説明

エルカ酸誘電体油を含有する電気機器

本発明は、油成分を含む誘電体流体を含有する電気機器での使用に好適な組成物に関し、この油成分は、ハマナ油及び高エルカ酸菜種油のうちの一方又は両方、並びにエステル化ハマナ油及びエステル化高エルカ酸菜種油のうちの一方又は両方を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高エルカ酸含有量を有する誘電体油を含有する電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気分配及び電力機器(変圧器、切替器及び電気ケーブルなど)で使用される誘電体(又は絶縁)流体は、2つの重要な機能を果たす。これらの流体は電気絶縁材として作用する、即ち絶縁耐力を示し、生成された熱を機器から離すように運ぶ、即ち冷却材として作用する。例えば、変圧器で使用される場合、誘電体流体は、変圧器又はそれに接続された回路の巻線及びコアから熱を冷却面に運ぶ。絶縁耐力及び冷却能力を有することとは別に、電気機器に望ましい誘電体流体は、更に、環境に対する悪影響をほとんど又は全く呈さず、機器を構築する材料と適合性があり、比較的不燃性である。
【0003】
一世紀以上にわたり、原油由来の鉱油が、電気機器における絶縁液体及び冷却液体として広く使用されてきた。そのような油は充分な絶縁耐力を有し、機器の材料と適合性があるが、不燃性であるとは考えられておらず、また石油系であるため環境コストがかかると考えられている。今世紀の中ごろ、安全基準が多くの屋内及び地下の機器取り付けに関してより厳しくなるにつれ、鉱油はポリ塩化ビフェニル(PCB)流体などの不燃性の液体に大幅に置き換えられた。PCBは後に環境危害が認められ、その結果、PCBの製造及び販売、並びに新しい機器におけるその使用は、禁止された。
【0004】
PCB系流体の不利益及び欠点のため、また鉱油及び入手可能な代替物の潜在的な環境的悪影響に対する敏感さ増大のため、比較的安価で環境的に安全である不燃性の誘電体流体の開発に多大な努力がなされてきたし、またなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
環境的懸念に対する認識及び敏感さが増大しているため、(1)最低限の環境危害しかもたらさず、(2)流出したものが長期間にわたって土壌又は地下水面を汚染しないように素早く簡単に分解し、かつ(3)自然の生分解プロセスを著しく妨げない誘電体流体を提供することが益々望ましくなってきた。
【0006】
特に、石油由来製品に対する依存が望ましくないことを考慮すると、再生できない資源を再生可能な資源で置き換えることも更に望ましくなってきており、また一般的に産業市場及び小売市場による天然製品に対する需要が増大している。これは、少なくともある程度、材料の長期的影響及びその分解副産物に注意を払った結果である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも1つの態様は、毒性がなく、生分解性であり、比較的可燃性であり、環境に無害であり、誘電体流体の既存の仕様及び指針に適合し、現在使用されている絶縁油に等しいか又はそれに優る性能特性を示す絶縁液体を使用する電気機器の必要性に対処しようとするものである。
【0008】
一態様において、本発明は、電気機器での使用に好適な誘電体流体を提供する。誘電体流体は、ハマナ油及び高エルカ酸菜種(HEAR)油のうちの一方又は両方、並びにエステル化又はエステル交換された(これらの用語は、本明細書では同じ意味で使用される)ハマナ油及びHEAR油のうちの一方又は両方を含む、油成分を含む。本発明のいくつかの実施形態は、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、又は少なくとも60重量%のエルカ酸含有量を有する、油成分を有する。
【0009】
本発明の別の態様は、電気エネルギーを変換、生成、及び/又は分配するための装置を提供するが、これには送電ケーブル、切替器及び変圧器が挙げられ、これらは、ハマナ油及びHEAR油のうちの一方又は両方、並びにエステル化又はエステル交換されたハマナ油及びHEAR油のうちの一方又は両方を含む油成分を含む誘電体流体を組み込む。
【0010】
本発明で用いられる場合、
「エルカ酸」とは、C22:1と表されるモノ不飽和脂肪酸を意味する。
「高エルカ酸油」とは、ハマナ油、HEAR油、エステル化ハマナ油、及びエステル化HEAR油のうちの少なくとも1つを含有する油を意味する。
【0011】
本発明の少なくとも1つの実施形態の利点は、熱伝導性を改善する、低粘度を有する誘電体油を提供することである。
【0012】
本発明の少なくとも1つの実施形態の別の利点は、生分解性であることである。
【0013】
