説明

エルゴチオネイン及び/又はその誘導体を含有する組成物の変臭及び/又は変色抑制法。

【課題】
本発明は、エルゴチオネイン及び/又はその誘導体を含有する組成物の経日による変臭及び/又は変色を抑制する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
エルゴチオネイン及び/又はその誘導体を0.0001重量%以上の重量で含有する組成物のpHを2〜7に調整すること、及び/又は該組成物中に保存安定剤として、紫外線吸収剤、抗酸化剤、キレート剤から選ばれる少なくとも1種以上を乾燥残分換算で0.0001〜5質量%含有する、変臭及び/又は変色抑制法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、エルゴチオネイン又はその誘導体を含有する組成物の経日による変臭及び/又は変色を抑制し、安定化させる方法、及び、そのような経日による該組成物の変臭及び/又は変色を起こし難い安定な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光老化は、紫外線曝露という環境要因によって惹起され、長期間にわたり徐々に蓄積される皮膚障害であり、活性酸素が深く関与していることが知られている光老化を引き起こす活性酸素にはUVBにより表皮で発生するスーパーオキシドアニオンラジカル(・O)およびヒドロキシラジカル(・OH)、UVAにより真皮で発生する一重項酸素()などがあり、これらの働きがシワやシミといった外観上の老化が顕れるひとつの要因である。
生体は、様々な活性酸素が引き起こす酸化障害に対して、抗酸化酵素による防御システムをもっている。しかし、生体は皮膚の老化の促進因子とされる・OHおよびといった毒性の強い活性酸素を無毒化する酵素をもっていないため、これらを防御するには抗酸化物質が必要であると考えられる。これまでにも様々な抗酸化物質が使用されているが、近年、皮膚の老化に深く関与する一重項酸素やヒドロキシラジカルに対して優れた消去能を有する生体内抗酸化物質エルゴチオネインが注目されている。
エルゴチオネインは血液、臓器、体液中にも存在するなど生体にとって必要不可欠な抗酸化物質であり、主に菌類しか生産できず動植物は生合成できないことがわかっている。そのため植物は根圏微生物から吸収し、ヒト(動物)は食物から取り入れており、食物連鎖により生物間を移行する特殊な化合物のひとつである。また、エルゴチオネインはトランスポーターによって皮膚細胞内へ移行し蓄積されることで、紫外線曝露により皮膚内で発生した活性酸素種による酸化障害を防御するといった報告もされている(非特許文献1)。他にもエルゴチオネインは、生体に必須な抗酸化物質として、化粧品以外にも機能性食品、飼料等に使用されている。
エルゴチオネイン製造法としては、大量に製造できる方法として発酵法(特許文献1)や化学合成法(特許文献2)が提案されている。その他にも動植物からの抽出法、微生物からの抽出法、などがあり、近年では低コストで高収量な製造方法として様々なキノコ及び菌糸体を用いた抽出が行われている(特許文献3,4,5)。しかしながら、キノコ由来のエルゴチオネインを含む抽出物は、特有の臭いを有しており、概して、安定性に劣る。また、キノコからの抽出法以外で製造されたエルゴチオネインに関してもエルゴチオネインの化学的な特性上、安定性に問題があり、特に水を含有する化粧品、医薬品の外用剤として製剤化した時に経時的に変臭や変色を起こしてしまう。また、高温下での保存においては進行し易く、製剤の安定性の面で満足できるものは少ないのが現状であった。
【0003】
なお、本発明に関連する先行技術文献を以下に示す。
【特許文献1】特表平8−501575
【特許文献2】特公昭43−20716
【特許文献3】特開2008−110988
【特許文献4】特開2009−161498
【特許文献5】特開2009−249356
【非特許文献1】Free Radical Biol.Med.,46,1168−1176(2009)
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、エルゴチオネイン及び/又はその誘導体を含有する組成物の経日による変臭及び/又は変色を抑制する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
エルゴチオネイン及び/又はその誘導体を0.0001重量%以上の重量で含有する組成物のpHを2〜7に調整すること、及び/又は該組成物中に保存安定剤として、紫外線吸収剤、抗酸化剤、キレート剤から選ばれる少なくとも1種以上を乾燥残分換算で0.0001〜5質量%含有する、変臭及び/又は変色抑制法。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、エルゴチオネイン又はその誘導体を含有する組成物のpHを2〜7に調整すること及び保存安定化剤として紫外線吸収剤、抗酸化剤、キレート剤を加えることにより、経日による組成物の変臭及び変色を抑制し、安定化できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(定義)
本明細書において用いられる用語は下記の意味において使用される。
エルゴチオネイン及び/又はその誘導体とは、特に式(I)のものに対応する:

