドン)38: 1597]。ベンズヒドリルアミン(
BHA)樹脂は記載され[PiettaとMarshall、(1970)Chem. Commun. 650]、塩酸型がベック
マン・インストルメンツ社(カリフォルニア州パロアルト)から市販されている。例えば
、α-アミノ基が保護されたアミノ酸を、Gisin (1973) Helv. Chim. Acta 56 : 1467に記
載の方法に従って、重炭酸セシウム触媒を用いてクロロメチル化樹脂に連結することがで
きる。
【0071】
最初のカプリング後、α-アミノ保護基は、例えば、有機溶媒中のトリフルオロ酢酸(T
FA)または塩酸(HCI)溶液を用いて、室温で除去される。その後、α-アミノ基の保護さ
れたアミノ酸は、支持体に結合して伸長していくペプチド鎖に連続して連結される。α-
アミノ保護基は、アシル型保護基(例えば、ホルミル、トリフルオロアセチル、アセチル
)、芳香族ウレタン型保護基[例えば、ベンジルオキシカルボイル(Cbz)および置換Cbz]
、脂肪族ウレタン保護基[例えばt-ブチルオキシカルボニル(Boc)、イソプロピルオキシ
カルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル]、およびアルキル型保護基(例えば、ベ
ンジル、トリフェニルメチル)、フルオロエニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、アリ
ルオキシカルボニル(Alloc)、および1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イ
リデン)エチル(Dde)を含むペプチドの段階的合成技術において有益であることが知られ
ている基である。
【0072】
側鎖保護基(典型的には、エーテル、エステル、トリチル、PMC等)は、カプリングの
間完全に残っており、アミノ末端の保護基の脱保護の間、またはカプリングの間離れない
。側鎖保護基は、最終のペプチドの合成完了時に、および標的ペプチドを変化させない反
応条件下で、除去可能でなければならない。Tyrの側鎖保護基には、テトラヒドロピラニ
ル、tert-ブチル、トリチル、ベンジル、Cbz、Z-Br-Cbz、および2,5-ジクロロベンジルが
含まれる。Aspの側鎖保護基には、ベンジル、2,6-ジクロロベンジル、メチル、エチル、
およびシクロヘキシルが含まれる。ThrとSerの側鎖保護基としては、アセチル、ベンゾイ
ル、トリチル、テトラヒドロピラニル、ベンジル、2,6-ジクロロベンジル、およびCbzを
あげることができる。Argの側鎖保護基は、ニトロ、トシル(Tos)、Cbz、アダマンチル
オキシカルボニルメシトイルスルホニル(Mts)、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベン
ゾフラン-5-スルホニル(Pbf)、4-メトキシ-2,3,6-トリメチル-ベンゼンスルホニル(Mt
r)、またはBocを含む。Lysの側鎖保護基はCbz、2-クロロベンジルオキシカルボニル(2-
Cl-Cbz)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(2-Br-Cbz)、Tos、またはBocを含む。
【0073】
α-アミノ保護基の除去後、残っている保護アミノ酸は、望む順に段階的に連結される
。それぞれの保護アミノ酸は、一般に、溶液中、例えば塩化メチレン(CH2Cl2)、N-メチ
ルピロリドン、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはこれらの混合物中において、2-(1H
-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3 テトラメチルウロニウムへキサフルオロリン酸(
HBTU)またはジシクロへキシルカルボジイミド(DCC)などの適切なカルボキシル基活性
剤を用いて、約3倍過剰で反応させる。
【0074】
所望のアミノ酸配列が完成した後、所望のペプチドはトリフルオロ酢酸(TFA)または
フッ化水素(HF)などの試薬を用いた処理により、樹脂支持体から脱離され、樹脂からペ
プチドを切断するだけでなく全ての残存する側鎖の保護基も切断する。クロロメチル化さ
れた樹脂が使われるときは、フッ化水素により、遊離のペプチド酸が形成される。ベンズ
ヒドリルアミン樹脂が使われるときは、フッ化水素処理により、遊離のペプチドアミドが
直接生じる。あるいは、クロロメチル化された樹脂を使用するときは、側鎖の保護ペプチ
ドを、所望の側鎖の保護アミドを与えるアンモニアを用いた、または側鎖の保護されたア
ルキルアミドもしくはジアルキルアミドを与えるアルキルアミンを用いた、ペプチド樹脂
の処理によって脱離させることができる。側鎖保護は、次に、遊離のアミド、アルキルア
ミド、またはジアルキルアミドを生ずるフッ化水素を用いた処理による通常の方法で除去
される。
【0075】
本発明のエステルを調製する際に、ペプチド酸を調製するために使われた樹脂を使用し
、側鎖の保護されたペプチドを塩基と適切なアルコール(例えばメタノール)を用いて切
断する。その後、側鎖保護基が、フッ化水素による通常の方法での処理により除去され、
所望のエステルが得られる。
【0076】
これらの手順はまた、20個の天然に存在する、遺伝コードされたアミノ酸以外のアミノ
酸が、本発明の化合物のいずれかの1、2またはそれ以上の位置で置換されるペプチドを合
成するために用いることができる。本発明のペプチドに置換できる合成アミノ酸は、制限
されないが、N-メチル、L-ヒドロキシプロピル、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニル、
L-δ-ヒドロキシリジルおよびD-δ-メチルアラニルなどのδアミノ酸、L-α-メチルアラ
ニル、βアミノ酸、およびイソキノリルを含む。D-アミノ酸および天然に存在しない合成
アミノ酸はまた、本発明のペプチドに組み入れられる。
【0077】
ペプチド修飾
本発明のペプチド化合物のアミノ末端および/またはカルボキシ末端を修飾して発明の
別の化合物を製造することもできる。例えば、アミノ末端を酢酸、またはα-クロロ酢酸
、α-ブロモ酢酸もしくはα-ヨード酢酸などのそのハロゲン化誘導体を用いてアセチル化
できる。
【0078】
天然に存在する20個の遺伝コードされるアミノ酸(または立体異性のD-アミノ酸)の側
鎖を他の側鎖、例えば、アルキル、低級アルキル、4-、5-、6-または7-員環アルキル、ア
ミド、アミド低級アルキル、アミドジ(低級アルキル)、低級アルコキシ、ヒドロキシ、
カルボキシおよびそれらの低級エステル誘導体、および4-、5-、6-または7-員複素環に置
換することができる。特に、プロリン残基の環のサイズが5員から4、6または7員に変化し
たプロリン類縁体を用いることもできる。環状基は飽和であっても、不飽和であってもよ
く、不飽和ならば、芳香族であっても、非芳香族であってもよい。複素環基は好ましくは
、一つまたはそれ以上の窒素、酸素および/または硫黄のヘテロ原子を含む。そのような
基の例としては、フラザニル基、フリル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリル基、イミ
ダゾリニル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、モルホリニル基(例えば、モルホ
リノ基)、オキサゾリル基、ピペラジニル基(例えば、1-ピペラジニル基)、ピペリジル
基(1-ピペリジル基、ピペリジノ基)、ピラニル基、ピラジニル基、ピラゾリジニル基、
ピラゾリニル基、ピラゾリル基、ピリダジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピロリ
ジニル基(例えば、1-ピロリジニル基)、ピロリニル基、ピロリル基、チアジアゾリル基
、チアゾリル基、チエニル基、チオモルホリニル基(例えば、チオモルホリノ)およびチ
アゾリル基をあげることができる。これらの複素環基は飽和であっても、不飽和であって
もよい。基が置換される場合、置換基はアルキル、アルコキシ、ハロゲン、酸素、または
飽和もしくは不飽和フェニル基でよい。
【0079】
ペプチドは、リン酸化および他の方法[例えばHruby, et al.(1990) Biochem J, 268: 2
49-262に記載]によって容易に改変することもできる。
【0080】
本発明のペプチド化合物はまた、類似の生物学的活性を有する非ペプチド化合物の構造
モデルとして機能する。当業者は、リードペプチド化合物と同様または類似の所望の生物
活性を有するが、溶解性、安定性ならびに加水分解およびタンパク質分解に対しての感受
性について、リードよりも良い活性を有する化合物を構築するための各種技術が得られる
ことを認識する[MorganとGainor(1989)Ann. Rep. Med. Chem. 24:243-252参照]。こ
れらの技術には、ペプチドのバックボーンをホスホネート、アミデート、カルバメート、
スルホンアミド、2級アミンおよびN-メチルアミノ酸からなるバックボーンに置換するこ
とが含まれる。
【0081】
ジスルフィド結合の形成
本発明の化合物は、二つの分子内ジスルフィド結合を含む。そのようなジスルフィド結
合はそれぞれのペプチドモノマーのシステイン残基の酸化により形成される。
【0082】
一態様において、システインの結合形成の調節は、所望の異性体の形成を最適化するの
に有効な型と濃度の酸化剤を選択することにより行われる。例えば、二つの分子内ジスル
フィド結合(それぞれのペプチド鎖に一つ)を形成するペプチドダイマーの酸化は、酸化
剤がDMSOまたはヨウ素(I2)であるときに、優先的に行われる(分子内ジスルフィド結合
の形成全体で)。
【0083】
別の態様において、システイン結合の形成は、ペプチド合成時のチオール保護基の選択
的使用により調節される。例えば、二つの分子内ジスルフィド結合を有するダイマーが望
まれる場合、第一のモノマーペプチド鎖は、第一のチオール保護基[例えば、トリチル基
(Trt)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)および1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシク
ロヘキサ-1-イリデン)エチル(Dde)等]で保護されたコア配列の二つのシステイン残基と
共に合成され、その後、第二のモノマーペプチドが、第一のチオール保護基とは異なる第
二のチオール保護基[例えば、アセトアミドメチル(Acm)、t-ブチル(tBu)等]で保護さ
れたコア配列の二つのシステイン残基と共に合成される。その後、第一のチオール保護基
が除去され、第一のモノマーの二硫化環状物が生じ、次に第二のチオール保護基が除去さ
れ、第二のモノマーの二硫化環状物が生じる。
【0084】
本発明の他の態様は、硫黄の一つがCH2基または硫黄の他のisotereで置換されているこ
れらのジスルフィド誘導体の類縁体を提供する。これらの類縁体は本発明の化合物から調
製でき、ここでそれぞれのペプチドモノマーは少なくとも一つのCまたはホモシステイン
残基および第二のC残基の代わりにα-アミノ-γ-酪酸を、当業者に既知の方法を用いて、
分子内または分子間置換により含んでいる[例えば、Barkerら(1992)J. Med. Chem. 35:
2040-2048およびOrら(1991)J. Org. Chem. 56: 3146-3149参照]。当業者は容易に、こ
の置換もまたα-アミノ-γ-酪酸とホモシステインの他の同族体を用いて生じさせること
ができることを理解できるであろう。
【0085】
前記の環状化の戦略に加え、他の非ジスルフィドペプチド環状化戦略を採用することが
できる。そのような環状化の変法には、例えば、アミド環状化戦略、ならびにチオ-エー
テル結合の形成を含む方法があげられる。それゆえ、本発明の化合物は、分子内アミド結
合または分子内チオ-エーテル結合をもつ環状化形態で存在することができる。例えば、
コア配列の一つのシステイン残基がリジンに置換され、第二のシステインがグルタミン酸
に置換されているようなペプチドを合成することができる。その後、環状化モノマーが、
これら二つの残基の側鎖間のアミド結合により形成される。あるいは、コア配列の一つの
システインがリジン(またはセリン)に置換されたペプチドを合成できる。その後、環状
化モノマーは、リジン(またはセリン)残基の側鎖とコア配列の第二のシステイン残基と
の間のチオ-エーテル結合により形成され得る。こうして、ジスルフィド環状化戦略に加
えて、アミド環状化戦略とチオエーテル環状化戦略を共に、本発明の化合物を環状化する
ために容易に用いることができる。あるいは、ペプチドのアミノ末端を、α-置換された
酢酸でキャップすることができる。ここで、α-置換基はα-ハロ酢酸、例えばα-クロロ
酢酸、α-ブロモ酢酸またはα-ヨード酢酸などの離脱基である。
【0086】
分枝のある3級アミドリンカーの付加
ペプチドモノマーは分枝のある3級アミドリンカー部分によってダイマー化することが
できる。一態様において、リンカーはペプチド合成の間にペプチドに組み込まれる。例え
ば、リンカーLk部分が、ペプチド合成のための開始部位として作用できる二つの官能基と
、一つまたはそれ以上の他の分子部分に結合できる、一つまたはそれ以上の他の官能基(
例えば、カルボキシル基またはアミノ基)を含む場合、リンカーを固体支持体に結合し得
る。その後、二つのペプチドモノマーは、固相合成法の変法で、リンカーLk部分の二つの
反応性窒素基に直接合成される。
【0087】
別の態様において、リンカーはペプチド合成後のペプチドダイマーの二つのペプチドモ
ノマーに結合することができる。そのような結合は当該分野において十分確立した方法に
よって達成される。一態様において、リンカーは、合成ペプチドモノマーの標的官能基へ
の結合に適した二つの官能基を含んでいる。例えば、予め活性化されているか、適当なカ
プリング試薬の存在下で二つのカルボキシル基を含むリンカーは、二つのペプチドモノマ
ーのそれぞれの標的リジン側鎖のアミン基と反応させることができる。
【0088】
例えば、ペプチドモノマーは3級アミドリンカー
【化48】

と化学的に結合し、ここでXはNCO-(CH2)2-NH-Yであり、およびYは適当な保護基、例えばt
-ブチルオキシカルボニル(Boc)保護基;A*は適当な官能基、例えばN-オキシスクシンイ
ミドで、リンカーのC1を第一のペプチドモノマーのC-末端リジン残基のε-アミノ基と結
合するのに用いられ;そしてB*は適当な官能基、例えばN-オキシスクシンイミドで、リン
カーのC2を第二のペプチドモノマーのC-末端リジン残基のε-アミノ基と結合するのに用
いられる。
【0089】
さらに、例えば、ペプチドモノマーは3級アミドリンカー
【化49】

と化学的に結合し、ここでXはNCO-(CH2)2-NH-C3O-であり;A*は適当な官能基、例えばN-
オキシスクシンイミドで、リンカーのC1を第一のペプチドモノマーのC-末端リジン残基の
ε-アミノ基と結合するのに用いられ;およびB*は適当な官能基、例えばN-オキシスクシ
ンイミドで、リンカーのC2を第二のペプチドモノマーのC-末端リジン残基のε-アミノ基
と結合するのに用いられ;そして3級アミドリンカーはスペーサー部分
【化50】