本発明の少なくとも1つの実施形態の別の利点は、高エルカ酸油は通常食用ではないため、この油を使って誘電体流体を作ることは、この油を食物源としての使用から転用することではないということである。
【0014】
上記の本発明の概要は、開示される実施形態のそれぞれ、又は本発明のすべての実施の態様を述べることを目的としたものではない。以下の添付図面及び詳細な説明により、例示的な実施形態をより具体的に例示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい実施形態の詳細を以下に述べる。他の実施形態を使用してもよいこと、及び本発明の範囲から逸脱することなく構造的又は論理的変更を行ってもよいことが理解される。したがって、以下の詳細な説明は限定的な意味で解釈されるべきものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義されるものである。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、油成分は、少なくとも45重量%のエルカ酸、少なくとも50重量%のエルカ酸、少なくとも55重量%のエルカ酸、又は少なくとも60重量%のエルカ酸を含み得る。これは、電気用途での使用に望ましい。電気用途で現在使用されている植物油のいくつかは、主成分としてオレイン酸(C18.1)を含有する。より長い炭素鎖のために、エルカ酸はオレイン酸よりも優れた熱安定性及び耐熱性を提供する。
【0017】
少なくとも1つの実施形態では、本発明の高エルカ酸油は、76重量%を超えるモノ不飽和脂肪酸を含有する。モノ不飽和脂肪酸は、ジ及びトリ不飽和脂肪酸よりも熱安定性があり、したがって電気用途における絶縁流体での使用に、より適している。
【0018】
ハマナ油又はHEAR油から作られるエステルは、優れた電気抵抗を提供するので、電気用途での使用にも理想的である。エステル化又はエステル交換反応は、1〜8個の炭素、より好ましくは1〜4個の炭素原子の炭素鎖を有するアルキルエステルを好ましくはもたらす。更に、グリセロール単位がエステル化中に除去されて、それにより個別化した炭素鎖が得られるので、エステルは低粘性を有する。低粘性は、電気用途での利用中の油冷却プロセスを改善することができる。植物油の粘性は、電気用途に植物油よりも広く使用されてきた鉱油よりも2倍高い可能性がある。植物油は、そのより高い粘性のため、鉱油とは異なる冷却プロセスを必要とする場合があり、また変圧器などの電気機器の寿命に悪影響を及ぼす可能性がある。本発明のエステルを誘電体流体の組成物に含めることにより、油成分の粘性を許容可能なレベルに下げることができる。
【0019】
本発明での使用に好適な高エルカ酸油を得るために、油はまずハマナ種子又はHEAR種子から抽出される。典型的な抽出プロセスは、溶媒としてヘキサンを使用して、種子から除去される油の量を増大させることを含む。
【0020】
他の植物油と同様に、精製されていないハマナ油及びHEAR油は、典型的には、電力及び分配変圧器などの電気装置に使用したときに誘電体流体としての性能特性を低下させる水及びその他の導電性汚染物質を含有しているため、誘電体流体としての使用には不満足なものである。したがって、好ましくは、本発明のハマナ油及びHEAR油は、水、酸、及び導電性汚染物質を除去するために、精製プロセスにかけられる。
【0021】
顔料(例えばクロロフィル)、ワックス、及びレシチンなどのリン脂質などの極性汚染物質の除去は、リン酸若しくはクエン酸、リン脂質酵素、ケイ酸塩、例えばケイ酸金属若しくはケイ酸ナトリウム、又は粘土を油に加えて行うことができる。そのような材料の好適な量は、典型的には、約3〜4重量%である。これらの材料は、典型的には、汚染物質を粒子に凝集する。次に、粒子は濾過により除去することができる。好ましい濾過媒体は、典型的には、0.5〜5マイクロメートルの範囲の粒子を除去する。より小さい孔径の媒体が、典型的には、好ましい。
【0022】
極性汚染物質の除去は、フラー土、珪藻土、活性粘土、及びアタパルジャイトが挙げられるがこれらに限定されない吸着媒体による重力下で、誘電体流体組成物を溶出させることによっても達成できる。
【0023】
水の除去は、既知の脱水プロセスで達成できる。脱水プロセスの好適な例には、吸着媒体による重力下での誘電体流体組成物の溶出、遠心分離、及び真空脱水が挙げられるが、これらに限定されない。水を除去するのに好適な吸着媒体としては、シリカゲル若しくは無水硫酸マグネシウムなどの化学乾燥剤、デンプン又はモレキュラーシーブが挙げられるが、これらに限定されない。水の濃度は、約100ppm以下に低減されるのが好ましい。
【0024】
酸の除去は、アルカリ水系溶液中の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの添加により達成できる。このプロセスは、油から濾過できる石鹸を形成する。油から石鹸を分離させるのを改善するために、粘土を使用してもよい。
