説明

エレクトレットシート

【課題】 本発明は、高い圧電性を有するエレクトレットシートを提供する。
【解決手段】 本発明のエレクトレットシートは、絶縁性合成樹脂とシリカエアロゲルとを含む合成樹脂シートに電荷を注入して上記合成樹脂シートを帯電させているので、エレクトレットシートに外力が加わると、シリカエアロゲルを構成している数珠状の二次粒子間に形成されている空隙が容易に変形し、この変形に伴って、シリカエアロゲルとこれに接触している合成樹脂との界面にたまった正電荷と負電荷とが容易に相対変位を生じ、この相対変位に伴って良好な電気応答を生じ、エレクトレットシートは優れた圧電性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた圧電性を有するエレクトレットシートに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトレットは絶縁性の高分子材料に電荷を注入することにより、内部に永久帯電を付与した材料である。エレクトレットは繊維状に成形して集塵フィルターなどとして広く用いられている。
【0003】
合成樹脂製の発泡シートは気泡を形成している気泡膜及びこの近傍部を帯電させることによってセラミックスに匹敵する非常に高い圧電性を示すことが知られている。このような合成樹脂製の発泡シートを用いたエレクトレットは、その優れた感度を利用して音響ピックアップや各種圧力センサーなどへの応用が提案されている。
【0004】
このような合成樹脂製の発泡シートの圧電性を高める方法として気泡を微細化させることが行われている。そして、特許文献1には、気泡を微細化させる方法が開示されており、従来のエレクトレットよりも高い性能が得られているものの、複雑な工程を経る必要があるといった問題点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−145960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高い圧電性を有するエレクトレットシートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエレクトレットシートは、絶縁性合成樹脂とシリカエアロゲルとを含む合成樹脂シートに電荷を注入して上記合成樹脂シートを帯電させていることを特徴とする。
【0008】
上記絶縁性合成樹脂としては、絶縁性を有している合成樹脂であれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン−プロピレンゴムなどのポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリシクロオレフィン系樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体などのジエン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレンなどの塩素系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体などのフッ素系樹脂、ポリシアン化ビニル、ポリシアン化ビニリデンなどのシアノ系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸樹脂などのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11などのポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられ、吸湿性が低くて絶縁性に優れており電荷保持力が高いことから、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。なお、絶縁性合成樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。本発明において、「絶縁性合成樹脂」とは、JIS K6911に準拠して印可電圧500Vにて電圧印可1分後の体積固有抵抗値が1.0×1010Ω・m以上である合成樹脂をいう。
【0009】
絶縁性合成樹脂の上記体積固有抵抗値は、エレクトレットシートがより優れた圧電性を有することから、1.0×1013Ω・m以上が好ましく、1.0×1015Ω・m以上がより好ましい。
【0010】
ポリエチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体、又は、エチレン成分を50重量%を超えて含有するエチレンと少なくとも1種のエチレン以外の炭素数が3〜20のα―オレフィンとの共重合体を挙げることができる。エチレン単独重合体としては、高圧下でラジカル重合させた低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中低圧で触媒存在下で重合させた中低圧法高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)などを挙げることができる。エチレンとα―オレフィンを共重合させることで直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)を得ることができ、上記α―オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、炭素数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。なお、直鎖状低密度ポリエチレン中におけるα−オレフィンの含有量は通常、1〜15重量%である。
