説明

エレクトレットろ材

【課題】エアフィルターの圧力損失、粉塵捕集効率や強度といった一般的なフィルター特性を維持しつつ、安定した捕集効率を発現できるエレクトレットろ材を提供する。
【解決手段】JIS B 9908:2001で規定されている性能評価方法のうち、初期におけるJIS11種比色法捕集効率が50%から99%を発現するプリーツ型フィルターユニットに用いられるエレクトレットろ材において、該ろ材はエレクトレット可能なシート(A)とエレクトレット可能な短繊維を含むウェブ(B)とを加熱圧接により接合したことを特徴とするエレクトレットろ材であり、加熱圧接後のエレクトレット可能な短繊維を構成する部位(B層)が以下の(ア)〜(ウ)の要件を満たすことによって解決される。
(ア)嵩密度が0.03〜0.20g/cmであり、かつ厚みが1.5mm以下であること。
(イ)ガーレ法における曲げ反発特性が100〜500mgであること。
(ウ)油剤の付着量が0.1重量%以下であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルターユニット、主に空調用、エアコン用に使用可能なフィルターユニットに用いられるろ材に関するものであって、特にJIS B 9908:2001のうち形式2が適用されるやや微細な粉塵用フィルターユニットに使用されるろ材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレクトレットろ材は、該ろ材を構成する繊維に半永久的に固定された電荷の静電気力によって空気中の微粒子を効果的に除去できるものであり、空調用、エアコン用、空気清浄機用フィルター、OA機器などの排気フィルターユニットに使用されている。こうした分野ではフィルターユニットの圧力損失を低く抑えつつ、大気中の微粒子を効率よく捕集する必要があるため、ろ材をジグザグに折り畳んでひだを構成したプリーツ状フィルターとして使用される。一方エレクトレットとして使用される繊維状不織布としてはメルトブロー不織布や薄物スパンボンド不織布、薄型スパンレース不織布があるが、剛性が低いためひだ折り加工しにくいという問題があった。こうした問題を解決する方法として、薄いポリプロピレンメルトブロー不織布と太繊度の芯鞘繊維で構成された繊維ウェブを積層、加熱して剛性の高い部分と荷電が可能な部分で構成される積層型のろ材が考案されている(特許文献1)。
【0003】
また、機械的強度向上のためにエレクトレット化した不織布に合成繊維の網状物を熱接着させた積層型ろ材が考案されている(特許文献2)。こうした熱接着型の積層ろ材は、あらかじめエレクトレット化させた薄手の不織布と剛性のある基材と接合するため熱によって除電され、エレクトレットによる除塵効率が低下することがある。
【0004】
また、エレクトレット可能な薄手の不織布と機械的強度のある部材をあらかじめ熱接着した後に荷電されることがあるが、部材に含まれる油剤などの有機成分がエレクトレット可能な不織布に作用してエレクトレット化を阻害する問題が生じていた。また、エレクトレットを疎外する油剤については加熱処理後の油剤付着量の減少率が60%以上であるポリオレフィン系熱融着繊維を用いたエレクトレット不織布の記載がある(特許文献3)。この文献では加熱により油剤が減少することでエレクトレット特性が得られて粉塵捕集効率が高いことが記載されているが、実際にフィルター用のろ材としての特性と具体的な大気中の捕集条件については何ら言及されていない
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−83017号公報
【特許文献2】特開平1−194912号公報
【特許文献3】特開2002−339256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はエアフィルターの圧力損失、粉塵捕集効率や強度といった一般的なフィルター特性を維持しつつ、安定した捕集効率を発現できるエレクトレットろ材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み、鋭意検討した結果得られたものである。すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)エレクトレットろ材、特にJIS B 9908:2001で規定されている性能評価方法のうち、初期におけるJIS11種比色法捕集効率が50%から99%を発現するプリーツ型フィルターユニットに用いられるエレクトレットろ材において、エレクトレット可能なシート(A)とエレクトレット可能な短繊維ウェブ(B)とを加熱圧接により接合したエレクトレットろ材であり、かつ加熱圧接後における短繊維ウェブを構成する部位(B層)が以下の(ア)〜(ウ)の要件を満たすエレクトレットろ材。