と化学的に結合し、ここでXのC3はスペーサーのC4に共有結合し;およびYは適当な官能基
、例えばt-ブチルオキシカルボニル(Boc)保護基である。
【0090】
リジンリンカーの付加
ペプチドモノマーはリジンリンカーLk部分によりダイマー化できる。一態様において、
リジンリンカーはペプチド合成の間にペプチドに取り込まれる。例えば、リジンリンカー
Lk部分が、ペプチド合成のための開始部位として作用できる二つの官能基と他の分子部分
に結合できる第三の官能基(例えば、カルボキシル基またはアミノ基)を含む場合、リン
カーは固体支持体に結合できる。その後、二つのペプチドモノマーは、固相合成法の変法
で、リジンリンカーLk部分の二つの反応性窒素基上に直接合成される。
【0091】
ペプチドダイマーがリンカーLk部分によりダイマー化している別の態様において、前記
リンカーはペプチド合成後に、ペプチドの二つのペプチドモノマーを結合する。そのよう
な結合体は、当該分野で十分確立された方法により達成することができる。一態様におい
て、リンカーは合成されたペプチドモノマーの標的官能基への結合に適している少なくと
も二つの官能基を含む。例えば、リンカーの二つの遊離アミン基は、二つのペプチドモノ
マーのそれぞれのC-末端カルボキシル基と反応し得る。
【0092】
スペーサーの付加
本発明のペプチド化合物はさらに、スペーサー部分を含有する。一態様において、スペ
ーサーはペプチド合成の間にペプチドに取り込まれる。例えば、スペーサーが遊離アミノ
基と別の分子部分へ結合させる第二の官能基(例えば、カルボキシル基またはアミノ基)
を含む場合、スペーサーは固体支持体に結合される。
【0093】
一態様において、二つの官能基を含むスペーサーは最初に第一の官能基を介して固体支
持体に結合される。次に、ペプチド合成の開始部位として機能できる二つの官能基および
他の分子部分を結合できる第三の官能基(例えば、カルボキシル基またはアミノ基)を有
するリジンリンカーLk部分は、スペーサーの第二の官能基とリンカーの第三の官能基を介
してスペーサーに結合する。その後、二つのペプチドモノマーは、リンカーLk部分の二つ
の反応性窒素基上に、固相合成技術の変法で直接合成される。例えば、遊離のアミン基を
持つ固体支持体を結合したスペーサーは、リンカーの遊離のカルボキシル基を介してリジ
ンリンカーと反応する。
【0094】
別の態様では、スペーサー部分はペプチド合成後にペプチドに結合され得る。そのよう
な結合体を当分野で十分確立した方法により達成することができる。一態様において、リ
ンカーは、合成されたペプチドの標的官能基に結合させるのに適している少なくとも一つ
の官能基を含む。例えば、遊離アミン基を有するスペーサーはペプチドのC-末端カルボキ
シル基と反応できる。別の例では、遊離のカルボキシル基をもつリンカーはリジンアミド
の遊離のアミン基と反応できる。
【0095】
ポリエチレングリコール(PEG)の結合
近年、水溶性ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)が、治療および診断上
重要なペプチドの共有結合による改変に用いられてきている。そのようなポリマーの結合
は、生物学的活性を高め、血液循環時間を延長し、免疫原性を減少し、水溶性を増加し、
プロテアーゼ消化への耐性を高めると考えられている。例えば、治療用タンパク質、例え
ばインターロイキン類(Knaufら、(1988) J. Biol. Chem.、263;15,064;Tsutsumiら、(
1995) J. Controlled Release、33;447)、インターフェロン類(Kitaら、(1990) Drug
Des. Delivery、6:157)、カタラーゼ(Abuchowskiら、(1977) J. Biol. Chem.、252:
582)、スーパーオキシド ディスムターゼ(Beauchampら、(1983) Anal. Biochem.、131
:25)、およびアデノシンデアミナーゼ(Chenら、(1981) Biochim. Biophy. Acta、660
:293)へのPEGの共有結合は、生体内での半減期を延長し、および/またはその免疫原性
および抗原性を減少させることが報告されている。
【0096】
本発明のペプチド化合物はポリエチレングリコール(PEG)部分を含有し、この部分は
カルバメート結合またはアミド結合を介して、分枝のある3級アミドリンカーまたはペプ
チドダイマーのスペーサーと共有結合している。本発明で用いられるPEGの例は、分子量
約20キロダルトン(20K)〜約40Kを有する直鎖状の、分枝のないPEGである(用語「約」
はPEGの調製品において、ある分子は記載の分子量よりも大きく、ある分子は記載の分子
量よりも小さいことを示す)。好ましくは、PEGは約30K〜約40Kの分子量を有する。
【0097】
本発明で用いられるPEGの別の例は、分子量約10K〜約60Kを有する直鎖状のPEGである(
用語「約」はPEGの調製品において、ある分子は記載の分子量よりも大きく、ある分子は
記載の分子量よりも小さいことを示す)。好ましくは、PEGは約20K〜約40Kの分子量を有
する。より好ましくは、PEGは約20Kの分子量を有する。
【0098】
PEGを共有結合する方法(PEG化)の例を以下に記載する。これらの例示記載は限定を意
味するものではない。当業者は、広範囲のPEGを共有結合する各種の方法が当該分野で十
分に確立していることを理解するであろう。したがって、当該分野で既知の多くの結合方
法のいずれかでPEGを結合したペプチド化合物が本発明に包含される。
【0099】
例えば、PEGは、活性化したPEG分子が結合し得る反応性の基(例えば、遊離のアミノ基
またはカルボキシル基)を介してリンカーと共有結合できる。PEG分子は、異なる反応性
部分を有するメトキシル化PEG(「mPEG」)を用いてアミノ基に結合し得る。そのような
ポリマーには、mPEG-スクシンイミジルスクシネート、mPEG-スクシンイミジルカーボネー
ト、mPEG-イミデート、mPEG-4-ニトロフェニルカーボネート、およびmPEG-塩化シアヌル
があげられる。同様に、PEG分子は遊離アミノ基をもつメトキシル化PEG(mPEG-NH2)を用
いてカルボキシル基と結合し得る。
【0100】
いくつかの態様において、リンカーまたはスペーサーは末端のアミノ基を含む(すなわ
ち、スペーサーの末端に位置する)。この末端のアミノ基は、適当に活性化されたPEG分
子、例えばmPEG-パラ-ニトロフェニルカーボネート(mPEG-NPC)と反応することができ、
安定な共有カルバメート結合を形成する。あるいは、この末端アミノ基は、反応性のN-ヒ
ドロキシル-スクシンイミド(NHS)基を含む、適当に活性化されたPEG、例えばmPEG-スク
シンイミジルブチレート(mPEG-SBA)またはmPEG-スクシンイミジルプロピオネート(mPE
G-SPA)と反応し、安定な共有カルバメート結合を形成する。他の態様において、リンカ
ー反応基は、活性化能をもつカルボキシル基を含み、適当な反応条件下で、アミンを含む
PEG分子と共有結合を形成することができる。適当なPEG分子にはmPEG-NH2を含み、適当な
反応条件にはカルボジイミド媒介アミド形成等が含まれる。
【0101】
EPO-Rアゴニスト活性アッセイ:
インビトロ機能アッセイ
インビトロ競合結合アッセイは、試験ペプチドのEPO-Rへの結合に対するEPOとの競合能
を定量する。例えば(例えば、米国特許第5,773,569号に記載されているように)、ヒトE
PO-Rの細胞外ドメイン(EPO結合タンパク質、EBP)は、大腸菌で組換えにより製造し、組
換えタンパク質を固体支持体、例えばミクロタイターディッシュまたは合成ビーズに結合
させることができる[例えば、ピアスケミカル社(イリノイ州ロックフォード)のスルホ
リンクビーズ(Sulfolink beads)]。その後、固定化EBPを標識組換えEPOと、または標識
組換えEPOおよび試験ペプチドとインキュベートする。試験ペプチドの連続希釈液をその
ような実験に用いる。試験ペプチドを添加しないアッセイの点をEBPへのEPOの全結合と定
義する。試験ペプチドを含む反応について、結合EPO量を定量し、対照(合計=100%)の
結合に対する割合として表す。これらの値をペプチド濃度に対してプロットする。IC50値
は、EPOのEBPに対する結合を50%に減少する(すなわち、EPO結合の50%阻害)試験ペプ
チド濃度として定義される。
【0102】
別のインビトロ競合結合アッセイは、二つのビーズ:EPO結合ビーズとEPO-R結合ビーズ
との近接作用として生じる光シグナルを測定する。ビーズの近接は、EPOのEPO-Rへの結合
により生じる。EPO-Rへの結合に対してEPOに競合する試験ペプチドは、この結合を阻害し
、発光の減少を引き起こす。発光の50%減少をもたらす試験ペプチド濃度をIC50値として
定義する。
【0103】
本発明のペプチドはEPO-Rへの結合に対してEPOに非常に効率的に競合する。この増強し
た機能は、実質的により低いペプチド濃度でのEPOの結合を阻害する能力により表される
(すなわち、非常に低いIC50値を有する)。
【0104】
EPO受容体に特異的に結合する、本発明のモノマーおよびダイマーペプチドEPO-Rアゴニ
ストの生物学的活性および効力は、インビトロで細胞ベースの機能アッセイを用いて測定
することができる。
【0105】
一つのアッセイは、ヒトEPO-Rを発現し、さらにfosプロモーターで駆動するルシフェラ
ーゼ レポーター遺伝子構築物でトランスフェクトしたマウスの前B細胞株に基づくもの
である。EPOまたは他のEPO-Rアゴニストに曝されると、そのような細胞は応答してルシフ
ェラーゼを合成する。ルシフェラーゼはその基質であるルシフェリンの添加により発光を
生ずる。それゆえ、そのような細胞におけるEPO-R活性化のレベルはルシフェラーゼ活性
の測定により定量できる。試験ペプチドの活性は、試験ペプチドの連続希釈液を細胞に添
加し、次に4時間インキュベートすることにより測定される。インキュベーション後、ル
シフェリン基質を細胞に加え、発光を測定する。最大発光の半分が得られた試験ペプチド
濃度をEC50として記録する。
【0106】
本発明のペプチドは、本アッセイにおいて、EPO-Rシグナル伝達に依存したルシフェラ
ーゼ発現を促進するための劇的に増強した能力を示す。この増強した機能は、実質的によ
り低いペプチド濃度での最大ルシフェラーゼ活性の半分を得る能力により表される(すな
わち、非常に低いEC50値を有する)。このアッセイは、本発明のEPO-Rアゴニストペプチ
ドの効力と活性を評価するのに好ましい方法である。
【0107】
別のアッセイをFDC-P1/ER細胞を用いて実施できる[Dexterら、(1980)J. Exp. Med. 1
52: 1036-1047]。この細胞は、EPO-Rが安定的にトランスフェクトされた、十分に特性が
調べられた、非形質転換の、マウス骨髄由来の細胞株である。これらの細胞はEPO依存性
の増殖を示す。
【0108】
一つのそのようなアッセイにおいて、必要な成長因子(例えば、米国特許第5,773,569
号に記載)存在下で、定常密度の半分まで細胞を成育させる。次に細胞をPBSで洗浄し、
成長因子不含の完全培地中に16-24時間飢餓状態に置く。細胞の生存率を測定した(例え
ば、トリパンブルー染色による)後に、ストック溶液(成長因子を含まない完全培地)で
、50 μLあたり約105個の細胞に調製する。試験されるペプチドEPO-Rアゴニスト化合物(
典型的には、ファージ結合もしくは他の結合または固定化ペプチドとは反対に、遊離の、
液相ペプチド)の連続希釈液を、ウェルあたり最終容量50 μLで、96ウェル組織培養プレ
ートに調製する。細胞(50 μL)をそれぞれのウェルに添加し、細胞を24-48時間培養す
る。この時点で、陰性対照は死滅期または静止期である。次に、細胞増殖を当業者に既知
の方法、例えば、細胞増殖の指標としてH3-チミジンの取り込みを測定する、MTTアッセイ
[Mosmann (1983) J. Immunol. Methods 65: 55-63参照]により、測定する。ペプチドはEP
O-R発現細胞株と親の非発現細胞株の両方で評価される。最大の細胞増殖の2分の1となる
のに必要な試験ペプチド濃度をEC50として記録する。
【0109】
本発明のペプチドは、このアッセイにおいて、EPO依存性の細胞増殖を促進するための
劇的に増強した能力を示す。この増強された機能は、ペプチドの実質的により低い濃度に
おいて、最大細胞増殖刺激活性の半分を示す能力により表されている(すなわち、非常に
低いEC50値を有する)。このアッセイは、本発明のEPO-Rアゴニストペプチドの効力と活
性を評価するための好ましい方法である。
【0110】
別のアッセイでは、細胞は、EPOを補完した培地中で定常期まで増殖させ、回収し、次
にEPO不含の培地でさらに18時間培養する。細胞を同一の細胞密度の三つの群に分ける:
一群は因子を加えない群(陰性対照)、一群はEPOを加えた群(陽性対照)、および試験
ペプチドを加える実験群である。培養した細胞を各種の時間点で回収し、固定し、DNA結
合性蛍光染料(例えば、プロピジウムアイオダイドまたはヘキストダイ、両者ともSigma
から入手可能)で染色する。蛍光を例えばFACSスキャンフローサイトメーターを用いて測
定する。細胞周期のそれぞれの相にある細胞の割合を、例えばCellFITソフトウェアのSOB
Rモデル(べクトンディキンソン)を用いて決定する。EPOまたは活性ペプチドで処理した
細胞は、陰性対照群に比べ(DNA含量の増加の指標として蛍光の増加を測定すると)、細
胞の多くの割合がS期を示すであろう。
【0111】
類似のアッセイを、FDCP-1細胞株[例えば、Dexter et al. (1980) J. Exp. Med. 152:
1036-1047参照]、またはTF-1細胞株[Kitamura, et al. (1989) Blood 73: 375-380]を用
いて実施することができる。FDCP-1は、WEHI-3ならし培地(IL-3を含む培地、ATCC番号TI
B-68)を補完すると、増殖できるが分化しない、成長因子依存性マウス多能性始原造血前
駆細胞株である。そのような実験のために、FDCP-1細胞株をヒトまたはマウスEPO-Rでト
ランスフェクトし、EPO存在下で増殖できるが分化しない、それぞれFDCP-1-hEPO-R細胞株
またはFDCP-1-mEPO-R細胞株を作出する。EPO依存性細胞株であるTF-1もまた、細胞増殖に
対するペプチドEPO-Rアゴニストの効果を測定するために用いることができる。
【0112】
また別のアッセイにおいて、Krystal(1983)Exp. Hematol 11: 649-660に記述した、
脾臓細胞へのH3-チミジン取り込みに基づくミクロアッセイのため手順を、EPOアゴニスト
として機能する本発明の化合物の能力を確かめるために用いることができる。簡単にいう
と、B6C3F1マウスにフェニルヒドラジン(60 mg/kg)を2日間毎日注射する。3日目に、脾
臓細胞を摘出し、24時間までの増殖能を、MTTアッセイを用いて確かめる。
【0113】
エリスロポエチン応答細胞株におけるEPOのEPO-Rへの結合は、Shc、vav、およびJAK2キ
ナーゼを含む、受容体と多くの細胞内タンパク質の両方にチロシンリン酸化を引き起こす
。従って、別のインビトロアッセイは、EPO-Rおよび下流の細胞内シグナル伝達タンパク
質のチロシンリン酸化を引き起こす本発明のペプチドの能力を測定する。上述の結合およ
び増殖アッセイにより同定されるとおり、活性ペプチドは、エリスロポエチン応答細胞に
おけるEPOのリン酸化パターンと同一のパターンを引き出す。このアッセイのため、FDC-P
1/ER細胞[Dexter, et al. (1980) J Exp Med 152: 1036-47]をEPO補完培地中で維持し、
定常期まで増殖させる。これらの細胞をその後、24時間EPO不含の培地で培養する。一定
数のそのような細胞をその後、約10分間37℃で、試験ペプチドとともにインキュベートす
る。EPOを用いた細胞の対照試料もまたそれぞれのアッセイで実施される。処理細胞を次
に遠心分離によって回収し、SDS溶解バッファに再懸濁し、SDSポリアクリルアミドゲル電
気泳動にかける。ゲル中の電気泳動されたタンパク質をニトロセルロースに移し、ブロッ
ト上のホスホチロシンを含むタンパク質を標準的な免疫学技術により視覚化する。例えば
、ブロットを抗ホスホチロシン抗体(例えば、アップステート・バイオテクノロジー社の
マウス抗ホスホチロシンIgG)でプローブし、洗浄し、次いで、2次抗体[例えば、Kirkega
ard & Perry Laboratories(ワシントンDC)のペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG]を
用いてプローブする。その後、ホスホチロシンを含むタンパク質を比色法、化学発光法、
または蛍光アッセイを含む標準的技術により視覚化する。例えば、化学発光アッセイは、
アマシャムのECLウェスタンブロッティングシステムを用いて実施することができる。
【0114】
本発明のペプチドの活性を評価するために用いることができる細胞ベースの別のインビ
トロアッセイは、マウス骨髄またはヒト末梢血細胞を用いたコロニーアッセイである。マ
ウス骨髄はマウス大腿部から得、一方、ヒト末梢血の試料は、健康なドナーから得ること
ができる。末梢血の場合、単核細胞を最初に、例えばフィコール-ハイパック勾配[ステム
・セル・テクノロジー社(バンクーバー、カナダ)]を用いた遠心分離により、血液から
分離する。このアッセイのために、有核細胞の計数を行い、元の試料中における有核細胞
の数と濃度を確立する。一定数の細胞を製造者の指示[ステム・セル・テクノロジー社(
バンクーバー、カナダ)]に従って、メチルセルロース上に播く。実験群を試験ペプチド
で処理し、陽性対照群はEPOで処理し、陰性対照群は処理を施さない。各群の増殖したコ
ロニーの数を、一定期間のインキュベーション、一般に10日および18日の後に、記録する
。活性ペプチドはコロニー形成を促進するであろう。
【0115】
本発明の化合物の活性を示すために用いることができる他のインビトロ生物学的アッセ
イは、Greenbergerら(1983)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 2931- 2935(EPO依存の
造血前駆細胞株);QuelleとWojchowski(1991)J. Biol. Chem. 266: 609-614(B6SUt.E
P細胞におけるタンパク質チロシンリン酸化);Dusanter-Fourtら(1992)J. Biol. Chem
. 287: 10670-10678(ヒトEPO応答性細胞におけるEPO受容体のチロシンリン酸化);Quel
leら(1992)J. Biol. Chem. 267: 17055-17060(FDC-ER細胞におけるサイトゾルタンパ
ク質、pp100のチロシンリン酸化);Worthingtonら(1987)Exp. Hematol. 15: 85-92(
ヘモグロビンの比色分析);KaihoとMiuno(1985)Anal. Biochem. 149: 117-120(2,7-
ジアミノフルオレンをもつヘモグロビンの検出);Patelら(1992)J. Biol. Chem. 267:
21300-21302(c-mybの発現);Witthuhnら(1993)Cell 74: 227-236(JAK2の会合とチ
ロシンリン酸化);Leonardら(1993)Blood 82: 1071-1079(GATA転写因子の発現);
およびAndoら(1993)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 9571-9575(D2とD3のサイクリ
ングによるG1移行の調節)に記載されている。
【0116】
ミクロフィジオメーター(microphysiometer)として知られる、モレキュラー・デバイ
ス社によって設計された機器は、各種受容体に対するアゴニストおよびアンタゴニストの
効果を測定するために首尾よく使うことができることが報告されている。この装置のため
の基礎は、受容体活性化に応答した細胞外培地の酸性化速度の変化の測定である。
【0117】
インビボ機能アッセイ
試験ペプチドの効力を評価するために用いることができる一つのインビボ機能アッセイ
は、真性赤血球増加症で、超低酸素症のマウスのバイオアッセイである。このアッセイの
ために、マウスは数日間、交互に起こる調節サイクルを受ける。このサイクルにおいて、
マウスは低圧条件と雰囲気圧条件の間を交互に繰り返される。その後、マウスを、試験試
料の投与の2-3日前に雰囲気圧に維持される。試験ペプチド試料または陽性対照マウスで
はEPO標品を馴化マウスに皮下注射する。放射標識した鉄(例えばFe59)を2日後に投与し
、放射標識した鉄の投与後2日間、血液をサンプリングする。次に、ヘマトクリットと放
射活性測定を、各血液試料について標準技術により決定する。活性のある試験ペプチドを
注射したマウスの血液試料は、試験ペプチドまたはEPOで処理されなかったマウスよりも
高い放射活性を示すであろう(赤血球ヘモグロビンによるFe59の結合ため)。
【0118】
試験ペプチドの効力を評価するために用いることができる別のインビボ機能アッセイは
、網状赤血球アッセイである。このアッセイのために、正常な未処置のマウスに、EPOま
たは試験ペプチドのどちらかを連続3日皮下注射する。3日目に、マウスにまた鉄デキスト
ランを腹腔内注射する。5日目に、血液試料をマウスから回収する。血中の網状赤血球の
割合(%)を、チアゾールオレンジ染色とフローサイトメトリー分析(reticカウントプロ
グラム)によって決定する。さらに、ヘマトクリットを手動で測定する。修正された網状
赤血球の割合は、以下の式を用いて決定される:
%RETIC(修正)= %RETIC(測定) X (Hematocrit個体/Hematocrit正常)
活性のある試験化合物は、試験ペプチドまたはEPOで処理されなかったマウスに比べ、増
加した%RETIC(修正)値を示すであろう。
【0119】
本発明のEPO-Rアゴニストペプチドの用途
本発明のペプチド化合物は、EPOの生産、およびEPO-RへのEPOの結合に影響し、あるい
は影響されると考えられる多くの因子(例えば、EPO/EPO-Rシグナル伝達/受容体活性化の
メカニズム)の評価を含む、EPOの生物学的役割を理解するためのツールとして、インビ
トロで有益である。本ペプチドはまた、EPO-Rに結合する他の化合物の開発において有益
である。その理由は、本化合物が、その開発を容易にする重要な構造活性相関情報を提供
するからである。
【0120】
さらに、本発明のペプチドは、そのEPO-Rへの結合能に基づいて、生細胞上;固定化細
胞;体液中;組織ホモジネート中;精製された天然の生体物質中;などのEPO-Rを検出す
るための試薬として用いることができる。例えば、そのようなペプチドを標識することに
より、それらの表面上のEPO-Rを有する細胞を同定することができる。さらに、EPO-Rへの
結合能に基づいて、本発明のペプチドはin situ染色、FACS(蛍光活性化セルソーティン
グ)分析、ウェスタンブロッティング、ELISA(固相酵素免疫測定法)などに用いること
ができる。さらに、EPO-Rへの結合能に基づいて、本発明のペプチドを、受容体の精製ま
たは細胞表面上(または透過型細胞の中)にEPO-Rを発現する細胞を精製するのに用いる
ことができる。
【0121】
本発明のペプチドはまた、様々の医学研究および診断目的のために市販の試薬として利
用することができる。そのような用途には、限定はされないが、(1) 各種機能アッセイに
おける候補EPO-Rアゴニストの活性を定量するための較正標準としての使用;(2) ランダ
ム・ペプチドスクリーニングにおけるブロッキング試薬としての使用、すなわちEPO-Rペ
プチドリガンドの新規ファミリーを捜す際に、ペプチドは、本発明のEPOペプチドの回復
を妨げるために用いることができる;(3) EPO-Rとの共結晶化における使用、すなわち、E
PO-Rに結合した本発明のペプチドの結晶が形成され、X線結晶解析によって受容体/ペプチ
ド構造の決定を可能にする;(4) グロビン合成およびヘム複合体合成を誘導し、分化を開
始することにより、フェリチン受容体数を増加する、赤血球前駆細胞の能力を測定するた
めの使用;(5) FDCP-1-mEPO-R細胞株およびTF-1細胞株などのEPO依存性細胞株の増殖およ
び生育を維持するための使用;(6) 放射活性発色団を用いた本発明のペプチドの標識に関
連した使用;および(7) EPO-Rが好ましく活性化され、あるいはそのような活性化が既知
の量のEPO-Rアゴニストに対して便利に較正できるような他の研究および診断用途、等が
含まれる。
【0122】
本発明のまた別の局面において、治療方法および医薬の製造方法が提供される。本発明
のペプチド化合物は、インビボでEPO-RへのEPOの結合をシミュレートするために、ヒトを
含む温血動物に投与される。従って、本発明は、EPOの欠乏に関連した疾患の治療のため
の方法を包含し、該方法は、EPO-Rを刺激するのに十分な量の発明のペプチドを投与し、
インビボでEPOの欠乏と関連した症状を軽減することを含む。例えば、本発明のペプチド
は、腎不全、および/または末期腎不全/透析の治療;AIDSに伴う貧血;慢性炎症性疾患(
例えば、リウマチ性関節炎および慢性腸炎症)と自己免疫疾患に伴う貧血;および、手術
前に患者の赤血球数を高めるための使用ができる。本発明のペプチドの投与により治療さ
れ得る他の疾患状態、障害および血液学的不順は以下を含む:ベータサラセミア;嚢胞性
繊維症;妊娠と生理不順;未熟児の早期貧血;脊髄の損傷;宇宙旅行;急性の失血;老化
;脳卒中、虚血(CNSと心臓の両方);および、異常な赤血球生成に付随する各種腫瘍。
【0123】
他の態様において、本発明のペプチド化合物は、低赤血球または赤血球の欠乏により特
徴付けされない疾患の治療、例えば輸血前の前処理に用いることができる。さらに、本発
明の化合物の投与により、出血時間が減少し、それゆえ、出血が生じることが予想される
、手術前の、あるいはその兆候のある患者への投与に用いることができる。さらに、本発
明の化合物は巨核球の活性化に使用することができる。
【0124】
EPOは、コリン作動性中枢ニューロンに対する効果と同様、血管内皮細胞に対する細胞
分裂効果および走化性効果を有することが示されているので[例えば、Amagnostouら(199
0)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 5978-5982、およびKonishiら(1993)Brain Res. 6
09: 29-35]、本発明の化合物はまた、各種血管疾患の治療用途、例えば、創傷治癒の促進
、副冠状血管の成長の促進(心筋梗塞後に生じるようなもの)、外傷治療、および血管移
植後の治療に用いることができる。本発明の化合物はまた、一般に、他の神経活性物質、
例えば神経伝達物質と比較して、絶対的な低レベルのアセチルコリンまたは相対的に低レ
ベルのアセチルコリンにより特徴付けられる、各種の神経疾患の治療用途に用いることが
できる。
【0125】
医薬組成物
本発明の別の局面では、上記EPO-Rアゴニストペプチド化合物の医薬組成物が提供され
る。そのような組成物の投与により軽減される、または調節される症状には上記のような
ものがあげられる。そのような医薬組成物は、経口、非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内(
IV)または皮下注射)、経皮(受身的に、またはイオントフォレーゼもしくはエレクトロ
ポレーションを用いた)、経粘膜(経鼻、経膣、経直腸または舌下)投与経路による、ま
たは生物侵食挿入を用いた投与のためのもので、それぞれの投与経路に適した剤形に製剤
される。一般に、薬学的に許容されうる希釈剤、防腐剤、溶解剤、乳化剤、助剤および/
またはキャリアとともに、本発明のEPO-Rアゴニストペプチドまたは誘導体産物の有効量
を含有する医薬組成物が本発明に包含される。そのような組成物には、各種緩衝液内容物
(例えば、Tris-HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH、およびイオン強度の希釈剤;界面活性剤
および溶解剤(例えば、Tween 20、Tween 80、Poysorbate 80)、抗酸化剤(例えば、ア
スコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルア
ルコール)および充填物質(例えば、ラクトース、マンニトール)等の添加剤;ポリ乳酸
、ポリグリコール酸等の重合化合物の微粒子調剤、またはリポソームへの物質の取り込み
が含まれる。ヒアルロン酸もまた用いることができる。そのような組成物は、本タンパク
質および誘導体の物理的状態、安定性、インビボの放出速度およびインビボのクリアラン
スに影響する。例えば、ここに参照して取り込まれる、レミントンの薬剤科学、第18版(
1990、マック・パブリッシング・カンパニー、18042、ペンシルベニア州イーストン)、1
435-1712ページを参照とする)。組成物は液体の形状で、あるいは乾燥粉末(例えば、凍
結乾燥)の形状で調製される。
【0126】
経口送達
ここでの使用を意図しているのは経口固体剤形であり、これは、ここに参照して取り込
まれる、レミントンの薬剤科学、第18版(1990、マック・パブリッシング・カンパニー、
18042、ペンシルベニア州イーストン)、第89章に記載されている。固体剤形には、錠剤
、カプセル、丸薬、トローチまたはトローチ剤、カプセル、小球、粉末または顆粒が含ま
れる。リポソームによるカプセル封入またはタンパク質様体によるカプセル封入が本組成
物を製剤するために用いられる(例えば、米国特許第4,925,673号に報告されたタンパク
質様ミクロスフェア)。リポソーム・カプセル封入体が用いられ、リポソームは各種ポリ
マーから誘導される(例えば、米国特許第5,013,556号)。治療のために可能な固体剤形
の記載は、ここに参照して取り込まれる、現代薬剤学(Modern Pharmaceutics)、G.S.Ba
nkerとC.T.Rhodes編、第10章(1979)のMarshall, K.によりなされている。一般に、製剤
にはEPO-Rアゴニストペプチド(またはその化学修飾体)および、胃の環境から保護し、
腸において生物活性物質を放出するために不活性成分を含有する。
【0127】
ここで使用を意図しているのはまた、経口投与のための液体剤形で、薬学的に許容され
る乳化剤、溶液、懸濁剤およびシロップを含み、不活性希釈剤;湿潤剤、乳化剤および懸
濁剤等の助剤;ならびに甘味剤、着香料および香料を含む他の成分を含む。
【0128】
ペプチドは化学的に修飾され、その結果として、誘導体の経口送達が効果的となる。一
般に、意図される化学修飾は、少なくとも一つの部分の成分分子自身への結合であり、前
記部分は、(a) タンパク質分解の阻害;および(b) 胃または腸からの血流への取り込みを
可能にする。成分または成分類の全体的な安定性の増加および体内の循環時間の増加も望
まれる。上で議論したように、PEG化は薬剤用途のための好ましい化学修飾である。用い
られる他の部分には、プロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコー
ルとのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール
、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレン、ポリ-1,3-ジオキソランおよびポリ-1,3,6-チ
オキソカンが含まれる[例えば、「薬剤としての酵素」HocenbergとRoberts編(ウィリー-
インターサイエンス:ニューヨーク州ニューヨーク)367-383ページのAbuchowskiとDavis
(1981)「溶解性ポリマー-酵素アダクト(Soluble Polymer-Enzyme Adducts)」;およびN
ewmarkら、(1982)J. Appl. Biochem. 4:185-189を参照する]。
【0129】
経口製剤については、放出場所は胃、小腸(十二指腸、空腸または回腸)または大腸で
ある。当業者は、胃で溶けず、十二指腸または腸のどこかで物質を放出するような入手可
能な製剤を有している。好ましくは、放出は、ペプチド(または誘導体)の保護、または
ペプチド(または誘導体)の放出のいずれかにより、胃環境以外に、例えば腸において、
胃環境の有害効果を避けるであろう。
【0130】
胃における十分な耐性を確実にするために、少なくともpH 5.0まで不浸透性のコーティ
ングが必須である。腸溶性コーティングとして用いられるより一般的な不活性成分の例と
しては、セルロースアセテート・トリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセ
ルロース・フタレート(HPMCP)、HPMCP 50、HPMCP 55、ポリビニルアセテート・フタレ
ート(PVAP)、Eudragit L30D、アクアテリック、セルロースアセテート・フタレート(C
AP)、Eudragit L、Eudragit Sおよびシェラックがある。これらのコーティングは混合フ
ィルムとして用いることができる。
【0131】
コーティングまたはコーティングの混合物はまた、錠剤に用いることができるが、胃に
対して保護されない。これには糖衣または、錠剤を飲み込みやすくするコーティングが含
まれる。カプセルは、乾いた治療剤(すなわち粉末)の送達のために、(ゼラチンのよう
な)ハードシェルからなり、液体剤形には、ソフトゼラチンシェルが用いられる。カプセ
ルのシェル材は厚いデンプンまたは他の食用紙である。丸薬、トローチ剤、成型錠剤また
は錠剤粉薬には、モイスト・マッシング法(moist massing technique)を用いることが
できる。
【0132】
ペプチド(または誘導体)を、粒子径約1 mmの顆粒または小球形状の細かい多微粒子と
して製剤に含むことができる。カプセル投与のための材料の製剤はまた、粉末状の、軽く
圧縮したプラグ(plugs)として、または錠剤としてさえありうる。これらの治療剤は圧
縮により調製される。
【0133】
着色剤および/または着香料もまた含まれる。例えば、ペプチド(または誘導体)は(
例えば、リポソームまたはミクロスフェアのカプセル化により)製剤化され、その後さら
に、食用の産物内、例えば着色剤と着香料を含む冷飲料に含有される。
【0134】
不活性物質を用いて、ペプチド(または誘導体)の容量を希釈または増加することがで
きる。これらの希釈剤には、炭水化物、特にマンニトール、α-乳糖、無水乳糖、セルロ
ース、ショ糖、修飾デキストランおよびデンプンが含まれる。カルシウム三リン酸、炭酸
マグネシウムおよび塩化ナトリウムを含む特定の無機塩類もまた充填剤として用いること
ができる。市販の希釈剤のいくつかは、Fast-Flo、Emdex、STA-Rx 1500、Emcompressおよ
びAvicellである。
【0135】
錠剤分解物質は、固体剤形中に治療剤の製剤として含まれ得る。錠剤分解物質として用
いられる物質は、これに限定されないが、デンプンに基づく市販の錠剤分解物質であるEx
plotabを含むデンプンである。デンプングリコレート・ナトリウム、Amberlite、カルボ
キシメチルセルロース・ナトリウム、ウルトラミロペクチン(ultramylopectin)、アル
ギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸カルボキシメチルセルロース、カイメ
ンおよびベントナイトは全て用いることができる。錠剤分解物質はまた、不溶性の陽イオ
ン交換樹脂であってもよい。粉末増粘剤が錠剤分解物質および結合剤として用いられ、寒
天、カラヤ(Karaya)またはトラガカント等の増粘剤が含まれ得る。アルギン酸およびそ
のナトリウム塩もまた錠剤分解物質として有用である。
【0136】
結合剤は、ペプチド(または誘導体)剤を保持するとともに硬い錠剤を形成するために
用いることができ、アカシア、トラガカント、デンプンおよびゼラチン等の天然産物由来
の物質が含まれる。他のものとしては、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC
)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)がある。ポリビニルピロリドン(PVP)およ
びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を共にペプチド(または誘導体)を粒状
化するためにアルコール溶液中で用いることができる。
【0137】
減摩剤をペプチド(または誘導体)の製剤に含めて、製剤工程の間の張り付きを防ぐこ
とができる。潤滑剤はペプチド(または誘導体)とダイ壁との間の層として用いられ、こ
れらには、限定はされないが、そのマグネシウム塩およびカルシウム塩を含むステアリン
酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油およびロウが含まれ
得る。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、各種分子量のポリエチレン
グリコール、カーボワックス(Carbowax)4000および6000等の可溶性潤滑剤もまた用いる
ことができる。
【0138】
製剤中の薬剤の流動性を改善する流動促進剤は、圧縮の間の再配列を助けるために添加
することができる。流動促進剤には、デンプン、タルク、発熱性シリカおよび水和ケイア
ルミン酸塩が含まれ得る。
【0139】
ペプチド(または誘導体)の水性環境への溶解を助けるために、界面活性剤を湿潤剤と
して添加し得る。界面活性剤には、陰イオン界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム
、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムおよびスルホン酸ジオクチルナトリウムが含まれ
得る。陽イオン界面活性剤を用いてもよく、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトミ
ウムが含まれる。界面活性剤として製剤中に含まれ得る潜在的な非イオン性界面活性剤の
リストは、ラウロマクロゴル400、ポリオキシル40ステアレート、ポリオキシエチレン硬
化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート 40、60、6
5および80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセル
ロースである。これらの界面活性剤は、単独で、または異なる比の混合物として、タンパ
ク質または誘導体の製剤中に存在している。
【0140】
ペプチド(または誘導体)の取り込みを潜在的に促進する添加剤は例えば、脂肪酸であ
る、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸である。
【0141】
制御放出の経口製剤が望ましい。ペプチド(または誘導体)は、拡散または浸出機構の
いずれかにより放出させる不活性マトリックス、例えば増粘剤に組み込むことができる。
ゆっくり変化するマトリックスもまた製剤中に取り込んでもよい。いくつかの腸溶性もま
た、遅延放出効果を有する。制御放出の別の形態はオロス・セラピューティック・システ
ム(Oros Therapeutic System)(Alza社)に基づく方法によるものである、すなわち薬剤
は、浸透圧効果のために単一の小孔を通って、水が入り、薬剤が押し出される半透膜中に
封入される。
【0142】
他のコーティングは製剤に用いられる。これらにはコーティングパンに応用される各種
の糖が含まれる。ペプチド(または誘導体)もまた、フィルムコートした錠剤に加えられ
、この例で用いられる物質は二つの群に分けられる。第一は非腸溶性物質で、メチルセル
ロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシ-エチルセ
ルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース、カ
ルボキシ-メチルセルロース・ナトリウム、プロビドンおよびポリエチレングリコールが
含まれる。第二の群は通常フタル酸のエステルである腸溶性物質からなる。
【0143】
物質の混合は、最適フィルムコーティングを提供するのに使用し得る。フィルムコーテ
ィングはパンコーターまたは流動床で、あるいは圧縮コーティングにより行ってもよい。
【0144】
非経口送達
本発明による非経口投与のための製剤には、滅菌した水性または非水性の溶液類、懸濁
剤または乳化剤が含まれる。非水性溶媒またはビヒクルの例は、プロピレングリコール、
ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油およびコーン油、ゼラチン、および
エチルオレアート等の注射可能な有機エステルである。そのような剤形はまた、防腐剤、
湿潤剤、乳化剤および分散剤等の助剤を含み得る。それらは例えば、細菌保持フィルター
を通した濾過により、組成物に滅菌した剤を取り込むことにより、組成物を放射線照射す
ることにより、あるいは組成物を加熱することにより滅菌できる。それらはまた、使用直
前に滅菌水または他の滅菌した注射溶剤を用いて製造することができる。
【0145】
直腸または膣送達
直腸または膣投与のための組成物は好ましくは、有効成分に加え、カカオバターまたは
坐剤ロウ等の賦形剤を含む坐剤である。経鼻または舌下投与のための組成物もまた、当業
者に周知の標準的な賦形剤を用いて調製される。
【0146】
肺送達
EPO-Rアゴニストペプチド(またはその誘導体)の肺送達も本発明において意図される
。ペプチド(または誘導体)は吸入の間に哺乳動物の肺に送達され、肺上皮層から血流へ
行き来する[例えば、Adjeiら(1990)Pharmaceutical Research 7: 565-569 ; Adjeiら(
1990)Int. J. Pharmaceutics 63: 135-144(酢酸ロイプロリド);Braquetら(1989)J.
Cardiovascular Pharmacology 13(sup5): 143-146(エンドセリン-1); Hubbardら(19
89)Annals of Internal Medicine, Vol.III, pp. 206-212(α1-アンチトリプシン);S
mithら(1989)J. Clin. Invest. 84: 1145-1146(α-l-プロテイナーゼ); Osweinら(
1990)「タンパク質のエアゾール化("Aerosolization of Proteins")」、肺薬剤送達に
関するシンポジウムIIの紀要(Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Deliver
y II)コロラド州キーストーン(組換えヒト成長ホルモン);Debsら(1988)J. Immunol
.140: 3482-3488(インターフェロン-γおよび腫瘍壊死因子α);およびPlatzらの米国
特許第5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子)を参照]。全身的効果のための肺への薬剤
送達の方法および組成物については、Wongらの米国特許第5,451,569号に記載されている