【0025】
天然ハマナ油及びHEAR油は、1つ以上の精製プロセスを経て、電気機器での使用に望ましい性能特性を有する誘電体流体組成物を提供することができる。
【0026】
ハマナ油及びHEAR油はまた、エステル化プロセスを経てもよい。エステル化又はエステル交換反応は、1〜8個の炭素、より好ましくは1〜4個の炭素原子の炭素鎖を有するアルキルエステルを好ましくはもたらす。既知のエステル化法は、塩基触媒又は酸触媒の使用を含む。塩基触媒の典型的な例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、並びにナトリウムメタノレート、ナトリウムエタノレート、ナトリウムプロパノレート、ナトリウムブタノレート、カリウムメタノレート、カリウムエタノレート、カリウムプロパノレート、カリウムブタノレート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ金属アルコキシレート触媒、トリエタノールアミン、並びにこれらの混合物を含む。酸触媒の典型的な例は、硫酸、リン酸、塩酸、又はこれらの混合物からなる群から選択される無機酸触媒を含む。
【0027】
エステル化油は、原油と同じ方法で精製され得る。
【0028】
他のタイプの植物油及びエステルが、ハマナ油及びHEAR油並びにエステルと混合されてもよい。好ましい油は、比較的高濃度のエルカ酸を有するもの、例えば他のタイプの菜種油、アラセイトウ種子油、メドウフォーム種子油、及びカラシ油であるが、その他の植物油又は非植物油も、実施形態によっては好適な添加剤であり得る。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、誘電体流体組成物は、酸化防止剤及び金属捕捉剤(腐食防止剤)などの添加剤と更にブレンドされる。誘電体流体組成物の酸化安定性は、酸化防止剤及び/又は金属捕捉剤を誘電体流体組成物に加えることによって改善され得る。
【0030】
酸化防止剤は、そうでなければ高エルカ酸油に溶解し油の酸化分解をもたらす酸素を吸収又は捕捉する1つ以上の化合物を含む。好適な酸化防止剤の例には、これらに限定されないが、フェノール系酸化防止剤、例えばIRGANOX L109、IRGANOX L64、IRGANOX L94、及びオクチル化/ブチル化ジフェニルアミン酸化防止剤、例えばIRGANOX L57(いずれもCiba Corporation(現在はBASFの一部)(Tarrytown、NY)からこれらの商品名で入手可能)、ETHANOX 4702(Albemarle Corporation(Baton Rouge、LA)から入手可能)BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)、TBHQ(三級ブチルヒドロキシキノン)、THBP(テトラヒドロキシブトロフェノン)、パルミチン酸アスコルビル(ローズマリー油)、没食子酸プロピル、並びにα−、β−又はδ−トコフェロール(ビタミンE)が挙げられる。
【0031】
好ましい金属捕捉剤の例には、これらに限定されないが、銅捕捉剤、例えばトルトリアゾール、ベンゾトリアゾール、及びトリアゾール誘導体、例えばCiba Corporation(現在はBASFの一部)から商品名IRGAMET 30(トリアゾール誘導体)及びIRGAMET 39(トルトリアゾール誘導体)で入手可能なものが挙げられる。
【0032】
酸化防止剤及び金属捕捉剤を含有するブレンドの好適な例は、KEMIN BF 320(Kemin Industries(Des Moines、Iowa)から入手可能)であり、これは、連鎖破壊酸化防止剤である三級ブチルヒドロキノン(TBHQ)及び金属キレーターであるクエン酸を含有する。
【0033】
低温での誘電体流体の性能は、用途によっては重要である。ハマナ油及びHEAR油は、用途によっては望ましいより高い流動点の値を有し得る。例えば、典型的な電力分配用途は、冷却剤が約−20℃を下回る流動点を有することを必要とする。
【0034】
ハマナ油及び/又はHEAR油にハマナエステル及び/又はHEARエステルを加えると、低温特性は典型的には改善される。ハマナエステル及びHEARエステルは、単独でのハマナ油又はHEAR油よりも低い流動点を有するので、これらの成分のブレンドは、構成成分である個々の油よりも低い流動点をもたらすことができる。ブレンドの好適な比率の例には、望まれる特性によって、約1〜約99重量%のハマナ油及び/又はHEAR油と約99〜約1重量%のハマナエステル及び/又はHEARエステルとのブレンドの任意の点が挙げられる。いくつかの用途に好適なブレンドの例には、約5〜約95重量%のハマナ油及び/又はHEAR油と約95〜約5重量%のハマナエステル及び/又はHEARエステル、並びに約30〜約70重量%のハマナ油及び/又はHEAR油と約70〜約30重量%のハマナエステル及び/又はHEARエステルが挙げられる。これらのブレンド範囲は包括的ではなく、単に本発明の性質を説明するために提示されていることが理解されるであろう。本発明の高エルカ酸油に流動点抑制剤を加えてもよい。好適な流動点抑制剤は、3M Company(St.Paul、MN)から入手可能なジオクチルアミレートである。
