説明

エレクタ装置

【課題】 コンパクト化と、製造等コストの低減等を図ることができるエレクタ装置を提供すること。
【解決手段】 シールド掘進機1のシールド本体2内に設けられ、セグメント101をセグメント把持部30で把持して掘削壁面に組み付けるエレクタ装置10を、前記シールド本体2内で回転するエレクタ回転ドラム11と、前記エレクタ回転ドラム11側と前記セグメント把持部30側とに連結され、このエレクタ回転ドラム11に対して前記セグメント把持部30を軸方向Zに移動させる一対のリンク機構51,52から成る軸方向移動装置50とを備え、前記一対のリンク機構51,52は、前記軸方向Zと垂直な方向に対して互いに対称に傾くように所定の角度θを有して設けられているようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機のシールド本体内に設けられ、掘削壁面にセグメントを組み付けるエレクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド掘進機によって地山を掘削した後、その掘削壁面の内側に、シールド本体の内部に設けられたエレクタ装置によって複数に分割されたセグメントを周方向に組み付けることでセグメントリングが組み立てられている。
【0003】
このエレクタ装置としては、シールド本体内に後方から搬送されてきたセグメントを把持し、このセグメントをシールド掘進機の軸方向(この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、「Z軸方向」ともいう)と径方向、及び周方向に移動(ハンドリング)させて、所定の位置に組み付けることで円筒形のセグメントリングを組み立てている。
【0004】
このようなエレクタ装置における軸方向移動(Z軸方向移動)の機構としては、例えば、軸方向に精度の高い2本の平行ガイド軸を設け、この平行ガイド軸に沿ってエレクタ本体を摺動させるようにした摺動機構がある。この摺動機構の場合、複数のジャッキを複雑に組み合わせてジャッキストロークを細かく制御できるようにした特殊な摺動ジャッキ機構を設けている。
【0005】
しかしながら、このような摺動機構でエレクタ本体のZ軸方向移動を行う場合、ロングストロークの移動の際、摺動抵抗が大きくなって摺動ジャッキの推力を大きくする必要があると共に、2本の平行ガイド軸の平行度の精度を上げる必要がある。そのため、平行ガイド軸に関する強度向上等を図ることでエレクタ装置自体の重量が増加し、高コストになってしまう。
【0006】
この種の先行技術として、例えば、シールド本体の軸心に設けられたエレクタリングからZ軸方向に延びる2本のアームを設け、セグメント把持部を有するスライドフレームを上記アームに沿ってZ軸方向に移動させるようにしたものがある。このエレクタ装置では、スライドフレームを、直線ベアリングを介してアームに結合し、スライドフレームをZ軸方向に移動させる機構として、回転駆動装置とボールねじとを有する前後駆動装置で移動させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、他の先行技術として、シールド本体の軸心に設けられたエレクタリングからZ軸方向に延びる3本の油圧サーボシリンダを設け、これらの油圧サーボシリンダの後端に設けたセグメント把持部を上記3本の油圧サーボシリンダを制御することで、セグメントの位置をシールド掘進機の軸方向、径方向等に調整するようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−60497号公報
【特許文献2】特許第4161500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたエレクタ装置の場合、スライドフレームとセグメントの重量が作用するアームに剛性が必要であるとともに、セグメントを把持した状態のスライドフレームを軸方向に移動可能とする2本のアームに高精度が必要となるため、これらの条件を満たすように構成するために多大な費用を要する。しかも、アームに沿って移動するスライドフレームの摺動抵抗を軽減するために直線ベアリングを使用しているため、更に多大な製造コストが必要となる。
【0010】
また、上記特許文献2では、セグメントを把持した状態のセグメント把持部を正確に移動制御するためには高コストの油圧サーボシリンダが3本必要であるとともに、これらの油圧サーボシリンダの複雑なサーボ制御が必要となり、装置及び制御のために多大なコストが必要となる。
【0011】