【0147】
治療薬の肺への送達のためにデザインされた様々な機械装置はこの発明の実施における
使用のために意図され、限定はされないが、噴霧器、定量吸入器、および粉吸入器を含み
、そのすべては当業者に熟知されている。本発明の実施に適している市販の装置のいくつ
かの特定の例としては、ウルトラベント噴霧器(Ultravent nebulizer)(Mallinckrodt
Inc.、ミズーリ州セントルイス);Acorn II噴霧器(Marquest Medical Products、コロ
ラド州エングルウッド);ベントリン(Ventolin)定量吸入器(Glaxo Inc.、ノースカロ
ライナ州リサーチ・トライアングル・パーク);およびスピンへーラー粉吸入器(Spinha
ler)(Fisons Corp.、マサチューセッツ州べドフォード)がある。
【0148】
そのような全ての装置は、ペプチド(または誘導体)の投与に適した製剤の使用が必要
である。典型的には、それぞれの製剤は用いられる装置の型に特異的で、治療に有用な通
常の希釈剤、助剤および/またはキャリアに加え、適当な推進剤物質の使用を含めること
ができる。また、リポソーム、ミクロカプセルまたはミクロスフェア、包接錯体または他
の型のキャリアの使用も意図される。化学修飾ペプチドも、化学修飾の型または用いる装
置の型に依存して、異なる製剤に調製することができる。
【0149】
ジェットまたは超音波、いずれの噴霧器の使用にも適している製剤は、典型的には、溶
液mLあたり約0.1〜25 mgの生物学的活性のあるタンパク質の濃度で水に溶解したペプチド
(または誘導体)を含有する。製剤はまた、緩衝液および単糖を(例えば、タンパク質の
安定化および浸透圧調節のため)含めてもよい。噴霧器製剤はまた、エアゾール形成時に
溶液が噴霧化することにより引き起こされるペプチド(または誘導体)の表面に誘導され
る凝集を減少する、または防止するために、界面活性剤を含むことができる。
【0150】
定量吸入装置の使用のための製剤は一般に、界面活性剤と共に推進剤に懸濁したペプチ
ド(または誘導体)を含む微粉末を含有する。推進剤は、この目的に用いられる従来から
の物質で、例えば、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテ
トラフルオロエタノールおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む、クロロフルオロカ
ーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、またはヒドロカーボ
ン、またはそれらの組み合わせである。適した界面活性剤には、ソルビタン・トリオレア
ートおよびダイズレシチンが含まれる。オレイン酸もまた界面活性剤として有用である。
【0151】
粉吸入装置から投薬される製剤には、ペプチド(または誘導体)を含む微細乾燥粉末を
含有し、装置からの粉末の投薬が容易になる量、例えば製剤重量の50〜90%で、乳糖、ソ
ルビトール、ショ糖またはマンニトール等の充填剤を含めることができる。ペプチド(ま
たは誘導体)は、最も好都合には、末梢肺に最も効率よく送達するために、平均粒子径10
mm(またはミクロン)以下、最も好ましくは0.5〜5 mmの微粒子で調製される。
【0152】
経鼻送達
EPO-Rアゴニストペプチド(または誘導体)の経鼻送達もまた意図される。経鼻送達は
、鼻への治療薬の投与後、肺への薬剤の堆積の必要なしに、ペプチドを直接血流に入れる
ものである。経鼻送達用製剤にはデキストランまたはシクロデキストランを用いた製剤が
含まれる。
【0153】
用量
全てのペプチド化合物について、さらに研究するために、各種患者の各種症状の治療の
ための適切な用量レベルに関する情報が明らかとなり、当業者は、レシピエントの治療の
状況、年齢、および一般的な健康を考慮し、適正な投与を確定できる。選択された用量は
所望の治療効果、投与経路および所望の治療期間に依存する。一般的には、1日体重1 kg
当り0.001〜10 mgの用量レベルが哺乳動物に投与される。一般的には、静脈内注射または
輸液のため、用量を減らしてもよい。投薬の計画は循環半減期および用いられる製剤に依
存して変化し得る。
【0154】
本発明のペプチド(またはその誘導体)を、一つまたはそれ以上のさらなる活性成分ま
たは医薬組成物とともに投与することができる。
【0155】
実施例
本発明を以下の実施例により記載する。しかし、これらの用途および明細書のいずれか
の他の実施例は単なる例示であり、本発明または例示の範囲と意味を限定するものではな
い。同様に、本発明は明細書に記載されるいかなる特定の好ましい態様に限定されない。
実際、発明の多くの修飾や改変は本明細書を読むことで当業者には明らかであり、その精
神と範囲から離れることなくなされるものである。本発明はそれゆえ、請求項が与えられ
ているのと等しい全範囲に限定されると同時に、添付の請求項によってのみ限定されるべ
きである。
【実施例1】
【0156】
固相合成によるEPO-Rアゴニストのペプチドダイマーの合成
工程1−Cbz-TAPの合成:市販のジアミン(アルドリッチ・ケミカル社の「TAP」)(10
g、67.47 mmol)を無水DCM(100 ml)に含む溶液を0℃に冷却した。ベンジルクロロホル
メート(4.82 ml、33.7 mmol)の無水DCM(50 ml)溶液をゆっくりと滴下ロートにより、
6-7時間をかけて、反応混合液の温度をずっと0℃に維持しながら添加し、その後室温(〜
25℃)に暖めた。さらに16時間後、DCMを真空除去し、残渣を3N HClとエーテルに分配し
た。水層を集め50%NaOH水溶液を用いてpH 8-9に中和し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エ
チル層を無水Na2SO4で乾燥し、真空濃縮し、モノ-Cbz-TAPの粗産物(5 g、約50%の収量
)を得た。この化合物をさらに精製することなしに次の反応に使用した。
【化51】