(ア)ろ材の嵩密度が0.03〜0.20g/cmであり、かつ厚みが1.5mm以下であること。
(イ)ガーレ法における曲げ反発性が100〜500mgであること。
(ウ)油剤の付着量が0.1重量%以下であること。
(2)エレクトレット可能な短繊維を含むウェブにおいて、該ウェブを構成するエレクトレット可能な繊維はポリオレフィン系熱融着繊維であって、該熱融着繊維を60〜100重量%含む上記(1)に記載のエレクトレットろ材。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、エアフィルターの圧力損失、粉塵捕集効率や強度といった一般的なフィルター特性を維持しつつ、フィルターの製造や使用時に必要である適度な強度を得ることが出来、かつ安定した捕集効率を得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明はエレクトレットろ材、特にJIS B 9908:2001で規定されている性能評価方法のうち、初期におけるJIS11種比色法捕集効率が50%から99%を発現するプリーツ型フィルターユニットに用いられるエレクトレットろ材に適用される。該ろ材はエレクトレット可能なシート(A)とエレクトレット可能な短繊維を含むウェブ(B)とを加熱圧接により接合したエレクトレットろ材であることが特徴であり、具体的には加熱圧接後のエレクトレット可能な短繊維を構成する部位(B層)が以下の(ア)〜(ウ)の要件を満たなくてはならない。
(ア)嵩密度が0.03〜0.20g/cmであり、かつ厚みが1.5mm以下であること。
(イ)ガーレ法における曲げ反発特性が100〜500mgであること。
(ウ)油剤の付着量が0.1重量%以下であること。
また本発明を実現するには、ウェブを構成するエレクトレット可能な短繊維がポリオレフィン系熱融着繊維であり、ウェブは該熱融着繊維を60〜100重量%含むことが必要である。
【0010】
本発明におけるエレクトレットろ材においては、エレクトレット可能なシート(A層)とエレクトレット可能な短繊維ウェブ(B層)とを加熱圧接により接合したことを特徴とするエレクトレットろ材である。この場合、エレクトレット可能なシート(A層)とはポリピロピレン、ポリエチレン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネートを成分とする繊維を糸状にして織布や編地にしたものやスパンボンド、メルトブロー不織布、バインダーと共に抄紙した湿式紙状物などがあげられるが、プリーツ型フィルターとしての加工性や荷電特性、通気性などを考慮するとポリオレフィン系、例えばポリプロピレン繊維、ポリエチレン/ポリプロピレンの熱融着繊維をもとにしたスパンボンド不織布、ポリプロピレンのメルトブロー不織布が好適に用いられる。
【0011】
また、もう一方のエレクトレット可能な短繊維を含むウェブ(B)とは上述のエレクトレット可能な繊維を原綿として公知の方法で解繊し、カードにかけてレイヤーにしたものである。この場合のエレクトレット可能な繊維はポリオレフィン系熱融着繊維であり、該熱融着繊維を含んだウェブ(B)とエレクトレット可能なシート(A)を積層し、加熱により圧接することによって得られる。この場合、加熱圧接後における短繊維ウェブを構成する部位(B層)については、嵩密度がろ材の持つ粉塵捕集効率と通気抵抗のバランスおよびろ材の加工性を考慮した場合、0.03〜0.20g/cm、好ましく0.04〜0.18g/cmである。嵩密度が0.03g/mより小さい場合、繊維の量が少ない為エレクトレット後の粉塵捕集効率が低下し、0.20g/cmより高い場合、ろ材の空気抵抗が高くフィルターユニットにした場合の圧力損失が高くなり、かつ粉塵保持量が小さくなり、いずれも好ましくない。
【0012】