【0011】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン成分を50重量%を超えて含有しておれば、特に限定されず、例えば、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンと少なくとも1種のプロピレン以外の炭素数3〜20のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。なお、ポリプロピレン系樹脂は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。又、プロピレンと少なくとも1種のプロピレン以外の炭素数3〜20のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体の何れであってもよい。
【0012】
なお、プロピレンと共重合されるα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂は、絶縁性、柔軟性及び電荷保持性が優れており、エレクトレットシートが優れた圧電性を有することから、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを併用することが好ましい。
【0014】
合成樹脂としてポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを併用する場合、合成樹脂中におけるポリエチレン系樹脂の含有量は、少なすぎても多すぎても、エレクトレットシートの圧電性が低下することがあるので、5〜90重量%が好ましく、30〜80重量%がより好ましい。又、合成樹脂としてポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを併用する場合、合成樹脂中におけるポリプロピレン系樹脂の含有量は上記と同様の理由で10〜95重量%が好ましく、20〜70重量%がより好ましい。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率は、小さいと、エレクトレットシートの電荷の保持性が低下してエレクトレットシートの性能が長期間に亘って安定的に維持されないことがあるので、1400MPa以上が好ましく、1400〜2500MPaがより好ましい。なお、ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定された値をいう。
【0016】
ポリシクロオレフィン系樹脂としては、シクロアルケンの単独重合体又は共重合体が挙げられる。シクロアルケンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセンなどが挙げられる。ポリシクロオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリシクロブテン、ポリシクロペンテン、ポリシクロヘキセン、ポリシクロオクテン、ポリ3−メチルシクロペンテン、ポリ4−メチルシクロペンテン、ポリ3−メチルシクロヘキセンなどが挙げられる。
【0017】
ジエン系樹脂としては、ジエン系モノマーの単独重合体又は共重合体が挙げられる。ジエン系モノマーとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、クロロプレンなどの共役ジエン化合物が挙げられる。ジエン系樹脂としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリペンタジエン、ポリヘキサジエン、ポリジシクロペンタジエンなどを挙げることができる。ジエン系モノマーには、エチレンとプロピレンと上記ジエン系モノマーとの共重合体も含まれる。
【0018】
ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物、ノルボルネン系モノマーとα−オレフィンとの付加型重合体、ノルボルネン系モノマー同士の付加重合体、及び、これらの誘導体などが挙げられる。ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。ノルボルネン系モノマーと付加重合するα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる 。
【0019】
更に、合成樹脂シートにはシリカエアロゲルが含有されている。シリカエアロゲルは、その構成成分や空隙率は限定されない。なお、シリカエアロゲルは、米国Cabot社から商品名「Nanogel」にて市販されているものを用いることができる。
【0020】
シリカエアロゲルとは、数nmの一次粒子が数珠状に連なってなる二次粒子が更に凝集することによって形成されており、二次粒子間には無数の空隙が形成されている。シリカエアロゲルは、アルコキシシランなどのケイ酸エステルの加水分解、重合反応によって得られたシリカ骨格からなる湿潤状態のゲル状化合物をアルコール、二酸化炭素などの溶媒(分散媒)の存在下で、この溶媒の臨界点以上の超臨界状態にて乾燥することによって製造することができる。
【0021】
ケイ酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのテトラアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシランなどが挙げられる。なお、ケイ酸エステルは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0022】
シリカエアロゲルとしては、疎水性シリカエアロゲルであっても親水性シリカエアロゲルであってもよいが、吸湿性が低くて絶縁性に優れており電荷保持力が高いことから、疎水性シリカエアロゲルが好ましい。
【0023】
上述の要領で製造された親水性シリカエアロゲルを疎水化処理剤で処理することによって疎水性シリカエアロゲルを製造することができる。疎水化処理剤としては、特に限定されず、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシランなどのシラン化合物、蟻酸、酢酸、コハク酸などのカルボン酸、メチルクロリドなどのハロゲン化アルキルなどが挙げられる。なお、疎水化処理剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0024】