【0157】
工程2−Cbz-TAP-Bocの合成:激しく撹拌しているCbz-TAP(5 g、17.7 mmol)のヘキサ
ン(25 ml)懸濁液に、Boc2O(3.86 g、17.7 mmol)を添加し、RT(室温)で一晩撹拌を
続けた。反応液をDCM(25 ml)で希釈し、10%クエン酸水溶液(2X)、水(2X)およびブ
ラインで洗浄した。有機層を無水Na2SO4で乾燥し、真空下で濃縮した。粗産物(収量5 g
)を直接次の反応に用いた。
【化52】

【0158】
工程3−Boc-TAPの合成:前の反応の粗産物をメタノール(25 ml)に溶解し、5% Pd存
在下、炭素(5% w/w)で、膨張圧の元で、16時間水素化した。混合液を濾過し、メタノ
ールで洗浄し、その濾液を真空下で濃縮し、粗H-TAP-Boc産物(収量 3.7 g)を得た。工
程1-3の後の全体収量は約44%(用いたCbz-Clの量に基づく計算)であった。
【化53】

【0159】
工程4−TentaGel-リンカーの合成:TentaGelブロミド(2.5 g、0.48 mmol/g、ラップ
・ポリマー(Rapp Polymere)社、ドイツから入手)、フェノール系リンカー(5等量)お
よびK2CO3(5等量)を20 mLのDMF中で70℃まで14時間加熱した。室温まで冷却後、樹脂を
洗浄し(0.1 N HCl、水、ACN、DMF、MeOH)、あめ色の樹脂になるまで乾燥させた。
【化54】

【0160】
工程5−TentaGel-リンカー-TAP(Boc)の合成:上記の樹脂2.5 gとH-TAP-Boc(1.5 g、5
等量)および氷酢酸(34 μl、5等量)をMeOH-THFが1:1の混合液中で合わせ、一晩振盪
した。シアンホウ化水素ナトリウム(5等量)1 MのTHF水溶液を混合液に添加し、さらに7
時間振盪した。樹脂を濾過、洗浄(DMF、THF、0.1 N 塩酸、水、MeOH)し、乾燥させた。
少量の樹脂をDCM中のBz-ClとDIEAを用いてベンゾイル化し、70% TFA-DCMを用いて切断し
、LCMSおよびHPLCでチェックした。
【化55】

【0161】
工程6−TentaGel-リンカー-TAP-Lysの合成:上記の樹脂を、Fmoc-Lys(Fmoc)-OH(5等
量のアミノ酸と、0.5 M でDMFに溶解し続いて10等量のDIEAを添加した、5等量のHATUとか
ら調製)の活性化溶液で処理し、緩やかに14時間振盪した。樹脂を洗浄(DMF、THF、DCM
、MeOH)し、保護樹脂が得られるまで乾燥させた。残留アミン基は、樹脂を10%無水酢酸
、DCM中20%ピリジンの溶液で20分間処理し、上述のように洗浄することによりキャップ
した。Fmoc基は、樹脂をDMF中30%ピペリジンで20分間緩やかに振盪し、続いて洗浄(DMF
、THF、DCM、MeOH)および乾燥することにより除去した。
【化56】

【0162】
工程7−TentaGel-リンカー-TAP-Lys(ペプチド)の合成:上記の樹脂を、HBTU/HOBt
を用いたFmoc-アミノ酸カプリングおよびピペリジンを用いたFmoc除去の繰り返しサイク
ルにかけ、両方のペプチド鎖を同時に構築した。この反応は、アプライドバイオシステム
社から市販されているABI433自動ペプチド合成機で都合よく実施した。最後のFmoc除去後
、末端のアミン基をDMF中の無水酢酸(10等量)とDIEA(20等量)を用いて、20分間アシ
ル化し、続いて上記のように洗浄した。
【化57】

【0163】
工程8−樹脂の切断:上記の樹脂をTFA(82.5%)、フェノール(5%)、エタンジチオ
ール(2.5%)、水(5%)およびチオアニソール(5%)の溶液に3時間室温で懸濁した。
あるいは、TFA(95%)、水(2.5%)およびトリイソプロピルシラン(2.5%)などの切
断カクテルもまた用いることができる。TFA溶液を5℃まで冷却し、Et2Oに注いでペプチド
を沈殿させた。減圧下での濾過と乾燥により、所望のペプチドを得た。C18カラムを用い
た分取HPLCをかけた精製から、純粋なペプチドが得られた。
【化58】

【0164】
工程9−分子内ジスルフィド結合を形成するためのペプチドの酸化:ペプチドダイマー
を20% DMSO/水(1 mgの乾燥重量のペプチド/mL)に溶解し、室温で36時間放置した。反
応液をC18 HPLCカラム(ウォーターズ デルタ-パック C18、粒子径15ミクロン、ポア
サイズ300オングストローム、40 mm×200 mmの長さ)にロードし、40分にわたるACN/水/0
.01% TFA中の5〜95% ACNの直線濃度勾配により、ペプチドを精製した。所望のペプチ
ドを含む画分の凍結乾燥により、ふわふわした白色の固体酸物を得た。
【化59】

【0165】
工程10−末端NH2基のPEG化:
カルバメート結合を介したPEG化:ペプチドダイマーを、1.5等量(moleをベースとする)
の活性化PEG類(NOFコーポレーション(日本)のmPEG-NPC)と乾燥DMF中で混合し、透明
な溶液を得た。5分後、4等量のDIEAを上記溶液に加えた。混合液を周囲温度で14時間撹拌
し、C18逆相HPLCで精製した。PEG化ペプチドの構造をMALDI質量分析法により確認した。
精製ペプチドはまた、以下に概略するように、陽イオン交換クロマトグラフィによる精製
にかけた。
【化60】

【0166】
アミド結合を介したPEG化:ペプチドダイマーを、1.5等量(moleをベースとする)の活性
化PEG類(シェアウォーター・コーポレーション(米国)のPEG-SPA-NHS)と乾燥DMF中で
混合し、透明な溶液を得た。5分後、10等量のDIEAを上記溶液に加えた。混合液を周囲温
度で2時間撹拌し、C18逆相HPLCで精製した。PEG化ペプチドの構造をMALDI質量分析法によ
り確認した。精製ペプチドはまた、以下に概略するように、陽イオン交換クロマトグラフ
ィによる精製にかけた。
【化61】

【0167】
工程11−イオン交換精製:開始のダイマーペプチドの保持能に加え、上記ペプチド-P
EG結合体を未反応の(または加水分解した)PEGから分離するために、その性能をいくつ
かの交換支持体について調べた。イオン交換樹脂(2-3 g)を1 cmカラムに充填し、ナト
リウム型への置換(溶出液がpH 14になるまでカラムに0.2 N NaOHを流した、およそ5カラ
ム容)、水素型への置換(溶出液が充填したときのpHになるまで0.1 N HClまたは0.1 M H
OAcを溶出した、およそ5カラム容)およびpH 6になるまで25% ACN/水による洗浄を行っ
た。結合前のペプチドまたはペプチド-PEG結合体のいずれかを25% ACN/水(10 mg/mL)
に溶解し、そのpHをTFAで3より低く調整し、カラムに充填した。2-3カラム容の25% ACN/
水で洗浄し、5 mL画分に集めた後、ペプチドを25% ACN/水中0.1 M NH4OAcで溶出すること
によりカラムから遊離させ、再度5 mL画分に集めた。HPLC分析により、画分が目的のペプ
チドを含むことが明らかとなった。蒸発光散乱検出器(ESLD)を用いた解析により、ペプ
チドがカラムについている場合およびNH4Oac溶液で溶出された(通常4〜10画分)場合、
非結合PEGは夾雑物として検出されないことが示された。最初の洗浄緩衝液(通常最初の2
画分)中にペプチドが溶出される場合、所望のPEG結合体および過剰のPEGの分離は観察さ
れなかった。
【0168】
以下のカラムはペプチドおよびペプチド-PEG結合体の両者をうまく保持し、未結合ペプ
チドからペプチド-PEG結合体を成功裏に精製した:
【表4】

【実施例2】
【0169】
断片縮合によるEPO-Rアゴニストであるペプチドダイマーの合成
工程1−(Cbz)2-Lysの合成:リジンを標準条件下でベンジルクロロホルメートの溶液と
反応させ、Cbz基をもつその二つのアミノ基で保護されているリジンを得る。
【化62】

【0170】
工程2−Boc-TAPの合成:Boc-TAPを実施例1の工程1から3に記載したように合成する。
【0171】
工程3−(Cbz)2-LysとBoc-TAPのカプリング:(Cbz)2-LysとBoc-TAPを標準カプリング条
件下で結合させ、(Cbz)2-Lys-TAP-Bocを得る。
【化63】

【0172】
工程4−Lys-TAP-Boc:前の反応の粗産物をメタノール(25 ml)に溶解し、5% Pd存在
下、炭素(5% w/w)で、膨張圧の元で、16時間水素化する。混合液を濾過し、メタノー
ルで洗浄し、その濾液を真空下で濃縮し、粗Lys-TAP-Boc産物を得る。
【化64】

【0173】
工程5−断片縮合によるペプチドモノマーの合成:ペプチドモノマー配列の四つのペプ
チド断片を標準技術により合成する。これらの部分的に保護された断片を次に二つの独立
のカプリングの周回(rounds)にかける。第一の周回では、モノマーのN-末端の半分が二
つのペプチド断片のカプリングにより形成され、一方モノマーのC-末端の半分は他の二つ
のペプチド断片のカプリングにより形成される。第二のカプリングの周回において、N-末
端およびC-末端の半分がカプルし、完全に保護化されたモノマーを形成する。モノマーを
次に標準技術によりOBn脱保護化する。
【化65】

【0174】
工程6−分子内ジスルフィド結合を形成するためのペプチドモノマーの酸化:OBn-脱保
護縮合ペプチドモノマーをその後、ヨウ化物を用いて酸化し、モノマーのAcm-保護化され
たシステイン残基の間に分子内ジスルフィド結合を形成させる。
【化66】

【0175】
工程7−ペプチドダイマーを形成するための、Lys-TAP-Bocと酸化されたOBn-脱保護モ
ノマーとのカプリング:Lys-TAP-Bocを二倍モル過剰の酸化されたOBn-脱保護モノマーと
標準条件下で結合させ、ペプチドダイマーを形成する。次にペプチドダイマーは標準条件
下で脱保護化される。
【化67】