一方、シールド掘進機におけるコスト削減と廃棄物削減による環境保全等の一案として、構成品等の再利用(リサイクル)が望まれている。この再利用に注目されている構成品として、シールド本体内に設けられている大きな機械構成品であるエレクタ装置がある。
【0012】
そこで、本発明は、コンパクト化と、製造等コストの低減等を図ることができるエレクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、シールド掘進機のシールド本体内に設けられ、セグメントをセグメント把持部で把持して掘削壁面に組み付けるエレクタ装置であって、前記シールド本体内で回転するエレクタ回転体と、前記エレクタ回転体側と前記セグメント把持部側とに連結され、該エレクタ回転体に対して前記セグメント把持部を軸方向に移動させる一対のリンク機構から成る軸方向移動装置とを備え、前記一対のリンク機構は、前記軸方向と垂直な方向に対して互いに対称に傾くように所定の角度を有して設けられていることを特徴とする。この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、シールド掘進機の軸方向を「Z軸方向」という。これにより、一対のリンク機構の伸縮動作によってセグメント把持部を軸方向に直線的に移動させることができ、リンク機構でセグメント把持部の軸方向移動を位置制御することで移動時の機械ロスを大幅に減らして、軸方向移動時の駆動推力を減らすと共に、単純なリンク機構を採用することで高精度を必要としない構成にして、エレクタ装置の製造コストを低減させることができる。しかも、エレクタ装置の軸方向移動機能をコンパクトな構成で達成することができる。従って、このエレクタ装置を採用することで、シールド掘進機の低コスト化を図ることが可能となる。
【0014】
また、前記一対のリンク機構は、エレクタ回転体側に連結される駆動リンクと、セグメント把持部側に連結される従動リンクと、これらのリンクの中間部分に設けられた関節部とを有する第一リンク機構及び第二リンク機構を有し、前記一対のリンク機構は、基端部が前記エレクタ回転体側に取り付けられ、先端部が前記第一リンク機構又は第二リンク機構の少なくともいずれか一方のリンク機構の駆動リンクに取り付けられた、軸方向駆動機を有していてもよい。このようにすれば、軸方向移動装置の先端部が軸方向に移動する量は、軸方向駆動機のストローク以上の移動量となるので、コンパクトな軸方向駆動機で軸方向移動装置の大きな軸方向移動ストロークを確保することができる。
【0015】
また、前記駆動リンクと従動リンクの連結部及び関節部は、前記セグメント把持部側に作用する荷重を支持する所定幅寸法と、該連結部及び関節部を屈曲可能に支持する関節軸とを有していてもよい。このようにすれば、セグメント把持部側に作用する荷重の支持と、連結部及び関節部に作用するねじり荷重を支持できる一対のリンク機構を、高さを抑えて容易に製作することができる。
【0016】
また、前記従動リンクの関節部とセグメント把持部側連結部との間の長さを、前記駆動リンクの関節部とエレクタ回転体側連結部との長さよりも長くしてもよい。このようにすれば、軸方向駆動機で軸方向に移動させる駆動リンクのストロークに対して従動リンクの先端部が軸方向に移動するストロークを大きくすることができ、小さな駆動量でセグメント把持部側を大きく移動させることができる。しかも、リンク機構の短縮時には、従動リンクの先端部に設けられるセグメント把持部等の構成を駆動リンクを避けてエレクタ回転体に近接して配置することができる。
【0017】
また、前記一対のリンク機構は、互いの関節部が前記エレクタ回転体の外径に沿う接線方向に広がる所定の角度で配設されていてもよい。このようにすれば、エレクタ回転体によって回転する軸方向移動装置を、このエレクタ回転体の周囲に近接するように配置することができ、エレクタ装置をコンパクトに形成することができる。
【0018】
また、前記エレクタ回転体は、軸心位置がシールド掘進機の軸心位置と一致する状態でスクリュウコンベヤに支持されたエレクタ回転ドラムであってもよい。このようにすれば、スクリュウコンベヤに支持させたエレクタ回転ドラムの周囲でセグメントを旋回、径方向移動、軸方向移動させるコンパクトなエレクタ装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、セグメント把持部側を軸方向に移動させる構成をコンパクトなリンク機構で構成し、エレクタ装置のコンパクト化とコスト低減とを図ることが可能となる。
【0020】
また、エレクタ回転体から軸方向移動装置を取外せるようにすることで、セグメント把持部を位置制御するエレクタ装置の主要部分を再利用することが容易に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るエレクタ装置を示す中央縦断面図であり、図2に示すI−I矢視図である。