【0035】
本発明の誘電体流体は、その性能に悪影響を及ぼし得る大気中の酸素、水分、及びその他の汚染物質に流体が曝されるのを最小限に抑える方法で電気機器に導入されるのが好ましい。好適なプロセスは、タンクの内容物を乾燥させること、乾燥窒素ガスで空気を排出させ置換すること、不完全真空下で充填すること、及びタンクを直ちに密閉すること、を含む。
【0036】
本発明の誘電体流体は、従来の誘電体流体が採用されるいかなる用途にも使用することができる。したがって、本発明の高エルカ酸油系流体は、あらゆる種類の電気機器、例えばこれらに限定されないが、反応器、切替器、調整器、タップ切替装置コンパートメント、高電圧ブッシング、及び油入ケーブルなどに組み込むことができる。
【0037】
変圧器及び切替器は、典型的には、コア及び巻線並びにその他の電気機器を誘電体流体に浸漬し、浸漬されたコンポーネントを密閉されたハウジング又はタンクに入れることにより構築される。より大型の機器の巻線は、セルロース又は紙材で更に包まれることが多い。
【0038】
本発明の誘電体流体は、上述したやり方で新しい電気機器を充填するのに使用することができる。この流体は、他のあまり望ましくない誘電体流体を使用する既存の電気機器の逆充填にも使用することができる。既存の機器の逆充填は、当該技術分野において既知の任意の好適な方法を使用して達成することができるが、植物油流体の水分に対する感度増大のため、高エルカ酸油系誘電体流体の導入に先立ち、電気機器のコンポーネントを乾燥させることが好ましい。
【0039】
(実施例)
以下の実施例及び比較例は、本発明の理解を補助するために提供されるが、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。特に断らないかぎり、部及び百分率はすべて重量基準である。記載される試験方法及びプロトコルが、それに続く具体的な実施例の評価において採用された。
【0040】
【表1】

【0041】
試験方法
比重−ASTM D1298(2005)
引火点及び燃焼点−ASTM D92(2005)
流動点−ASTM D 97(2009)
運動粘度−ASTM D445(2009)
60Hz散逸率−ASTM D924(2008)
イオウ腐食性−ASTM D1275(2006)
酸価−ASTM D974(2008)
含水率−ASTM D1533(2005)
【0042】
HEAR油の精製
1リットルの反応器内で、0.4質量%のケイ酸ナトリウムをHEAR油に加えた。混合物を低含水量の窒素のブランケット下で80〜85℃の温度にて750rpmで30分間継続的にかき混ぜた。
【0043】
次に、精製粘土を0.4質量%加えた。混合物を再び、低含水量の窒素のブランケット下で80〜85℃の温度にて750rpmで30分間継続的にかき混ぜた。
【0044】
濾過材を保持するために底部に付属品が備えられたプラスチックチューブ、名目上の粒子除去が0.5〜5.0マイクロメートルの範囲のフィルターを有する、実験室で作製されたフィルターカートリッジ(3M社のCUNOから商品名ZETA PLUS S SERIES 05S Gradeで入手可能)を使用して、混合物を室温にて濾過した。10〜30psi(69kPa〜207kPa)の範囲の圧力の圧縮空気を使用して、油が濾過材を通って流れやすいようにした。
【0045】
次に、濾過された油は、70〜80℃の温度にて約36時間、約−30mmHg(−4kPa)の真空にかけられた。
【0046】
ハマナエステルの精製
ハマナエステルは、ハマナ油とC5〜C8アルコールのアルコールブレンドとのエステル交換反応から得られたモノエステルであった。
【0047】
HEAR油の精製に関して上述されたのと同じプロセスをハマナエステルに使用した。
【0048】
実施例1−HEAR油とハマナエステルとのブレンド(95重量%〜5重量%)
精製されたHEAR油と精製されたハマナエステルを、HEAR油:ハマナエステルが95:5重量%の割合でブレンドさせる。
【0049】
次に、酸化防止剤、並びに金属イオン捕捉剤、ETHANOX 4702、KEMIN BF 320、及びIRGAMET 30を、70〜80℃の温度にて攪拌しながらそれぞれ3000、500、及び50ppmの濃度で加えた。
【0050】
次に、約−30mmHg(−4kPa)の真空下で約70℃の温度にて、油を試験前に少なくとも12時間保存した。試験結果を以下の表1に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