厚みについてはプリーツ後のフィルターユニットの圧力損失に大きく影響するため、1.5mm以下、好ましく1.4mm以下に調整される。厚みが1.5mmより大きい場合、プリーツ後のフィルターユニットにおける通気時の構造抵抗が増加するため圧力損失が大きくなり、好ましくない。さらに、本発明における加熱圧接後の部位のガーレ法における曲げ反発特性が100〜500mg、好ましくは120〜480mgであることが適度なプリーツ加工性を維持する上で必要である。曲げ反発特性が100mgより低い場合、ろ材の曲げ強度が低下するのでプリーツ加工時にきれいな山状のプリーツが形成されず、いびつな形状を形成する。反対に500mgより大きい場合、強度が高いためプリーツ加工時に折り曲げることが出来ず、頂点がいびつな形状に形成されるため、いずれも好ましくない。
【0013】
本発明においては加熱圧接後における短繊維ウェブを構成する部位(B層)に含まれる油剤の付着量が0.1重量%以下であることがプリーツ型フィルターユニット用におけるエレクトレットろ材において必要な捕集性能を得る上で重要である。短繊維不織布に使用される原綿にはカード時に発生する静電気を抑制してウェブ形成性を安定化するために有機成分が主である油剤が含有されている。こうした油剤はウェブの形成を安定化する反面、シート化後に荷電処理を行いエレクトレット化した場合においても抑制する効果を有する。したがって本発明における油剤の付着量は部位(B層)の全重量に対して0.1重量%以下であることが必要な荷電効果を得る上で重要である。油剤の付着量が0.1重量%より多い場合、仮に荷電されても電荷が安定せず、必要な粉塵捕集効率を得ることが出来なくなり、好ましくない。
【0014】
なお、こうしたエレクトレットろ材を得るためにはエレクトレットが可能な素材、特にポリオレフィン系の成分でポリオレフィン系熱融着繊維を60〜100重量%含む熱融着された不織布であることが必要である。ポリオレフィン系の熱融着繊維の含有率が60重量%より低い場合、必要な荷電効果が得られず、かつシートとして必要な強度が得られないため好ましくない。
【0015】
本発明を実現するための具体的な製造方法について説明する。本発明、特にエレクトレット可能な短繊維を含むウェブ(B)については、ポリプロピレンを芯にポリエチレンを鞘に構成される芯鞘繊維を用い、公知の方法でウェブ化することが融着特性と工程の合理性の観点から好適に用いられる。該芯鞘繊維はシートの強度と圧力損失を考慮した場合、2.2〜22dtexの繊維を用いることが好ましく、それより繊度の大きいものである場合、難燃剤が含有した場合の融着強度が低下するためシートの強度が弱くなる。また2.2dtex未満である場合、繊維直径が細くなるためにシートにした場合の圧力損失が高くなり、好ましくない。主成分のポリプロピレン繊維と接着成分としてのポリエチレンとの比率は配合の方法により様々であるが充分な接着性を得るためにはポリプロピレン(PP)繊維とポリエチレン(PE)が重量比で1:4〜4:1に調整されることが好ましい。こうしたポリオレフィン系の芯鞘繊維と他の繊維を混綿して公知の方法でカード機にかけweb状にした後、公知の方によって得られたエレクトレット可能なシート(A)とを積層し、加熱圧接を行ってろ材を製造する。特にエレクトレット可能な短繊維を含むウェブ(B)については、ポリオレフィン系の芯鞘繊維と混綿する他の繊維はシートに要求される機能に応じて選択される。例えば、抗菌、高カビ性や難燃性を付与したい場合はこうした機能を持つ公知の添加剤が添加された繊維をエレクトレット性が損なわない程度に混ぜてもよい。
【0016】
エレクトレット可能な短繊維を含むウェブ(B)を製造する方法は公知の方法でよいが取扱性を向上させるため、例えばカードwebをニードルパンチにかける方法、カードwebを水流によって交絡させラフなシートを構成したのち(A)と積層して加熱圧着する方法を用いても良い。しかしながら必要な強度を得るためには積層した各層を、熱融着繊維の鞘成分の融点以上の温度で十分に熱が行き渡る時間、具体的には10〜60秒間ヒートスルーオーブンで加熱して鞘部を融解させて繊維間接着をする必要がある。この場合、必要とされる厚みにするためにはwebを交絡した不織布を所定のギャップに調整したネットに挟み込んで加熱圧接することで可能となる。また、webを交絡した不織布をオーブンで加熱させた後所定のギャップに調整したプレスローラー中を通過させることによってでも可能である。プリーツろ材として必要な曲げ反発特性を得るにはB層の熱融着繊維成分が加熱された状態でA層と接合され、所定の厚みに調整して冷却させることが必要で、このような状態で厚みを調整する方法であれば特に限定されるものではない。
【0017】