【図2】図1に示すエレクタ装置の背面図である。
【図3】図2にIII矢視で示す一方のリンク機構の短縮状態を示す平面図である。
【図4】図3に示すリンク機構の伸長状態を示す平面図である。
【図5】図3に示すリンク機構の背面図である。
【図6】図5に示すリンク機構の伸長時の平面図である。
【図7】(a),(b) は、従来のリンク機構の一例を示す平面視の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、シールド掘進機1のシールド本体2内に設けられた小径のエレクタ回転ドラム(エレクタ回転体)11の周囲で回転するエレクタ装置10を例に説明する。図1に示すシールド掘進機1は、左方向が前方であり、右方向が後方である。
【0023】
図1,2に示すように、シールド掘進機1のシールド本体2内には、周囲に複数本のシールドジャッキ3が所定間隔で設けられている。このシールド掘進機1は、上記シールドジャッキ3を伸長させ、既設のセグメントリング100で掘削反力を支持して掘進するようになっている。セグメントリング100は、周方向に分割されたセグメント(セグメントピース)101を周方向に順に組み付けることで組み立てられる。このシールド掘進機1は、中央部にスクリュウコンベヤ5が設けられており、シールド掘進機1の前方で掘削した土砂をスクリュウコンベヤ5でシールド掘進機1の後方へ搬送している。このスクリュウコンベヤ5は、シールド本体2に支持されている。
【0024】
この実施形態では、上記エレクタ装置10が、シールドジャッキ3が配設された位置から所定距離離れた後方位置に設けられている。このエレクタ装置10は、シールド本体2に支持された上記スクリュウコンベヤ5に支持されたエレクタ支持架台12によって支持されている。この実施形態のエレクタ支持架台12は、中央に開口部13が形成された枠状に形成され、その開口部13を貫通するように設けられたスクリュウコンベヤ5により、上下位置に設けられた支持ブラケット14で支持されている。
【0025】
このスクリュウコンベヤ5によるエレクタ支持架台12の支持は、エレクタ回転ドラム11の中心がシールド本体2の軸心Z(Z軸)と一致するようにしている。これにより、エレクタ回転ドラム11の外周とセグメントリング100との間隔が、全周で同一となるようにしている。
【0026】
上記エレクタ支持架台12の周囲には、エレクタ回転ドラム支持ローラ15が設けられている。この例では、4個のエレクタ回転ドラム支持ローラ15が設けられている。そして、このエレクタ回転ドラム支持ローラ15によってエレクタ回転ドラム11が回転可能に支持されている。エレクタ支持架台12には、エレクタ回転駆動モータ16が設けられており、このエレクタ回転駆動モータ16で駆動するチェーン17により、エレクタ支持架台12の周囲でエレクタ回転ドラム11が回転するようになっている。従って、エレクタ回転駆動モータ16の駆動制御によって、エレクタ回転ドラム11の回転角が制御される。
【0027】
そして、上記エレクタ回転ドラム11の下部には、セグメント101を把持するセグメント把持部30を先端部分に備えた軸方向移動装置(Z軸方向移動装置)50が設けられている。また、このセグメント把持部30とZ軸方向移動装置50の間には、径方向移動機構部20が設けられている。
【0028】
上記径方向移動機構部20は、セグメント把持部30を径方向に移動させるものである。この実施形態の径方向移動機構部20は、Z軸方向移動装置50の先端部分に設けられた支持具21とセグメント把持部30との間に設けられた伸縮リンク装置20(径方向移動機構部20と同一の構成であるため同一符号を付す)によって構成されている。伸縮リンク装置20は、支持具21とセグメント把持部30との間に設けられたリンク板22と、このリンク板22と平行に設けられた伸縮ジャッキ23と、この伸縮ジャッキ23と平行位置で支持具21とセグメント把持部30との距離を保つ連結ロッド24とを有している。リンク板22、伸縮ジャッキ23及び連結ロッド24は、支持具21とセグメント把持部30とにピン25で連結されている。これらの構成により、四節リンクの平行リンク機構となった伸縮リンク装置20が形成されている。この伸縮リンク装置20によれば、伸縮ジャッキ23を伸縮させることで、支持具21に対してセグメント把持部30を径方向に移動させることができる。
【0029】