式中: Xは基−O−R’又は−NR’R”を表し;
R、R’及びR”は相互に同時に又は独立に水素原子、C〜C18のアルキル基、アルケニル基又はアシル基、又は式(I)の化合物の塩の一つを表し、1〜18の炭素原子を含む直鎖又は分岐したアルキル、アルケニル又はアシル基は任意にヒドロキシル基(エステル化されていてもよい)、ハロゲン原子、カルボキシル基及びその誘導体又はアミン基及びその誘導体で置換されていてもよく、かつ鎖中にヘテロ原子、例えばO又はSを含んでもよい。
【0007】
前記誘導体にはβ−ヒドロキシエルゴチオネインを含む。
【0008】
キノコ由来の抽出物とは、原料であるキノコを溶媒で抽出した抽出液、抽出液の希釈液若しくは濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又は両イオン性構造のエルゴチオネインを吸着する吸着能を有するイオン交換樹脂と吸着クロマトグラフィーとを用いて分画処理し、非イオン性化合物及びエルゴチオネインを除くイオン性化合物を除去することによって得られた抽出液、抽出液の希釈液若しくは濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは濃縮液のいずれをも包含する意である。
【0009】
本発明によるエルゴチオネイン及び/又はその誘導体を含有する組成物は、前記エルゴチオネイン及び/又はその誘導体及び/又は前記キノコ由来の抽出物を0.0001重量%以上の重量で含有するのが好ましい。
【0010】
(原料)
原料は、本発明にあっては、ヒラタケ科に属するキノコであって、エルゴチオネインを含有するものであればいずれのものも使用することができる。本発明において好ましいキノコとしては、その種類、産地等は特に限定されず、具体的には、ヒラタケ科のタモギタケ、ヒラタケ、エリンギ、エノキタケ等が挙げられ、中でもタモギタケ(Pleurotus cornucopiae(Pers)Rolland.)が好ましい。尚本発明において言う「キノコ」とは、茎部分と傘部分とから成る子実体はもちろんのこと、石槌部分も含む。また、「キノコ」は生のものでも乾燥したものでも使用することができる。
【0011】
本発明において、キノコとして人工栽培されたキノコ及び液体培養した菌子体を用いることもできる。
【0012】
(抽出)
本発明で使用する抽出物の調製方法は、特に限定されないが、生または乾燥した原料を種々の溶媒を用い、低温から加温下において抽出する方法があげられる。
【0013】
具体的に抽出溶媒としては、水、メタノール、エタノール等の低級一価アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール、酢酸エチル等の低級アルキルエステルが例示され、これらの一種又は二種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0014】
本発明で使用する抽出物は、そのまま用いてもよいが、必要に応じてろ過、濃縮してもよい。また、抽出物をカラムクロマト法、向流分配法等により、分画、精製して用いることもできる。
【0015】
更に、前記のものを減圧乾燥又は凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製し、適宜製剤化して用いることもできる。
【0016】
本発明で使用する組成物は、皮膚外用剤に配合できるが、その配合量は特に規定するものではない。配合する製品の種類、性状、品質、期待する効果の程度により異なるが、乾燥固形物に換算して、0.0001〜10.0%、好ましくは0.001〜5.0%、より好ましくは0.5〜2.0%配合するのがよい。
【0017】
前記組成物のpHの調整として、皮膚等の適用部位での刺激感を低減できる点でpHは3以上とすることが好ましいが、pHが低いほど変臭及び変色抑制効果は高い。本発明においては、エルゴチオネイン及び/又はその誘導体を含有する抽出物の変臭及び/又は変色を抑制する方法として、前記抽出物のpHを酸性すなわちpH2〜7、好ましくはpH3〜6にすると良い。さらに好ましくはpH4〜5にすると良い。
【0018】