【0176】
工程8−脱保護化ダイマーのPEG化:脱保護化されたペプチドダイマーを実施例1の工
程10に記載したようにPEG化する。
工程9−イオン交換精製:PEG化ペプチドダイマーをその後実施例1の工程11に記載し
たように精製する。
【実施例3】
【0177】
インビトロ活性アッセイ
本実施例は、本発明のEPO-Rアゴニストペプチドの活性および効力を評価するために有
用な各種のインビトロアッセイを記載する。これらのアッセイの結果は、本発明の新規ペ
プチドはEPO-Rに結合し、EPO-Rシグナル伝達を活性化することを示している。その上、こ
れらのアッセイの結果は、新規ペプチド組成物が、以前記載されたEPO擬似ペプチドに比
べて、EPO-R結合親和性および生物学的活性において驚くべき増加を示すことを示すもの
である。
【0178】
EPO-Rアゴニストペプチドダイマーは実施例1または実施例2に提供された方法にした
がって調製される。これらのペプチドダイマーの効力は、レポーターアッセイ、増殖アッ
セイ、競合結合アッセイおよびC/BFU-eアッセイを含む、一連のインビトロ活性アッセイ
を用いて評価される。これらの四つのアッセイを以下にさらに詳細に記載する。
これらのインビトロ活性アッセイの結果を表2に要約する。
【0179】
1. レポーターアッセイ
このアッセイは、マウス前B細胞株由来レポーター細胞であるBaf3/EpoR/GCSFR fos/lux
に基づくものである。このレポーター細胞株は、ヒトEPO受容体の細胞外部分からヒトGCS
F受容体の細胞内部分までを含有するキメラ受容体を発現する。この細胞株にはさらに、f
osプロモーターによって駆動するルシフェラーゼ・レポーター遺伝子構築物がトランスフ
ェクトされる。エリスロポエチン試薬の添加によるキメラ受容体の活性化は、ルシフェラ
ーゼ・レポーター遺伝子の発現、およびそれゆえ、ルシフェラーゼの基質であるルシフェ
リンの添加により光の産生をもたらす。ゆえに、そのような細胞におけるEPO-R活性化の
レベルをルシフェラーゼ活性の測定により定量することができる。
【0180】
Baf3/EpoR/GCSFR fos/lux細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS;ハイクローン(Hyclone))
、10% WEHI-3上清(WEHI-3細胞の培養上清、ATCC #TIB-68)およびペニシリン/ストレプ
トマイシンを補完したDMEM/F12培地(Gibco)で培養される。アッセイのおよそ18時間前
に、細胞を10% FBSおよび0.1% WEHI-3上清を補完したDMEM/F12培地に移すことにより、
飢餓状態とする。アッセイ当日に、細胞を10% FBS(WEHI-3上清なし)を補完したDMEM/F
12培地で洗浄し、その後、1x106細胞/mLで、既知濃度の試験ペプチドの存在下で、または
陽性コントロールとしてEPO(R&Dシステムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)と共に、10%
FBS(WEHI-3上清なし)を補完したDMEM/F12培地中で培養する。試験ペプチドの連続希釈
液を同時にこのアッセイで試験する。アッセイプレートを4時間、37℃で、5% CO2雰囲気
中でインキュベートし、その後、ルシフェリン(Steady-Glo;プロメガ、ウィスコンシン
州マディソン)を各ウェルに添加する。5分間のインキュベーションの後、発光をパッカ
ード・トップカウント・ルミノメーター(パッカード・インストルメント社、イリノイ州
ダウナーズグローブ)で測定する。光のカウントを試験ペプチドの濃度に対してプロット
し、グラフパッド(Graph Pad)ソフトウェアを用いて解析する。最大発光の半分となっ
た試験ペプチドの濃度をEC50として記録する[表2参照:レポーターEC50]。
【0181】
2. 増殖アッセイ
このアッセイは、ヒトEPO-Rを発現するようにトランスフェクトされた、マウス前B細胞
株であるBaf3に基づくものである。得られた細胞株BaF3/Gal4/Elk/EPORの増殖は、EPO-R
活性に依存する。細胞増殖の程度は、MTTを用いて定量する。ここで、MTTアッセイのシグ
ナルは生細胞数に比例する。
【0182】
BaF3/Gal4/Elk/EPOR細胞をスピナーフラスコで、10% FBS(ハイクローン)および2%
WEHI-3上清(ATCC #TIB-68)を補完したDMEM/F12培地(Gibco)を用いて培養する。培養
した細胞をスピナーフラスコ中に、細胞密度1x106細胞/mlで、10% FBSおよび0.1%WEHI
-3上清を補完したDMEM/F12培地の飢餓状態に一晩置いた。飢餓状態の細胞を二回ダルベッ
コのPBS(Gibco)で洗浄し、1x106細胞/mlで、10% FBS(WEHI-3上清なし)を補完したD
MEM/F12培地に再懸濁した。細胞懸濁液の50 μLアリコート(〜50,000細胞)を次に96ウ
ェルのアッセイプレートに三連で播いた。10% FBS(WEHI-3上清Iなし)を補完したDMEM/
F12培地中の試験EPO擬似ペプチドの希釈系列の50μLアリコート、または50 μLのEPO(R&
Dシステムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)、またはAranesp(商標)(ダーベポエチン・
アルファ、アムジェンから市販されるEPO-Rアゴニスト)を96ウェルのアッセイプレート
に添加した(ウェルの最終容量は100 μL)。例えば、試験ペプチド(または対照のEPOペ
プチド)の終濃度が810 pM〜0.0045 pMの範囲にあるような12の異なる希釈数を試験する
ことができる。次に、播かれた細胞を48時間37℃でインキュベートする。次に、10 μLの
MTT(ロシュ・ダイアグノスティックス)をそれぞれの培養皿のウェルに添加し、4時間イ
ンキュベートする。10% SDS+0.01N HClを添加して反応を停止する。プレートを一晩37
℃でインキュベートする。それぞれのウェルの波長595 nmの吸収を分光測光法で測定する
。試験ペプチド濃度に対する吸収の測定値のプロットを作図し、EC50をグラフパッド・ソ
フトウェアを用いて計算する。最大吸収の半分の値となる試験ペプチドの濃度をEC50とし
て記録する[表3参照:増殖EC50]。
【0183】
3. 競合結合アッセイ
競合結合の計算は、光シグナルが二つのビーズ:ビオチン化EPO-R結合ペプチドトレー
サーを有するストレプトアビジンのドナービーズと、EPO-Rを結合するアクセプタービー
ズとの近接作用の結果として生ずるアッセイを用いてなされる。光は、非放射性エネルギ
ー伝達により、一重項酸素が照明の際に第一のビーズから放出され、放出された一重項酸
素と接触することで、第二のビーズが発光する間に生じる。これらのビーズのセットは市
販されている(パッカード)。ビーズの近接はEPO-R結合ペプチドトレーサーのEPO-Rへの
結合により生じる。EPO-Rへの結合に対して、EPO-R結合ペプチドトレーサーと競合する試
験ペプチドは、この結合を阻害し、発光を減少させる。
【0184】
より詳細には、方法は以下のとおりである:4 μLの試験EPO-Rアゴニストペプチドの連
続希釈または正もしくは負の対照を384ウェルプレートのウェルに添加する。その後、2
μL/ウェルの受容体/ビーズカクテルを添加する。受容体/ビーズカクテルは、15 μLの5
mg/ml ストレプトアビジン・ドナービーズ(パッカード)、15 μLの5 mg/ml モノクロー
ナル抗体 abl79(この抗体は組換えEPO-Rに含まれるヒト胎盤アルカリホスファターゼタ
ンパク質の部分を認識する)、プロテインAをコートしたアクセプタービーズ( プロテイ
ンAはabl79抗体に結合する;パッカード)、112.5 μLのa 1:6.6希釈の組換えEPO-R(abl
79の標的エピトープを含むヒト胎盤アルカリホスファターゼタンパク質の部分との融合タ
ンパク質として、チャイニーズハムスターの卵巣細胞で産生された)および 607.5 μLの
Alphaquest緩衝液(40mM HEPES、pH 7.4;1 mM MgCl2;0.1% BSA、0.05% Tween 20)から
なる。軽くたたいて混合する。2 μL/ウェルのビオチン化EPO-R結合ペプチドトレーサー
であるAF33068を添加する(終濃度30 nM)。EPO-R結合ペプチド(表3「レポーターEC50(
pM)」を参照)であるAF33068は実施例1に記載の方法に従って調製する。
【化68】

【0185】
混合するために1分間遠心する。パッカード・トップシールでプレートをシールし、フ
ォイルで包む。室温で一晩インキュベートする。18時間後、AlphaQuestリーダー(パッカ
ード)で発光を測定する。ペプチド濃度に対する発光をプロットし、グラフパッドまたは
エクセルで解析する。
【0186】
試験ペプチドなしで観察された濃度と比較して、発光が50%減少する試験ペプチドの濃
度がIC50として記録される[表2および3を参照: AQ IC50]。
【0187】
4. C/BFU-eアッセイ
EPO-Rのシグナル伝達は骨髄幹細胞の分化を赤血球細胞前駆体が増殖する方向へ刺激す
る。このアッセイは、初期ヒト骨髄多分化能幹細胞からの赤血球細胞前駆体の増殖と分化
を刺激する試験ペプチドの能力を測定するものである。
【0188】
このアッセイのために、試験ペプチドの連続希釈液を10% FBS(ハイクローン)を補完
したIMDM培地(Gibco)で調製する。これらの連続希釈液または正の対照EPOペプチドをメ
チルセルロースに添加し、最終容量を1.5 mLにする。メチルセルロースとペプチド混合液
を完全に混合する。ヒト骨髄由来CD34+細胞(Poietics/Cambrex)のアリコート(100,000
細胞/mL)を解凍する。解凍した細胞を50 mLチューブ中の1 mg/mlのDNAse(Stem Cells)
0.1 mLに徐々に添加する。次に、40-50 mLのIMDM培地を徐々に細胞に添加する:培地は、
最初の10 mLを50 mLチューブの管壁に沿って一滴ずつ加え、その後、残りの培地をゆっく
り管壁に沿って加える。細胞をその後900 rpmで20分間遠心し、培地を注意して緩やかな
吸引により除去する。細胞を1 mLのIMDM培地に再懸濁し、mLあたりの細胞密度を血球計ス
ライド上で計測する(スライド上で10 μLの細胞懸濁液アリコート、細胞密度は、平均カ
ウントX10,000細胞/ml)。細胞をIMDM培地で15,000細胞/mLの細胞密度まで希釈する。希
釈した細胞100 μLをそれぞれの1.5 mLのメチルセルロース+ペプチド試料(アッセイ培
地中の最終細胞濃度は1000細胞/mLである)に添加し、混合液をボルテックスする。混合
液中の気泡を消失させ、先端の尖っていない針を用いて、1 mLを吸引する。それぞれの試
料の0.25 mL吸引混合液を24ウェルプレート(ファルコン銘柄)の4ウェルのそれぞれに添
加する。プレートした混合液を37℃、5% CO2条件下、湿潤インキュベーター中で14日間
インキュベートする。位相差顕微鏡を用いて(対物5X-10X、最終倍率100X)、赤血球コロ
ニーの存在を記録する。EPOの正対照で観察される結果と比較して、形成コロニー数が最
大の90%での試験ペプチドの濃度をEC90として記録する[表3参照:C/BFU-e EC90]。
【0189】
5. 放射性リガンド競合結合アッセイ
別の手段として、放射性リガンド競合結合アッセイもまた、本発明のペプチドのIC50
を測定するのに用いることができる。このアッセイは125I-EPOのEPOrへの結合を測定する
。アッセイは以下の例示プロトコールに従って実施される:
A. 材料
【表5】

【0190】
B. 適切な受容体濃度の決定
ヒトIgG1のFc部分と融合した組換えEPOr細胞外ドメインの凍結乾燥品50 μgの1バイア
ルを1 mLのアッセイ緩衝液で再生する。アッセイに用いる受容体の正確な量を決定するた
めに、この受容体標品の連続希釈液100 μLを200 μLで約20,000 cpmのヨード化組換えヒ
トエリスロポエチン(125I-EPO)とともに12x75 mmポリプロピレン試験管中で合わせる。
チューブにフタをし、4℃で一晩LabQuakeロータリーシェーカー上で緩やかに混合する。
【0191】
翌日、プロテイン-Gセファロースの50%スラリー50 μLをそれぞれのチューブに添加す
る。その後、チューブを2時間4℃で、緩やかに混ぜながらインキュベートする。次にチュ
ーブを15分間、4000 RPM(3297 x G)で遠心し、プロテイン-Gセファロースを沈殿させる
。上清を注意して除去、廃棄する。4℃にしたアッセイ緩衝液1 mLを用いて3回洗浄した後
、沈殿をWallac Wizardガンマカウンターでカウントする。結果を解析し、最大結合値の5
0%に達するのに必要な希釈を計算する。
【0192】
C. ペプチドのIC50の決定
AF37702のIC50を決定するために、ペプチドの連続希釈液100 μLを100 μLの組換えエ
リスロポエチン受容体(100 pg/チューブ)とともに12x75 mmポリプロピレン試験管中で
合わせる。その後、100 μLのヨード化組換えヒトエリスロポエチン(125I-EPO)をそれ
ぞれのチューブに添加し、チューブにフタをして、4℃で一晩緩やかに混合する。
【0193】
翌日、結合した125I-EPOを上述のように定量する。結果を解析し、IC50値をグラフパッ
ド・ソフトウェア社(カリフォルニア州サンディエゴ)のグラフパッド・プリズム バー
ジョン4.0を用いて算出する。アッセイは試験されるそれぞれのペプチドについて二回ま
たはそれ以上、合計3連またはそれ以上のIC50測定について繰り返す。
【0194】
【表6】

【実施例4】
【0195】
インビボ活性アッセイ
本実施例は、本発明のEPO-Rアゴニストペプチドの活性および効力を評価するのに有用
な、各種のインビボアッセイを記載する。EPO-Rアゴニストペプチドダイマーは実施例1
または実施例2に提供される方法に従って調製される。これらのペプチドモノマーおよび
ダイマーのインビボ活性は、真性赤血球増加症で超低酸素症のマウスのバイオアッセイお
よび網状赤血球アッセイを含む一連のアッセイを用いて評価される。これら二つのアッセ
イについて、以下にさらに詳細に記載する。
【0196】
1. 真性赤血球増加症、超低酸素症マウスのバイオアッセイ
CotesとBangham(1961)Nature 191: 1065-1067に記載された方法を適合させた、真性
赤血球増加症、超低酸素症マウスのバイオアッセイにおいて、試験ペプチドをインビボ活
性について測定する。このアッセイは、試験ペプチドがEPO擬似体として機能できるか、
すなわち、EPO-Rを活性化し、新しい赤血球細胞合成を誘導するかを試験するものである
。赤血球合成は、合成した赤血球細胞のヘモグロビンへの放射標識した鉄の取り込みに基
づいて定量できる。
【0197】
BDF1マウスを周囲条件に7-10日間馴化させる。体重を全ての動物について測定し、低体
重の動物(<15グラム)は用いない。マウスを低気圧室で合計14日間、連続的な調節サイ
クルにかける。それぞれの24時間サイクルは、0.40±0.02%大気圧で18時間および周囲圧
で6時間からなる。調節後、マウスを投与前さらに72時間、周囲圧に維持する。
【0198】
試験ペプチドまたは組換えヒトEPO標品をPBS+0.1% BSAビヒクル(PBS/BSA)で希釈す
る。ペプチドモノマーのストック溶液を最初にジメチルスルホキシド(DMSO)に可溶化す
る。陰性対照にはPBS/BSAだけを注射したマウスの一群と1%のDMSOを注射した一群が含ま
れる。それぞれの投与群は10匹のマウスを含む。適当な試料0.5 mLをマウスに皮下注射(
首筋)する。
【0199】
試料注射の48時間後、マウスに約0.75 μキュリー/マウスの投与量で、0.2 mlのFe59
デュポン、NEN)を腹腔内注射で投与する。マウス体重をFe59投与24時間後に測定し、Fe5
9投与48時間後に犠牲にする。血液をそれぞれの動物から心臓穿刺により回収し、ヘマト
クリット値を測定する(ヘパリンを抗凝固剤として用いた)。それぞれの血液試料(0.2
ml)について、パッカード・ガンマカウンターを用いてFe59取り込みを解析する。非応答
マウス(すなわち、陰性対照群よりも低い放射活性の取り込みをするマウス)は適正なデ
ータセットから除外する。ヘマトクリット値が陰性対照群の53%以下のマウスもまた除か
れる。
【0200】
結果はそれぞれの実験投与の10匹の動物セットに由来する。血液試料中に取り込まれる
放射活性の平均量[カウント/分(CPM)]は、それぞれの群から計算する。
【0201】
2. 網状赤血球アッセイ
正常なBDF1マウスに、EPO対照または試験ペプチドのいずれかを連続3日投与する(0.5
mL、皮下注射)。3日目に、マウスに鉄デキストラン(100 mg/ml)も投与する(0.1 mL、
腹腔内注射)。5日目に、マウスをCO2によって麻酔し、心臓穿刺によって採血する。各血
液試料の網状赤血球の割合(%)を、チアゾールオレンジ染色とフローサイトメーター分
析(網状赤血球カウントプログラム)によって決定する。ヘマトクリット値は手動で決定
する。網状赤血球の修正された割合は、次の式を使って決定する:
%RETIC(修正)= %RETIC(測定) X (Hematocrit個体/Hematocrit正常)
【0202】
3. 血液学的アッセイ
正常なCD1マウスに、EPO陽性対照、試験ペプチド、またはビヒクルを週4回静脈ボーラ
ス注射により投与する。mg/kgで表される陽性対照と試験ペプチド投与の範囲は、製剤中
の活性化合物濃度を変えることによって試験する。注射された容量は5 ml/kgである。ビ
ヒクル対照群は12匹の動物であり、8匹の動物はそれぞれの残りの投与群である。毎日の
生存能力と週1回の体重を記録する。
【0203】
投与マウスを絶食させ、その後吸入イソフルランで麻酔し、末端血液試料を1日目(ビ
ヒクル対照マウス)および15日目と29日目(4匹のマウス/群/日)に、心臓または腹部大
動脈穿刺により回収する。血液をVacutainer(登録商標)ブランドチューブに移す。好ま
しい抗凝固剤はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
【0204】
血液試料は、当分野に周知の自動臨床分析装置(例えば、コールター社製のもの)を用
いて、赤血球合成、ならびにヘマトクリット(Hct)、ヘモグロビン(Hgb)および全赤血
球数(RBC)のなどの生理機能を測定する最終段階のために評価する。
【実施例5】
【0205】
アミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK(配列番号:1)を有するペプチドモノ
マーのEPO-Rアゴニストペプチドホモダイマーの合成
工程1−ペプチドモノマーの合成:ペプチドモノマーは、標準的なFmoc法により、ABI
431Aペプチド合成機上で、TG-RAM樹脂(0.18 mmol/g、Rapp Polymere社、ドイツ)を用い
て合成する。アミド化カルボキシ末端を有するペプチドモノマーの合成に関して、完全に
組み立てられたペプチドを、82.5% TFA、5% 水、6.25% アニソール、6.25% エタンジ
チオールを用いて樹脂から切断する。脱保護化産物を樹脂から濾過し、ジエチルエーテル
で沈殿させる。乾燥後、産物を、0.1% トリフルオロ酢酸中アセトニトリル/水の濃度勾
配を用いたC18逆相高速液体クロマトグラフィにより精製する。ペプチドの構造をエレク
トロスプレイ質量分析により確認する。ペプチドをDMSO:水が1:1の溶液に1 mg/mlの濃
度で溶解し、ジスルフィド形成を行う。産物を、0.1% トリフルオロ酢酸中アセトニトリ
ル/水の濃度勾配を用いたC18逆相高速液体クロマトグラフィにより精製する。ペプチドモ
ノマーは、以下のように示すことができる:
【化69】

【0206】
工程2−三官能リンカーの合成:DCM 100 mL中ジエチルイミノ酢酸(10.0 g、52.8 mm
ol)およびBoc-ベータ-アラニン(10.0 g、52.8 mmol)の溶液に、ジイソプロピルカルボ
ジイミド(8.0 ml、51.1 mmol)を10分かけて室温で加えた。反応混合物を添加の間にお
よそ10度温め、その後20分かけて室温に戻した。反応液を一晩撹拌し、沈殿したジイソプ
ロピル尿素を濾過にて除去した。溶媒を減圧下で除去し、粘性物質を得た。残渣を酢酸エ
チルに溶解し、濾過することによりさらなる沈殿尿素を除去した。有機相を分液ロートに
入れ、洗浄(飽和NaHCO3、ブライン、0.5N HCl、ブライン)、乾燥(MgSO4)、濾過およ
び減圧下での濃縮により、無色の油としてジエステル産物を得た。このジエステルをMeOH
:THFの1:1混合液(100 mL)に溶解し、これに水(25 mL)を、そして次にNaOH(5 g、1
25 mmol)を添加した。PHを測定し>10となるようにした。反応混合物を室温で2時間撹拌
し、次に6N HClでpH 1に酸性化した。水相をNaClで飽和し、酢酸エチルで4回抽出した。
併せた有機相を洗浄(ブライン)、乾燥(MgSO4)および減圧下で濃縮し、白色の半固体
を得た。この固体を50 mLのDCMに溶解し、これに300 mLのヘキサンを添加して、白色のス
ラリーを作出した。溶媒を減圧下で除去し、白色固体として二価酸を得た(14.7 g、2段
階で91.5%の収率)。20 mLのDMF中の二価酸(1 g、3.29 mmol)の溶液に、N-ヒドロキシ
スクシンイミド(770 mg、6.69 mmol)およびジイソプロピルカルボジイミド(1.00 ml、
6.38 mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(3 mg、0.02 mmol)を添加した。反応混合
物を一晩撹拌し、溶媒を減圧下で除去した。残渣を酢酸エチルに溶解し、濾過して、沈殿
した尿素を除去した。有機相を分液ロートに入れ、洗浄(飽和NaHCO3、ブライン、0.5N H
Cl、ブライン)、乾燥(MgSO4)、濾過および減圧下での濃縮により、白色固体としてジ
-NHSエステル産物を得た(1.12 g、収率68%)。
【化70】