必要なエレクトレット性を得る上で必要な油剤の除去方法について説明する。油剤はシート形成後50〜80℃程度の温浴に数分間含浸して脱水することによって得られる。また連続的には未加熱のB層を温浴に通した後所定の温度で乾燥し、A層と融点以上の温度に加熱圧接して得ることも可能である。また、加熱によって油剤成分が減少する繊維(特許文献3)を用いてもよい。油剤が除去されたシートは荷電処理によって荷電され、エレクトレットフィルターろ材になる。荷電方法特に限定されるものではないがコロナ放電による方法や水などの液体を通過させて得られる方法、シートを摩擦によって静電気を発生させる方法など公知の方法でよい。
【実施例】
【0018】
次に実施例、比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、測定方法は下記の方法で実施した。
加熱圧着後のB層の物性評価については加熱圧着後、A層を剥し、以下に記載する(1)〜(5)の評価を行った。
(1)目付(g/m):200mm角の寸法で切り出し、秤量して寸法で除した。
(2)厚み(mm):荷重0.7kPaの厚みを読み取った。
(3)嵩密度(g/cm):目付を厚みで除した値を採用した。
(4)曲げ反発性:JIS L 1096(1990)6.20.1 A法に準拠。
(5)油剤付着量:試料2gを採取し、エタノール/メタノール:重量混合比2/1の抽出液50ccに含浸させて油剤を抽出した。抽出前後の重量を測定して単位重量あたりの抽出量(重量%)を算出した。
(6)フィルターユニットの特性
ろ材605mm巾×20m長を製造し、山高さ58mmにてひだ折りして山ピッチ6mmになる様に公知の方法でビード樹脂を25mm間隔で流し込んで成型し、プリーツを形成した。610mm角のアルミ枠材にプリーツを装填してろ材のB層が上流側になる様に測定装置に設置して圧力損失とJIS11種の初期捕集効率、粉塵保持量を測定した。測定装置はJIS B 9908(2001)の形式2に基づく装置を用いた。風量は56m/minで実施し、粉塵負荷は294Paで終了した。
【0019】
以下実施例中および比較例で用いたシートの荷電方法を以下に示した。
(a)荷電装置
アース側:アルミ板に厚さ2mmのシリコンシートを敷設した。
電極側:針間隔10mmの針電極
電極−アース間距離:針先端からシリコンシートまで10mm
(b)荷電方法
印加電圧:20kV
荷電時間:30秒
【0020】
[実施例1]
JIS B 9908:2001の形式2に準じた効率90%フィルター向けのろ材として以下に記載する方法でエレクトレットろ材を製造した。A層側として目付22g/m、厚み0.23m、平均繊維直径3.5μmのポリプロピレンのメルトブロー不織布を用意した。かたやポリプロピレン(芯成分)/ポリエチレン(鞘成分)(ポリプロピレン:ポリエチレン重量比は1:1)で構成される2.2dtexの短繊維、および6.6dtexの短繊維(いずれも宇部日東化成株式会社製耐熱脱油繊維HR−LE)を8:2の割合で混繊してカード機にかけてwebとし、webをクロスレイヤーで連続的に積層し、ニードルパンチをかけてB層とした。A、B層を積層させて上下をステンレスメッシで挟み、上下メッシュの間隔を1.0mmに設定した状態で搬送してエアスルーオーブンに通し、温度150℃、1分間加熱融着させ、目付107g/m、厚み1.0mmの積層ろ材を得た。該不織布を荷電装置に通して荷電し、エレクトレットろ材を得た。このろ材をひだ折りしてフィルターユニットを製作しユニット特性を評価した。
B層側の目付、厚み、嵩密度、油剤付着量、フィルターユニットの圧力損失、粉塵保持量、初期におけるJIS11種捕集効率を表1に示す。
【0021】
[実施例2]
JIS B 9908:2001の形式2に準じた効率95%フィルター向けのろ材として以下に記載する方法でエレクトレットろ材を製造した。A層側として目付30g/m、厚み0.30m、平均繊維直径2μmのポリプロピレンのメルトブロー不織布を用意した。かたやB層としては実施1で製造したものを使用した。A、B層を積層させてステンレスメッシで挟み、上下メッシュの間隔を1.0mmに設定した状態で搬送してエアスルーオーブンに通し、温度150℃、1分間加熱融着させ、目付115g/m、厚み1.1mmの積層ろ材を得た。該不織布を荷電装置に通して荷電し、エレクトレットろ材を得た。このろ材をひだ折りしてフィルターユニットを製作しユニット特性を評価した。
B層側の目付、厚み、嵩密度、油剤付着量、フィルターユニットの圧力損失、粉塵保持量、初期におけるJIS11種捕集効率を表1に示す。