さらに、セグメント把持部30には、セグメント101を吊るセグメント吊りピン31が設けられている。このセグメント吊りピン31でセグメント101の中央部を吊り、両側部に設けられたセグメント振れ止めジャッキ32(図2)を伸長させてセグメント101に当接させることで、エレクタ回転ドラム11が回転したとしてもセグメント吊りピン31で吊ったセグメント101の姿勢を保つことができるようになっている。
【0030】
また、上記エレクタ回転ドラム11の反軸方向移動装置側には、バランスウエイト18が設けられている。このバランスウエイト18により、エレクタ回転ドラム11が、セグメント101を把持して回転するセグメント把持部30を備えた軸方向移動装置50側と重量バランスするようにしており、小さな駆動力でエレクタ回転ドラム11を正確に駆動制御できるようにしている。
【0031】
一方、上記エレクタ回転ドラム11と支持具21との間に設けられた軸方向移動装置(Z軸方向移動装置)50は、伸縮リンク装置20と一体的にセグメント把持部30を軸方向(Z軸方向)に移動させる一対のリンク機構51,52を備えている。
【0032】
この一対のリンク機構51,52は、第一リンク機構51と第二リンク機構52とから成っている。第一リンク機構51及び第二リンク機構52は、共に、エレクタ回転ドラム11に連結部56で連結された駆動リンク53と、セグメント把持部30側である支持具21に連結部57で連結された従動リンク54とを有している。
【0033】
これらの駆動リンク53と従動リンク54との中間部分には、関節部55が設けられている。この関節部55は、第一リンク機構51及び第二リンク機構52のエレクタ回転ドラム11との連結部56、及び支持具21との連結部57に対して、Z軸方向と垂直な方向に所定の角度θ(図2)を持たせている。この角度θは、第一リンク機構51及び第二リンク機構52において、シールド掘進機1の中心軸線Cに対して互いに逆方向に傾くようになっている。つまり、一対のリンク機構51、52は、Z軸と平行な面(水平面)に対して所定の角度θの傾きを有するよう設けられ、互いにZ軸を含む鉛直な面(鉛直面)に対して対称に設けられる。
【0034】
このように、一対のリンク機構51,52を設け、互いに逆方向に傾いた角度θを持たせることにより、リンク機構51,52が伸縮する時に、中心軸線Cに対して反対方向の分力(図示する例では、互いに外向きの反対方向分力)が作用し、その分力が対向した状態で伸縮させられるリンク機構51,52は、中心軸線Cに沿ってZ軸方向に直線運動することとなる。従って、このリンク機構51,52により、先端部側に設けられた伸縮リンク装置20及びセグメント把持部30を、リンク機構51,52の伸縮量に応じてZ軸方向に直線的に移動させることができる。
【0035】
また、図3に示すように、上記リンク機構51,52は、基端部がエレクタ回転ドラム11に取り付けられ、先端部がリンク機構51,52の駆動リンク53に取り付けられた軸方向駆動機たる移動ジャッキ40が設けられている。この実施形態の移動ジャッキ40は、エレクタ回転ドラム11に基端部が支持軸41で軸支され、駆動リンク53に先端部が支持軸41で軸支されている。この移動ジャッキ40の先端部は、上記リンク機構51,52の少なくともいずれか一方の駆動リンク53に取り付けられる。この例では、リンク機構51の駆動リンク53に移動ジャッキ40が取り付けられている。
【0036】
上記したように、一対のリンク機構51,52は、関節部55に互いに逆向きの角度θ(図2)を持たせている。そのため、図4に示すように、移動ジャッキ40で一方のリンク機構51(52)を駆動制御すれば、他方のリンク機構52(51)も中心軸線Cに対して対称位置で同期して伸縮する。従って、移動ジャッキ40の先端部をリンク機構51,52の少なくともいずれか一方の駆動リンク53に取り付けておけば、移動ジャッキ40で一方のリンク機構51(52)を軸方向に伸縮させることで、このリンク機構51,52によって支持具21と共に伸縮リンク装置20及びセグメント把持部30を一体でZ軸方向に直線的に移動させることができる。図示するZ軸方向移動量Sは、支持具21が軸方向に直線的に移動する状態を示している。
【0037】
従って、この軸方向移動装置(Z軸方向移動装置)50によれば、移動ジャッキ40を操作することのみで、セグメント把持部30、すなわちセグメント101をZ軸方向に直線的に移動させることができる。
【0038】
また、この実施形態では、図5に示すように、上記リンク機構51,52の駆動リンク53及び従動リンク54を、所定幅寸法Wを有するように形成している。この所定幅寸法Wは、セグメント把持部30側に作用する荷重の支持と、連結部56,57及び関節部55に作用するねじり荷重を支持できる剛性を有する寸法に設定される。さらに、連結部56,57及び関節部55には、上記荷重を支持できる関節軸58が設けられている。