シリカエアロゲルの平均粒子径は、小さいと、シリカエアロゲルを構成している二次粒子間に十分な空隙が形成されないため、エレクトレットシートの圧電性が低下することがあり、大きいと、エレクトレットシートの機械的強度が低下し或いはエレクトレットシートからシリカエアロゲルが脱落する虞れがあるので、0.01〜1000μmが好ましく、0.1〜500μmがより好ましい。なお、シリカエアロゲルの平均粒子径は下記の要領で測定される。先ず、シリカエアロゲルを任意に50個抽出する。各シリカエアロゲルを透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影する。各シリカエアロゲルにおいて、写真上に表れたシリカエアロゲルを包囲し得る最小径の真円の直径をシリカエアロゲルの粒子径とする。各シリカエアロゲルの粒子径の相加平均値をシリカエアロゲルの平均粒子径とする。
【0025】
合成樹脂シート中におけるシリカエアロゲルの含有量は、少ないと、エレクトレットシートの圧電性が低下し、多いと、エレクトレットシートの機械的強度が低下し或いはエレクトレットシートからシリカエアロゲルが脱落する虞れがあるので、合成樹脂100重量部に対して0.05〜50重量部が好ましく、0.1〜20重量部がより好ましい。
【0026】
なお、合成樹脂シートには、その物性を損なわない範囲内において、酸化防止剤、金属害防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0027】
そして、合成樹脂シートは、合成樹脂非発泡シートであっても合成樹脂発泡シートであってもよい。
【0028】
合成樹脂非発泡シートの製造方法としては、例えば、(1)合成樹脂及びシリカエアロゲルを含む合成樹脂組成物を押出機に供給して溶融混練し押出機に取り付けたTダイからシート状に押出して合成樹脂非発泡シートを製造する方法、(2)合成樹脂及びシリカエアロゲルを含む合成樹脂組成物を押出機に供給して溶融混練し押出機に取り付けたサーキュラダイから円筒状体を押出し、この円筒状体を押出方向に連続的に内外周面間に亘って切断して円筒状体を展開し合成樹脂非発泡シートを製造する方法が挙げられる。
【0029】
又、合成樹脂発泡シートの製造方法としては、合成樹脂、シリカエアロゲル、及び、熱分解型発泡剤を含む合成樹脂組成物を押出機に供給して熱分解型発泡剤の分解温度未満の温度にて溶融混練し押出機に取り付けたTダイから発泡性樹脂シートを押出し、この発泡性樹脂シートを必要に応じて架橋した上で、発泡性樹脂シートを熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させて合成樹脂発泡シートを製造する方法が挙げられる。なお、熱分解型発泡剤としては、分解によってガスを発生させればよく、例えば、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)などが挙げられる。
【0030】
上記合成樹脂シートに汎用の要領で電荷を注入することによって合成樹脂シートを帯電させてエレクトレットシートを製造することができる。合成樹脂シートに電荷を注入する方法としては、特に限定されず、例えば、(1)合成樹脂シートを一対の平板電極で挟持し、一方の平板電極をアースすると共に他方の平板電極を高圧直流電源に接続して、合成樹脂シートに直流又はパルス状の高電圧を印加して合成樹脂に電荷を注入して合成樹脂シートを帯電させる方法、(2)電子線、X線などの電離性放射線や紫外線を合成樹脂シートに照射して、合成樹脂シートの近傍部の空気分子をイオン化することによって合成樹脂に電荷を注入して合成樹脂シートを帯電させる方法、(3)合成樹脂シートの一面にアースされた平板電極を密着状態に重ね合わせ、合成樹脂シートの他面側に所定間隔を存して直流の高圧電源に電気的に接続された針状電極又はワイヤー電極を配設し、針状電極の先端又はワイヤー電極の表面近傍への電界集中によりコロナ放電を発生させ、空気分子をイオン化させて、針状電極又はワイヤー電極の極性により発生した空気イオンを反発させて合成樹脂に電荷を注入して合成樹脂シートを帯電させる方法などが挙げられる。上記方法の中で合成樹脂シートに容易に電荷を注入することができるので、上記(2)(3)の方法が好ましく、上記(3)の方法がより好ましい。
【0031】
上記(1)(3)の方法において、合成樹脂シートに印加する電圧の絶対値は、小さいと、合成樹脂シートに十分に電荷を注入することができず、高い圧電性を有するエレクトレットシートを得ることができないことがあり、大きいと、アーク放電してしまい、却って、合成樹脂シートに十分に電荷を注入することができず、高い圧電性を有するエレクトレットシートを得ることができないことがあるので、3〜100kVが好ましく、5〜50kVより好ましい。
【0032】
上記(2)の方法において、合成樹脂シートに照射する電離性放射線の加速電圧の絶対値は、小さいと、空気中の分子を十分に電離することができず、合成樹脂シートに十分な電荷を注入することができず、圧電性の高いエレクトレットシートを得ることができないことがあり、多いと、電離性放射線が空気を透過するので、空気中の分子を電離させることができないことがあるので、5〜15kVが好ましい。
【0033】
上述の如くして得られたエレクトレットシートは、これを構成している合成樹脂シート中にシリカエアロゲルを含有しており、このシリカエアロゲル中に形成された空隙によって空隙構造が導入されている。
【0034】
そして、シリカエアロゲルとこれに接触している合成樹脂との界面に電荷が見掛け上、正電荷と負電荷に分極した状態でたまっている。上述の通り、シリカエアロゲルは、数nmの一次粒子が数珠状に連なってなる二次粒子が更に絡み合うようにして凝集することによって構成されている。エレクトレットシートに外力を加えるとシリカエアロゲルに外力が加わり、シリカエアロゲルを構成している二次粒子同士が相対変位し、この相対変位に伴って二次粒子間に形成された空隙が変形する。この空隙の変形に伴って、シリカエアロゲルとこれに接触している合成樹脂との界面に見掛け上、分極した状態でたまっている正電荷と負電荷との相対的な位置関係が変動し、この変動に伴って電気応答を生じ、エレクトレットシートは優れた圧電性を発揮する。