【0022】
[実施例3]
JIS B 9908:2001の形式2に準じた効率90%フィルター向けのろ材として以下に記載する方法でエレクトレットろ材を製造した。A層側として目付22g/m、厚み0.23m、平均繊維直径3.5μmのポリプロピレンのメルトブロー不織布を用意した。かたやポリプロピレン(芯成分)/ポリエチレン(鞘成分)(ポリプロピレン:ポリエチレン重量比は1:1)で構成される2.2dtexの短繊維(宇部日東化成株式会社製耐熱脱油繊維HR−LE)、および6.6dtexのポリエステル短繊維(東レ株式会社製T201)を8:2の割合で混繊してカード機にかけてwebとし、webをクロスレイヤーで連続的に積層し、ニードルパンチをかけてB層とした。A、B層を積層してステンレスメッシで挟み、上下メッシュの間隔を1.0mmに設定した状態で搬送してエアスルーオーブンに通し、温度150℃、1分間加熱融着させ、目付117g/m、厚み1.2mmの積層ろ材を得た。該不織布を荷電装置に通して荷電し、エレクトレットろ材を得た。このろ材をひだ折りしてフィルターユニットを製作しユニット特性を評価した。
B層側の目付、厚み、嵩密度、油剤付着量、フィルターユニットの圧力損失、粉塵保持量、初期におけるJIS11種捕集効率を表1に示す。
【0023】
[実施例4]
JIS B 9908:2001の形式2に準じた効率90%フィルター向けのろ材として以下に記載する方法でエレクトレットろ材を製造した。A層側として目付22g/m、厚み0.23m、平均繊維直径3.5μmのポリプロピレンのメルトブロー不織布を用意した。かたやポリプロピレン(芯成分)/ポリエチレン(鞘成分)(ポリプロピレン:ポリエチレン重量比は1:1)で構成される2.2dtex短繊維(宇部日東化成株式会社製HR−CK)、および6.6dtexのポリエステル短繊維(東レ株式会社製T201)を8:2の割合で混繊してカード機にかけてwebとし、webをクロスレイヤーで連続的に積層しにドールパンチをかけてB層とした。A、B層を積層し、ステンレスメッシュで上下から挟み、上下メッシュの間隔を1.0mmに設定した状態で搬送してエアスルーオーブンに通し、温度150℃、1分間加熱融着させ、目付112g/m、厚み1.0mmの積層ろ材を得た。該シートを70℃に設定された温浴中に5分間含浸させよく揉んで水分が不織布中に行き渡るように洗浄し、その後脱水して油剤を除去した。油剤の除去を2回繰り返した後、乾燥させて荷電装置に通して荷電し、エレクトレットろ材を得た。
このろ材をひだ折りしてフィルターユニットを製作してユニット特性を評価したB層側の目付、厚み、嵩密度、油剤付着量、フィルターユニットの圧力損失、粉塵保持量、初期におけるJIS11種捕集効率を表1に示す。
【0024】
[比較例1]
JIS B 9908:2001の形式2に準じた効率90%フィルター向けのろ材として以下に記載する方法でエレクトレットろ材を製造した。A層側として目付22g/m、厚み0.23m、平均繊維直径3.5μmのポリプロピレンのメルトブロー不織布を用意した。かたやポリプロピレン(芯成分)/ポリエチレン(鞘成分)(ポリプロピレン:ポリエチレン重量比は1:1)で構成される2.2dtexの短繊維、および6.6dtexの短繊維(いずれも宇部日東化成株式会社製耐熱脱油繊維HR−LE)を8:2の割合で混繊してカード機にかけてwebとし、webをクロスレイヤーで連続的に積層し、ニードルパンチをかけてB層とした。A、B層を積層させて上下をステンレスメッシで挟み、上下メッシュの間隔を2.5mmに設定した状態で搬送してエアスルーオーブンに通し、温度150℃、1分間加熱融着させ、目付107g/m、厚み2.5mmの積層ろ材を得た。該不織布を荷電装置に通して荷電し、エレクトレットろ材を得た。このろ材をひだ折りしてフィルターユニットを製作しユニット特性を評価した。
B層側の目付、厚み、嵩密度、油剤付着量、フィルターユニットの圧力損失、粉塵保持量、初期におけるJIS11種捕集効率を表1に示す。
【0025】
[比較例2]