【0039】
これにより、図6に示すように、セグメント把持部30側(伸縮リンク装置20側)の支持具21に荷重が作用しても、連結部56,57及び関節部55における傾き等(図示する連結部57の二点鎖線)を抑止して、リンク機構51,52によってセグメント把持部30側である支持具21をZ軸方向(図示する矢印)へ直線的に移動させることを可能にしている。
【0040】
従って、図7(a),(b) に示すように、上記角度θを持たせない通常のリンク機構110,120によってセグメント把持部等の構成111,121をZ軸方向(図示する矢印)へ直線的に移動させようとした場合に必要となる補助ガイド112,122等を必要とすることなく、安定したZ軸方向の直線移動を可能にしている(図6)。
【0041】
また、図2に示すように、上記角度θとしては、作業者によるシールド本体2内でのセグメント101の組み付け作業に邪魔にならない角度が好ましく、エレクタ装置10の構成がエレクタ回転ドラム11の外周から張り出す部分が少ない方がよい。そこで、この例では、エレクタ回転ドラム11の外径に沿う接線方向に広がる角度θとすることで、エレクタ回転ドラム11から張り出す部分を少なくしている。
【0042】
さらに、図1,3に示すように、Z軸方向移動装置50は、エレクタ回転ドラム11に設けられた固定フランジ19に固定する分離フランジ60が設けられている。この分離フランジ60は、固定フランジ19とボルト61で結合されている。これにより、ボルト61を外せば、Z軸方向移動装置50から先端部分をエレクタ回転ドラム11から一体的に取外すことができる。これらを一体的に取外すことにより、Z軸方向移動装置50から先端部分を他のシールド掘進機に転用することができ、エレクタ装置10のリサイクルが容易に可能となる。
【0043】
しかも、上記エレクタ装置10は、セグメント把持部30側をリンク機構51,52でZ軸方向に移動させる構成であるため、例えば、シールド径が多少異なるシールド掘進機であっても、径方向移動機構部である伸縮リンク装置20の移動量調整等を行うことで、転用して再利用することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、図1に示すように、エレクタ回転ドラム11からシールド本体前方のシールドジャッキ3側にリンク機構51,52が伸縮する例を示しているが、セグメント101の大きさやセグメント把持部30の構成等に応じてエレクタ回転ドラム11からシールド本体後方にリンク機構51,52が伸縮するように構成してもよい。
【0045】
この場合、上記エレクタ装置10によれば、エレクタ回転ドラム11に対して軸方向移動装置50を後方に向けて取り付けたり、セグメント把持部30を支持具21の反軸方向移動装置側に向けて突出するように取り付けることも可能であり、個々の構成の組み立て方を変更することで、シールド掘進機1の径やセグメント101の分割構成等に応じて容易に可動形態を変更することができる。
【0046】
以上のように、上記エレクタ装置10によれば、シールド掘進機1によって掘削された地山の掘削壁面に対し、エレクタ装置10のエレクタ回転駆動モータ16を駆動制御してエレクタ回転ドラム11を回転制御することで上記セグメント把持部30を一体的に回転移動させ、このセグメント把持部30で把持したセグメント101を伸縮リンク装置20で径方向に移動させて位置調整し、軸方向移動装置50による軸方向移動で周方向の所定位置に移動させたセグメント101を所定位置に組み付けることでセグメントリング100を形成することができる。
【0047】
そして、上記エレクタ装置10によれば、ロスの少ないリンク機構51,52を採用し、そのリンク機構51,52を、角度θを有する1対の簡単なリンク機構とすることでZ軸方向の直線移動を可能にしているため、高精度なガイド等の部品と取り付け精度を必要とせず、複雑なジャッキ制御も不要で、低推力の移動ジャッキ40を採用して簡単な駆動制御(ON−OFFのみの操作)でセグメント101をZ軸方向に移動させることができ、エレクタ装置10の構造を簡素化でき、製作コストを下げることが可能となる。
【0048】
しかも、上記軸方向移動装置50によれば、移動ジャッキ40の伸長によってリンク機構51,52で支持具21を大きくZ軸方向に直線移動させることができるので、Z軸方向の移動ロスが少なく、Z軸移動ジャッキ40の推力を小さくできる。
【0049】
また、Z軸方向の直線移動にリンク機構51,52を採用しているので、ロングストロークの移動ジャッキ40を必要とすることなく大きなZ軸方向移動ストロークを実現することができる。