【発明の効果】
【0035】
本発明のエレクトレットシートは、上述の如き構成を有しており、エレクトレットシートに外力が加わると、シリカエアロゲルを構成している数珠状の二次粒子間に形成されている空隙が容易に変形し、この変形に伴って、シリカエアロゲルとこれに接触している合成樹脂との界面にたまった正電荷と負電荷とが容易に相対変位を生じ、この相対変位に伴って良好な電気応答を生じ、エレクトレットシートは優れた圧電性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
ホモポリプロピレン(日本ポリプロ社製 商品名「ノバテックPP EA9」、曲げ弾性率:1,800MPa、メルトフローレイト:0.5g/10分)50重量部、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.917kg/m3、メルトフローレイト:1.3g/10分)50重量部、及び、空隙率が99体積%のシリカエアロゲル(Cabot社製 商品名「nanogel TLD201」、平均粒子径:8μm)5重量部を混合した上でラボプラストミルに供給して200℃にて10分間に亘って溶融混練して樹脂組成物を得た。
【0038】
得られた樹脂組成物をプレス成形によって厚さ0.3mmの合成樹脂シートを作製した。合成樹脂シートの一面にアースされた平板電極を密着状態に重ね合わせ、合成樹脂シートの他面側に所定間隔を存して直流の高圧電源に電気的に接続された針状電極を配設し、針状電極の表面近傍への電界集中により、電圧−10kV、放電距離10mm及び電圧印可時間1分の条件下にてコロナ放電を発生させ、空気分子をイオン化させて、針状電極の極性により発生した空気イオンを反発させて合成樹脂シートに電荷を注入して合成樹脂シートを帯電させてエレクトレットシートを得た。
【0039】
(実施例2)
ホモポリプロピレン((日本ポリプロ社製 商品名「ノバテックPP EA9」、曲げ弾性率:1,800MPa、メルトフローレイト:0.5g/10分)50重量部及び直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.917kg/m3、メルトフローレイト:1.3g/10分)50重量部の代わりに、ポリプロピレン樹脂(曲げ弾性率:1,800MPa、メルトフローレイト:0.5g/10分)100重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてエレクトレットシートを得た。
【0040】
(実施例3)
シリカエアロゲルを5重量部の代わりに10重量部混合したこと以外は実施例1と同様にしてエレクトレットシートを得た。
【0041】
(実施例4)
ポリプロピレン樹脂及び直鎖状低密度ポリエチレンの代わりにポリフッ化ビニリデン100重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてエレクトレットシートを得た。
【0042】
(比較例1)
シリカエアロゲルパウダーを用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてエレクトレットシートを得た。
【0043】
(比較例2)
ポリプロピレン樹脂及び直鎖状低密度ポリエチレンの代わりにポリフッ化ビニリデン100重量部を用いたこと、シリカエアロゲルを用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてエレクトレットシートを得た。
【0044】
(比較例3)
シリカエアロゲルの代わりに、ガラス中空微粒子(住友スリーエム社製 商品名「グラスバブルS60HS」、平均粒子径:50μm、真密度:0.6g/cm3)5重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてエレクトレットシートを得た。
【0045】
得られたエレクトレットシートの圧電定数d33を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0046】
(圧電定数d33)
エレクトレットシートから一辺が30mmの平面正方形状の試験片を切り出した。一辺が25mmの平面正方形状のアルミニウム箔を二枚用意した。上記試験片の両面のそれぞれに平板電極として上記アルミニウム箔を重ね合わせて試験体を作製した。
【0047】
試験体に加振機を用いて荷重Fが1N、動的荷重が±0.25N、周波数が90Hzの条件下にて押圧力を加え、その時に発生する電荷Q(クーロン)を計測した。電荷Q(クーロン)を荷重F(N)で除することによって圧電定数d33を算出した。なお、圧電定数dijはj方向の荷重、i方向の電荷を意味し、d33はエレクトレットシートの厚み方向の荷重及び厚み方向の電荷となる。
【0048】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性合成樹脂とシリカエアロゲルとを含む合成樹脂シートに電荷を注入して上記合成樹脂シートを帯電させてなることを特徴とするエレクトレットシート。
【請求項2】
絶縁性合成樹脂がポリオレフィン系樹脂を含有していることを特徴とする請求項1に記載のエレクトレットシート。
【請求項3】
ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を含むことを特徴とする請求項2に記載のエレクトレットシート。
【請求項4】
絶縁性合成樹脂がフッ素系樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載のエレクトレットシート。

【公開番号】特開2013−40305(P2013−40305A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179469(P2011−179469)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】