【0207】
工程3−三官能基リンカーとペプチドモノマーのカプリング:リンカーとのカプリング
のために、2等量のペプチドを乾燥DMF中で1等量の三官能基リンカーと混合し、透明な溶
液を得る。5等量のDIEAを2分後に添加する。混合液を周囲温度で14時間撹拌する。溶媒を
減圧下で除去し、粗産物をDCM中80% TFAに30分間溶解し、Boc基を除去し、続いてC18逆
相HPLCで精製する。ダイマーの構造をエレクトロスプレイ質量分析により確認する。この
カプリング反応により、リンカーはそれぞれのモノマーのリジン残基のε-アミノ基の窒
素原子に結合する。
【化71】

【0208】
工程4−ペプチドダイマーのPEG化:
カルバメート結合を介したPEG化:ペプチドダイマーを等量(モルを基礎として)の活性
化PEG類(NOF社(日本)製のmPEG-NPC)と乾燥DMF中で混合し、透明な溶液を得る。5分後
、4等量のDIEAを上記溶液に加える。混合液を周囲温度で14時間撹拌し、C18逆相HPLCを用
いて精製する。PEG化ペプチドの構造をMALDI質量で確認する。精製ペプチドはまた、以下
に概略するように陽イオン交換クロマトグラフィによる精製にかけた。
【化72】

【0209】
アミド結合を介したPEG化:ペプチドダイマーを等量(モルを基礎として)の活性化PEG類
(シェアウォーター社(米国)製のPEG-SPA-NHS)と乾燥DMF中で混合し、透明な溶液を得
る。5分後、10等量のDIEAを上記溶液に加える。混合液を周囲温度で2時間撹拌し、C18逆
相HPLCを用いて精製する。PEG化ペプチドの構造をMALDI質量で確認した。精製ペプチドは
また、以下に概略するように陽イオン交換クロマトグラフィによる精製にかけた。
【化73】

【0210】
工程5−ペプチドのイオン交換精製:開始のダイマーペプチドの保持能に加え、上記ペ
プチド-PEG結合体を未反応の(または加水分解した)PEGから分離するために、その性能
についていくつかの交換支持体を調べた。イオン交換樹脂(2-3 g)を1 cmカラムに充填
し、続いてナトリウム型に置換し(溶出液がpH 14になるまでカラムに0.2 N NaOHを流し
た、およそ5カラム容)、その後水素型への置換(溶出液が充填したときのpHになるまで0
.1 N HClまたは0.1 M HOAcで溶出した、およそ5カラム容)、続いてpH 6になるまで25%
ACN/水による洗浄を行った。結合前のペプチドまたはペプチド-PEG結合体のいずれかを25
% ACN/水(10 mg/mL)に溶解し、そのpHをTFAで3より低く調整し、カラムに充填した。2
-3カラム容の25% ACN/水で洗浄し、5 mL画分に集めた後、ペプチドを25% ACN/水中0.1 M
NH4OAcで溶出することによりカラムから遊離させ、再度5 mL画分に集めた。HPLC分析に
より、画分が目的のペプチドを含むことが明らかとなった。蒸発光散乱検出器(ESLD)を
用いた解析により、ペプチドがカラムについている場合およびNH4OAc溶液で溶出された(
一般に4〜10画分)場合、非結合PEGは夾雑物として検出されないことが示された。最初の
洗浄緩衝液(一般に最初の2画分)中にペプチドが溶出される場合、目的のPEG結合体およ
び過剰のPEGの分離は観察されなかった。
【0211】
以下のカラムはペプチドおよびペプチド-PEG結合体の両者をうまく保持し、未結合ペプ
チドからペプチド-PEG結合体をうまく精製した:
【表7】

【実施例6】
【0212】
アミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK(配列番号:1)を有するペプチドモノ
マーのEPO-Rアゴニストペプチドホモダイマーの合成
アミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号:2)を有するペプ
チドモノマーのEPO-Rアゴニストペプチドホモダイマーを、工程1において、合成される
ペプチドモノマーが(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)Kであることを除いて、実施例
1に記載されるように合成する。
【0213】
PEGがカルバメート結合を介してリンカーに結合する場合、この合成の最終産物を構造
的に以下のように示すことができる:
【化74】

【0214】
PEGがアミド結合を介してリンカーに結合する場合、この合成の最終産物を構造的に以
下のように示すことができる:
【化75】

【実施例7】
【0215】
インビトロ活性アッセイ
本実施例は、本発明のEPO-Rアゴニストペプチドの活性および効力を評価するために有
用な各種のインビトロアッセイを記載する。これらのアッセイの結果は、本発明の新規ペ
プチドはEPO-Rに結合し、EPO-Rシグナル伝達を活性化することを示している。さらに、こ
れらのアッセイの結果は、新規ペプチド組成物が、以前記載されたEPO擬似ペプチドに比
べて、EPO-R結合親和性および生物学的活性において驚くべき増加を示すことを示すもの
である。
【0216】
EPO−Rアゴニストペプチドのモノマーおよびダイマーは、実施例1または実施例2に提
供される方法によって調製される。これらのペプチドダイマーの効力は、レポーターアッ
セイ、増殖アッセイ、競合結合アッセイおよびC/BFU-eアッセイを含む、一連のインビト
ロ活性アッセイを用いて評価される。これらの四つのアッセイを以下にさらに詳細に記載
する。
【0217】
これらのインビトロ活性アッセイの結果を表2に要約する。
【0218】
1. レポーターアッセイ
このアッセイは、マウス前B細胞株由来レポーター細胞であるBaf3/EpoR/GCSFR fos/lux
に基づくものである。このレポーター細胞株は、ヒトEPO受容体の細胞外部分からヒトGCS
F受容体の細胞内部分までを含有するキメラ受容体を発現する。この細胞株にはさらに、f
osプロモーターによって駆動するルシフェラーゼ・レポーター遺伝子構築物がトランスフ
ェクトされる。エリスロポエチン試薬の添加によるキメラ受容体の活性化は、ルシフェラ
ーゼ・レポーター遺伝子の発現、およびそれゆえ、ルシフェラーゼの基質であるルシフェ
リンの添加により光の産生をもたらす。ゆえに、そのような細胞におけるEPO-R活性化の
レベルをルシフェラーゼ活性の測定により定量することができる。
【0219】
Baf3/EpoR/GCSFR fos/lux細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS;ハイクローン(Hyclone))
、10% WEHI-3上清(WEHI-3細胞の培養上清、ATCC #TIB-68)およびペニシリン/ストレプ
トマイシンを補完したDMEM/F12培地(Gibco)で培養される。アッセイのおよそ18時間前
に、細胞を10% FBSおよび0.1% WEHI-3上清を補完したDMEM/F12培地に移すことにより、
飢餓状態とする。アッセイ当日に、細胞を10% FBS(WEHI-3上清なし)を補完したDMEM/F
12培地で洗浄し、その後、1x106細胞/mLで、既知濃度の試験ペプチドの存在下で、または
陽性コントロールとしてEPO(R&Dシステムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)と共に、10%
FBS(WEHI-3上清なし)を補完したDMEM/F12培地中で培養する。試験ペプチドの連続希釈
液を同時にこのアッセイで試験する。アッセイプレートを4時間、37℃で、5% CO2雰囲気
中でインキュベートし、その後、ルシフェリン(Steady-Glo;プロメガ、ウィスコンシン
州マディソン)を各ウェルに添加する。5分間のインキュベーションの後、発光をパッカ
ード・トップカウント・ルミノメーター(パッカード・インストルメント社、イリノイ州
ダウナーズグローブ)で測定する。光のカウントを試験ペプチドの濃度に対してプロット
し、グラフパッド(Graph Pad)ソフトウェアを用いて解析する。最大発光の半分となっ
た試験ペプチドの濃度をEC50として記録する。
【0220】
2. 増殖アッセイ
このアッセイは、ヒトEPO-Rを発現するようにトランスフェクトされた、マウス前B細胞
株であるBaf3に基づくものである。得られた細胞株BaF3/Gal4/Elk/EPORの増殖は、EPO-R
活性に依存する。細胞増殖の程度は、MTTを用いて定量する。ここで、MTTアッセイのシグ
ナルは生細胞数に比例する。
【0221】
BaF3/Gal4/Elk/EPOR細胞をスピナーフラスコで、10% FBS(ハイクローン)および2%
WEHI-3上清(ATCC #TIB-68)を補完したDMEM/F12培地(Gibco)を用いて培養する。培養
した細胞をスピナーフラスコ中に、細胞密度1x106細胞/mlで、10% FBSおよび0.1%WEHI
-3上清を補完したDMEM/F12培地の飢餓状態に一晩置いた。飢餓状態の細胞を二回ダルベッ
コのPBS(Gibco)で洗浄し、1x106細胞/mlで、10% FBS(WEHI-3上清なし)を補完したD
MEM/F12培地に再懸濁した。細胞懸濁液の50 μLアリコート(〜50,000細胞)を次に96ウ
ェルのアッセイプレートに三連で播いた。10% FBS(WEHI-3上清Iなし)を補完したDMEM/
F12培地中の試験EPO擬似ペプチドの希釈系列の50μLアリコート、または50 μLのEPO(R&
Dシステムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)、またはAranesp(商標)(ダーベポエチン・
アルファ、アムジェンから市販されるEPO-Rアゴニスト)を96ウェルのアッセイプレート
に添加した(ウェルの最終容量は100 μL)。例えば、試験ペプチド(または対照のEPOペ
プチド)の終濃度が810 pM〜0.0045 pMの範囲にあるような12の異なる希釈数を試験する
ことができる。次に、播かれた細胞を48時間37℃でインキュベートする。次に、10 μLの
MTT(ロシュ・ダイアグノスティックス)をそれぞれの培養皿のウェルに添加し、4時間イ
ンキュベートする。10% SDS+0.01N HClを添加して反応を停止する。プレートを一晩37
℃でインキュベートする。それぞれのウェルの波長595 nmの吸収を分光測光法で測定する
。試験ペプチド濃度に対する吸収の測定値のプロットを作図し、EC50をグラフパッド・ソ
フトウェアを用いて計算する。最大吸収の半分の値となる試験ペプチドの濃度をEC50とし
て記録する。
【0222】
3. 競合結合アッセイ
競合結合の計算は、光シグナルが二つのビーズ:ビオチン化EPO-R結合ペプチドトレー
サーを有するストレプトアビジンのドナービーズと、EPO-Rを結合するアクセプタービー
ズとの近接作用の結果として生ずるアッセイを用いてなされる。光は、非放射性エネルギ
ー伝達により、一重項酸素が照明の際に第一のビーズから放出され、放出された一重項酸
素と接触することで、第二のビーズが発光する間に生じる。これらのビーズのセットは市
販されている(パッカード)。ビーズの近接はEPO-R結合ペプチドトレーサーのEPO-Rへの
結合により生じる。EPO-Rへの結合に対して、EPO-R結合ペプチドトレーサーと競合する試
験ペプチドは、この結合を阻害し、発光を減少させる。
【0223】
より詳細には、方法は以下のとおりである:4 μLの試験EPO-Rアゴニストペプチドの連
続希釈または正もしくは負の対照を384ウェルプレートのウェルに添加する。その後、2
μL/ウェルの受容体/ビーズカクテルを添加する。受容体/ビーズカクテルは、15 μLの5
mg/ml ストレプトアビジン・ドナービーズ(パッカード)、15 μLの5 mg/ml モノクロー
ナル抗体 abl79(この抗体は組換えEPO-Rに含まれるヒト胎盤アルカリホスファターゼタ
ンパク質の部分を認識する)、プロテインAをコートしたアクセプタービーズ( プロテイ
ンAはabl79抗体に結合する;パッカード)、112.5 μLのa 1:6.6希釈の組換えEPO-R(abl
79の標的エピトープを含むヒト胎盤アルカリホスファターゼタンパク質の部分との融合タ
ンパク質として、チャイニーズハムスターの卵巣細胞で産生された)および 607.5 μLの
Alphaquest緩衝液(40mM HEPES、pH 7.4;1 mM MgCl2;0.1% BSA、0.05% Tween 20)から
なる。軽くたたいて混合する。2 μL/ウェルのビオチン化EPO-R結合ペプチドトレーサー
であるAF33068を添加する(終濃度30 nM)。EPO-R結合ペプチド(表3「レポーターEC50(
pM)」を参照)であるAF33068は実施例1に記載の方法に従って調製する。
【化76】

【0224】
混合するために1分間遠心する。パッカード・トップシールでプレートをシールし、フ
ォイルで包む。室温で一晩インキュベートする。18時間後、AlphaQuestリーダー(パッカ
ード)で発光を測定する。ペプチド濃度に対する発光をプロットし、グラフパッドまたは
エクセルで解析する。
【0225】
試験ペプチドなしで観察された濃度と比較して、発光が50%減少する試験ペプチドの濃
度がIC50として記録される。
【0226】
4. C/BFU-eアッセイ
EPO-Rのシグナル伝達は骨髄幹細胞の分化を赤血球細胞前駆体が増殖する方向へ刺激す
る。このアッセイは、初期ヒト骨髄多分化能幹細胞からの赤血球細胞前駆体の増殖と分化
を刺激する試験ペプチドの能力を測定するものである。
【0227】
このアッセイのために、試験ペプチドの連続希釈液を10% FBS(ハイクローン)を補完
したIMDM培地(Gibco)で調製する。これらの連続希釈液または正の対照EPOペプチドをメ
チルセルロースに添加し、最終容量を1.5 mLにする。メチルセルロースとペプチド混合液
を完全に混合する。ヒト骨髄由来CD34+細胞(Poietics/Cambrex)のアリコート(100,000
細胞/mL)を解凍する。解凍した細胞を50 mLチューブ中の1 mg/mlのDNAse(Stem Cells)
0.1 mLに徐々に添加する。次に、40-50 mLのIMDM培地を徐々に細胞に添加する:培地は、
最初の10 mLを50 mLチューブの管壁に沿って一滴ずつ加え、その後、残りの培地をゆっく
り管壁に沿って加える。細胞をその後900 rpmで20分間遠心し、培地を注意して緩やかな
吸引により除去する。細胞を1 mLのIMDM培地に再懸濁し、mLあたりの細胞密度を血球計ス
ライド上で計測する(スライド上で10 μLの細胞懸濁液アリコート、細胞密度は、平均カ
ウントX10,000細胞/ml)。細胞をIMDM培地で15,000細胞/mLの細胞密度まで希釈する。希
釈した細胞100 μLをそれぞれの1.5 mLのメチルセルロース+ペプチド試料(アッセイ培
地中の最終細胞濃度は1000細胞/mLである)に添加し、混合液をボルテックスする。混合
液中の気泡を消失させ、先端の尖っていない針を用いて、1 mLを吸引する。それぞれの試
料の0.25 mL吸引混合液を24ウェルプレート(ファルコン銘柄)の4ウェルのそれぞれに添
加する。プレートした混合液を37℃、5% CO2条件下、湿潤インキュベーター中で14日間
インキュベートする。位相差顕微鏡を用いて(対物5X-10X、最終倍率100X)、赤血球コロ
ニーの存在を記録する。EPOの正対照で観察される結果と比較して、形成コロニー数が最
大の90%での試験ペプチドの濃度をEC90として記録する[表2参照:C/BFU-e EC90]。
【0228】
【表8】