JIS B 9908:2001の形式2に準じた効率90%フィルター向けのろ材として以下に記載する方法でエレクトレットろ材を製造した。A層側として目付22g/m、厚み0.23m、平均繊維直径3.5μmのポリプロピレンのメルトブロー不織布を用意した。かたやポリプロピレン(芯成分)/ポリエチレン(鞘成分)(ポリプロピレン:ポリエチレン重量比は1:1)で構成される2.2dtexの短繊維、および6.6dtexの短繊維(いずれも宇部日東化成株式会社製耐熱脱油繊維HR−LE)を8:2の割合で混繊してカード機にかけてwebとし、webをクロスレイヤーで連続的に積層し、ニードルパンチをかけてB層とした。A、B層を積層させて上下をステンレスメッシで挟み、上下メッシュの間隔を0.7mmに設定した状態で搬送してエアスルーオーブンに通し、温度150℃、1分間加熱融着させ、目付67g/m、厚み0.8mmの積層ろ材を得た。該不織布を荷電装置に通して荷電し、エレクトレットろ材を得た。このろ材をひだ折り加工を実施したがろ材の剛性が低いためうまく加工出来なかった。
B層側の目付、厚み、嵩密度、油剤付着量を表1に示す。
【0026】
[比較例3]
JIS B 9908:2001の形式2に準じた効率90%フィルター向けのろ材として以下に記載する方法でエレクトレットろ材を製造した。実施例4と同じ条件で積層ろ材を得た後、洗浄せず荷電装置に通して荷電し、エレクトレットろ材を得た。このろ材をひだ折りしてフィルターユニットを製作してユニット特性を評価した。
B層側の目付、厚み、嵩密度、油剤付着量、フィルターユニットの圧力損失、粉塵保持量、初期におけるJIS11種捕集効率を表1に示す。
【0027】
[比較例4]
JIS B 9908:2001の形式2に準じた効率90%フィルター向けのろ材として以下に記載する方法でエレクトレットろ材を製造した。A層側として目付22g/m、厚み0.23m、平均繊維直径3.5μmのポリプロピレンのメルトブロー不織布を用意した。かたやポリプロピレン(芯成分)/ポリエチレン(鞘成分)(ポリプロピレン:ポリエチレン重量比は1:1)で構成される2.2dtex短繊維(宇部日東化成株式会社製HR−CK)、および6.6dtexのポリエステル短繊維(東レ株式会社製T201)を1:1の割合で混繊してカード機にかけてwebとし、webをクロスレイヤーで連続的に積層しにドールパンチをかけてB層とした。A、B層を積層し、ステンレスメッシュで上下から挟み、上下メッシュの間隔を1.0mmに設定した状態で搬送してエアスルーオーブンに通し、温度150℃、1分間加熱融着させ、目付172g/m、厚み1.2mmの積層ろ材を得た。該シートを70℃に設定された温浴中に5分間含浸させよく揉んで水分が不織布中に行き渡るように洗浄し、その後脱水して油剤を除去した。油剤の除去を2回繰り返した後、乾燥させて荷電装置に通して荷電し、エレクトレットろ材を得た。このろ材をひだ折りしてフィルターユニットを製作してユニット特性を評価した。
B層側の目付、厚み、嵩密度、油剤付着量、フィルターユニットの圧力損失、粉塵保持量、初期におけるJIS11種捕集効率を表1に示す。
【0028】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のエレクトレットろ材は強度を保持する為のカバー層に荷電保持性を有することによってろ材の全体的な電荷保持性が安定し、従来にくらべて高い粉塵捕集効率を得ることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS B 9908:2001で規定されている性能評価方法のうち、初期におけるJIS11種比色法捕集効率が50%から99%を発現するプリーツ型フィルターユニットに用いられるエレクトレットろ材において、該ろ材はエレクトレット可能なシート(A)とエレクトレット可能な短繊維を含むウェブ(B)とを加熱圧接により接合したことを特徴とするエレクトレットろ材であり、加熱圧接後のエレクトレット可能な短繊維を構成する部位(B層)が以下の(ア)〜(ウ)の要件を満たす。
(ア)嵩密度が0.03〜0.20g/cmであり、かつ厚みが1.5mm以下であること。
(イ)ガーレ法における曲げ反発特性が100〜500mgであること。
(ウ)油剤の付着量が0.1重量%以下であること。
【請求項2】
ウェブを構成するエレクトレット可能な短繊維はポリオレフィン系熱融着繊維であり、ウェブは該融着繊維を60〜100重量%含む請求項1に記載のエレクトレットろ材。

【公開番号】特開2012−239995(P2012−239995A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113432(P2011−113432)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】