前記組成物のpHを調整するための成分としては、各種のpH調整剤を用いることができ、酸及び緩衝剤が含まれる。酸としては、例えばコハク酸、乳酸、塩酸等有機又は無機酸が挙げられ、これらの酸は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、緩衝剤としては、例えばコハク酸−コハク酸二ナトリウム、クエン酸−リン酸二ナトリウム、乳酸−乳酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、塩酸−塩化カリウム、塩酸−フタル酸水素カリウム、フタル酸水素カリウム−水酸化ナトリウム、グリシン+塩化ナトリウム−塩酸、グリシン+塩化ナトリウム−水酸化ナトリウム、塩酸−クエン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム−水酸化ナトリウム、リン酸二水素カリウム−リン酸二水素ナトリウム、クエン酸二水素カリウム−クエン酸、クエン酸二水素カリウム−塩酸、クエン酸二水素カリウム−水酸化ナトリウム、コハク酸−四ホウ酸ナトリウム、クエン酸二水素カリウム−四ホウ酸ナトリウム、酒石酸−酒石酸ナトリウム、酢酸−酢酸ナトリウム等が挙げられ、それぞれの混合比を変えることにより調整できる。
【0019】
本発明における保存安定化剤としては、エルゴチオネイン及び/又はその誘導体の変臭及び/又は変色を防ぐ作用を有する何らかの物質であればよいが、好ましくは紫外線吸収剤であり、さらに、抗酸化剤及びキレート剤を併存させることが最も好ましい。紫外線吸収剤の例としては、安息香酸アミル、パラアミノ安息香酸オクチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸ブチルフェニル、サリチル酸ホモメンチル、ケイ皮酸ベンジル、パラメトキシケイ皮酸2−エトキシエチル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ2−エチルヘキサン酸グリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、ジイソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、ヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸およびその塩、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノンジスルフォン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−tert−ブチル−4’−メトキシ−ジベンゾイルメタン、2、4、6−トリアニリノ−p−(カルボ−2’−エチルヘキシル−1’−オキシ)−1、3、5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、パラアミノ安息香酸エチル、トプチルメトキシジペンゾイルメタン、オキシベンゾン−1、グアイアズレンスルホン酸エチル、酸化亜鉛、シノキサート、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレートより選ばれる少なくとも1種である。抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸及びその誘導体(例えば、アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、アスコルビン酸リン酸エステル二ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル等)、エリソルビン酸及びその塩(例えばエリソルビン酸ナトリウム等)、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロールおよびその誘導体(例えばビタミンEアセテート等)、ポルフィリン、ブチルヒドロキシアニソール、亜硫酸水素ナトリウム、無水亜硫酸ナトリウム、没食子酸及びその誘導体(例えば没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル等)が挙げられ、そのうち、エリソルビン酸及びその塩、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロールおよびその誘導体、ブチルヒドロキシアニソール、亜硫酸水素ナトリウム、無水亜硫酸ナトリウム、没食子酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、より好ましくは、エリソルビン酸及びその塩、亜硫酸水素ナトリウム、無水亜硫酸ナトリウム、並びに、没食子酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種である。キレート剤の例としては、アラニン、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸及びその塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、ナトリウム及びカルシウム塩、トリエタノールアミン塩、以下、これらを総称して「EDTA類」と言う場合がある)、クエン酸及びその塩、グルコン酸、酒石酸、フィチン酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムが挙げられ、好ましくは、EDTA類である。これらの保存安定化剤は、単独で配合しても、複数を組み合わせて配合してもよい。