【0050】
その上、上記エレクタ装置10によれば、セグメント把持部30等のZ軸方向移動装置50に設けられた部品を、Z軸方向移動装置50の分離フランジ60から一体的に取り外すことができるため、これらの構成を他のシールド掘進機に転用してリサイクルすることが容易にできる。
【0051】
なお、上記実施形態では、リンク機構51,52の関節部55に比較的大きな角度θを設けているが、この角度θはリンク機構51,52の配置等に応じて適宜設定すればよい角度で小さな角度であってもよく、上記実施形態に限定されるものではない。
【0052】
また、上記実施形態では、スクリュウコンベヤ5でエレクタ支持架台12を支持する例を説明したが、シールドジャッキ3を支持するシールド本体2からサポートビームを張り出してエレクタ支持架台12を固定するように構成してもよく、エレクタ装置10の配置は上記実施形態に限定されるものではない。
【0053】
さらに、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係るエレクタ装置は、掘削壁面に比較的軽いセグメントを組み付けてトンネルを形成するシールド掘進機に利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 シールド掘進機
2 シールド本体
5 スクリュウコンベヤ
10 エレクタ装置
11 エレクタ回転ドラム(エレクタ回転体)
12 エレクタ支持架台
13 開口部
14 支持ブラケット
15 エレクタ回転ドラム支持ローラ
16 エレクタ回転駆動モータ
19 固定フランジ
20 径方向移動機構部(伸縮リンク装置)
21 支持具
22 リンク板
23 伸縮ジャッキ
24 連結ロッド
25 ピン
30 セグメント把持部
40 移動ジャッキ(軸方向駆動機)
50 軸方向移動装置(Z軸方向移動装置)
51 第一リンク機構
52 第二リンク機構
53 駆動リンク
54 従動リンク
55 関節部
56 連結部
57 連結部
58 関節軸
60 分離フランジ
100 セグメントリング
101 セグメント
θ 角度
C 中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機のシールド本体内に設けられ、セグメントをセグメント把持部で把持して掘削壁面に組み付けるエレクタ装置であって、
前記シールド本体内で回転するエレクタ回転体と、
前記エレクタ回転体側と前記セグメント把持部側とに連結され、該エレクタ回転体に対して前記セグメント把持部を軸方向に移動させる一対のリンク機構から成る軸方向移動装置とを備え、
前記一対のリンク機構は、前記軸方向と垂直な方向に対して互いに対称に傾くように所定の角度を有して設けられていることを特徴とするエレクタ装置。
【請求項2】
前記一対のリンク機構は、エレクタ回転体側に連結される駆動リンクと、セグメント把持部側に連結される従動リンクと、これらのリンクの中間部分に設けられた関節部とを有する第一リンク機構及び第二リンク機構を有し、
前記一対のリンク機構は、基端部が前記エレクタ回転体側に取り付けられ、先端部が前記第一リンク機構又は第二リンク機構の少なくともいずれか一方のリンク機構の駆動リンクに取り付けられた、軸方向駆動機を有している請求項1に記載のエレクタ装置。
【請求項3】
前記駆動リンクと従動リンクの連結部及び関節部は、前記セグメント把持部側に作用する荷重を支持する所定幅寸法と、該連結部及び関節部を屈曲可能に支持する関節軸とを有している請求項2に記載のエレクタ装置。
【請求項4】
前記従動リンクの関節部とセグメント把持部側連結部との間の長さを、前記駆動リンクの関節部とエレクタ回転体側連結部との長さよりも長くした請求項2又は3に記載のエレクタ装置。
【請求項5】
前記一対のリンク機構は、互いの関節部が前記エレクタ回転体の外径に沿う接線方向に広がる所定の角度で配設されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のエレクタ装置。
【請求項6】
前記エレクタ回転体は、軸心位置がシールド掘進機の軸心位置と一致する状態でスクリュウコンベヤに支持されたエレクタ回転ドラムである請求項1〜5のいずれか1項に記載のエレクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−162845(P2012−162845A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21526(P2011−21526)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】