好ましい実施形態の説明の目的のために、特定の実施形態を本明細書において例示し記述したが、種々多様な代替的な及び/又は同等の実施が、本発明の範囲を逸脱することなく、図示及び説明された特定の実施形態に置き換わり得ることを、当業者は理解するであろう。本出願は、本明細書で考察した好適な実施形態のあらゆる適合形態又は変形例を含むものである。したがって、本発明が「特許請求の範囲」及びその均等物によってのみ限定される点を明示するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油成分を含む誘電体流体を含み、前記油成分が、ハマナ油及び高エルカ酸菜種油のうちの一方又は両方、並びにエステル化ハマナ油及びエステル化高エルカ酸菜種油のうちの一方又は両方を含む、組成物。
【請求項2】
前記油成分が、少なくとも45重量%のエルカ酸含有量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記油成分が、少なくとも50重量%のエルカ酸含有量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記油成分が、少なくとも55重量%のエルカ酸含有量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記油成分が、少なくとも60重量%のエルカ酸含有量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
酸化防止剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
金属捕捉剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記油が、少なくとも76重量%のモノ不飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記油が、ハマナ油及び高エルカ酸菜種油のうちの一方又は両方を約70〜約95重量%、並びにエステル化ハマナ油及びエステル化高エルカ酸菜種油のうちの一方又は両方を約30〜約5重量%含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記油が、ハマナ油及び高エルカ酸菜種油のうちの一方又は両方を約95重量%、並びにエステル化ハマナ油及びエステル化高エルカ酸菜種油のうちの一方又は両方を約5重量%含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
油成分を含む誘電体流体を含有する電気機器を含み、前記油成分が、ハマナ油及び高エルカ酸菜種油のうちの一方又は両方、並びにエステル化ハマナ油及びエステル化高エルカ酸菜種油のうちの一方又は両方を含む、物品。
【請求項12】
前記油成分が、少なくとも45重量%のエルカ酸含有量を有する、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記油成分が、少なくとも50重量%のエルカ酸含有量を有する、請求項11に記載の物品。
【請求項14】
前記油成分が、少なくとも55重量%のエルカ酸含有量を有する、請求項11に記載の物品。
【請求項15】
前記油成分が、少なくとも60重量%のエルカ酸含有量を有する、請求項11に記載の物品。
【請求項16】
酸化防止剤及び金属捕捉剤のうちの一方又は両方を更に含む、請求項11に記載の物品。
【請求項17】
前記油が、少なくとも76重量%のモノ不飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項18】
前記油が、ハマナ油及び高エルカ酸菜種油のうちの一方又は両方を約70〜約95重量%、並びにエステル化ハマナ油及びエステル化高エルカ酸菜種油のうちの一方又は両方を約30〜約5重量%含む、請求項1に記載の物品。
【請求項19】
前記油が、ハマナ油及び高エルカ酸菜種油のうちの一方又は両方を約95重量%、並びにエステル化ハマナ油及びエステル化高エルカ酸菜種油のうちの一方又は両方を約5重量%含む、請求項1に記載の物品。
【請求項20】
前記電気機器が変圧器である、請求項1に記載の物品。

【公表番号】特表2012−533154(P2012−533154A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519615(P2012−519615)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/040881
【国際公開番号】WO2011/005675
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】