【0020】
保存安定化剤の配合量には、特に制限はなく、皮膚外用剤の形態、及び、植物エキスの配合量に応じて適宜選定することができる。好ましくは、0.0001〜5質量%で配合される。
【0021】
本発明の皮膚外用剤は、前記の各成分以外に、通常に用いられる油剤、界面活性剤、防腐剤、香料、保湿剤、塩類、溶媒、生理活性成分等の各種成分を使用することができる。
【0022】
本発明の皮膚外用剤の具体的な用途としては特に限定は無いがスキンケア製品、頭髪製品、制汗剤製品、メイクアップ製品、紫外線防御製品、洗浄剤製品、フレグランス製品、入浴剤製品等が好ましいものとして挙げられる。例えば、乳液、クリーム、ローション、カラミンローション、サンスクリーン剤、サンタン剤、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、パック料、クレンジング料、洗顔料、アクネ対策化粧料、エッセンスなどの基礎化粧料、ファンデーション、白粉、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、チーク、ネイルカラー、リップクリーム、口紅などのメイクアップ化粧料、シャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアカラー、ヘアトニック、セット剤、ボディーパウダー、育毛剤、デオドラント、脱毛剤、石鹸、ボディーシャンプー、入浴剤、ハンドソープ、香水などがあげられる。また、製品の形態についても特に限定は無いが液状、乳液状、クリーム状、固形状、ペースト状、ゲル状、粉末状、多層状、ムース状、スプレー状等に適用が可能である。
【0023】
本発明において保存安定性は、確実な評価のために、実際上想定されるよりも厳しい条件下、すなわち、組成物の濃厚溶液、例えば10質量%溶液に、40℃で3ヶ月保存した後の、変臭及び/又は変色を確認した。好ましい保存安定化剤には、該剤を0.01〜0.5質量%の濃度で、組成物の10質量%水溶液に添加することによって、上記条件下で保存しても、該水溶液が実質的に変臭及び/又は変色しないことを可能とする物質が含まれる。
【0024】
(抽出物製造例1)
キノコ由来のエルゴチオネイン及び/又はその誘導体を含有するタモギタケ抽出物の製法
タモギタケ(Pleurotus cornucopiae(Pers)Rolland.)の乾燥物を溶媒で抽出し、両イオン性構造のエルゴチオネインを吸着する吸着能を有するイオン交換樹脂と吸着クロマトグラフィーとを用いて分画処理し、非イオン性化合物及びエルゴチオネインを除くイオン性化合物を除去して製する。この抽出物の固形抽出分を0.25%に調整し、タモギタケ抽出物を得る。
【0025】
(抽出物製造例2)
エリンギ抽出物の製法
エリンギ(Pleurotus eryngii)の乾燥物20gに30vol%エタノール溶液400gを加え、50℃にて5時間抽出し、冷後、ろ過して抽出物を製する。この抽出物の固形抽出分を1.0%に調整し、エリンギ抽出物を得る。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合量の単位は質量%である。尚、実施例での変臭及び/又は変色の程度は下記基準によって判定した。
評価方法
かなり変臭:4 変臭:3少し変臭:2 僅かに変臭:1変臭なし:0
かなり変色:4 変色:3少し変色:2 僅かに変色:1変色なし:0
【0027】
実施例1(化粧水)
作製方法
表1の下記成分(1)〜(5)及び(10)を混合溶解させA液とし、別に下記成分(6)〜(8)を混合溶解させてB液とし、A液とB液を均等に混合し、化粧水を調製した。(キノコ抽出物に対して保存安定化剤を別表1に記載する濃度になるように添加し、表中のpHになるように調整した)次いで、化粧料の容器を密閉した後、40℃の恒温器内で3ヶ月保存した後、変臭及び変色の変化を調べた。pHの調整及び保存安定化剤の添加による変臭及び変色の比較し、得られた結果を表3に示す。尚、いずれの皮膚外用剤についても、沈殿生成は認められなかった。
【0028】
【表1】