【実施例8】
【0229】
インビボ活性アッセイ
本実施例は、本発明のEPO-Rアゴニストペプチドの活性および効力を評価するのに有用
な、各種のインビボアッセイを記載する。EPO-Rアゴニストペプチドモノマーおよびダイ
マーは実施例1に提供される方法に従って調製される。これらのペプチドモノマーおよび
ダイマーのインビボ活性は、真性赤血球増加症で超低酸素症のマウスのバイオアッセイお
よび網状赤血球アッセイを含む一連のアッセイを用いて評価される。これら二つのアッセ
イについて、以下にさらに詳細に記載する。
【0230】
1. 真性赤血球増加症、超低酸素症マウスのバイオアッセイ
CotesとBangham(1961)Nature 191: 1065-1067に記載された方法を適合させた、真性
赤血球増加症、超低酸素症マウスのバイオアッセイにおいて、試験ペプチドをインビボ活
性について測定する。このアッセイは、試験ペプチドがEPO擬似体として機能できるか、
すなわち、EPO-Rを活性化し、新しい赤血球細胞合成を誘導するかを試験するものである
。赤血球合成は、合成した赤血球細胞のヘモグロビンへの放射標識した鉄の取り込みに基
づいて定量できる。
【0231】
BDF1マウスを周囲条件に7-10日間馴化させる。体重を全ての動物について測定し、低体
重の動物(<15グラム)は用いない。マウスを低気圧室で合計14日間、連続的な調節サイ
クルにかける。それぞれの24時間サイクルは、0.40±0.02%大気圧で18時間および周囲圧
で6時間からなる。調節後、マウスを投与前さらに72時間、周囲圧に維持する。
【0232】
試験ペプチドまたは組換えヒトEPO標品をPBS+0.1% BSAビヒクル(PBS/BSA)で希釈す
る。ペプチドモノマーのストック溶液を最初にジメチルスルホキシド(DMSO)に可溶化す
る。陰性対照にはPBS/BSAだけを注射したマウスの一群と1%のDMSOを注射した一群が含ま
れる。それぞれの投与群は10匹のマウスを含む。適当な試料0.5 mLをマウスに皮下注射(
首筋)する。
【0233】
試料注射の48時間後、マウスに約0.75 μキュリー/マウスの投与量で、0.2 mlのFe59
デュポン、NEN)を腹腔内注射で投与する。マウス体重をFe59投与24時間後に測定し、Fe5
9投与48時間後に犠牲にする。血液をそれぞれの動物から心臓穿刺により回収し、ヘマト
クリット値を測定する(ヘパリンを抗凝固剤として用いた)。それぞれの血液試料(0.2
ml)について、パッカード・ガンマカウンターを用いてFe59取り込みを解析する。非応答
マウス(すなわち、陰性対照群よりも低い放射活性の取り込みをするマウス)は適正なデ
ータセットから除外する。ヘマトクリット値が陰性対照群の53%以下のマウスもまた除か
れる。
【0234】
結果はそれぞれの実験投与の10匹の動物セットに由来する。血液試料中に取り込まれる
放射活性の平均量[カウント/分(CPM)]は、それぞれの群から計算する。
【0235】
2. 網状赤血球アッセイ
正常なBDF1マウスに、EPO対照または試験ペプチドのいずれかを連続3日投与する(0.5
mL、皮下注射)。3日目に、マウスに鉄デキストラン(100 mg/ml)も投与する(0.1 mL、
腹腔内注射)。5日目に、マウスをCO2によって麻酔し、心臓穿刺によって採血する。各血
液試料の網状赤血球の割合(%)を、チアゾールオレンジ染色とフローサイトメーター分
析(網状赤血球カウントプログラム)によって決定する。ヘマトクリット値は手動で決定
する。網状赤血球の修正された割合は、次の式を使って決定する:
%RETIC(修正)= %RETIC(測定) X (Hematocrit個体/Hematocrit正常)
【0236】
3. 血液学的アッセイ
正常なCD1マウスに、EPO陽性対照、試験ペプチド、またはビヒクルを週4回静脈ボーラ
ス注射により投与する。mg/kgで表される陽性対照と試験ペプチド投与の範囲は、製剤中
の活性化合物濃度を変えることによって試験する。注射された容量は5 ml/kgである。ビ
ヒクル対照群は12匹の動物であり、8匹の動物はそれぞれの残りの投与群である。毎日の
生存能力と週1回の体重を記録する。
【0237】
投与マウスを絶食させ、その後吸入イソフルランで麻酔し、末端血液試料を1日目(ビ
ヒクル対照マウス)および15日目と29日目(4匹のマウス/群/日)に、心臓または腹部大
動脈穿刺により回収する。血液をVacutainer(登録商標)ブランドチューブに移す。好ま
しい抗凝固剤はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
【0238】
血液試料は、当分野に周知の自動臨床分析装置(例えば、コールター社製のもの)を用
いて、赤血球合成、ならびにヘマトクリット(Hct)、ヘモグロビン(Hgb)および全赤血
球数(RBC)のなどの生理機能を測定する最終段階のために評価する。
【実施例9】
【0239】
アミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK(配列番号:1)を有するペプチドモノ
マーのEPO-Rアゴニストペプチドホモダイマーの合成
工程1−ペプチドモノマーの合成:ペプチドモノマーは、標準的なFmoc法により、ABI
431Aペプチド合成機上で、TG-RAM樹脂(0.18 mmol/g、Rapp Polymere社、ドイツ)を用い
て合成する。アミド化カルボキシ末端を有するペプチドモノマーの合成に関して、完全に
組み立てられたペプチドを、82.5% TFA、5% 水、6.25% アニソール、6.25% エタンジ
チオールを用いて樹脂から切断する。脱保護化産物を樹脂から濾過し、ジエチルエーテル
で沈殿させる。乾燥後、産物を、0.1% トリフルオロ酢酸中アセトニトリル/水の濃度勾
配を用いたC18逆相高速液体クロマトグラフィにより精製する。ペプチドの構造をエレク
トロスプレイ質量分析により確認する。ペプチドをDMSO:水が1:1の溶液に1 mg/mlの濃
度で溶解し、ジスルフィド形成を行う。産物を、0.1% トリフルオロ酢酸中アセトニトリ
ル/水の濃度勾配を用いたC18逆相高速液体クロマトグラフィにより精製する。ペプチドの
構造をエレクトロスプレイ質量分析により確認する。ペプチドモノマーを、以下のように
示すことができる:
(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK-NH2
【0240】
工程2−三官能リンカーの合成:DCM 100 mL中ジエチルイミノ酢酸(10.0 g、52.8 mm
ol)およびBoc-ベータ-アラニン(10.0 g、52.8 mmol)の溶液に、ジイソプロピルカルボ
ジイミド(8.0 ml、51.1 mmol)を10分かけて室温で加えた。反応混合物を添加の間にお
よそ10度温め、その後20分かけて室温に戻した。反応液を一晩撹拌し、沈殿したジイソプ
ロピル尿素を濾過にて除去した。溶媒を減圧下で除去し、粘性物質を得た。残渣を酢酸エ
チルに溶解し、濾過することによりさらなる沈殿尿素を除去した。有機相を分液ロートに
入れ、洗浄(飽和NaHCO3、ブライン、0.5N HCl、ブライン)、乾燥(MgSO4)、濾過およ
び減圧下での濃縮により、無色の油としてジエステル産物を得た。このジエステルをMeOH
:THFの1:1混合液(100 mL)に溶解し、これに水(25 mL)を、そして次にNaOH(5 g、1
25 mmol)を添加した。PHを測定し>10となるようにした。反応混合物を室温で2時間撹拌
し、次に6N HClでpH 1に酸性化した。水相をNaClで飽和し、酢酸エチルで4回抽出した。
併せた有機相を洗浄(ブライン)、乾燥(MgSO4)および減圧下で濃縮し、白色の半固体
を得た。この固体を50 mLのDCMに溶解し、これに300 mLのヘキサンを添加して、白色のス
ラリーを作出した。溶媒を減圧下で除去し、白色固体として二価酸を得た(14.7 g、2段
階で91.5%の収率)。20 mLのDMF中の二価酸(1 g、3.29 mmol)の溶液に、N-ヒドロキシ
スクシンイミド(770 mg、6.69 mmol)およびジイソプロピルカルボジイミド(1.00 ml、
6.38 mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(3 mg、0.02 mmol)を添加した。反応混合
物を一晩撹拌し、溶媒を減圧下で除去した。残渣を酢酸エチルに溶解し、濾過して、沈殿
した尿素を除去した。有機相を分液ロートに入れ、洗浄(飽和NaHCO3、ブライン、0.5N H
Cl、ブライン)、乾燥(MgSO4)、濾過および減圧下での濃縮により、白色固体としてジ
-NHSエステル産物を得た(1.12 g、収率68%)。
【化77】

【0241】
工程3−三官能基リンカーとペプチドモノマーのカプリング:リンカーとのカプリング
のために、2等量のペプチドを乾燥DMF中で1等量の三官能基リンカーと混合し、透明な溶
液を得る。5等量のDIEAを2分後に添加する。混合液を周囲温度で14時間撹拌する。溶媒を
減圧下で除去し、粗産物をDCM中80% TFAに30分間溶解し、Boc基を除去し、続いてC18逆
相HPLCで精製する。ダイマーの構造をエレクトロスプレイ質量分析により確認する。この
カプリング反応により、リンカーはそれぞれのモノマーのリジン残基のε-アミノ基の窒
素原子に結合する。
【化78】

【0242】
工程4−リジンにより結合する二つの直鎖状PEGを含有するPEG部分の合成
mPEG2-リジノール-NPC
市販のリジノールを過剰のmPEG2-NPCで処理し、MPEG2-リジノールを得る。このMPEG2-
リジノールはNPCと反応し、mPEG2-リジノール-NPCを形成する。
【0243】
mPEG2-Lys-NHS
この産物は例えば、ネクター・セラピューティクス(35806、アラバマ州ハンツビル
ディスカバリードライブ 490)のモレキュラー・エンジニアリング・カタログ(2003)
の商品番号2Z3X0T01として市販されている。
【0244】
工程5−ペプチドダイマーのPEG化:
カルバメート結合を介したPEG化:
ペプチドダイマーとPEG類(mPEG2-リジノール-NPC)を1:2のモル比で乾燥DMF中に混合
し、透明な溶液を得る。5分後、4等量のDIEAを上記溶液に加える。混合液を周囲温度で14
時間撹拌し、C18逆相HPLCを用いて精製する。PEG化ペプチドの構造をMALDI質量で確認す
る。精製ペプチドはまた、以下に概略するように陽イオン交換クロマトグラフィによる精
製にかけた。
【化79】

【0245】
アミド結合を介したPEG化:
ペプチドダイマーとPEG類(シェアウォーター社(米国)のmPEG2-Lys-NHS)を1:2のモ
ル比で乾燥DMF中に混合し、透明な溶液を得る。5分後、10等量のDIEAを上記溶液に加える
。混合液を周囲温度で2時間撹拌し、C18逆相HPLCを用いて精製する。PEG化ペプチドの構
造をMALDI質量で確認する。精製ペプチドはまた、以下に概略するように陽イオン交換ク
ロマトグラフィによる精製にかけた。
【化80】

【0246】
工程6−ペプチドのイオン交換精製:開始のダイマーペプチドの保持能に加え、上記ペ
プチド-PEG結合体を未反応の(または加水分解した)PEGから分離するために、その性能
についていくつかの交換支持体を調べた。イオン交換樹脂(2-3 g)を1 cmカラムに充填
し、続いてナトリウム型に置換し(溶出液がpH 14になるまでカラムに0.2 N NaOHを流し
た、およそ5カラム容)、その後水素型への置換(溶出液が充填したときのpHになるまで0
.1 N HClまたは0.1 M HOAcで溶出した、およそ5カラム容)、続いてpH 6になるまで25%
ACN/水による洗浄を行った。結合前のペプチドまたはペプチド-PEG結合体のいずれかを25
% ACN/水(10 mg/mL)に溶解し、そのpHをTFAで3より低く調整し、カラムに充填した。2
-3カラム容の25% ACN/水で洗浄し、5 mL画分に集めた後、ペプチドを25% ACN/水中0.1 M
NH4OAcで溶出することによりカラムから遊離させ、再度5 mL画分に集めた。HPLC分析に
より、画分が目的のペプチドを含むことが明らかとなった。蒸発光散乱検出器(ESLD)を
用いた解析により、ペプチドがカラムについている場合およびNH4OAc溶液で溶出された(
一般に4〜10画分)場合、非結合PEGは夾雑物として検出されないことが示された。最初の
洗浄緩衝液(一般に最初の2画分)中にペプチドが溶出される場合、目的のPEG結合体およ
び過剰のPEGの分離は観察されなかった。
【0247】
以下のカラムはペプチドおよびペプチド-PEG結合体の両者をうまく保持し、未結合ペプ
チドからペプチド-PEG結合体をうまく精製した:
【表9】

【実施例10】
【0248】
アミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK(配列番号:1)を有するペプチドモノ
マーのEPO-Rアゴニストペプチドホモダイマーの合成
アミノ酸配列 (AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号:2)を有するペプ
チドモノマーのEPO-Rアゴニストペプチドホモダイマーを、工程1において、合成される
ペプチドモノマーが(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)Kであることを除いて、実施例
1に記載されるように合成する。
【0249】
PEGがカルバメート結合を介してスペーサーに結合する場合、この合成の最終産物を構
造的に以下のように示すことができる:
【化81】

【0250】
PEGがアミド結合を介してリンカーに結合する場合、この合成の最終産物を構造的に以
下のように示すことができる:
【化82】

【実施例11】
【0251】
インビトロ活性アッセイ
本実施例は、本発明のEPO-Rアゴニストペプチドの活性および効力を評価するために有
用な各種のインビトロアッセイを記載する。これらのアッセイの結果は、本発明の新規ペ
プチドはEPO-Rに結合し、EPO-Rシグナル伝達を活性化することを示している。さらに、こ
れらのアッセイの結果は、新規ペプチド組成物が、以前記載されたEPO擬似ペプチドに比
べて、EPO-R結合親和性および生物学的活性において驚くべき増加を示すことを示すもの
である。
【0252】
EPO−Rアゴニストペプチドのモノマーおよびダイマーは、実施例1および実施例2に提
供される方法によって調製される。これらのペプチドダイマーの効力は、レポーターアッ
セイ、増殖アッセイ、競合結合アッセイおよびC/BFU-eアッセイを含む、一連のインビト
ロ活性アッセイを用いて評価される。これらの四つのアッセイを以下にさらに詳細に記載
する。
【0253】
これらのインビトロ活性アッセイの結果を表2に要約する。
【0254】
1. レポーターアッセイ
このアッセイは、マウス前B細胞株由来レポーター細胞であるBaf3/EpoR/GCSFR fos/lux
に基づくものである。このレポーター細胞株は、ヒトEPO受容体の細胞外部分からヒトGCS
F受容体の細胞内部分までを含有するキメラ受容体を発現する。この細胞株にはさらに、f
osプロモーターによって駆動するルシフェラーゼ・レポーター遺伝子構築物がトランスフ
ェクトされる。エリスロポエチン試薬の添加によるキメラ受容体の活性化は、ルシフェラ
ーゼ・レポーター遺伝子の発現、およびそれゆえ、ルシフェラーゼの基質であるルシフェ
リンの添加により光の産生をもたらす。ゆえに、そのような細胞におけるEPO-R活性化の
レベルをルシフェラーゼ活性の測定により定量することができる。
【0255】
Baf3/EpoR/GCSFR fos/lux細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS;ハイクローン(Hyclone))
、10% WEHI-3上清(WEHI-3細胞の培養上清、ATCC #TIB-68)およびペニシリン/ストレプ
トマイシンを補完したDMEM/F12培地(Gibco)で培養される。アッセイのおよそ18時間前
に、細胞を10% FBSおよび0.1% WEHI-3上清を補完したDMEM/F12培地に移すことにより、
飢餓状態とする。アッセイ当日に、細胞を10% FBS(WEHI-3上清なし)を補完したDMEM/F
12培地で洗浄し、その後、1x106細胞/mLで、既知濃度の試験ペプチドの存在下で、または
陽性コントロールとしてEPO(R&Dシステムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)と共に、10%
FBS(WEHI-3上清なし)を補完したDMEM/F12培地中で培養する。試験ペプチドの連続希釈
液を同時にこのアッセイで試験する。アッセイプレートを4時間、37℃で、5% CO2雰囲気
中でインキュベートし、その後、ルシフェリン(Steady-Glo;プロメガ、ウィスコンシン
州マディソン)を各ウェルに添加する。5分間のインキュベーションの後、発光をパッカ
ード・トップカウント・ルミノメーター(パッカード・インストルメント社、イリノイ州
ダウナーズグローブ)で測定する。光のカウントを試験ペプチドの濃度に対してプロット
し、グラフパッド(Graph Pad)ソフトウェアを用いて解析する。最大発光の半分となっ
た試験ペプチドの濃度をEC50として記録する。
【0256】
2. 増殖アッセイ
このアッセイは、ヒトEPO-Rを発現するようにトランスフェクトされた、マウス前B細胞
株であるBaf3に基づくものである。得られた細胞株BaF3/Gal4/Elk/EPORの増殖は、EPO-R
活性に依存する。細胞増殖の程度は、MTTを用いて定量する。ここで、MTTアッセイのシグ
ナルは生細胞数に比例する。
【0257】
BaF3/Gal4/Elk/EPOR細胞をスピナーフラスコで、10% FBS(ハイクローン)および2%
WEHI-3上清(ATCC #TIB-68)を補完したDMEM/F12培地(Gibco)を用いて培養する。培養
した細胞をスピナーフラスコ中に、細胞密度1x106細胞/mlで、10% FBSおよび0.1%WEHI
-3上清を補完したDMEM/F12培地の飢餓状態に一晩置いた。飢餓状態の細胞を二回ダルベッ
コのPBS(Gibco)で洗浄し、1x106細胞/mlで、10% FBS(WEHI-3上清なし)を補完したD
MEM/F12培地に再懸濁した。細胞懸濁液の50 μLアリコート(〜50,000細胞)を次に96ウ
ェルのアッセイプレートに三連で播いた。10% FBS(WEHI-3上清Iなし)を補完したDMEM/
F12培地中の試験EPO擬似ペプチドの希釈系列の50μLアリコート、または50 μLのEPO(R&
Dシステムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)、またはAranesp(商標)(ダーベポエチン・
アルファ、アムジェンから市販されるEPO-Rアゴニスト)を96ウェルのアッセイプレート
に添加した(ウェルの最終容量は100 μL)。例えば、試験ペプチド(または対照のEPOペ
プチド)の終濃度が810 pM〜0.0045 pMの範囲にあるような12の異なる希釈数を試験する
ことができる。次に、播かれた細胞を48時間37℃でインキュベートする。次に、10 μLの
MTT(ロシュ・ダイアグノスティックス)をそれぞれの培養皿のウェルに添加し、4時間イ
ンキュベートする。10% SDS+0.01N HClを添加して反応を停止する。プレートを一晩37
℃でインキュベートする。それぞれのウェルの波長595 nmの吸収を分光測光法で測定する
。試験ペプチド濃度に対する吸収の測定値のプロットを作図し、EC50をグラフパッド・ソ
フトウェアを用いて計算する。最大吸収の半分の値となる試験ペプチドの濃度をEC50とし
て記録する。
【0258】
3. 競合結合アッセイ
競合結合の計算は、光シグナルが二つのビーズ:ビオチン化EPO-R結合ペプチドトレー
サーを有するストレプトアビジンのドナービーズと、EPO-Rを結合するアクセプタービー
ズとの近接作用の結果として生ずるアッセイを用いてなされる。光は、非放射性エネルギ
ー伝達により、一重項酸素が照明の際に第一のビーズから放出され、放出された一重項酸
素と接触することで、第二のビーズが発光する間に生じる。これらのビーズのセットは市
販されている(パッカード)。ビーズの近接はEPO-R結合ペプチドトレーサーのEPO-Rへの
結合により生じる。EPO-Rへの結合に対して、EPO-R結合ペプチドトレーサーと競合する試
験ペプチドは、この結合を阻害し、発光を減少させる。
【0259】
より詳細には、方法は以下のとおりである:4 μLの試験EPO-Rアゴニストペプチドの連
続希釈または正もしくは負の対照を384ウェルプレートのウェルに添加する。その後、2
μL/ウェルの受容体/ビーズカクテルを添加する。受容体/ビーズカクテルは、15 μLの5
mg/ml ストレプトアビジン・ドナービーズ(パッカード)、15 μLの5 mg/ml モノクロー
ナル抗体 abl79(この抗体は組換えEPO-Rに含まれるヒト胎盤アルカリホスファターゼタ
ンパク質の部分を認識する)、プロテインAをコートしたアクセプタービーズ( プロテイ
ンAはabl79抗体に結合する;パッカード)、112.5 μLのa 1:6.6希釈の組換えEPO-R(abl
79の標的エピトープを含むヒト胎盤アルカリホスファターゼタンパク質の部分との融合タ
ンパク質として、チャイニーズハムスターの卵巣細胞で産生された)および 607.5 μLの
Alphaquest緩衝液(40mM HEPES、pH 7.4;1 mM MgCl2;0.1% BSA、0.05% Tween 20)から
なる。軽くたたいて混合する。2 μL/ウェルのビオチン化EPO-R結合ペプチドトレーサー
であるAF33068を添加する(終濃度30 nM)。EPO-R結合ペプチド(表3「レポーターEC50(
pM)」を参照)であるAF33068は実施例1に記載の方法に従って調製する。
【化83】