別表2

【0029】
【表3】

【0030】
実施例2(クリーム)
表4の下記成分(1)〜(10)、別に下記成分(11)〜(17)を75℃に加温溶解しそれぞれA液及びB液とする。A液にB液を加えて乳化し、撹拌しながら50℃まで冷却し、成分(18)を加え、クリームを調製した。(キノコ抽出物に対して保存安定化剤を表中に記載する濃度になるように添加し、表中のpHになるように調整した)次いで、化粧料の容器を密閉し、40℃の恒温器内で3ヶ月保存した後、変臭及び変色の程度を調べた。pHの調整及び/又は保存安定化剤の添加による変臭及び/又は変色の比較し、得られた結果を表6に示す。尚、いずれの皮膚外用剤についても、沈殿生成は認められなかった。
【0031】
【表4】

別表5

【0032】
【表6】

【0033】
実施例に示すように、エルゴチオネイン又はその誘導体を含有する組成物のpHを2〜7に調整すること及び/又は保存安定化剤を加えることにより、経日による組成物の変臭及び/又は変色を抑制し、安定化できるようになる。
【産業上の利用の可能性】
【0034】
本発明にかかるエルゴチオネイン及び/又はその誘導体を含有する組成物の変臭及び/又は変色抑制方法及びその組成物は、エルゴチオネインを配合する医薬部外品、化粧品、食品等に適用可能である。特に、皮膚外用剤の形態をとる各種の製品、例えば、化粧水、乳液、美容液、入浴剤のような化粧品或いは医薬部外品に属する製品の変臭及び/又は変色を抑制するのに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エルゴチオネイン及び/又はその誘導体を含有する組成物のpHを調整すること及び/又は該組成物中に保存安定化剤を配合することを特徴とする、変臭及び/又は変色抑制法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記組成物がキノコ由来の抽出物であることを特徴とする、変臭及び/又は変色抑制法。
【請求項3】
前記組成物のpHを2〜7に調整することを特徴とする、請求項1又は2に記載の変臭及び/又は変色抑制法。
【請求項4】
前記キノコとして、ヒラタケ科のキノコを用いることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の変臭及び/又は変色抑制法。
【請求項5】
前記ヒラタケ科のキノコとして、タモギタケ、ヒラタケ、エリンギ及びエノキタケから選ばれた1種又は2種以上のキノコを用いることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の変臭及び/又は変色抑制法。
【請求項6】
前記エルゴチオネイン及び/又はその誘導体が、式(I)に対応することを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の変臭及び/又は変色抑制法。

式中: Xは基−O−R’又は−NR’R”を表し;
R、R’及びR”は相互に同時に又は独立に水素原子、C〜C18のアルキル基、アルケニル基又はアシル基、又は式(I)の化合物の塩の一つを表し、1〜18の炭素原子を含む直鎖又は分岐したアルキル、アルケニル又はアシル基は任意にヒドロキシル基(エステル化されていてもよい)、ハロゲン原子、カルボキシル基及びその誘導体又はアミン基及びその誘導体で置換されていてもよく、かつ鎖中にヘテロ原子、例えばO又はSを含んでもよい。
【請求項7】
前記エルゴチオネイン誘導体が、β−ヒドロキシエルゴチオネインであることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の変臭及び/又は変色抑制法。
【請求項8】
前記エルゴチオネイン又はその誘導体を0.0001重量%以上の重量で含有することを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の変臭及び/又は変色抑制法。
【請求項9】
前記保存安定化剤として紫外線吸収剤、抗酸化剤及びキレート剤から選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載の変臭及び/又は変色抑制法。
【請求項10】
前記紫外線吸収剤としてパラジメチルアミノ安息香酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、ヒドロキシメトキシベンゾフェノン(オキシベンゾン)、テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−t−ブチル−4−メトキシ−ジベンゾイルメタン、オクチルトリアゾン及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1〜9の何れか1項に記載の変臭及び/又は変色抑制法。
【請求項11】
前記抗酸化剤としてアスコルビン酸及びその誘導体、エリソルビン酸及びその塩、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロールおよびその誘導体、ポルフィリン、ブチルヒドロキシアニソール、亜硫酸水素ナトリウム、無水亜硫酸ナトリウム、没食子酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載の変臭及び/又は変色抑制法。
【請求項12】
前記キレート剤としてエデト酸、ポリリン酸、ピロリン酸、グリコン酸、及びそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1〜11の何れか1項に記載の変臭及び/又は変色抑制法。
【請求項13】
前記保存安定化剤を乾燥残分換算で0.0001〜5質量%含有することを特徴とする、請求項1〜12の何れか1項に記載の変臭及び/又は変色抑制法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記組成物が皮膚外用剤であることを特徴とする、請求項1〜13の何れか1項に記載の変臭及び/又は変色抑制法。

【公開番号】特開2012−241013(P2012−241013A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126710(P2011−126710)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(599000212)香栄興業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】