【0260】
混合するために1分間遠心する。パッカード・トップシールでプレートをシールし、フ
ォイルで包む。室温で一晩インキュベートする。18時間後、AlphaQuestリーダー(パッカ
ード)で発光を測定する。ペプチド濃度に対する発光をプロットし、グラフパッドまたは
エクセルで解析する。
【0261】
試験ペプチドなしで観察された濃度と比較して、発光が50%減少する試験ペプチドの濃
度がIC50として記録される。
【0262】
4. C/BFU-eアッセイ
EPO-Rのシグナル伝達は骨髄幹細胞の分化を赤血球細胞前駆体が増殖する方向へ刺激す
る。このアッセイは、初期ヒト骨髄多分化能幹細胞からの赤血球細胞前駆体の増殖と分化
を刺激する試験ペプチドの能力を測定するものである。
【0263】
このアッセイのために、試験ペプチドの連続希釈液を10% FBS(ハイクローン)を補完
したIMDM培地(Gibco)で調製する。これらの連続希釈液または正の対照EPOペプチドをメ
チルセルロースに添加し、最終容量を1.5 mLにする。メチルセルロースとペプチド混合液
を完全に混合する。ヒト骨髄由来CD34+細胞(Poietics/Cambrex)のアリコート(100,000
細胞/mL)を解凍する。解凍した細胞を50 mLチューブ中の1 mg/mlのDNAse(Stem Cells)
0.1 mLに徐々に添加する。次に、40-50 mLのIMDM培地を徐々に細胞に添加する:培地は、
最初の10 mLを50 mLチューブの管壁に沿って一滴ずつ加え、その後、残りの培地をゆっく
り管壁に沿って加える。細胞をその後900 rpmで20分間遠心し、培地を注意して緩やかな
吸引により除去する。細胞を1 mLのIMDM培地に再懸濁し、mLあたりの細胞密度を血球計ス
ライド上で計測する(スライド上で10 μLの細胞懸濁液アリコート、細胞密度は、平均カ
ウントX10,000細胞/ml)。細胞をIMDM培地で15,000細胞/mLの細胞密度まで希釈する。希
釈した細胞100 μLをそれぞれの1.5 mLのメチルセルロース+ペプチド試料(アッセイ培
地中の最終細胞濃度は1000細胞/mLである)に添加し、混合液をボルテックスする。混合
液中の気泡を消失させ、先端の尖っていない針を用いて、1 mLを吸引する。それぞれの試
料の0.25 mL吸引混合液を24ウェルプレート(ファルコン銘柄)の4ウェルのそれぞれに添
加する。プレートした混合液を37℃、5% CO2条件下、湿潤インキュベーター中で14日間
インキュベートする。位相差顕微鏡を用いて(対物5X-10X、最終倍率100X)、赤血球コロ
ニーの存在を記録する。EPOの正対照で観察される結果と比較して、形成コロニー数が最
大の90%での試験ペプチドの濃度をEC90として記録する[表2参照:C/BFU-e EC90]。
【0264】
【表10】

【実施例12】
【0265】
インビボ活性アッセイ
本実施例は、本発明のEPO-Rアゴニストペプチドの活性および効力を評価するのに有用
な、各種のインビボアッセイを記載する。EPO-Rアゴニストペプチドモノマーおよびダイ
マーは実施例1に提供される方法に従って調製される。これらのペプチドモノマーおよび
ダイマーのインビボ活性は、真性赤血球増加症で超低酸素症のマウスのバイオアッセイお
よび網状赤血球アッセイを含む一連のアッセイを用いて評価される。これら二つのアッセ
イについて、以下にさらに詳細に記載する。
【0266】
1. 真性赤血球増加症、超低酸素症マウスのバイオアッセイ
CotesとBangham(1961)Nature 191: 1065-1067に記載された方法を適合させた、真性
赤血球増加症、超低酸素症マウスのバイオアッセイにおいて、試験ペプチドをインビボ活
性について測定する。このアッセイは、試験ペプチドがEPO擬似体として機能できるか、
すなわち、EPO-Rを活性化し、新しい赤血球細胞合成を誘導するかを試験するものである
。赤血球合成は、合成した赤血球細胞のヘモグロビンへの放射標識した鉄の取り込みに基
づいて定量できる。
【0267】
BDF1マウスを周囲条件に7-10日間馴化させる。体重を全ての動物について測定し、低体
重の動物(<15グラム)は用いない。マウスを低気圧室で合計14日間、連続的な調節サイ
クルにかける。それぞれの24時間サイクルは、0.40±0.02%大気圧で18時間および周囲圧
で6時間からなる。調節後、マウスを投与前さらに72時間、周囲圧に維持する。
【0268】
試験ペプチドまたは組換えヒトEPO標品をPBS+0.1% BSAビヒクル(PBS/BSA)で希釈す
る。ペプチドモノマーのストック溶液を最初にジメチルスルホキシド(DMSO)に可溶化す
る。陰性対照にはPBS/BSAだけを注射したマウスの一群と1%のDMSOを注射した一群が含ま
れる。それぞれの投与群は10匹のマウスを含む。適当な試料0.5 mLをマウスに皮下注射(
首筋)する。
【0269】
試料注射の48時間後、マウスに約0.75 μキュリー/マウスの投与量で、0.2 mlのFe59
デュポン、NEN)を腹腔内注射で投与する。マウス体重をFe59投与24時間後に測定し、Fe5
9投与48時間後に犠牲にする。血液をそれぞれの動物から心臓穿刺により回収し、ヘマト
クリット値を測定する(ヘパリンを抗凝固剤として用いた)。それぞれの血液試料(0.2
ml)について、パッカード・ガンマカウンターを用いてFe59取り込みを解析する。非応答
マウス(すなわち、陰性対照群よりも低い放射活性の取り込みをするマウス)は適正なデ
ータセットから除外する。ヘマトクリット値が陰性対照群の53%以下のマウスもまた除か
れる。
【0270】
結果はそれぞれの実験投与の10匹の動物セットに由来する。血液試料中に取り込まれる
放射活性の平均量[カウント/分(CPM)]は、それぞれの群から計算する。
【0271】
2. 網状赤血球アッセイ
正常なBDF1マウスに、EPO対照または試験ペプチドのいずれかを連続3日投与する(0.5
mL、皮下注射)。3日目に、マウスに鉄デキストラン(100 mg/ml)も投与する(0.1 mL、
腹腔内注射)。5日目に、マウスをCO2によって麻酔し、心臓穿刺によって採血する。各血
液試料の網状赤血球の割合(%)を、チアゾールオレンジ染色とフローサイトメーター分
析(網状赤血球カウントプログラム)によって決定する。ヘマトクリット値は手動で決定
する。網状赤血球の修正された割合は、次の式を使って決定する:
%RETIC(修正)= %RETIC(測定) X (Hematocrit個体/Hematocrit正常)
【0272】
3. 血液学的アッセイ
正常なCD1マウスに、EPO陽性対照、試験ペプチド、またはビヒクルを週4回静脈ボーラ
ス注射により投与する。mg/kgで表される陽性対照と試験ペプチド投与の範囲は、製剤中
の活性化合物濃度を変えることによって試験する。注射された容量は5 ml/kgである。ビ
ヒクル対照群は12匹の動物であり、8匹の動物はそれぞれの残りの投与群である。毎日の
生存能力と週1回の体重を記録する。
【0273】
投与マウスを絶食させ、その後吸入イソフルランで麻酔し、末端血液試料を1日目(ビ
ヒクル対照マウス)および15日目と29日目(4匹のマウス/群/日)に、心臓または腹部大
動脈穿刺により回収する。血液をVacutainer(登録商標)ブランドチューブに移す。好ま
しい抗凝固剤はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
【0274】
血液試料は、当分野に周知の自動臨床分析装置(例えば、コールター社製のもの)を用
いて、赤血球合成、ならびにヘマトクリット(Hct)、ヘモグロビン(Hgb)および全赤血
球数(RBC)のなどの生理機能を測定する最終段階のために評価する。
【0275】
本発明は、明細書に記載された特定の実施態様による範囲に限定されない。実際、本明
細書に記載されたものに加えて、発明の各種の改変が前述の記載および後述の図面から当
業者には明らかとなるであろう。そのような改変は添付クレームの範囲内にあることを意
図している。
【0276】
さらに、全ての値が概算であり、記載のために提供されるものであることは理解される
べきである。
【0277】
特許、特許出願、および各種刊行物を含む多くの参考文献が本発明の記載に引用され、
議論されている。そのような参考文献の引用および/または議論は、本発明の記載を単に
明確にするだけのものであり、そのような参考文献のいずれかが本明細書に記載される発
明の「先行文献」であることを承認しているわけではない。本明細書において引用され、
議論された全ての参考文献はその全体を参照して、およびそれぞれの参考文献が個々に参
照して取り込まれるかのような程度まで、取り込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリスロポエチン受容体(EPO-R)に結合し、活性化する化合物であって、
該化合物は、式:
【化1】

を有するペプチドダイマーを含有し、
ここで、(i)該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーにおいて、それぞれのア
ミノ酸は標準の一文字略号により示され、AcGはN-アセチルグリシンであり、1-nalは1-ナ
フチルアラニンであり;
(ii) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーは、それぞれのモノマーの2個の
システイン(C)残基の間に分子内ジスルフィド結合を含み;
(iii) ["PEG"]は、少なくとも1個の直鎖状ポリエチレングリコール(PEG)部分を含有し
、それぞれのPEG部分は分子量約20,000〜約40,000ダルトンを有する;
前記化合物。
【請求項2】
それぞれのPEGが分子量約30,000ダルトンを有する、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
請求項1の化合物および薬学的に許容されうるキャリアを含有する医薬組成物。
【請求項4】
それぞれのPEGが分子量約30,000ダルトンを有する、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
エリスロポエチン受容体(EPO-R)に結合し、活性化する化合物であって、
該化合物は、式:
【化2】

を有するペプチドダイマーを含有し、
ここで、(i) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーにおいて、それぞれのア
ミノ酸は標準の一文字略号により示され、AcGはN-アセチルグリシン、1-nalは1-ナフチル
アラニン、およびMeGはN-メチルグリシンであり;
(ii) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーは、それぞれのモノマーの2個の
システイン(C)残基の間に分子内ジスルフィド結合を含み;
(iii) PEGは、分子量約20,000〜約40,000ダルトンを有する直鎖状の分枝のないポリエチ
レングリコール分子を含有する;
前記化合物。
【請求項6】
PEGが分子量約30,000ダルトンを有する、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
請求項5の化合物および薬学的に許容されうるキャリアを含有する医薬組成物。
【請求項8】
PEGが分子量約30,000ダルトンを有する、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
エリスロポエチン受容体(EPO-R)に結合し、活性化する化合物であって、
該化合物は、式:
【化3】

を有するペプチドダイマーを含有し、
ここで、(i) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーにおいて、それぞれのア
ミノ酸は標準の一文字略号により示され、AcGはN-アセチルグリシンおよび1-nalは1-ナフ
チルアラニンであり;
(ii) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーは、それぞれのモノマーの2個の
システイン(C)残基の間に分子内ジスルフィド結合を含み;
(iii) PEGは、分子量約20,000〜約40,000ダルトンを有する直鎖状の分枝のないポリエチ
レングリコール分子を含有する;
前記化合物。
【請求項10】
PEGが分子量約30,000ダルトンを有する、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
請求項9の化合物および薬学的に許容されうるキャリアを含有する医薬組成物。
【請求項12】
PEGが分子量約30,000ダルトンを有する、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
エリスロポエチン受容体(EPO-R)に結合し、活性化する化合物であって、
該化合物は、式:
【化4】

を有するペプチドダイマーを含有し、
ここで、(i) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーにおいて、それぞれのア
ミノ酸は標準の一文字略号により示され、AcGはN-アセチルグリシン、1-nalは1-ナフチル
アラニン、およびMeGはN-メチルグリシンであり;
(ii) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーは、それぞれのモノマーの2個の
システイン(C)残基の間に分子内ジスルフィド結合を含み;
(iii) PEGは、分子量約20,000〜約40,000ダルトンを有する直鎖状の分枝のないポリエチ
レングリコール分子を含有する;
前記化合物。
【請求項14】
PEGが分子量約30,000ダルトンを有する、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
請求項13の化合物および薬学的に許容されうるキャリアを含有する医薬組成物。
【請求項16】
PEGが分子量約30,000ダルトンを有する、請求項15記載の医薬組成物。
【請求項17】
エリスロポエチン受容体(EPO-R)に結合し、活性化する化合物であって、
該化合物は、式:
【化5】

を有するペプチドダイマーを含有し、
(i) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーにおいて、それぞれのアミノ酸は
標準の一文字略号により示され、AcGはN-アセチルグリシン、1-nalは1-ナフチルアラニン
、およびMeGはN-メチルグリシンであり;
(ii) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーは、それぞれのモノマーの2個の
システイン(C)残基の間に分子内ジスルフィド結合を含み;
(iii) PEGは、分子量約20,000〜約40,000ダルトンを有する直鎖状の分枝のないポリエチ
レングリコール分子を含有する;
前記化合物。
【請求項18】
PEGが分子量約30,000ダルトンを有する、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
請求項17の化合物および薬学的に許容されうるキャリアを含有する医薬組成物。
【請求項20】
PEGが分子量約30,000ダルトンを有する、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項21】
エリスロポエチン受容体(EPO-R)に結合し、活性化する化合物であって、
該化合物は、式:
【化6】

を有するペプチドダイマーを含有し、
ここで、(i) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーにおいて、それぞれのア
ミノ酸は標準の一文字略号により示され、AcGはN-アセチルグリシン、1-nalは1-ナフチル
アラニン、およびMeGはN-メチルグリシンであり;
(ii) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーは、それぞれのモノマーの2個の
システイン(C)残基の間に分子内ジスルフィド結合を含み;
(iii) PEGは、分子量約20,000〜約40,000ダルトンを有する直鎖状の分枝のないポリエチ
レングリコール分子を含有する;
前記化合物。
【請求項22】
PEGが分子量約20,000ダルトンを有する、請求項21記載の化合物。
【請求項23】
請求項21の化合物および薬学的に許容されうるキャリアを含有する医薬組成物。
【請求項24】
PEGが分子量約20,000ダルトンを有する、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項25】
エリスロポエチン受容体(EPO-R)に結合し、活性化する化合物であって、
該化合物は、式:
【化7】

を有するペプチドダイマーを含有し、
ここで、(i) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーにおいて、それぞれのア
ミノ酸は標準の一文字略号により示され、AcGはN-アセチルグリシンおよび1-nalは1-ナフ
チルアラニンであり;
(ii) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーは、それぞれのモノマーの2個の
システイン(C)残基の間に分子内ジスルフィド結合を含み;
(iii) ["PEG"]は、単一の接着点で結合し、合わせた分子量約20,000〜約40,000ダルトン
を有する少なくとも2個の直鎖状のポリエチレングリコール(PEG)部分を含有する;
前記化合物。
【請求項26】
それぞれのPEGが分子量約20,000ダルトンを有する、請求項25記載の化合物。
【請求項27】
請求項25の化合物および薬学的に許容されうるキャリアを含有する医薬組成物。
【請求項28】
それぞれのPEGが分子量約20,000ダルトンを有する、請求項27記載の医薬組成物。
【請求項29】
エリスロポエチン受容体(EPO-R)に結合し、活性化する化合物であって、
該化合物は、式:
【化8】

を有するペプチドダイマーを含有し、
ここでm(i) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーにおいて、それぞれのア
ミノ酸は標準の一文字略号により示され、AcGはN-アセチルグリシン、1-nalは1-ナフチル
アラニン、およびMeGはN-メチルグリシンであり;
(ii) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーは、それぞれのモノマーの2個の
システイン(C)残基の間に分子内ジスルフィド結合を含み;
(iii) PEGは、合わせた分子量約10,000〜約30,000ダルトンを有する2個の直鎖状のポリエ
チレングリコール(PEG)部分を含有する;
前記化合物。
【請求項30】
それぞれのPEGが分子量約20,000ダルトンを有する、請求項29記載の化合物。
【請求項31】
請求項29の化合物および薬学的に許容されうるキャリアを含有する医薬組成物。
【請求項32】
それぞれのPEGが分子量約20,000ダルトンを有する、請求項31記載の医薬組成物。
【請求項33】
エリスロポエチン受容体(EPO-R)に結合し、活性化する化合物であって、
該化合物は、式:
【化10】

を有するペプチドダイマーを含有し、
ここで、(i) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーにおいて、それぞれのア
ミノ酸は標準の一文字略号により示され、AcGはN-アセチルグリシン、1-nalは1-ナフチル
アラニンおよびMeGはN-メチルグリシンであり;
(ii) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーが、それぞれのモノマーの2個の
システイン(C)残基の間に分子内ジスルフィド結合を含み;
(iii) PEGは、合わせた分子量約10,000〜約30,000ダルトンを有する2個の直鎖状のポリエ
チレングリコール(PEG)部分を含有する;
前記化合物。
【請求項34】
それぞれのPEGが分子量約20,000ダルトンを有する、請求項33記載の化合物。
【請求項35】
請求項33の化合物および薬学的に許容されうるキャリアを含有する医薬組成物。
【請求項36】
それぞれのPEGが分子量約20,000ダルトンを有する、請求項35記載の医薬組成物。
【請求項37】
エリスロポエチン受容体(EPO-R)に結合し、活性化する化合物であって、
該化合物は、式:
【化11】

を有するペプチドダイマーを含有し、
ここで、(i) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーにおいて、それぞれのア
ミノ酸は標準の一文字略号により示され、AcGはN-アセチルグリシンおよび1-nalは1-ナフ
チルアラニンであり;
(ii) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーは、それぞれのモノマーの2個の
システイン(C)残基の間に分子内ジスルフィド結合を含み;
(iii) PEGは、合わせた分子量約20,000〜約40,000ダルトンを有する2個の直鎖状のポリエ
チレングリコール(PEG)部分を含有する;
前記化合物。
【請求項38】
エリスロポエチン受容体(EPO-R)に結合し、活性化する化合物であって、
該化合物は、式:
【化12】

を有するペプチドダイマーを含有し、
ここで、(i) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーにおいて、それぞれのア
ミノ酸は標準の一文字略号により示され、AcGはN-アセチルグリシンおよび1-nalは1-ナフ
チルアラニンであり;
(ii) 該ペプチドダイマーのそれぞれのペプチドモノマーは、それぞれのモノマーの2個の
システイン(C)残基の間に分子内ジスルフィド結合を含み;
(iii) PEGは、合わせた分子量約10,000〜約60,000ダルトンを有する2個の直鎖状のポリエ
チレングリコール(PEG)部分を含有する;
前記化合物。

【公開番号】特開2009−108061(P2009−108061A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278252(P2008−278252)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【分割の表示】特願2006−533000(P2006−533000)の分割
【原出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【出願人】(503210245)アフィーマックス・インコーポレイテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】Affymax, Inc.
【Fターム(参考)】